感染症に対応する都市機能の変容能力(17)首都圏模試センター「八王子実践」に教育のターニングポイントを発見する。
★首都圏模試センターの取締役・教育研究所所長北一成氏は、同センターサイトに「八王子実践中の愉快なプレゼンテーション(自己表現&英語&プログラミング)入試」という記事を掲載。
(写真は、首都圏模試センターサイトから)
★同記事によると、<八王子実践中学校〈東京・八王子市。共学校〉では、2/2(日)AMに「自己表現入試」と「英語入試」、そして今春2020年入試から新設された「プログラミング入試」が行われました。昨年2019年入試から、あえて従来からの「4科・2科入試」を一切廃止し、「適性検査型入試」、「自己表現(プレゼン型)入試」、「英語入試」の3種類の新タイプ入試だけを実施したユニークな私立中です>というのです。そして、今年、4つめの新タイプ入試「プログラミング入試」が加わったわけです。
★このことについて、北氏は、こう指摘します。<この”常識外の“決断と実施によって、八王子実践中学校は昨年度、同中学校を開校して以来最多の、20名の新入生を迎え入れることになりました。この数年、私立中学受験生が減りつつあるといわれてきた八王子エリアでは、従来の中学受験における人気校とは違った意味で、最も注目される存在になっています。>
★北氏は、“常識外の決断”の意味するものの背景に、日本の教育のターニングポイントをしっかり見定めているのでしょう。東京の中学入試にチャンレンジする率は20%を超えるのですが、八王子エリアは、10%いきません。東京圏内で地域格差があります。しかし、その格差をひっくり返す動きになっているという事実を見ているのです。
★どういうことかというと、北氏は別の個所でこうも語っています。<これら4種類の新タイプ入試は、いまなお中学入試で年々増加しつつある「午後入試」ではなく、いずれも午前の時間帯に行われる点と、第4回入試が2月15日という、年々入試日の前倒し傾向が進む首都圏の中学入試では最も遅い日程で実施される点も、従来の”中学入試の常識“を覆しているという意味で注目されます。この2月中旬の入試日程ならば、都内や神奈川の公立中高一貫校を受験し、その合格発表後に私立中の入試をしたいと考えた小学生でも、慌てずに受験することが可能です。>
★ここでは、<中学入試の常識の転倒>というのが4科2科入試の午後入試の設定とは違うということを示唆しています。たしかに、4科2科入試中心の学校は午後入試を設定してアグレッシブに入試改革を行っています。しかし、これは<中学入試の常識>の範囲内の話です。中学入試の新市場を創出しているわけではありません。知識・理解というA軸思考ベースの学習観という常識市場ということです。
★今年の首都圏中学入試の受験生の数は、首都圏模試センターによると49,400名で、2,200名増です。しかし、これは、4科2科入試の午後入試が増えたからではありません。<中学入試の常識>の範囲を超えた新タイプ入試が増えた分を意味します。
★着実に新タイプ入試は新市場を形成しているのですが、そのことは日本の教育のターニングポイントを意味しているとも言えます。
★このタイミングで北氏が渾身をこめた記事を掲載したというのは、さらにその意味の重さを感じないわけにはいきません。というのも、今、新型コロナウィルスの感染拡大防止の様々な取り組みが行われていますが、それはまさに予想不能な時代突入の経験です。各学校・各塾などが、一斉休校に対応するべく行っているオンライン授業は、まさに八王子実践が4科2科入試を排して、4つの新タイプ入試を実施したのと呼応しているのです。
★特に学校は、知識・理解のA軸思考だけではなく、論理的にあるいは創造的に思考するB軸思考やC軸思考を活用する問いをオンライン上で投げかけています。生徒がまさに見舞われているこの事態はいかなることか、多角的なアプローチで考える問いを投げかけているし、そのような事態において自分はどう感じ、どう生きるのか思索する時間をとっています。つまり、探究の時間ですね。適性検査型入試がここに結びついていきます。
★また、世界中がパンデミックにならないように協力し始めながらも、分断の危うさも見え隠れする矛盾した社会現象も起きています。パンデミックよりも前にインフォデミックが起きているし、この機に乗じてワイマールの悪夢を想起させるような法制度をつくろうとしているのではないかという政権の動きも見られます。
★英語入試は、カリキュラムポリシーにおけるグローバル教育につながっていますから、まさにこの地球規模の協働とリスクという矛盾をどうするか思索し、世界の仲間と対話していく準備につながっているのです。
★自己プレゼンテーション入試は、自分の才能を思う存分発揮する入試ですが、インバウンド頼み、海外への工場移転などの試みが、今回のようにうまくいかなくなったときに、自前のソフトパワーで乗り切らなければなりません。北海道のホテルは、道民への誘いに切り替えています。産業界も生産拠点を日本に戻す動きをみせています。今ここで自分の才能が役立つ瞬間を迎えていますが、このような才能開発の教育を八王子実践はしているのです。
★そしてプログラミング入試は、まさにオンライン授業でICTの多様な活用が今も刻刻と創意工夫されています。全国でICTの教育導入を無視することが出来なくなる転換期を迎えたわけですが、ICT教育についても八王子実践は先行していたわけです。
★このような八王子実践の常識破りの動きは、実は高校の教育革新の成功と連動しています。高校の募集は大成功しているわけですが、その成功要因に、特進コースの高1・高2で行っている探究学習の開発実施があります。
★すでに、9000人も応募のあるマイプロジェクトアワード全国Summitの決勝に出場する生徒が現れるほどの成果をあげています。この探究学習は、カンザキメソッドの神崎史彦先生や東大大学院博士で研究している金井達亮先生などの外部ネットワークと連携もしています。
★神崎先生は、AO入試・探究学習の第一人者で、全国の多くの私立学校のアドバイザーです。八王子実践の隣の工学院でもアドバイザーを担っています。すでに東京医科歯科、電通大、海外大学などAO入試やエッセイライティングという高次思考を要する大学に進んでいる生徒を輩出しています。
★金井先生は、かえつ有明復活をプロジェクト型の教育で成し遂げ、今は多くの学校の教師のマインドフルネスな対話型授業の研修や大学の教師の授業研修も頼まれています。二人とも、生徒の自己変容とプログラムの相乗効果をいか生成していくか研究しているという点で共通しています。
★この探究学習の動きこそ、未来を創る教育としてのディプロマポリシーの一環です。
★こうしてみると、八王子実践は新タイプ入試―探究的な学習をコアとするカリキュラム―探究ベースのディプロマポリシーとして6年間一貫して、すばらしい今までにない教育を実践していると言えましょう。
★北氏は、こう語ります。<ちょうど教育の転機ともいえる大きな変化の節目に、従来の中学入試の常識を破り、中高一貫教育と中学受験に関心をもつ、すべての意欲ある小学生と保護者に門戸を開いた八王子実践中は、新たな“希望の私学”といえるでしょう。>
★まさに然りです。こうして、八王子エリアの都市の自己変容にも影響を与えていくことは予想するに難くありません。
| 固定リンク
« 感染症に対応する都市機能の変容能力(16)この1週間のホンマノオト21のアクセスから見える新しい動き。新しい見識の顕在化か。 | トップページ | 感染症に対応する都市機能の変容能力(18)聖パウロ学園 生徒の才能を開花する学びとサバイバルラーニングの提供 »
「創造的対話」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(13)東京私立中高の理数教育の教科横断性 実に深い(2025.02.17)
- 2026中学入試準備(07)東京都 本来の人間とは何かをどうとらえるか議論が進み始めている(2025.02.12)
- 2025年中学入試動向(15)日大豊山女子 新タイプ入試60%占める ルーブリックも公開(2024.11.25)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
最近のコメント