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2020年3月

2020年3月31日 (火)

2021年中学入試を読み解く準備(10)立教女学院の人気の理由 骨太の教育

★2020年中学入試においても、立教女学院は高人気でした。普遍的精神にこだわりをもち、IBのTOKなども研究しながら、独自のARE学習を構築し続けてきた質の高い学びのデザインが帰国生にとっても、国内生にとってもとても魅力的なのです。

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★今年もずっしりと重みのある、生徒の学びの価値のつまった「ARE学習・卒業論文」を頂きました。のちほどじっくり読みたいと思います。答えのない問いを自ら見つけ、自ら調査し、自ら問題解決して、提案をしていく道行は、生徒にとってはじめ不安です。しかし、進むにつれ好奇心は旺盛になり、問いは広がり深くなり、解決への道に導かれていったときの達成感はすばらしいものです。そして最終的に、未来への自分への価値を見出すのですが、この一連の心の動きが、毎年熱く伝わってきます。

ARE学習は、中1~高3にかけて一貫した学びで、ある意味IBのTOK以上の探究活動を生徒は行うことになります。

★卒業論文は、立教大学への推薦の条件となりますから、高3の時に一般受験する生徒はおそらく書かないでしょうが、推薦グループは取り組みます。立教大学へ進む卒業生は、毎年55%くらいですから、100人以上が取り組むことになるでしょう。

★立教大学以外にも生徒も卒業論文は書かないにしても、ARE学習は学びのコアになっています。骨太の問題を出題してくる国公立大学やレベルの高い大学に多数合格するのも、受験勉強以上の学びであるARE学習が大きなエンジンになっていると思います。

★今年も3月14日に、チャペルで、代表生徒と卒後生が公開プレゼンをしています。受験生・保護者はARE学習の有効性やその大切な意味について知ることができる機会です。来年もあるでしょうから、同校サイトをときどきチェックしておくとよいでしょう。

★そして、これはとても大事なことですが、このような学習指導要領をはるかに超える学びができるのは、同校が「学問の自由」を極めて樹脂しているからです。この姿勢こそ、同校の普遍的精神へのこだわりなのででしょう。

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2020年3月30日 (月)

2021年中学入試を読み解く準備(9)今年も、東洋大学京北中学高等学校の人気続く。<本質>を考える時代を牽引。

★2020年も東洋大学京北中学高等学校(以降「東洋大学京北」と表記)の人気は高く、実出願数は、中学入試(656→686)も高校入試(465→712)もさらに増えました。この勢いは、来年もまた続くでしょう。その理由は、国際教育×哲学教育×キャリアデザインというシンプルで深い学びを6年間の教育に貫いている<一貫性>がわかりやすいし、「哲学教育」という多くの学校が見ようとしない本質的な教育に根っこがあって、深さを感じることができるからでしょう。

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★それに、一年前のホンマノオト21の記事「2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合 」の今月のアクセスランキングも20位以内に入っているぐらいです。中学受験生の保護者などが、同校に興味関心を抱き、検索している動きがネット上でも広がっているということでしょう。

★今回の同校の募集の勢い及び今後の教育について、<校長室より「東洋大京北に夢をのせて」 第五十号 発行:令和2年3月23日>の中で、校長 石坂 康倫先生は、こう語っています。

 <最近、生徒の皆さんが、礼儀正しく、多くの人が登下校時にも身だしなみを整えています。用事で大学に行った帰りなどにすれ違う中学生や高校生で気持ちの良い生徒さんだと思うと本校の生徒であることが本当に多いです。今では、私の誇りの一つは本校の生徒の皆さんです。

2 月 22 日(木)午前に高校 1 年生、午後には中学校 1 年生・2 年生・3 年生の英語スピーチコンテストを開催しました。一言で表すと感動です。高校 1 年生の真摯なスピーチの内容と表現力に可能性の高さを感じました。中学生はスピーチ内容を自分の言葉として表現しており、その姿には心を打たれました。年々レベルアップしているのは、教員の指導の良さは勿論ですが、何よりも皆さん自身の自覚の高さだと思います。選考された人のスピーチではありましたが、間違いなく生徒全員が成長されているに違いないと確信することができました。本校の国際教育は間違ってはいないと、特に外国語(英語)の教員は思ったに違いありません。

このことに甘んじることなく、更に英語教育と国際教育を進めて行きたいと思います。>

★校長の次のような姿勢を感じます。すなわち、倫理的構え、生徒への温かい眼差し、正当の成長を生み出す理論、教師力向上への意欲、自信と誇り、ビジョンの一貫性と実行力などです。今まさに突き付けられている予測不能な局面にあって、石坂校長と先生方の共同戦線はモデルとして、また注目を浴びるでしょう。

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2020年3月29日 (日)

ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(9)哲学の新しい役割 スペキュラティブシンキングの取り込み

★久々に週末は外出しなかったので――とはいっても、昨日は静かにパワーランチでミニミーティングにでかけ散歩はしましたが――、夕方から今朝まで妻とずっと対話していました。新型コロナウィルス感染爆発に対応するニュースをみながら、インドネシアの娘夫婦とラインでやりとりもしながら。私はラインはやっていませんが(汗)。

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★今回のニュースやSNSの反応をみながら、これからアートはどうなっていくのかという話と現実散歩する時の装備はどうするのかという現実的な話やどんな料理を創るのか、ぐるぐるすべてがつながっていて眩暈がする話なわけですが、そんな中で、日本のアートの世界では、<スペキュラティブアート>というのはまだ流行っていないのに、<スペキュラティブデザイン>というのは支持されているのはなぜか?という話になりました。

★長谷川愛さんという今アート界で話題のアーティストですが、彼女は<スペキュラティブデザイン>とは言うけど、<スペキュラティブアート>とは言わない。<アート思考>とは言うけれど。

★この<スペキュラティブ>というのは、哲学者は「思弁的」と翻訳しています。しかし、デザイン界やアート界では、たぶん「不確かな中で思考する」という意味で使っています。「不確かな中で」ですから、確かな事実という限られた現実をもっと超えたものも大きな現実として見直すという意味では「思弁的」というのもなるほどです。

★いずれにしても、アート界では<スペキュラティブデザイン>、哲学界では<スペキュラティブリアリティ>として新しい言葉が生まれたのは、両方ともイギリスでした。長谷川さんがRCAで学んでいた時に、娘もロンドンで学んでいましたから、娘のリサーチアートが<スペキュラティブデザイン>と重なる部分が多いのは納得がいきました。

★娘は、自分のやっていることは、ロンドンではあたり前だけれど、日本ではまだまだ。インドネシアでも、そんな用語が明示されて共有されてはいないけれど、受け入れられると。おそらくアート市場が日本より柔軟なんだと。夫は気鋭のアーティストで東南アジアで売れている画家ですが、バイオテクノロジーなどと結びつく絵画で、工学系の大学で学んできたということもあって、<スペキュラティブデザイン>にやはり重なるところもある。

★妻の方は、文化人類学的なアプローチで研究していたところ、カンタン・メイヤスーの<スペキュラティブリアリティ>に行き着き、「祖先以前性」という場で、アートはいかにして可能かという実験をやっています。産業以前の人間の生活世界の発想はどこにあるのか根源を探そうというわけです。<スペキュラティブオリジン>と本人は言っています。

★私はアートには全く才能がなく、彼女たちのアートを見ながら、哲学的にどう理解するのか無粋な対話をしかけています。それで、ときどき長大な対話になるのですが、どうも「デザイン」のマーケットは日本にはあるけれど、「アート」のマーケットは小さいから、というのが、<スペキュラティブアート>は流行らないというのが結論でした。

★そんな話を聞いた私は、なるほどとすべてがつながったのです。もちろん現状でですから、また変わるのですが、特に、今<スペキュラティブデザイン>を提唱したアンソニー・ダンーー長谷川愛さんの師匠――でさえ、その言葉を使わず、<クリティカルデザイン>を使っていると言いうのを聞いて、<スペキュラティブデザイン>は、日本では、巧く商業ベースに乗ったのだなあと直観したのです。

★<スペキュラティブデザイン>は、<スペキュラティブリアリティ>の明るい部分にのみ焦点を当てるようになるでしょう。商業ベースですから。それでも、今まで存在として排除されていた領域を現実に取り入れていくという意味では<スペキュラティブ>の役割を果たしているのです。

★しかし、闇の部分には近寄らないようにしないとデザインマーケットでは売れません。

★ところが、アートは、その闇の部分は認識をして、そうならないようにサインを表現します。それゆえ、あまりに不気味で世の中を本質的な側面から警鐘を鳴らせます。しかし、耳障りですから日本のような道徳的アートマーケットでは売れません。臭いモノには蓋をしていますから。

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★しかし、<主体>と<客体>の両方の概念がコペルニクス的転回をするというのは共通しています。マーケットの範囲が違うというのが実際のところだったというわけです。

★こんな話をしながら、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキング、スペキュラティブシンキングの関係図が思いつきました。そして、いかにクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングが今後ますます重要か気づいたのですが、その駆動力は良くも悪くもスペキュラティブシンキングだったのです。今まで、このスペキュラティブシンキングの存在を考えていなかったことに気づいたわけです。

★思考コードのC軸を超えるS軸があったわけですが、それはクリティカルシンキングによってクリエイティブシンキングに回収されます。しかしその回収の作業をやらないことには、C軸思考はB軸思考やA軸思考に回収されてしまうのです。

★この<ABCs思考>こそ、新しい教育のコンセプトあるいはガイストとなるでしょう。それを明らかにしていく学びの環境は、サイバースペースとリアルスペース、データと体験のハイブリッド座標軸によってデザインされることになるでしょう。

★そうそう、哲学の役割は、上記の関係図にあることをすべてを俯瞰する視点を創ることです。この俯瞰図は、いずれまた変容するでしょう。このように、人間が世界を描く前提としての現実の捉え方の変容を仕掛け続けるのが哲学の役割です。

★負け惜しみに聞こえますね。そうですよ。そんなことを考える前に、作品を新しい時代の潮流を直感しながら自前で創れてしまうアーティストたちに囲まれて生活していると羨ましくてしょうがありません。

★これは、user中心主義からauthorship(根源)へというアンソニー・ダンのビジョンです。いいですね。じゃあ私は、そのビジョンを描いて作品を描くというアーティストの次元変容を解明して、一般化しましょう。だって、今回のような感染症のパンデミックは、環境破壊によっていずれまたおこるでしょう。user中心主義の生活世界がいかに脆弱か身に染みました。1人ひとりが生活世界そのものを創り出す最小限の力をもったうえで、協力していくという生活世界が大切です。それにはauthorshipという創造する根源主義は重要です。

★ハイブリッドワークショップ開発を急ぎたいと思います。それから、上記の図について説明はいずれまた。思いついたので、備忘録として。でもシェアもしたいなあと。

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2020年3月28日 (土)

ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(8)高橋一也先生 新しい教師を育てるビジョン。

★高橋一也先生と言えば、2016年に日本人初!の 「教育界のノーベル賞」ファイナリストになった超有名な教師です。世界中の教育ノーベル賞のファイナリストのネットワークをもち、それゆえ日本の教育界の重鎮や教育産業のCEOとのネットワークも広く深いのです。文部科学大臣とも語り合うほど日本の教育界では頼りにされている教師であり、大切な人物です。

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★2015年に工学院に着任し、平方校長と21世紀型教育をひっぱりました。ラショナルでラディカルで世界課題に対するコントリビュ―ションを重視している教師ですから、多くの先生方が憧れたし、真似もしました。もちろん、今でもそうです。

★おそらくその時期から、最年少民間校長とか、最年少教頭とか、教育領域でパラレルワークをしながら活躍したいという教師などが爆発的に増えたのは、間違いなく「教育界のノーベル賞」のファイナリストになった高橋先生の言動です。本人は、控えめにそれは時代の流れで、その中の1人ですよと言いますが、間違いなくインパクトはあったと思います。

★しかしながら、一方で、憧れや真似は、表層的な人間の感情的な動きですから、表面的に同じようなことをやったら、高橋先生に追いついたと万能感まるだしのスピーチに悦に入っている愚かなリーダーもたくさん生みだしたことも事実でしょう。

★理性という名の抑圧主義、共感という名の同調主義を拡散したのです。ずいぶん多くの人が感染しました。

★この理性とか共感とかの衣装をまとい抑圧主義や同調主義を広めていっている当の本人も感染者も自覚症状がありません。何せ自分の顔は自分で見ることができないのですから、当然です。

★高橋先生は、多くの世界的なネットワークや異業種のネットワークをもっているし、慶応大学や世界の大学の同僚とのネットワークももっているので、そのような抑圧主義や同調主義とは距離を置こうとします。しかし、あちらはニコニコしながら近づいてきたり、相手にしてくれないと思い込み憤慨しながらからんできたり、そこは有名人の辛いところです。

★また、距離を開けていることをいいことに、教育で金もうけをしようという校長も現れるし、社会課題に目をつぶる安心安全シェルターをつくっていく新興宗教的教師も現れました。

★高橋先生は、このままでは日本の教育は本当に閉鎖空間での教育に陥り、生徒の未来はだいなしになると痛みを感じているのでしょう。この道徳主義や感動主義、簡単に言えば根性主義は、第二次世界大戦へ向かった日本の二の舞だと感じているのではないかと思っています。ここらへんの感覚は新世代の気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルと共通するところですね。ガブリエルは、日本だけではなく、世界が今そこに戻ろうとしていて危険だと認識しています。

★ともあれ、そんなふうに感じたのは、例によって独断と偏見の私見にすぎません。というのも、そこまでつっこむ対話の時間は、さすがに今日このタイミングなのでなかったわけです。ノー3密を配慮しながらすぐに別れました。というわけで、あくまで私の推理にすぎません。高橋先生と会って対話をしているうちにそう感じたのです。

★理性が抑圧主義に感染しないように、共感が同調主義に感染しないようにするには、どうするか?高橋先生はデータと自由で日本の教師のアップデートをすることによって応えようと考えています。データがなければ、自由もいつの間にか不自由に囲まれています。自由なきデータは優勝劣敗主義や決定論を生みだします。そこをそうならないように突破しようと。すごいことを考えていますね。

★私自身は、もう年寄ですから、高橋先生と何かいっしょにやれるかというとそれはできないし、高橋先生もそうは思わないでしょう。しかし、かつて21世紀型教育を創る会を設立した当初からお会いしているので、その一期一会を大切にしたいと思います。

★高橋先生の教師の言動の意義を、そしてその未来への価値を、みなさんと共有していけたらと思っています。

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2021年中学入試を読み解く準備(8)北鎌倉女子が注目される理由 新校長に柳沢先生就任。

★ホンマノオト21でも、2年前の北鎌倉女子の記事「北鎌倉女子 ジエシカがやってくる。鎌倉から世界を変える女性誕生。「のアクセスが増えています。ブログのロングテール的な効用として、かつての記事が検索されていると、その動きがわかります。すると、その関連事項に何かあるというサインが灯るわけです。

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(写真の記事に登場する宇野先生は、他校にて大活躍しています。)

★今回はその理由は簡単です。開成の校長柳沢先生が、任期満了した後に、北鎌倉女子の校長に就任するというニュースが、メディアで報じられたからでしょう。

★2020年の中学入試の傾向の1つに、強烈な普遍的精神へこだわりながら革新的な教育を展開している女子校の人気が高かったという流れがあります。

★今年80周年を迎える同校の人気は、柳沢校長のかじ取りや神奈川の女子校へのインパクトなど注目される点がたくさんありそうです。目が離せませんね。

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ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(7)対話と読書とワークショップと創発と

★たまたま「13歳からのアート思考」の本をFacebookに投稿したら、聖学院の児浦先生、名古屋高校の水野先生、成城大学の杉本教授が共感的コメントを書き込んでくれました。

★それぞれの先生方の仕事と「13歳からのアート思考」でとり扱われていたデュシャンの作品「泉」、黒楽茶碗、曜変天目が頭に浮かびました。全部一見つながりはなく、分割状態でしたが、一つ一つ少しイメージしてみたら、頭の中でHTHと村上春樹の「シドニー!」に統合されました。

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★村上春樹の「シドニ!」は、ちょうど早稲田実業の2020年の国語の中学入試で出題されていた素材文で、思考コードでC2くらいの問いのはずですが、条件を付けることで、ちょっと強引にB2に回収するという興味深い問題で、何かコメントしようと思っていたところ、全く違う上記のような図が頭に浮かびました。

★昨日ご紹介したフォームに当てはめることができて、おもしろいなあと思ったので、ご紹介しておきます。HTHとシドニーがさらに庭園にいきついたのは、ここのところ対話をしたりワークショップをしたりしているノートルダム女学院の霜田先生のことを思い出したからです。

★読書やワークショップが潜在的可能性をゆさぶり、現実態をつくる変容を起こします。さらにまた対話やワークショップにより、分割されていたものが、統合され、さらに創造にまで飛んでいくループが生まれる。

★そんな体験を共有する時代が、いまここにあるなあと。ここでいう庭園とは、未来都市のメタファーです。あるいは端的に宇宙船地球号です。このアップデートを多くの人びと共に行っていく時代の到来ですね。

★児浦先生とその仲間たちが執筆した「ワークショップアイデア帳」がもうすぐ発売されます。ますます潜在可能性を掘り起こすケミストリーがいろいろなところで起こるのでしょう。

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2020年3月27日 (金)

ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(6)オンライン授業に期待!ダブルバインドを超えるために!

★新型コロナウィルス感染爆発を防ぐために、様々な挑戦がされています。一方で、塾業界の経済の持続可能のために、どうしていくのか?塾業界に限らず、今や世界同時的に感染対策と経済政策のパラドクスというダブルバインド状態をどう解くのか一人ひとりが迫られています。

★昨日首都圏模試センターでミーティングがありましたが、いよいよ本日から本格的にテレワークに移行できるところはしていくという話だし、同時に塾や受験生とオンライン化を進めていく流れは、学び市場では必須であるという認識で動いていました。

★ミーティングにはいるときも、アルコール消毒とマスク装着、換気を常に行うなど、ノー3密も徹底し、終了後も5人未満の少人数で広い空間で食事をしながら打ち合わせをして、はやめに解散となりました。しばらくの間、オンライン上でのやりとりになるので、その準備をしていたわけです。

★教務陣との創発会議が、メインでしたが、話題の中心は、思考コードの各領域の背景にある思考スキルの複雑系とトレーニングによってショートカットされて解答の時に使うメインの思考スキルをどうわけていくかという話でした。教務陣が作成した入試問題の思考コードと思考スキルの分析データに基づいてディスカッションしていきました。いわゆる氷山モデルのメタファーで対話していたわけです。

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★たとえば、2020年の鴎友学園女子の算数の問題ですが、同校を受験する生徒は、2つの扇形の頂点の角度が120度だということがすぐにわかるので、あとは等積変形という<変換>スキルで斜線部は、円の3分の1ということになり、計算にすぐに移れるねというわけです。18cmも3の倍数であることから、計算で間違える確率は低いと。思考コードでいえばA2の問題だろうねというわけです。

★このくらいの問題ならオンライン授業でなんとかなるという話でおちつくのかと思ったら、それだと単に問題の解き方を伝授するに過ぎないから、結局わかる生徒はわかるし、わからない生徒は、ZOOMの向こうで集中力を切らしているよねと。

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★結局、なぜ扇形の頂点の角度が120度なのか?扇形が接していることの意味は何なのか?なぜ角度や半径や辺に着目するのか?そこらへんがわからない場合どうするかですよねと。すると、正三角形や正方形、円、倍数などに戻るわけです。

★でも、その1つひとつは、ほとんどの生徒は受験生ならわかっていると思うけれど、統合となると難しいかもしれない。そこは、分割したものを統合したり、統合されているものを分割したりという類題をやることによって、<変換スキル>をトレーニングしていくことが可能だと。

★ここまでは、オンライン授業でも可能だねと。問題の解き方から→分割と統合の変換スキルという数学的思考の1つを体得できるなら、オンライン授業はなかなかいい感じになる。わからなかった生徒も、分割と統合のトレーニングに好奇心を持つ生徒もだいぶ出てくる可能性がある。

★でも、それでも全員がわかるどうかはわからないし、やはり好奇心が生まれてこない生徒もいるでしょう。

★それにしても、ここまでオンラインでできるのなら、塾や学校はこれからオンライン化が進み、キャンパスがいらなくなってしまう。まるで、ミネルバ大学の初等中等教育バージョンであるなあと。

★しかしながら、これでは、たんなる解法のテクニックではなく、数学的思考に飛べたとしても、数学に興味がある生徒だけの話で、そうでない生徒は集中力がきれる。

★そこのマインドセットをなんとかしてきたのが、リアルな空間での塾や学校の教室空間だったわけです。一方で、オンライン授業とリアルな空間のそれぞれの特性を接近させようという技術がどんどん開発されていくでしょう。すでにミネルバ大学のアクティブラーンングフォームというオンラインでアクティブラーニングができるように開発されているプラットフォームは、そのマインドセットを時間スキルの技術的応用で果たしています。

★そうなってくると、ますます、オンライン授業でいいやという話になります。しかし、その時間スキルの技術的応用は、結局は監視というコントロールになるから、内発的モチベーションは湧いてこない。デストピアに陥っていく。

★またしてもパラドクスかあと。

★いや、それは、本来鴎友学園女子のような問題は、C軸思考で考えていく場=トポスなのに、それを知識問題として処理させているとことにそもそも問題があるわけだから、いったんC軸思考を通過するというチャレンジをすればよいのではないだろうか。

★それには、五感がどうしても必要だから、ワークショップのような活動が必要になる。その場合はリアルな空間は必要になるね。

★将来的にはそれもかなりオンライン上でできるようになるわけでけれど、今回のオンライン授業の流れはそういうことも議論になるだろうから、ますますC軸思考である<クリティカルシンキング・クリエイティブシンキング>の必要性が染みわたるのではないだろうかと。

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★いずれにせよ、生徒1人ひとりがもっている潜在的可能性の領域に立ち還り、それをカタチにする現実態を生みだす授業展開が必要。分割と統合は表層では、変換なのだけれど、深層では、シンプルに<置換>スキルでできてしまう。<比較・対照>スキルで<抽象化・一般化>すればできる。もちろん、差異の方が大事な場合もある。=か≠かがシンプルに了解できるという潜在的可能性が現実態に自らが変容できたとなると内発的モティベーションは高まるよね。

★そんな目が覚めるような学びの経験ができるには、まだまだオンライン授業だけでは不足しているかもしれない。いっしょに第二の脳を活用するワークショップは必要だね。

★しかしながら、今回のように、リアルな空間に集まることができない場合、どうするのか。VR使いながら、同じ学習道具を使ってやるしかないか。するとそこはまたまたAmazonなどが経済になるわけかあ。

★この業界の持続可能性は、オンラインになっても氷山モデルの深層と表層の<往来変容体験>が多様にできる環境ができるようになれば、それはありだねという対話が続きました。

★そういえば、今年の慶応湘南藤沢の国語の論述は、「お金」と「文字」の置換によって、「文字」の機能について説明する問題でした。この問題が楽しいと感じるのは、なるほど深層と表層の<往来変容体験>だったのですね。海底探検や洞窟探検やジャングル探検、宇宙探検のようにワクワクする学びの体験は、この<深層と表層の往来変容体験>だったということです。非日常と日常の往来といってもよいかもしれません。

★オンライン授業は、普段の授業と違い公開性が高いので、質についての議論が盛り上がります。そうそう、それにダブルバインド状況という表層で起きていることも、いったん深層に潜って再び帰還すれば、あるいはその往来を繰り返せば、解決の突破口を見出せます。それこそ探究だし、PBLの授業の醍醐味でしょう。

★身近な経験が大事だという人に限って、鴎友の図形問題のような問いを馬鹿にします。知識なんて!と。経験が大事なんだよと。でも、この問題を考えることも大事な経験なのです。だって、この問題から今のダブルバインド状態を解決する思考の方法を見出せるからです。

★学びを続けるとは、知識の問題を解き続けることではなく、次元を変えていくことです。問題の解法→数学的思考→往来変容体験→批判的思考・創造的思考へという具合に。この過程はそして、まさにU理論に相当しますね。鴎友のたった一問の図形問題でU理論が語れてしまう。子供たちと、U理論なんて学問的な話をしなくても共有できてしまうんです。

★知の森の探検、知の海底探検、知の宇宙探検、知の洞窟探検。。。知の冒険は多様な場で探検ができます。そして冒険にジレンマやパラドクスなどのダブルバインドの壁はつきものです。友人との出遭い、恋人との出遭い、賢者との出遭い、宝物の発見、アイテムの発見、自己成長、ミッション、そして暗黒面との闘い。ポスト・コロナショックの時代はまさに知の冒険物語なりましょう。みんなで希望に満ちた世界に変容しましょう。オンライン授業の動きはその世界を導く冒険物語の1つのゲートなのかもしれません。

★そんなことを感じながら帰途につきました。

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2020年3月26日 (木)

ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(5)聖学院 児浦先生の眼差し。

★京都から帰ってきて夜遅かったので、児浦先生(聖学院 21企画部長・国際部長・国宝部長)とZOOMで対話をしました。児浦先生とは、<新しい学びの経験>ワークショップのリハをいっしょにやっていたまさにその時に、3・11をSFCキャンパスで体験しました。そこからポスト3・11時代に必要な教育を模索しました。その1つが21世紀型教育だったのです。

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★しかしながら、新しいものの見方・考え方はまだ教育の枠組みの中に収まっていたので、C1英語とかPBLとかICTとか思考コードとかは、その背景の新しい人間存在、新しい経済社会の枠組みに対する新しいものの見方・考え方を生み出す学びの場だという理解をメディアにはされず、21世紀型教育を実践する学校は、ニューウェーブの学校の中に回収されてしまいました。

★こうなると、御三家を頂点とする偏差値階層ピラミッドと渋谷教育学園グループや洗足学園を頂点とするニューウェーブスクールの偏差値階層ピラミッドに振り分けられたまま、第3の私学としての理解が広まらない結果になってしまいます。

★そんなこともあって、21世紀型教育研究センターを同機構内に設立し、アップデートを企図しようと昨年から新しいワークショップ型セミナーやシンポジウムを行ってきたわけです。そんな折、今回のポスト・コロナショック時代に直面してしまったのです。

★さすがに、今回は世界同時的パンデミックですから、世界の社会に対するものの見方・考え方が新しくなるでしょう。どう新しくなるかは、それはまだ未知です。ですから、教育は、自然と社会と精神の循環を新しく構築する知性や感性や資質能力が生まれる新たな拠点として生まれ変わる必然性が時代から要請されているのです。

★そんな感じの共通認識を対話の中で確認しながら、聖学院が4月からどのように変貌しそれが社会解題を創造的に解決することにどのように貢献できるのかなどについて大いに対話が上昇気流に乗っていったのです。

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(絶賛予約中!児浦先生のマインドや児浦先生の多様な領域で活躍する仲間たちのマインドに共感できるでしょう!)

★いずれにしても、児浦先生とは毎月のように授業デザイン研究会でワークショップを共にしていて、参加される先生方のPBL型授業の共創型アップデートに立ち会っていますから、4月以降、この児浦先生の共感的コミュニケーション×他者のための個人マインドのワーックショップの泉を基盤に、教育×政治経済×自然×都市×SDGs×学問×・・・に対する新しいものの見方・考え方が生み出されていくと予感しています。大いに期待しております。

★具体的なことは4月以降、ご紹介していきます。とにかくサプライズの嵐になると思いますよ!

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2020年3月25日 (水)

ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(4)ノートルダム女学院の奇跡の動き。

★ノートルダム学院小学校の先生方とノートルダム女学院中学・高等学校の先生方が、現状の小中高のPBLなどの授業のクオリティを共有していくゆるやかでプレイフルなミーティングを行いました。自由参加で、カフェ風に展開していきました。

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★多くの気づきを互いにシェアし、今後もこのようなミーティングを開いていきたいという場になりました。しかしながら、これは校務分掌上のはなしではないし、まして管理職からやりなさいといわれたものでもなく、小学校の梅下先生と中高の霜田先生が日ごろから親しく、いろいろな社会貢献活動を行っている中で、最近互いにいろいろな動きが起きていて共有するとケミストリーが起こるかもしれないねと、自由参加でお知らせしてみようかという会話から生まれ出たブレストミーティングでした。

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★こんなことが起こるなんて、実は奇跡としか言いようがないのです。また大げさなと言われるかもしれません。しかし、小中高がPBL授業について互いに情報を交換してしまうなんていうことは、世の中にはそうあることではないでしょう。

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★だいいちノートルダム学院小学校で行ているチームNEXTの活動も、ノートルダム女学院で行われているナレッジカフェも今年になって自然発生的には生まれたがゆえに、その情報を共有するところから始まったミーティングです。そのようなチームが時同じくして生まれたということも奇跡といえましょう。

★小学校からは、自分たちは対話やグループワークも頻繁におこなっているし、グーグルフォームやロイロをかなり使ってPBL授業も開始している。中高は、どこまで進んでいるのですか?せっかくそのような新しい学びの経験をしている生徒が、中高に進んで満足を得られるだろうかという質問もでました。

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★それに対して、中高からは現状の報告と4月からはかなりPBL型授業は浸透していくというビジョンの説明がありました。そして今年京都大学に2名はいったけれど、今後はもっと増えるように深い学びをやっていきたいと。

★こんな話がザックバランにできるのは、開放的な精神の先生方が集まったからですが、この開放的な精神とか共感的なコミュニケーションができることも、実は日本の教育現場では奇跡なのです。

★そして、中高の数学科の中村拓先生からは、中高の数学科の取り組みと、中学で取り組んでいるPBLの授業が京都大学の今年の数学の入試問題の1つベクトルの問題を解くのに直結していることが説明されました。感嘆と同時にまだ信じられないというこれまたオープンな雰囲気の質問があったので、その場で説明するのにちょうどよい今年の鴎友学園女子の入試問題から平面図形の問題や立体図形の問題を瞬間的ではありましたが考えることにしました。

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★大いに盛り上がり、小中高の算数と数学の連携が京都大学へのキャリアデザインにもなるという気づきを共有できました。これも奇跡としかいいようがないでしょう。

★そして、さらに驚いたのは、霜田先生が休校中にグーグルクラスルームで哲学対話を行ったやりとりについて情報シェアした時に、ノートルダム学院小学校の卒業生がたくさんでてきて、小学校の先生方が口々に、おおがんばっているなあ、成長したなあと感嘆していたのでした。こんなことが語れることも奇跡でなくてなんといいましょう。

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★情報共有の後は、小中高混在したチームにわかれて、「常識」をテーマに、授業をデザインするミニワークショップも行いました。

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★それぞれ、母国語と英語の違いという言語的なアプローチや、サイエンスマス的なアプローチ、哲学的アプローチで授業デザインをして、シェア。今年のフェリスや桜蔭の中学入試、東大の帰国生入試においてテーマになった「常識」に関する問いにも対応できる授業であることを確認しながら、3つのアプローチの共通点と違いを、座標軸で表現していきました。

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★小中高の先生方が協働かつ教科横断的に授業デザインのワークショップが出来ること自体これも奇跡でしょう。そして、最終的にPBL授業を分析する座標軸に「可変」というキーワードが書き込まれました。期せずしてこの言葉が最後に出てきたのですが、これはノートルダムの生みの親であるマリアテレジア・ゲルハルティンガーが大切にしている大事な言葉だったのです。奇跡とはこういうことを指すのではないでしょうか。

★そしてこのようなノートルダム小学校とノートルダム女学院の共通の賜物を可視化できたのは、共感的コミュニケーションと他者のための個人マインドが共有されているからです。抑圧的世界ではなく共感的世界を日ごろから築いているからこそこのような奇跡が起こるのです。

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ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(3)第3の私学のポジショニング。

★第3の私立学校は、環境中心の生活世界(自然と社会と精神が循環している生活世界)を生み出す教育を行っていきます。SDGsについてコメントしない私立学校はそうないと思いますが、かりにSDGsについて言及したり探究していても、その拠って立つところが経済中心の生活世界(自然と社会と精神が分断されている生活世界)を常識としてあるいは前提にしていると、それは抑圧的世界の中での競争関係、優勝劣敗の陥穽にはまっていきます。

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★第3の私立学校として前回紹介した聖パウロ学園、聖学院、和洋九段女子、八雲学園、ノートルダム女学院、工学院、品川翔英、かえつ有明は、共通して共感的世界を創っていこうという気概が学内にあります。

★もちろん、現実社会はまだ抑圧的世界です。麻布のようにこの中にあって、いかに自由を論じ自由を確保し、さらなる次元の自由の突破口を見出すか議論し続ける私立学校もあります。しかし、麻布の歴史は、日本という国の抑圧的世界にあったし、共感的世界が現実態ではなかったのですから、それはしかたがありません。

★ただ、麻布は明治国家ができるとき、もう一つの近代化路線を考えていた可能性が大です。しかし、それを遂行しようとすると、明治政府に圧力をかけられるし、つぶされるリスクも高かったのです。それゆえ、現実社会である抑圧的世界でのポジショニングを獲得する動きをしていたのだと思います。東洋英和からの離脱はそれを意味すると思います。

★今では、生徒獲得も十分であるし、自由なカリキュラムによって、大学合格実績もでているので、新しい生活世界を学校当局として働きかけることはないでしょう。それは卒業生がやることです。

★しかし、第3の私立学校は、抑圧的世界でポジショニングを得るには時間も資金もありません。別次元でポジショニングを獲得するしかありません。ただし、その局面で、戦略的にこの第3のポジショニングを選んだわけではなく、建学の精神とリーダー教師が、NY国連のギャラリーに掲げられているノーマン・ロックウェルのモザイク画「黄金律」というコンパッションをベースにした共感的コミュニケーションと他者のための個人マインド(コミュニタリアニズム)を理念としているために、必然的にそこにいきついたのでしょう。

★この第3の私立学校は、それゆえ、社会に存在するコンサバ、リバタリアン、リベラリスト、コミュタリアンを統合するマネジメントをしていきます。つまり、複雑適応系組織創発となるのです。それゆえ、コンパッションが重要です。だからこそ、ドラスティックな改革は難しいのです。ダイナミズムは働くのですが、それはゆったりとウネリます。時熟が必要なのです。

★そして、ポスト・コロナショックという転機のタイミングで、その使命に期待がかかり注目されるようになるのです。

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ポスト・コロナショック時代に、新しい教育活動を開始する私立学校(2)第3の私学の登場。聖パウロ、聖学院、和洋九段女子、八雲、ノートルダム女学院、工学院、品川翔英、かえつ有明。

★新型コロナショックは、今後論じられていくと思いますが、自然と社会と精神の分断の広がりによって生まれてきています。人間の歴史は一方で理想的な自然と社会と精神の受験する世界を求めながらも、実際にはその分断を大きくしていくリスク社会の進化の歴史でもありました。今更言うまでもなく、その分断が小さい時代は自然による様々なリスクに対する浄化作用が働いていたのですが、産業革命以降の近代社会はその臨界点を超えて進化したわけです。

★そのことを決定的に明らかにし警鐘を鳴らしたのがローマクラブに提出された「成長の限界」でした。その著者のうち世に大きな影響を与えたドネラ・H・メドウズの発想や方法論は「システム思考」と呼ばれています。彼女が亡くなった後、その「システム思考」をさらに深めていったのが親友のピーター・センゲでした。

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★そして、その「システム思考」によって世界の変容の必然性を説いていきました。極めてシンプルな変容です。

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★上記のピーター・センゲの著書にある図のように、現実世界が経済中心から環境中心に変容することを提唱しているわけです。「成長の限界」が発刊されて48年経ちました。その半世紀の間に世界を震撼とさせる自然災害や感性症被害、テロ、恐慌などが数多くありました。

★今では、その問題解決がSDGsへとまとめられ、世界で共有していこうという流れになっています。が、実際にはまだまだ世界がそれを共有してはいませんでした。そこに今回の新型コロナウィルスの世界規模のパンデミックです。生活世界は実は同時にリスク社会であり、SDGsへの取り組みの必要性を世界が共有する転機となったのです。

★あらゆる領域が、変容します。その流れは1989年以降着々と進んできましたが、現実の生活世界の在り方が経済中心であったために、世界がそこに目を向けることはなかなか難しかったのです。しかし、ポスト・コロナショックは、その変容を加速するでしょう。

★そうなると、生活世界は大きく変わるわけです。オンライン活用活動世界になるのですが、それは変容の1局面でしかありません。大切なことは、従来の生活世界は抑圧的社会によって規定されてきましたが、今後は共感的社会によって新しく構築されていくというダイナミズムへの気づきです。

★そうなったとき、教育の分野も変容していきます。その変容の1つのモデルは、首都圏の私立中学受験の現象にも反映しています。1986年から1995年までは、御三家中心の中学受験でしたが、グローバリゼーションとIT革命によって、ニューウェーブが台頭するようになりました。2011年の3・11以降、生活世界の変容を感じていたいくつかの私立学校が現れましたが、生活世界の変容のリアリティがまだなかったために、それらの学校はいったんニューウェーブのグループの中に回収されてしまいました。

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★しかし、ポスト・コロナショック時代は、生活世界は、抑圧的世界から共感的世界へシフトする動きがあらゆる領域ででてきます。そのとき、やっと新しい教育活動が市場で支持される第三の私立学校が現れます。市場自体が共感的世界になっていきますから、その生活世界を求める人々が支持するわけです。

★もちろん、この気づきは、まだまだこれからですが、地政学的リスクと経済リスクが日々ニュース報道を埋め尽くしていきますから、気づかないわけにはいかなくなるでしょう。その第三の私立学校はどこなのか。その希望の松明を手に取って新しい教育開発に着手しているところは、聖パウロ学園、聖学院、和洋九段女子、八雲学園、ノートルダム女学院、工学院、品川翔英、かえつ有明などです。もちろん、このすべての学校が第三の私立学校を全うするかどうかはわかりません。

★たとえば、工学院は田中歩先生のチーム次第ですし、かえつ有明は佐野先生のチーム次第です。ここで、田中歩先生と佐野先生の名前を挙げたのは、共感的世界を創り出すエネルギーの持ち主で、ひとつの学校の中に収まる教師ではないからです。もちろん、この共感的世界をつくるキーマンはたくさんいます。今後ご紹介していきます。

★新しい生活世界や共感的世界とは何なのか、なぜ必要なのか、第三の私立学校の教育システムはどうなっていくのか、そして、この抑圧的世界と共感的世界が併存する過渡期にあって活躍する首都圏模試センターが果たす役割などについても考えていきたいと思います。

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2020年3月24日 (火)

ポスト・コロナショックで生まれる新しい教育活動を開始する私立学校(1)聖パウロ学園

★新型コロナウィルスのパンデミックの加速は、あらゆる領域をリスク領域に変えています。世の中はそもそもリスク社会なのですが、今までは脅威が起こったところでそれは意識化され収束/終息するとその危機意識や復興意識が風化しがちでした。

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★しかし、今回は世界同時的にパンデミックは加速していますし、長引くと予想されてもいますから、リスク社会をどう乗り越えるかどう回避するかを日々世界中で配慮しながら生きて行く新しい生活世界を構築していく局面を迎えました。

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★こうしている間にも地政学リスクはいつ暴発するかわからない状態だし、経済活動の停止がこのまま続けば、リーマンショック以上の被害が世界を覆う臨界点にまで達するのではとすでに懸念されています。何より医療崩壊を招けば、直接人命が危機にさらされます。軍事力の暴発、経済力の崩壊、医療崩壊は、各国の政治体制まで崩しかねません。

★そんなとき、学校の役割は何でしょう。国の政治体制まで崩れたとき、学校の機能もダウンしてしまいますが、私立学校は比較的機能を停止しないですむでしょう。あくまで相対的ですが自由な意思決定ができるからです。

★もちろん、シンプルな動きになりますが、軍事力や経済力、政治力を立て直すことができるのは、知性と強い精神しかありません。必要最小限度の学びのツールで、最大の知性と強靭な精神を生成できるスマートスクールの誕生を期待したいところです。

★それには、教育イノベーションを生み出す挑戦をし続ける教師のタフネスが重要です。

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★聖パウロ学園の英語科主任の大久保先生とお会いしましたが、対話の中で、大久保先生のそんな思いがあふれているのに勇気をもらいました。今、英語科は一丸となって新たにビジョンを共有し、システム思考をフル回転しながら、ブレストして新しい英語教育の開発をしているそうです。

★今までのようなグローバル教育は地政学的、経済的リスクが大きくなる可能性が高く、それでいてグローバルな協力は欠かせないわけです。そのような葛藤やジレンマの情況で、スマートスクールとしてシンプルでベストな英語教育とは何ができるのか?少人数の学園が故にエッジの利いた教育活動ができるということです。

★その内容については、4月以降にまたご紹介しましょう。

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品川翔英の国語科の挑戦(2)シラバスの<構造>デザインをICTを駆使し共有 <自主・創造・貢献>を基盤に

★先週15日にアップした記事「品川翔英の国語科の挑戦(1)PBLの<構造>デザインの共有 普遍的かつ独創的な構造の発見へ」は、15日から23日までの期間では、アクセスランキングは2位。品川翔英の注目度は、高まりつつあります。

★さて、4月の新中1生、新高1生を迎えるにあたり、ちゃくちゃくと準備が進んでいます。1週間前は、今年から本格的に取り組むPBL型授業の<構造>をデザインしたので、今回は、その構造が生徒の成長、特に校訓である<自主・創造・貢献>が相互に関係し合いながら発達していく場としてシラバスの<構造>をデザインする作業に進みました。

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★まずは、今井先生から新中1のシラバスのプレゼンがありました。前回デザインしたPBL型授業のMIR分析(企業秘密です^^)を組み込んだシラバスになっていました。つまり、思考スキルや感情のスキルなどが盛り込まれています。

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(今回は、iPadを活用しながらミーティングを行いました。左から田中先生、平岡先生、今井先生、西山先生。自分たちのミーティングでタブレットを活用することで、授業でも活用する準備にもなるという一石二鳥にも三鳥にもなる創発ミーティングだったのです。普段から平岡先生は変幻自在にICTを活用しています。それを国語科でシェアするという主任の西山先生の共感的リーダーシップが発揮されていました。)

★そのうえで、再度、校訓である<自主・創造・貢献>が具体的にどこで展開していくのかリフレクションしていきました。ロイロノートを活用しながら、1人ひとりのアイデアをディスカッションして共有し、さらに統合していく創発型のミーティングでした。

★ICTの学びの達人でもある平岡先生が、ケアフルなサポートをされていたので、さくさくちゃっちゃっと分析と統合の両輪が進みましたが、それだけ高密度のミーティングになっていたのには驚きました。

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★PBL型授業では、多様なアクティビティタイプから生徒の発達段階や単元及びその単元の展開の度合いなどにマッチングするようにアクティビティを取捨選択していきます。

★それゆえ、今回はハーバード流儀のアクティビティタイプを同時に活用しながら展開していきました。<思考ツール>活用アクティビティとして、シラバスの中で気になる「言葉」の背景にある授業のメカニズムをループで表現しました。たとえば、校訓の<自主性>や<創造性>、<貢献>を授業の中ではどのように生み出してくのか各人がループ図を描いて、ロイロノートでシェアーして<プレゼン>アクティビティを挿入していったわけです。

★プレゼン後のリフレクションとして、ハーバード流儀のアクティビティタイプから<Speed Dating>や<Quick Write>などを活用しました。

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(<Speed dating>のシーン)

★アクティビティによって、生まれ出てくる感情や気づきは違ってくるのですが、メンバーの内側からあふれ出てくるものがあるという感覚を共有していったわけです。

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(<Quick Write>のシーン)

★ハーバード流儀のアクティビティタイプは、米国の教師のコミュニティが、それぞれのアイデアと実践をシェアして生まれています。なぜそのアクティビティを行うのか、どんな効果があるのか、事例をシェアし、議論し、共有しています。アクティビティと生徒の存在の成長のシナジー効果としてどんなケースのがるのか、互いの経験値を高めていくというやり方が基本です。データで検証する量的リサーチではなく、ケースメソッド中心の質的リサーチの集積だと思います。

★品川翔英の国語科の先生方は、そのコミュニティのサイトを活用していたのです。

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(<ぐるぐる>のシーン)

★実際、<ぐるぐる>(眩暈:dizziness)などの多様なアクティビティを通して、先生方は、深堀、発想の転換、モティベーション、ズレなどの気づきを得ていました。創発というコトでしょう。

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(田中先生が、今井先生のアイデアを自分のループ図に重ねて説明しているシーン。表現は違うけれど、共通した思いがあることが言語化・見える化されていました。)

★ロイロノートは、このような創発ミーティングにはもってこいのツールで、お互いの考えを並べて、具体的に互いの発想がどこで共通しているのか違うのかなどを簡単に理解することができます。見える化されるので、明快に了解できるわけです。これも、さくさくICTを活用できる状況に国語科がなっているから可能なのです。

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★こうして、シラバスのプロトタイプは再びリファインすることになりました。プロトタイプ―リファイン(脱構築していく過程)の連鎖は、PBL型授業をデザインするときの基本のリズムです。

★今回、授業の前提である<基盤>を創るアクティビティやプログラムをシラバスに盛り込むことによって、生徒の内側から生まれ出ずるモチベーションや共感、愛情、自主性、創造性などが言語活動を通して貢献につながっていくビジョンを先生方は共有・実感しました。

★表現は違っても、同じ想いでいること、自分たちのポテンシャルの豊かさを実感されていたようです。同時に、教師も生徒もそのポテンシャルをどのように現実態としてカタチにできるのか。そこがPBLの授業とその積分であるシラバスのデザインにかかっていることも改めて確認し、さらにブラッシュップやアップデートしていこうということになったのです。品川翔英の国語科の挑戦はさらに続くのでした。

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2020年3月23日 (月)

システム思考×複雑系組織(2)私立学校のリスク社会の乗り越え方①

★今回の新型コロナウイルスショックは、世界が丸ごとリスク社会そのものであることを顕在化させたわけですが、私立学校はその影響を直接受けています。今多くの私立学校で3カ月留学などの時期ですから、生徒の海外への渡航延期や中止の意志決定をしているし、出入国制限の関係で、留学中の生徒を帰国させる行動で奔走しています。

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★もちろん、一斉休暇中の生徒の普段の学習の構えを持続可能にしたり、効果的な過ごし方の行動もしています。こうした意思決定や行動の判断ミスは、すぐに生徒募集という経済活動にも支障をきたします。

★私立学校の教師も生徒も実は行動や価値意識の持ち方次第では、経済活動という生活世界に直結する影響を受けてしまいます。優秀な教師がどんなに1人がんばっても、経済活動の循環=3ポリシーの実現の循環がうまくいかなければ、閉校に陥るからです。

★ただし、私立学校は企業ではないですから、すぐに閉校はしませんから蘇生する時間は稼げます。また公立学校のように統廃合の決定に従わなければならないということもないので、やり方しだいでは何とかなる可能性が大ですが、そのやり方とは広報戦略とか学習の仕方の改革とか進路指導の方法とかそれぞれ単発に行われているのではなく、リスク社会を乗り越える方法として統合されている必要があるのです。そのことがはっきりしたのが今回のショックだったわけです。

★国家と公立学校、自治体、企業、NPOなどの組織と私立学校の組織は、その経済的基盤は違いますが、同じリスク社会に位置づけられています。また国家組織と企業組織の中間形態でもあるので、私立学校のリスク社会の乗り越え方について考えていくのは、なんらかの参考になると思います。それに中間形態としては医療組織はわりと私立学校の組織に共通する点も多いと思われますし。

★さて、そのリスク社会を乗り越える方法ですが、

1)生徒がいかなるリスク社会であれサバイブできる資質・能力=共感的システム思考を身に着ける学びの環境の構築の仕方と

2)その環境を支えるあるいは生み出す組織マネジメント=複雑系組織の仕方の相乗効果を考えていくことによってみていきたいと思います。

★おそらく、この<システム思考×複雑系組織>の相乗効果が、生徒の未来に希望を灯すことになり、それは結果的にリスク社会を生徒自身が乗り越えることができると同時に、少しでもリスク社会の暴発を防ぐ組織システムの脱構築や創造を果たしていくことになるでしょう。

★さて、今回の新型コロナウイルスショックは、ここにきて、多様な価値観がどうあれ、世界が一丸となって解決しようという協働的な動きになってきています。自分だけ助かろうというのは見えない敵に向かっては不可能であることは誰もが気づいたことでしょう。この見えない敵は、何も新型コロナウィルスだけではなく、むしろ忍び寄る権力や情報の隠ぺいというシステムなどが大きいということも理解し始めているわけですが、この見えない敵に対応するには、協働的動きしかないのだと世界同時的に認識共有がされたと思います。

★ただ、その協働の在り方にはいくつかのパターンがあります。上記の図に在るように、リバタリアン的な価値意識をもっていても、自分が生き延びるには他者は無視できません。自由に生きるにしても、抑圧的他者関係を仕組むと、それは自分に跳ね返ってきますから、あくまで共感的コミュニケーションをとりながら、個人の自由を優先するという立場もあります。つまり、リバタリアンも、協働的に行動するのが今回だと思います。

★共感的コミュニケーションとなんといっても他者の幸福を優先しながら自分も幸せに生きて行くというゴールデンルールを軸にしているコミュニタリアンは、今回はもっとも目覚ましい活躍をしているのだと思います。そして、リスク社会が顕在化し、そのことを共有した今、コミュニタリアンがリーダーシップをとっていくのだと思います。白熱教室で知られるようになったサンデル教授のコミュニタリアニズムの発想が今現実態になろうとしているのかもしれません。

★もっとも、サンデル教授は、ブレアークリントン時代から彼らのメンターとして活躍しているので、紆余曲折はあるけれども、1989年のベルリンの壁崩壊以降の世界の変容の在り方の模索やIT革命の世界の変容の在り方について、世界同時的に認識するようになったということでしょう。トニー・ブレア時代に、再帰的近代社会やリスク社会の概念も論じられるようにもなっていました。新自由主義との葛藤で、なかなか理想型は浮上してこなかったのですが、今回は浮上してくるかもしれません。もっとも、このテーマは近代誕生と同時に生まれているので、新しい社会課題ではありません。

★個人と他者のバランスをとるリベラリストは、しかし、やはり自分軸が基準です。バランスをとる規制は抑圧的にならざるをえないですね。フランスやドイツの動きは、リベラリズムがベースです。

★米国のトランプ大統領のように、個人のための個人の幸せを優先するために抑圧的コミュニケーション行動を自由に行うコンサバも、今回は自粛要請でパンデミックを乗り切ろうとしています。

★かくして、一丸となって協働するといっても、みんながコミュタリアンになるわけではないのです。それでもリスク社会を前に協働的に行動せざるを得ないわけです。

★だから、コミュタリアニズム、リバタリアニズム、コンサバティズム、リベラリズムの4つの価値意識の相関関係で、システム思考やコミュニケーション、マインドの質は変容します。

★私立学校の場合、建学の精神の共有は教師も生徒もしているので、協働的な<システム思考やコミュニケーション、マインド>はあります。しかし、基本、これまでは、コンサバティズムとリベラリズムとの葛藤が主役でした。

★受験生や保護者もそうでしたから、生徒募集という経済活動もそれなりに回っていたのです。

★しかし、1989年のベルリン壁が崩壊して以降、無意識理にそれでやっていけるのかという動きが始まりました。1995年の地下鉄サリン事件と関西淡路大地震もその動きを強めることになりますが、風化するという反動もありました。9・11の世界同時テロでやはりその意識は立ち上がろうとします。しかし、今のようなSNSの情報共有を世界同時的にはできませんでした。むしろ米国の覇権主義への憧れが広がったでしょう。その意識が明快に立ち上がったのは3・11でした。しかし、ここを起点にSNSが進化し始まめるので、まだ世界同時的にリスク社会を共有するにはいたらなかったのです。

★しかし、今回はSNSやオンラインの目覚ましい進化の中で起こったので、それは白日のもとにさらされたということでしょう。

★このようなリスク社会に立ち向かうには、抑圧的コミュニケーションでは難しいですね。情報共有ができない欠点があるからです。情報共有がされても、情報誘導で共有されていない部分が背景にあります。SNSやオンラインは、良くも悪くも、それをぶっ飛ばします。

★そこで、共感的コミュニケーションが重視されるようになりました。<共感>という言葉も<PBL>と同じくらいバズワードになってきていますが、それはその必要性が人々の心の底に見え隠れしているからでしょう。

★かくして、私立学校の組織マネジメントは、共感的コミュニケーションをベースにしたコミュタリアニズムとリバタリアニズムのバランスで成り立っているところが、市場で評価され支持されるようになっていきます。経済活動を回すのは、この2つの価値意識がまずベースになります。そのうえで、残りの2つの価値意識とのバランスをどうするのか。私立学校は今複雑適応系組織になろうとしている、あるいはならざるを得ない局面を迎えています。

★そして、このベースがないと、共感的システム思考を生み出す学びの環境を創ることができないのです。それができなければ、経済活動は右肩下がりになります。(つづく)

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システム思考×複雑系組織(1)宇宙船地球号は恒常的にリスク社会であるコトが共有がされた。

★今回の新コロナウィルスのパンデミックは、各国、各自治体、各団体、各家庭などそれぞれのレイヤ―(層)でなのかコミュニティ(相対的に独立した機関)なのか、ここでは定義しないで話を進めていきますが、とにかくメンバーの能力とメンバーの組織力の複雑系が、まるで細胞のように離散集合しています。とりあえず、現代国家はコミュニティかというとそういうイメージでもないので、レイヤーを選択しておきますが、各レイヤーは本当に様々なのですが、おそらく協働しなくてはいけないという方向性は一致していると思います。

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(大名庭園というガーデニングは、システム思考と複雑系組織を考える上でのヒントであるとシリコンバレーやHTHでも注目されている。エンジニアリングからガーデニングへとまでいわれている。)

★しかしながら、それぞれのメンバーの能力開発が、必ずしも思考コードでいうA軸思考×B軸思考×C軸思考、つまり<共感的システム思考>になってはいないので、協働の質的な差異も多様です。

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★それぞれのレイヤーは、レイヤー同士も同じレイヤーの中でも、<システム思考>の発達度合いと<コミュニケーション行為>の行動特性と<自己と他者の関係マインド>(ガイストとは必ずしも一致しない)の価値観によって、非常に複雑系な状況を生みだします。

★現状は、みんなで協働して乗り越えようというのは、一致はしているのですが、その方法やどこまで協力するかという基準などは様々でしょう。

★今は宇宙船地球号にパンデミックが拡大していますから、世界中が協働体になっているように見えます。これがどのくらい続くかどうかはわかりませんが、一つのリスク社会を乗り切るモデルが、後から振り返ればできあがると思います。わかりやすいのは、フランスの例ですね、今月17日正午外出禁止令が発行されるや否やそれまでの「日常」は急に終わるのです。

★フランス市民は、自由を謳歌しますが、ルールも守ります。そのルールが倫理観的なものであれば、自由は拡散し続けますが、一般意思として認めている法の支配の枠内では、自由は法の支配を受け入れる自由になります。17日正午前と後ではその違いが明確でした。なるほど、コミュタリアニズムが根底にはベースにあるのだということがわかります。

★日本だと、そこは緩やかであるのはみていてわかります。この3連休、公園も百貨店も結構外出する人口は多く、1万人イベントも行われたぐらいです。たぶん、日本は独特の組織観ですね。それはあとで述べたいと思います。

★台湾のように、初動からコントロールが巧く行くケースもあります。おそらくコミュタリアンというよりリベラリズムの徹底ということなのでしょうね。中国当局はコンサバティズムなので、当局が動き出すとものすごい勢いですが、そこにいくまでに、国民が動くのに時間がかかるのでしょう。動いたときには暴動になってしまいがちなのは、その時間ギャップが生み出す心的爆発エネルギーなのでしょう。

★台湾は、法の支配というより法治主義的なリベラリズムなので、国民と市民性の使いわけが、欧米ほどではないですが無意識にあるのだと思います。リスク社会に対し、当局による危機管理だけではなく、市民からの情報も吸い上げられるシステムになっているのでしょう。

★米国のコンサバティズムとリベラリスムの弁証法的な働きが中国と台湾で役割分担されている可能性があります。もちろん、米国と中国の政治経済体制が違うので、こんなざっくりとした考え方はどうなのかとなるでしょうが。

★さて、国家レベルの話はこのへんいして、今回それぞれのレイヤーのうち注目したいのは学校組織です。医療組織も注目したいのですが、現場いるわけではないので、メディアに拠ることにします。今回のような新型コロナウィルスショックは、両方ともメンバーのシステム思考と複雑系組織の質の高さが求められるので、本当は両方考察しいのですが、そこはキャパを超えています。

★SNSなどの発達で、実は恒常的にリスク社会であることが世界同時的に共有できたのが、新コロナウィルスショックだったのだと思いますが、そこでメディが注目したのが医療組織と学校組織です。もちろん、経済問題がありますから企業組織も注目しています。しかし、企業組織は、組織の在り方よりもマーケットのダメージの情報が多く、リスク社会を企業組織がどうのこうのするというより、マーケットリスクをどう回避するかに焦点が置かれているような気がします。

★そこで、ここでは、学校組織の在り方についてみながらリスク社会を乗り切るシステム思考や複雑系組織について考えていきましょう。医療組織については、先述しましたが、その現場にいないで、憶測のみで語ることになってしまうので、メディア情報に拠りながら、語れる範囲で見ていけたらとは思います。

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2020年3月22日 (日)

首都圏模試「思考コード」2021(14)A軸思考(知識・理解)とB軸(適用・論理)思考とC軸思考(批判・創造)の関係性を考える③常識とは何か?フェリスと桜蔭と東大と。

★C軸思考、とくにC3を象徴する問いを毎年出題するのはフェリス女学院。今年も「あなたなが変えたいと思っている現代の常識を一つ挙げ、その常識を捨てたときどのような変化が起こると思うか、あなたの考えを200字以内で書きなさい。」という問題が出題されました。もちろん、いきなりではなく、文章を読んで、常識に対する見方や考え方について理解したうえで、自分の考えを書いていく論述型ですから、A軸思考、B軸思考を重ね合わせながら考えていくC軸思考の問題です。

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★今年の桜蔭も「―線部「コペルニクス的転回」とはどういうことですか。この表現で筆者が言おうとしていることを具体的に説明しなさい。」という問題を出題しています。傍線部について筆者の考えを具体的にまとめるある意味要約問題です。B3レベルのB軸思考ですが、コペルニクス的転回は、常識を変えることですから、あなたならどんなコペルニクス的転回を考えますかとなると、フェリスと同じ問題になりますね。要するに、C軸思考は、A軸思考とB軸思考が重なり合っていることが文章×C軸問題で見える化されているわけです。

★そして、東大の問題。昨年の文Ⅲの帰国生入試で、「「常識がある」とはどういうことか。」という問題が出題されました。この問題は、文章は提示されていません。しかし、この問題を解く準備として、受験生は、様々な直接的&間接的経験をし、A軸思考として読解問題を考えB軸思考として小論文を行ってきたわけです。小論文の場合は、C軸思考のものもありますが、たいていは2つのシナリオを推理して選択していくという形のものが多いわけです。そのシナリオはたいていの場合、既存のものです。

★しかし、この常識をどうとらえるかという問題は、シナリオそのものを脱構築する問題で、本格的なC軸思考です。こうして並べてみてみると、C軸思考がA軸思考やB軸思考を重ね合わせていることが了解できるのと同時に、C3思考のC3レベルのさらに質の違いがあることがわかります。

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★「私なら」どうするのかという自分軸を問うものは、なるほどC3なのですが、そこで終わることはないのです。そう考えている自分軸は果たしてそれでよいのかと捉えるのがIBのTOK的なC3の問いになります。

★「私なら」どうするのか?→「私たち」ならどうするのか?→「世界」はそれでよいのか?→「世界」をどうとらえて、そう考えるのか?・・・・無限に問いは続きます。メタ認知そのものを脱メタ認知してしまう思考がC軸思考のC3レベルなのでしょう。もちろん、中学入試の段階では、「私なら」どうする?で十分です。あとは入学後、脱メタ認知までの探究のプログラムがその学校にあるかですね。

★つまり、共感関係の中で自己変容していく学びのプログラムの有無が大切になってきます。A軸思考が優秀でも頑な環境順応型では、社会で通用しないし、A軸×B軸思考で優秀でも共感的でなければ社会では役に立たないし、A軸思考×B軸思考×C軸思考で賢いけれど自分軸でとまっている自己主導型はもっとも厄介で、葛藤マシーンになります。自分が正義だと思っているから、どうしようもありません。

★自分軸と他者軸が共感し合う関係を創造できるかどうかがカギだし、そういう人間存在が育つ学びの環境を創りたいものです。

★別の言い方をすると、subject-being-objectの段階では、コペルニクス的転回以前の思考の枠組みです。これをベースにしているこれまでの教育を20世紀型教育と呼んできました。A軸の環境順応型、A軸×B軸の環境順応型(順応と共感は全く違います)がたくさん生まれました。しかし、新型コロナウィルスショックの現状を見ている今の私たちには、このベースでは創造的問題解決はできそうにないことは感じているはずです。intersubject-interbeing-interobjectの複雑適応系のシステム思考として、自己変容し続けるA軸思考×B軸思考×C軸思考というのがあるわけです。自分軸で止まると、その3つの軸の思考は、実はA軸思考のファイリング知識などに回収されてしまうのです。

★以上のような考え方は、なかな図にしにくいですが、イメージとしては現段階では上記のようなものになりました。

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2020年3月21日 (土)

首都圏模試「思考コード」2021(13)A軸思考(知識・理解)とB軸(適用・論理)思考とC軸思考(批判・創造)の関係性を考える②武蔵のお土産問題

★武蔵の中学入試における理科の最終問題は、いつも決まってお土産問題。今回は受験生が袋の中から取り出したものは二つの同じドーナツ型の磁石。その二つの磁石がどのようにくっつくのか、実際にやってみて、すべての組み合わせをスケッチし、どうのように組み合わさっているのか<説明>する問題でした。

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★このお土産問題として、受験業界では人口に膾炙されていて、毎年どんなお土産が提示されるのか、業界人は楽しみにしているわけですが、なぜ楽しいかと言うと、話題性という側面ももちろんありますが、単純で誰もが取り組みやすく、それでいてなかなか難しいB3思考をフル回転する問題だからです。

★問いのねらいは、おそらく、<対象=客体>を多角的に観察して、それを<絵>と<言葉>に<置換>える能力があるかどうかでしょう。「観察」する構えは、社会科学であれ自然科学であれ重要です。先入観を排除しながら、みたままをありのまま理解し再現できる能力。再現する時には論理が必要です。

★なぜこのお土産問題がB3かというと、とにかく多角的アプローチが大切なのです。毎年、手にとり、触りながらいろいろな角度から見ながら≪眩暈≫がするような第二の脳(手はそう言われています)で未知の体験をしていくのです。

★したがって、実はここはC軸領域ですね。ただ、創造的作品を創るわけではなく、分析で終わるので、最終的な採点段階では、B軸だと受験業界ではとらえられうでしょう。それで構わないわけです。受験生もそのような対策をしていきますから、創造的な思考を行っているとはもはや感じていないということもあるでしょう。

★しかし、袋を開けて未知なるものを手に取る瞬間は、C軸思考が発動するトキなのです。そこから、しかし受験モードになって、トレーニングしてきたように、お土産は、物体ですから、3Dの構成要件にしたがって、考えていくでしょう。

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★今回の二つのドーナツ型の場合、くっつくパターンは、接するところが、どのような面になっているのかそれとも点になているのか、それとN極とS極があるので、その関係を組み合わせてカテゴライズ<分割・統合>していくわけです。

★たしかに第二の脳<手>を使うだけでもできるのですが、それではもれなく観察したかどうかわからないので、思考スキルを活用して最終的には第一の脳を発動するわけです。ですから、C軸思考は背景に退き、B軸思考が前面に出てきます。

★この問題が、A軸思考ではできないのは、出題者側が、いままで経験したことのない問いを考えるからですね。ここでワクワクできるかどうかも大切です。好奇心は、科学者のもっとも大切にするモチベーションですから。

★それにしても、このシリーズでご紹介した武蔵の社会の最終問題といい、理科のお土産問題といい、ハザードマップとか二つの磁石とか、リサーや観察したことを<言語化>する<説明>とはなんでしょう。

★社会科学や人文科学では、理由<因果・相関>スキルを発動しますが、自然科学では<具体と抽象>の<置換>スキルを発動します。

★自然科学では、なぜ?ともちろん問うのですが、それは「~だから」という表現ではないのですね。具体的に「こうなっている」そしてそれはなぜ?と問うても「それはこういうシステムになっている」と置き換えていくのです。

★ですから、根拠やエビデンスといたっとき、「~だから」という構文にこだわっていると、自然科学の発想の芽が摘まれてしまう子供がでてきます。人間はなぜ存在しているのか?「人間は~だから」というのは、証明のしようがないのです。もちろん、論理的な整合性として物語としてはどれがすてきな最適な物語かで、そこに参加している共同体のメンバーが納得すればそれが根拠やエビデンスにあんりますが、違う共同体では認めれないということが多々あります。というかこの論争の連綿とした時の流れが人間の歴史あkもしれません。

★ところが、自然科学だと、「人間は~というシステムになっている」という仮説の検証過程こそが根拠やエビデンスです。

★つまり、理由とか根拠とか言ったときに、構文的理由・根拠とシステムとしての理由・根拠の2通りで私たちは対話しています。論争や感情のぶつかり合いが起こるのは、その意識をお互いにしていないからです。

★でも意識できるようになると、主体としての自分は相互主観だし、相互主観が見ている対象はいろいろな角度からみた視点の相互客体であることがわかり、その相互関係は無限に続きますから、その無限の流れに凛として立ちながら相互主観とお相互客体の統合をジェネレートする相互存在としての自分を見出すことができるでしょう。

★鏡に映してこれが自分だと思っているところに自分は実はいないわけです。鏡に映っているこれが客体だと思っている対象も相互接点の関係によって見方が変わってきます。鏡には映っていない相互客体があるわけです。

★鏡にその客体をもっていっしょに映った私も客体も、実はその背景にある相互の編集によって生成された物語の中にいるわけです。その物語を共に編集する生成するinterbeingとしての私たちは、まだ顕在化していません。世界が平和になるには、この物語の共編集、共生成が大事ですね。

★これがA軸思考から解放されなければならない本当の意味でしょう。

★二つの小さなドーナツ型の磁石を観察する生徒の構えの中に、そんな大切な真理が隠されていたわけです。武蔵が名門校といわれるゆえんは、東大の合格者の数云々ではなかったということです。

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2020年3月20日 (金)

首都圏模試「思考コード」2021(12)A軸思考(知識・理解)とB軸(適用・論理)思考とC軸思考(批判・創造)の関係性を考える①SFCの国語

★2008年から、慶応義塾湘南藤沢(SFC)中等部は、国語の入試問題でC軸思考の問題を出題しています。最初の頃は100字記述だったのですが、ここ数年は160字から180字の記述が多いですね。2020年の入試問題はまだ手に入れていないので、2019年の問題を見てみましょう。

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★上記の問題以外に長文2題の読解問題と語句問題も出るので、このC軸思考問題もちゃっちゃっとやらなくてはならないのですが、グラフの読み取り自体はA2思考とB2思考で解決できるので、それほど時間はかからないでしょう。

★ただ、この問題はこのグラフとしての<事実>の読み取りが、真実であるかどうかは、情報が少なくてわからないから、それを検証するためにはどうするのか問うています。ここが本題なわけですが、これもふだんの学校の生活体験の中で解決できる部分があるので、ちゃっちゃっと解決できてしまいます。

★身体検査とか保健体育の授業とか持ち出せばよいのでしょう。

★難しいかどうかというより、<事実>の物語編集とその物語がフィクションではなくて、ドキュメンタリーくらいの真実性があるかどうかを確かめるクリティカルシンキングがあるかどうかを問うているのでしょう。

★しかし、これが入試問題ではなく、SFCに入学してから授業で扱われたらどうなるでしょう。心理学やスポーツ科学、脳神経学、バイオテクノロジー、AI人間などの話に発展していくことでしょう。

★しかし、それには、<事実>としての物語をA軸思考とB軸思考で確かめておく必要があります。というより、C軸思考と同時に行われる話です。

★もともと経験の中から、あれっと思ったことを仮説を立て、推理し、検証し、そうそう調べることは言うまでもなく行います。とにかく、直接的経験であれ、たまたま二つのグラフが映し出す間接的経験を通してであれ、あれっ!?と思たっところから、A軸思考とB軸思考とC軸思考のループが回転し始めるでしょう。

★≪読書≫・≪自然との戯れ≫・≪社会のフィールドワーク≫・≪生活世界≫の直接的かつ間接的経験を通して生まれてくる気づきをA軸思考だけで回転させていくことは人間<存在>を無視しているというコトなのですね。私たちは、意外といつの間にかA軸思考のA1→A2→A3のループで学ぶことに慣れてきました。そこから解放されるには、SFCのような問題をプレイフルに学べるかということです。

★そうそう、この問題は、もちろん、C3思考の問題です。そして、適性検査型入試や思考力入試などの新タイプ入試は、このような華問題が満開に咲き乱れています。

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首都圏模試「思考コード」2021(11)A軸思考(知識・理解)とB軸(適用・論理)思考の関係性を考える②事実と存在 武蔵・麻布・聖学院

★今年の武蔵の社会の入試問題の最終問題は、ハザードマップの例を挙げ、その有効な使い方の<説明>を記述する問題でした。武蔵の社会科の入試問題全体は、昨年の台風や洪水の災害の経験を通して、社会、自然、科学技術、生活世界、人間の存在について総合的に思考する問題でした。自分ならどうするというC軸問題は出題されていませんでしたが、A軸思考とB軸思考を重ね合わせる思考力を発揮する問題だったわけです。

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★武蔵や麻布は、探究の入口に誘うテーマ主義的入試問題で、受験するしないにかかわらず考えてみる価値ある問題です。聖学院の思考力入試問題も同じ響きを奏でています。聖学院の場合は思考力セミナーを開催していますので、参加すると、麻布や武蔵同様の思考力を膨らませる体験ができるし、さらに、実は、C軸思考をフル回転させるところまで行き着きますからわくわくする学びになっています。

★やはり、自分ならどうするという、<事実>と向かい合う自分という<存在>に思いを巡らすところまでいかないと好奇心や開放的精神、深く鋭い問いが自分の中から生まれてきません。

★しかしながら、もちろん<事実>を理解するスキルとそれを説明する<論理的>思考力は大切です。このハザードマップの有効な使い方の<説明>も、<事実>に基づいていなければなりません。ウム?アレっ?武蔵のこの問題は、<事実>を<説明>するだけでは実はなかったのですね。

★ハザードマップの有効な使い方とは、誰にとって有効かというと、ハザードマップの便利さや有用という機能としての<事実>とそれによってリスクを回避したりサバイブできる私たち人間<存在>が重なり合っていなければ意味がありません。

★この問いは、ハザードマップの機能としての<事実>を説明するわけですが、そこには、実はその地域の地理的条件や経済的状況、生活世界の実態などが集約されているはずです。マップとしての<事実>は、その地域の地理的条件や経済状況、生活世界の実態としての<事実>が反映しているということです。

★つまり、そこには人間<存在>があるということです。しかし、それを全貌する直接的経験はできないわけです。ハザードマップという機能(ファンっクション:関数)としての<事実>は、その向こうに人間<存在>の現状がどうなっているかを感じたり考えたりする間接的経験の場だったのです。

★この間接的経験は、もちろんハザードマップによってイマジネーションを膨らませて復元するのだけれど、そのイマジネーションがフェイクでは困ります。そのアイデンティティを検証しなくてはなりません。自ずと地理的データをベースにする自然の状況や経済社会の状況を示す様々なデータを調べたり読み取るA軸思考が動員されることになります。しかし、生活世界はどうでしょう。ここはA軸思考では実はとらえられないで見落とされているところですね。

★だから、人間<存在>が幸せに生きるとはどういうことかという基準に合わせて、ハザードマップが示す<事実>では満たされない部分がでてきます。そうなってくると、その満たされないギャップの部分をどのように解決していくかという話になります。生活世界の多くの部分が見落とされていることも明らかになるでしょう。

★ですから、本当はここの部分はC軸思考が働いています。

★武蔵の問題は、A軸思考とB軸思考を重ね合わせて終わっているのではなく、その向こうにC軸思考を働かせている受験生を想定しています。ただ、そこを入試問題で問うてないだけです。

★そして、<事実>というのは、結局<物語>であることもわかるでしょう。ただし、それはファンタジーではありません。しかし、真実であるかどうかというと、それも汲み尽くせていないでしょう。

★私たちは、<事実>と<存在>の両方が真実に到達していない果てしない物語を巡って生きている<存在>なのかもしれません。だとしたら、固定された<事実>や<存在>をA軸思考だけに閉じ込めて学んでいると、不正確なハザードマップに従って生きて行くことになります。

★思考をA軸思考から解放している入試問題を出題をできる学校こそが、生徒の未来という果てしない物語を生成する場なのでしょう。武蔵や麻布、聖学院のような学校は、もちろんまだまだあります。和洋九段女子やかえつ有明もそうですね。入試問題でそれを探すのが実は大事なことなのです。<事実>と<存在>のスクランブル物語。それは果てしない物語。その物語を教師と生徒が共に編集し創造していける学校を探しましょう。

★そうそう、この武蔵の問題はB3レベルです。もう説明するまでもないでしょう。思考が<事実>から<存在>領域ギリギリまでに変容しているのですから。

 

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2020年3月19日 (木)

首都圏模試「思考コード」2021(10)A軸思考(知識・理解)とB軸(適用・論理)思考の関係性を考える①見えるデータと見えない物語の重ね合わせ。

★2020年の武蔵の社会の問題で、A軸思考とB軸思考がどう関係しているか眺めてみましょう。結論を先取りすれば、知識を憶えていれば、論理的に思考することができるというのはどうやら違います。また、思考力があれば知識はあとからついてくるという考え方もどうやら違います。

★知識と思考は、知識→思考とか思考→知識とか因果関係で捉えるのではなく、知識と思考は同時に生成されてきます。因果関係で捉えるのではなく、重ね合わせや相関関係で捉える方が生徒の頭の使い方に近いと思います。ここに最近接発達領域が存在します。

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★たとえば、この第二次世界大戦以降の水害被害の状況に関連するグラフから何が読み取れるかという問いをどう考えますか?グラフから読み取るとしたら、縦軸と横軸が何を表しているか<具体的>な内容を読み取ります。これはA1思考でいけますね。

★被害総額の推移を20世紀と21世紀と<比較>します。死者数についても同様に<比較>します。これもA1思考でいけます。

★さらに、被害総額と死者数の関係を同じように<比較>します。これもA1思考で理解していけるでしょう。

★しかし、これらを箇条書きで書いていくだけでは、変化の<説明>になりません。それだけなら、グラフの上下の推移を<置換>えただけです。もちろん、きちんと<置換>えることは大事です。これができないと、間違った<物語>知識を動員していしまうからです。

★ともあれ、グラフの動きをとらえたら、どうしてそのように変化したのか根拠を<説明>する必要があります。根拠を書けと書いていないので、本当は、どこまで書く必要があるかどうかは、?なのですが、武蔵の過去問や同校が出している解答を研究したら、武蔵では<説明>せよというのは、そこまで求めるのだということがわかります。

★小学生が自分ひとりで受験勉強ができないのは、こういう暗黙の了解というものを塾が分析し尽しているからですね。だから、公立の適性検査はこのような問いの場合、どこまで書くのか条件を明示します。しかし、それがかえって、複雑で、問いを考えるのか、問いの条件を理解するのか本末転倒ということもあります。そして、塾に通えない生徒のためにと思った丁寧さが、かえって煩雑で、結局公立中高一貫校専門の塾やコースが創られてしまうというパラドクスを生みだしてしまうのです。

★もし、本気で学校がそこを考えるなら、この手の問いは口頭試問で行えばよいのです。新タイプ入試が優れているところは実はそこですね。

★それはさておき、1960年くらい前とそれ以降の日本の政治経済の状況の変化、その行政と経済の動きが日本の風土や地理的条件をどう変えていったか、これら全体が絡み合う<物語>知識を生み出す必要があるわけです。

★そんな<物語>は、そもそも受験生にとっては生まれる前の話で、直接、経験はできません。見えないわけです。見えないけれど、そこに自然と社会と人間の諸関係はたしかにあったわけです。

★それぞれ断片的な要素としての知識を、グラフの変化や差異というグラフとして見える事実に結び付けていくと、見たことはないけれど、<物語>知識に変容することが生まれます。

★グラフとしての見える事実の諸要素の背景にファイリング知識が条件反射的にぶらさげるだけでは、この問題は<説明>したことにならにでしょう。

★1960年までは、被害総額と死者の数の相関があります。そこにはどんな凄惨な物語があったのか?日本の地理的条件とそこに直接住んでいて、治水のインフラ整備ができていないとどうなるのかはイメージすれば、そこに自ずと物語は生成されます。

★そして、1960年以降の高度経済成長とは日本をどう変えたのか?それは、都市化ですね。インフラ整備が行き届いたので、死者数は少なく抑えられますが、被害の後インフラを修復工事する物語が自ずと生成されてくるでしょう。

★かくして、A1は思考が、その関連性を組み立てるB1思考に移行し、そこに物語が生成されていく。それを論理的に記述していく。物語は複雑な要素が絡み合ていますからB2思考が働きます。

★このようにA軸思考とB軸思考は、どちらが原因でどちらが結果というわけではないのです。Aから入りBに進むけれど、またAに戻りとループになっているわけです。このループを走る速度は脳神経学的には計算できるかもしれませんが、おそらく光速よりも速いでしょう。光速よりはやいということはあるのでしょうか。

★それはわかりませんが、そのぐらい速いので、因果関係を問う議論はあまり意味がないのではないでしょうか。<物語知識><物語編集><物語創造>というのが、目に見える事実と目に見えない事実を結びつけ、その事実と同時に感情や意見や思想が生成される思考の働きがあります。

★それがなぜあるのかは、なぜ人間が存在するのかという問いと同じくらい永遠の問題ですね。

★いずれにしても、この<物語>は、リベラルアーツの中で、ミメーシスとかメタファーとかレトリックとか修辞学とかいわれてきたもので、2000年以上連綿と続く思考する人間の存在を規定する基盤です。コンピューターサイエンスでリベラルアーツが希求されるのは、当然ですね。サイボーグではなく、人間であり続けるためには。。。

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2021年中学入試を読み解く準備(7)基礎情報⑦東京女子校の帰国生入試。大妻中野・富士見丘・昭和女子のグローバル教育支持される。

★今年の中学入試は、Aタイプ「普遍的精神へのこだわりの女子名門校」とBタイプ「普遍的精神へのこだわりと英語教育に力を入れている女子校」、Cタイプ「普遍的精神へのこだわりと新グローバル教育に力を入れている女子校」が注目を浴びました。帰国生入試に絞ってみるとBタイプとCタイプの女子校が浮き彫りになります。

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★応募者総数20人以上で多い順に並べてみると、Aタイプは、立教女学院、学習院女子、白百合学園、山脇、Bタイプは頌栄女子、共立女子、大妻、東京女学館(Aタイプでもあるかも)、江戸川女子、大妻多摩、田園調布、Cタイプは大妻中野、富士見丘、昭和女子(Aタイプでもある)。

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★東京エリアの私立女子中高一貫校の帰国生定員総数は400名くらいですから、1人でも募集があり入学してきたならば、それはその学校にとっては、新しいステージを開く可能性があります。そういう意味で、前年対比で100%以上の学校を多い順位に並べてみました。

★すると、Cタイプの富士見丘、佼成学園女子、神田女学園、トキワ松、昭和女子、和洋九段女子、大妻中野が大勢を占めます。Cタイプは、英語教育にただ力を入れるだけではなく、英語で批判的思考力・創造的思考力まで育成する破格の学びの環境を整えています。

★偶然ですが、A、B、Cは、思考コードのA軸思考、B軸思考、C軸思考に対応します。

★普遍的精神にこだわる名門校は、A軸思考でもA3レベル思考に力を入れますから、論理的思考の土台をしっかりつくります。

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首都圏模試「思考コード」2021(9)B軸(適用・論理)思考を考える②生活世界の経験も重要。

★前回ご紹介した跡見の問題のつづきを見てみましょう。

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★問4は、問3までの一本のばねの現象に対するものの見方・考え方を、二本のばねに適用するだけではなく、てこの原理を加えて考えていく問い。

★受験生は、すでにパターンとして知識にしているから、そのパターン知識(順序づけ知識)を想起して、計算していくだけだから、(1)はA1思考でいけるし、(2)もそうでしょう。

★(3)(4)は、ばねの原理とてこの原理を合わせる複雑な問いになるので、そこは論理的に考えるレベルはB2になるでしょう。

★ここで重要なことは、直接的経験からパターン化された知識を間接的経験に適用していく過程だということですが、理科の場合、直接的経験が身近な<生活世界>のケースが多いということです。

★ばねは、最近日常生活で目に見えるところにはないかもしれません。しかし、ゴムはまだあるでしょう。また、二つのばねの感覚は、2つの荷物を右手と左手の両手でもってみると体感できるかもしれません。

★その<生活世界>の直接的経験を力学という目に見えない間接的経験に転換するわけですね。

★これまで、経験というのは大切だと述べてきました。≪読書≫・≪自然との戯れ≫・≪社会のフィールドワーク≫。これに≪生活世界≫が加わりますね。そして、うすうす感じていると思いますが、目には見えない間接的経験を可視化するには、<格納・想起>思考、<思考コード>、<思考スキル>が必要だったということです。

★そして、今は<格納・想起>思考と呼んでいますが、これは<思考スキル>のうちの<置換・変換>スキルを分類したものです。

★それから、これまで<言語>と<グラフ>が問いの素材になっていたところからおわかりのように、≪読書≫体験は、<言語>と<記号>の両方があります。A軸思考では、<言語>ベースの読書に偏りがちですが、B軸思考に飛ぶには、<記号>ベースの読書も必要になります。

★そして、いうまでもなく、≪読書≫体験は、行為そのものは直接的経験ですが、イメージする世界は間接的経験です。エッ!それは、≪自然との戯れ≫も≪社会のフィールドワーク≫も、行為としてとらえれば、同じことがいえるのでは?その通りです。

★実は<直接的経験>は、その背景に<間接的経験>がカップリングされているのです。ですから、経験は<直接的経験/間接的経験>と<間接的経験/間接的経験>の2種類があり、結局は<間接的経験>に私たちはどっぷり浸かっているわけです。

★そして、だからこそ、<越境>できるわけです。ということは、たとえば、<生活世界>という<直接的経験/間接的経験>をしながら、背景の間接的経験に気づいていくことが学びであるということであり、そこに気づけば、具体的な感覚的な対象や教科という具体的な領域を<越境>できるということになるはずです。

★ゴムやばねという<生活世界>の経験が、マシーンの領域で生かされたり、組織マネジメントの発想に活かされたりするのはそういうわけです。マシーンの場合は要素分解主義的に精緻化された使われ方をし、組織マネジメントなど社会制度に対しては構成主義的なメタファーとして活用されるわけです。

★しかしいずれにしても、あるモノを外から内側に組み立てていくわけですから、その効果の出方が違うだけです。A軸思考とB軸思考は結局は組み立て主義なのです。

★ところが、C軸思考は、生成主義です。細胞学的あるいは免疫学的なアプローチですね。細胞はあらゆる可能性をもっています。それがなぜかはまだ解明されていないでしょう。人間をはじめ生物は、物質でできているのに、物質以上です。それなのに、要素還元主義も構成主義も物質の組み立てによるメタファーで語られています。

★私たちは、物質以上のものは見えないからです。ところが、見えなくても明らかに物質以上であることはわかる。この存在を<ガイスト:Geist>とドイツ語では呼ぶわけです。物質と精神という分けて、人間は精神的存在という固定観念を創造的に破壊して、人間は物質であり同時に物質以上という両方を含む<ガイスト>という存在なのだと発想しているのが、マルクス・ガブリエルの<新実存主義>ですね。

★C軸思考というのは、そういう現代の文化人類学的哲学に及ぶ領域です。したがって、今までC軸思考は言葉では言われてきましたが、なかなか現場の授業で展開されなかったのは仕方がない面もあります。現場は要素還元主義か構成主義化どちらかで動いていますから。つまり組み立て主義で動いていますから、C軸思考も組み換えレベルまでいけばいいところでしょう。

★しかし、たとえば、IBのTOKが果敢に挑戦しているように、この領域は人間存在そのもにかかわる大事な学びのプラットフォームです。<探究・研究・芸術>の領域なわけです。要素還元主義や構成主義では満足できないのです。組み立て主義から生成主義へ。文化人類学的免疫学的哲学が新時代を拓こうとしています。

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2020年3月18日 (水)

ノートルダム女学院の歴史 革命と戦争の狭間で震える子供たちを救う187年。そしてまた歴史は続く。

★187年前、マザーテレジア・ゲルハルティンガーは、近代国家誕生の時代にノートルダム教育修道女会を設立しました。近代国家誕生以来の歴史とは、産業革命と市民革命、そして戦争という混迷の連続の歴史でもありました。その狭間で心身を震わせ、途方に暮れながら、必死に生きる子供たち。

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★マザーテレジア・ゲルハルティンガーはドイツ生まれです。そしてその修道会もドイツが発祥地です。プロテスタンティズムの王国ドイツで、カトリックというのはマイノリティーです。そしてその後米国で根づく修道会もマイノリティです。特に第二次世界大戦のときは、ドイツ出身のノートルダム教育修道女会が、どれほど苦労したか、想像を絶する困苦だったのです。

★その修道会が、戦後京都に舞い降りて今日を迎えているのです。マザーテレジア・ゲルハルティンガーは幼少期はナポレオン戦争の真っ最中でした。目の前で自分が住んでいる都市が戦火で焼け崩れます。自分の通っていた学校も閉鎖されます。路頭に迷う子供たち。自分が学校を創り教育で世界を変えようとプロジェクトチームノートルダム教育修道女会を設立したのです。

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★マリアテレジアのプロジェクトの原体験から今日までの歴史について語りながら、ノートルダム女学院の理事長シスターモーリー和田は、マリアテレジアの当時の精神に想いを馳せ、「そう私たちの教育はプロジェクトでしたね。当時のドイツのカントやヘーゲルの思想は、マリアテレジアも当然知っていたでしょう。デューイがヘーゲルを換骨奪胎してプラグマティックなPBLをつくったように、マリアテレジアも、ヘーゲルを読み替えて何よりプラグマティックに動いたと思います。建学の精神に「対話」があるのはそういうわけです」と。

★「おもしろいですね。今、ドイツの新世代の気鋭の哲学者マルクス・ガブリエル、そう大天使のガブリエルのガブリエルですが、彼も、ヘーゲルを超えようとしています。そのとき精神は英語のマインドではとらえられなくなるだろうと言うんですよ」と応えると、シスターは、「マリアテレジアは、精神をスプリットと言っているわね。マインドではないわね」と、シスターラウンジまで一緒に行きましょうと理事長室を素早く出たのです。

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★「もちろん、スプリットは翻訳です。ただ、マリアテレジアの想いに沿った翻訳をしているはずです。原典を見にいきましょう」と歩きながら話しかけてくれました。

★そして、「この原典は、ここに1冊しかないわ。ショーウィンドのカギをあけますからお待ち下さい」と言って、扉を開き、手渡してくれました。すぐに「ガイスト」というドイツ語が目に入りました。

★「マルクス・ガブリエルも、ガイストだと言っていました。ヘーゲルの精神現象学の精神はガイストです。ドイツ語のガイストは少し意味が違うようですね」と答えると、シスターは、「マリアテレジアの言葉や行いは、今とは違ってかなり霊性が高いから、あまり全面に押し出して語って来なかったのですが、歴史を振りかえると、今こそその時だということですね。私たちは、米国からやってきた4人のシスターにマザーテレジアのガイストを頂きました。それがゆえに、今度は私たちがネパールでノートルダム教育修道女会の学校を創りましたが、まだまだ日本でもやることがあるようだわね」と。

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★世界の痛みを一身に背負い、にもかかわらず、だからこそ救いの道を子供たちと共に歩いてきたマリアテレジア・ゲルハルティンガーとその後継者の多くの修道女。京都のノートルダム女学院のシスターももちろん、そうであり、学校の先生方も生徒たちもそのファミリーです。対話とコンパッション。これがベースのPBL授業が再び、湧き出ようとしています。デューイともマルクス・ガブリエルとも親和性がありながらも、独自のノートルダムガイストに基づく教育。

★そんなことを思いながら、シスターモーリー和田とシスターラウンジの展示パネルを見渡していたところ、マザーテレジアと目があいました。そこには、<Transuformimg>というキーワードがありました。世界を変える教育。まさにこれだと感嘆したことは言うまでもありません。

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首都圏模試「思考コード」2021(8)B軸(適用・論理)思考を考える①結局レベルA3とB1が重要?

★経験から気づいたことが検証されて知識となっていく。このプロセスはA軸思考のレベルA3で入門的にできるし、この入門編の学びが実はあとから重要なのですが、なかなかそうはいかないですね。検証と言っても、言語的な整合性は入門編でできるのですが、自然科学的な検証となると、数式というか関数への変換が必要になるので、やはりB軸思考にシフトせざるを得ない。おそらくこの違いが博学知と科学知の違いになると思います。

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★2019年の跡見の理科の入試問題で考えてみましょう。問1は、Aのばねが、おもりをぶらさげていないとき何センチになっていますか?という問いです。レベルA1で、グラフを見ればわかります。

★しかしながら、条件反射的にファイリング知識としてグラフの読み方が発動するまでには、なかなか複雑なプロセスを、私たちはたどります。しかもこれは、経験→言語化→グラフ化という変容過程をショートカットしています。つまりここのプロセスでの思考作用は、暗黙知化しているので、A1レベルで解答できるのです。

★かくして、ファイリング知識にコンパクト化される時に、多様な格納・想起チャンネルを含んで暗黙知化されていると、条件反射速度が速いわけです。これがなぜ起こるのか?おそらく脳神経学で解明するしかないでしょうから、ここはあくまで仮説にすぎません。しかし、教育や学びは、脳神経学で解明されていることはわずかですから、経験値による検証の連続によって話していくしかありません。

★さて、この多様な格納・想起チャンネルの暗黙知化には、A3レベルの学びが必要です。≪読書≫・≪自然との戯れ≫・≪社会のフィールドワーク≫ということです。

★そして、問2ですが、グラフにない100ℊのおもりをぶらさげたとき、ばねの長さがどうなるかという問いです。目の前にない現象はどうなっているのかということですね。

★グラフの表を拡大して、実際にグラフの線を引っ張ることによってできます。これは、目の前の現象が見えている枠内で考えるA軸思考の適用(応用)です。しかし、これはズレがあったりして、精緻化に欠くので、グラフの性質を式化して論理的に考えていくということになります。

★B1レベルのB軸思考が稼働するわけです。問3も同様です。

★しかしながら、これは日常生活で、ゴムなどで体験していることや、正比例のファイリング知識などを転用して理解していくわけです。受験勉強を通して、跡見の入試を受ける瞬間は、パターンという順序づけ知識がファイリング知識にショートカットしているので、なんなくB1レベルのB軸思考を発動できますが、首都圏受験生の正答率は80%くらいでしょう。20%は間違えるかわからないかどちらかです。

★なぜそなことが起こるのか?それはA3レベルの学びを丁寧に通過する環境がなかったからでしょう。

★しかも、A3からB1に飛ぶには、直接的経験から間接的経験に飛ばなくてはならないのです。私たちは目に見えない諸現象に包まれて生きています。水の分子記号はわかっても、水が分子結合している様子を見ることはできません。しかし、体験はしています。水をの飲むという直接的経験はしますが、水の分子結合を飲んでいるというのは<化学記号>を介在しながら間接的に経験することです。

★A軸思考とB軸思考の大きな違いは、直接的経験で情報を処理できる量が多いのか、間接的経験で情報が処理できる量が多いのかです。もちろん、きちんと分けるのは難しく複合的でしょうが、力点がとっちかということですね。

★前回までは<言語>を持ち出しました。今回は<グラフ>や<式>を持ち出しました。この<言語><グラフ><式>こそ、直接的経験と間接的経験をつなぐ優れた<媒介項>なのです。

★ということで、A3は<言語>、B1は<グラフ><式>を学ぶ領域ということになります。そして、この<グラフ><式>を学ぶマテリアルの優れものが<幾何>だったというわけです。

★この<幾何>をつかって、微積分を説明したのがニュートンです。そしてニュートンはまだユークリッド幾何学だったので、ポアンカレが非ユークリッド幾何学の応用編としてトポロジーを編み出したわけです。

★この微積とトポロジーが、近代経済学や新物質開発に大きなインパクトを与えていることはノーベル賞受賞の功績を見れば明らかでしょう。しかし、微積とトポロジーを学べばみな創造的にあんるかというとそうではありません。

★微積とトポロジーをアートと哲学で置換→変容→転換という複雑系コペルニクス的転回=ブレイクスルーを生み出すには、何が必要か?それが対話的存在者というわけですが、ここにいくまでにもっと思考コードの話を続けていかねばならないでしょう。

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首都圏模試「思考コード」2021(7)A軸(知識・理解)思考を考える②レベルA3が実は重要だった。

★今年の慶応中等部の国語の入試問題で、次にのような語句に関する問題が出題されています。単純な漢字の読み書きに比べ、複雑です。レベル的にはA2ということになりますが、それは<想起>するときに、同音異義語どうしの「意味」「文字」「文脈」の情報が増えるからですね。

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★そして、一般には、<格納>するときには、同音異義どうしで格納していませんから、受験勉強をしていない人にとっては、このような問題は難しいし、ゲーム感覚であれば楽しいかもしれません。知識の問題ですが<想起>するときに考えますから。

★かくして、知識の問題だからといって、条件反射的にアウトプットするわけではないということがこのような問題を通してわかるわけですが、この問題ができるかできないかで、何の差が付くのかは、本当はよくわかりません。

★たぶん、慶応中等部を受験する生徒は、前回のような漢字の書き取り問題では差がつかないので、このような複雑な形式で出題するのでしょう。

★塾の方は塾の方で、同校を受験する生徒には、このような複雑な語句問題を予想して作成してトレーニングすることでしょう。この手の問題を出題するところは、難度の差はありますが、灘や聖光学院、雙葉など結構あるので、それらの対策問題はつくっておくことは無駄ではないはずです。

★しかし、ここで重要なのは、このような問題の解答を<想起>するときにどのような思考が起こるかということです。この思考作用は、試験問題であるなしにかかわらず重要です。試験問題の世界だけに通用するということはないからです。

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★みなさんは、この問題をどのように考えましたか、「意味」「文字」だけで解答できる漢字の書き取りとは違い、同音異義語どうしの「文脈」を比較することによって「意味」が<理解>できます。「文字」については、この問題に関しては曖昧のままでよいですね。たとえば、(1)のカイシンが、文脈の比較ででてくれば、「会心」なのか「快心」なのか「改心」なのか「回心」なのかは詰めなくてもよいわけです。選択肢から「心」を選べばよいわけです。ただ、「回診」や「改新」とは違うということは<理解>できていればよいのです。

★しかしながら、大人はこの問題は、「意味」「文字」「文脈」で考えていくでしょうか。実は、「会心の出来」「怠惰→改心」という言葉の文脈はだいたい習慣上決まっています。つまり、「語用」「語法」というチャンネルを活用しながら、「意味」や「文脈」のズレを比較しながら確認していきます。

★「語用」は、こうした状況文脈と語の使い方がカップリングされ習慣になっていることを示しているわけです。たとえば、「全く~ない」というのは、論理的には「全く~ある」といったって問題ないわけですが、「語用」上、つまり「習慣」上使ってこなかったわけです。

★したがって、現在は、その習慣が崩れて、「全く~ある」という使い方は広まっています。「腑に落ちる」という表現もそうでしょう。もともとは「腑に落ちない」という語用の習慣があったと思います。しかし、これは「腑に落ちる」というパロディー的な表現がおもしろいので、使われるようになってきたということでしょう。果たして、本当にそうなのかどうかは、語源については学者に任せますが、言語の語用の<恣意性>がここにはあります。<自由>が生まれれる源泉は、この語用が生まれる時の<恣意性>にあるのかもしれないいとはソシュールやJ.J.ルソーの考え方につながるでしょう。

★言葉の「知識・理解」は、かくして<転用><語用>というチャンネルを活用すれば、<論理的思考>や<創造的思考>を楽しめるわけです。

★たとえば、さきほどの「会心」「快心」「改心」「回心」「回診」「改新」の違いやどんな時に使うのか説明してみてと問いかけてみてもおもしろいわけです。この6つの言葉が言い当てている世界を理解するには、「意味」「文脈」「語用」「転用」「文字」を<想起>するだけではなく、関連する状況情報を大量に動員・結合しなくてはなりません。<抽象と具体>という思考スキル、<比較・対照>スキル、<因果」相関>スキル、なんといっても<置換・変換>スキルは大活躍です。

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★もっとも、これだけでは、説明的でまだまだ盛り上がらないというか、面倒だと思う生徒もいるので、これら6つの言葉を全部使って、物語を創ってみようとなると、目を輝かせる生徒もでてきます。

★というわけで、この慶応中等部の語句問題を解けるようになることももちろん大切ですが、ルビンの壺よろしく、図と地をひっくり返すと、その背景にある<思考作用>が見えてくるわけです。A軸思考には、ファイリング知識という条件反射的な暗記行為だけ活用するのではなく、多様な記憶のチャンネルを活用することで、多様な<思考スキル>を発動し、<論理的思考>や<創造的思考>の土台を形成するのに役立ちます。

★A軸思考のレベルA3とは、このようにA軸思考がB軸思考やC軸思考に変容していく入口だと捉えられます。

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★ちなみに、今回の慶応中等部の語句問題を学ぶときに、A3レベルまで拡張すると、実は今年の東大の上記の地理のような問題を考える時の<思考作用>と同じだということに気づくでしょう。国語がどの教科においても重要だとよく言われますが、その言説(言い方)は、A軸思考のレベルA3まで射程に入れた学びを行っておかないと絵に描いた餅になります。

★意外と、A軸思考の学びはレベルA1で終わっています。知識と思考の分断が俗説になっているのはそういうわけです。国立大学に合格していく生徒は、実はA軸思考のA3レベルまで丁寧に行っている生徒が多いのです。上記の東大の問題形式は、世界史や日本史でも出題されるし、東大に限らず、一橋や名古屋大など多くの国立大学でも踏襲されています。

★ところが、そうでない大学も、特に私立大学ではたくさんあります。大学入試改革をしなくても、A軸思考をA3レベルまで拡張してくれるだけで、日本の教育はかなり変わっていきます。

★もっとも、A軸思考だけでは、論理的思考や創造的思考の入口に立つだけですから、これだけでは世界には通用しないでしょう。ただ、A軸思考でA3まで丁寧に学んでいないために、論理的思考や創造的思考になかなか飛べない生徒もいます。

★あっ、それから、このA3レベルの学びは、実は教室から外に出て、読書をしたり、自然と戯れたり、都市と農村の両方をフィールドワークしたりしていると、自然に備わるケースもあります。

★低学年までに、それができている生徒の中には、天才的な言動をする生徒もいますが、その生徒は、≪読書≫と≪自然との戯れ≫と≪社会のフィールドワーク≫によってすでにA軸思考のA3レベルまで経験の中で学んでいるわけです。

★しかしながら、同じ経験をしてもそうでない生徒もいます。それはなぜでしょう。それは、経験の中から得た気づきや知識を<格納><想起>思考の段階で、A軸思考作用のチャンネルの多様性が開発されなかったからです。

★なぜそれが起こるかと言うと、大人が介在する時に、その大人が知識と思考は違っていて、憶えることは暗記だというファイリング知識のチャンネルしか持っていない場合、それを子供に植え付け、他のチャンネルが作動しなくなるからです。

★大人があまり介在しないほうがよい。環境を設定するだけがよい。認知スキルだけではなく非認知スキルが大事なんだということは、この多様なチャンネルの芽を摘まないようにということと同義なのかもしれません。

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2020年3月17日 (火)

首都圏模試「思考コード」2021(6)A軸(知識・理解)思考を考える①

★一般に、受験勉強をしていると、「知識・理解」というA軸の領域における生徒の学びは、あまり思考活動とはみなされません。特に、漢字の読み書きや語句問題に関しては、暗記作業だと思われがちです。しかしながら、ここにこそ論理的思考や創造的思考が働いています。

【2020年慶応中等部国語】

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★たとえば、今年の慶応中等部の漢字の書き取り問題を見てみましょう。「垂らす」「他愛」「白磁」「深刻」「裁く」以外は、入試によく出る漢字として自動的に<想起>するようにトレーニングされていると思います。

★「垂らす」「裁く」なども練習はしていますが、小学生は、ふだん生活のなかで訓読みとして活用する場面は多くないでしょうから、自動的に<想起>はしません。普段使わないものは、丸暗記をしても忘却しやすいですね。

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★だから、憶える時に、つまり<格納>する時に、文字をアーカイブとして丸暗記するだけではなく、「意味」を調べたりする必要があります。

★「他愛」「白磁」などは、小学生はふだん活用しないでしょう。「読書」が大事というのは、「物語」や「体験」という文脈を加えて<格納>すれば、<想起>しやすいということはあるでしょう。

★「深刻」も「物語」の文脈で補うことはできるでしょうが、これは、「表情」と「深刻」の関係に「彫刻」の「表情」を重ね合わせると、「比喩」的な関係を理解することができます。物語や文脈の中でも「転用」という修辞学(レトリック)的視点で<格納>しておくということです。転用とか修辞学というのは難しそうですが、要するに比喩ですね。

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★ただし、比喩も「直喩」「隠喩」「換喩」「提喩」の違いがあることくらいは思考しておく必要はあります。もちろん、「換喩」とか「提喩」などというコt場を憶える必要はありません。ベン図を使って思考する作業をしておくといよいでしょう。

★かくして、漢字の読み書きという、最も暗記作業だと思われている作業も、「文字」「意味」「文脈」「転用」というチャンネルで<格納>しておくと、暗記知識(ファイリング知識)として<想起>しにくくても、他のチャンネルで<想起>しやすくなるということはあります。

★「知識・理解」というA軸思考の領域も、<格納>したり<想起>したりするときは、思考作用が稼働しているのです。この多様なチャンネルを思考する作業の内、「ファイリング知識」として条件反射的に知識を活用する部分だけデフォルメされて説明されているため、まずは知識を暗記することが必要だという俗説が固定化されてしまっているのですね。

★知識を<格納><想起>するときに、<順序づけ>というチャンネルもあります。言語活動では、「語用」と言われる<習慣的>な表現になっているチャンネルがあります。これについても、今年の慶応中等部の語句問題で考えてみましょう。

★そうそう、どこがA軸思考で、論理的思考や創造的思考が稼働しているのかというと、たとえば、格納したり想起したりしたりするときに、文脈を考えたりする局面などで論理的思考は必要です。また転用や文字は、意味だけではなく形や音などのイマジネーションを活用します。創造的思考が使われていることは説明するまでもないと思います。(つづく)

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2021年中学入試を読み解く準備(6)基礎情報⑥東京男子校の帰国生入試。海城の躍進理由と東京大学の本音。

★今年の東京大学の合格者数で注目されるのは海城。東大の入試は数学と英語が難しかったために、数学は差がつかず、英語に力を入れている女子校や共学校が東大を増やした。英語と言ってもグローバル教育の話だから、日比谷などの公立高校も増やすことはできなかったということらしい。

★つまり、男子校は振るわなかったということなのです。しかし、そんな中、海城からは59名が合格し、昨年よりも13人増。高校入試を廃止して中学の帰国生入試を行い、グローバル教育に力を入れてきた成果がでたと評判です。

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★もっとも、海城の場合は、グローバル教育だけではなく、ICTも取り入れた先進的教育を行っており、いわゆる御三家のようなカリキュラムは意識していないわけです。IBやAP、Aレベル、海外大学の研究をして、世界のエスタブリッシュスクールに肩を並べようとしています。ですから、東大だけではなく、ハーバード大学にも進学しています。医学部医学科も30名以上合格していますが、桜蔭や灘のように100名を超えるような文脈は有していません。

★医学部に大量に入れる学校は、ある意味特殊事情があります。現状の医学部人気に挑戦するには、あまりにも世界とは異なる受験勉強をしなければなりません。海城はあくまで、世界標準だし、リベラルアーツをベースにした学びで進学態勢をつくるので、日本の医学部に偏った受験勉強の構えはとらないということでしょう。

★ともあれ、帰国生入試の応募者数は、海城はたいへん多いわけです。男子校における帰国生入試は、どちらかというと、東大合格者の人数を出すことを目的として最初行われました。

★しかし、その中で海城と聖学院は、帰国生の現地校での豊かな学びの体験をそのまま生かせる環境を構築しているわけです。ですから、聖学院もワシントン大学(世界大学ランキング30位以内)に今年進学します。

★したがって、ここまでくると、東大のねらいは、たしかに女子生徒を多く獲得したかったという表のねらいもありますが、本当のところは帰国生の入学がもっと欲しかったといことでしょう。

★なにせ、帰国生は例年の英語入試だとほぼ満点をとってしまうからです。帰国生の創造的思考とクリティカルシンキングと世界的視野の広さ、英語力の凄まじさは、東大自身が実施している帰国生入試で実によくわかっているのです。

★だから、日本の学校に帰国した帰国生を一般入試でどう回収するか当然考えたわけですね。

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アサンプション国際 希望の私学として第二幕を開きます。

★アサンプション国際は、2017年に、校名変更、共学化、21世紀型教育を導入しました。校名変更は、変わりますよというアテンションのためには必要でした。共学化は、創設当時の女子教育の本質は、やはり当時弱者としての女性の存在のバリューを高め、公平公正な社会にしていく必要性があったわけです。共学になっても、いやならざるを得ないのは、21世紀になって予測不能な混迷の中で戸惑い不安に陥る小中高生の光になるという本質が変わらないからこそでした。女子のみならず今度は男子にもアサンプション教育を広げなければ、その本質を実現できないからです。

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★何より、<トランスフォーメンション=変容>という言葉は、アサンプションが伝統的に最も大事にしていますから、この変容は必然的だったのかもしれません。理事長であるシスター宮本先生は、神様の計画ねと微笑みながらよく語れています。

★そして、21世紀型教育。C1英語の環境、PBL型授業、ICTの活用という道具立ては、アサンプション国際の教育力と教師力のポテンシャルを時代の要請とマッチングさせて、効果的な現実態に変容するために導入されました。C1英語は、イマージョン教育に結実し、PBL型授業はSDGsをベースにする探究がハブとなって、各教科の授業に波及しています。そして、ICTは、授業ではもちろんですが、教育活動全般における情報や想いの共有のためのプラットフォームを形成しています。

★こうして、高校改革1期生が今春卒業し、未来に羽ばたきました。そして、今年からいよいよ中学改革1期生が高1に入学します。小学校では、小学改革1期生が4年生に進学します。

★アサンプションの大きなアップデートとして第二幕が開くのです。改革は草創期の1,2年は、ガムシャラに進みます。混沌ともしています。そのたびにいろいろな問題が起こります。しかし、改革の大きなベクトルはそれらの問題発生は想定済みで、一つ一つ解決していくことで、改革の大きなウネリが整っていくのは、世の常です。

★そして、3年以降は、キャズム(溝)という難所が再び現れてくるのも、マンジメントやマーケティングのイノベーション理論として確立されています。アサンプションも例外ではなかったでしょう。

★アサンプションの改革は表舞台は2017年からですが、準備期間を含めると2016年からでした。ですから、21世紀型教育の旗を振る校長江川先生が就任して3年が経って、任期を全うされた後、2019年4月からは、丹澤校長が就任しました。小学校の副校長は三宅先生です。お二人ともOGです。丹澤校長は英語の教諭、三宅先生は音楽家教諭です。そして、情報の岡本先生が中高の副校長に就任しました。

★21世紀型教育は、C1英語×PBL×ICTからグローバル教育とSTEAMに変容していきますから、4年目は、G-STEAMの波を受けとめられる準備に変容したということでしょう。

★しかし、大事なことは、もう一つあります。そのような道具立ての時代は、ひと段落したのです。第二幕は、教育力と教師力のポテンシャルが新時代にマッチングした現実態になったときに、新時代に合うコアバリューの意味の再認識もしなければなりません。意味は不変でも、その意味を<共有>できる名づけが必要です。名づけの作業こそ普遍的/不変的意味の掘り起こしにつながります。

★そんなわけで、同校のルーツであるフィリピンのアサンプション修道会からシスター・マージョの応援も頼んでいるそうです。フィリピンのアサンプション姉妹校は、すでに21世紀型教育は先取りしています。そして、何よりコアバリューをPBLスタイルで共有してフィリピンが抱える様々な問題解決に社会的インパクトを与えています。その実践者であり、理論家であり、もともとフランスのアサンプション本部で重要な仕事をしてきたシスター・マージョの応援が得られたわけです。

★コアバリューとPBLをつなぐものは何か?それは今までの日本の教育ではあまり重視されて来なかったダイアローグ・メカニズムです。対話は、欧米においては、会話とは違って、日常の中で気づかれない、あるいはあえて見逃してしまう防衛機制が働いている部分に気づき、核心に触れた問いを生みだし、共有し、ともに解決するアクションを創り出すメカニズムです。

★このダイアローグ・メカニズムの重要性については、岡本先生は、アサンプションの教師はすでに気づいていると語ります。SDGsの取り組みをベースにした探究を2017年以降模索してきた中で、生徒自身が深い学びのための問いをいかにして発見できるかは、重要なことなのでそれこそ対話が絶えないそうです。

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★実は、その2017年の1月に、当時の江川校長と私は、新高1になる有志の生徒と「哲学対話」を開きました。江川先生から今は道具立てが優先するけれど、あるところからは、本質が重要になってくるはずだ、その準備というか、そのときにできるかどうか手ごたえを感じてみたいと相談を受けました。

★「哲学対話」はPBLの根源的泉ですから、有志を集めてやってはいかがですか?フィリピンのスモーキー・マウンテンの背景にあるフィリピンの社会課題を共有できるか、そしてそれを解決することがSDGsにもいかに関係するかなど、問いを立てられるかどうかやってみましょうよと。

★江川先生は2つ返事でやろうと、。そこで、プログラムの対話を何回かして、立ち臨んだのを思い出します。その当時の有志で参加してくれた新高1生こそ今春卒業した生徒のみなさんです。当時同校サイトに掲載された写真をみると、女子生徒ばかりが参加しています。それはそのはずです。2017年の1月は、改革前夜でまだ女子校だったのですから。

★2016年のプレ改革時代の卒業生とも対話する機会がありました。彼女はSFCに進学していたので、対話の重要性について大変興味をもち、アサンプションの教育活動や授業の中に取り入れることはとてもよいことだと、しかし、最初はきっとカタチだけになって、なかなか難しいのは、アサンプションだけの問題ではなく、日本の教育問題でしょうねと見抜いてました。

★また、哲学対話に参加していた生徒は意識が高く社会課題に自分の進路過程の中でどのように取り組んでいけるのか考えていました。中でもアートに関心がある生徒は、アートで社会課題を解決する新しい学部ができた大学を見つけてきて、そこにAO入試で進学を決めていました。

★長期留学をして、その経験から、アサンプションの教育アップデートの行方を評価しつつ、新しいアートの領域を見つけてきたわけです。その生徒とは、哲学対話ですぐに共振共鳴共感しましたから、3年後の姿を見て、感慨無量でした。

★3年前の手ごたえは、そのまま結晶化したわけですが、実はこの哲学対話は、有志の生徒との実験であって、参加者も限られているし、何より一時的なもので継続はしていなかったのです。ですから、結実するには、すべての生徒を対象にする深い学びの開発・実践が必要だったのです。

★それが、岡本先生を中心とする探究開発のウネリだったのです。2016年の準備期間中に、すでに岡本先生は、SDGsと探究を絡めることを考案していました。もともとICTを活用した創造的思考を育成するプログラムを実施し、公のセミナーで発表もされていたので、PBLとは親和性があったのだと思います。

★ですから、2019年に副校長に就任してから、道具立てのPBLから本質を生み出すPBLに変容させる動きにシフトしていったのだと思います。昨日お会いした時も、探究をコアにして教科にアップデートしたPBLを広めていくチームワークを随所につくっていきたいと静かな情熱を燃やしていました。

★アサンプションは希望の私学として、いよいよ羽ばたくときが来たののです。

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八雲学園の共感力 本当に大事なコト。節度と徳と賢慮が共感の響きを生み出します。

★八雲学園というのは、本当にすてきな学校です。今回のコロナショックがあって、そのすばらしさ、温かみ、そして本来的なタフネスが映し出されています。

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★このコロナショックで、世の中騒然としている中、泰然自若としてもっとも大事なコトは「友情」であるというメッセージを伝えるコトだという行為がすばらしいし、温かいし、世間に右顧左眄しない本当のタフネスがあふれてくるのが一枚の上記写真です。八雲学園は、ある節度があります。自分たちはあくまで、八雲学園の教育を全うすべきだという節度です。ですから、それ以上のコトには、口をださないという謙虚さです。

★この写真にある先生方のパフォーマンスは、あくまで卒業生にのみ贈るメッセージです。しかし、「君たちへ」ではないのです。今まで、学校内では「教師と生徒」の関係もあったけれど、卒業したら、もはや私たちは「友」なのだと。卒業とは、大学進学や次のステップに進むコトだけれど、出会った私たちが「友」として、永遠の仲間に変容するコトなのだというメッセージです。

★たしかに、卒業生に贈る言葉ですが、そのインパクトは八雲学園を超えて共感を呼ぶでしょう。同校の先生方の行動は、かくして節度と徳と賢慮という「道」を知る集団なのです。自分たちが影響を与えるのではない。共感するかどうかは、他者次第である。ただし、私たちが本質や本物にこだわり続ければ、同士は自ずと増え共感が広まることがあってもよいではないかというコトなのでしょう。

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★そしてまた、上記の桜の写真。休校期間中だから、見ることができないでしょうが、桜の花は咲いていますよというメッセージ。コロナショックで、大変な事態だけれど、それでもどんな困難な事態の中でも、自然は花を咲かせるのだよと。大変な局面だけれど大切な心は忘れないでねと。

★もちろん、それもまた直接語る無粋な記述は同サイトにはありません。あくまで、節度と徳と賢慮です。

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★しかし、今ニュースで流されている情報の中に、経済原理に巻き込まれ、死に瀕している生花の話題が一方であります。卒業式や入学式など様々な場所で生かされるはずだった花々が、行き場を失っていると。私たち人間の経済活動が、いかに自然の心意気を無駄にするリスクを含んでいるコトか。そのコトが映し出されているわけです。

★そんな大事なコトが、八雲学園ではふだんから大切にされているというコトが伝わってくる写真です。自然や人間そして人間が創り出す社会のコアにある存在の大切さ。八雲学園の教師は、それを「友へ」贈り続けてきたのですね。そして、卒業後も、もちろん贈り続けるわけです。ラウンドスクエアの各学校にもそれは共感して伝わるでしょう。

★一粒の種が、世界に満開の花を咲かせる偉業を、八雲学園の先生方は、節度と徳と賢慮をもって粛々と成し遂げているのです。

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工学院 グローバルプロジェクトが≪Z世代≫1人ひとりのキャリアデザインのベースになるときが来た。

★工学院大学附属中学校・高等学校は、2015年から本格的にC1英語・PBL型授業・ICT・リベラルアーツの現代化としてSTEAMやSDGs、英語の哲学授業など普段の授業のクオリティーとスキルをアップデートしてきました。そして、昨年12月に行ったグローバルプロジェクト(一般的な修学旅行をアップデートした取り組み)に収束する多様なグローバル教育活動も実施してきました。

★プレ改革学年の生徒は、今春輝かしい未来に向かって羽ばたきました。ここ数年、同校は、大学合格実績という側面でも、成果をあげてきましたが、今春の卒業生は、医学部にも進みましたし、多くの海外大学にも飛び立ちました。さて、いよいよ本格改革学年の高3の時代がやってきました。

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★その学年主任は、鐘ヶ江先生です。そして高3の学年主任は、進路指導のリーダーでもあります。昨年12月のグローバルプロジェクトに向けて、5年間多様な教育活動の積分が熟してきたわけですが、そのグローバルプロプロジェクトへの収束は、微分係数としての傾きを急激に高めたでしょう。

→関連記事)感染症に対応する都市機能の変容能力(11)工学院はZ世代地球市民の才能開花の拠点 未来の都市機能を創発する②

★微積の比喩を使ったのは、鐘ヶ江先生は数学の教師でもあり、分割と統合、拡散と収束、積分と微分のループで上昇気流を生み出していく気概の持ち主だからです。

★ある意味、今年の大学入試の傾向で明らかになった数学と英語と創造的思考の三位一体の流れを先取りして体現してきた新高3です。この急激な上昇気流を生み出す収束のパワーを、いよいよ進学に注ぐ時を迎えたわけです。

★改革学年のリーダーは、どれも新しい普段の長い教育活動の創造者でもあり、最終的な進路の跳躍台と高い理想と高邁な精神のGrowth Mindset環境を配慮する存在の守護者でもあります。

★この配慮は、生徒と同僚はもちろんですが、実は保護者にも行き届きます。この生徒を取り巻く多くの人間の存在を巻き込み、相乗効果を生みだす配慮の力こそ、塾予備校にはない学校教育の積分という時の蓄積であり、同時にそれが微分係数という瞬間の永遠を生み出すエネルギーなのです。

★卒業生を送る担任の先生方の想いがどれほどのものか、今回の新型コロナウィルス感染拡大防止のための一斉休校が、各地で如実に映し出されていますが、その想いを鐘ヶ江先生は4月から膨らませていくことになります。6年間の積分と微分。濃厚高密度の教育が展開していくことになるでしょう。

★改革と進路指導のカップリング、鐘ヶ江先生の場合は、グリーバルプロジェクトとキャリアデザインのカップリングが行われるわけです。1年間注目していきたいと思います。

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2020年3月15日 (日)

<未来を創るヒント>(2)富士見丘モデル スマートスクール パンデミックにも対応できる C1英語×C3シンキングの威力

★富士見丘と言えば、C1英語、PBL型授業、ICTの教育環境が充実しているのはあまりに有名。帰国生には特に浸透率が高いですね。何より、SGH認定校ですから、これらの環境を統合した破格のグローバル教育も魅力的です。そして、その結果、ここ数年、大学合格実績もあまり巧まずナチュラルに出てしまうという事態になっています。

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(2020年3月10日現在 富士見丘の卒業生93名の合格大学は次の通り)

 東京外国語大学   2名
筑波大学      1名
公立鳥取環境大学  1名
早稲田大学    14名
上智大学      8名
国際基督教大学   1名
青山学院大学    6名
中央大学     13名
法政大学     10名
明治大学      5名
学習院大学     4名
立教大学     10名
成蹊大学      5名
成城大学      3名
関西学院大学    3名
明治学院大学    2名
獨協大学      6名
津田塾大学     2名
東京女子大学    7名
日本女子大学    7名
学習院女子大学   3名
日本大学      3名
東洋大学      9名
駒澤大学      2名
専修大学      2名
武蔵大学      2名
白百合女子大学  15名
フェリス女学院大学 1名
東京都市大学    2名

★あの洗足と早稲田と上智の合格実績を比較すると、遜色ないのがわかるでしょう。洗足の卒業生数は多く、富士見丘は少人数ですから、比率にしないとわかりませんが。意外と、この単純なデータを受験生はみることはしないですね。合格人数で判断してしまいます。しかし、比率で間上げると、なかなかよい実績です。大学合格実績で教育の質が決まるとすると、洗足も富士見丘も変わらないということです。

★洗足もかつては偏差値は今のように高くはなかった。しかし、今やそんなことを知っている受験生は少ないでしょう。すると、富士見丘も同様に成長する可能性が大なのではないかと期待値が高鳴りますね。実際そうなるでしょう。

★というのも、実は、富士見丘の学習戦略は、英語教育でもグローバル教育でもないのです。C1英語戦略なのです。エッ!英語じゃんという話になりますかね。CFFR基準は、言語活動の基準で英語のみの基準ではありません。

★C1英語というのは、大学で学ぶことができる言語力ということです。それを英語でもできてしまうということです。リサーチ、ディスカッション、プレゼンテーション、エッセイ、教養、社会課題を自分事で創造的に解決する能力などが育ってしまうのがC1英語ということです。

★海外研修や高大連携、模擬国連など学校の枠を越境したダイナミックな教育を行っていますが、かりにこれがなくても、C1英語教育が、学内でできてしまう教師力=教師のソフトパワーが半端ないのです。これが富士見丘の本当の教育力です。

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★さて、この本物の教育力がどんどん豊かになっています。なぜか?理事長補佐・校長補佐の吉田成利先生は、明海大学の憲法の准教授です。学生はみなバイリンガルです。憲法の本も出版しているアカデミックそのものの体現者・見識者です。キングズ・カレッジ・ロンドン(ロンドン大学)大学院(ドクター)やシカゴ大学大学院(ドクタ)で研究し、Ph.D(法学博士)を取得しています。

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★そして、富士見丘の生徒は、明海大学のスペシャル講座なども受講します。もちろんオールイングリッシュだし、グローバルビジネスの分野をゼミナール形式で学んでしまうのです。経済学や法学など制度設計とサブカルチャーと市場の関係を論じ、グランドデザインを描いて見せてくれます。

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★SGHの探究型の学びがベースになっていますが、それ以上の学びを英語で行っているのが富士見丘の生徒です。そんなこと必要あるの?といわれるかもしれませんが、イギリスのAレベルやフランスのバカロレア、ドイツのアビツーアなどでは、最終的には論述形式だし、経済学や哲学、法学、文化人類学などで教養まで学んでいます。

★国際バカロレアのTOKはまさにそういう学びですよね。

★吉田成利先生にとって、そのレベルは特別なことではなく、世界標準です。同校の教師と対話や議論をしながら、その世界に、生徒もいっしょに巻き込んでいくリーダーシップを発揮しています。

★この学問知と生徒を結ぶ学びの環境がC1英語の教育なのです。今回のようにパンデミックがあると、オンライン上で世界の人びとと協働して解決方法を考えていかなくてはなりません。高次英語、高次思考、高次テクノロジーなどが学内でまず学べるスマートスクールであることがこれからは必要になってくるでしょう。

★富士見丘は、先述したように、破格のグローバルプログラムを構築しています。しかし、それはリアルスペースとサイバースペースとなんといっても生徒自身の内面の世界にソフトパワーが育っているのです。

★パンデミックで、リアルスペースで、今回のように活動できなくなっても、サイバースペースと内生的ソフトパワーがあれば、予測不能な事態にも対応できます。そして、3・11やここ数年続いている異常気象による電気の無化事態が起ここっても、内生的ソフトパワーがあれば、サバイブできるでしょう。

★スマートスクールとは、リスク社会にあって、内生的ソフトパワーが育つ学びの拠点です。いまのところ、ここまでやれる学校は富士見丘しかりありません。今のところ、世の中は、そのことにまだ気づいていませんが、今回の大学合格実績によって、注目を浴びる可能性大です。

★そして、時代はスマートスクール化に大きくシフトするでしょう。結局、C1英語とC3シンキングというわけです。

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品川翔英の国語科の挑戦(1)PBLの<構造>デザインの共有 普遍的かつ独創的な構造の発見へ

★前回の記事でも紹介しましたが、品川翔英の記事のアクセスランキングは高く、新中学市場で注目されることが予想されます。「感染症に対応する都市機能の変容能力(14)品川翔英 新しい都市創りに新旋風を巻き起こす予感。」は4位、「品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任」は27位です。27位と言っても、後者の記事は、昨年の7月7日の記事ですから、名称変更、共学化、柴田先生の就任という情報に対する関心度がいかに高いかということがわかります。

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★そして、その期待に応えるべく、今、同校の先生方は新中1、新高1を迎える準備に奔走しています。未来へ飛翔する土台はいかにしたら創れるのか、日夜創発対話と制作活動に没頭しているのです。

★チーム国語科のダイナミックな活動もその例外ではありません。4月から校長に就任する柴田先生と国語科主任の西山先生は、哲学者レヴィナスは自分の顔は自分で見ることができないと言っていますから、国語科の挑戦しているカリキュラムプランやPBL、ルーブリックなどについて、第三者的に眺めて欲しいということでした。

★レヴィナスは、あの過酷なホロコーストを生き延びた哲学者で、その倫理学は自らの想像を絶する世界の痛みの原体験の中から生まれています。国語科の生徒の存在の本質に迫る覚悟が伝わってくるお話に、共感するのは当たり前です。二つ返事で了解しました。

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★先日は、カリキュラムとルーブリックとPBLの関係について考えていることについてまず対話になりました。そんな中で、プランの立て方を微分積分の考え方でやってみようということになりました。全体のカリキュラム配列を考えたり、コンテンツベースで表を書く前に、一回一回のPBLの構造を分析しようということになったのです。つまり国語科の教育活動を微分化しようと、その次に全体を見渡す積分をしようということになりました。

★PBLの基本的な考え方やデューイの時代のPBLが、1989年や1995年以降に現代化される経緯や、MITメディアラボのチャレンジについて対話が弾みました。湯川秀樹の科学者と詩人の共通点について美しい対話もありました。ひとしきりそんな対話をしたあとで、それぞれのPBLへの想いをさらにキーワードで微分化しました。1情報1ポストイットという条件で、たくさん書き込んでいって、今度はチームでそれを統合していきました。国語科の先生方は、通常の言語活動の中で、<具体と抽象スキル><カテゴライズスキル><因果・相関スキル><比較・対照スキル><置換・変換スキル>などを暗黙知として自在に活用しているので、実に対話が豊かに進行していきました。

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★分析、つまり微分化の手法は、U理論で活用されるスクライビングをアレンジした創発型スクライビングで行っていきました。コンテンツのスクライビング→フローチャートとしてのスクライビン→構造化としてのスクライビングと何度も対話しプレゼンしていきました。

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★そして最終的に、先生方の内側にコンコンと湧き出ている暗黙知としての<思考スキル>を言語化をしていきました。これによって、品川翔英流儀のMIR分析という方法論が生まれました。なんて創発的!

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★そのMIR分析がいかなるものかは、現段階では企業秘密です(笑)。

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★分析手法を世界標準の理論から生み出していったので、普遍的かつ独創的に自分たちのPBL授業を分析する準備ができたのです。そこから一気呵成に、先生方1人ひとりは自分のPBL授業の案を組み立て、スクライブ手法でフローチャート化してプrゼンしました。

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★そして、自分の顔は自分で見ることができないので、他の先生方がMIR分析でそのフローチャートをさらに分析していきます。すると、そこにPBLの構造がくっきりとあることが浮かびあがってきたのでした。

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★ほかのチームとミーティングをしていた新校長柴田先生もやってきて、エールを贈りつつ、質問して自らも学ぶ態度を示しました。はやくも学習する組織創りが始まっているな!と実感しました。

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★そのあと、他の先生方のフローチャート分析とMIR分析をしてきました。

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★それぞれ、単元も授業の場面も違いますが、PBLを構成する要素はきちんと埋め込まれていることが共有されていきました。

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★こうして、微分化しないながら、PBLの柔軟な構造が見えてくると、それぞれの要素ごとに再び深い議論が始まります。要素還元主義ではなく、関係総体主義的な発想こそ実はPBLです。

★この要素分解をして統合すると相乗効果が生まれるという気づきを共有していきながら、その要素ごとにICTをどう利用するかという対話にも発展していきました。1+1は2ではなく、3にも4にもなるわけですが、実はICTが入ると指数関数的に相乗効果が生まれます。

★もちろん、その相乗効果が生まれるようなICTの活用方法を生み出す必要がありますが、次回は、PBLとルーブリックの積分をするときにICTもいかに活用するか実践交えて対話をするそうです。楽しみですね。

★そうそう、ルーブリックですが、その作り方の肝は、実は構造にあります。その構造はMIR分析によって見つかりました。

★ルーブリックは、目の前の生徒の発達段階や最近接発達領域を発見しながらつくっていきますから、品川翔英の国語科の先生方のように普遍的かつ独創的な構造を自ら見つけな限り、絵に描いた餅になります。

★そういう意味で、本物志向のルーブリックが品川翔英で誕生しそうです。日本の教育史上、画期的な出来事です。

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<未来を創るヒント>(1)3月14日時点で見えること <3Cシンキング>の必要性 ホンマノオト21アクセス状況から

★新型コロナウィルス感染拡大防止のため、政府から一斉休校の要請があってから、やがて2週間が経とうとしています。この間に、経済活動の自粛や欧米に広がるパンデミック化が生じ、「新型コロナショック」という名称が歴史に刻まれそうな変化が起きています。政治も改正特措法が成立し、ワイマールの悪夢につながらないように、私たち一人一人は、政治経済のリスクをチェックしつつ、公衆衛生や免疫学についての情報を的確に取集しつつ適切な判断をする、クリティカルシンキングを発動する事態になっています。

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(時代を象徴する写真。NHKが世界の意味は創ってしまえばよいというマルクス・ガブリエルとAI社会における数学人材の希求が放映。京都のノートルダム女学院では、哲学科出身の霜田先生と数学科の中村拓先生がNHKが捉えている世界像をも含んださらなる世界の意味の転換について対話を開始した。)

★一方で、すでに世界中で弱者の生活は心身、物心両面で困窮に陥っています。私たちは自分の行動が、そのような世界の痛みを共に感じながら、どうしたら解決できるのかコンパッションシンキングに思いを馳せ行動する必要性も感じています。

★そして、パンデミック、インフォデミック、恐慌、緊急事態宣言が世界を取り巻くときだからこそ、いまここで未来を創り始めるクリエイティブシンキングが重要になってきます。

★この<3Cシンキング>は、3月に入って2週間の間に、NHKが、確固たる誰かが造った世界など存在しない。世界はみんなで創っていけるのだと、世界の意味のコペルニクス的転回を仕掛けている哲学者マルクス・ガブリエルの特集を放映したり、AI社会では数学人材がひっぱりだこだというニュースを流したりしているように、時代精神の要請です。それが、新型コロナウィルスショックが明らかにしたとうことではないでしょうか。

★この2週間のホンマノオト21のアクセスランキングベスト50を見ても、その動きは了解できます。

 1:2020年2月ホンマノオト21のアクセス状況から見る2021年中学入試動...
2:2021年中学入試を読み解く準備(3)基礎情報③東京女子校の集まり方に教...
3:2020東京大学合格発表の季節(2)海城・西大和の躍進は序列を崩すか?私...
4:感染症に対応する都市機能の変容能力(14)品川翔英 新しい都市創りに新旋...
5:2021年中学入試を読み解く準備(5)基礎情報➄東京共学校の新タイプ入試...
6:2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早...
7:【2019年大学合格実績04】世田谷学園の東大合格者躍進の意味。
8:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
9:2020東京大学合格発表の季節(1)桜蔭⤴麻布⤵か?
10:2021年中学入試を読み解く準備(2)基礎情報②東京男子校の実受験者率に...
11:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出
12:2021年中学入試を読み解く準備(4)基礎情報④東京共学校の集まり方に変...
13:2021年中学入試を読み解く準備(1)基礎情報①
14:感性症に対応する都市機能の変容能力(7)佐野先生と金井先生と対話する。静...
15:三田国際 2020年中学入試を終え、目が覚めるような新機軸へ準備整う: ...
16:2020東京大学合格発表の季節(3)良くも悪くも近代官僚知を形成してきた...
17:2020東京大学合格発表の季節(4)明らかになる東大の功罪?たかが東大の...
18:感染症に対応する都市機能の変容能力(9)佐野先生と金井先生との対話。なぜ...
19:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
20:感染症に対応する都市機能の変容能力(11)工学院はZ世代地球市民の才能開...
21:感染症に対応する都市機能の変容能力(16)この1週間のホンマノオト21の…
22:感性症に対応する都市機能の変容能力(6)さすがメディア水面下で動きはじめ...
23:感性症に対応する都市機能の変容能力(3)神崎先生と多面的アプローチによる...
24:和洋九段女子のSDGsの活動 優秀賞受賞 その意味の重要性を改めて感じる...
25:感染症に対応する都市機能の変容能力(12)工学院はZ世代地球市民の才能開...
26:2020首都圏中学入試 5つめの動向 SAPIX・早稲田アカデミー・日能...
27:品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任
28:感染症に対応する都市機能の変容能力(17)首都圏模試センター「八王子実践...
29:感性症に対応する都市機能の変容能力(5)ノートルダム女学院霜田先生方と生...
30:感染症に対応する都市機能の変容能力(8)佐野先生と金井先生との対話。HT...
31:感染症に対応する都市機能の変容能力(10)工学院はZ世代地球市民の才能開...
32:2020中学入試 3つめの動向。高い意識の女子受験生の誕生。
33:【2019年大学合格実績02】東京都市大学附属等々力の躍進の意味。 五島...
34:感染症に対応する都市機能の変容能力(13)工学院はZ世代地球市民の才能開...
35:感性症に対応する都市機能の変容能力(1) 内村鑑三のグローバルボランタリ...
36:感染症に対応する都市機能の変容能力(15)今後の社会予測と個人の自己変容...
37:感性症に対応する都市機能の変容能力(4)神崎先生と多面的アプローチによる...
38:【2019年大学合格実績03】巣鴨の東大合格者躍進の意味。
39:【2019年大学合格実績01】聖光学院 東大+京大合格 100名!その意...
40:2020中学入試 4つめの動向 東京の共学校の渦を通して
41:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
42:感染症に対応する都市機能の変容能力(19)富士見丘 グローバルシティの自...
43:ノートルダム女学院で生まれている<新しい学びの経験>(1)多様な<対話>...
44:防衛機制と自己防衛システム
45:和洋九段女子のPBLのマインドフルネスな価値 6人の中3生とワークショッ...
46:ノートルダム女学院で生まれている<新しい学びの経験>(2)NDナレッジ・...
47:【2019年度首都圏中学入試(09)】 かえつ有明 アップデート 内生的...
48:ノートルダム女学院で生まれている<新しい学びの経験>(3)NDナレッジ・...
49:感性症に対応する都市機能の変容能力(2) 免疫学×新実存主義×デジタル発...
50:大妻中野さらに新しいステージへ

★この50の記事のうち36%は、「感染症に対応する都市機能の変容能力」シリーズの記事です。たしかに、この間、このタイトルで記事を書いてきたわけですから、多くのなるのは当然ですが、それでも、この時期、<3Cシンキング>を必要とする時代精神について、これほど明確に書き起こす事態はなかったし、なかったのだからアクセスもなかったわけです。

★しかし、だからといって<3Cシンキング>を必要とする世界がなかったわけではなく、この世界を描いてこなかっただけなのです。まさにマルクス・ガブリエルが捉えているように、古い価値観を土台とする<3Cシンキング>がいらない<世界>なんて存在しないのです。時代精神は<3Cシンキング>の必要な世界の意味を創ろうとしているというのが、このアクセスランキングは映し出してるといえましょう。

★毎年この時期は、東大合格発表関連の記事がランキングベスト10を埋め尽くしますが、今回は2つの記事だけです。今回の特徴は、未来を模索する新中学入試市場に関する記事が上位を占めています。

★もともと、このホンマノオト21の基調は、未来創りのヒントを教育領域から越境して見渡しているわけですが、なかでも先進的な動きがあるのは中学入試市場ですから、どうしてその考察が多くなります。

★そんな中に東大合格発表という既存の考え方を志向するニーズに対応する記事を入れる事により、世の中の動向をある程度読めるのではないかと考えてきたわけです。

★そういう意味では、今回はようやく古い価値観から新しい価値観に転換する動きが明白になってきたと捉えることができるかもしれません。もっとも、古い価値観を大切にするコンサバな方々が、ホンマノオト21を見なくなっただけということもあるかもしれません。

★それについてどう判断するかは、もちろん私事の自己決定にお任せいたします。

 

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2020年3月14日 (土)

防衛機制と自己防衛システム

★Z世代やその前世代であるデジタルフロンティア世代、いまめのまえの児童であるAI世代、デジタル世代と大まかに呼ぶとします。D世代。このD世代と私たち団塊・断層・新人類世代あたりが40代後半以上でしょうか。アナログ世代とでもよんでおきましょうか。A世代。

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★最近、このA世代とD世代との対話の中に入っていて、気づくことは、A世代がD世代の言動を、防衛機制に回収して論じていることです。防衛機制はあくまで自己防衛システムの1つの在り方です。

★しかし、防衛機制=自己防衛システムという話になって、固定概念や先入観に囚われることから、解除されることをA世代がD世代に向かって説教しているシーンがあります。

★そのときD世代は自己防衛システムを作動して、自分の考えや感情や行動指針を破壊されないように構えます。

★A世代は、それが殻にこもっている、その防衛機制を外しなさいと逆防衛機制を働かしていることがあります。

★アンナ・フロイトが防衛機制や転移について整理していた時代は、20世紀初頭でしょうから、抑圧するものの状況が相当変わっています。

★D世代が、デジタルワールドで翼を広げていて、アナログ世界には、通常のあるいは普通の関心しかないのに、A世代が、なぜそこに関心をもたないのだ、壁をつくらなくてよい、防衛機制を解除せよと言っても、D世代は、そこに壁はつくっていないんだけど。。。。となっています。

★ディスコミュニケーションとか最近接発達領域の見間違いとかが起こっているような気がします。

★防衛機制とは見ないように欲を転移していくメカニズムだと私は思います。自己防衛システムは見えないけれどあるものを探そうとする欲の解放です。ただ、相手が見えないのですから、自己防衛しながら進むしかないわけです。自己防衛システムは私たちの3D世界からは見えない4D以上の無限の次元空間を3D世界を変容させながら歩いていくシステムだと思います。

★この自己防衛システムを作動しないように防衛機制的人間観に転移してきたのが近代の闇あるいは陥穽だったのかもしれません。近代の本来の生き方は、防衛機制ではなく自己防衛システムの発動だったのかもしれません。

★おそらく、J.J.ルソーの自然状態を捨て、一般意思が作動する社会状態としての近代社会ではなく、全体意思ベースの社会状態の近代社会を構築してきたために、特に日本は、明快にルソーを捨てる宣言をして、明治維新を推し進めてきましたから、自己防衛システムではなく、防衛機制ばかりが働く人間関係ができてしまったのかもしれません。

★そこにデジタルワールドがやってきた。D世代とA世代が立っている世界が変わってしまったということでしょう。

★したがって、防衛機制から解除する創造的才能の役割はA世代が中心で、D世代は自己防衛システムを作動することが創造的才能の発揮なのです。それを、防衛機制を作動していると錯誤して、説教を垂れていては、とんでもない事態に陥りますね。

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2020年3月13日 (金)

2020東京大学合格発表の季節(4)明らかになる東大の功罪?たかが東大の学力観されど・・・。この呪縛から軽やかに解かれよう。

★今年の東大の入試問題と合格者のある傾向との関係について、サンデー毎日(2020年3月22日号)の記事は、重要な解釈を掲載しています。それは、数学と英語が難しかったから、6年間中高一貫校が3年制の高校より有利だったのではないか。また、女子合格者の比率が20%に限りなく近づいたのではないかと。

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★この2つの解釈から、「入試問題は入試準備のための学力観を規定している」ということが改めて明らかになったわけです。もともと入試問題は学校の顔というのは受験業界では人口に膾炙されてきたし、今ではアドミッションポリシーの明快化が義務付けられていますから、このことは当然ではあるのですが、東大の場合は、それが如実に機能しているということが、この解釈が正当だすれば、明らかになったということです。

★この正当性をどうエビデンス化するかは、専門家に任せるしかありませんが、サンデー毎日の東大合格発表記事は年中行事さながらですから、影響力は絶大です。サンデー毎日がというか、データ・情報提供元の大学通信がといったほうがよいのかもしれませんが。

★さて、ここで問題は、入試問題が学力観を規定するということではありません。「どんな学力観を規定するか」です。いや、入試問題が学力観を規定するのだから、本当は大学入試改革はきちんと議論するのが民主主義国家なのですが、そこをやらず、しかもある一定の学力観を保守するために、東大が今回の大学入試改革をつぶしにかかったかのような言動をしたのは、本当は大きな問題かもしれません。

★しかし、東大内部のことなど知る由もないので、そこはジャーナリストのクリティカルシンキングに任せて、私たち一般ピープルは、見える範囲内で、推理しながら、もし罠があるとするならば、そこにはまらないようにセンサーを研ぎ澄ましながら、サーチライトをあてていくしかありません。

★まず、数学を難しくしたことによって、数学的思考をきちんと学ぶの環境のある一貫校の生徒をとりたかったということと、英語を難しくて、男子校に比べグローバル教育に力を入れている女子校や相対的に英語が得意な女子生徒をターゲットにあてたという話は、ジェンダーギャップを縮めようとしながら、ジェンダーギャップを正当化する価値観を認めたという問題はあります。

★まあ、しかし、それはこちらにおいておいて、STEAMとグローバル教育という学力観を明快に打ち出したということですね。それゆえ、海城や西大和のように、数学にもグローバル教育にも力を入れた男子校と共学校は、合格者をアップすることができてしまった。

★これによって、男子校は海城のように数学とグローバル教育に力を入れるように規定されるわけです。

★共学校は、今まで以上に21世紀型教育や未来志向型の教育を行っていくでしょう。女子校は、豊島岡のようにグローバル教育だけではなく、数学にも力を入れていくでしょう。

★かくしてG-STEAM学力観がけん引することになるわけです。なんだ本間が言っていることに近くなるから何が問題なんだといわれるかもしれません。

★違うのです。センター試験の存在があることをお忘れなく。基礎学力はセンター試験の世界に貶められてしまっているのが現状です。東大はこれにメスをいれようとしなかったことが問題なのです。G-STEAMのようなソフトパワー重視も、でも知識がなければねという学力観を規定しているところが大問題なんです。

★G-STEAMだから、今までのように論理的思考だけでよいよという発想ではなくなります。ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングまで必要とする時代だというのはいいんです。

★でも、そのためには知識を暗記しておく基礎学力が重要だということが必要十分条件になってしまっているところが問題です。

★それならば、英語民間試験にあんなに反対しなくてもよかったのにとなりそうですが、そうではないのです。英語民間試験を採用すると、グローバル教育に偏るんです。

★すると、数学を難しくすると、そこで差がなくなるので、英語民間試験の準備でアドバンテージの高い生徒がどっと入学するのです。海外大学ではそれはどってことないので、東大でも本当は問題ないのですが、「知識がなくては思考ができないという学力観」が破壊されるのが東大では問題だったのです。

★この学力観、たかが合格者3010人(同世代人口の約0.3%)の話で、どうってことないではないですかという話だといいのですが、日本の大学はほとんどが東大の考え方に呪縛されています。そして入試問題ができていきます。その入試問題に向けて高校が大学入試準備を行います。

★まったくもって、今も続く幕藩体制です。参勤交代の時、各藩の藩校で行われているカリキュラムは報告しなくてはなりませんでした。日光隣接地ある足利学校が実はそのチェック機能の拠点だったと聞いたことがありますが、諸説ありでしょう。

★しかし、東大初綜理の加藤弘之は幕臣だったし、その仲間が民法、商法を作成し、明治政府の新しい考え方をもったグループを排除して、≪官学の系譜≫ができてきたわけです。

★まさかそんな歴史が脈々と続いているかどうか定かではありませんが、学歴主義は幕藩体制を生かす代物だったのかもしれません。

★そんなことはともかく、これでは、「知識がなければ思考はできない」という学力観が広がるのは当然です。パンデミックは、弱者がまず最初に痛い目をみます。この学力デミックも同じです。「知識がなければ」が教育格差を生む構造になっているからです。

★創造的思考の上部構造はよくても、知識工場の下部構造が問題なのです。予測不能な時代、クリティカルシンキングやクリエイティブシンキングは大事です。しかし、サバイブできるのは、知識を持った階層だけという話です。

★幕藩体制というのは、封建制の1ケースですから、近代の矛盾の1因は、実は封建制を内包したまま展開していたことにありますね。

★G-STEAMという教育は進むけれど、知識重視の基礎学力観は相も変わらず続くから教育格差=経済格差はますます広まるということです。

★しかし、たかが0.3%の話です。されど・・・なのですが、やはり0.3%です。こんな学力観に呪縛されていいはずがないでしょう。この学力観はone of themにすぎません。もっといろいろあってよいのです。呪縛から解放されましょうよ。私立大学はそれができるはずですよ。

★それも無理なら、海外大学に脱出です。それができなければ、自分たちで大学を創ってしまえばよいですね。何でもありな世の中です。それが予想不能な時代のもう一つの側面です。

★まあ、私の言うことなど、東大は歯牙にもかけないでしょうし、かりに目に入っても、そんなことは考えていない。サンデー毎日や受験業界が勝手に言っていることでしょう。関係ない。なんならエビデンスもってきてというでしょうかね。

★もしそうだとしたら、この国はやはり変わらないでしょう。

★いや、それでもG-STEAMは自ら東大の内部から変えていくトロイの木馬になるでしょう。歴史とはそういうものです。

★ただ、その変化までに犠牲者があまりに多いということです。

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2020年3月12日 (木)

和洋九段女子のPBLのマインドフルネスな価値 6人の中3生とワークショップを共にして気づいたコト

★和洋九段女子の6人の中3生が、<SDGsすごろく>で大活躍をしています。「SDGs探究AWARDS2019」で優秀賞を受賞したことはすでにご紹介しました。その後も、中2~高1に拡大して、日大商学部の「チームサスティナ」とコラボレーションしたというコトです。詳しくは同校サイトをご覧ください。

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(2月16日の和洋九段女子でのセミナーで)

★中高生と大学生が、互いに創作したオリジナルのSDGsを体感し、世界の痛みを共感するゲームの情報交換をし、互いに経験し合う。すばらしい活動に発展しています。こんなチームがどんどん増えたら、世界は幸せをつかめるのではないでしょうか。新型コロナウィルスのパンデミック化があるならば、マインドフルデミックがあってもいいではないですかと思ってしまう今日この頃です。

★このマインドフルネス。実は和洋九段女子のPBLが前提にしているものです。自分のプロジェクトを立ち上げ、互いに協働し、未知/道を拓いていく生き方にマインドフルネスは灯ります。

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★そんなことにうすうす感じながら、明快に気づいたのは、先日、かえつ有明の副教頭佐野先生と元かえつ有明の教師金井先生(東大博士後期の研究員)と対話したからです。二人はマインドフルネスワークショップをいろいろな場所で展開していて、定評のあるファシリテーターです。実は和洋九段女子の教頭新井先生もお二人のワークショップに参加し、影響を受けていたというコトにそのとき気づきました。

★また、今回の「SDGs探究AWARDS2019」の審査員である香里ヌヴェール学院の校長池田先生のSDGsワークショップは、同法人の経営陣とシェアする研修を行ったことがあったので、その深さを身に染みて知っているわけですが、まさか和洋九段女子の生徒の皆さんの取り組みはすばらしかったですよと私がコメントを聞けるなんてサププライズでした。池田先生もウェルビーイングを追求するマインドフルネスを生み出すすてきな教育者です。

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★一見離れているものどうしが、出会える場が、今回の和洋九段女子の中3生6人がつくった<SDGsすごろく>の世界だったのです。

★今更ながらじわっと感動が全身に広がります。

★かくして、この<SDGsすごろく>の場は、まだ見ぬ未来のウェルビーイングを求める人々の集う世界だったということです。和洋九段j女子のPBLは、目に見えるモノの理解を深めるだけではなく、見えない世界をいまここで巻き込んでいく学びだったのです。なんてマインドフルネスな場でしょう。

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化石燃料を超える未来のエネルギーは、内生的エネルギー。それは<思考コード>と<思考スキル>というソフトパワーが生み出す!

★SDGsの掲げるグローバルゴールズを達成する以上のパワーがあるのは、化石燃料を排し、別次元のイノベーションやコンパッションを広げる倫理観だったりするというコトであるコトがうすうす世界の人々が共有するコトになってきました。

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★母が抱く無限の才能をもった子供。この子供の才能を摘んでしまうような社会制度設計はしないコトは大切ですが、この社会制度設計が描く一つの領域は学校という教育です。この教育制度を活性化させるにはどうしたらよいのか、チェンジするにはどうしたらよいのか、カリキュラムの時間数とか探究学習の開発なども大切ですが、どうやらその前に、何が変わるのかを見定めることが重要でした。

★人間の存在や価値は、客観的にあるのではなく、すべて人間が創ってきたものです。ですから、完璧はないのです。絶対はないのです。

★すくなくとも、近代の矛盾を生んできたのは、化石燃料の無尽蔵の消尽です。これによって、自然と社会と精神の分断がズタズタになったのです。

★それは、実は、カントのコペルニクス的転回の欠陥によって生まれてきたというのが、新世代の気鋭哲学者マルクス・ガブリエルの仲間の登場でだんだん明らかになってきました。

★近代の矛盾は、カントの不可知論を見えない世界をないものと錯誤してしまったり、戦略的に捨ててしまった商業主義に悪用されてしまった結果なわけです。強欲資本主義はここから動き出します。しかし、見えない世界は見える世界を支えるエネルギーの循環システムです。化石燃料も宇宙船地球号のシステムが浄化できる限界を超えてしまえば、たいへんなことになるわけですから、そのシステムを見えなくても見ようとしなけならない緊急事態が今なわけです。

★不可知論を捨てるというさらなるコペルニクス的転回。カントの欠陥を補うのか超えるのかはそれは哲学者たちのポジショニングの取り方なので、私には関心がありません。大事なコトは、その不可知の存在をどう見える化するのかというコト。

★そして、その不可知の存在こそが、化石燃料に替わる内生的エネルギーでしょう。さて、どうやってこれは生成されるのでしょうか?それが<思考コード>と<思考スキル>だったということが、この数年間、多くの仲間と語り合ってきて、マルクス・ガブリエルを授業に導入できてしまうノートルダム女学院の霜田先生と高次元を見える化するPBL授業を創意工夫している数学科の中村拓先生との出遭いで、閃光が走ったのです。

★幸せの愛青い鳥だったのです。<思考コード>や<思考スキル>は評価のためやルーブリック作成の道具であると同時に、内生的エネルギー=創造的才能×コンパッションを生み出す泉だったのです。油田から思考の泉へ。私たちのウェルビーイングは、この不可知の領域の回復によってマインドフルネスに到ることができます。

★この思考の泉を探す深い学びこそ<探究>であり、それを拓く対話がPBLという<トポス>だったというわけです。<探究>の道は多様です。いろいろな出会い、いろいろなコンテンツ、いろいろなメソッド。大いに結構です。がしかし、いきつくところは、思考の泉です。そこから内生的エネルギーが心身からあふれ出るクリエイティブでコンパッションを有した新しい人間存在があらゆるところに生まれてくるコトです。

★この証明と実践を広めていくことがどうやら私たちのミッションです。

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ノートルダム女学院で生まれている<新しい学びの経験>(3)NDナレッジ・カフェ 厨房でレシピ<対話>! 基礎学力とか基礎力とかをカントやガロアで語り合う。高次元の基礎学力の話だった!

★第1回めの<NDナレッジカフェ>オープン終了後、<NDナレッジカフェ>厨房に、マスター霜田先生とシェフ中村拓先生が集まってきました。リフレクションと次回のメニューやレシピについて<対話>が盛り上がりました。

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★今回のナレッジカフェでは、HTHのソフトスキルやPBLの効果、テストも教科書もないなどについてそのエッセンスやコンセプトについて気づきが多かったのですが、そんな中で、中村拓先生があえて、最後に「私自身は基礎力を大切にしたい」と語りました。

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★これに、マスター霜田先生は、喜び、こう言いました。「ここから深い気づきが生まれる。みな知識や基礎学力については一方で気がかり。そんなときに、中村先生が考える基礎力とか基礎学力とか共有できるメニューがあるとすばらしいですよね。ディーン先生もナレッジとは何か?議論したいと言っていたし」と。

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★すると、中村拓先生も、「それを議論するだけではなく、ワークショップレシピを考えますよ。たとえば、こんなのはどうでしょう」とすぐに具体的なレシピがでてきました。

★二人の先生が語る基礎学力とか基礎力というのは、たんなる暗記知識の話でないことは、おおよそ見当がつくと思います。それが何かは、4月の<NDナレッジカフェ>で食すので、そのときにまたご報告します。

★ただ、あまりにおもしろかったのは、その基礎学力とか基礎力の話は、経験と知識の関係から始まったのでした。中村拓先生の数学探究のプログラムの一環として、「数学資料集」をつくって、編集して本を出版しようといういうのあがります。生徒は自分の興味と関心のある分野や数学者らについて調べてまとめていくのですが、京都大学が近いので、数学史の資料館を訪れて、原文にあたったり、研究員にインタビューしたりしています。

★中村先生は、たとえば、ガロアを調べているチームは、方程式と群の関係を調べています。どこまでわかっているか、今はそれはあまり問題ではないのです。ガロアがどんな時代に生まれたのか、それまでの実用的な数学や秘儀としての道具だった世界から現代数学が生まれてくる局面の中に入ってい貴重な経験をしています。

★その経験から、基礎力が心身からあふれでてくるのです。

★そう中村先生が語ると、すぐに霜田先生が、「ガロアの生きた時代は、カントは長生きしたから、かぶっているよね。認識論のコペルニクス的転回が起きたから、その影響を受けているかもしれない。経験から即知識を得るのではなく、その間に基礎力みたいなカテゴリーが介在する。もともと心身に埋め込まれたカテゴリーだってあるのですから、それに気づくということかもしれませんね」と。

★すると、中村先生は「それは、たしかに、そうですね。今日のカフェでも話題に出ていていた、HTHで、見えるものより見えないものを表現しようとするPBLというのがありましたが、そこは見えないからないのではなく、数学的には、高次元だから三次元の世界からは見えないだけであるということですよね。」

★「えっ、なんかマルクス・ガブリエル的でおもしろいですね!」と霜田先生。

★そして、「社会科でも経験は大事だけれど、数学とどこが違うのだろう」とその違いについて話していくうちに、ある基礎力に関する共通のイメージに収束していきました。その内容については、次回<NDナレッジカフェ>でということになりますが、中村先生は、とにかく経験が大事で、3次元の立体を2次元に転換して、切り口を見つける経験を徹底しています。すると<基礎力>が心身にあふれてきます。これは一生もので、すぐに忘れてしまう暗記知識とは別次元の話ですと、その経験を生徒と行っている図形群を見せてくれました。

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★「数カ月前に、私のPBL授業のリサーチに本間さんが来てくれた時、立体図形を組み立てたり、解体したり、組み替えたりしていたのは、ここに到る前の段階の経験だったのです」と中村先生。「おおーっ、今繋がりました!」と感動する私。

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★そして、今年の京大の数学の問題を中村先生が解いたプロセスをいっしょにみながら「このベクトルの問題も、図形のイメージは大切ですが、この発想はじっくり経験を積んで基礎力を身につけていた生徒は解けてしまうんです」と。中村拓先生の前職の女子校が、東大30名前後合格させてしまう学校だったので、説得力があります。その学校も暗記力ではないのですね。もっとも中村先生が異端だったのかもしれませんが。

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★ますます、その基礎力とはいかなるものか、どうやったら身に着くのか、そして盛り上がった対話は、すべての生徒が身に着けることができるのかという問いでした。そこらへんも次回の<NDナレッジカフェ>のレシピに入れるそうです。

★<NDナレッジカフェ>の厨房では、霜田先生と中村拓先生の哲学史と数学史のスクランブル対話になり、またまた夜も更けてしまう勢いでした。デカルト座標は、今では座標軸として当たり前だけれど、デカルトが創造した。それはなぜだったのだろう。ガロアが群の発想をしたのはなぜだろう。今でも解決がついていないニュートンとライプニッツの微積の式の表記。時代が社会課題を解決する時に、そのような発想を必要としたから創造されたわけで、生徒には数学だって創造する分野はまだまだあるという体験をしてもらいたいと。目が覚めるような知的好奇心旺盛な対話になっていったのです。

★それにしても、先生方は、タブレットに授業内容や研究内容の痕跡を保存し、自身のモニタリングやポートフォリオで活用できるようにしています。対話の次元が毎回アップデートされているのが、実感できるというか見える化されているというか、実に気づきの多い瞬間瞬間です。生徒も同じような学び方を行っていくでしょうから、自己変容の実感を抱けますね。

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ノートルダム女学院で生まれている<新しい学びの経験>(2)NDナレッジ・カフェOPEN!

★ノートルダム女学院は、今回の一斉休暇の時間を使って、教師の学び合いが行われてきました。それぞれの教師がオンライン授業やグーグルクラスルームなどを創意工夫して生徒と学びを行っている合間や、成績処理の業務などの合間で、集まって、4月からのさらなる未来志向型授業をアップデートする準備をしていたわけです。

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★2020年の3月11日は、9年前の3・11と今回の新型コロナウィルス感染拡大防止の現状を重ね合わせながら、生徒の未来に祈るように思いを馳せました。このような予測不能な事態は、今後も起こりうるわけであり、そのとき生徒が自分で状況をつぶさに把握し、他者と協働しながら自分のとるべき行動を判断し、社会課題を解決する貢献活動を構想できるソフトスキルをどのように身につけていくのか、その<新しい学びの経験>の環境の着想について<対話>しました。

★この対話の会合の名称は<NDナレッジカフェ>です。マスターは霜田先生。未来志向型教育チームのリーダーの1人です。未来志向型教育チームはもちろんNDのチームですが、同時に霜田先生は、世界市民のための未来志向型教育のチームのリーダーでもあります。最先端の学習理論のみならず、哲学史に造詣が深く、それをベースに、最先端の哲学の知とテクノロジーを活用して学びの環境を創っています。

★9年目の3・11に、<NDナレッジカフェ>がオープンしたのはたいへん意味のあることです。この意味の深さは、今後のナレッジカフェの活動によってさらに堀り下げられていくのだと思います。先月から、この日のためにプレオープンの準備がなされてきました。

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★グーグルクラスルームの効果的な活用方法についてのセミナーを行ったり、ここ数日“Most likely to succeed.”の上映会を行ってきたのもその一環です。

★ナレッジカフェオープン第1回目のメニューは、HTHの映画を見て、NDの<新しい学びの経験>のアップデートの意義を深めるワークショップでした。最初は、映画の内容の情報交換をしていき、記憶を掘り起こす対話をするところからはじめていました。アイスブレイクですから、正確な内容の分析ではなく、あくまで、どんな内容が気に入ったとか気になるとかというそれぞれの想起するシーンを結合していくアクティビティでした。

★そのあとで、マナボードに1人ひとりお気に入りのキーワードを書き込み、プレゼンしシェアするアクティビティにシームレスに移行していきました。

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★生徒1人ひとりの才能を見出すことに興味を持っている先生、モチベーションの重要性に注目していた先生、定期テストも教科書もないPBLの在り方に関心を抱いた先生など様々でしたが、大事なことは全員で互いの興味関心を共有するところです。自己開示の足場づくりが着々と進みました。

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★その後、自己開示しながら対話するときに、TOKの知見である<共有知識と個人知識>あるいは言語の思考スキルである<ファクトとオピニオン>を分けて話し合ってみるという分析アクティビティを行っていました。

★HTHで考えられている社会の見方、産業進化の見方、教育の在り方の見方など共有されている知識が何であるか整理され、それぞれにHTHにかかわる生徒や保護者がどう感じているのかどんな不安をいだいているか分析が深まって行きました。

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★2チームに分かれて対話をしていったのですが、それをさらに参加者全員で統合するところまでいきました。

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★というのも、2つのチームは、この整理の仕方に微妙な差異があったからです。間主観と主観という分け方と客観と主観という微妙な差異。

★さすがは、哲学マスター霜田先生。統合する過程で、この差異に気づくという弁証法的アクティビティを挿入していました。

★この差異が、ものの見方の違いを生み出すということに気づくことは、正解が1つでない問いを発見し、取り組むときに大切な視点です。この差異を無視すると、最適解以外を認めないという対話になってしまい、生徒1人ひとりの才能開発にストップがかかってしまいます。

★対話の中で、先生方は、HTHの先生と生徒の対話の仕方が、創発的な理由を探ることになったのは、この弁証法的アクティビティが契機になっていたと思います。

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★そして、改めて、では自分はどうなのか?HTHの映画によって気づいたことを自分事に落としていく対話がなされました。あっという間の90分が過ぎました。<NDナレッジカフェ>は、教員研修ではありません。出入り自由のカジュアルな学び合いスペースです。生徒の成績を上げるためとか、生徒指導のミッションをつくるといった仕事として会議でもありません。

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★閉店の時間がきたらお開きです。ゴールにいたるかどうかは問題ではないのです。気づきを自分ならどうするかを日常に持ち帰るかどうかも自由です。

★とはいえ、そこはマスター霜田先生。デザートはちゃんと用意してありました。グーグルクラスルームでアンケートをとりました。

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★参加者一同がQRコード撮影会をやって、アンケートフォームに入っていきます。そして回答するや、集計されます。

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★今回のカフェで気になったことベスト3をチェック。すると、多様な反応に当然なるのですが、それをシェアすることで、コンパションという互いの興味関心及び痛みを共有することになりました。コンパッションアクティビティというすてきなデザートを食して閉店となりました。4月からのそれぞれの授業アップデートがどうなるのか楽しみです。

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2020年3月11日 (水)

ノートルダム女学院で生まれている<新しい学びの経験>(1)多様な<対話>が生まれる。

★3・11の朝、京都で過ごしています。9年前、慶応義塾大学湘南藤沢(SFC)キャンパスで、新しい学びを私学の先生方と創ろうというイベント準備で訪れていました。そして、あの東北の大地震。東京・神奈川エリアにも影響を及ぼす凄まじい地震でした。私学の先生方と一夜を共にし、そこからそれぞれいろいろ動き始めました。私は<21世紀型教育機構>の前身である<21世紀型教育を創る会>を発足する動きを仲間の先生方といっしょにしました。復興にどう寄与できるのか、フクシマという世界へ影響を及ぼす痛みを感じながら、どんなイノベーションが考えられのか、SNSの急激な普及にICTをどう活用できるのか。ストラスブールの仲間たちが、EU議会の広場でエールを贈ってくる会を開催してくれ、グローバルな市民社会とどうかかわれるのか、学校という場で、何ができるのか議論が始まりました。

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(HTHデザインの時代背景と教育の過程のドキュメンタリー映画“Most likely to succeed”の上映会を2日間実施。先生方が参加しやすい柔軟な時間設定を霜田先生はしていました。なぜ未来型の教育なのか、今一度時代背景やビジョンをシェアしよういう話になったということです。)

★準備に2年弱かかりましたが、2013年にお披露目をしてスタートしました。世間からは、何がC1英語だ、PBLって何なんだ、ICTを教育になんて大学合格実績はどうなるんだ、思考力入試なんて謎の入試やってどうするんだという攻撃を陰に陽にうけましたが、それは想定される非難で、むしろエネルギーにしました。同士校が本格的に21世紀型教育を授業の中で実施するのは、2014年ですから、6年後の2020年、つまり2021年の3月には、それなりの成果を出せると確信を持っていました。

★ところが、実際にはプレ改革期の2013年の生徒が、多いに活躍して2020年の春を迎えています。ここまで来るのに、大学入試改革やSDGs、第4次産業革命、ソサイエティ5.0などAI社会に向けた動きが社会を牽引しました。21世紀型教育機構の理念の一つに、ファーストクラスからクリエイティブクラスにというフレーズがありますから、それらの動きは当然想定内で、同士校は様々な外部ネットワークと結びつきウネリを創ってきたと思います。

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(上映会が終了した時に、主催者である霜田先生から、今回の一斉休暇の間に、生徒とオンラインで対話しながら生徒がどうやって思考を深めているのかシェア。先生方は、生徒によってこんなに違うのかと改めて生徒の成長の姿に思いを馳せていたようです。)

★そして、GAFAとは違う新しい哲学的な動きが欧米から生まれてきました。21世紀型教育機構は哲学的な授業も取り入れているので、そこに接続する可能性は見えていますが、ここに結びつくには、学内に哲学対話を行えるコーディネーターが必要になります。21世紀型教育機構の次のステージはこのウネリをどう吸収するかですが、マーケティングは優秀な経営陣だけれど、その中に哲学シンキングを有しているメンバーがいないので、しばらくブレイクスルーには時間がかかるでしょう。若手先生の中には、もちろんいますからしばらく待てばよいのです。それでも市場的には、大学合格実績が右肩あがりになり、海外大学の進学者数も出ますから、注目を浴びて、学校経営に問題はないという経営の安定と教育のハイクオリティーだけれどプラトー状態という事態がしばらく続くと思います。

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(参加できなかった同僚と対話して共有するシーンが多発していました。)

★さて、そうはいってもこのクリティカルマス(臨界点・分岐点)まで見えているのに、動かないというのが、日本の教育の今なのかと少しもどかしさを感じていたタイミングで、ノートルダムの先生方と出会いました。出会った瞬間内なる閃光が走りました。なんと、クリティカルマスを乗り越えるポテンシャルが凄いではないかと。

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(三井先生が参加できなかった今までの様々な対話やワークショップについて霜田先生が対話しながらシェア。私も聞いていましたが、U理論まで活用していたのかと驚きました。)

★しかし、この潜在的なものが現実態になり、つながったり、共振を起こすのはいかにしたら可能なのか?そう思いもしましたが、2月の半ばから急激に動きがウネリだしました。梅下先生や松谷先生、霜田先生、中村拓先生、三井先生をはじめとしたNDの先生方が対話的行為を始めたのです。哲学的・科学的・歴史的・数学的・マインドフルネス的対話アクションが授業に展開し始めたのです。<対話>ベースの動きですから、共感共鳴共振の渦があちこちで生まれてきたわけです。

★そんな折に、今回の新型コロナウィルスの感染拡大防止が世界同時的に起こっているわけです。3・11から9年経ちました。政治経済、軍事、教育、日々の生活へのダメージはだんだんすさまじくなってきています。一斉休校の折、霜田先生方はますます動かざるを得ないコンパッションを胸に秘め対話的アクションを起こしています。とはいえ、動き方が教師一丸となって強いミリタリーリーダーシップで動くということはないのです。コンパッションは、共振して、それぞれが動くのです。

★今日も、NDのEスペース(PBLができるイングリッシュルーム)からは、生徒がいないのに、生徒の声が鳴り響き、先生が授業を行っている声が廊下に響いています。オンライン授業を実施しているのですね。ノートルダム女学院は、教師も生徒もタブレットを持っていますから、先生によっていろいろ創意工夫をしています。

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(昨日上映会に参加した三井先生とお互いの授業のどこでHTHのコンセプトが活用できるか霜田先生は対話。大いに弾みました。)

★ノートルダム女学院の霜田先生は、21世紀型教育や未来志向の教育を推進するリーダーの1人で、ファシリテーターとかリーダーとかいうよりもジェネレーターとして、先生方といっしょに世界を創る対話的なアクションを始めているわけです。

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(私も参加して、ミニ「創発型スクライビング」手法をいっしょに実施。すると、クリエイティブ&コンパッション&コレクティブ&コード・オブ・シンキングなスクライビング=4Cスクライビングになっていることに気づきました。ありがとうございました!)

★今日も先ほど霜田先生と廊下ですれ違ったとき、昼から何かやるらしく、忙しそうでした。

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2020東京大学合格発表の季節(3)良くも悪くも近代官僚知を形成してきた東大。日本の学歴社会格差とジェンダーギャップの象徴が変わるか?脱優勝劣敗へ!?

★東京大学合格者を輩出する高校の序列の変化ウオッチは、タックスペイヤーとしてはチェックしやすい指標です。東大は良くも悪くも、日本の自己像の大きな一面である学歴社会とジェンダーギャップを形成してきた近代官僚知文化生産拠点です。私たちの多大な税金をつぎ込んで、それを受けいれてきたある意味共謀共同正犯が成立する私たちであるわけです。エッ!そんなことは考えたことがないというでしょうね。せいぜい共謀同調過失犯くらいがちょうどいいとかいうことでしょか。

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(優等生の東大の自己変容反省なき近代化論?)

★いずれにしても、戦後の歴代財務事務次官の出身大学の95%は東大出身者です。しかも89%は東大法学部出身です。あとは、京大法学部2名、一橋大学経済学部1名ですね。

★これが近代官僚知を東大知がコントロールしてきた大きな証です。エビデンスが必要だと論じる教育学者が多いですが、こういうエビデンスをどう解釈するのでしょうか。

★この財務事務次官の東大出身者が多いということが、異常だと感じるセンサーが働くかどうかが民主主義度にかかわってくるはずです。だいいち、市場の原理が正しく働く正義を経済学的視点でマネジメントするのではなく、法学的視点でコントロールするようでは、強欲資本主義を是正することはできないのです。

★というのは、市場が合法的に非対称性を生み出す結果をつくるのは、現状の法実証主義的官僚法学的視点では避けられないのです。この非対称性は市場から生まれてくるのではなく、生産過程から生まれる配分の正義の機能不全から生まれてくるからですが、これについては、現状では法制度上立ち入ることができません。

★生産過程のマネジメントも本当は市場の原理の正しい正義が働く必要があるのです。

★エッ!<正義>という言葉が、市場原理や組織マネジメントででてくるのは、ちょっと変じゃないと思われるかもしれませんね。それが法実証主義の価値観です。正義は実定法上排除される道義上の視点だというのです。こうして、明治政府は、民主主義の理念の自然法論やその理論的根拠の啓蒙思想を露骨に排除し、優勝劣敗価値観を生みだしたキャッチアップ型近代社会進化論を驀進してきたし、それは根底で今も変わりはありません。

★それはジェンダーギャップを生んできた過程とも重なります。今でも東大生の女性比率は30%いっていないわけです。民主主義国家としては異常としかいえません。

★というわけで明治政府のこのコントロールに対抗してきたのが啓蒙思想を連綿と継承してきた≪私学の系譜≫ですね。女子校の存在がその象徴的な光を今も放っています。しかし、この≪私学の系譜≫のマインドは、最近弱まっていました。学歴社会競争に巻き込まれ、あたかも加担しているように表現されてきたからです。私学自身にそのリフレクション機能が劣化してきた部分もあります。

★そんな流れの中で、再び≪私学の系譜≫の息吹をと気概をもって事を起こすことを目論んだ21世紀型教育を牽引してきた学校が私学の中から興こったということは歴史的重要事件です。それゆえ、2020年は、ある大きなエポックになるかもしれません。学歴社会が崩れる可能性、そして中学入試における気概ある女子校の復権という動き。

★21世紀型教育は2011年に一部の私学の仲間が奮闘努力して、その後世間の批判を浴びながらも満身創痍で進んできましたが、その影響は思いのほか大きかったです。C1英語×PBL×ICTという創造的才能や高次思考、コンパッションを生み出す装置は、私立公立問わず相当拡大しました。

★この2011年に立ち上がった重要な理由は、もちろん3・11です。そして2020年同じ時期に起きた新型コロナウィルスのパンデミック模様は、この21世紀型教育の拡大が東大の合格校の序列を変える駆動力になる可能性を結果的に後押しすることになるかもしれません。

★東大の自己変容。もう一つの近代化路線(≪官学の系譜≫ではなく≪私学の系譜≫。法実証主義から新自然法論への転回。)の回復が行われる希望がみえてきたわけです。良くも悪くもといったのは、これだけの税金をつぎ込んできた回収をしなくてはならないので、東大に代わる大学をさらに新たに創りましょうという話ではなく、東大の自己変容をタックスペイヤーとして望むというコトなのです。

★そのうえで、東大が自己変容すれば、知の東大植民地化が進んできた他大学もどんどん変わっていくということです。日本には、700校強も大学があります。それらが序列から解放されることは、新しい知の解放が同時に爆発的に起こるということです。人口成長論的強欲資本主義が内生的成長論=ソフトパワー重視のAI資本主義にシフトがおこるでしょう。おそらくベーシックインカムに相当する仕組みの経済社会の到来です。

★宇宙船地球号の乗組員でありタックスペイヤーである私たちとしては、東大を始め各大学の自己変容をもっと要求したほうがいいんですね。合格させてもらうのに、そんな強気発言はできませんというのでは、すでに学歴社会に取り込まれていますよ。偏差値が低いと言われてきた大学が、東大と対等の知の共創を行っていくようになればよいだけです。

★でも、そうするためには、中高も創造的才能と高次思考とコンパッションを養えように自己変容する必要がありますね。3年でそれはできるということが、すでに21世紀型教育校のモデルが物語っています。

★そうはいっても、まだまだ意識改革はすぐには進まないでしょうから、海外の先進的な中高の動向や海外大学の動向の情報を共有することは重要です。中高の留学や海外大学進学の大きな流れが最もインパクトがあるでしょう。今回の新型コロナウイルスの影響でオンライン学習がオンラインデミックスを生んでしまうので、それは加速されるでしょう。脱優勝劣敗へ!ということですね。(9年目の3・11を京都にて)

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2020東京大学合格発表の季節(2)海城・西大和の躍進は序列を崩すか?私立も公立も入れ替わり激化か?新公立中高一貫校の参入か? 高次思考力育成する21世紀型教育のソフトパワー有力か?学歴社会・塾歴社会崩れる転換期か?

★昨日、麻布と聖光学院の今年のと大合格者数激減分はどこにいったのか?公立と公立中高一貫校と新タイプ入試を行っている学校にシフトしたのではないかと語ったが、これはどうやら半分あたっているが、半分違ったようです。

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(気になる学校だけ抽出してみて、前年度の東大合格者の増減を出してみた)

★半分当たったとの言うのは、海城、西大和のように、高偏差値校であるにもかかわらず、グローバル教育やICT教育、新タイプ入試など自己変容を意識的に行ってきた私立学校は躍進しています。また、並木中等教育学校、岡山大安寺中等教育学校、来年から公立中高一貫校になる土浦一高、千葉県東葛飾などの公立中高一貫校はぐんと伸びています。

★その代わり、小石川中等教育学校は激減、日比谷も減らしています。

★また、逗子開成やサレジオ学院は、倍近く躍進しています。神奈川エリアで聖光学院が減らした分、しっかり伸ばしたわけですね。

★どうやら、一部の学校による東大合格者数独占は崩れてきたということでしょうか。東大合格者数のフラット化が起きているということでしょうか。

★私立復権とか公立復権とか、従来の東大合格者数動向の言説は使えなくなったということかもしれません。

★私立は私立の中で、順位は崩れ、公立は公立の中で順位は崩れ、公立中高一貫校の中では公立中高一貫校の中で崩れている可能性があるからです。全貌は判明していないので確かなことはいえませんが、このくらいの推理は今でも可能だと思います。

★そして、その入れ替わりの駆動力は、高次思考力の育成。すなわち、グローバル教育、適性検査型を中心とする多様な新タイプ入試に真摯に取り組んでいる学校。つまり、21世紀型教育に2013年ころから真剣に取り組んできた21世紀型教育学校ということになるやもしれませんね。

★HTH(ハイテックハイ)のようなPBL中心の学校が、大学進学実績も目を見張るように、21世紀型教育学校もPBLをベースとしてグローバル教育や高次思考力育成をしている学校は、結果も付いてきたということでしょう。

★学歴社会や塾歴社会が崩れ始める転換期が2020年やってきたということかもしれませんね。

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2020年3月10日 (火)

2020東京大学合格発表の季節(1)桜蔭⤴麻布⤵か?

★新型コロナウィルス感染拡大対応のたいへんなときにもかかわらず、本日東大の合格発表。もちろん、なんら問題がないのだが。インターエデュのサイトで、さっそく判明分から情報が流されています。開成は相変わらずナンバー1ですが、桜蔭が85名で、昨年に比べ、19名増。麻布が、60名で、昨年に比べ40名減。開成と麻布の間に、本日20時現在で、桜蔭、灘、渋谷教育学園幕張、聖光学院、駒場東邦が位置しています。

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(2020年2月1日中学入試の日の写真。首都圏模試サイトから)

★実は聖光学院も、62名合格したが、昨年に比べ31名減。

★全貌が見えていないが、麻布と聖光学院が減った分の71名は、どこが吸収したのか。桜蔭だけでは足りない。おそらく公立高校と公立中高一貫校と公立中高一貫校と同様の新タイプ入試を実施している私立中高一貫校ということになるのではないでしょうか。

★なぜそう予測をするのかというと、最近の公立高校の入試問題や私立中高一貫校の新タイプ入試問題は、高次思考力を問う適性検査型を意識した問題が出題されているからだ。

★桜蔭の国語は、かなり高次思考力。それに比べ、麻布は相変わらず傑出した入試問題を出題しているが、難度は国語などは桜蔭よりも易しい。それにいわゆる最難関校合格を独占している塾の偏差値輪切り受験指導で、麻布の学内は少し困っている可能性があります。偏差値で選びと、建学の精神で学校を選ぶことにならない場合もあるからです。

★麻布にしても、聖光学院にしても浪人生が待機することになるから、来年は元に戻るでしょうが、この2校がどのような戦略に出るかは注目です。開成や桜蔭とは違う方法で、東大合格者を出すかどうか?ここに未来の教育への分岐点があるでしょう。ここは見逃せません。

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2021年中学入試を読み解く準備(5)基礎情報➄東京共学校の新タイプ入試の勢いが新市場を創る。

★東京の共学校の新タイプ入試の勢いは侮れません。今年の2月1日の東京エリアの共学の新タイプ入試で50名以上の応募者があった学校の順位を出してみました。

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★宝仙理数インター、聖徳学園は、日本工業大学駒場、駒込、上野学園は未来志向型の教育に力を入れています。それがゆえに新タイプ入試の勢いがよいというのは、もはや生徒募集のための入試としての新タイプ入試の位置づけを大きく変えました。未来志向の教育学校のアドミッションポリシーとしての積極的なポジショニングを勝ち得たといえましょう。

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★また、新タイプ入試は生徒募集人数だけでは、評価ができません。少ない募集でも、合格したらほとんどの生徒が進むので、いわゆる歩留まりの良い入試です。そういう意味では、前年対比のランキングを出してみるのも意味があります。

★立正大附属や目白研心、工学院大学附属などは、募集人員は少ないとはいえ、前年対比はものすごいですね。未来志向型の教育の重要さに気づいている受験生・保護者は、まだまだ少ないことを考慮すれば、これはすごい動きだと思います。

★いずにれにしても、新タイプ入試を笑う者は、未来の希望を見逃してしまうかもしれません。

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2021年中学入試を読み解く準備(4)基礎情報④東京共学校の集まり方に変化。

★今年の中学入試の大きな流れのもう一つは、「共学ニューウェーブ校は人気高止まり一部が男子校・女子校にシフトか?」と言われています。具体的には、首都圏模試センターは、「三田国際学園・広尾学園・開智日本橋学園・東洋大京北など、これまで人気を高めてきた共学ニューウェーブ校の志願者は高止まり」と指摘しています。

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★2月1日東京の共学校の入試の応募者数を調べてみました。まずは4科目2科目入試で100人以上応募者があって、前年対比100%以上の入試件数は20件でした。

★なるほど、そうですね。しかし、だからといって、共学校の出願数が全体として減っているというわけではありません。2月1日の東京の共学校の入試のうち55%は、昨年より増えています。ですから、ニューウェーブが安定したというだけのことです。

★そして、次のグループががんばっているということでしょう。法政大学、穎明館、かえつ有明は次の共学校のシンボルになります。法政大学は、附属校としての特徴、穎明館は大学進学実績としての特徴、かえつ有明は、大学進学実績も生徒1人ひとりの創造的才能の両立という特徴があり、それぞれの特徴を先鋭的にしていくでしょう。

★淑徳、八王子学園八王子は穎明館タイプですね。日本大学第一・第二・第三、中央大学附属、成蹊は、法政大学タイプ。帝京大学、国学院大学久我山は法政×穎明館タイプ。安田学園、東京都市大等々力はかえつ有明タイプ。

★東洋大学京北は、新タイプ入試のほうは落ち着いてい、4科2科入試は盛り上がっているということでしょう。進学実績が急激に伸びてきましたから。つまり、穎明館×かえつ有明タイプです。

★共学校の動向は、法政タイプ、穎明館タイプ、かえつ有明タイプとその組み合わせで読んでいけそうです。三田国際は、超かえつ有明タイプ、広尾と開智国際は穎明館×かえつ有明ですから、どうやら次の共学校のシンボルは、かえつ有明タイプを組み合わせる学校ということでしょう。

★かえつ有明が、注目されるのは当然ですが、かえつ有明それ自身が今自身をさらに超えようとしています。三田国際とは違う超かえつ有明タイプになると予想されます。4月以降明らかになります。それは三田国際もそうです。超三田国際ということになるでしょう。

★次回は、新タイプ入試における東京の共学校を見えていきます。

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2020年3月 9日 (月)

感染症に対応する都市機能の変容能力(19)富士見丘 グローバルシティの自己変容に貢献する学びの環境デザインが魅力的。

★富士見丘は、ふだんからC1英語のトレーニングと1人1台のタブレット型ラップトップを活用してPBL授業を展開しています。さらにSGH指定校として、シンガポール、マレーシア、台湾、釜石などの都市のフィールドワークをし、自治体の方々や市民と対話しながら、未来の都市を提案して、ワールドコンテストでも優秀賞をゲット。模擬国連部の活躍もすごい。

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★とにかく、普段からC1英語を目指す英語教育が基礎ベースになっているために、あらゆる海外でのフィールドワークで生徒は当然英語で行っていきます。先日もハワイ大学からラッセル教授と世界の社会課題について議論する歓迎会がありましたが、当然オールイングリッシュ。そんな馬鹿なと思うかもしれないけれど、論より証拠なので、一度オープンスクールや文化祭など見学に行くとよいでしょう。

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★そいうわけですから、今回の新型コロナウィルス感染拡大防止のための一斉臨時休校においても、オンライン授業を普段通りすみやかに実行しました。

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★生徒の1人ひとりの才能を開花し、予測不能な緊急時においても即対応できるサバイバルラーニングが準備されている女子校は、都内のみならず日本全国においても希少価値があります。

★3月6日現在での大学合格実績も次のように同校サイトで発表されています。高3在籍数94名という少人数ですから、いわゆる、国公立早慶上智理・ICU・GMARCHの合格占有率は、74.5%。中でも早稲田大学も14名、上智大学8名、立教大学8名合格というのはかなり良好な結果だったと思います。

東京外国語大学   2名
筑波大学      1名
早稲田大学    14名
上智大学      8名
国際基督教大学   1名
青山学院大学    6名
中央大学     11名
法政大学     11名
明治大学      5名
学習院大学     3名
立教大学      8名
成蹊大学      5名
成城大学      3名
関西学院大学    3名
明治学院大学    2名
獨協大学      6名
津田塾大学     2名
東京女子大学    7名
日本女子大学    7名
学習院女子大学   3名
日本大学      3名
東洋大学      7名
駒澤大学      2名
専修大学      1名
武蔵大学      2名
白百合女子大学  15名
フェリス女学院大学 1名
東京都市大学    2名

★少人数で、破格のグローバル教育、ICT付きのPBL授業環境が帰国生にとっては魅了的なのは言うまでもありません。それゆえ、帰国生にはここ数年人気が右肩上がりです。一方、国内の受験生は富士見丘の価値にまだ気づいていないようです。しかし、今回の同校の動きや成果は、2021年以降は注目を大いに浴びることになるでしょう。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(18)聖パウロ学園 生徒の才能を開花する学びとサバイバルラーニングの提供

★今回の新型コロナウィルス感染拡大防止の様々な対応は、聖パウロ学園にとっては、新しい学びの価値を覚醒させることになったようです。

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★聖パウロ学園に入学してくる生徒は希望を胸に抱いてきます。どうしてか?それは中学時代、自らの才能を見出すチャンスが少なく、自己肯定感を高めたいという意欲はもっているが、その方法がわからず不安だという生徒が多いからです。生徒は、の聖パウロに入ったら自らの才能を見出し、自由な思考の翼を広げ、未来を拓けると期待しているのです。

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★実際新クラスのグローバルコースの一期生である現高2生は、英検の準1級をはじめ2級に合格する生徒が多数ではじめました。同クラスは準2級はおそらく全員がとってしまうでしょう。

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★一方、英語科の主任大久保先生は、理数系が多いセレクティブコースの生徒も一人残らず挑戦していけるようにしたいと。ただ、英検準2級をとるとらないが目的ではなく、自分の想いや考えをあるいは疑問を英語でやりとりできるサバイバルイングリッシュという局面を強調したいと。

★というのも、今回の新型コロナウイルスの問題は多方面にマイナスインパクトが大きく、予測不能な時代というのは、リスク社会であることに生徒といっしょに体験して気づいたからであるということです。

★才能開発のPBLは同時にサバイバルイングリッシュPBLにもアレンジできるので、4月からは、さらにこの両側面の相互作用を活用してシナジー効果を今以上に生みだしていきたいと、鋭意研究開発中だということです。

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★国語科の主任の高橋先生も大久保先生と同じ想いでした。国語科では、今思考スキルと情意スキルの言語化をして生徒と共有していこうと国語科のプログラム運営を企画開発しているところでした。

★そこに今回の新型コロナウイルス問題です。やはり、インフォデミックやワイマールの悪夢を想起するようなフェイクニュースに右往左往、付和雷同されないで、自ら正しく思考し、判断するにはいかにしたら可能かを考え始めているそうです。そのためには、生徒1人ひとりが「物語」を編集できるようになることではないか。自分とは何者かは、他者との物語を読解しつつ、自らの物語も創出できることではいか。科学も歴史も英語も、実は言語による物語プランンニングで過去を分析し、未来を描いているのではないか。

★物語を創る主体的な行為こそ言語活動の学びのコアなのではないか。だから思考スキルと情意スキルの弁証法が役に立つのだと。自己肯定感を高めるのも低めるのも物語編集次第なのですということでした。

★サバイバルイングリッシュと主体的な物語創作スキル。あらゆる事態に対応する自己変容スキルとして重要な価値があることに、世の中が気づくにはしばらく時間がかかるかもしれません。でも大丈夫です。聖パウロ学園の先生方が気づいた生徒といっしょに先に行って待っててくれるでしょう。

  

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感染症に対応する都市機能の変容能力(17)首都圏模試センター「八王子実践」に教育のターニングポイントを発見する。

★首都圏模試センターの取締役・教育研究所所長北一成氏は、同センターサイトに「八王子実践中の愉快なプレゼンテーション(自己表現&英語&プログラミング)入試」という記事を掲載。

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(写真は、首都圏模試センターサイトから)

★同記事によると、<八王子実践中学校〈東京・八王子市。共学校〉では、2/2(日)AMに「自己表現入試」と「英語入試」、そして今春2020年入試から新設された「プログラミング入試」が行われました。昨年2019年入試から、あえて従来からの「4科・2科入試」を一切廃止し、「適性検査型入試」、「自己表現(プレゼン型)入試」、「英語入試」の3種類の新タイプ入試だけを実施したユニークな私立中です>というのです。そして、今年、4つめの新タイプ入試「プログラミング入試」が加わったわけです。

★このことについて、北氏は、こう指摘します。<この”常識外の“決断と実施によって、八王子実践中学校は昨年度、同中学校を開校して以来最多の、20名の新入生を迎え入れることになりました。この数年、私立中学受験生が減りつつあるといわれてきた八王子エリアでは、従来の中学受験における人気校とは違った意味で、最も注目される存在になっています。>

★北氏は、“常識外の決断”の意味するものの背景に、日本の教育のターニングポイントをしっかり見定めているのでしょう。東京の中学入試にチャンレンジする率は20%を超えるのですが、八王子エリアは、10%いきません。東京圏内で地域格差があります。しかし、その格差をひっくり返す動きになっているという事実を見ているのです。

★どういうことかというと、北氏は別の個所でこうも語っています。<これら4種類の新タイプ入試は、いまなお中学入試で年々増加しつつある「午後入試」ではなく、いずれも午前の時間帯に行われる点と、第4回入試が2月15日という、年々入試日の前倒し傾向が進む首都圏の中学入試では最も遅い日程で実施される点も、従来の”中学入試の常識“を覆しているという意味で注目されます。この2月中旬の入試日程ならば、都内や神奈川の公立中高一貫校を受験し、その合格発表後に私立中の入試をしたいと考えた小学生でも、慌てずに受験することが可能です。>

★ここでは、<中学入試の常識の転倒>というのが4科2科入試の午後入試の設定とは違うということを示唆しています。たしかに、4科2科入試中心の学校は午後入試を設定してアグレッシブに入試改革を行っています。しかし、これは<中学入試の常識>の範囲内の話です。中学入試の新市場を創出しているわけではありません。知識・理解というA軸思考ベースの学習観という常識市場ということです。

今年の首都圏中学入試の受験生の数は、首都圏模試センターによると49,400名で、2,200名増です。しかし、これは、4科2科入試の午後入試が増えたからではありません。<中学入試の常識>の範囲を超えた新タイプ入試が増えた分を意味します。

★着実に新タイプ入試は新市場を形成しているのですが、そのことは日本の教育のターニングポイントを意味しているとも言えます。

★このタイミングで北氏が渾身をこめた記事を掲載したというのは、さらにその意味の重さを感じないわけにはいきません。というのも、今、新型コロナウィルスの感染拡大防止の様々な取り組みが行われていますが、それはまさに予想不能な時代突入の経験です。各学校・各塾などが、一斉休校に対応するべく行っているオンライン授業は、まさに八王子実践が4科2科入試を排して、4つの新タイプ入試を実施したのと呼応しているのです。

★特に学校は、知識・理解のA軸思考だけではなく、論理的にあるいは創造的に思考するB軸思考やC軸思考を活用する問いをオンライン上で投げかけています。生徒がまさに見舞われているこの事態はいかなることか、多角的なアプローチで考える問いを投げかけているし、そのような事態において自分はどう感じ、どう生きるのか思索する時間をとっています。つまり、探究の時間ですね。適性検査型入試がここに結びついていきます。

★また、世界中がパンデミックにならないように協力し始めながらも、分断の危うさも見え隠れする矛盾した社会現象も起きています。パンデミックよりも前にインフォデミックが起きているし、この機に乗じてワイマールの悪夢を想起させるような法制度をつくろうとしているのではないかという政権の動きも見られます。

★英語入試は、カリキュラムポリシーにおけるグローバル教育につながっていますから、まさにこの地球規模の協働とリスクという矛盾をどうするか思索し、世界の仲間と対話していく準備につながっているのです。

★自己プレゼンテーション入試は、自分の才能を思う存分発揮する入試ですが、インバウンド頼み、海外への工場移転などの試みが、今回のようにうまくいかなくなったときに、自前のソフトパワーで乗り切らなければなりません。北海道のホテルは、道民への誘いに切り替えています。産業界も生産拠点を日本に戻す動きをみせています。今ここで自分の才能が役立つ瞬間を迎えていますが、このような才能開発の教育を八王子実践はしているのです。

★そしてプログラミング入試は、まさにオンライン授業でICTの多様な活用が今も刻刻と創意工夫されています。全国でICTの教育導入を無視することが出来なくなる転換期を迎えたわけですが、ICT教育についても八王子実践は先行していたわけです。

★このような八王子実践の常識破りの動きは、実は高校の教育革新の成功と連動しています。高校の募集は大成功しているわけですが、その成功要因に、特進コースの高1・高2で行っている探究学習の開発実施があります。

★すでに、9000人も応募のあるマイプロジェクトアワード全国Summitの決勝に出場する生徒が現れるほどの成果をあげています。この探究学習は、カンザキメソッドの神崎史彦先生や東大大学院博士で研究している金井達亮先生などの外部ネットワークと連携もしています。

★神崎先生は、AO入試・探究学習の第一人者で、全国の多くの私立学校のアドバイザーです。八王子実践の隣の工学院でもアドバイザーを担っています。すでに東京医科歯科、電通大、海外大学などAO入試やエッセイライティングという高次思考を要する大学に進んでいる生徒を輩出しています。

★金井先生は、かえつ有明復活をプロジェクト型の教育で成し遂げ、今は多くの学校の教師のマインドフルネスな対話型授業の研修や大学の教師の授業研修も頼まれています。二人とも、生徒の自己変容とプログラムの相乗効果をいか生成していくか研究しているという点で共通しています。

★この探究学習の動きこそ、未来を創る教育としてのディプロマポリシーの一環です。

★こうしてみると、八王子実践は新タイプ入試―探究的な学習をコアとするカリキュラム―探究ベースのディプロマポリシーとして6年間一貫して、すばらしい今までにない教育を実践していると言えましょう。

★北氏は、こう語ります。<ちょうど教育の転機ともいえる大きな変化の節目に、従来の中学入試の常識を破り、中高一貫教育と中学受験に関心をもつ、すべての意欲ある小学生と保護者に門戸を開いた八王子実践中は、新たな“希望の私学”といえるでしょう。>

★まさに然りです。こうして、八王子エリアの都市の自己変容にも影響を与えていくことは予想するに難くありません。

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2020年3月 8日 (日)

感染症に対応する都市機能の変容能力(16)この1週間のホンマノオト21のアクセスから見える新しい動き。新しい見識の顕在化か。

★この1週間は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために国家レベルだけではなく、自治体、企業、学校、家庭、個人などそれぞれのレベルで様々な取り組みが行われてきましたし、まだまだ続きます。ホンマノオト21の記事も教育の変容という切り口だけではなく、今後の都市機能の変容というスコープで書き始めているので、アクセスしてくだされる方々の反応に変化があるのかないのかアクセスランキングベスト30を並べてみました。

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1:2020年2月ホンマノオト21のアクセス状況から見る2021年中学入試動...
2:2021年中学入試を読み解く準備(3)基礎情報③東京女子校の集まり方に教...
3:感染症に対応する都市機能の変容能力(14)品川翔英 新しい都市創りに新旋...
4:2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早...
5:2021年中学入試を読み解く準備(2)基礎情報②東京男子校の実受験者率に...
6:感性症に対応する都市機能の変容能力(7)佐野先生と金井先生と対話する。静...
7:感染症に対応する都市機能の変容能力(9)佐野先生と金井先生との対話。なぜ...
8:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
9:感染症に対応する都市機能の変容能力(11)工学院はZ世代地球市民の才能開...
10:感性症に対応する都市機能の変容能力(3)神崎先生と多面的アプローチによる...
11:2021年中学入試を読み解く準備(1)基礎情報①
12:感性症に対応する都市機能の変容能力(6)さすがメディア水面下で動きはじめ...
13:和洋九段女子のSDGsの活動 優秀賞受賞 その意味の重要性を改めて感じる...
14:感染症に対応する都市機能の変容能力(12)工学院はZ世代地球市民の才能開...
15:三田国際 2020年中学入試を終え、目が覚めるような新機軸へ準備整う: ...
16:感性症に対応する都市機能の変容能力(5)ノートルダム女学院霜田先生方と生...
17:【2019年大学合格実績04】世田谷学園の東大合格者躍進の意味。: ホン...
18:感染症に対応する都市機能の変容能力(10)工学院はZ世代地球市民の才能開...
19:感染症に対応する都市機能の変容能力(8)佐野先生と金井先生との対話。HT...
20:感染症に対応する都市機能の変容能力(13)工学院はZ世代地球市民の才能開...
21:感性症に対応する都市機能の変容能力(1) 内村鑑三のグローバルボランタリ...
22:感性症に対応する都市機能の変容能力(4)神崎先生と多面的アプローチによる...
23:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
24:感染症に対応する都市機能の変容能力(15)今後の社会予測と個人の自己変容...
25:2020中学入試 3つめの動向。高い意識の女子受験生の誕生。
26:感性症に対応する都市機能の変容能力(2) 免疫学×新実存主義×デジタル発...
27:新コロナウイルス感染を防ぐ動き~Z世代が脱近代未来プロジェクトを生み出す...
28:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
29:2020中学入試 4つめの動向 東京の共学校の渦を通して
30:大妻中野さらに新しいステージへ 

★1位、2位はやはり私立中学入試情報のアクセスが多いですが、3位に品川翔英の記事がランクインしています。この記事は私立中学入試情報と同校の品川区という都市への影響について語っているので、都市と私立中学の新しい相乗効果というテーマに関心のある方がいるということの証かもしれません。

★ベスト10にはいつもはいっている三田国際や東洋大京北の記事は、それでもアクセスは多いですが、前面にはでてこなかった1週間だったということです。アクセス数は、都市の自己変容にかかわる教育活動を行いさらにその路線で大きく変容している学校の情報が上位に来ています。

★新しい見識がで生まれてきたのかもしれません。

★そんなとき、聖学院の大野先生から、久しぶりにメールをいただきました。聖学院は久しい間糸魚川農村体験学習を実施してきました。自然と社会と精神の循環を崩す壁をなんとか取り除こうという探究学習=PBLが行われてきたのです。大野先生は、そのプログラムの牽引者です。さりげないメールでしたが、この糸魚川の意味を探究学習という枠の中から出して、もっと社会課題に生徒が取り組めるようにダイナミックにしていくということらしいです。

★つまり、学校も社会も協働するかしないかクリティカルモメント(分岐点)に立っていることを暗示するメールでした。このようなメールが届くこと自体、やはり大きく何かが変わろうとしているということですね。

★もちろん、こういうときは、健全な動きだけではなく、忍び寄る暗黒面の動きもあります。特に安倍政権はワイマールの悪夢を引き込む危うさを孕んでいますから、インフォデミックに対抗できるリテラシーやリーガルマインドも必要になってきます。そういう意味でも18歳成人の学びの場である学校は、教科学習という閉鎖空間の中で満足しているだけではいけないということでしょう。

★もちろん、そうはいっても宇宙船地球号はある意味閉じられたスペースです。パンデミックやインフォでミックが地球上に広がらないように世界標準の学びや領域越境的な見識をいよいよもたなくてはどうしようもないクリティカルポイント(限界点)にきたようです。

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2020年3月 7日 (土)

感染症に対応する都市機能の変容能力(15)今後の社会予測と個人の自己変容の可能性を思考コード・コンパスによってみえてくるもの。それは、GVマインド×CAシステム思考。

★今回の新型コロナウイルス感染拡大防止対応について、国家レベルの話だけではなく、都市レベル、企業レベル、学校レベル、そして個人レベルなどで洞察するタイミングになってきました。おそらく意外と長引くのではないかという感じになってきたので、防衛モードからサバイブモードにはいってきたということでしょう。

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★昨日も福原将之氏(株式会社FlipSilverlining代表)と鈴木裕之氏(GLICC代表)と緊急ミーティングをしていました。福原氏は、コンピューターサイエンスと宇宙物理学をベースに企業活動とグローバルボランタリー活動をしています。

★鈴木氏は、英語教育の専門家で、帰国生のサポートを長年行っています。GLICCはそういう海外経験者のための21世紀型教育の学びの拠点です。当然ZoomやGLICC専用のプラットフォームで世界中の子供たちと学びを実施しています。

★そんなわけで、二人のところには、急にいろいろな相談が集まってきています。福原氏のところには、各学校や受験業界関係者からオンライン上で学びを行っていくにはどうしたらよいのか、実際に教えて欲しい、今すぐ設置して欲しいといった相談のようです。

★鈴木氏のところには、このような状況の中でグローバルな活躍ができる能力を養う最適な環境を備えている学校はどこなのか知りたいと。それで、3月末から4月初旬にかけてヨーロッパ海外帰国生対象進学情報セミナー弾丸ツアーを予定しています。もっとも今の世界情勢では、入国が制限されたりするのでどうなるか情報を収集しているところです。

★とはいえ、私たちはワークショップ型の授業やセミナーをやるので、すべてオンラインとはいかず、そこらへんをどうしていくか対話が必要になったわけです。

★というのも、今のところ市場はたくましく、無料で学びの動画やアプリなどの情報を提供している動きが日々増しています。

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★ところが、私たちも活用している「思考コード」でいうと、A軸領域のものが多く、本来、今後の予測不能な時代に備えるためのC軸思考を養うはずだったのが、学びの量は担保されても、学びの質は縮小していくという危機意識があるわけです。

★そもそも新型コロナウィルス感染拡大こそが予測不能な事態ですから、この事態にどう立ち臨むかというC軸思考を発揮しなければならに時に、みんなでA軸思考に集中してしまうのはどうなのだろう。今月中に終息していくというのであれば、一時的な話ですから、それでよいのですが、もし長引くとしたら、そこは解決する必要があるという対話になったわけです。

★実際に学校においても、A軸思考だけではなく、C軸思考を発揮するような問いを生徒とオンライン上でやりとりをしている先生方も多いですね。

★しかし、割合にしたら圧倒的にA軸思考サポートというのが現状でしょう。

★一方で、都市機能もテレワーク中心の業務とリアルスペースワークの区別が明快になっていく兆しがあります。これは、今回の問題が終息しても続くだろうというのが私たちの周りの大方の予想です。学校説明会がそういう流れになるはずです。すでにそうするという学校もでてきています。

★都市機能や企業機能こそ、ソフトパワーやクリエイティブパワーが必要になり、すべてテレワークというわけにはいきません。ソフトパワーやクリエイティブパワーだからこそテレワークで済むのではないかといわれがちですが、リアルな経験なくしてクリエイティビティは生まれてこないので、そうはいかないのです。

★したがって、当面都市機能はオンライン上仕事が増え、クリエイティブな仕事を生み出す「欲」が生まれるリアルスペースの安全性の確保という二重構造が明快になっていくのは予想するに難くないでしょう。

★そうすると、学びはコンピュータサイエンスと公衆衛生の専門医療関連の分野に思い切り力点が置かれるようになるでしょう。そして全体を俯瞰し、複雑適応系の組織をマネジメントする知恵=CAシステム思考(complex adaptive system thinking 複雑適応系システム思考)が必要となります。何より、のど元過ぎればにならないように、このような流れを生み出すグローバルボランタリーマインドは必要になるでしょうが、このマインドはどこで養われるのでしょう。

★C軸思考を生み出すPBL型教育によるということになります。しかも、PBLができるICT環境。すなわち、ワークショップをオンライン上でできる環境を備えたPBLの開発が必要ということになります。

★これは、残念ながら資金がかかりすぎます。ですから、ここは国家レベル、都市レベル、企業レベル、NPOレベル、学校レベル、個人レベルなどが総がかりでやるしかないわけです。ここは、社会問題を解決する貢献をするという社会的インパクト評価というのをみんなでしていくしかありません。

★社会的インパクト投資を株式市場からグローバルマインド生活世界に拡大する必要があります。そのとりまとめをする団体を支援をするのが、各団体です。このサポート自体がまずは社会的インパクト活動になりますが、なんといっても都市機能がそのように変容する必要があるでしょう。

★C軸思考(思うことと考えること両方)を身に着け、それで経済・政治・自然・精神の循環を創っていく価値観に変容することの重要性をみなさんで対話し、創っていきませんか。まずは私たち(今回登場した福原氏と鈴木氏と私以外にも仲間がいます)は、GVマインド(グローバルボランタリーマインド)とCAシステム思考(complex adaptive system thinking 複雑適応系システム思考)を生成する活動をしていきます。

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2020年3月 6日 (金)

感染症に対応する都市機能の変容能力(14)品川翔英 新しい都市創りに新旋風を巻き起こす予感。

★今年4月から品川翔英が立ちあがる。校名変更、共学化、<新しい学びの経験>開発がもたらす生徒の成長未来の大きなイメージに向かって着々と迅速に進んでいます。

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★4月から新校長として就任する柴田哲彦先生は、昨年9月に副校長として着任し、同校のポテンシャルをつぶさに観察し先生方と対話を進めてきました。新しく変わるとなると、何をやるというパッケージ陳列の説明会になりがちですが、それは先生方のソフトパワーとその結集と大きなビジョンがあれば、走りながらできるので、全く焦らずに入試を迎えたそうです。

★結果は予想以上に生徒が集まり、時代が求めている響きとシンクロしている実感を抱いているそうです。

★柴田先生は、生徒が集まらない学校で改革を進めたり、全く新しい教育を創る学校の改革をしたり、東大や京大、医学部に合格させる進学校で合格以上の人間力を育てる改革にも携わってきました。

★そして、性格の違う学校でありながら、改革のパラドクスという共通点がどうして横たわっているかを身に染みてわかっていると語ります。では品川翔英ではどうするのか?それはまだ企業秘密だよと。でも、新しく変わる説明会でハードパワーやパッケージを並べなかったことで、本間さんならだいたい了解できるんでしょうと逆にプレッシャーをかけられました(笑)。

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★インタビューをさせて頂いた部屋には、「品川翔英中学~自主・創造・貢献~」という「入学準備ノート」が積んでありましたから、見せていただくと、たしかになるほどというわけでした。

★柴田先生は、「でしょう。ポテンシャルはものすごくある学校ですよ。校訓の<自主・創造・貢献>は、まさに「主体的・対話的で深い学び」という授業に反映しやすい校訓です。理念と現実が一致できる学校なんて、意外と少ないのは釈迦に説法でしょうが、本校はできると確信しています。というのも、カリキュラムマネージメントのリーダーや探究担当のリーダが、その線で動いたり、学力の三要素を各教育活動に結びつけようというプランをすでにシェアしてくれているからです。校訓―新しい授業―ディプロマが、すぐに構想できる先生方がすでにいるわけですよ。学力の3要素は、指導要録にまで一貫しなくてはならないのが新学習指導要領なんですが、この変更は大きなことで多くの学校では厄介だなというわけですが、本校ではやっと時代が自分たちに追いつてきたとなかり静かな情熱で燃えているんです。内発的モチベーションが高いのに、驚愕していますよ」というわけです。

★探究の時間では、ドラマエデュケーションを取り入れたり、海外研修では探究ベースのPBLを開発していくということです。PBLであろうがアクティブラーニングであろうが、名前はともかく、マイプロジェクトー仲間とのプロジェクトーSDGsのような世界プロジェyクトに挑戦するという意味では、普段の授業と探究と教育活動の一貫性があってよいと判断しているということです。

★そして、PBLをやるならルーブリック、ルーブリックで評価するなら定期テストは不要という話が共有できてしまったというのも凄いことです。定期テストの前後の週の授業はたいていは定期テストのための授業になってしまいます。それは実はどこの学校でも疑問視されてきました。定期テストのための授業というのはどこか本末転倒だし、ただでさえ時間がないないというのが現場です。その時間はもっと有効活用できるはずですだからです。

★なるほど、改革のパラドクスを飛び越える作戦なのだと腑に落ちました。教師のポテンシャルベースの学校マネジメント。それは生徒にも同じことがいえるようになるのでしょう。

★品川区という多様なネットワークの最前線拠点という位置づけをどうも小野理事長と柴田先生は描いているのではないかと予想したりしています。

★今回の新型コロナウィルス感染拡大防止策の攻防は、地球規模で都市化が避けられない以上、新しい都市に変容していく必要があることを明快に映し出した流れになっています。19世紀末、世界の環境都市やユートピア都市のアイデアを提供したのは、東京の大名庭園です。明治維新当時訪れた外国人が、ひしめく大名庭園の江戸空間をみて、ユートピアと呼びました。

★ところが明治政府は、根こそぎ開発してしまい、大名庭園をモデルに建設されたイギリスのレッチワースの田園都市は、逆輸入されて田園調布が創られました。そして、五島慶太翁の遺言がたまプラーザです。その後東急電鉄は、その意志を継いでいます。この影響を与えたのが、最後の国土計画です。そおコンセプトはガーデンアイランド構想でした。ガーデニングがひところ大流行りだったのは、この国土計画にきかっけはあります。私立学校が東急電鉄沿線にあるのは偶然ではなかったのです。

★そして、今再びスマートシティなどと呼ばれ自然とAI社会と精神が循環する新しい都市創りがデザインされつつあります。それがソサイエティ5.0の動きやSDGs2030の動きです。

★品川翔英は、<自主・創造・貢献>と<SDGs>の活動をすべて生徒1人ひとりが<自分事>に反映できるように動いています。間違いなく新しい都市の知の庭園は新しい学校のデザインに委ねられるでしょう。品川翔英はその道を歩むことになるのではないでしょうか。大いに期待したいと思います。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(13)工学院はZ世代地球市民の才能開花の拠点 未来の都市機能を創発する④

★加藤昌弘先生のエイジェンシーとしてのアクションが<広報―生徒世界―PBL―CEFR×思考コード―ICT>という複雑適応系を生み出すエネルギー態を創発したと、前回書きました。その具体的な動きを簡単にご紹介しましょう。実はすでに田中歩先生が「工学院のPBL①(高校2年生 情報)」で記事を掲載していますから、詳しくはそちらをご覧ください。

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★今回のグローバルプロジェクトから帰国した高2生は、情報の授業で、事後学習の一環として、自分たちは現地の人びとと何をやり、その意義は何であり、気づいたことは何か、さらなる課題は何かをプレゼンするアウトプットをデザインするPBLを行いました。

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★田中歩先生は、ご自身の記事の中で、ここまでは、B軸(工学院の場合は横列がB軸になっています)のcriticak thinkingを活用しながらリサーチ―アクション―リフレクション―編集―作成―プレゼンの共創造を行っていると指摘しています。

★そうシンプルに言いましたが、生徒は現地で未知との遭遇をします。文化人類学的な視点や起業家的な精神を発揮します。ボランティア活動もします。英語をも活用します。もちろん、ノートPCも持参しています。すでに複雑適応系の動きを生徒自身がしてきたのです。

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★ですから、田中歩先生は、情報の授業では、現地でC軸まで発揮してきたことをリフレクションしてB軸思考で再現しているというわけです。工学院のPBLは創発をやりっぱなしではなく、B軸思考で総括もします。すると、そこから次の発展形が見えてきます。B軸とC軸を往来するダイナミクスが複雑適応系のエネルギー態ということでしょう。

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★で、それはすぐさま発展形になりました。加藤昌弘先生は、グローバルプロジェクトをまたまたリーフレットにしようと思った瞬間、生徒にいっしょに創ってみな~いと声をかけました。すぐに<GPパンフレット制作チーム>というプロジェクトが立ち上がりました。またまたC軸思考への旅が始まったのです。

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★学校内で集まって絵コンテよろしくパンフレットのレイアウトの順序づけ・重みづけという生徒世界の制作が始まりました。学校だけでは時間が足りないので、普段授業で活用しているプラットフォームedomodoで頻繁に議論をしたり素材収集を行いました。複雑適応系がこういうところにも発動しています。

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★かくして、パンフレットは出来上がっていきます。

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★<広報―生徒世界―PBL-CEFR×思考コード―ICT>という複雑適応系の組織的動きの結晶ですね。こうした複雑適応系の思考やアクションができる生徒が工学院から羽ばたいていくのです。

★今時代は、要素還元主義的な20世紀産業社会が失ってきた自然と社会と精神のつながりを回復する複雑適応系の精神が脱産業社会を反映する新しい都市の自己変容をもたらすウネリが生まれています。工学院の生徒が再び新しい世界を牽引する活躍をすることになるでしょう。

★今「再び」と言いましたが、それは工学院は、日本で私立の工学部の大学として一号店で、20世紀産業社会の生活世界のインフラを生み出していったのはその卒業生たちだったのです。そして、今工学院グループが来たるべきソサイエティ5.0やSDGs2030に向けて自己変容しようとしているわけです。

★日本の近代化の立役者だった産業社会の扉を開いたのも、21世紀の脱近代・脱産業社会の扉を開くのも工学院の生徒たちです。そういう意味を込めて「工学院の生徒が再び新しい世界を牽引する」と書いたのです。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(12)工学院はZ世代地球市民の才能開花の拠点 未来の都市機能を創発する③

★工学院は、8年前にすでに緊急事態が起こっていました。それゆえ、今回の一斉休校の事態は工学院の先生方にとっては世間のような混乱を呈することはないわけですが。ともあれ、新校長平方先生が就任して21世紀型教育をやるんだとなったのです。現場は柔軟に対応するも、混乱は予想に難くありません。1年めは理念の調整。これは一番大変です。昔でいえばイデオロギー闘争です。

★2年目は、理念に基づいた実践のデザインです。一方で「アドミッション―カリキュラム―ディプロマ」ポリシーのグランドデザインも始まっていました。その大きなパターン予測は、しかしながら、学校組織の現場が何か創発しはじめなければ、できません。

★このような組織を複雑系の組織と呼びます。従来のようにツリー構造の統御型組織の方がシンプルでわかりやすいのですが、時代対応ができるかどうかは、おそらく無理でしょう。だからといって、8年前の21世紀型教育のアイデアは、未来の予想を創るところから始まりましたから、予想パターンがないのです。どうすればよいのでしょう。

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★とにかく、今となってはカオス型複雑系ではなく、複雑適応系(CAS:complex adaptive system)組織になっているので、先生方にとってはのど元過ぎればでしょう。しかし、カオス型から複雑適応型になった経緯は、私たちにはものすごく参考になります。

★新しい経済や市場創出は草創期は盛り上がります。カオスがかえってエネルギーになります。しかし、適応型に変わらなければ、2,3年でしぼみます。工学院は生徒募集が山あり谷ありで、受験業界は慎重に見守っていたわけです。

★先生方の危機意識は相当なもので、そこは乗り越えました。しかし、それができたのは、<広報―PBL-CEFR×思考コード×ICT>という複雑適応系をマネジメントできるGrowth Mindsetができる教師がたくさん生まれたということでしょう。前回紹介した鐘ヶ江先生もその1人です。

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★そして、もう一人加藤昌弘先生です。鐘ヶ江先生も加藤先生も、それから本ブログでよく登場してくる田中歩先生も、カオス時代のプロジェクトのメンバーで、そのときに<PBL-CEFR×思考コードーICT>のプロトタイプ創発をしたメンバーです。

★しかし、このとき足りなかったものは<広報>だったのです。新しい<広報>。21世紀型<広報>をと言われたところで、電博やリクルートであるまいし、どうやって。とにかく<PBL―CEFR×思考コードーICT>は現場でどんどん進行していきました。複雑系ですから、あちこちでブレイクルーが起きて、現場の先生方も全体を俯瞰することができないでいたでしょう。

★ただ、自分たちが授業で行っているのは、思考コードやCEFRを活用するので、互いの位置づけはわかります。21世紀に飛びたいけれど、授業で飛んでいるのかどうかは、思考コードやCEFRの物差しを当てて、議論ができるようになっていったのです。そのときPBLの肝の1つ共感的コミュニケーションを授業から引き出して工学院のコミュニケーション文化にしていったのが田中歩先生です。

★そして、その共感的コミュニケーションによって、結晶化したのが今回の<グローバルプロジェクト>だったのです。工学院の複雑系がカオス型組織から複雑適応系組織=学習する組織にシフトした記念碑的なプログラムです。そう、記念碑的な運命的な体験を工学院の先生方はしたのです。

★ここにきて、<広報―PBL-CEFR×思考コード―ICT>が複雑適応系組織マネジメントのエネルギー態として出来たからです。

★ここ2,3年、すでに加藤先生が、現場のブレイクルーを整理したりまとめたりして、その火を消してしまうような無粋なことはせず、ただ全貌出来るような広報支援ができないかと挑戦していました。英語教諭なのですが情報の教師免許もとり、イラレの学びも深めました。英語とICT堪能な教師の出現です。これは他の学校ではなかなかあり得ないことでしょう。

★手始めに、同校のサイトのSNSの在り方のマネジメントから始めました。自ら授業の合間に写真を撮りながら、現場のブレイクスルーを発信していったし、先生方の協力を仰ぎ、どんどん発信する緩やかなチーム作りをしていきました。田中歩先生の心理学的共感的コミュニケーションを形にするのに大いに役立ったと思います。

★しかしながら、加藤先生は、SNSの全貌性の可視化の難しさに気づいていました。図書館司書教諭でもある有山先生(も初期プロジェクトメンバーです)が紙ベースの本と電子図書の両方のメリット・デメリットを考えていましたから、やはり全貌性は紙媒体に今のとこ軍配ありと判断したのでしょう。学校案内ができああと、作成時に載せられない現場のブレイクスルー活動をSNSで発信するだけではなく、ある程度まとめながら旬な情報として提供する8ページリーフレットを作成するようになったのです。

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★これは説明会のときに大好評となりました。説明会にはリピータの保護者がいます。毎回新しい情報を得ることができるのです。もちろん、1カ月の間に多様な教育活動が創発されていないとリーフレットはできないわけですから、学内中ますます凄いことになったわけです。

★嬉しい悲鳴というか、加藤先生は担任もやり、英語も教え、情報の時間も担当し、探究論文のチュータリングもやらなくてはなりません。その合間にやるわけです。しかも、ICTです。どこでも仕事ができるので、加藤先生自身凄いことになってしまいました。しかし、アートな感覚の持ち主で、さらにその合間を縫って、ミュージカルやミュージアムに、そしておいしい食事に出かけていました。

★しかし、その教養が実際には加藤先生を突き動かす原動力なのかもしれません。

★ともあれ、こうして<広報―PBL-CEFR×思考コード―ICT>を体現できる加藤先生が出現したのです。これによって、工学院は複雑適応系組織に成長し、生徒募集も右肩上がりに向かいます。自己変容しないと、エントロピーの法則に巻き込まれてしまいますが、そこを見事に乗り越えました。

★と思っていたら、実はさらなるブレイクスルーが起きたのです。もともと工学院の生徒は外で社会貢献をしていますし、国際コンクールや国連で、Z世代の提案をし続けています。セミナーをやったときなど、たんなるお手伝いではなく、ファシリテーターまでやってのけます。それが2019年顕著になっていたのですが、その生徒たちがグローバルプロジェクトのメンバーでもあったわけです。

★こうして、<広報―生徒の世界―PBL-CEFR×思考コード―ICT>というさらなる複雑適応系組織のエネルギー態が生成されたのです。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(11)工学院はZ世代地球市民の才能開花の拠点 未来の都市機能を創発する②

★評論家で立教大学社会学部兼任講師の宇野常寛さんが安宅和人慶應義塾大学SFC教授(新刊本「シン・ニホン」は超話題作)と何やらおもしろいプロジェクトをやるという記事を読みました。新しい都市の構想「風の谷を創るサミット」を立ち上げていくそうです。その発想のヒントとして宮崎駿さんと押尾守さんの対比という現代社会を斬る評論家らしい視点で論じていて興味深いのですが、内容については記事「都市のオルタナティブとしての「風の谷」とそれをつくるための「語り口」についての覚え書き」をご覧ください。

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(高2の学年主任鐘ヶ江先生は修学旅行をグローバルプロジェクトに転換させたプロジェクトリーダー)

★私がこの記事で着目したのは、宇野さん方が構想を練ったり企画を立て実行するプランを立てる時の過程がプロジェクトベースだということです。プロジェクト型のプロセスは、参加メンバーが異領域で、だからこそ幅広いリサーチができるし、対話を通してアイデアの創発と現実味のギャップを埋めていく創造的作業です。プロトタイプ―リファインのループがプロジェクトの醍醐味です。

★このプロセスは、中高の場合だと今世界中でトレンドになっていて、経産省も推奨しているPBL(Project based Learning)に相似しています。今まさにPBLのフラクタル現象が教育現場と社会現場で起こっているなあと実感しています。これが明らかになったのも、今回の新型コロナウィルス感染拡大の攻防によるところは大きいと思います。

★そして、このPBLのフラクタルというアイデンティティ現象こそ都市機能の自己変容能力に寄与することになるのではないかと感じる今日この頃なのですが、そのPBL型授業を社会実践にまで拡大している先進的な学校として工学院大学附属中高を紹介している真っ最中なのです。

★昨年12月11日から高校2年生はグローバルプロジェクトを実施しました。従来の修学旅行を大転換させた海外探究型プロジェクトです。同校は普段の授業がまずPBL型だし、高1から高2にかけて「探究論文」の編集作業もします。そのような実績が、今回のグローバルプロジェクトに結実したといえると思います。

★何を言いたいのか?教育というのは複雑系なのだということです。多様なアプローチが一見結びついていないように同時並行で進んでいるのですが、あるときそれが結晶するのです。その複雑系のプロセスがあるからこそクオリティが高いということになるのですが、この質はなかなか可視化されないので、工学院が宇野さんや安宅さんのやっているような話とフラクタルに相似しているということになかなか気づかないのです。

★それはともかく、このグローバルプロジェクトは、国連が採択したSDGsの17目標の中からそれぞれの国や地域が直面する課題を学び、その解決に貢献するための取り組みを目指したものです。訪問するのは沖縄・カンボジア・タイ・アメリカの4か所。ハイブリッドインターナショナルコースでは、現地の起業家が直面する社会問題の解決に挑む「MoG(=Mission on the Ground)」をGlobal Projectとして行いました。

★ダイレクトに未来の都市機能の自己変容能力についてチャレンジするプロジェクトです。

★高2の学年主任の鐘ヶ江先生は、本プロジェクトの企画運営のリーダーです。教務主任の田中歩先生などと現地視察にそれぞれいきながら、計画を立ててきたのですが、先生方自身も、新たな学びを得たと言います。それはPBLの重要性実感といってもよいでしょう。

★PBLにはリサーチは欠かせないのですが、普段の授業ではどうしてもネットと文献に依存しがちです。しかし、今回のようにフィールドワークをして、現地の地理的条件や気象条件が日本とは全く違い、自分たちがつくった学校行事スケジュールに合わせてもうまくいかないという気づきから始まったそうです。たとえば、雨期にいこうものならどうしようもないというのです。日本の梅雨時のように傘をさせばなんとかなる程度ではないからだと。

★頭の中ではわかっていても、目の前に広がる現実を体験すると、スケジュールをすぐに変えなければという俊敏な自己変容能力を発揮せざるを得なかったということです。経験の重要性。自己変容能力の重要性。これがPBLの醍醐味なのだと。

★しかし、何より鐘ヶ江先生がこのプロジェクトを実施してみて感動したのは、生徒の自己変容ぶりを目の当たりにしたことだといいます。内発的モチベーションが燃えるとはこういうことかと。具体的な例は、あまりに個人情報なのでここでは語れない程、生徒1人ひとりの生き方が変容したのです。

★人間には食欲をはじめいろいろな欲求があります。この欲求が生まれない限り、主体的に学んだり行動を起こしません。今回生徒は探究欲ともいうべき意欲があることに気づいたということでしょう。Growth Mindsetを生徒自身が自ら設定できる学校が工学院です。

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2020年3月 5日 (木)

感染症に対応する都市機能の変容能力(10)工学院はZ世代地球市民の才能開花の拠点 未来の都市機能を創発する①

★今回の新型コロナウイルス感染拡大防止のための全国一斉休校の動きを通して、工学院大学附属中高の地球市民規模の対応力があるのに改めて気づきました。特にこのために特別なことをやるというのではなく、ふだんやっていることがそのまま神対応になってしまうというところが素晴らしいと思います。もちろん、そうはいっても、現場の先生方はそれ相応に大変なのですが、さあどうしようという話ではないのです。

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★そして当然神対応できるということは、学びの環境が複雑系で、それがゆえに最高のクオリティを醸し出しているのに、ふだんは複雑系がゆえに世間の目はわかりやすくないという理由で、気づこうとしないのです。

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★ところが、こういう緊急時には、複雑系という分厚い教育環境が細心の注意をはらいながら大胆なことができてしまう拠点であるこということが明白になるのです。複雑系が故に、その教育をどこからご紹介すればよいのか迷いますが、やはり有山先生がマネジメントしている「図書館」の機能からはじめましょう。

★上記の写真は、今年の1月に中学入試に立ち臨む生徒のための思考力セミナーのシーンです。有山先生がスーパーバイザーの役割を果たしています。場所は見てのとおり、図書館です。

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★このPBLスペースの左側に移動すると、Fabラボスペースです。ここでプログラミングや3Dプリンターを活用してのものづくりで外部コンクールで輝かしい実績を生み出す生徒が輩出されています。

★図書館にもかかかわらず図書が少なく、Fabラボスペースだったり、PBLスペースだったりするわけですが、実は電子図書が充実しているために、紙ベースの図書が少ないだけなのです。

★今回、一斉休校になったのですが、読書をすることは、困りはしません。しかも、有山先生は、各団体や教育機関がSNSなどでオープンにしている情報も集めて発信しています。

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★さすがに電子図書館はオープンにしていませんが、そのほかの情報を活用することができます。有山先生をはじめ同校の先生方が協力してこのような貢献を果たしているのです。

★特に有山先生は、あるときは担任、あるときは図書館司書教諭、ある時はまた国語の教師、あるときはまた大学の講師、あるときはまた部活の顧問、あるときは思考力入試セミナーのスーパーバイザーとマルチに活躍されていて頭が下がります。

★工学院のような複雑系のハイクオリティの学校は、かくして教師の情熱が半端じゃないのです。

★そして、このような情報を流すだけで、生徒が動きだすのは、PBL授業が浸透しているために、自分の探究への興味と関心がしっかりありますから、そこを深堀していく学びに貪欲です。

★普段からそうですから、今回のように時間がたっぷりあれば、それはなおさらそうなるでしょう。

★緊急時に神対応できるには、普段から分厚い教育システムとPBLのような教師と生徒が信頼関係を深める対話ベースの授業が大前提なのです。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(9)佐野先生と金井先生との対話。なぜHTHか?なぜピーター・センゲなのか?

★佐野先生と金井先生は、共感的コミュニケーションが生んだ魂の<運命的な体験>をしたわけですから、ことあるたびに離れていても集まっては対話を続けています。2018年夏も、そうでした。久々に会おうということになって、かえつ有明に訪れたら、広報の内山先生と新しく就任した社会科の古賀先生も参加していました。

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★<運命的な体験>の持続可能性とでもいいましょうか、それを広報活動の中にも継承し、受験生や保護者にも共感してもらえるとよいねという発想だったと思います。そして、古賀先生は実は哲学対話の実践者でもあります。哲学カフェ的な実践を東京や京都でも行っています。外部とのネットワークを内側にもつなぎます。<共感的コミュニケーション>に哲学対話的な手法も溶け込むチャンスが現れたのです。

★まさしく響きの連鎖が、起こっていましたし、それが今も続いています。佐野先生が亭主となって開催する対話は、チェックインから始まります。オーケストラが演奏する時に、チューニングという音合わせをしますが、それに似ています。

★音のピッチは、湿度や温度、会場の空間設計、音響の仕掛けなど環境に左右されます。ふだんから気を付けておいても、いまここで微調整は必要です。

★この繊細な微調整への配慮・気遣い・配視といった調整を無視するのが抑圧的コミュニケーションです。しかし、どんなに親しくても関係とは繊細なものです。そこを大切にするよというサインがチェックインです。

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★対話はソロもあります。内山先生は、広報の立場から、かえつ有明の生徒募集の現状を可視化しながら、そのグラフの紆余曲折について説明していきます。

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★当然紆余曲折の説明は仮説ばかりです。推理ばかりです。科学的エビデンスで証明することは、小規模な私立学校の広報チームでできるはずがありません。能力の問題ではなく、人材の数と資金の問題です。

★ですから、数字の意味は、多くの人との対話によって感性の集合知をつくりながら、物語を編んでいくのです。みんなが幸せになれる物語を学校が展開出来たら、そこには当然受験生はあつまります。だからといって、ディズニーランドのようにするのか?わかりやすい説明会にするのか?そもそもおもてなしの意義は?わかりやすさの意味は?など当たり前だと思われている概念を一つひとつ対話によってリファインしていきます。まさに哲学的対話ではないですか。

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★本質に向かって対話が深まっていくと、メンバーのピッチも高鳴ります。真剣な眼差しと笑顔が交互にこぼれます。

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★対話が進んでいくうちに、わかりやすさとは表面的な記号をつくることではなく、身に染みる体験こそがわかりやすさだと深まっていきます。広報活動においても共感的コミュニケーションという<運命的な体験>を共有できる場ができることに気づいていきます。

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★そして、かえつ有明のサイエンス科やプロジェクト科のエッセンスであれば、どんな人にも共有してもらえるのはないかと。探究ベースのワークショップ体験を説明会に入れ込もうということになります。ますます、思考力入試の体験講座などのワークショップとしてのクオリティが高くなります。そして、そのとき、佐野先生にあるアイデアの種が生まれたのですが、種は大事に育てないと開花へ向かわないので、もう少し時を待つことにしました。その時が、2020年かもしれないし、2021年かもしれないということです!

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★そのときは、まだ始まったばかりの中1中2のオールアクティブラーニングの授業が生徒の内なる魂が燃えるようなクオリティになるように、授業のあくなき研究が続いてたからです。

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★そして、チェックアウト。対話を通して気づいたことや気持ち、想いを共有する時間。余韻を大事にすることで、信頼と響きの元を消さないように大切にしまいます。

★このような佐野先生と金井先生の欧米流儀ばかりではなく、まるで茶室での対話のような東洋的な思想も合間った対話空間は、外部にも響き、いろいろなところでコラボレーションしていくことになります。

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★そんなときに、トニー・ワグナーとテッド・デンタースミスが創設に尽力したHTH(ハイテックハイスクール)のドキュメンタリ映画が話題になります。シリコンアバレーに行って学ぶというより、遠く離れていてもHTHの響きと共鳴しているのに気づき、誘われるようにして、二人は渡米したのです。

★目の前に広がったのは、二人がベースにしてきたコンパッションという共感的コミュニケーションが、前面に広がっている教育の展開でした。かえつ有明では、そうはいっても教科が前面で、共感的コミュケーションが土台となってアクティブラーニングを展開していたのですが、HTHでは逆でした。

★自分たちのやっていることの手ごたえを感じたと同時に、前面に共感的コミュニケーションを出して教育を展開するのはいかにしたら可能かという響きが内側で高鳴ったそうです。

★響きの連鎖は続きます。そうこうしているちに、U理論のネットワークとも結びつき、外部でのワークショップも多数行うようになっていきます。そこでは、共感的コミュニケーション全面展開です。そして、ダライラマの系譜のワークショップとジョイントして、いよいよ<魂のワークショップ>は、大きくなります。

★響きの連鎖は魂の連鎖へと飛躍が起こります。

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★ピーター・センゲは、イノベーションとか革新とかは、実は国の支援や企業の資金提供によって生まれるのではないと言っています。ではどうやって?次のように語ります。

 Instead, countless local networks developed quietly, thanks to the efforts of small groups of committed and courageous individuals who set out to find others with similar aspirations. Many basic innovations start out in exactly this seemingly disconnected manner. Because the myriad changes required for innovation can never be predicted in advance and can seem impossibly daunting, they are often catalyzed by small numbers of people who can both see larger patterns and focus on small steps that build momentum.

★なのだと。すなわち、国や大企業の資金提供なんかではなく、同じ願いを共感できる他の人を見つけるために着手した献身的で勇気ある個人の小さなグループの努力のおかげなのだと。無数のローカルネットワークが静かな情熱で進行するのだと。 多くの革新の基礎は、初めから結びついているのではない。無理やり結びつけるのではない。それゆえ、イノベーションに必要な無数の変化は、事前に予測することはできず、信じられないほど気が遠くなるように見える。しかし、より大きくなる新しい流れのパターンを見て、おじけるのではなく、勢いが響き合う小さなステップ群を見出し、その結合にに集中できる少数の人々によって触媒されるのだと。

★佐野先生と金井先生は、この触媒であるピーター・センゲの響きに自分たちも共感することを、彼がダライ・ラマとやはり協働していることを知り確信をもったようです。そこで今度はピータ・センゲに会って対話しようと渡米したわけです。

★それが2019年の出来事です。

★そして、昨日お会いしたのです。2020年、自分たちも予期していかったさらならなる革新が起こるのでないかというのです。この革新の響きは、一見かえつ有明のステップのように見えます。いやその通りなのですが、そのステップの向こうには、大きなウネリという新たな革新のパターンが見えるではありませんか。

★というわけで、佐野先生と金井先生との対話は、4月以降も続きます。リアルな対話やサイバー上の対話、それから脳内対話などなど。また報告します。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(8)佐野先生と金井先生との対話。HTH視察へのきっかけ。

★佐野先生と金井先生は、パートナーとして、2015年かえつ有明危機を、同校の先生方と協力して乗り切るのに、先生方のマインドに深くダイブし、揺さぶり、共感的コミュニケーションを生み出す<運命的な体験>をしました。

★組織が危機に直面した時、逃げ出す人もいるし、残る人もいます。残る人は、当然乗り越える気持ちは一致しています。にもかかわらず、一丸となって乗り越えようと檄を飛ばしても危機への対応はなかなかできないのです。それは、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に対応する時の日本社会も同様です。

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★巧く行くには、みんなで乗り越えることが、ビジョンの共有ではないということに気づく必要があります。あるビジョンを共有し、実行して到った結果が乗り越えたという事態なのだと。だから、結果をビジョンにすり替えるのは成果主義的発想なのです。つまり、無意識のうちに抑圧的コミュニケーションがそこでは行われているのが常なのです。そして、たいていの場合、成果主義者は、自分たちのコミュニケーションが抑圧的であることには気づいていないものです。組織の中にサイレントキラーが存在するのはそういうわけです。

★佐野先生と金井先生は、それゆえ、暗黙の抑圧的コミュニケーションを共感的コミュニケーションにチェンジするビジョンを先生方と共に内側から湧き出てくるまで、対話することになるのです。もし、それができたなら、かえつ有明の危機は、自ずと乗り越えられるのだと。

★そんなとき、私は外部から抑圧的コミュニケーションウィルスとして役割を演じるように佐野先生に頼まれ、柔らかい佐野先生の対話空間に参加したことが何度かありました。当然、このウィルスには先生方は一丸となって抗います。

★もともと共感的コミュニケーションの持ち主は、抑圧的コミュニケーションに感染しません。むしろ抗体としての役割を最大限に発揮します。もともと抑圧的コミュニケーションをベースにしていた仲間は、今ままでそのことに気づいていませんでしたから、ウィルスとの出遭いで、自分はすでに感染していたことに気づき、仲間の交代によって浄化してもらうことになります。この時、共感的コミュニケーションが生まれます。

★この兆しが見えたら、すかさず共感的コミュニケーションベースのワークショップを日常の中でどんどんやっていきます。佐野先生と金井先生は夜を徹してプログラムをつくり、実践し、共感的コミュニケーションの世界に先生方を巻き込んでいきましたし、先生方も自分の共感的コミュニケーションを結合していくようになりました。

★こうして、2016年は、2017年の新中1を迎えるにあたり、中1の各クラス各教科授業すべてを共感的コミュニケーションをベースに行っていく意志が決定されたのです。その手段の一つとして<アクティブラーニング>が選ばれました。

★このビジョンは、受験生・保護者にも共感を呼び、2017年入試、2018年入試と応募者増に結びついていきました。当然、<アクティブラーニング>をワークショップでトレーニングしたからと言って、すぐにできるようになるわけではありません。やり方がうまくいかない。対話がなかなかクラスに広がらない。学力はどうななるのだろう。人間関係とアクティブラーニングがうまくシンクロしないなど山ほど課題はでてきます。

★しかし、その課題を先生方がみんなで受けとめ、解決していく共感的コミュ日ケーションが日常化したために、それは一つひとつ氷解していきました。そして、そのたびに、解放された先生方の魂が、さらに共感をよび、その響きは学内外で大きくなっていったのです。佐野先生と金井先生の行う研修が<魂のワークショップ>と呼ばれる所以です。

★こうして、佐野先生と金井先生をはじめ同校の先生方は<運命的な体験>を共有したのです。

★<運命的な体験>は、かえつ有明の出来事だったのですが、それは人の生き方全体の体験に広がります。それほど決定的だったのです。それゆえ、佐野先生はさらに学内の授業のクオリティを高める<共感的コミュニケーション>のマインドを深めスキルを先生方と究めようとしました。金井先生は、東大の大学院で理論的裏付けを研究し、<運命的な体験>を学外でも広めようと決断をしました。

★同じように、他校の校長に就任し、この体験を現場レベルで広めるチャレンジをした仲間もいました。

★こうして、かえつ有明というローカルで起こったことが、グローバルな動きになる準備が、意識してというより、<共感的コミュニケーション>の魂の響きが連鎖していく流れが生まれたから、着々と進んだのです。

★それゆえ、佐野先生と金井先生は、学内外の違いはありましたが、<共感的コミュニケション>ベースのPBLを実施しているHTH(ハイテックハイスクール)を視察に渡米することになるのです。

★HTHの構想をつくった一人であるトニー・ワグナー教授(ハーバード大学)は、知識の格差をフラット化する教育の実践の場としてHTHをつくりました。知識の格差はそのまま富の格差につながるのは、欧米の階級構造の暗黙のシステムです。要するにそこには抑圧的コミュニケーションが暗々裏に横たわっています。

★それを解体するPBL学校がHTHです。佐野先生と金井先生は、自身が経験した<運命的な体験>の響きと同じ響きを感じ、その体験がどのように具体的に実践されているのか、特にHTHのPBLと自分たちのアクティブラーニングのマインドはどこまで響き合うのか体感したかったのだと思います。

★いうまでもなく、このHTHとの出会いは、響きがシンクロし大きな波をうったのです。

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2020年3月 4日 (水)

感染症に対応する都市機能の変容能力(7)佐野先生と金井先生と対話する。静かに大きくウネルとき。

★本日佐野和之先生(かえつ有明副教頭)と金井達亮先生(元かえつ有明教諭・現在東京大学大学院博士課程)と対話しました。お二人とは時代の変わり目でお会いしよく対話してきました。3・11の時は、新しい学びフェスタの準備を慶応大学湘南藤沢キャンパスで行っている時に出会いました。共に夜をキャンパスで明かしました。その後、新しい学びや新しい評価についてワークショップを行ったりしました。

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★5年前にかえつ有明危機があったときにも毎月お会いし、脱するためのブレストやアイデアを出し合い、ワークショップにも立ち会いました。翌年の新中1から、全クラス全教科アクティブラーニングを行う新しい学びの質をデザインしていくことになったり、高校の斬新な探究ベースのプロジェクト科クラスがさらに変貌したのもその時期です。

★このときのリスクマネジメントと創造的問題解決とアクション。その背景で何度も行った先生方との共感的コミュニケーションやワークショップが今や見事に実って大人気校になっているし、そのときの新中1が今年の4月から新高1になるに至って、またまた大きな変容を果たすことになるということです。

★それは近日中に発表になるらしいので、そのときにまたご報告します。とにかくデューイ的なPBLの現代化を果たした斬新かつ普遍的かつ本質的な生徒1人ひとりの存在価値に光があたるカリキュラムにさらに進化するようです。

★それにしても、さらに静かな大きなウネリがやってくるというのか、お二人が創るというのか、それはどちらもありなのでしょうが、時代の要請とお二人の意志がシンクロする時が来たようです。

★そういうときに、三度お会いして対話ができるというのは、なんて幸運なのでしょう。本当にありがたいことです。

★お二人は、日本中の学校や企業に呼ばれて<魂のワークショップ>を行ってきたのですが、今年米国に飛んで、あの「学習する組織」の著書でシステム思考の第一人者であるピーター・センゲ教授にお会いし対話してきました。

★そこで得たインスピレーションを実現すべく行動を開始します。かえつ有明も大きく変貌しますが、その変貌の響きは金井達亮先生の研究と実践とも共鳴音を響かせるでしょう。

★佐野先生はかえつ有明を通して、金井達亮先生は新しい研究と実践を通して、生徒1人ひとりの自己変容に呼応するかのように社会を変えるインパクトを打ち出していくことになります。ドイツの気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルの主体概念の脱構築によって形成される自己存在の現実態の在り方とも共感していた佐野先生と金井先生。大きな歴史の流れのかじ取りをする位置に立っていると言えましょう。

★ともあれ、社会インパクトを与える新機軸とはなんであるか、対話をしているうちに、すでに具体的な構想力に結晶していることが判明しました。その全貌の公表はもうすぐだそうです。乞うご期待。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(6)さすがメディア水面下で動きはじめた!ノート-ルダムや静岡聖光学院、工学院、聖学院、和洋九段女子に学ぶ。

★一斉休校中のオンラインの学びのサポートが、各学校、塾などの教育機関で一気呵成に行われているのをメディアはさすがに取材しているが、その水面下で、ここまできたら次の変化がどうなるのか洞察しはじめていますね。

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★NHKがすでに、ドイツの新世代の気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルを渋谷と京都とNYに誘(いざな)い、歩いてもらいながら新しいコンセプトを語ってもらっている番組を放映しています。もともとは「欲望の資本主義」という安倍政権の経済政策を最後に破綻する20世紀経済=欲望の資本主義に変わるものを模索したドキュメンタリータッチの番組編成だったのですが、その副産物としてなのかメインディッシュのつもりだったのかわかりませんが、番外編で「欲望の時代の哲学2020」というのを制作してしまったのです。他局の中には焦る人もいますね。

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★慶応義塾大学SFCもそれに気づいていて、安宅さんなどが新しい社会システムの在り方をソサイエティ5.0とSDGsの合力をビジョンに描いています。しかし、ガブリエルが看破しているように、日本社会は主観より客体重視だから、実はハードパワーの焼き直して終わりかねないのです。

★ところが、ガブリエルは、ドイツ観念論の現代化というか、物自体は不可知という呪縛から解き放ち、主観を要素還元主義的科学主義から解放してしまった。これは人間のクリエイティビティの解放です。思考コードでいえば、C軸全開モードということです。

★日本は、それを京都学派がやっていたのだとガブリエルは言うわけで、どうりでノーベル賞は東より西でたくさん受賞者がでる。

★20世紀末、クリントン政権のブレーンであるジョセフ・ナイはハードパワーからソフトパワーと言っていた。当時、日本でもそれを唱えていた人がいましたね。今度専門職大学を墨田区に創る人ですね。

★でも、やはり、日本は第三次産業革命や第四次産業革命が起こせなかった。ハードパワー重視の産業が今も続いています。しかし、今回の新型コロナウィルスが投げかけたのは、ハードパワー重視の日本の政治経済の在り方を捨て、さっさっと先に進めという号令だったのです。

★でも、オンライン上の学びのやりとりは、本当はソフトパワー全開になるはずが、大学入試改革の遅れによって、ハードパワーは新しかったけれど、乗せたものはソフトパワーではなかったということです。

★そんなわけで、ミネルバ大学のようなオンライン上でのPBLをどこでもやるようになるし、稼働型キャンパスになるのが次の初等中等教育高等教育でしょう。要するに、疑似的にでもよいから物理的空間を超えたいのです。いずれはワープできるようになるのだろうけれど、今は疑似的でもよい。

★その際にC軸思考のBig Questionを投げかけ合えるか?つまりソフトパワーいやクリエイティブパワー(CP)といったほうがよいでしょうが、このCPが肝になります。CP対話が重要というコト。そしてそのCPを支えるのがグローバルボランタリーマインドセットです。ノートルダムや静岡聖光学院、工学院、聖学院、和洋九段女子の動きが先導するでしょう。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(5)ノートルダム女学院霜田先生方と生徒 休校中も哲学する学校

★新型コロナウィルス感染防止のための一斉休校の中、オンライン上の生徒の多様な学びが各メディア、SNSの中で紹介されています。ノートルダム女学院の休校中の学びもまた、オンラインを活用していますが、問いのやり取りがおもしろいですね。どうしても、オンライン上で学びを操作すると、ドリル系の学びが多くなるのですが、たっぷり時間があるのですから、読書をしたり、深い思索に想いを馳せたりする時間に使うのもすてきです。

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(昨年夏に霜田先生のPBL授業を拝見した時の1シーン)

★霜田先生をはじめ同校の多くの先生方は、日ごろから、授業本番でも、授業の事前事後の学習でも、グーグルクラスルームを活用しています。したがって、今回の全国休校の事態になっても、普段使いで生徒とサイバー上で対話をしています。この間こんなメッセージを生徒に送信したそうです。

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★直接書いていませんが、生徒たちはピンときます。ここで語られている「右往左往する大人たち」というのは、今の政治や経済を牛耳っている面々のことだと。でも個人非難をしても仕方がないので、冷静に何が問題なのか相対化するメタ視点を発動します。これは、日ごろの霜田先生や同校の先生方の哲学ベースや対話ベースの授業が培ったもので、休校になってからだと間に合いません。

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★そして、メタ的に俯瞰するだけではなく、さらに気づいた問題がどこからやってくるのか問いかけるクリティカルシンキングを使ってねというのです。世の中はメタ認知とクリティカルシンキングを同じだと考えている節があります。もちろん、同じ意味の時もあるのですが、メタ認知はあくまで相対化に力点がおかれます。そしてクリティカルシンキングは、その相対化された事態がなぜ起きたのか、多角的なアプローチで思考をしていきます。

★目の前にある問題の背景にその問題を生んだ構造があるはずです。その構造を文化人類学的アプローチ、哲学的アプローチ、科学的なアプローチ、SDGsからのアプローチ、経済学的なアプローチ、民主主主義や人権的なアプローチなどで構造を明らかにしていきます。ここらへんの問いの構造のデザインが哲学対話で培われます。

★IBのTOKもそうなっています。実際霜田先生は、IBのTOKの研修にも参加したり、自身でも研究実践しています。哲学科で研究してきた蓄積とTOKや多くの学習理論をインテグラルしながら、PBL授業を生徒と共に深めています。

★グーグルクラスルームは、1人ではそのアプローチが固定的になるのを参加者で共有することで多様に開っくのに便利なんですね。つまり、リアリスティックでマルチプルなリフレクションができるわけです。これが相対化やクリティカルシンキングで起きている生徒の思考行為です。日本の今までの教育では反省や内省はあったんでうが、リアリスティクでなかったし、マルチプルでもなかったのです。PDCAサイクルが大好きなのはそういうわけです。また模擬試験や定期試験もリフレクションするのタイムラグがありますね。

★それでは、熱エネルギーとして思考エネルギーがどんどん減少していきます。熱効率がわるすぎなのは、自然界におけるエネルギーの状況と同じです。ところが、霜田先生の対話は、リアルスーペースであれ、サイバースペースであれ、瞬間的にまた多様なリフレクションを内蔵しているのです。これがハイクオリティな対話になっている奥義ですね。

★ともあれ、こんな不断の授業実践を通して、哲学対話のやりとりが当たり前になっている生徒だからこそ、グーグルクラスルームでやりとりができるのです。この前提がないと、こういう突然の事態では、ドリル型学習になりがちです。

★さて、霜田先生は、今話題になっているネット上の「イタリア新型コロナ:休校中の校長が生徒に送った手紙が秀逸!と話題」という記事を紹介して、こんな問いを生徒に投げかけました。

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★感染症によるパンデミックは古くから歴史があります。それを知識としてではなく、今置かれている生徒だからこそ、歴史的パースペクティブに興味をもつはずだという問いが投げかけられていますね。調べながら、文明史の知識や文明の光と闇の構造上の通時的な関係も考えることになります。歴史のダイナミズムの中に自分をマインドセットする問いから始まるのです。

★マインドセットというと、自己啓発セミナーや最近はやりのワークショップのように、置かれた状況とは関係ないマニュアル的なエンカウンター的なというか心理学的なマインドセットがなされがちです。わるくはないですが、自分事といていながらそうはならないで、ただ楽しいでおわりがちです。今目の前の事態や状況の背景にある壮大な問題の海にダイブする霜田先生流儀のマインドセットがナチュラルでいいですね。

★そして、自分だったら、パンデミックになったらどう対応するか、パーソナリティとしての個人ではなく、倫理的な相互存在としての自分としてどう考えるのか問うわけです。これには、ふだんから自由とは何か?他者との関係とは何か?を考える授業がなされているからこそ投げることができる問いですね。

★最後に、そうした自分が、じゃあ今ここで何ができるのか問うのです。自己変容への道を見つける善き機会として休校中の時間を使っていこうといわけでしょう。

★おそらく多くの学校では、このようなハイクオリティな問いを生徒と考える空間としてサイバー学習空間を活用していると思います。もしそうならば、そこをメディアが取材をすると、一気につながって、学びが社会に貢献する状況を創っていることを共有できるでしょう。免疫学的には善き情報の共有は、マインドフルネスへの道でもあります。この情報ワクチンをぜひ摂取できるようにメディアで発信して欲しいものです。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(4)神崎先生と多面的アプローチによる対話②SFC×マルクス・ガブリエル と「主体」問題

★昨日の神崎先生との対話の中で、今年の慶應義塾大学環境情報学部の問題の特徴について話題になりました。いつもの創発問題=C軸思考問題であることに変わりはないけれど、例年はロボティクス、環境問題、AI社会、ICT、諸政策など客体に対してどう考えるかというテーマが多かったが、今年は、その客体としての環境とのかかわりで「人間性」とはどう変容していくのかしていかないのか、「主体」がテーマだったと。ずばり「人間とは何か?」というお話。これは偶然なのか、それとも何か転換の兆しなのか?といった対話になりました。

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★ちょうどNHKで新世代の気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルのNYドキュメント「欲望の時代の哲学2020」も放映されている昨今なので、そう感じたのかもしれません。昨夜ちょうどだ第2話をやっていました。決定論と意志の自由の葛藤を乗り越える主体がテーマでした。

★ガブリエルは、ドイツ観念論と京都学派の親和性を語っている哲学者です。しかしながら、戦後はドイツはアメリカナイズと距離を置きながらあくまで、「主観」を大事にし、日本はアメリカナイズをシミュレーションし尽くし、「客体・客観」を大事にしたと。

★ハイデガー×西田幾多郎で、新しい「主体」、つまり「新実存主義」の流れを創れるのではないかというのでしょう。昨日は、哲学の教科書みたいな決定論と自由意志の論点を整理していましたが、NYマンハッタンと渋谷のスクランブル空間を想起するような映像の中で話しているので、「客体・客観」も物語であるということが暗に込められていました。資本主義はショーであり、決定論的にこうなっているわけではないのだということはわかりやすかったですね。

★しかし、それがガブリエルの「新実存主義」とどう結びつくのかまでは、編集されていませんでした。それはみなさん考えてねということでしょう。

★で、神崎先生との対話に戻りますが、この「人間性」とか「存在」とか何かについて、SFCの問題は社会変動論に関する大量の資料を分析(この分析の仕方はというか要約は図式化OKで、なかなか斬新です)しながら、どのようにとらえていったらよいのか問うわけです。

★SFCの問題、つまり神崎先生に言わせれば、SFCの研究者たちが今立っている知の最前線の反映ですが、その知の最前線とマルクス・ガブリエルの新しい実在論や存在論のガイスト(社会通念上の「心」以上の何か。ドイツ語。「精神」と訳される。)に着目しているコトがシンクロしているということでしょう。

★もちろん、SFCは、「人間性」をパーソナリティではなくヒューマニティとして考えてという条件を付けているので、ガブリエルとは違う視点もあるでしょう。まっ、そこがおもしろいところです。

★新コロナウィルス感染拡大防止のための休校中に、上記のガブリエルの本とSFC環境情報の問題をスクランブルエッグに料理して食べるというのはいかがでしょう。EAT THINKING!クッキング。クックパッドさんどうでしょう(笑)、このネーミング。

★免疫学上、身体の栄養は食べ物のみならず、善き情報も頼りになるということです。

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2020年3月 3日 (火)

感染症に対応する都市機能の変容能力(3)神崎先生と多面的アプローチによる対話

★本日はもともと予定していた神崎史彦先生(株式会社カンザキメソッド代表・私立学校研究家)と対話をしました。今回の感性症に対する対応によって都市機能(物質と精神両面)の変容能力をいかにしたら掘り起こせるのか?がテーマでした。とはいえ、身近なことや仕事のことなど話は拡散しましたが(笑)。

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(2月16日新中学入試セミナーin和洋九段女子で。中央でスピーチしているのが神崎先生)

★神崎先生自身、4月から慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで研究活動もします。パラレルにマルチに活動を開始しますから、自分の変容が社会にどのようなインパクトを与えるのかメタ的に自分を探究していくということです。

★その話を聞きながら、その社会を都市に重ねながら対話をしていきました。

①子供の未来の環境としての都市

②最高善を共有できる政治システムとしての都市

③最高善を共有できる経済システムとしての都市

④そもそも最高善とはどのようなマインドなのか

➄新しい経営組織を受け入れる都市

⑥新しい大学と中高の連携の在り方を創る都市

⑦新しいカリキュラムを支える都市

⑧寛容と不寛容と民主主義を対話できる都市

⑨人類学的哲学と免疫学的哲学をベースにできる都市

⑩そもそも人間存在とか脳と心の関係は?

⑪要素還元主義と関係総体主義の行方

⑫19世紀末から20世紀初頭のPBLの現代的意義

★などなど、多角的なアプローチで、今後の都市やそこに住まう市民の存在の変容について対話しました。ここ最近の文献リサーチや読書体験は、互いにかなり共通するところもあるので、情報ワクチンは都市機能の変容能力を攻撃するウィルスに対する抗体を創ることはできたと思います。

★もっとも、理想的な変容の仕方を決めるというより、その変容が生まれる要因や過程について対話していたと思います。

★プロトタイプをとにかく創りながらリファインしながらコンセプトデザインをしていこうと。

★私たちのワークショップはブリコラージュや野生の思考がベースですから、マシーンモデルは使いませんでした。

★今日のところは、一筋の道は向こうに見えたような気がしました。

★ZOOMでとも思ったのですが、ランチや食後のコーヒーを囲みながらだったので、距離をとって座りながら対話をしました。

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感染症に対応する都市機能の変容能力(2) 免疫学×新実存主義×デジタル発酵×PBL×アート

★新型コロナウィルスの感染拡大の脅威とそれを防ぐ攻防は、都市機能の免疫学への変容、人間の存在がこれほどまでに相互作用の中に在るかというリフレクション、デジタル発酵の増殖変容、突然の事態に対応するブリコラージュとしてのPBLの創発、そして、アイデンティティとフェイクのフラクタルがせめぎあうアート的表象の変容をもたらすということが了解できたように思うのです。

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★そのことについては、すでに上記の著者の方々によって予言されていたわけですが、バラバラに理解されてきたために世間にはわからなかったのです。今後は、これらの領域越境によって、世間にグローバルボランタリーマインドが醸成されていくことを期待するし、私も実践していきたいと思います。

★上智大学の上田正道教授が、論文「プロジェクト論に基づくカリキュラム・デザイン ―アメリカのヘルバルト主義と進歩主義教育― Curriculum Design Based on Project Method: American Herbartianism and Progressive Education(Forum on Modern Education No.25 2016)」の中で、次のようにデューイの興味に対する考え方を論じています。

<デューイは「興味」の理論に関する分析 を行っている。彼によれば、ヘルバルト主義の言う 「興味」とは、「精神的活動」であり、「自己がもつ内 的な生起」であり、それ自身が対象に結び付く点で 「直接的」であり、ある考えを確立したり補強したり する「手段」であるとされる。それに対し、デュー イにおいて「興味」とは、「inter-esseという語の語 源的意味」が示すように、「あいだにある」ものであ り、「人と題材やその人の行為や結果のあいだの距離 の消滅」を示すものである。それは、専門用語では、 「媒介された興味(mediated interest)」と呼ばれるも のだと捉えられる。 こうした角度から、デューイはカリキュラムを構想 した。彼は、カリキュラムを構成する教科の観念を、 個々に切り離された領域概念としてではなく、子ど もの社会生活の経験に結び付いた「相関(相互関連 法)」と「統合」の関係概念から解釈した。「あらゆ る教科は、共通する一つの偉大な世界における関係 から生じるもの」であり、「学校のさまざまな教科 の真の相関の中心は、理科でも文学でも歴史でも地 理でもなく、子ども自身の社会的活動である」とされ る。そのために、シカゴ大学実験学校では、料理、 大工仕事、工作、裁縫、織物など、人間の衣食住に かかわる「オキュペーション(occupation)」の活動 が導入された。 >

★この<inter-esse>を免疫学的に、新実存主義的に、デジタル発酵的に、フラクタルに相互関連的に読み替えていくと、新しい存在の在り方が映し出されるような気がします。それを、とりあえず今「グローバルボランタリーマインド(GVマインド)」と呼んでおきたいと思います。仲間と対話していくうちにまた変容するかもしれません。たぶんするでしょう。

★これからの私のアクションは、あまりに小さいですが、それはともかく、この<免疫学×新実存主義×デジタル発酵×PBL×アート>のという領域越境関数を探す旅をしながら、旅の出会いの中でGVマインドを創発していきたいと思います。

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2020年3月 2日 (月)

感染症に対応する都市機能の変容能力(1) 内村鑑三のグローバルボランタリーマインドの可視化。

★今回の新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ動きは、地球規模に広がっています。政治経済的にいかに世界を分断しようとしてしても、グローバルボランタリーマインドが欠かせないことは、日々メディアやSNSの情報で、私たちは実感しています。このグローバルボランタリーマインドのイメージは、19世紀末から20世紀初頭にかけてひたすら官僚近代に対峙し、もう一つの近代化路線の模索に邁進した内村鑑三の考え方が1つのモデルだと思います。内村鑑三の自然と社会と精神の循環構想のヒントはデンマークという北欧の国々にすでにあったというのも実に興味深いですね。

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★次世代に何がのこせるのか?そう内村鑑三は問うわけです。それは、

①事業を起こすこと
②金を溜め、世のために使うこと
③本を書き、教えること

★もいいけれど、なんといっても、種々の不幸に打ち勝つ生涯を送ることだと。それを内村鑑三は「勇ましい高尚なる生涯」だと呼んだのです。そして、これは誰でもできるのだと。

★今回の新型コロナウィルスは、社会の矛盾や問題点をえぐると同時に、共有知を幾何級数的に増やす可能性がありますね。「共有知」がこのような指数関数的なカーブを描くとしたら、社会はどのように変わるのか、それが希望なのか絶望なのかは、見方によって微妙ですが、希望が現れるような予感がします。

★というよりも、希望を生み出すのは、種々の不幸に打ち勝つ「勇ましい高尚なる生涯」を送る存在者であることなのでしょう。この存在者であろうとすることが、グローバルボランタリーマインドだと思います。

★新型コロナウィルスの感染拡大は防がなければならないけれど、それは同時に都市機能の変容能力をグローバルボランタリーマインドで形成していくことです。自然と社会と精神が循環している都市機能は、実は今のところ少ないのです。実験は山ほど行われてきましたが、まだまだこれからチャレンジです。

★ともあれ、今回、国家と都市は、どうやら違うことが可視化されてきました。国家が一律休校せよといっても、受診や入院のルールを課しても、その通り行うと、都市機能不全が起こってしまう。SNSの世界は玉石混合だし、テレビや新聞などのメディアも俯瞰した情報を流しているわけではないけれど、世界の感染の進行状態の簡単なデータを市民レベルで共有することができる時代であることも確かです。

★それで、各国各都市の対応の仕方が違い、各データの出方も違う、そこになんらかの関係があるのかフェイクなのか隠ぺいなのかクリティカルシンキングを発動することができます。

★そして、都市単位で学校単位でもちろん最後は自分の判断と意志で、おかしいところを自分たちでなんとかしようという動きがあるのも事実です。こういうアクションをとる人々を「勇ましい高尚なる生涯」を送る存在者であると内村鑑三は呼ぶでしょうし、私はグローバルボランタリーマインドの持ち主だと思います。

★このグローバルボランタリーマインドの持ち主はいったいだれかというと、それは、もちろん市民という構えを意識している1人ひとりなのですが、その代表的な存在が誰なのか、今回の新型コロナウイルス感染拡大の防止対応の多様な過程の中で明らかになってきています。

★それは、結局、さんざん多忙で働き方改革が遅れていると言われてきた学校で働く先生方がそうです。それから医療関係に従事する女性です。仕事をしている女性です。

★学校が休校になって、どうやってサイバースペースで学びの拠点を創れるのか、教師は奔走しています。学童保育に応援にでかけてもいます。

★休校によって子供の面倒を見るために医療関係の仕事を休まなければならないという状況が白日のモノとなったとき、医療現場の機能の崩壊が浮上しました。医療現場の機能不全は、感染者のみならず他の患者の生命の危機を生みます。都市の衛生危機管理の機能も崩壊することになりかねません。

★医療現場以外の仕事をしている女性が休むと、たいがいのサービス業は機能不全を起こします。テレワークをやればよい人もいますが、生活は実はマヒするわけですから、それどころではなくなります。

★自己利益を求めるリバタリアニズムが跋扈する欲望のグローバリゼーションによって外部に追いやられてきた教師や女性というリベラリズムやコミュニタリアニズムの立場に立つ人々のグローバルボランタリーマインドの重要性が可視化されたわけです。

★官僚近代が自らの権力を持続可能にするために20世紀末に再帰的近代を発明し、それをリバタリアンの手に渡しました。しかし、内村鑑三のもう一つの近代を創る未完のプロジェクトが、再び動き始めたのです。欲望のグローバリゼーション重視からグローバルボランタリーマインド重視へのシフトの幕開けです。

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2020年3月 1日 (日)

2020年2月ホンマノオト21のアクセス状況から見る2021年中学入試動向。

★2020年2月は首都圏中学入試のピークだったので、ホンマノオト21も自ずと中学入試の記事が多くなりました。そのため、どの記事にアクセスが多いかなどを見ていくと、2021年の中学入試動向のヒントが見えます。もちろん、個人のニッチなブログですから、すなわち、首都圏中学受験生数の20%ぐらいの訪問者(アックセス数ではなく)しかないわけですから、偏りはあります。そこは相対化して読み取っていく必要はあるとは思いますが、参考になればと思います。

★まずは、ランキングベスト80を並べてみましょう。

1:2020中学入試 3つめの動向。高い意識の女子受験生の誕生。
2:2020首都圏中学入試 5つめの動向 SAPIX・早稲田アカデミー・日能...
3:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
4:三田国際 2020年中学入試を終え、目が覚めるような新機軸へ準備整う: ...
5:2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早...
6:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
7:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
8:本日、首都圏中学入試ピークに!新しいウネリか混迷のウネリか予想不能な真っ...
9:2020中学入試市場が注目している動向や学校 ホンマノオト21のアクセス...
10:2020中学入試 4つめの動向 東京の共学校の渦を通して
11:品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任
12:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出
13:2020首都圏中学入試 東京と埼玉が勢いがよかったわけに、大事な動向が隠...
14:中学入試の学びから始まる<合格力以上の学ぶ力と未来を創る力>
15:2021年中学入試を読み解く準備(1)基礎情報①
16:【速報】工学院順調に生徒集まる。
17:「2020年入試総括コラボミーティング」in 品川翔英~「時代」を語る学...
18:聖学院の中学入試の意味 思考力入試編①
19:聖学院 感動の授業デザイン研究会 榊原先生の英語の授業 生徒自らが自分の...
20:2021年中学入試を読み解く準備(2)基礎情報②東京男子校の実受験者率に...
21:2020海城の社会と理科 アカデミックな問い
22:大妻中野さらに新しいステージへ
23:2月3日工学院平方校長に聞く 工学院の思考力入試がオンリーワンなわけ: ...
24:聖学院の思考力入試 市川理香氏の感動取材!12歳の男子が発揮する内なる力...
25:首都圏模試「思考コード」2021(1)
26:和洋九段女子 入学手続き者前年対比150%!創発型PBLが生み出す生徒の...
27:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
28:2020年中学入試 和洋九段女子の意味が明日の中学入試のビジョンになる。...
29:2021年の準備のために 無限のポテンシャルを生成する対話マインドを開発...
30:2020聖光学院の社会の入試問題 変化の兆し
31:2020年首都圏中学入試の学校選択(03)恵泉の場合
32:ノートルダム学院小学校の教師の開放的精神とシステム思考のすばらしさ(3)...
33:2020八雲学園の中学入試 共学校としての評価高まる。: ホンマノオト21
34:【速報】明日5日の八雲学園の〈未来発見〉入試 本日4日23:59まで!:...
35:【2020年首都圏中学入試動向02】豊島岡女子と本郷の良い影響。
36:和洋九段女子のPBL型入試『急ぎたいなら一人で行きなさい。遠くに行きたい...
37:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
38:【2019年度首都圏中学入試(09)】 かえつ有明 アップデート 内生的...
39:武蔵野大中高を変えた校長「日野田直彦」先生。: ホンマノオト21
40:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
41:2020武蔵の社会 考える問題~存在をみつめる問い
42:2020雙葉の理科 NASA50周年問題
43:2020フェリスの国語の入試問題 東大の帰国生入試と同じ視座
44:京都のノートルダム 動き出す(1)ワクワクする体験型説明会とその背景にあ...
45:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
46:首都圏模試「思考コード」2021(5)小まとめ
47:工学院 ベッキー先生とジョエル先生のオールイングリッシュワークショップ ...
48:新コロナウイルス感染を防ぐ動き~Z世代が脱近代未来プロジェクトを生み出す...
49:京都のノートルダム 動き出す(8)ノートルダム女学院中高の哲学カフェ。:...
50:首都圏模試「思考コード」2021(4)桜蔭×フェリス(≦聖学院×工学院)...
51:2020年からの中学入試(12)なぜ三田国際は人気の出る完璧な先進校にな...
52:首都圏模試「思考コード」2021(3)B3領域 限定的情報のメタ的変容:...
53:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
54:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 東京エリア
55:和洋九段女子 進取の気性に富んだ女性が羽ばたく居場所がある。
56:【2019年度首都圏中学入試(36)】 女子美の人気の意味
57:京都のノートルダム 動き出す(6)ノートルダム女学院中高の内なる通奏低音...
58:京都のノートルダム 動き出す(2)多様な才能を受け入れる教育。
59:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
60:首都圏模試「思考コード」2021(2)思考コードを多次元にシフトできるよ...
61:京都のノートルダム 動き出す(9)ノートルダム女学院中高の哲学カフェ 哲...
62:2021年に向けて~ホンマノオト21から見えるクリエイティブクラスの社会...
63:八雲学園 さらに進化する教育の総合力 生徒の無限のポテンシャルが生まれる...
64:京都のノートルダム 動き出す(3)徳と知の現代化。
65:2020年中学入試 新タイプ入試の意味あるいは価値
66:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 埼玉エリア
67:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
68:2020年からの中学入試(04)晃華学園も湘南白百合も香蘭も動く。
69:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
70:京都のノートルダム 動き出す(4)徳と知の現代化ワークショップ。好奇心・...
71:麻布の中学入試問題 東京オリンピック・パラリンピック問題
72:東洋大学京北 伝統と革新の二兎を追う教育に人気
73:ノートルダム学院小学校の教師の開放的精神とシステム思考のすばらしさ(2)...
74:八雲学園 さらに進化する教育の総合力 生徒の無限のポテンシャルが生まれる...
75:【2019年大学合格実績03】巣鴨の東大合格者躍進の意味。
76:京都のノートルダム 動き出す(5)未知の知識が運命の探究の扉をたたく!:...
77:八雲学園 さらに進化する教育の総合力 生徒の無限のポテンシャルが生まれる...
78:第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マイ...
79:京都のノートルダム 動き出す(10)<ND哲学カフェ>ND生と人類の子ど...
80:2020年からの中学入試(33)男子に人気の共学校を追う

★訪問する方は、リピーターは20%くらいですから、他の方々は検索で立ち寄るわけです。したがって、どのような話題を検索しているのか、つまりどのようなテーマやトピックに興味を持っているのかを示唆しているとみなすことができます。

★一つひとつ眺めていくとなかなかおもしろいのですが、もう少しまとめて欲しいという声もあります。そこで、「中学入試動向」「各学校情報」などというカテゴリーに分け、それぞれの訪問者数の総和の割合を出してみました。

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★この時期、検索する方は、まずは自分の子どもの受験する学校の情報や併願先の情報について、検索することが多いため、当然各学校の情報のアクセス数が多くなります。

★中学入試動向については、学校の先生が自分の構想や行動の立ち位置の参考コンパスとして検索するということでしょう。マスコミの方は、主に首都圏模試センターの情報を加工して書いているので、検索でたまたま見つかったという感じなのでしょう。

★新中学入試セミナーや思考コード、新コロナウイルスについては、中学入試動向の社会変動にかかわる情報ですから、あえて、外に出してみました。10%弱が、中学入試の動向以上に社会変動など全体を見られるシーンを必要だと感じているということなのかもしれません。

★パレート最適の理屈から行けば、ここが20%になるような論考ができれば、少しは社会的インパクトのあるブログになるかもしれないということですね。がんばります(笑)。

★ちなみに、上記グラフの各学校を開くと次のようなランキングになります。

1:中学入試動向
2:三田国際
3:麻布
4:ノートルダム
5:新中学入試セミナー
6:東洋大京北
7:洗足学園
8:聖学院
9:和洋九段女子
10:思考コード
11:工学院
12:八雲
13:品川翔英
14:海城
15:大妻中野
16:聖光学院
17:恵泉
18:かえつ有明
19:武蔵野大中高
20:武蔵
21:雙葉
22:フェリス
23:新コロナウィルス
24:女子美
25:巣鴨

★こうしてみてみると、ホンマノオト21は、それほど偏っていないのかもしれません。多様な学校の情報を意外と掲載しているとみなせるかもしれません。

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2021年中学入試を読み解く準備(3)基礎情報③東京女子校の集まり方に教育の未来の予感。

★今年の東京の女子校の応募者の集まり方に衝撃が走りました。首都圏模試センターでは、そのことをこうまとめています。「校風・カラーの色濃い女子校が志願者増新設午後(算・国1科)入試は高人気に!」ということのようです。

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★たしかに、2月1日東京エリアの女子校の応募者前年対比100%以上(100人以上集めている学校に絞りました)の顔ぶれは、色が濃いといえるでしょう。先進諸国でジェンダーギャップがものすごくある日本社会において、活躍する女子のみならず、そんな日本社会を変えるようなポテンシャルをもち、その開花ができる6年間の学びの環境を創っているところばかりです。

★そんな中で、特に昭和女子大附属昭和は、さらにSGHやSSHなどにチャンレンジし、<新しい学びの経験>の環境が、学内で創意工夫の意志とテクノロジーの活用意欲によって充実しています。それが生徒応募者数の勢いにも反映しています。

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★一方で、2月1日の新タイプ入試を実施している学校で、前年対比100%以上でソートしてみました。人数が少ないじゃないかと思われるかもしれません。しかし、2020年中学入試受験者数は昨年に比べ増加したのは4.7%です。

★その増加分のほとんどが、新タイプ入試なのです。男子校もそうでしたが、女子校も、4科2科入試は、増えた学校もあれば減った学校もあり、実はここの部分はゼロサムです。

★そして、新タイプ入試を思い切って実施する女子校は、やはりチェンジメーカーを生み出す<新しい学びの経験>を生み出しています。そういう意味で未来志向の使命感に燃えた色の濃い女子校です。

★2月1日のリストにはないですが、和洋九段女子も新しい女性として羽ばたき、社会や世界を変える魅力的な人間が育つ新しい女子校に変容しつつあります。

★この変容力を有した女子校が人気が高かったということでしょう。2021年もこの傾向は続くでしょう。時代がすでにダイナミックに変容しているため、この変容を自らの存在にどのようにつなぐことができるかは大切だということは誰も否定しないでしょう。しかし、その実践となると、なかなかカリキュラムですぐにとはいきません。

★しかし、上記の人気の高い学校は、長い年月をかけて準備をしてきたのです。それが時代の要請とマッチングするタイミングを迎えたのだと思います。

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和洋九段女子のSDGsの活動 優秀賞受賞 その意味の重要性を改めて感じる。近代人を超える新しい人間の表象。

★和洋九段女子の中3生が企画し創作し世に広めるアクションを起こした<SDGsすごろく>プロジェクト。「SDGs探究AWARDS2019」で優秀賞を受賞しました。同審査会により、着眼点や想像力、表現力、具体性などの観点から、各部門の「最優秀賞」1件、「優秀賞」3件が選定されたのですが、そのうちの1校が和洋九段女子だったのです。

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★2019年12月1日にエントリー受付が開始され、2020年2月5日までの期間で、総数945件のエントリーがあったというのですから、これは“凄いコト!”です。

★個人的には、中3生の活動のインタビューを昨年10月にしていたし、実は2月16日(日)和洋九段女子で開催した「新中学入試セミナー」で中3生が<SDGsすごろく>のミニワークショップを実施してくれ、さらに感動していたので、この感動が広く公共的な場でも<共感>されたのだというのを知り、感無量でした。

★しかしながら、この受賞発表は、今回の新型コロナウィルス感染拡大を防ぐために政府が発表した「全国一斉休校」の話の直前だったために、和洋九段女子はサイトなどでの発表はまだしていません。また、『SDGs 探究 AWARDS』当局も、3月14日(土)に予定していた表彰式を中止するとサイトで発表しています。

★受賞者のみなさんは、ちょっと残念な気持ちもあるかもしれませんが、おそらくそれよりも自分たちが取り組んできたことの重要性をより感じ、ますます探究を深め今まで以上に活動を展開していこうという意志を強くしたと思います。

★なぜなら、新型コロナウィルスもまた、文明が支配被支配の関係を強め、格差を拡大し、自然を破壊し気象の正義の怒りに触れるたびに出現し猛威を振るったペストや天然痘、コロナ、スペイン風邪のように、警鐘を鳴らしているからです。

★そして、その警鐘を中3生自身も鳴らしているのですから、世界の痛みや自然の痛みと自分たちのマインドがシンクロしている実感を今ほど抱き、内側から湧き出る使命感は相当なものでしょう。今度学校に立ち寄ったときにその気持ちを尋ねてみたいと思います。

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★さて、しかし、和洋九段女子の中3生の<SDGsすごろく>はSDGsのことを知ってもらいたいというとことから始まったのですが、その探究は、身近なところに世界の根本問題があることに気づくところにまで到ります。多種多彩な団体と話し合う中で、自分たちは何ができるのか、そもそも自分たちは何者なのか探究を深めていったわけです。

★ですから、<SDGsすごろく>は、主体性、協働性、多様性を自ら展開していく社会的な活動になり、多くの人々を巻き込む貢献につながっているのです。そして、さらにすごいのは、<SDGsすごろく>を開発したというイノベーションを起こしているのです。PBLというリベラルアーツを学ぶイノベーションとそのときにICTを活用するというテクノロジーとしての教育イノベーションを巻き起こしているのです。

★このことの重要性は、学校という現場で今までにない革新的なシステムが生まれたことを意味します。この革新的なシステムについて、安宅和人さんは、社会において同じように語っています。しかも、そのシステムは学校内カリキュラムシステムで終わることなく、未来創りの知のシステムとしての価値を持っているのです。

★安宅さんは、未来を創るヒントの1つとして、SDGsの動きとソサイエティ5.0の動きの合流を論じています。今回「シン・ニホン」という著書でそのことについて1節をあてて論じています。SDGsは社会運動論的ダイナミズムで、ソサイエティ5.0はテクノロジーのイノベーションのダイナミズムととらえ、この二つが合力となって私たちの生活の諸問題を解決する未来社会を創るヒントになるだろうというのです。

★このことは、和洋九段女子の中3生にすでに起きています。社会運動論的なダイナミズムにつながる、つまり世界を変える動きにつながるのは、PBLというリベラルアーツを学ぶイノベーションを起こしていることでしょうし、テクノロジーのイノベーションのダイナミズムにつながるのは、<SDGsすごろく>を創発するというイノベーションそのものでしょう。

★SDGsの17のグローバルゴールズには、世界に広がる感性症リスクに対応する項目ももちろん組み込まれています。今回の新型コロナウイルスの感染拡大によるパンデミックへの可能性を危惧する世界同時的危機感は、中高生を巻き込む文明や近代の見直しに転換するテコになるかもしれません。その支点に和洋九段女子の中3生は凛として立っているのではないでしょうか。

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★そして、これは安宅さんははっきりとは言ってはいないのですが、それでも、どうも今までの近代化路線の手なりの対応策では未来は創れないという確信には到っているようです。このことは、今までのように警鐘を受けいれる方法とは違うということです。

★新世代のドイツの哲学者マルクス・ガブリエル(40歳)は、そのことをもっと明快に構想しています。今までと同じように警鐘を近代化路線の枠組みの中で受け入れていても、世界史の針が巻き戻るだけで、未来を創ることなどできないのだと。だから、今までの枠組み内の老朽化・形骸化・物象化された思考様式を捨てて、新しい思考様式を構想しようというわけです。

★その思考様式が新しい存在の在り方を創り出す、つまり未来を創り出します。そして、和洋九段女子の中3生の活動は、この新しい存在の在り方そのものを形作っています。

★マルクス・ガブリエルやカンタン・メイヤスーのようなせ新世代の気鋭の哲学者が描く世界は、あらゆるシーンが変わります。主体性という概念自身も変わります。そういえば、和洋九段女子の中3生の主体性は、コレクティブイなあるいはコネクティブな主体性で、自分ひとりの脳神経系内で化学反応を起こしている感じとはだいぶ違います。

★また、主体が対象とする客体も、流動的で複雑系です。今までとは違う主体的・対話的という感覚が生まれています。しかも学びも既存の知識の適用では収まり切れません。世界の矛盾についてクリティカルシンキングを発動し、その矛盾を解決する創造的思考を稼働します。問題解決といった場合、たいていは条件の欠如を埋めることを意味します。それが今までの近代のやりかたです。安宅さんが「手なり」というのはそういうことでしょう。

★なぜそんなやりかたが続いたのか?それは、矛盾を解決されてしまえば、近代の枠組みそのものに内在している矛盾が解決してしまい、近代の存在理由がなくなってしまうからです。

★和洋九段女子の中3生が探究しているSDGsは、条件の欠如や不足のみならず、この近代の矛盾を追い詰める活動だったのです。近代を成り立たせている矛盾=格差・ジェンダーギャップ・マイノリティの排除などを生み出す根源的問題の追撃です。

★近代化路線がそこは外部の問題として境界線を引いてあたかも問題はないかのごとく取り扱っていた空間です。ところが、その境界線を越境すると、そこに矛盾の波が洪水のようにあふれ出てくるのです。

★それを見て見ぬふりをしてきた近代人とそれを見て痛みを共有して、自分は何をするべきか、何ができるのか、そもそも私は何ものか、もはや近代人ではなく新しい人間であるとなっていくのでしょう。新しい人間の表象がシステムとして構想される時熟の到来ということでしょう。

★安宅和人さんの気づきやそれをもっと先鋭化し構想力に転換しているマルクス・ガブリエルのような哲学者らの登場と和洋九段女子の中3生のような活動が、互いに会ったこともないのに、共振共感の輪を拡大している時代がやってきているということなのです。そして、それに気づかなければ世界史の針がまたあの独裁者を生んだ時に巻き戻るぞと新型コロナウィルスは警鐘を鳴らしているのかもしれません。

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