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2020年3月23日 (月)

システム思考×複雑系組織(2)私立学校のリスク社会の乗り越え方①

★今回の新型コロナウイルスショックは、世界が丸ごとリスク社会そのものであることを顕在化させたわけですが、私立学校はその影響を直接受けています。今多くの私立学校で3カ月留学などの時期ですから、生徒の海外への渡航延期や中止の意志決定をしているし、出入国制限の関係で、留学中の生徒を帰国させる行動で奔走しています。

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★もちろん、一斉休暇中の生徒の普段の学習の構えを持続可能にしたり、効果的な過ごし方の行動もしています。こうした意思決定や行動の判断ミスは、すぐに生徒募集という経済活動にも支障をきたします。

★私立学校の教師も生徒も実は行動や価値意識の持ち方次第では、経済活動という生活世界に直結する影響を受けてしまいます。優秀な教師がどんなに1人がんばっても、経済活動の循環=3ポリシーの実現の循環がうまくいかなければ、閉校に陥るからです。

★ただし、私立学校は企業ではないですから、すぐに閉校はしませんから蘇生する時間は稼げます。また公立学校のように統廃合の決定に従わなければならないということもないので、やり方しだいでは何とかなる可能性が大ですが、そのやり方とは広報戦略とか学習の仕方の改革とか進路指導の方法とかそれぞれ単発に行われているのではなく、リスク社会を乗り越える方法として統合されている必要があるのです。そのことがはっきりしたのが今回のショックだったわけです。

★国家と公立学校、自治体、企業、NPOなどの組織と私立学校の組織は、その経済的基盤は違いますが、同じリスク社会に位置づけられています。また国家組織と企業組織の中間形態でもあるので、私立学校のリスク社会の乗り越え方について考えていくのは、なんらかの参考になると思います。それに中間形態としては医療組織はわりと私立学校の組織に共通する点も多いと思われますし。

★さて、そのリスク社会を乗り越える方法ですが、

1)生徒がいかなるリスク社会であれサバイブできる資質・能力=共感的システム思考を身に着ける学びの環境の構築の仕方と

2)その環境を支えるあるいは生み出す組織マネジメント=複雑系組織の仕方の相乗効果を考えていくことによってみていきたいと思います。

★おそらく、この<システム思考×複雑系組織>の相乗効果が、生徒の未来に希望を灯すことになり、それは結果的にリスク社会を生徒自身が乗り越えることができると同時に、少しでもリスク社会の暴発を防ぐ組織システムの脱構築や創造を果たしていくことになるでしょう。

★さて、今回の新型コロナウイルスショックは、ここにきて、多様な価値観がどうあれ、世界が一丸となって解決しようという協働的な動きになってきています。自分だけ助かろうというのは見えない敵に向かっては不可能であることは誰もが気づいたことでしょう。この見えない敵は、何も新型コロナウィルスだけではなく、むしろ忍び寄る権力や情報の隠ぺいというシステムなどが大きいということも理解し始めているわけですが、この見えない敵に対応するには、協働的動きしかないのだと世界同時的に認識共有がされたと思います。

★ただ、その協働の在り方にはいくつかのパターンがあります。上記の図に在るように、リバタリアン的な価値意識をもっていても、自分が生き延びるには他者は無視できません。自由に生きるにしても、抑圧的他者関係を仕組むと、それは自分に跳ね返ってきますから、あくまで共感的コミュニケーションをとりながら、個人の自由を優先するという立場もあります。つまり、リバタリアンも、協働的に行動するのが今回だと思います。

★共感的コミュニケーションとなんといっても他者の幸福を優先しながら自分も幸せに生きて行くというゴールデンルールを軸にしているコミュニタリアンは、今回はもっとも目覚ましい活躍をしているのだと思います。そして、リスク社会が顕在化し、そのことを共有した今、コミュニタリアンがリーダーシップをとっていくのだと思います。白熱教室で知られるようになったサンデル教授のコミュニタリアニズムの発想が今現実態になろうとしているのかもしれません。

★もっとも、サンデル教授は、ブレアークリントン時代から彼らのメンターとして活躍しているので、紆余曲折はあるけれども、1989年のベルリンの壁崩壊以降の世界の変容の在り方の模索やIT革命の世界の変容の在り方について、世界同時的に認識するようになったということでしょう。トニー・ブレア時代に、再帰的近代社会やリスク社会の概念も論じられるようにもなっていました。新自由主義との葛藤で、なかなか理想型は浮上してこなかったのですが、今回は浮上してくるかもしれません。もっとも、このテーマは近代誕生と同時に生まれているので、新しい社会課題ではありません。

★個人と他者のバランスをとるリベラリストは、しかし、やはり自分軸が基準です。バランスをとる規制は抑圧的にならざるをえないですね。フランスやドイツの動きは、リベラリズムがベースです。

★米国のトランプ大統領のように、個人のための個人の幸せを優先するために抑圧的コミュニケーション行動を自由に行うコンサバも、今回は自粛要請でパンデミックを乗り切ろうとしています。

★かくして、一丸となって協働するといっても、みんながコミュタリアンになるわけではないのです。それでもリスク社会を前に協働的に行動せざるを得ないわけです。

★だから、コミュタリアニズム、リバタリアニズム、コンサバティズム、リベラリズムの4つの価値意識の相関関係で、システム思考やコミュニケーション、マインドの質は変容します。

★私立学校の場合、建学の精神の共有は教師も生徒もしているので、協働的な<システム思考やコミュニケーション、マインド>はあります。しかし、基本、これまでは、コンサバティズムとリベラリズムとの葛藤が主役でした。

★受験生や保護者もそうでしたから、生徒募集という経済活動もそれなりに回っていたのです。

★しかし、1989年のベルリン壁が崩壊して以降、無意識理にそれでやっていけるのかという動きが始まりました。1995年の地下鉄サリン事件と関西淡路大地震もその動きを強めることになりますが、風化するという反動もありました。9・11の世界同時テロでやはりその意識は立ち上がろうとします。しかし、今のようなSNSの情報共有を世界同時的にはできませんでした。むしろ米国の覇権主義への憧れが広がったでしょう。その意識が明快に立ち上がったのは3・11でした。しかし、ここを起点にSNSが進化し始まめるので、まだ世界同時的にリスク社会を共有するにはいたらなかったのです。

★しかし、今回はSNSやオンラインの目覚ましい進化の中で起こったので、それは白日のもとにさらされたということでしょう。

★このようなリスク社会に立ち向かうには、抑圧的コミュニケーションでは難しいですね。情報共有ができない欠点があるからです。情報共有がされても、情報誘導で共有されていない部分が背景にあります。SNSやオンラインは、良くも悪くも、それをぶっ飛ばします。

★そこで、共感的コミュニケーションが重視されるようになりました。<共感>という言葉も<PBL>と同じくらいバズワードになってきていますが、それはその必要性が人々の心の底に見え隠れしているからでしょう。

★かくして、私立学校の組織マネジメントは、共感的コミュニケーションをベースにしたコミュタリアニズムとリバタリアニズムのバランスで成り立っているところが、市場で評価され支持されるようになっていきます。経済活動を回すのは、この2つの価値意識がまずベースになります。そのうえで、残りの2つの価値意識とのバランスをどうするのか。私立学校は今複雑適応系組織になろうとしている、あるいはならざるを得ない局面を迎えています。

★そして、このベースがないと、共感的システム思考を生み出す学びの環境を創ることができないのです。それができなければ、経済活動は右肩下がりになります。(つづく)

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