ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(2)第3の私学の登場。聖パウロ、聖学院、和洋九段女子、八雲、ノートルダム女学院、工学院、品川翔英、かえつ有明。
★新型コロナショックは、今後論じられていくと思いますが、自然と社会と精神の分断の広がりによって生まれてきています。人間の歴史は一方で理想的な自然と社会と精神の受験する世界を求めながらも、実際にはその分断を大きくしていくリスク社会の進化の歴史でもありました。今更言うまでもなく、その分断が小さい時代は自然による様々なリスクに対する浄化作用が働いていたのですが、産業革命以降の近代社会はその臨界点を超えて進化したわけです。
★そのことを決定的に明らかにし警鐘を鳴らしたのがローマクラブに提出された「成長の限界」でした。その著者のうち世に大きな影響を与えたドネラ・H・メドウズの発想や方法論は「システム思考」と呼ばれています。彼女が亡くなった後、その「システム思考」をさらに深めていったのが親友のピーター・センゲでした。
★そして、その「システム思考」によって世界の変容の必然性を説いていきました。極めてシンプルな変容です。
★上記のピーター・センゲの著書にある図のように、現実世界が経済中心から環境中心に変容することを提唱しているわけです。「成長の限界」が発刊されて48年経ちました。その半世紀の間に世界を震撼とさせる自然災害や感性症被害、テロ、恐慌などが数多くありました。
★今では、その問題解決がSDGsへとまとめられ、世界で共有していこうという流れになっています。が、実際にはまだまだ世界がそれを共有してはいませんでした。そこに今回の新型コロナウィルスの世界規模のパンデミックです。生活世界は実は同時にリスク社会であり、SDGsへの取り組みの必要性を世界が共有する転機となったのです。
★あらゆる領域が、変容します。その流れは1989年以降着々と進んできましたが、現実の生活世界の在り方が経済中心であったために、世界がそこに目を向けることはなかなか難しかったのです。しかし、ポスト・コロナショックは、その変容を加速するでしょう。
★そうなると、生活世界は大きく変わるわけです。オンライン活用活動世界になるのですが、それは変容の1局面でしかありません。大切なことは、従来の生活世界は抑圧的社会によって規定されてきましたが、今後は共感的社会によって新しく構築されていくというダイナミズムへの気づきです。
★そうなったとき、教育の分野も変容していきます。その変容の1つのモデルは、首都圏の私立中学受験の現象にも反映しています。1986年から1995年までは、御三家中心の中学受験でしたが、グローバリゼーションとIT革命によって、ニューウェーブが台頭するようになりました。2011年の3・11以降、生活世界の変容を感じていたいくつかの私立学校が現れましたが、生活世界の変容のリアリティがまだなかったために、それらの学校はいったんニューウェーブのグループの中に回収されてしまいました。
★しかし、ポスト・コロナショック時代は、生活世界は、抑圧的世界から共感的世界へシフトする動きがあらゆる領域ででてきます。そのとき、やっと新しい教育活動が市場で支持される第三の私立学校が現れます。市場自体が共感的世界になっていきますから、その生活世界を求める人々が支持するわけです。
★もちろん、この気づきは、まだまだこれからですが、地政学的リスクと経済リスクが日々ニュース報道を埋め尽くしていきますから、気づかないわけにはいかなくなるでしょう。その第三の私立学校はどこなのか。その希望の松明を手に取って新しい教育開発に着手しているところは、聖パウロ学園、聖学院、和洋九段女子、八雲学園、ノートルダム女学院、工学院、品川翔英、かえつ有明などです。もちろん、このすべての学校が第三の私立学校を全うするかどうかはわかりません。
★たとえば、工学院は田中歩先生のチーム次第ですし、かえつ有明は佐野先生のチーム次第です。ここで、田中歩先生と佐野先生の名前を挙げたのは、共感的世界を創り出すエネルギーの持ち主で、ひとつの学校の中に収まる教師ではないからです。もちろん、この共感的世界をつくるキーマンはたくさんいます。今後ご紹介していきます。
★新しい生活世界や共感的世界とは何なのか、なぜ必要なのか、第三の私立学校の教育システムはどうなっていくのか、そして、この抑圧的世界と共感的世界が併存する過渡期にあって活躍する首都圏模試センターが果たす役割などについても考えていきたいと思います。
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