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2020年4月14日 (火)

ノートルダム女学院の2020年度始まる。根源に立ち還り、新しい息吹を生成する。

★いよいよ、ノートルダム女学院の2020年度がスタートしました。同校の2020年度の新体制が稼働し始めたのです。

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★同校の管理職にも新しい顔が参画します。副校長には、高谷憲弘先生、教頭に中村良平先生が新しく加わります。高谷副校長は、社会科教諭でもありますが、元広告代理店でも活躍し、最近では事業構想大学院大学で、プロジェクトデザイン学も研究していました。予測不能な時代にあるにもかかわらず、生徒1人ひとりがかけがえのない存在価値を生みだし、その価値を社会と共有して貢献していける人間力を支える新しい学びの環境を構想しています。その実現力や外部との交渉力で辣腕を振るうでしょう。

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★中村良平教頭は、英語科教諭であり、同校のグローバル教育と21世紀型教育など未来型教育のリーダーを務めてきました。留学やSTEAMの外部ネットワークなど未来型教育の広がりを先生方とつくってきました。また、PBL型授業など同校が大切にする<対話>をベースとして授業開発も進めてきました。対話と尊重と共感と行動という構えを社会実装に寄与できる人間力育成の学びの環境をさらにアップデートしていくことでしょう。

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★その同校の未来型教育の開発室の室長は、今度は霜田先生が引き継ぎます。すでに、NDナレッジカフェのマスターとして動き始めていますが、全国の中等教育学校を見渡して、霜田先生程哲学に造詣が深く、それを社会実装するテクノロジーの達人でもある教師は見当たりません。室長としてカリキュラムや授業開発においても、<スペキュラティブデザイン>という世界では大きなウネリになっているけれど、日本ではまだ浸透していない新しい哲学の成果もヒントに画期的なかつ根源的な学びの提案を生み出していくと思います。

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★すでに、4月1日11時ごろから、保健体育科の三井先生と2020年度のシラバスのデザインについて対話をしました。同校の4Cや4Vの理念やビジョンをシラバスの中にいかに反映しつつ、生徒が自己と他者を心身の状況を客観的に知り、良好な人間関係をつくり、かつ自立/自律した自己を形成していけるのか、マインドフルネスのプログラムも導入しながらPBL型授業をデザインしていきます。

★自己は、感情と生理的状況、および知性が複雑に互いにフィードバックし合って成長していきますが、そのフィードバックには人間関係のさらなるフィードバックが影響し合います。心と身体の繊細な関係は、言動にも影響します。いかにwell-beingな状況をつくりだすかは、心身と環境の自律分散協働系で成り立つのでしょう。そんな話をしながら、シラバスのデザインの対話をしていきました。

★昼食後、宗教科主任の山川先生も加わり、<対話>とは何か?<人間関係>とは何か?<自己>とは何か?などについて思考していくことになる生徒とどのようにかかわっていくか対話していきました。山川先生と三井先生は、哲学対話の授業を協働して教科横断的に既に実施しています。同校の先生方と分かち合ってもいます。

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★お二人のテーマは、予測不能な時代というのは、自分が意図してもいないのに、要求したわけでもないのに、ふりかかる重大な局面にぶつかるということを意味しているようです。実に深いですね。すなわち、それをどう受け入れ、乗り越えていくか、その自らの心と身体全体を揺さぶる極限から思考して幸せをいかに見つけていけるのかという存在問題のお話だったと思います。

★まさに新型コロナウィリスの現状は、それに近いものがあるわけです。同校では、担任の先生方は、一斉休校中、オンラインホームルームを実施していました。山川先生は、担任もになっているので、オンラインで対話しながら、リアルなスペースと違って五感が制約されているために、逆にそれを補って対話を工夫しなければならないということについても話してくれました。テクノロジーと人間存在の問題を自問自答し続けてきたことを共有してくれたのです。

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★そんな話をしていたところに、数学科主任の中村拓先生が訪れました。新任の先生方と新年度の構想の打ち合わせをしていたそうです。はいってくるなり、今ヨブ記をアプリで読んでいるなんだけれどと問いを投げかけてきました。

★ヨブ記そのものが問いの存在なので、さりげなく中村先生がその話をしたのですが、そこは宗教科の山川先生、目を輝かせたのです。ヨブ記は、欧米では根源的な問いの魂で、宗教とはまた別に「知恵文学」と呼ばれ、手をかえ品をかえ受け継がれてきたというのです。

★ゲーテの「ファウスト」というメフィストテレスの物語もある意味そのパロディー(と言ったら叱られるかもしれませんが)です。音楽作品も多くの作曲家によって創られています。中村先生も、「ダ・ヴィンチコード」の中にでてくるヨブ記の一節がきっかけになって、読んでみようと思ったということです。ダ・ヴィンチコードの物語には、黄金比、つまりフィナボッチ数列の暗号が埋め込まれていますから、なるほどです。

★山川先生は、まさにこのコロナ禍の時だからこそ読むべき書ですねと。自らは正義を貫き、忠実に真面目に生きているのに、なぜあなたは私にこんな酷い禍をおしつけてくるのですか?これは私たち一人ひとりが対峙している問いであると同時に日常生活では回避している問いです。

★それゆえ、人間の根源的な問いとして、そして解なしの問いであるがゆえに、永遠の問いとして思い巡らされてきたのでしょうと。

★山川先生は、ヨブ記とエヴァンゲリオンとか、ヨブ記とスターウォーズとか、ヨブ記とマトリックスとか、そしてヨブ記とアンパンマンとかスクランブル哲学対話を思いつかれたようです。

★というわけで、私はノートルダム女学院に立ち寄ったときは、心ひそかに、<茶室MI(多重知能)>を開き、その亭主という役割を担っているつもりなのです。

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★MIとは、私が勝手に師と仰いでいるハワード・ガードナー教授の多重知能理論です。12年前に、レッジョエミリアの教育とカトリックの関係についてメールで教えていただいただけなのですが(そのときインターネットは、本当にグローバルブレインの神経系だと実感しました)、ガードナー教授の書籍から創造性の理論、リーダー論、組織論、なんといっても創造的才能開発のプロジェクト学習(クリエイティブラーニング)について啓発を受けました。レヴィ・ストロースとの学びの関係についてもガードナー教授の「認知革命」で学びました。

★私が10年前ボランティアで行っていた低学年対象の<本と絵の教室=クリエイティブラーニング>のロゴは上記のイラストです。今はfacebookのプロフィール写真になっていますが、じっくりみていただくと、ガードナーの教授のいう8つの知性が描かれています。内省的実存知をどう表現するかは難しかったですね。ともあれ、そんなわけで、あちらことらで、モバイル<茶室MI>を開いている今日この頃です。そこで出会った先生方のアイデア創発にお役に立てれば幸せです。

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