ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(14)田中歩先生の工学院オンラインマネジメント <メタ共感的コミュニケーション×メタ戦略的学び>①
★先日、工学院の教務主任田中歩先生と久々に対面対話をしました。イクメンでもある歩先生は、ごめんなさい、子供がなかなか寝付かなくて遅くなりましたと、Zoomの画面越しに現れました。プライベートな様子と学校での仕事が、共感的コミュニケーションでつながっているなあと感じた瞬間でもありました。
★工学院もいちはやく対面型オンライン学習を開始しましたが、かなりガッチリ体制を整えてスタートを切りました。もちろん、序破急のリズムで進んでいて、日々進化しているのですが、スタートの水準が実に高かったのです。
★2月の末に会ったきりで、あとはときどきメッセージやメールでやりとりしていただけですが、その設計構築過程はなんてすさまじいのかと文字越しに感じました。しかし、オンラインで対面で話してみると、共有機能でいろいろなマネジメントシステムの資料が充実していてそれゆえ説明が極めて明快で、何が課題でそれをどう解決していったのか説得力ある話が聞けました。
★バタバタたいへんなんだけれど、それを解決するときに、仲間がどんどん増え、どんどん知恵をだし、実行していくチームになっていったワクワクするような話になっていたのです。
★危機に強い工学院、それを共感的コミュニケーションでさらにパワフルにしていく先生方の姿がパッと広がりました。
★しかし、一方で時間割のきめ細かさに驚愕でした。工学院に限らず教務主任は、時間割を編成するのが重要な業務です。毎年2月の末から3月にかけて、学年別クラス別の全授業と先生方の配置を組み立てる作業に残業状態でしょう。
★ただ、もしかしたら、イクメンとしては、テレワークができるので、うれしい悲鳴をあげながら、生活と仕事を両立していったのかもしれません。ここはプライバシーに触れるので、直接は聞けませんでした(汗)。
★ともあれ、その時間割がいつもと違うのは、すべてテレビ会議システムにアクセスするインタフェースが埋め込まれるようにできているのです。当然、担当の教師とそのクラスの生徒しか入れないセキュリティ構造になっています。
★生徒数1300人くらいの大規模校です。その平常時の時間割を調整するだけでも大変なのに、そこにオンラインのインタフェースを各授業ごとに埋め込むのです。専任も非常勤もそこは差がありません。
★平常時から、ICT教育を全学年全クラスでやっているので、一から説明する必要はありませんが、工学院は生徒の発達段階やクラスの特徴にしたがって、会議システムもプラットフォームも多様な物をミックスして使用しますから、使い方のマニュアルも用意しています。
★そのマニュアルに整理されている内容は、一般的な使用法ではないのです。もちろん基本は一般的なのですが、工学院の授業や出席の取り方だとか、何よりコミュニケーションの取り方の理念など独自のものがありますから、そこにきちんとつなげられるようにマニュアルが創られているのです。
★シスエテムエンジニアが複数いるのかと思うほどのものです。それを読んで、わからなければ歩先生のプラットフォームに質問がきます。しかし、それは共有されているので、歩先生だけではなく、知っている他の先生が回答したりして、オンライン体制は展開していっているのです。
★かりに、第2波、第3波がきて、オンライン授業がまたやってきたとき、文科省は出席日数や単位を認定するといいだすかもしれません。もしかしたらすぐにでもいいだすかもしれません。そのとき、うちのオンラインシステムは参考になると思いますよと歩先生は語ります。
★他校が、オンライン学習になかなか進められなかったり、単位認定の仕上がりになかなかできないのは、このオンライン学習のバックヤードのシステムエンジニア的な戦略的マネジメントがすぐにはできないということがあるというのが実感できました。外部から一般的な使用方法の研修をうけても、独自の文化につなげるのは、内部にテクノロジストやシステムエンジニア級の人材がいて、なおかつ統括するマネージャーがいなければなりません。
★しかも、この手の組織では、統御精度の高いコントローラーは不要というのが、マイケル・オズボーン教授らのテクニカルリポートでもはっきりしています。柔軟な戦略的なマネージメントが大事なのだというのです。
★まさに田中歩先生のリーダーシップの力そのものです。共感的かつ戦略的という両義性をうまく平衡させています。しかも、すごいのは、歩先生が直接指導しなくても、先生方が共感的コミュニケーションをとりながらICT機器を戦略的に活用する方法を学ぶ状況を形成しているということです。まさにPBLの真骨頂ですが、そういう意味では、メタ共感的コミュニケーションとメタ戦略的な学びの両翼を田中歩先生は持っているということでしょう。
★そして、このオンライン環境のバックヤードのシステムが戦略的にできているからこそ、日々のオンライン授業が創造的になるというなんともトリックアートなアクロバティックなことが工学院では生まれているのです。(つづく)
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