感染症に対応する都市機能の変容能力(1) 内村鑑三のグローバルボランタリーマインドの可視化。
★今回の新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ動きは、地球規模に広がっています。政治経済的にいかに世界を分断しようとしてしても、グローバルボランタリーマインドが欠かせないことは、日々メディアやSNSの情報で、私たちは実感しています。このグローバルボランタリーマインドのイメージは、19世紀末から20世紀初頭にかけてひたすら官僚近代に対峙し、もう一つの近代化路線の模索に邁進した内村鑑三の考え方が1つのモデルだと思います。内村鑑三の自然と社会と精神の循環構想のヒントはデンマークという北欧の国々にすでにあったというのも実に興味深いですね。
★次世代に何がのこせるのか?そう内村鑑三は問うわけです。それは、
①事業を起こすこと
②金を溜め、世のために使うこと
③本を書き、教えること
★もいいけれど、なんといっても、種々の不幸に打ち勝つ生涯を送ることだと。それを内村鑑三は「勇ましい高尚なる生涯」だと呼んだのです。そして、これは誰でもできるのだと。
★今回の新型コロナウィルスは、社会の矛盾や問題点をえぐると同時に、共有知を幾何級数的に増やす可能性がありますね。「共有知」がこのような指数関数的なカーブを描くとしたら、社会はどのように変わるのか、それが希望なのか絶望なのかは、見方によって微妙ですが、希望が現れるような予感がします。
★というよりも、希望を生み出すのは、種々の不幸に打ち勝つ「勇ましい高尚なる生涯」を送る存在者であることなのでしょう。この存在者であろうとすることが、グローバルボランタリーマインドだと思います。
★新型コロナウィルスの感染拡大は防がなければならないけれど、それは同時に都市機能の変容能力をグローバルボランタリーマインドで形成していくことです。自然と社会と精神が循環している都市機能は、実は今のところ少ないのです。実験は山ほど行われてきましたが、まだまだこれからチャレンジです。
★ともあれ、今回、国家と都市は、どうやら違うことが可視化されてきました。国家が一律休校せよといっても、受診や入院のルールを課しても、その通り行うと、都市機能不全が起こってしまう。SNSの世界は玉石混合だし、テレビや新聞などのメディアも俯瞰した情報を流しているわけではないけれど、世界の感染の進行状態の簡単なデータを市民レベルで共有することができる時代であることも確かです。
★それで、各国各都市の対応の仕方が違い、各データの出方も違う、そこになんらかの関係があるのかフェイクなのか隠ぺいなのかクリティカルシンキングを発動することができます。
★そして、都市単位で学校単位でもちろん最後は自分の判断と意志で、おかしいところを自分たちでなんとかしようという動きがあるのも事実です。こういうアクションをとる人々を「勇ましい高尚なる生涯」を送る存在者であると内村鑑三は呼ぶでしょうし、私はグローバルボランタリーマインドの持ち主だと思います。
★このグローバルボランタリーマインドの持ち主はいったいだれかというと、それは、もちろん市民という構えを意識している1人ひとりなのですが、その代表的な存在が誰なのか、今回の新型コロナウイルス感染拡大の防止対応の多様な過程の中で明らかになってきています。
★それは、結局、さんざん多忙で働き方改革が遅れていると言われてきた学校で働く先生方がそうです。それから医療関係に従事する女性です。仕事をしている女性です。
★学校が休校になって、どうやってサイバースペースで学びの拠点を創れるのか、教師は奔走しています。学童保育に応援にでかけてもいます。
★休校によって子供の面倒を見るために医療関係の仕事を休まなければならないという状況が白日のモノとなったとき、医療現場の機能の崩壊が浮上しました。医療現場の機能不全は、感染者のみならず他の患者の生命の危機を生みます。都市の衛生危機管理の機能も崩壊することになりかねません。
★医療現場以外の仕事をしている女性が休むと、たいがいのサービス業は機能不全を起こします。テレワークをやればよい人もいますが、生活は実はマヒするわけですから、それどころではなくなります。
★自己利益を求めるリバタリアニズムが跋扈する欲望のグローバリゼーションによって外部に追いやられてきた教師や女性というリベラリズムやコミュニタリアニズムの立場に立つ人々のグローバルボランタリーマインドの重要性が可視化されたわけです。
★官僚近代が自らの権力を持続可能にするために20世紀末に再帰的近代を発明し、それをリバタリアンの手に渡しました。しかし、内村鑑三のもう一つの近代を創る未完のプロジェクトが、再び動き始めたのです。欲望のグローバリゼーション重視からグローバルボランタリーマインド重視へのシフトの幕開けです。
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