首都圏模試「思考コード」2021(14)A軸思考(知識・理解)とB軸(適用・論理)思考とC軸思考(批判・創造)の関係性を考える③常識とは何か?フェリスと桜蔭と東大と。
★C軸思考、とくにC3を象徴する問いを毎年出題するのはフェリス女学院。今年も「あなたなが変えたいと思っている現代の常識を一つ挙げ、その常識を捨てたときどのような変化が起こると思うか、あなたの考えを200字以内で書きなさい。」という問題が出題されました。もちろん、いきなりではなく、文章を読んで、常識に対する見方や考え方について理解したうえで、自分の考えを書いていく論述型ですから、A軸思考、B軸思考を重ね合わせながら考えていくC軸思考の問題です。
★今年の桜蔭も「―線部「コペルニクス的転回」とはどういうことですか。この表現で筆者が言おうとしていることを具体的に説明しなさい。」という問題を出題しています。傍線部について筆者の考えを具体的にまとめるある意味要約問題です。B3レベルのB軸思考ですが、コペルニクス的転回は、常識を変えることですから、あなたならどんなコペルニクス的転回を考えますかとなると、フェリスと同じ問題になりますね。要するに、C軸思考は、A軸思考とB軸思考が重なり合っていることが文章×C軸問題で見える化されているわけです。
★そして、東大の問題。昨年の文Ⅲの帰国生入試で、「「常識がある」とはどういうことか。」という問題が出題されました。この問題は、文章は提示されていません。しかし、この問題を解く準備として、受験生は、様々な直接的&間接的経験をし、A軸思考として読解問題を考えB軸思考として小論文を行ってきたわけです。小論文の場合は、C軸思考のものもありますが、たいていは2つのシナリオを推理して選択していくという形のものが多いわけです。そのシナリオはたいていの場合、既存のものです。
★しかし、この常識をどうとらえるかという問題は、シナリオそのものを脱構築する問題で、本格的なC軸思考です。こうして並べてみてみると、C軸思考がA軸思考やB軸思考を重ね合わせていることが了解できるのと同時に、C3思考のC3レベルのさらに質の違いがあることがわかります。
★「私なら」どうするのかという自分軸を問うものは、なるほどC3なのですが、そこで終わることはないのです。そう考えている自分軸は果たしてそれでよいのかと捉えるのがIBのTOK的なC3の問いになります。
★「私なら」どうするのか?→「私たち」ならどうするのか?→「世界」はそれでよいのか?→「世界」をどうとらえて、そう考えるのか?・・・・無限に問いは続きます。メタ認知そのものを脱メタ認知してしまう思考がC軸思考のC3レベルなのでしょう。もちろん、中学入試の段階では、「私なら」どうする?で十分です。あとは入学後、脱メタ認知までの探究のプログラムがその学校にあるかですね。
★つまり、共感関係の中で自己変容していく学びのプログラムの有無が大切になってきます。A軸思考が優秀でも頑な環境順応型では、社会で通用しないし、A軸×B軸思考で優秀でも共感的でなければ社会では役に立たないし、A軸思考×B軸思考×C軸思考で賢いけれど自分軸でとまっている自己主導型はもっとも厄介で、葛藤マシーンになります。自分が正義だと思っているから、どうしようもありません。
★自分軸と他者軸が共感し合う関係を創造できるかどうかがカギだし、そういう人間存在が育つ学びの環境を創りたいものです。
★別の言い方をすると、subject-being-objectの段階では、コペルニクス的転回以前の思考の枠組みです。これをベースにしているこれまでの教育を20世紀型教育と呼んできました。A軸の環境順応型、A軸×B軸の環境順応型(順応と共感は全く違います)がたくさん生まれました。しかし、新型コロナウィルスショックの現状を見ている今の私たちには、このベースでは創造的問題解決はできそうにないことは感じているはずです。intersubject-interbeing-interobjectの複雑適応系のシステム思考として、自己変容し続けるA軸思考×B軸思考×C軸思考というのがあるわけです。自分軸で止まると、その3つの軸の思考は、実はA軸思考のファイリング知識などに回収されてしまうのです。
★以上のような考え方は、なかな図にしにくいですが、イメージとしては現段階では上記のようなものになりました。
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