ノートルダム女学院の歴史 革命と戦争の狭間で震える子供たちを救う187年。そしてまた歴史は続く。
★187年前、マザーテレジア・ゲルハルティンガーは、近代国家誕生の時代にノートルダム教育修道女会を設立しました。近代国家誕生以来の歴史とは、産業革命と市民革命、そして戦争という混迷の連続の歴史でもありました。その狭間で心身を震わせ、途方に暮れながら、必死に生きる子供たち。
★マザーテレジア・ゲルハルティンガーはドイツ生まれです。そしてその修道会もドイツが発祥地です。プロテスタンティズムの王国ドイツで、カトリックというのはマイノリティーです。そしてその後米国で根づく修道会もマイノリティです。特に第二次世界大戦のときは、ドイツ出身のノートルダム教育修道女会が、どれほど苦労したか、想像を絶する困苦だったのです。
★その修道会が、戦後京都に舞い降りて今日を迎えているのです。マザーテレジア・ゲルハルティンガーは幼少期はナポレオン戦争の真っ最中でした。目の前で自分が住んでいる都市が戦火で焼け崩れます。自分の通っていた学校も閉鎖されます。路頭に迷う子供たち。自分が学校を創り教育で世界を変えようとプロジェクトチームノートルダム教育修道女会を設立したのです。
★マリアテレジアのプロジェクトの原体験から今日までの歴史について語りながら、ノートルダム女学院の理事長シスターモーリー和田は、マリアテレジアの当時の精神に想いを馳せ、「そう私たちの教育はプロジェクトでしたね。当時のドイツのカントやヘーゲルの思想は、マリアテレジアも当然知っていたでしょう。デューイがヘーゲルを換骨奪胎してプラグマティックなPBLをつくったように、マリアテレジアも、ヘーゲルを読み替えて何よりプラグマティックに動いたと思います。建学の精神に「対話」があるのはそういうわけです」と。
★「おもしろいですね。今、ドイツの新世代の気鋭の哲学者マルクス・ガブリエル、そう大天使のガブリエルのガブリエルですが、彼も、ヘーゲルを超えようとしています。そのとき精神は英語のマインドではとらえられなくなるだろうと言うんですよ」と応えると、シスターは、「マリアテレジアは、精神をスプリットと言っているわね。マインドではないわね」と、シスターラウンジまで一緒に行きましょうと理事長室を素早く出たのです。
★「もちろん、スプリットは翻訳です。ただ、マリアテレジアの想いに沿った翻訳をしているはずです。原典を見にいきましょう」と歩きながら話しかけてくれました。
★そして、「この原典は、ここに1冊しかないわ。ショーウィンドのカギをあけますからお待ち下さい」と言って、扉を開き、手渡してくれました。すぐに「ガイスト」というドイツ語が目に入りました。
★「マルクス・ガブリエルも、ガイストだと言っていました。ヘーゲルの精神現象学の精神はガイストです。ドイツ語のガイストは少し意味が違うようですね」と答えると、シスターは、「マリアテレジアの言葉や行いは、今とは違ってかなり霊性が高いから、あまり全面に押し出して語って来なかったのですが、歴史を振りかえると、今こそその時だということですね。私たちは、米国からやってきた4人のシスターにマザーテレジアのガイストを頂きました。それがゆえに、今度は私たちがネパールでノートルダム教育修道女会の学校を創りましたが、まだまだ日本でもやることがあるようだわね」と。
★世界の痛みを一身に背負い、にもかかわらず、だからこそ救いの道を子供たちと共に歩いてきたマリアテレジア・ゲルハルティンガーとその後継者の多くの修道女。京都のノートルダム女学院のシスターももちろん、そうであり、学校の先生方も生徒たちもそのファミリーです。対話とコンパッション。これがベースのPBL授業が再び、湧き出ようとしています。デューイともマルクス・ガブリエルとも親和性がありながらも、独自のノートルダムガイストに基づく教育。
★そんなことを思いながら、シスターモーリー和田とシスターラウンジの展示パネルを見渡していたところ、マザーテレジアと目があいました。そこには、<Transuformimg>というキーワードがありました。世界を変える教育。まさにこれだと感嘆したことは言うまでもありません。
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