ポスト・コロナショック時代の私立学校(111)工学院 アップデートするオンライン説明会 ライブ感もいい②
★それまで、ゆったりと落ち着いた感じで司会を演じていた鐘ヶ江先生。平方先生とトーンのコントラストがあって、視聴者は少しホッとする瞬間を持てたと思うや、今度は進路指導部主任としてグローバル高大接続教育について語りますとギアチェンジしました。そして、司会の時とは打って変わって2倍速の速さで話していきます。
★田中歩教務主任から、メッセンジャーメールで、「少し早口っすかねー」と。「いや、オンラインは2倍速も織り込むと視聴者は飽きないですよーっ」と返しました。二人でモニタリングやっているみたいな感じでしたが、考えてみれば、研修でいっしょにファシリテーターやる時、瞬足対話やりながら展開していくので、それがメッセンジャーになっただけでした。
★それにしても、さすがは数学の教師でもあります。実にミクロとマクロ、つまり微分と積分のスイッチの切り替えが巧みでした。分割と統合は数学的思考の基礎です。中学から高校までの様々な教育活動を微分化して積み上げていくと積分が完成し、国内外に限らず、自分を突き抜ける(学歴という他人の評価を気にしないという意味)進学を実現するというスピーチでした。
★心憎いのは、横浜市立大学医学部医学科に合格した齋藤くんのエピソードをさりげなく添えたことです。教育や進路ガイダンスも一律指導をするのではなく、1人ひとりにあった個別最適化の自由度が高い指導だったので、自分で考え自分で行動できるようになったと思うとか、附属高校なのに、進路先の選択肢は広く、選択の意志決定は自分の決断であることがモチベーションがあがったとか、それゆえ、患者さんや家族の方の心に寄り添える医者になりたいのだという話は感動を誘(いざな)います。
★もちろん、海外大学に合格した卒業生の話もさりげなく。このパンデミックでどうなるかわからないけれど、そういうときに世界に立ち臨む生徒にエールも送る教師の眼差しにはグッときます。
★それにしても、鐘ヶ江先生の数学的思考は絶好調でした。もちろん、難しい数学的思考を振りまわすことはありませんが、多様なPBLの授業や国内外でのPBLの発展的教育活動を、丁寧に話しつつも、それはまるで関数方程式の一格子点で、それを統合する関数方程式を完成させたという話だったのです。
★国内外の起業家活動も、海外研修も、3か月留学も、ラウンドスクエアの交流も、Fabラボコンテストも、STEAM国際コンテストも、国連での平和提案スピーチも、一つ一つグラフの格子点で、それを全部包括する関数方程式が「グローバル・プロジェクト」なのだと。
★生徒自身が思考コードでルーブリック評価をつくり、チームでプロジェジェクトを遂行していく。地域の問題にグローバル視点の社会課題を結び付け、地域の課題を解決することが世界を救うことになる視点を見出すプロジェクト。工学院の教育の集大成だし、なんといってもこれを有志ではなく、全員が体験するのだと。ここがポイントです。コースは才能ごとに分かれていますが、もっとも大事な教育は公平にみなが実践し、互いに高め合っていくのです。
★齋藤くんが前述したように、形式的平等ではなく、個別最適化なんだけれど、公平性は重要視されているわけです。個人の能力と公平性はときに葛藤を起こしますが、そこは工学院です。そんなとき教師と生徒の共感的コミュニケーションが発動します。
★大規模校で、他の学校の数倍もの国内外の経験を積む学校です。クルト・ハーンは、予定調和な校外学習などしても意味がない。ギリギリの限界に挑戦できる体験を大切にする学校がラウンドスクエア加盟校だというのです。もちろん、それにはその限界線に教師も共に立ち臨み、限界を共に超えるタフネスが必要です。
★このグローバル・プロジェクト第一期生は現高3で、学年主任は鐘ヶ江先生です。進路指導主任でもあります。現地に何度も足を運び、すばらしいプロジェクトを現地の人とエージェントとそして生徒と三位一体となってデザインして達成したわけです。
★その高3生が、今度は大学進学へ挑戦します。齋藤くんのような多くの先輩にその精神を学び、飛んでいくのでしょう。その環境設定のリーダーが女性の鐘ヶ江先生です。
★パンデミックを柔軟かつ断固たる決意で対応した国のリーダーの多くが女性だったということは、今や世界同時的に知られていることです。鐘ヶ江先生にその姿を重ねたのは私だけでしょうか。そういえば、あのメルケル首相も、理系出身者でした。
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