京都のノートルダム 動き出す(10)<ND哲学カフェ>ND生と人類の子どもたちへの架け橋。
★2時間続きの高1の<ND哲学カフェ(ノートルダム女学院哲学カフェ)>。高1は全クラス順次<ND哲学カフェ>を体験していきます。8人から12人で1チーム。1つのチームが哲学対話を行っている時に、もう1つのチームが見守りながら、気づいたことをワークシートにノートテイキングしたり、哲学対話の内容をホワイトボードにスクライビングして整理したりしていきます。4チームが大きく2グループに分かれて哲学対話は行われるのですが、ちゃんとルールがあります。
★何を言っても自由だという確認とただしそれを阻害するコミュニケーションはとらないというルールです。梶谷真司さんの哲学対話のルールを参考にしていますが、もともとは聖書のゴールデンルール(黄金律)にあるものです。「あなたが人にしてもらいことを人にもしなさい」という『マタイによる福音書』7章12節と『ルカによる福音書』6章31節の言葉です。
★このゴールデンルールは、ニューヨークの国連本部の平和を祈るギャラリーにディスプレイされているノーマン・ロックウェルのモザイク画に刻まれています。国連は、この言葉はキリスト教に限定されることなく、宗教、民族、性別、身分などを超えて通じる普遍的なルールであるとしてディスプレイしているのです。
★また、心理学では、マーシャル・B・ローゼンバーグ博士が“NVC:Nonviolent Communication”という本を書いていますが、何気なく人は他者を傷つけるコミュニケーションをしてしまっていますから、それに気づき、共感できる対話創りのためのNVCの意義と方法を実践的にまとめています。世界各国で翻訳されて、ワークショップも各国各地で行われています。カール・ロジャーズの流れを汲んでいますから、エンカウンターを取り入れている学校の心理学的ワークショップともすぐに共感共振できる考え方です。
★哲学対話の足場づくり、すなわち、発言と思考する自由が担保されている安心安全な環境をつくることは、<ND哲学カフェ>のルールであり、世界標準のルールだったのです。
★Big Questionは「校則は必要なのか?」というものでした。批判的思考力を有している生徒は、すぐに結局校則は必要ということになる話ですかと。その生徒は、しかし、この先入観や固定観念を転換することになるのです。
★哲学対話は、最初はファシリテーターが必要です。どんな校則があるのか「事実と意見」を区別する思考スキルを使うことなどを、「問いのシート」を媒介に対話を活性化していきます。
★この思考スキルを「問いのシート」(NHK制作)にして活用するアドバイスをしているのは、NHKの哲学対話の番組です。監修の1人にあの河野哲也(立教大学教授)さんがいます。河野さんのアイデアですが、山川先生が河野さんの哲学対話をリサーチしていた時発見したとのことです。思考スキルをわかりやすく自問自答できる「問いのシート」として可視化しているのですね。
★サークルに座って対話をするのですが、足元にその「問いのシート」を置いてありますから、何を考えようかと迷ったときにヒントになります。教育心理学者ヴィゴツキーだったら「最近接発達領域」を発見しやすいねと言ったでしょう。
★そこから髪の毛に関連する校則などについて対話や議論がだんだん白熱していきました。テーマが自分事になっていたのでしょう。
★はじめは、ルールに対して自分都合の感情をぶつけていたのが、なぜルールが必要か他者との関係を考えるように展開していきました。そして、その関係の捉え方が本人たちはこの段階では自覚していませんが、リバタリアン的な価値観にもとづいて発言していたり、コミュニタリアニズム的な発想で語っていたり、リベラリズム的な発想で語っていたりしました。なぜかコンサバはいなかったのは、必要なものと変えるものがあるという変化を受け入れたりつくったりしようというモチベーションが湧き起っていたからだと三井先生はファシリテーターの役割を演じながら感じたといいます。
★そして、4チームすべて哲学対話が終了したら、互いにチームでどんな哲学対話になったか情報交換し、個々人リフレクションシートに記入しました。哲学対話を通して語りたいこと考えたことが内側にあふれ出たので、シートは言葉でいっぱいになりこぼれていました。
★最初に哲学対話を予定調和の思考の誘導だと感じた生徒は、もはや変えるべきものは変えるのだけれど、その根拠と変える基準の議論は深める必要性があることに気づいたようでした。
★<ND哲学カフェ>の霜田先生とのミニリフレクションの際に、それをどのようにアクションに結びつけるのか、手続きルールの仕組みなどを学ぶ機会も用意する必要があるなど語り合っていたようです。市民が行う<哲学カフェ>とは違って、開かれたままで終わるわけではありませんでした。
★<ND哲学カフェ>は授業の一環です。次々とBig Qustionが発見され、その扉が開かれ、探究の道に接続していくことになるのでしょう。探究アクションに開かれた<ND哲学カフェ>の今後の進化が大いに楽しみです。
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