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2020年3月19日 (木)

首都圏模試「思考コード」2021(10)A軸思考(知識・理解)とB軸(適用・論理)思考の関係性を考える①見えるデータと見えない物語の重ね合わせ。

★2020年の武蔵の社会の問題で、A軸思考とB軸思考がどう関係しているか眺めてみましょう。結論を先取りすれば、知識を憶えていれば、論理的に思考することができるというのはどうやら違います。また、思考力があれば知識はあとからついてくるという考え方もどうやら違います。

★知識と思考は、知識→思考とか思考→知識とか因果関係で捉えるのではなく、知識と思考は同時に生成されてきます。因果関係で捉えるのではなく、重ね合わせや相関関係で捉える方が生徒の頭の使い方に近いと思います。ここに最近接発達領域が存在します。

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★たとえば、この第二次世界大戦以降の水害被害の状況に関連するグラフから何が読み取れるかという問いをどう考えますか?グラフから読み取るとしたら、縦軸と横軸が何を表しているか<具体的>な内容を読み取ります。これはA1思考でいけますね。

★被害総額の推移を20世紀と21世紀と<比較>します。死者数についても同様に<比較>します。これもA1思考でいけます。

★さらに、被害総額と死者数の関係を同じように<比較>します。これもA1思考で理解していけるでしょう。

★しかし、これらを箇条書きで書いていくだけでは、変化の<説明>になりません。それだけなら、グラフの上下の推移を<置換>えただけです。もちろん、きちんと<置換>えることは大事です。これができないと、間違った<物語>知識を動員していしまうからです。

★ともあれ、グラフの動きをとらえたら、どうしてそのように変化したのか根拠を<説明>する必要があります。根拠を書けと書いていないので、本当は、どこまで書く必要があるかどうかは、?なのですが、武蔵の過去問や同校が出している解答を研究したら、武蔵では<説明>せよというのは、そこまで求めるのだということがわかります。

★小学生が自分ひとりで受験勉強ができないのは、こういう暗黙の了解というものを塾が分析し尽しているからですね。だから、公立の適性検査はこのような問いの場合、どこまで書くのか条件を明示します。しかし、それがかえって、複雑で、問いを考えるのか、問いの条件を理解するのか本末転倒ということもあります。そして、塾に通えない生徒のためにと思った丁寧さが、かえって煩雑で、結局公立中高一貫校専門の塾やコースが創られてしまうというパラドクスを生みだしてしまうのです。

★もし、本気で学校がそこを考えるなら、この手の問いは口頭試問で行えばよいのです。新タイプ入試が優れているところは実はそこですね。

★それはさておき、1960年くらい前とそれ以降の日本の政治経済の状況の変化、その行政と経済の動きが日本の風土や地理的条件をどう変えていったか、これら全体が絡み合う<物語>知識を生み出す必要があるわけです。

★そんな<物語>は、そもそも受験生にとっては生まれる前の話で、直接、経験はできません。見えないわけです。見えないけれど、そこに自然と社会と人間の諸関係はたしかにあったわけです。

★それぞれ断片的な要素としての知識を、グラフの変化や差異というグラフとして見える事実に結び付けていくと、見たことはないけれど、<物語>知識に変容することが生まれます。

★グラフとしての見える事実の諸要素の背景にファイリング知識が条件反射的にぶらさげるだけでは、この問題は<説明>したことにならにでしょう。

★1960年までは、被害総額と死者の数の相関があります。そこにはどんな凄惨な物語があったのか?日本の地理的条件とそこに直接住んでいて、治水のインフラ整備ができていないとどうなるのかはイメージすれば、そこに自ずと物語は生成されます。

★そして、1960年以降の高度経済成長とは日本をどう変えたのか?それは、都市化ですね。インフラ整備が行き届いたので、死者数は少なく抑えられますが、被害の後インフラを修復工事する物語が自ずと生成されてくるでしょう。

★かくして、A1は思考が、その関連性を組み立てるB1思考に移行し、そこに物語が生成されていく。それを論理的に記述していく。物語は複雑な要素が絡み合ていますからB2思考が働きます。

★このようにA軸思考とB軸思考は、どちらが原因でどちらが結果というわけではないのです。Aから入りBに進むけれど、またAに戻りとループになっているわけです。このループを走る速度は脳神経学的には計算できるかもしれませんが、おそらく光速よりも速いでしょう。光速よりはやいということはあるのでしょうか。

★それはわかりませんが、そのぐらい速いので、因果関係を問う議論はあまり意味がないのではないでしょうか。<物語知識><物語編集><物語創造>というのが、目に見える事実と目に見えない事実を結びつけ、その事実と同時に感情や意見や思想が生成される思考の働きがあります。

★それがなぜあるのかは、なぜ人間が存在するのかという問いと同じくらい永遠の問題ですね。

★いずれにしても、この<物語>は、リベラルアーツの中で、ミメーシスとかメタファーとかレトリックとか修辞学とかいわれてきたもので、2000年以上連綿と続く思考する人間の存在を規定する基盤です。コンピューターサイエンスでリベラルアーツが希求されるのは、当然ですね。サイボーグではなく、人間であり続けるためには。。。

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