ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(60)ノートルダム女学院のオンライン≪Transform lives, transform the world≫を体現
★ノートルダム女学院の変容ぶりの勢いは凄まじい。同教育修道女会創設者マリア・テレジア・ゲルハルティンガーの精神≪Transform lives, transform the world≫をまさに体現している最中です。
★同校サイトを開くと、緊急事態宣言発令第一弾前夜からバタバタとしかし根本を忘れないように思索と祈りを続けながら、短期間のうちにオンライン学習の環境を整えていったのがわかります。もちろん、それができるには、もともと同校独自の21世紀型教育をプロジェクトチームを立ち上げて行ってきたというカリキュラム実践があったからです。
★それにしても、昨日25日からWeb学校説明会やオープンスクールを開始し、オンライン個別相談まで行うようになっているのです。
★毎日のオンラインHR及びオンライン授業の適用をすればよいのですから、そこにシフトするのは、技術的にはそんなにハードルは高くなかったでしょうが、同校のWeb動画学校説明会は、プログラムのパーツごとにできているので、参加者が見たいものをみればよいという選択制です。
★この制作によって、広報チームは改めて自分たちの学校のいまここで進行している教育力の俊敏力と奥行きの深さをリフレクションできているし、学内でも共有でき、ビジョンの共有が行われるという密度の高い時空が流れているでしょう。
★ノートルダム女学院のカリキュラムリソースは、なんといっても<対話>です。オンライン学習の準備が始まって以来、ZOOMミーティングが頻繁に行われていますから、いかに<対話>を大切にしてきたか可視化されました。自分の顔は自分で見ることはできません、他者との対話を通して気づくわけですが、ZOOMなどのアプリやデバイスという最新のメディア媒介項によってそれができたのは、同校の進化に弾みをつけることでしょう。
★この<対話>は、<正・反・合>という<弁証法>によるものと、<守・破・離>という<道>によるものの2つがノートルダムにはあります。<正・反・合>という<弁証法>は、ヘーゲルが有名です。京都学派も大きな影響を受けています。しかし、ヘーゲルはもともと、キリスト教を哲学的に捉え返す挑戦から<弁証法>を考察しました。根っこはキリスト教です。
★また、<守・破・離>という<道>は剣道などの武芸の修行の方法だと思われがちですが、根っこは千利休の<茶の道>にあります。茶室は実は庭園とセットです。ノートルダム女学院には<和中庵>という茶室が庭園と共にあります。<茶室>だけなら私立女子中高一貫校ならたいていどこにでもありますが、<庭園>とセットになっているところはそうありません。
★シリコンバレーにあるHTH(ハイテックハイスクール)は最先端のテクノロジーとエンジニアリングを駆使したPBLを行っている学校で、世界から注目されていますが、それだけでは足りないとGAFAと共にHTH自身が語ります。
★ソサイエティ5.0や第四次産業革命のベースにはスマートシティとかコンパクトシティとかがあるわけですが、この新しい都市創りのルーツは、19世紀末から20世紀初頭に一世を風靡したユートピア都市計画です。それを実践して現存している都市はイギリスのレッチワースにある田園都市です。ここに着想を得て田園調布ができ、東急電鉄が創設されたわけですが。
★レッチワース構想は、今でもドイツ各地のエコ都市づくりやフランスのストラスブールのエコ都市づくりのモデルの1つでもあります。
★そのレッチワースに影響を与えたのが、19世紀末ウイーンで盛り上がっていたジャパノロジーです。このジャパノロジーで紹介されて大いに話題になったのが日本の庭園であり、その中に含まれている茶室や茶器だったのです。
★今でも、ストラスブール大学の日本学研究所では、この研究のセミナーなどが行われていますね。
★そして、その影響はGAFAにも与えていて、最近流行りのマインドフルネスのルーツがここにあります。
★今、ノートルダム女学院では、こんな<対話>が先生方と行われているのです。宗教科の教師、社会科の教師、数学科の教師、保健体育科の教師がときどきZOOM越しで話していると思います。おそらく<弁証法>と<道>という2つの<対話>の融合は、量子物理学者ボームの「ダイアローグ」という考え方に近いと私は思っています。
★そして、アートや哲学の分野で、再び京都は注目を浴びていて、京都学派のリーダー西田幾多郎の哲学の再考が話題になっています。西田幾多郎は、数理哲学を京都学派に導入したいと考え田辺元を招くのですが、それは、まるで、宗教科の教師と社会科の教師と数学科の教師と保健体育科の教師が<対話>している同校の雰囲気とシンクロします。
★しかもマルクス・ガブリエルが英語のマインドではなくてドイツ語のガイストを重視したいといったとき、ノートルダム教育修道女会創設者のマリア・テレジア・ゲルハルティンガーの言葉である<ガイスト>と交差します。
★ガブリエルは、ヘーゲルの<弁証法>を脱構築しようとしていますが、ゲルハルティンガーの生きた時代に、今日のようにコレラのパンディミックが長引き、ヘーゲルはそのコレラで一命を落としています。今日、私たちはガブリエルを通してヘーゲルのガイストを脱構築しようとしています。その契機をゲルハルティンガー自身が持っていたというのは実に不思議です。
★歴史は繰り返します。パンデミックや革命は100年周期のダイナミズム過程があると言われているぐらいです。
★今回もゲルハルティンガーの生きた時代と共通構造を持ちながら、当時の第一次産業革命とは違う次元の第4次産業革命を生きているのです。ノートルダム女学院の教師は、京都という地政学的なリソースと京都の文化的リソースとゲルハルティンガーという欧米のリソースを、生徒の未来に適合するように創意工夫しているのだと思います。
★今年の春、京都大学も2名合格しています。京大の教養リソースも巻き込みながら、ますます世界変容型学校として唯一無二の得難い価値ある教育の拠点となっていくでしょう。
★徳と知というゲルハルティンガーの精神は、全国の学校が一斉休業下にあっても、新しいオンラインツールを使って、今も祈りと思索という日々の教育の中に生き続けています。
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