« 首都圏模試「思考コード」2021(2)思考コードを多次元にシフトできるようになると探究の扉は開く。 | トップページ | 首都圏模試「思考コード」2021(4)桜蔭×フェリス(≦聖学院×工学院)→C3思考=システム思考 →自己変容への足場づくり »

2020年2月20日 (木)

首都圏模試「思考コード」2021(3)B3領域 限定的情報のメタ的変容

★いつものように、今年の武蔵の理科の問題には<B3領域>の問いがありました。お土産問題はもちろん出題されました。やはり<B3領域>の問題でしたが、今回は、鳥とヒトの肺の機能を比較して、鳥の肺の方が優れていることを説明すしなさいという問いの方を考えてみましょう。

Photo_20200220202401

★ヒトの肺や鳥の肺の機能について考える足場づくりの問題を当然考えたうえで、この問いを考えることになっていますから、知識を前提にはしていないのです。しかし、限定的な情報から知識を習得していくA軸思考の作用は必要です。<B3領域>とはいえ、A軸思考も鍛えておかないと、比較ができません。

★ただし、この場合のA軸思考はA2A3です。A1の知識の想起は必要ありません。思考力にはまずは知識が必要だという考えは、そういう問いがあるからの話であって、学びの過程では実はあまり関係がありません。

★さて、この問題、A軸思考によって、鳥は空気の通り方が一方向で、ヒトは双方向だということは理解できますが、それが鳥の方が優れていることになぜなるのかは、推理しなければなりません。

★この問題は限定的情報でありながら、あえて書いていない条件があるのです。鳥は空を飛ぶし、ヒトは地上を歩くのです。当然ボディーの周りの自然環境が違うわけです。この条件の違いを補うことによって、推理がしやすくなります。

★つまり、鳥とヒトの肺という機能に絞った違いを見つけるだけではなく、鳥とヒトの置かれた自然条件の違いも見渡すメタ的な視点を必要としています。したがって、限定的な情報を自分でメタ的に変容する必要があるのです。

★この限定的な情報の背景に暗黙の条件として隠れているものを見つけるのは、たしかにメタ的に俯瞰する必要があるのですが、この俯瞰する視点はC軸思考によって鍛えられます。テストというシーンでは、すでに鍛えられているメタ視点を活用すればよいので、C軸思考は使いませんが、ふだんの学びの中ではC軸思考が必要なのです。

★ですから、B3の問いは、間接的にC軸思考の可能性を問うているということでもあるのです。しかしながら、データ上はあくまでB3です。今、C軸思考の可能性と言いましたが、それは武蔵の問題対策として、B3領域の問いがでたら、隠れた情報を探せと教えられているとしたら、普段の学びではC軸思考が育成される機会を損失していることになるでしょう。合格はできるかもしれませんが、それ以上の大切な思考全体の関数関係体は手に入れることができないのです。つまり、探究の道は閉ざされます。

★限定的な情報の変容を作り出す方法を自ら生み出すのか、教えられるのかでは才能開花の段階で大きな差がつきます。貧富の差による教育格差と創造的才能を得られるか得られないかという学び格差としての教育格差があるのです。

★21世紀は、この創造的才能格差をつくってしまうと、本来創造的な社会を創ろうという未来が崩れてしまいます。学びの在り方は実に重要な使命を帯びているといえましょう。学歴階層社会を解消するはずの創造的才能開発が、自ら創造的才能格差を新たに生み出すパラドクスはPBLや探究を否定することがデストピア価値観であることに気づかけないグループがあることによって生まれてしまいます。

★針の穴ほどの微細な落とし穴が生み出すデストピア。暗黒面はいつも気づかないうちに忍び寄るのです。

★対話によって、なんとか、気づきを生み出す必要はまだまだあります。というよりも、始まったばかりなのかもしれません。

|

« 首都圏模試「思考コード」2021(2)思考コードを多次元にシフトできるようになると探究の扉は開く。 | トップページ | 首都圏模試「思考コード」2021(4)桜蔭×フェリス(≦聖学院×工学院)→C3思考=システム思考 →自己変容への足場づくり »

思考コード」カテゴリの記事