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2020年4月15日 (水)

ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(37)工学院のオンライン思考は設計思考と野生の思考のハイブリッド!

★工学院大学附属中学校・高等学校は、同校サイトに、「工学院のオンライン」というシリーズ記事をアップし始めました。実に具体的な論考で、オンライン学習のやり方やその意味を探っている方に役立つ情報を公開しています。この情報公開・共有こそ同校の「挑戦・創造・貢献」の校訓の体現ですね。学校の公式サイトで、ここまで広く深く考えている情報発信をしているのはみたことがないですね。

Better

★学校は、どうしてもきっちりした論文や論考を研究会などで発信する以外は、サイトでは、事実報告レベルのものに終わりがちです。基本設計思考が中心なので、ブログのようにブリコラージュ的な表現、つまり「野生の思考」の表象はみたことがありません。

★校務分掌にあるように、ツリー構造という設計思考で、ブリコラージュのように横断的な野生の思考はあまり発揮されてこなかったのです。

★設計思考とは、料理のたとえでいえば、レシピ通りに材料や器具を用意して、手順に従って考えていくことです。ブリコラージュという野生の思考は、冷蔵庫にある材料や手持ちの道具などで自在に料理するちょっとしたアイデア料理を考えていくことです。

★工学院はPBL型授業を貫徹しているので、自ずとMITメディアラボのシーモア・パパート教授やレズニック教授の考え方の影響を受けています。その系譜はピアジェであり、レヴィ・ストロースです。ピアジェは経験から獲得した知識を未知の経験に適用していった場合、ズレが生じるから、その都度修正していく学びの発達段階を想定しています。これは、初めに設計しているわけではないですよね。

★レヴィ・ストロースは未開人を文化人類学的に考察して、彼らのサバイブ思考はブリコラージュで、そのような構えを「野生の思考」と呼びました。シーモア・パパートは、3R(読み・書き・算盤)から3X(探究・議論・発表)へという学びの転換を仕掛けたことで有名ですが、プログラミングも実はブリコラージュ的な発想が必要だと考えていました。

★いわば、これからは、デジタル・ワイルド・シンキング(DWT)が必要だというのでしょう。教授は、DWTという言葉を使ってはいないでしょうが、今回の新型コロナウィルスは、不要不急の外出自粛という状況をもたらした結果、学校にPBLの重要性やDWTを覚醒させていることになっているかもしれません。

★少なくとも工学院の教師も生徒もDWTが覚醒しています。

★ZOOMとTeamsとGoogle Classroomとedmodoなどのアプリやプラットフォームを使い分けて、あるいは自在に組み合わせてオンライン学習をデザインして実行しているのです。設計思考がなければシステムは動きませんが、多様な道具を組み合わせて活用するには野生の思考が必要です。両方の思考を変幻自在に使うハイブリッド思考(=設計思考×野生の思考)が動いているのです。

★この1週間は、オンライン環境に慣れる週間だと言いながら、この現状はなんてデフォルト(既定)値が高いのでしょう。

★ZOOMでホームルームを開き、互いの存在を共有する。まさに知育・徳育・体育の総合力をシェアしていくのです。そして担任の先生は空いたスケジュールで、面談を実施していく。全体の共有と個別の共有という複眼思考は設計思考だけでは機能しないでしょうね。共感的コミュニケーションはやはりブリコラージュの共同作業から生まれてくるのでしょう。

★そして、Google Classroomなどで、Q&Aを行っていく。選択肢の問題も記述の問題もスプレッドシートで一発集計しています。選択肢の問題はグラフで分布がすぐに出るから、ハーバード大学のマズール教授の実践しているPILが出来てしまします。

★論述・記述もできるし、集計も一発。それぞれの生徒がどんなことを感じ、考えているのか共有できるし、対話もできる。Google ClassroomのWordの共有機能を使えば、チームごと共同編集ができてしまう。日ごろからやっているので、すぐにできますが、オンライン学習では、この共同作業や共同編集が多くなるので、共感的コミュニケションが立ち上がるのが互いに実感できます。というか見える化されてしまいます。

★この機能は保健体育や家庭科の授業でも力を発揮しているというのも凄い情報です。というのも、この新型コロナウィルスに感染しないようにするためのボディーケアとメンタルケアを免疫学や公衆衛生学、栄養学などの観点からどう考えるのかどう実践するのか、今一番必要なサバイブ能力を鍛える学びを行っているのです。しかも双方向でかつ記述も交えながら。

★「オンラインに慣れる」のが今週の目的で、やりながら教師も生徒もbetterな使い方などを求めて試行錯誤していくのだと同校サイトには書かれています。すでに十分なデフォルト値なのに、このデジタルな野生の思考(DWT)はどこまで拡張していくのでしょう。「工学院のオンライン」記事はおススメです!

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