ポスト・コロナショック時代の私立学校(81)工学院平方校長のスーパー構想。21世紀私学人の凄さ。③
★平方校長と対話していてさすがだと思うのは、ソサイエティ5.0の構想の向こうをみているということを感じたからです。2011年から平方先生は21世紀型教育の話を全方位で行っているわけですが、途中でシンギュラリティの話をするようになりました。これもはやかったですが、当然ながらマイケル・オズボーン氏の未来の職業についてのレポートにもよく触れていました。そういう意味では時代を語る校長として業界では有名でした。ところが、今回、平方先生は、その時代は目の前に来てしまったと実感している。ということは、2030年ころにと思っていたことは、すでに来てしまっているわけだから、次の時代の要請に対応していかなくてはと語るのです。
★マイケル・オズボーン氏らのプロジェクトがまとめた<THE FUTURE OF SKILLS EMPLOYMENT IN 2030>の中のイラストですが、ここに書かれているビジョンはすべて今の学校で出現してしまっているというのです。ここから、政治、経済、文化、SDGs、教育、戦争と平和、マーケット、価値観、感情などなどあらゆるものが変わらざるを得ない。どう変えるのか構想力が重要だというのです。変える側になるのか、変えられる側になるのか、フリーライダーになるのか。生徒にどの構えを共有したいですかと。そりゃあ、変える側です。
★<人工知能 AI 等が雇用に与える影響;日本の実態1 Digitization, Computerization, Networking, Automation, and the Future of Jobs in Japan 岩本晃一(経済産業研究所/日本生産性本部)、田上悠太(統計数理研究所) 2018年5月>のデータが、その通りになってしまったののだとも。メディアは、経済の低迷を毎日報道している。たしかに、すさまじい。来年の中学入試は、今までのようにはいかない。制度設計を変えるロビー活動をしなくてはならないけれど、すぐには変わらないから現状でベストの創意工夫をすることも重要かなと。
★ただ、図にあるように、今回テレワークやオンライン学習で、どのくらい困っているのかは冷静にデータを収集してみないとわからないと。たしかに都立高校だと8校しかテレワークはやっていない。東京の私立学校は工学院のオンライン授業まではやっていなくてもなんらかの形ではやっているし、日々スキル的な部分は進化している。
★逆に私立学校で、やりきれなかったところは市場の評価は厳しいかもしれないと。ここは、私立学校全体で、まずは何とかしようと思っている。公立学校とも連携はしていくだろうけれど、制度的にはいくつも壁があるなあと。
★ともあれ、日本は遅れているというけれど、オズボーン氏のなくなる仕事に就いている人口比率は他国に比べ低い方だ。だから、ポスト・コロナ時代は、全部がわるくなるわけではない。仕事の階層構造みたいなものも、構造化できる仕事、準構造化できる仕事、非構造化の仕事と別れると思うが、意外と構造化できる仕事がAIに代替されてしまう。学歴構造や産業構造も変わるね。
★アートや創造性が大事だというのは、準構造化の仕事や非構造化の仕事で必要だということだろう。これらの仕事を生みだす3つの能力のランキングをオズボーン氏らは<THE FUTURE OF SKILLS EMPLOYMENT IN 2030>で発表している。<Skills><Knowledge><Abilities>合わせて120のアイテムを並べているわけだが、20番目まではこんな感じだ。
★よく世界フォーラムなどのデータもそうだが、これから社会が要求するスキルのランキングを並べるけれど、実はオズボーン氏はそう簡単なリサーチをしているわけではない。わかりやすいから、〇〇能力のランキング表をつくって学校説明会なんかでプレゼンしているケースが多い、実際自分もそうしているが、そろそろちゃんと話す時がくるかもしれない。
★すでに、工学院の思考コードは、上記の3つの能力は埋め込まれているが、まだまだ一般的ではない。スキルとナレッジとアビリティをどう理解するかによって、今後生涯学習のスパーンで学び方が変わってくるだろう。スキルやアビリティが複数形だけれど、ナレッジは違う。ここでいうナレッジは釈迦に説法だろうけれど、暗記のための知識ではない。知識の発見の仕方、知識の使い方、知識の創り方という包括的な意味で、IBの<TOK>のナレッジ相当すると考えた方が良いねと。
★それから、平方先生は、これらのランキングで誤っていけないのは、どのスキルやナレッジ、アビリティが重要か、単体や要素で考えないほうが良いということだ。これらは、自在にミックスして活用できる創造的思考が大事なのだと考えた方が良いのだと。もっとも、120位が制御精度となっているから、それは創造的思考を形成する要素としては強くないということだ。柔軟性が大事なのは言うまでもないということだ。
★話を聞いていて、ハイブリッド・データ・プラットフォームができると、互いの意欲やモチベーションなどがマッチングできるようになり、教師の役割も変わるなあと実感。実感というのは、そういう教師の役割を演じている先生がすでに工学院には出現しているからです。
★平方先生は、こうも語ってくれました。今はN高のような学校は少ないけれど、これで全日制でもN高校のようなことができる。もちろん、制度的にはフライングになることが多いから、そこは制度的に詰めを行っていかなくてはならない。
★C1英語、PBL、ICTは、今までもやってきたけれど、完全に化学反応がおきたというのがオンライン学習の成果だろう。C1英語50%シェアまでいきたいが、それにはPBLの環境がないとできないし、国内大学入試だけ考えていたら、そこまでやる必要はないかもしれない。しかし、国内大学を受けるにしても、実は、そこまでやる重要な意味があるのだ。オンライン学習後、大学入試のあり方は各大学独自の入試を創意工夫してくるからね。いずれにしても、それはまた今度話すけど、生徒の≪新しい学びの経験≫としてそれは必要で、大学入試や民間検定試験のために学ぶわけではない。
★そして、PBLをやるにしても、きめ細かいデータが必要なのだ。今までもそれは部分的にやっていたが、オンライン学習によって、それがやりやすくなった。そうなるとどうなるか。脳科学の素養も教師には必要になるね。幸い教務主任は心理学の素養がある。オズボーン氏の未来のスキルでは、心理学の知は第2位にはいっている。1位は戦略的な学び。どうやら創造的才能には、戦略スキルと心理学知は相乗効果をもたらすらしい。
★高2、高3は戦略的PBLを行っているし、それまでは共感的PBLをやっているから、このレポートで自分たちがやってきたことが間違ってなかったということを裏付けされた気がしているということでした。
★明日から、工学院だけではなく、多くの私学がオンライン学習に取り組むことになる。量は質を生み出すから、また情勢は変わるだろう。そうしたら、いよいよ明快に工学院の明日のビジョンが映し出されると期待している。またリモート雑談をやろうということでした。
★雑談とはいえ、いや雑談だからか、熱量ある話を聞いて圧倒されましたが、希望の波動が生まれるのを感じないわけにはいきませんでした。(了)
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