感染症に対応する都市機能の変容能力(11)工学院はZ世代地球市民の才能開花の拠点 未来の都市機能を創発する②
★評論家で立教大学社会学部兼任講師の宇野常寛さんが安宅和人慶應義塾大学SFC教授(新刊本「シン・ニホン」は超話題作)と何やらおもしろいプロジェクトをやるという記事を読みました。新しい都市の構想「風の谷を創るサミット」を立ち上げていくそうです。その発想のヒントとして宮崎駿さんと押尾守さんの対比という現代社会を斬る評論家らしい視点で論じていて興味深いのですが、内容については記事「都市のオルタナティブとしての「風の谷」とそれをつくるための「語り口」についての覚え書き」をご覧ください。
(高2の学年主任鐘ヶ江先生は修学旅行をグローバルプロジェクトに転換させたプロジェクトリーダー)
★私がこの記事で着目したのは、宇野さん方が構想を練ったり企画を立て実行するプランを立てる時の過程がプロジェクトベースだということです。プロジェクト型のプロセスは、参加メンバーが異領域で、だからこそ幅広いリサーチができるし、対話を通してアイデアの創発と現実味のギャップを埋めていく創造的作業です。プロトタイプ―リファインのループがプロジェクトの醍醐味です。
★このプロセスは、中高の場合だと今世界中でトレンドになっていて、経産省も推奨しているPBL(Project based Learning)に相似しています。今まさにPBLのフラクタル現象が教育現場と社会現場で起こっているなあと実感しています。これが明らかになったのも、今回の新型コロナウィルス感染拡大の攻防によるところは大きいと思います。
★そして、このPBLのフラクタルというアイデンティティ現象こそ都市機能の自己変容能力に寄与することになるのではないかと感じる今日この頃なのですが、そのPBL型授業を社会実践にまで拡大している先進的な学校として工学院大学附属中高を紹介している真っ最中なのです。
★昨年12月11日から高校2年生はグローバルプロジェクトを実施しました。従来の修学旅行を大転換させた海外探究型プロジェクトです。同校は普段の授業がまずPBL型だし、高1から高2にかけて「探究論文」の編集作業もします。そのような実績が、今回のグローバルプロジェクトに結実したといえると思います。
★何を言いたいのか?教育というのは複雑系なのだということです。多様なアプローチが一見結びついていないように同時並行で進んでいるのですが、あるときそれが結晶するのです。その複雑系のプロセスがあるからこそクオリティが高いということになるのですが、この質はなかなか可視化されないので、工学院が宇野さんや安宅さんのやっているような話とフラクタルに相似しているということになかなか気づかないのです。
★それはともかく、このグローバルプロジェクトは、国連が採択したSDGsの17目標の中からそれぞれの国や地域が直面する課題を学び、その解決に貢献するための取り組みを目指したものです。訪問するのは沖縄・カンボジア・タイ・アメリカの4か所。ハイブリッドインターナショナルコースでは、現地の起業家が直面する社会問題の解決に挑む「MoG(=Mission on the Ground)」をGlobal Projectとして行いました。
★ダイレクトに未来の都市機能の自己変容能力についてチャレンジするプロジェクトです。
★高2の学年主任の鐘ヶ江先生は、本プロジェクトの企画運営のリーダーです。教務主任の田中歩先生などと現地視察にそれぞれいきながら、計画を立ててきたのですが、先生方自身も、新たな学びを得たと言います。それはPBLの重要性実感といってもよいでしょう。
★PBLにはリサーチは欠かせないのですが、普段の授業ではどうしてもネットと文献に依存しがちです。しかし、今回のようにフィールドワークをして、現地の地理的条件や気象条件が日本とは全く違い、自分たちがつくった学校行事スケジュールに合わせてもうまくいかないという気づきから始まったそうです。たとえば、雨期にいこうものならどうしようもないというのです。日本の梅雨時のように傘をさせばなんとかなる程度ではないからだと。
★頭の中ではわかっていても、目の前に広がる現実を体験すると、スケジュールをすぐに変えなければという俊敏な自己変容能力を発揮せざるを得なかったということです。経験の重要性。自己変容能力の重要性。これがPBLの醍醐味なのだと。
★しかし、何より鐘ヶ江先生がこのプロジェクトを実施してみて感動したのは、生徒の自己変容ぶりを目の当たりにしたことだといいます。内発的モチベーションが燃えるとはこういうことかと。具体的な例は、あまりに個人情報なのでここでは語れない程、生徒1人ひとりの生き方が変容したのです。
★人間には食欲をはじめいろいろな欲求があります。この欲求が生まれない限り、主体的に学んだり行動を起こしません。今回生徒は探究欲ともいうべき意欲があることに気づいたということでしょう。Growth Mindsetを生徒自身が自ら設定できる学校が工学院です。
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