ノートルダム女学院で生まれている<新しい学びの経験>(3)NDナレッジ・カフェ 厨房でレシピ<対話>! 基礎学力とか基礎力とかをカントやガロアで語り合う。高次元の基礎学力の話だった!
★第1回めの<NDナレッジカフェ>オープン終了後、<NDナレッジカフェ>厨房に、マスター霜田先生とシェフ中村拓先生が集まってきました。リフレクションと次回のメニューやレシピについて<対話>が盛り上がりました。
★今回のナレッジカフェでは、HTHのソフトスキルやPBLの効果、テストも教科書もないなどについてそのエッセンスやコンセプトについて気づきが多かったのですが、そんな中で、中村拓先生があえて、最後に「私自身は基礎力を大切にしたい」と語りました。
★これに、マスター霜田先生は、喜び、こう言いました。「ここから深い気づきが生まれる。みな知識や基礎学力については一方で気がかり。そんなときに、中村先生が考える基礎力とか基礎学力とか共有できるメニューがあるとすばらしいですよね。ディーン先生もナレッジとは何か?議論したいと言っていたし」と。
★すると、中村拓先生も、「それを議論するだけではなく、ワークショップレシピを考えますよ。たとえば、こんなのはどうでしょう」とすぐに具体的なレシピがでてきました。
★二人の先生が語る基礎学力とか基礎力というのは、たんなる暗記知識の話でないことは、おおよそ見当がつくと思います。それが何かは、4月の<NDナレッジカフェ>で食すので、そのときにまたご報告します。
★ただ、あまりにおもしろかったのは、その基礎学力とか基礎力の話は、経験と知識の関係から始まったのでした。中村拓先生の数学探究のプログラムの一環として、「数学資料集」をつくって、編集して本を出版しようといういうのあがります。生徒は自分の興味と関心のある分野や数学者らについて調べてまとめていくのですが、京都大学が近いので、数学史の資料館を訪れて、原文にあたったり、研究員にインタビューしたりしています。
★中村先生は、たとえば、ガロアを調べているチームは、方程式と群の関係を調べています。どこまでわかっているか、今はそれはあまり問題ではないのです。ガロアがどんな時代に生まれたのか、それまでの実用的な数学や秘儀としての道具だった世界から現代数学が生まれてくる局面の中に入ってい貴重な経験をしています。
★その経験から、基礎力が心身からあふれでてくるのです。
★そう中村先生が語ると、すぐに霜田先生が、「ガロアの生きた時代は、カントは長生きしたから、かぶっているよね。認識論のコペルニクス的転回が起きたから、その影響を受けているかもしれない。経験から即知識を得るのではなく、その間に基礎力みたいなカテゴリーが介在する。もともと心身に埋め込まれたカテゴリーだってあるのですから、それに気づくということかもしれませんね」と。
★すると、中村先生は「それは、たしかに、そうですね。今日のカフェでも話題に出ていていた、HTHで、見えるものより見えないものを表現しようとするPBLというのがありましたが、そこは見えないからないのではなく、数学的には、高次元だから三次元の世界からは見えないだけであるということですよね。」
★「えっ、なんかマルクス・ガブリエル的でおもしろいですね!」と霜田先生。
★そして、「社会科でも経験は大事だけれど、数学とどこが違うのだろう」とその違いについて話していくうちに、ある基礎力に関する共通のイメージに収束していきました。その内容については、次回<NDナレッジカフェ>でということになりますが、中村先生は、とにかく経験が大事で、3次元の立体を2次元に転換して、切り口を見つける経験を徹底しています。すると<基礎力>が心身にあふれてきます。これは一生もので、すぐに忘れてしまう暗記知識とは別次元の話ですと、その経験を生徒と行っている図形群を見せてくれました。
★「数カ月前に、私のPBL授業のリサーチに本間さんが来てくれた時、立体図形を組み立てたり、解体したり、組み替えたりしていたのは、ここに到る前の段階の経験だったのです」と中村先生。「おおーっ、今繋がりました!」と感動する私。
★そして、今年の京大の数学の問題を中村先生が解いたプロセスをいっしょにみながら「このベクトルの問題も、図形のイメージは大切ですが、この発想はじっくり経験を積んで基礎力を身につけていた生徒は解けてしまうんです」と。中村拓先生の前職の女子校が、東大30名前後合格させてしまう学校だったので、説得力があります。その学校も暗記力ではないのですね。もっとも中村先生が異端だったのかもしれませんが。
★ますます、その基礎力とはいかなるものか、どうやったら身に着くのか、そして盛り上がった対話は、すべての生徒が身に着けることができるのかという問いでした。そこらへんも次回の<NDナレッジカフェ>のレシピに入れるそうです。
★<NDナレッジカフェ>の厨房では、霜田先生と中村拓先生の哲学史と数学史のスクランブル対話になり、またまた夜も更けてしまう勢いでした。デカルト座標は、今では座標軸として当たり前だけれど、デカルトが創造した。それはなぜだったのだろう。ガロアが群の発想をしたのはなぜだろう。今でも解決がついていないニュートンとライプニッツの微積の式の表記。時代が社会課題を解決する時に、そのような発想を必要としたから創造されたわけで、生徒には数学だって創造する分野はまだまだあるという体験をしてもらいたいと。目が覚めるような知的好奇心旺盛な対話になっていったのです。
★それにしても、先生方は、タブレットに授業内容や研究内容の痕跡を保存し、自身のモニタリングやポートフォリオで活用できるようにしています。対話の次元が毎回アップデートされているのが、実感できるというか見える化されているというか、実に気づきの多い瞬間瞬間です。生徒も同じような学び方を行っていくでしょうから、自己変容の実感を抱けますね。
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