ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(32)工学院 なにゆえにオンライン学習なのかを深く洞察。
★明日13日から、東京と大阪は本格的にオンライン学習を行う学校がでてきます。もちろん、ほとんどは、郵送か配信でしょう。配信にWebを活用しても、通信添削的なスタイルが多いと思います。生徒自身が学びの自立/自律が出来ている場合、なんら問題はないでしょう。しかしながら、そうはいかないのが生徒に限らず大人もそうでしょう。
★だから、オンライン学習をするかしないかは、実はこの緊急事態の時に何が最も大事かを世界同時的に考えるトリガーだと思います。そして、動かなければ、そのトリガーであることの大切な価値を得ることができないのです。
(工学院田中教務主任は、複雑適用系組織づくりの動的平衡創出リーダー。難局を乗り切るときに最も重要な役割を果たす。)
★さて、オンライン学習実施について、最も速やかに動けるのは、工学院大学附属と三田国際です。というのもふだんから複数のアプリや複数のプラットフォームを活用してPBL型授業を実施しているので、多くの教師や生徒がリアル時空とサイバー時空のハイブリッド時空(HST)を学びの場としているからです。しかし、両校のサイトではあっさりと以下のように書かれているだけです。
工学院)休校期間中の学習(オンライン学習)について
月曜日〜金曜日の平日に実施します。詳細は別途ご郵送した「オンライン学習について」をご確認ください。
※土曜日(職員会議のため),日曜日,祝日は実施しません。
三田国際)・中2~高3は4月13日(月)からオンラインによるガイダンスおよび授業を開始いたします。
・中1につきましては教科書と一緒に学年ホームページのご案内をお送りしております。
4月13日(月)以降の学習については学年ホームページでご確認ください。
★大騒ぎをしないのはさすが余裕だなと思い、日ごろからコミュニケーションをとっている工学院の教務主任田中歩先生にWebインタビューをしてみました。すると、余裕とかではなく、教師も生徒も原則在宅でオンライン学習をやっていくには、どんなリスクやケアが必要なのか教科と学年に分かれて精査し、整理していたんですよということでした。
★オンライン学習をやること自体は、確かに問題ないのですが、この局面が意味することは何か?この局面をみんなで乗り越えていくことによって今後どうなるのか?そんなことを議論していると、今までとは違う次元のコミュニケーションが必要だということに気づいたわけです。ですから、いつものようにそのままやればよいというわけではないのですということでした。
★以心伝心はたぶんきかないでしょうし、かといって精緻なスケジュールで縛るのは、この局面を感じ考えることを停止させてしまいます。どうしたらよいか?ミネルバ大学のアクティブラーニングフォームのようにというイメージもありますが、あれができるようになるトレーニングをどこでするかですよね。何万人もの中から選ばれた学生がアクティブラーニングフォームを使ってオンライン授業をやっているわけです。
★能力の問題ではなく、生徒の発達段階を考えれば、すべての教師と生徒がミネルバ大学のように行かないのはファクトです。その確認からどうやって進めていくか。でも、いいチャンスなのです。普段の通学のときには、五感で生徒の様子がわかるのですが、今回は五感は制限されていますから、生徒の様子をどうやって収集し、学年や教科で共有していくか、実は新しい組織に変容していかざるを得ないのです。
★オンラインHRも朝だけではなく、授業終了後もやります。これはチェックインとチェックアウトというメンタルヘルスを大切にする構えでもあります。単純に時間を区切って何をやるか、リアル時空で行っていたようにやってしまうと、暗黙の了解でできていたものが抜け落ちてしまう可能性があります。
★仕事や学びはやればよいというものではありません。いろいろなニュースでわかっていうように、仕事も学びもやり方によってはリスクがあるわけです。今回のような世界リスクは、生活を一変しますから、変わると新たなリスクが生まれます。このリスクの複雑系をどう調整するかは私たちには未知の領域です。
★それゆえ、オンライン学習を遂行するうえでの体制作りは必須です。とはいえ、誰かが絵を描いてこの通りやれと命令するようなものではすぐに崩れます。共感的なコミュニケーションをどれだけ合理的に科学的に密にできるかです。3密ではなくて、マインド的な次元での密度の高さですよ、もちろん。と。
★最終的には、生徒自身が自らの学びをデザインできるようになるように、多角的多次元的に環境を先生方と生徒と協力して創っていけるようになるはずですが、そうは簡単にいきません。ですから、教師と生徒のコミュニケーションツールやプラットフォームだけではなく、教師間のコミュニケーションツールやプラットフォームもつないでいますということです。
★具体的に走り出すと、いろいろなことが起こるでしょう。トラブルやケアもあれば、感動するようなことや新しい気づきもあるでしょう。それは、できるだけオープンにして、情報を多くの方々と共有していきたいと思っています。
★眩暈がするような事態は、当たり前ですが、すでにいっぱい起こっていますが、互いにオープンマインドになっていけるように動態平衡の状況を生みだせるように調整しているつもりです。オープンになるということこそ実は倫理だと思っていますと。
★現状、現場で田中歩先生の言動を拝見することはできないわけですが、Webを通して、すべてではないですが、歩先生の苦労を引き受けながら同時にやりがいを持って動いている様子が了解できたような気がしました。
| 固定リンク
« ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(31)富士見丘 SGHからWWLへ | トップページ | ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(33)聖学院 圧倒的な<教育出動力>。100本の授業動画一挙公開。 »
「創造的破壊」カテゴリの記事
- どうする東京の私立学校2024(2023.12.01)
- 【研究所ブログ第6回】教科の授業と探究の接点(2023.11.27)
- 国立大学「地域枠」6割に 都市の生活社会をどうするかも当然重要(2023.11.27)
- 2025年以降は、教育力を「外生的技術進歩」と「内生的技術進歩」と「哲学シンキングなど」の3つのスコープで学校選択ができるようになる(2023.11.24)
- 羽田国際② 人口減の未来に外生的技術進歩と内生的技術進歩を統合する人材輩出に期待(2023.11.23)
最近のコメント