感染症に対応する都市機能の変容能力(9)佐野先生と金井先生との対話。なぜHTHか?なぜピーター・センゲなのか?
★佐野先生と金井先生は、共感的コミュニケーションが生んだ魂の<運命的な体験>をしたわけですから、ことあるたびに離れていても集まっては対話を続けています。2018年夏も、そうでした。久々に会おうということになって、かえつ有明に訪れたら、広報の内山先生と新しく就任した社会科の古賀先生も参加していました。
★<運命的な体験>の持続可能性とでもいいましょうか、それを広報活動の中にも継承し、受験生や保護者にも共感してもらえるとよいねという発想だったと思います。そして、古賀先生は実は哲学対話の実践者でもあります。哲学カフェ的な実践を東京や京都でも行っています。外部とのネットワークを内側にもつなぎます。<共感的コミュニケーション>に哲学対話的な手法も溶け込むチャンスが現れたのです。
★まさしく響きの連鎖が、起こっていましたし、それが今も続いています。佐野先生が亭主となって開催する対話は、チェックインから始まります。オーケストラが演奏する時に、チューニングという音合わせをしますが、それに似ています。
★音のピッチは、湿度や温度、会場の空間設計、音響の仕掛けなど環境に左右されます。ふだんから気を付けておいても、いまここで微調整は必要です。
★この繊細な微調整への配慮・気遣い・配視といった調整を無視するのが抑圧的コミュニケーションです。しかし、どんなに親しくても関係とは繊細なものです。そこを大切にするよというサインがチェックインです。
★対話はソロもあります。内山先生は、広報の立場から、かえつ有明の生徒募集の現状を可視化しながら、そのグラフの紆余曲折について説明していきます。
★当然紆余曲折の説明は仮説ばかりです。推理ばかりです。科学的エビデンスで証明することは、小規模な私立学校の広報チームでできるはずがありません。能力の問題ではなく、人材の数と資金の問題です。
★ですから、数字の意味は、多くの人との対話によって感性の集合知をつくりながら、物語を編んでいくのです。みんなが幸せになれる物語を学校が展開出来たら、そこには当然受験生はあつまります。だからといって、ディズニーランドのようにするのか?わかりやすい説明会にするのか?そもそもおもてなしの意義は?わかりやすさの意味は?など当たり前だと思われている概念を一つひとつ対話によってリファインしていきます。まさに哲学的対話ではないですか。
★本質に向かって対話が深まっていくと、メンバーのピッチも高鳴ります。真剣な眼差しと笑顔が交互にこぼれます。
★対話が進んでいくうちに、わかりやすさとは表面的な記号をつくることではなく、身に染みる体験こそがわかりやすさだと深まっていきます。広報活動においても共感的コミュニケーションという<運命的な体験>を共有できる場ができることに気づいていきます。
★そして、かえつ有明のサイエンス科やプロジェクト科のエッセンスであれば、どんな人にも共有してもらえるのはないかと。探究ベースのワークショップ体験を説明会に入れ込もうということになります。ますます、思考力入試の体験講座などのワークショップとしてのクオリティが高くなります。そして、そのとき、佐野先生にあるアイデアの種が生まれたのですが、種は大事に育てないと開花へ向かわないので、もう少し時を待つことにしました。その時が、2020年かもしれないし、2021年かもしれないということです!
★そのときは、まだ始まったばかりの中1中2のオールアクティブラーニングの授業が生徒の内なる魂が燃えるようなクオリティになるように、授業のあくなき研究が続いてたからです。
★そして、チェックアウト。対話を通して気づいたことや気持ち、想いを共有する時間。余韻を大事にすることで、信頼と響きの元を消さないように大切にしまいます。
★このような佐野先生と金井先生の欧米流儀ばかりではなく、まるで茶室での対話のような東洋的な思想も合間った対話空間は、外部にも響き、いろいろなところでコラボレーションしていくことになります。
★そんなときに、トニー・ワグナーとテッド・デンタースミスが創設に尽力したHTH(ハイテックハイスクール)のドキュメンタリ映画が話題になります。シリコンアバレーに行って学ぶというより、遠く離れていてもHTHの響きと共鳴しているのに気づき、誘われるようにして、二人は渡米したのです。
★目の前に広がったのは、二人がベースにしてきたコンパッションという共感的コミュニケーションが、前面に広がっている教育の展開でした。かえつ有明では、そうはいっても教科が前面で、共感的コミュケーションが土台となってアクティブラーニングを展開していたのですが、HTHでは逆でした。
★自分たちのやっていることの手ごたえを感じたと同時に、前面に共感的コミュニケーションを出して教育を展開するのはいかにしたら可能かという響きが内側で高鳴ったそうです。
★響きの連鎖は続きます。そうこうしているちに、U理論のネットワークとも結びつき、外部でのワークショップも多数行うようになっていきます。そこでは、共感的コミュニケーション全面展開です。そして、ダライラマの系譜のワークショップとジョイントして、いよいよ<魂のワークショップ>は、大きくなります。
★響きの連鎖は魂の連鎖へと飛躍が起こります。
★ピーター・センゲは、イノベーションとか革新とかは、実は国の支援や企業の資金提供によって生まれるのではないと言っています。ではどうやって?次のように語ります。
Instead, countless local networks developed quietly, thanks to the efforts of small groups of committed and courageous individuals who set out to find others with similar aspirations. Many basic innovations start out in exactly this seemingly disconnected manner. Because the myriad changes required for innovation can never be predicted in advance and can seem impossibly daunting, they are often catalyzed by small numbers of people who can both see larger patterns and focus on small steps that build momentum.
★なのだと。すなわち、国や大企業の資金提供なんかではなく、同じ願いを共感できる他の人を見つけるために着手した献身的で勇気ある個人の小さなグループの努力のおかげなのだと。無数のローカルネットワークが静かな情熱で進行するのだと。 多くの革新の基礎は、初めから結びついているのではない。無理やり結びつけるのではない。それゆえ、イノベーションに必要な無数の変化は、事前に予測することはできず、信じられないほど気が遠くなるように見える。しかし、より大きくなる新しい流れのパターンを見て、おじけるのではなく、勢いが響き合う小さなステップ群を見出し、その結合にに集中できる少数の人々によって触媒されるのだと。
★佐野先生と金井先生は、この触媒であるピーター・センゲの響きに自分たちも共感することを、彼がダライ・ラマとやはり協働していることを知り確信をもったようです。そこで今度はピータ・センゲに会って対話しようと渡米したわけです。
★それが2019年の出来事です。
★そして、昨日お会いしたのです。2020年、自分たちも予期していかったさらならなる革新が起こるのでないかというのです。この革新の響きは、一見かえつ有明のステップのように見えます。いやその通りなのですが、そのステップの向こうには、大きなウネリという新たな革新のパターンが見えるではありませんか。
★というわけで、佐野先生と金井先生との対話は、4月以降も続きます。リアルな対話やサイバー上の対話、それから脳内対話などなど。また報告します。
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