感染症に対応する都市機能の変容能力(8)佐野先生と金井先生との対話。HTH視察へのきっかけ。
★佐野先生と金井先生は、パートナーとして、2015年かえつ有明危機を、同校の先生方と協力して乗り切るのに、先生方のマインドに深くダイブし、揺さぶり、共感的コミュニケーションを生み出す<運命的な体験>をしました。
★組織が危機に直面した時、逃げ出す人もいるし、残る人もいます。残る人は、当然乗り越える気持ちは一致しています。にもかかわらず、一丸となって乗り越えようと檄を飛ばしても危機への対応はなかなかできないのです。それは、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に対応する時の日本社会も同様です。
★巧く行くには、みんなで乗り越えることが、ビジョンの共有ではないということに気づく必要があります。あるビジョンを共有し、実行して到った結果が乗り越えたという事態なのだと。だから、結果をビジョンにすり替えるのは成果主義的発想なのです。つまり、無意識のうちに抑圧的コミュニケーションがそこでは行われているのが常なのです。そして、たいていの場合、成果主義者は、自分たちのコミュニケーションが抑圧的であることには気づいていないものです。組織の中にサイレントキラーが存在するのはそういうわけです。
★佐野先生と金井先生は、それゆえ、暗黙の抑圧的コミュニケーションを共感的コミュニケーションにチェンジするビジョンを先生方と共に内側から湧き出てくるまで、対話することになるのです。もし、それができたなら、かえつ有明の危機は、自ずと乗り越えられるのだと。
★そんなとき、私は外部から抑圧的コミュニケーションウィルスとして役割を演じるように佐野先生に頼まれ、柔らかい佐野先生の対話空間に参加したことが何度かありました。当然、このウィルスには先生方は一丸となって抗います。
★もともと共感的コミュニケーションの持ち主は、抑圧的コミュニケーションに感染しません。むしろ抗体としての役割を最大限に発揮します。もともと抑圧的コミュニケーションをベースにしていた仲間は、今ままでそのことに気づいていませんでしたから、ウィルスとの出遭いで、自分はすでに感染していたことに気づき、仲間の交代によって浄化してもらうことになります。この時、共感的コミュニケーションが生まれます。
★この兆しが見えたら、すかさず共感的コミュニケーションベースのワークショップを日常の中でどんどんやっていきます。佐野先生と金井先生は夜を徹してプログラムをつくり、実践し、共感的コミュニケーションの世界に先生方を巻き込んでいきましたし、先生方も自分の共感的コミュニケーションを結合していくようになりました。
★こうして、2016年は、2017年の新中1を迎えるにあたり、中1の各クラス各教科授業すべてを共感的コミュニケーションをベースに行っていく意志が決定されたのです。その手段の一つとして<アクティブラーニング>が選ばれました。
★このビジョンは、受験生・保護者にも共感を呼び、2017年入試、2018年入試と応募者増に結びついていきました。当然、<アクティブラーニング>をワークショップでトレーニングしたからと言って、すぐにできるようになるわけではありません。やり方がうまくいかない。対話がなかなかクラスに広がらない。学力はどうななるのだろう。人間関係とアクティブラーニングがうまくシンクロしないなど山ほど課題はでてきます。
★しかし、その課題を先生方がみんなで受けとめ、解決していく共感的コミュ日ケーションが日常化したために、それは一つひとつ氷解していきました。そして、そのたびに、解放された先生方の魂が、さらに共感をよび、その響きは学内外で大きくなっていったのです。佐野先生と金井先生の行う研修が<魂のワークショップ>と呼ばれる所以です。
★こうして、佐野先生と金井先生をはじめ同校の先生方は<運命的な体験>を共有したのです。
★<運命的な体験>は、かえつ有明の出来事だったのですが、それは人の生き方全体の体験に広がります。それほど決定的だったのです。それゆえ、佐野先生はさらに学内の授業のクオリティを高める<共感的コミュニケーション>のマインドを深めスキルを先生方と究めようとしました。金井先生は、東大の大学院で理論的裏付けを研究し、<運命的な体験>を学外でも広めようと決断をしました。
★同じように、他校の校長に就任し、この体験を現場レベルで広めるチャレンジをした仲間もいました。
★こうして、かえつ有明というローカルで起こったことが、グローバルな動きになる準備が、意識してというより、<共感的コミュニケーション>の魂の響きが連鎖していく流れが生まれたから、着々と進んだのです。
★それゆえ、佐野先生と金井先生は、学内外の違いはありましたが、<共感的コミュニケション>ベースのPBLを実施しているHTH(ハイテックハイスクール)を視察に渡米することになるのです。
★HTHの構想をつくった一人であるトニー・ワグナー教授(ハーバード大学)は、知識の格差をフラット化する教育の実践の場としてHTHをつくりました。知識の格差はそのまま富の格差につながるのは、欧米の階級構造の暗黙のシステムです。要するにそこには抑圧的コミュニケーションが暗々裏に横たわっています。
★それを解体するPBL学校がHTHです。佐野先生と金井先生は、自身が経験した<運命的な体験>の響きと同じ響きを感じ、その体験がどのように具体的に実践されているのか、特にHTHのPBLと自分たちのアクティブラーニングのマインドはどこまで響き合うのか体感したかったのだと思います。
★いうまでもなく、このHTHとの出会いは、響きがシンクロし大きな波をうったのです。
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