ポスト・コロナショック時代の私立学校(98)海城 4つめのメッセージ 時代の要請をリサーチし未来像を描く
★海城学園のサイトを開くと、トップページにパステルカラーのまだ見ぬ海が見渡せる。その海の向こうに小さく薄光を放つ宝島がある。その静かな輝きに誘われて開くと、そこにはポスト・コロナの未来へのメッセージと戦略が広がっている。
★新型コロナウイルス感染防止のために今月いっぱいまで休校は続く。緊急事態宣言が発令されて2カ月が過ぎようとしているが、その間に三段階にわけて同校のオンライン授業はアップデートしてきた。その戦略を 4月14日付で、学校長柴田澄雄先生が「インターネットを介した遠隔学習指導について」というお知らせで告知している。この綿密な計画は、さすがであるが、校長名の下に、 ICT 教育室長中田大成先生の名も連なっている。
★ああ、なるほど。そういうことか。
★この連名のメッセージは、極めて重要である。というのも、海城は時代の節目節目でメッセージを出し、教育をアップグレードしてきた。一つ目は、大学受験勉強というよりも端的に東大受験勉強からの脱却。今でいう探究以上に本格的な社会科卒業論文を編集する学びを完成させた。もう40年も前の話だろうか。それから10年たつと、二つ目のメッセージと実践の時代だ。それは、近代教育の閉塞感からの脱却だった。ポスト近代教育を自覚的に行ったのは、海城以外に実はない。あとは海城に続いただけだろうといったら、他校はお怒りになるだろうか。
★パンデミックは環境破壊と戦争とセットになっている。しかし、それは今始まったことではない。識者がいろいろな場面で語っているように、近代化路線の矛盾という閉塞感は、周期的にやってくる。そしてそのつど乗り越えるわけだが、その閉塞感は、エモーショナルとフィジカルとソーシアルの領域で病を生み出してきた。
★今回もまさにそうである。この3つをケアしようという多様な動きがメディアでも報道されている。しかし、海城は30年ほど前から、ドラマエデュケーションやPAを順次取り入れてその病を克服している。
★そして、20年ほど前にグローバル戦略に踏み出した。その過程で高校募集を廃止し、その定員を中学の帰国生入試の定員に回した。これが三つ目のメッセージと実践だった。今では、海城のグローバル教育はハーバード大学をはじめ海外の名門校にも安定的に進学者を輩出するようになった。
★東大進学教育、教養教育、全人教育、グローバル教育と4つのドメインの教育を充実させ循環させた。
★そして、今回四つ目のメッセージと実践が生まれた。ICT教育の実装である。そして、確実に海城のICT戦略は時代の要請を読み切り、未来像を映し出すことになるだろう。そう確信をもてるのはなぜか。
★海城の節目節目の歴史に、必ず登場するのが中田大成先生だからだ。あるときは、国語科主任、またあるときは、教頭、そしてまたあるときは、広報部長。そしてそしてまたあるときは校長特別補佐として、海城のアップグレードを通して世の教育に影響を与えるリーダーシップをとってきた。
★徹底的にリサーチをする。徹底的に世界を経めぐってフィールドワークをする。そして時代の精神を読み切り、未来像を描いてきた。
★今度はICT教育室長としてさらなら次元を目指す。
★さて、その次元はどんな広がりをもっているのだろう。少なくともGAFAやHTH、ソサイエティ5.0、経産省主宰の未来の教室の情報は収集分析しているから、それ以上であろう。国際バカロレアやCEFRのときも徹底的に情報収集分析し、世界標準をノーマルとして、独自路線を築き上げてきた。今回もそうなるだろう。時代を画するとき、海城あり。いや中田大成先生ありということだろう。本質と戦略の両方を兼ね備えた稀有な21世紀私学人である。
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