ポスト・コロナショック時代の私立学校(109)聖パウロ学園 戦略的コミュニケーションと学習する組織とMFOと5Cとパウロの森
★6月から聖パウロ学園も分散登校になりますが、これはまた新たな挑戦にもなります。昨日から分散登校に向け、話し合いやCOVID-19の感染防止策、ノー3密時空の設定のために在宅から学校に訪れる先生方も多くいました。今では、会議もZoomで行われていますから、行動を起こす時、柔軟にリアルな時空とサイバーな時空の両方が動きながら進んでいます。
★そんな分散登校ヘ向けての準備の合間にも、オンラインPBL授業やオンライン面談も同時に行われているシーンは、やはり今までにないシーンでした。この3か月、聖パウロ学園の教職員、生徒、保護者が一丸となってオンライン授業の模索をしてきました、見事にその進化ステージは5.0に到達しました。もちろん、生徒の発達段階や単元に応じてステージ3.0~5.0はミックスされています。しかし、オンライン対面、同期型学習、非同期型学習のコンビネーションはすべてのオンライン授業で共有されています。
★高2のキャリアガイダンスも行われていました。先生方が、国際総合系、学際系、医療・介護系、家政学系、理数系などの学問のタイプを分担し、生徒が自分の進路に関係のあるバーチャル進路相談室を訪れるというスタイルでした。
★普段は大学のオープン・キャンパスや外部の講演者を招いてのイベントが目をひくのですが、実は同校はAO入試や指定校推薦入試に挑戦する生徒も多いので、先生方1人ひとりが、相当大学の学問事情に精通しています。
★生徒の興味と関心、社会や学問の最前線の話題、何より生徒の志について対話しながら、キャリアガイダンスを展開していきます。パンデミック世代だからこそ感じる志を受けとめ、生徒1人ひとりの社会への貢献する気概に火がともっていく瞬間を先生方は静かに感じながら進めていました。ちょっと前までのダンスやストレッチでダイナミックに動いていた渡辺先生も、キャリアガイダンスでは静かに遠くを生徒といっしょに見つめながら対話をしている様子をみて、切り替え力に感動しましたが、こんな姿はオンラインだから見ることができたのかもしれません。
★理事長・学園長の高橋博先生も分散登校への準備の会議を仕切るために訪れていましたが、先生方のオンライン授業の様子も見て回っていました。一般に、理事長・学園長ともなると現場に降りてくることはあまりないのですが、高橋先生は現場の先生方と授業についてよく対話しています。
★ご自身も執筆したり、世界を巡りながら最先端の教育をリサーチしたりしていますから、そのスケールはかなり大きいのですが、その一方で授業という現場もしっかり見定め、世界と教育現場をつなげる言動には頭が下がります。
★高橋先生自身、オンラインでの表現者として、動画とスピーチをミックスさせて発信をするし、Zoomも使いこなします。したがって、すぐに近未来の教育の新構想に想いを馳せ、先生方と話し合ったり、同じ支部の工学院の校長平方先生とも意見交換をして、猛スピードで新しい教育の日常への対応に動いています。
★理事会の長として、管理職や事務局スタッフと戦略的コミュニケーションをしながら組織運営するとともに、同時に教師、生徒、保護者が学習する組織に成長するような環境づくりもしているわけです。
★そして、MFO(隣人愛)というカトリック精神を共有し、5つのC(コミュニエーション、コンパッション、コミュニケーション、コラボレーション、コントリビューション)のアクションを学校全体で大切にしています。高橋先生自身、この精神とアクションの体現者です。私学人としてのリーダーシップを発揮しているわけです。難局を乗り越える時、強く柔らかい精神と最先端の教養を持っていることは大事です。
★ふだんは、先生方は連続する授業と生徒と共にしているので、気軽に話しかけることができませんが、オンラインの時には、生徒が非同期で学んでいる時間がありますから、その瞬間瞬間にいつもよりは対話する時間があります。
★国語科の小島崇先生とafterオンライン授業の話をすると、やはりハイブリッドスペースと同期と非同期のミックスの有効性について語ってくれました。また、パンデミック世代とは新しい教養や哲学が必要だと感じているし、オンラインでやりとりをしながら、生徒自身が内省する時間も多く、考えることの大切さを今まで以上に感じ始めているのを実感しているということでした。
★そして、それは現代文という授業の中で、ハイブリッド時空及び同期・非同期をミックスする環境を設定して創れるのではないかというアイデアも膨らんでいました。
★サイエンスの吉留先生とも対話ができました。まるで超人気ユーチューバーのような存在で、生徒に大人気のオンライン教師でもあります。オンライン授業なんてあと15年くらいたたないと無理かなあと思っていましたが、3か月で世界が一変しましたと。反転授業や同期・非同期のミックスを組み合わせた巧みなオンライン授業を行っているのですが、その根底にはゲーミフィケーションの応用があるようです。
★オンライン授業をRPGに見立てて、細かいステップごとに生徒が成長していく仕掛けを構築しています。RPGの世界は、キャラクターがステージアップするのに何度もやり直せるということと時間意識、スコア意識、即時感などを織り交ぜるそうです。動画もところどころ2倍速にするなどファンタージを組み込む物語のような編集もするのだと。
★一方で、数学の松本先生は、多様なデバイスやアプリも活用しますが、高3のスーパー数学チームはゼミナール形式になるので、実はZoomの対話機能だけで十分なのですと。最終的にはこのシンプルなオンライン対話授業に行き着く体験は、生徒の成長の段階を見える化できる感覚なのですと。
★エマーソンやソローは、森の生活の中で生まれる清浄な感情とあふれでる教養に基づいた発想を大切にしました。100年以上前のハーバード大学の賢者の発想が、オンライン授業を経験したパウロの森で、どうやら新たななカタチになりそうです。
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