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2020年2月 3日 (月)

2月3日工学院平方校長に聞く 工学院の思考力入試がオンリーワンなわけ

★新タイプ入試の中で、「思考力入試」という名称の入試は、かなり特別で、聖学院の思考力入試などは突出したポジショニングを占めています。メディアも頻繁に取り上げます。それに比べて、工学院の思考力入試はベールに包まれていて、メディアはあまり取り上げません。というか積極的に公開していませんね。そこで、2月3日は多くの受験生が合格して少なくなるので、同校の平方校長に話が聞けるかもしれないと、訪ねました。

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★立地条件から16時からの入試ですから、14時くらいに訪ねればなんとかなると思ったのです。知り合いの先生方とも話すことができましたが、控えめではありましたが、手ごたえを感じているようすでした。思考力入試については、合格してもこれだけは受けたいと言ってチャレンジしに来る生徒もいるのですと笑みをたたえるのです。

★さすがに、平方校長は忙しく、応接に通された私のところにでたりはいったりでした。中学入試と同時進行で在校生の大学入試も始まっており、ある私立大学医学部合格の吉報をもってきた生徒の保護者と対応したりしていました。また、合格した生徒から、さらに挑戦したい大学に校長推薦書を急遽作成してほしいという連絡に対応したりしていました。

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★そんな中でも、工学院の思考力入試について丁寧に教えてくれました。

「本間さんのいうように、思考力入試は、首都圏模試さんの思考コードでいえば、C軸のとくに<創造的思考>の潜在的な力を見出す入試です。いわゆる中学受験準備が間に合わなくて、あるいはそもそも準備していなかったので、2科4科の偏差値に対応するテストでは、不足している部分が多すぎるという生徒がいます。しかし、そんな生徒の中にものすごい創造的思考の潜在的エネルギーを持っている生徒がいます。

もともと偏差値は眼中にないという帰国生がハイブリッドインターにはいっぱい入学してくるのですが、帰国生のその後は、偏差値の高低に関係なく、ぐんと伸びる生徒が多いのです。そのような生徒は、もともと創造的思考のパワーを持っているのです。そういう私たちの経験を通して、やはり創造的思考の潜在的エネルギーを持っている生徒を見出し、中学受験準備で不足していた部分は入学後サポートすればよいという感覚が確信に変わってきたということがあります。

そういう意味では、新タイプ入試の中で、ダイレクトに創造的思考の潜在エネルギーを見出す入試問題としては唯一無二だと思います。ウチの学校は唯一無二という教育活動が多いので、ある意味、メディアのフィルターにかからないのかもしれません。」

★ダイレクトに創造的思考の潜在的なエネルギーがどれくらいあると合格するのですか?と尋ねると、平方校長はこう語ります。

「エネルギーというのは目に見えないから、いろいろなステップにどう反応したかの相関関係ででてきます。ルーブリックでスコアを付けるのですが、あくまで多面的多角的アプローチにどれだけ没頭して反応したかどうかの痕跡、ポートフォリオと言った方がわかりやすいかもしれないけれど、先生方はそこもみて総合的に評価しています。ウチのは、ものを創る思考力入試が多いですが、それが仮に失敗しても、振りかえりのステップで、どう改善したらよいのか真剣に考えた痕跡を表現していれば、それはスコアになります。試行錯誤や諦めないパワーも創造的思考を動かすポテンシャルを生み出す要素ですから。」

★たしか思考力入試は6つのステップを踏んで考えていくというこでしたよね。そうすると、論理的思考のあとに創造的思考が生まれるという仕掛けですか?

「そう考えるのが一般的でしょうね。しかし、ウチの思考力入試は、論理的思考のステップを踏ませているのではないのです。6つの角度から脳の発散と収束の運動を活性化します。つまり、創造的思考が動き出すポテンシャルを刺激するのです。そういう作業の労を惜しまないでやり切る力も大切ですね。」

★なるほど、だからダイレクトに創造的思考の潜在的エネルギーを見出す入試だというわけですね。

「首都圏模試の思考コードでいえば、知識や論理的思考のところで準備不足なのですから、条件を一定にするには、創造的思考だけをダイレクトに測定するテストデザインが大切です。もちろん、それはチャンレンジですから、まだ完全ではなく、先生方は毎年アップデートしています。しかし、逆にそのポテンシャルが高くないと、つまり入学後、そのポテンシャルが知識や論理的思考にも影響を与える一定の大きさでなければ、生徒自身が困りますから、決して易しい入試ではないのです。楽しいけれどチャンレジしがいがある入試で、そこにチャレンジする生徒には頭が下がりますよ」

★ところで、今更なのですが、創造的思考というのはどんなものですか?

「そうそこなんですよ。それをその学校なりに明らかにしないでやっているから、結局は論理的思考になったり、再現するだけでは創造的でないとかいいだしたりするわけですよ。工学院の思考コードは、そこも含んで考えられるようになっています。しかし、ここでは創造的思考に絞って説明してみましょう。もちろん、工学院の仮説ですよ。世の中ではっきりさせているところはないのですから」

★その説明のとき、やはり平方校長のもう一つの才能である彫刻家というアーティストの顔が現れたのです。

「論理的思考―創造的思考に、模倣―変容という軸を掛け合わせてみると、4つの領域ができます。その4つの領域を、再現・変換・転換・新生と呼びましょう。このように創造的思考は、グラデーションになっているわけで、大切なのは、どれが創造的思考でどれがそうでないのかではないのです。再現ですから、たとえば、模写をイメージしてください。これとて、著作権の問題はこっちにおいておいて、もの凄い才能です。しかし、ピカソの模写は、面影はあるのですが、まったく違う世界に転換しています。一方で今ままであるものを組み合わせをかえて変換するという行為もあります。これはいわゆるビジネスデザインの世界では多いですよね。それらいずれでもない、全く新しいものが生まれるというのは、天才ということです。ピカソは、この4つの領域をぐるぐる往来して、何度も新生にいきつきます。この新生に行き着いたらそれで終わりというものではないのですね。これら4つの領域を行き来し、常に自己変容できる思考力が創造的思考です。」

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★こんな感じで座標軸にしてみましたが、いががですかと質問してみると、平方校長はこう語った。

「そんな感じですが、4つに分断するというのではなく、これらを相互に往来できる潜在的エネルギのダイナミズムとでもいっておきましょうか(笑)」

★入試はどうしても分析的になりがちだし、要素分解主義になるけれど、それは知識・理解や応用・論理の軸を測定しているからこそそうなるのです。創造的思考のみを見出す入試というのは、要素分解主義ではなく、関係主義でなければデザインできないということなのでしょう。深い!ですね。

★子供の多様な才能を見出すテストデザイン。形だけ変えるのではなく、それぞれの才能を見出す最適な問いのデザインは何かを追究する平方校長と工学院の先生方の真摯な態度に感動しながら、自分の浅薄な姿勢を内省する機会となりました。少しずつですが、工学院の多様な入試にそれぞれの才能を生かしながら立ち臨む受験生が増えているのに日本の未来の希望を感じました。

★お忙しい中、ありがとうございました。

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