ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(20)コード化やトークン化に対応すべきはカイロスの自分のID(アイデンティティ)を創るコト
★明日から、パンデミック第一波に対応してきた緊急事態宣言は解除される予定ですが、このコトがもたらすコトは何か?オンライン授業とかテレワークという<モノ>の物象化は当然ですが、その物象化を生み出す背景は何かという<コト>です。それは、1つは都市空間のパラダイムシフトが起きるというコトです。
(前田愛が論じていたころの都市空間とポストコロナ時代のハイブリッド時空の違いに気づく書籍がどんどん出てきています)
★1990年代後半に、カリタス女子の国語の教師だった森本謙四郎先生(のち同小学校校長)の今でいう探究のプログラムについて教えを乞うていたことがありました。中高生が、前田愛の「都市空間のなかの文学」を読み合い、夏目漱石や荷風やフッサールやサルトルが歴史的制約性の中の都市空間の中でどんな内的時空を文学として表現したか調べて論文を書いていく壮大なプログラムでした。カリタスの底力をそのころからリスペクとしていました。
★そんなことを思い浮かべながら、今回のサイバー上の時空とリアルな時空のハイブリッド時空になると都市空間が変わりますが、前田愛ならこの「ハイブリッド都市時空のなかの文学」をどう書くのかなあとふと思ったわけです。
★前田愛の「都市空間のなかの文学」は、サルトルの次のフレーズの引用から始まります。
われわれがわれわれを発見するのは、どこかわからない隠れ場所の中などでは ない。それはものの中のものとして、路の上で、街の中で、群衆のさなかにおいてである。 ――サルトル「 フッサール の 現象学 の 根本 理念」 金井 裕 訳。(前田愛. 都市空間のなかの文学 ちくま学芸文庫 Kindle の位置No.38-41)
★文学という内的時間の中で発見するものは、実は見えないわけではなく、都市を埋める物質的なモノや群衆のコミュニケーションで表現されているモノにある。しかし、モノの段階ではやはり見えなくて、その背景である内的時間は、文学空間の中にあるのだという発想なのではないかと思います。
★しかし、今回のハイブリッド時空になると、その内的時間であるカイロスが、見える化され共有化されるようになります。今までは、漱石とか荷風とか森鴎外とか村上春樹とかピカソとかモネとかモーツアルトとかクイーンとかセカオワとか、羨望の眼差しを集める作家やアーティストの内的時間の文学的表現の中に感じていたコトが、自分の中にもあるのだというコトに気づき、それを表現し共有するというコトになるわけです。
★それを感じるには、しかし、リアルなリニアーな時間であるクロノス(物理的時間)から円環時間であるカイロスの見える化されたサイバー上の時空に出たり入ったりすることによって明らかになります。
★作家やアーティストと自分が持っている内的時間の質は1か0の違いではなくなります。1か0.2くらいはあるかもしれませんし、もしかしたら1か3ぐらいになるかもしれないのです。
★自分の内的価値は誰もくみ上げてくれなかったのが、前田愛が書いていたころの「都市空間」だったわけです。しかし、その評価が作家やアーティストなどとフラットに行われるようになるのが、クロノスとカイロスのハイブリッド時空のなせる業です。
★小林弘人氏のafterGAFAを読んで、この自分の価値がトークン化される。あらゆる自分のかかわるモノの背景までID(アイデンティティ)として自己証明されるコトになる可能性があると気づきました。
★ある意味監視社会になってしまいます。SF映画さながらんですが、自分であるコトは、肩書や学歴程度のプロフィールではなく、何を考え何を感じ何を成してきたかすべてがトークン化されるわけです。そのIDがあるから、仲介をふっとばしてダイレクトに交渉ができることになるわけです。
★リアルな空間ではノー3密でも、サイバー時空では、濃密です。お互いの膨大なプロフィールデータ、つまりポートフォリオですよね、それがブロックチェンやAIによって一瞬にして読み取れる相互監視体制ができていきます。
★そして、そのIDやトークンを形成するには、コード化されていきます。自分の細胞や脳神経系のすべてがコード化されていくわけです。精密なマッチングが行われる濃密時空がサイバー上で行われていきます。
★教育の世界でポートフォリオとか思考コードとかいわれているモノは、すべてそこに流れゆく入口です。これは放っておくと、多くの論理学者や政治学者、哲学者などが議論してきた民主主義のパラドクスが生まれます。それゆえクリティカルシンキングは必要だということなのです。
★今私たちがリアルな時空で語り合いながらもまだ一部のグループでの話にすぎないモノーーポートフォリオ、思考コード、エンパワーメント評価、アイデンティティなど――は、ハイブリッド時空になると自分を証明するパスポートになります。ブロックチェーンの中で、ダイレクトに個人同士がコミュニケーションや商取引、資本投資などができてしまうのです。受動的な自分の評価はそのIDに蓄積されますから評価が低くなります。恐ろしい世界ですね。
★当然複式簿記というシステムは、その項目に表現できなかった個人個人の質が資産として反映されることになります。やりがいがあるのと同時に、アイデンティティの透明化が起こるわけですから、エモーショナルなケアはものすごく必要になっていくでしょう。
★内的時間の見える化と共有化は、コード化やトークン化を拡張し、IDは日々の感情から思考から行動まですべてが資産として累積されていく膨大なポートフォリオデータになっていきます。
★クリティカルシンキングとかメタ認知という能力がなければ、サバイブできない可能性がでてきます。この流れをデストピアとみるのかユートピアとみるのか。
★今水面下で進んでいるGAFAと欧州金融界の課金システムや取引システム、資金調達システムの葛藤の解決の着地点が、そんな感じになるのかもしれません。
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