首都圏模試「思考コード」2021(6)A軸(知識・理解)思考を考える①
★一般に、受験勉強をしていると、「知識・理解」というA軸の領域における生徒の学びは、あまり思考活動とはみなされません。特に、漢字の読み書きや語句問題に関しては、暗記作業だと思われがちです。しかしながら、ここにこそ論理的思考や創造的思考が働いています。
【2020年慶応中等部国語】
★たとえば、今年の慶応中等部の漢字の書き取り問題を見てみましょう。「垂らす」「他愛」「白磁」「深刻」「裁く」以外は、入試によく出る漢字として自動的に<想起>するようにトレーニングされていると思います。
★「垂らす」「裁く」なども練習はしていますが、小学生は、ふだん生活のなかで訓読みとして活用する場面は多くないでしょうから、自動的に<想起>はしません。普段使わないものは、丸暗記をしても忘却しやすいですね。
★だから、憶える時に、つまり<格納>する時に、文字をアーカイブとして丸暗記するだけではなく、「意味」を調べたりする必要があります。
★「他愛」「白磁」などは、小学生はふだん活用しないでしょう。「読書」が大事というのは、「物語」や「体験」という文脈を加えて<格納>すれば、<想起>しやすいということはあるでしょう。
★「深刻」も「物語」の文脈で補うことはできるでしょうが、これは、「表情」と「深刻」の関係に「彫刻」の「表情」を重ね合わせると、「比喩」的な関係を理解することができます。物語や文脈の中でも「転用」という修辞学(レトリック)的視点で<格納>しておくということです。転用とか修辞学というのは難しそうですが、要するに比喩ですね。
★ただし、比喩も「直喩」「隠喩」「換喩」「提喩」の違いがあることくらいは思考しておく必要はあります。もちろん、「換喩」とか「提喩」などというコt場を憶える必要はありません。ベン図を使って思考する作業をしておくといよいでしょう。
★かくして、漢字の読み書きという、最も暗記作業だと思われている作業も、「文字」「意味」「文脈」「転用」というチャンネルで<格納>しておくと、暗記知識(ファイリング知識)として<想起>しにくくても、他のチャンネルで<想起>しやすくなるということはあります。
★「知識・理解」というA軸思考の領域も、<格納>したり<想起>したりするときは、思考作用が稼働しているのです。この多様なチャンネルを思考する作業の内、「ファイリング知識」として条件反射的に知識を活用する部分だけデフォルメされて説明されているため、まずは知識を暗記することが必要だという俗説が固定化されてしまっているのですね。
★知識を<格納><想起>するときに、<順序づけ>というチャンネルもあります。言語活動では、「語用」と言われる<習慣的>な表現になっているチャンネルがあります。これについても、今年の慶応中等部の語句問題で考えてみましょう。
★そうそう、どこがA軸思考で、論理的思考や創造的思考が稼働しているのかというと、たとえば、格納したり想起したりしたりするときに、文脈を考えたりする局面などで論理的思考は必要です。また転用や文字は、意味だけではなく形や音などのイマジネーションを活用します。創造的思考が使われていることは説明するまでもないと思います。(つづく)
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