中学入試の学びから始まる<合格力以上の学ぶ力と未来を創る力>
★今年の2月1日から10日までは、いつもと違って多種多様な次元で対話が詰まっていました。いつもは、中学入試一色になるのですが、今年はもはや自分ひとりで情報を収集分析をしなくても、仲間が提供してくれるので、そんなことができたのです。
★それにしても、本当にみなさんは多角的な視座で、深くあるいは広く情報収集分析して洞察しています。いつもとは全く違う中学入試のプラットフォーマーの動きです。これ自体、中学入試の次の次元の到来を予感させます。
★同じ組織に所属していないのに同じテーマで対話(face to face やメールのやりとり)が深まって行く感じは、まさにプロジェクト型の動きです。
★一方、この10日間のうちに京都の小学校の先生方と東京の小学校の先生方、中高の先生方とワークショップ型の対話も行いました。いずれも、PBLにおける<対話>の在り方で、そのメカニズムを言語化したり見える化したりしました。
★また、インドネシア人のサイエンティスト(幹細胞やiPS細胞を研究しているバイオテクノロジスト、薬学を研究している科学者、医学の道を究めている科学者。日本の大学に留学している最中です)とアーティストとのコラボワークショップにも参加し、人間は細胞レベルから対話が行われていることに気づき驚きました。そして、iPS細胞のPは、pluripotentの頭文字であることに気づき、いまさらながら、細胞レベルで、何にでもなれるポテンシャルがすでに埋め込まれていることに気づきまたまた驚きました。
★細胞も対話によって、それぞれの機能を決めていくわけです。まるで、人間の対話による学びがポテンシャルを広げ、自分の才能を開花していくのと同じです。というよりも、人間の細胞なのですから、細胞と人間はアイデンティティがあるのは当然です。細胞のポテンシャルは人間の能力のポテンシャルでもあるのです。
★このポテンシャルを使わずに、他者のポテンシャルの応援側だけけに回り、重宝される人材がロバート・キーガンのいう「環境順応型マインド」の持ち主です。20世紀社会において、つまり工業化時代において、このような人材は重要です。
★というのも、20世紀型社会のリーダー資質は、「自己主導型マインド」の持ち主です。生産管理の合理性、予見性、危機管理ができる知識をもっていて、自分の判断で、組織を回せる人材です。この自己主導型人材は、一握りで、あとはチームワークを形成できる環境順応型人材がたくさんいればよかったのです。
★ここに実は対話はないのです。指示命令が合理的であればよいのです。しかし、自己主導型人材の方法論は、通用しなくなったのが21世紀社会です。つまり、合理的計算可能性、予見性の確率が低くなってしまったのです。この原因は、専門分化した科学主義やコントロール型のガバナンス組織が、自然と社会と精神の全体的な生態系システムを分断して、自己都合型で強欲主義的な優勝劣敗型のシステムになってしまったからだというのは周知の事実でしょう。
★これに対する深い内省があって、全体的な生態系システムを、一方通行的なチームワークではなく、対話型のチームワークを通して回復しようという転換が起こっているのです。
★この転換の兆しが、中学入試の2科4科の問題の中に現れてきています。そして、新タイプ入試はそのものです。どういうことかというと、限定的な範囲で、つまり予定調和の範囲内で、知識や知識の活用方法を憶えればできる知識・理解あるいは応用・論理的思考力だけでは解けない問題が出題されるようになったのです。
★つまり、非限定的な未知の分野で自分で糸口を探し、問題解決を手探りしながら考えていく「批判的・創造的思考力」が必要になってきます。
★試験の時は1人で立ち臨む場合がほとんど(新タイプ入試は対話や議論もある場合も多い)ですが、中学入試の取り組みは対話や議論、多様な経験が必要になってきています。新タイプ入試は、2科4科と違い、かなりその要素が強く、塾では対応できない部分があり、各学校の体験授業会が大いに活用されるようになりました。塾主導の受験市場と学校主体の入試市場がコミュニケーションをしていく新たな動きが生まれています。
★要するに、今までのように合格する力だけではなく、予測不能な時代、自分の学び方をアップデートし、変化する社会の全体を理解し、問題を発見した場合、協働して新たに問題解決を創造していける「自己変容型マインド」を有した人材に成長することが求めらるようになったのです。
★この自己変容型精神を育てるのは、18歳までだとかなり確率が高いが、それ以降は、変わらないことはないが、確率は低いと言われています。今までは限定的な領域で知識や理解した内容を再現できればよかったのですから、自己主導型管理型で十分だったのです。
★しかし、これからの未来社会は、それでは通用しなくなります。そういう意味では、中学入試は18歳までに自己変容型マインドを養う準備期間に転換してきているわけです。
★この実感は工学院の田中歩先生や聖学院の児浦先生と対話して共有できました。
★中学入試から<合格力以上の学ぶ力と未来を創る力>の準備が始まっていると感じたわけです。このことについての具体的事例は、2月16日の「新中学入試セミナー」で大いに議論されるところでしょう。
★そして、このような準備を通過して、中高に進むと、そこには7つのPBLという環境があることについても見えてきました。(つづく)
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