« ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(18)開成・麻布・武蔵の<オンライン学習>をめぐる意味。 | トップページ | ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(20)洗足、カリタス、恵泉、東洋英和、JG コンパッションのメッセージとオンライン学習 »

2020年4月 6日 (月)

ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(19)開成 <オンライン学習>の本当の意味は世界の痛みを引き受ける<探究>。

★今回の不測の事態はたしかに大変な事態です。しかし、あとから歴史を振りかえれば、幾度も降りかかってきた予測不能だけれどいつかは起こることを避けることができない世界リスクの1つであるということです。この局面にぶつかったときに、国や専門家や権威者だけが対応するのではなく、個人1人ひとりが対応しなくてはならない。

★それが世界同時的に起きていることが今までにない世界リスクであるわけですが、そうなってくると子供1人ひとりも、自分なりに考えて行動するスキルやテクノロジーを実装する必要が出てきたわけです。それを世界同時的に共感できる事態なわけです。この共感はコンパッション的な共感です。自分は何も悪いことをしていないのにある時当然降りかかってくる災禍にみんなが直面したのです。そして、それを1人ひとりの力と協働する力のハイブリッドで乗り越えざるを得ないと共感しているわけです。

Photo_20200406120801

★そして、大事なことは、個人1人ひとりが対応できる力を生みだせない場合、共感力は同調抑圧力に変わるという瀬戸際に立たされるのもこういう時です。この瀬戸際の認識がクリティカルシンキングです。クリエイティブシンキングです。スペクラティブシンキングです。

★いま、世界同時的に不要不急の外出はしないという自粛要請以上のルールが発行されています。そんな中で、やはり世界同時的に子供たちが学びを続けるには、どうしたらよいか議論され共有されています。

★世界の学校で、オンライン学習と社会的距離を保ち手洗い・うがい・マスク装着などの公衆衛生学にのっとった分散登校・時差登校などハイブリッドな学習が必要とされています。

★この新しい学びの時空を通して、私たちは、子供たちと今何を考え行動するか共有すればよいのでしょうか?普段の学びをそのままこの時空に挿入すればよいというわけにはいきません。だって、いまここで最も重要な問いを引き受け思考しなければならないのです。そんなときに、思考するにはまず基礎知識が必要だ!から始めますか!?

★そんなことを思い巡らす局面に、私たちは立たされています。そんなとき、開成はサイト入学式の式辞で新校長の野水勉先生がこう語っています。

<今年は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、対面授業の開始は 5 月の連休明けが当面の予定になっていますが、開成の教育は、4 月 6 日から始まります。少なくとも、この 1 か月は対面授業ができませんが、開成の各教科の先生方が様々な工夫をして、インターネットを活用し、自宅で学習するための教材を準備しています。新しい試みも少なくないと思いますので、戸惑うこともあるかと思いますが、自分で考えながら、時には遠慮なく先生方に質問しながら、勉学に努めてください。5 月中旬には、中間試験が予定されており、自宅での学習成果が試されます。
ただ、皆さんも保護者の方も、学校の成績にあまり一喜一憂しないようにしてください。学力をもった生徒の皆さんが集まっているので、学力の差はわずかです。成績に一喜一憂せず、皆さんの好きな分野を見つけ出し、個性を伸ばしていただくことを期待します。得意な教科でも、運動でも文化活動でも構いません。保護者の方にお願いしますが、ご子息は中学生になったので、ご子息の自立を助け、個性を伸ばすよう、少し距離を置いて見守っていただくことをお願いします。「勉強しなさい」は、控えてください。>

★もちろん、オンライン学習で、ふだんの授業の内容も行うのでしょうが、この文脈は、何より自分の好きな分野を見つけ、個性を伸ばす<探究>が重要だといっている気がします。そのためには、保護者も「勉強しなさい」は言わないようにと。もちろん、これは教師にも当てはまります。

★開成の生徒は勉強できるからこんなことを言えるのだとすぐに思わずに、生徒1人ひとりの<探究>の構えを最優先できる状況を、今だからできると思ってみてはどうでしょうか。オンライン学習は、<探究>の構えを育成し、それぞれの創造的思考を開花する場であってほしいと思うのです。

★そして、その実現のためには、論理的思考も反復練習する模倣も大事です。この不測の事態としての世界リスクが目の前に現れている時間は長いようで短いかもしれません。今までと同じ学びに戻りたいという欲求があれば長いと思うでしょうが、潜在的創造的思考の開花となれば、時間は短いかもしれません。

★教科学習の後に<探究>が待っているのではなく、<探究>の構えがあって教科学習というか専門知識があれば、それはそれぞれの<探究>をサポートすることになるでしょう。

★入学式の式辞に、校長が5月連休明けに対面授業が再開され、5月中旬には中間試験があるからがんばれみたいなエールを贈るとはなんてユーモアがあるのだろうと思いきや、そのあとに、でもそこが重要ではないよと。わずかな学力の差に一喜一憂するのではなく、もっと<探究>を大切にするのだよと。その邪魔は保護者も私たちもしないようにしましょうと。

★教科学習は定期テストのスコアをとるためではなく、<探究>のサポートのための学びの機会だというのは、この不測の事態という文脈におけるオンライン学習だからこそということになるでしょう。どう考えても、いまここで中間テストのスコアの差を争うことが喫緊の課題とは思えないのは世界同時的に共感されることでしょう。

★それにしても、新校長の式辞にはちょっと驚かされます。開成が大きく変容する時を迎えたのだと感じないわけにはいきません。

<日本社会も、多様な背景をもった方々が急速に増えてきており、否応なくグローバル化の時代を迎えています。開成の生徒や卒業生の皆さんが、これらに臆することなく、外国語学能力を高め、多様性を充分に理解し、マイノリティー(社会的少数者)や弱い立場の方々を含め、相手の気持ちを思いやることに努めながら、日本や世界で様々な分野でリーダーシップを発揮して活躍していただくことを期待しています。もし、皆さんが新聞を毎日読む習慣がなかったら、一部で結構ですので、新聞(インターネットではなく)を読む習慣を身に着けてください。日本の動きだけでなく世界の動きを是非読み取ってください。>

★世界の痛みを引き受け行動するということに共感し、世界の様々な分野でリーダーシップを発揮することを期待すると表明しているのですから。

|

« ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(18)開成・麻布・武蔵の<オンライン学習>をめぐる意味。 | トップページ | ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(20)洗足、カリタス、恵泉、東洋英和、JG コンパッションのメッセージとオンライン学習 »

創造的破壊」カテゴリの記事