« ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(15)田中歩先生の工学院オンラインマネジメント <メタ共感的コミュニケーション×メタ戦略的学び>② | トップページ | ポスト・コロナショック時代の私立学校(93)八雲学園のオンライン 孫氏の戦略とプラグマティズム »

2020年5月16日 (土)

ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(16)田中歩先生の工学院オンラインマネジメント <メタ共感的コミュニケーション×メタ戦略的学び>③

★1月ほど前、田中歩先生が先生方と協力してオンラインPBL授業の体制構築をしていて、その目途が立ったころ、こんな記事を書きました。<ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(32)工学院 なにゆえにオンライン学習なのかを深く洞察。>が、それですが、読み返してみて、今の田中歩先生の感じ方や考え方と比べると隔世の感がります。わずか1カ月の期間が、3年も経過したかのように感じます。

【図1】

Photo_20200516231102

★当初は、時間割のマネジメントやデバイスやプラットフォームの技術的なつながりの土台をつくり、そこに従来行ってきたPBL授業を接続していけば大丈夫だろうと田中歩先生も私も思っていたのですが、当然リアルな授業でしかできないことがあるし、サイバー上の授業でしかできないこともあり、それがシナジー効果を生み出して、リアルなPBLとオンラインPBLでは意識や形態が違うことが歩先生は気づいたのです。

★それは、やはり暗黙知や以心伝心では、オンラインではうまく共感的コミュニューケーションが成立しないということでした。エモーショナルな側面は、リアルな世界では、知的なやりとりだけではなく、感覚や感性で伝わるものですが、オンライン上では、その身体性のコミュニケーション媒介が制約されるために、視覚化と言葉化の丁寧さが必須になります。

★また、どんな精神を発揮する言動をとれば、創造的で、挑戦的で、貢献活動ができるのか、論より証拠、身近にいる友人の姿を肌で感じれば、すぐに伝わります。モデルを丸ごと感じ取ることができるからです。

★しかし、オンラインの場合は、それはできません。そこで、そのモデルになる生徒像が生まれる諸条件を明らかにし、その条件をオンラインの多様な機能でサポートすることに気づいたということです。田中歩先生は、先生方にフィードバックしたり情報共有を、毎日オンラインでリフレクションミーティングをしているのです。

★田中歩先生と話をしながら、Zoomの共有機能で、主体的で自立した生徒、広い視野を持ち深く考えていく生徒、認知的な側面だけではなく、非認知的な側面も豊かで、自国だけではなくグローバルな社会貢献活動ができる生徒、自分やチームばかりではなく、社会や世界の状況もモニタリングできる生徒などイメージを描いていきました。それが【図1】ですが、田中先生は、生徒像をこんなふうにイメージしているというのです。

【図2】

Photo_20200516232901

★そして、この生徒像が育つオンラインPBL授業はどうなっているのか、田中歩先生は、その一端を「工学院のオンライン」などの記事(実はプラットフォーム上にはメモがいっぱい蓄積されている)で言語化することによってリサーチしているわけです。

★英語の教師なので、自分のためのメモとしては英単語がずらり並びます。それぞれの先生が、(ミッション―スキルーリフレクション)×インターアクションの土台を創っていくわけですが、その3つのサイクルは、先生によって特徴があるということです。

★田中歩先生は、それを3つのsとか3つのt・・・とかまとめていきました。いろいろなパターンがありますが、1人の先生がそれをすべて行うわけではありません。それぞれが1つか2つ選択して行っていくわけです。もちろん、本人は暗黙知なのですが、それをICTの機能が見える化していくのです。

★この多様性が、工学院のオンラインのおもしろいところです。広い視野あるいは多角的視野は、先生方のそれぞれの視座が複合して、生徒の視野と融合することによってできます。そして、それによって、生徒は生徒の視座を作り上げていくのでしょう。

★ある意味、先生方1人ひとりのメンタルサイクルパターンを知ることができたのは、オンラインPBL授業を実施し、物理的空間ではソーシアルディスタンスを保ちながら、心理的空間では密にコミュニケーションをとる機会が生まれたからだと。

★相互に関心を抱く教師と生徒の人間存在の誕生。どうやら、社会の在り方、人間存在の在り方、もちろん新型コロナウイルス感染防止のために自然という在り方も、今までとは違う次元に移行するのでしょう。

★田中歩先生は、それを哲学とか社会学とかではなく、教育という世界で問い直しています。ソサイエティ5.0などは、このような新しい社会、人間、自然のつながりや在り方を前提にしていません。田中歩先生をはじめ工学院の先生方は、この新しい存在の在り方を生み出し始めているのでしょう。

★ソサイエティ5.0の次の近未来社会の構想力は、現在政府や官僚には任せていられません。企業は期待できるところもありますが、経済システムを変えるところまではいかないでしょう。しかし、近未来は田中歩先生方とともに学んでいる生徒自身が創り上げなければなりません。

★そのためには、今サバイバルスキルと共に幸せに生きる共感的コミュニケーションの能力が必要です。この両方の能力を、私たちは持っているかと言われると自信がありません。今目の前の生徒にはそうなってほしくありません。そんな強烈な静かな情熱を田中歩先生から感じました。Zoomミーティングは、時計の針がすっかり夜中をまわっていました。貴重な大切な時間をありがとうございました。(了)

|

« ポスト・コロナショック時代がもたらすコト(15)田中歩先生の工学院オンラインマネジメント <メタ共感的コミュニケーション×メタ戦略的学び>② | トップページ | ポスト・コロナショック時代の私立学校(93)八雲学園のオンライン 孫氏の戦略とプラグマティズム »

創造的破壊」カテゴリの記事