2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
★本日、麻布の入試が終わるころ、正門をはいっていったところ、親子で帰る集団とすれ違いました。入試問題は保護者が待っている間、貼りだされていますから、息子を見つけるや、あの問題こう考えたけどどうかなといきなり話しかける父親がいました。それに対し、そんな複雑に考えないでいいだんよと。そうかそうかと父親。
★そんな対話をしている父と子が意外と多いのに思わず笑みがもれてしまいました。そして、そうだよなあ、大人が考えても面白いのだからそうなるのは当然だよなと思いました。
★私は、5部ほど購入しました。京都の先生方と研究するため、仲間たちと分析するためなどの目的で手に入れに行ったわけですが、やはり電車の中ですぐにとりあえず眺めました。
★算数は、図形と図形の移動のバリエーション問題が出題されていて、幾何と式の関係を頭の中で考えるのは興奮するし、プログラミングでこれは解けるだろうから、そういう意味ではプログラミング以前に何か必要なことがあるなあとも感じました。
★国語も相変わらず長文で、たぶん1万字はあるでしょう。しかも、またしても女流作家です。宮下奈都さんの「つぼみ」から出題されていました。
★物語は、少女の成長物語ですが、ちょっとした恋愛と背伸び、そして嫉妬など、小学校6年生の男子が読めるのかと思いつつも、男子校でも女性の気持ちをわかるのはたしかに重要だと妙に納得したりしました。ジェンダーギャップを少しでも解消するには、やはり疑似的にでも女性の気持ちを了解することは必要でしょう。
★麻布の理科は、どれもすてきです。昨年のコーヒー問題の替わりに今年はスイーツ問題です。しかし、個人的には光の速度をはかることをテーマにした問題が感動的でした。昨年の4月にアインシュタインのブラックホールを通る時に光が曲がるという理論を実際に撮影して検証できたというニュースが話題になりましたが、そういう科学の最前線の成果を、テーブルクロスに球をおいてゆがみをつくり、そこをアリがあることで、どれが最短の距離なのか考えさせる問題に転換しているところが、メタファーの醍醐味でスリリングでした。
★アインシュタインの重い星によって「時空」がゆがむ理論を紹介したうえで、それをアリで実感させる問いの発想自体がさすがです。思わずオーッ!と独り言。電車に乗っていた周りの人の視線が多少気になりましたが。
★そして、相変わらず圧巻の社会。衣服と歴史、衣服と文化、衣服と風土、衣服と宗教、衣服と戦争、衣服と産業など衣服に多面的にアプローチすることで、文化の違いや価値観の違い、支配―被支配の関係、経済格差の問題など人間の深い問題を見出していく仕掛けになっています。社会学的、文化人類学的なアプローチがベースにあるのです。
★最後の問題は入れ墨問題と校則問題の意見対立を具体的に考え、そのうえで両者の葛藤の共通点をあぶりだすアクロバティックな思考力問題を出題しているのですから驚愕しないわけにはいかなかったのです。電車の中でしたから、その驚きのウメキは心の中でそっと。
★詳しくは解いてみていずれ1年かけて味わいたいと思います。速報でした。
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