2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早稲田アカデミー・日能研の実績を通して
★昨日2月11日、筑駒、開成、麻布、武蔵、海城、栄光、聖光学院などが同日入学手続説明会を開催。これによって、複数合格者の進学先が1つに決まるので、この説明会が終了後、最終的な繰上がり合格の動きが起こります。
★受験生の複数校の併願が多いと、この動きは大きくウネりますが、受験生・保護者の選択眼が磨き上げられ、偏差値とのマッチング以外に、受験生の学び方や今後の生き方と学校の教育の質のマッチングを考えるようになると、この動きは小さくなります。
★2月1日から2月12日にかけて、各塾の東京の私立中学の合格実績の公開数は、当然変わるわけです。したがって、SAPIX、早稲田アカデミー、日能研の合格実績の公開数の変化を見ると、おおよそ、そのウネリの大きさがわかります。
★2月4日と2月11日を比べると、例年に比べそのウネリは小さいかもしれません。4日の時点では筑駒はまだ合格発表をしていませんから、筑駒はぐんと増えたように見えますが、そうではありません。筑駒と開成、麻布、武蔵、駒東は併願が多いですから、これらの学校の繰上り合格数は、筑駒合格者分に吸収されています。したがって、繰上り合格が、どんどん他の学校に連鎖したというウネリは大きくなさそうです。
★実際、受験結果は、かなり厳しかったのでしょう。例年の歩留まり率で合格を発表すると、予定以上に入学者が増え、繰上り合格者を大妻中野のように出さないことをサイトで発表するというところまであったぐらいです。
★さて、上記の表でもう一つの特徴があります。今早稲田アカデミーは、SAPIXを追撃しています。開成の108名合格というのは、その象徴です。まずは、高偏差値の学校へ合格させる戦略なのでしょう。ですから、上記表の空欄の部分は、本来埋まるはずですが、現段階ではまずは高偏差値の学校の実績を公開しようということでしょう。
★日能研は、偏差値と教育の質のバランスを考えますから、偏差値の高低にかかわらず、教育の質の情報を収集し、受験生・保護者とシェアしていきます。
★したがって、聖学院のように日能研の合格者数が45名で、SAPIXの合格者数が5名ということは、教育の質の高さが支持されていて、実は偏差値がそれほど高くないにもかかわらず、入学後の成長率が高いということに、SAPIXの保護者も気づき始めたという学校です。かえつ有明、宝仙理数インター、八雲学園、武蔵野大も同様でしょう。
★広尾と三田国際は、学校の広報戦略が教育の質(もちろん高いのですが、質は見えないので)よりもマーケティングを巧みに活用しているので、SAPIXの保護者のハートを射抜いています。偏差値は目に見えます。教育の質は目に見えません。どちらを指向するかは価値観の問題です。消費者の価値観とマッチングさせる広報戦略がマーケティングの活用ですね。これによって、御三家のような学校との併願が多くなり、SAPIXの合格者が増えるメカニズムを作ったのでしょう。
★偏差値か教育の質か、それはジレンマなのかそれとも統合できるのか。広尾はそのジレンマの中にいるでしょう。三田国際はなんとか統合しようとしているでしょう。サバイブするというのはなんとも悩ましいですね。
★今や、高偏差値の受験生は、SAPIXと早稲田アカデミーに集中しています。しかし、それは首都圏の中学受験生の20%の話です。80%は、日能研と多くの個別塾や個人塾、最近では習い事塾や英語教室で学んでいます。各学校の教育の質をリサーチして、受験生・保護者と学校選択眼を磨く多様なプラットフォームですね。
★もちろん、その中に、将来SAPIXを脅かすかもしれないスピカやグノーブルという新しい塾も誕生しています。しかし、それも首都圏の中学受験生の20%のパイを奪い合う話で、教育という観点から見れば、80%の中学受験生の行方が本当はメディアでも話題にしなければならないでしょう。
★アドミッションポリシーとしての新タイプ入試とそれとつながっているカリキュラムポリシーの実現体である<新しい学びの経験>の創発を行っている学校は、日本社会の未来を支え、創る人材輩出のプラットフォームになります。このプラットフォームを唯一支持しているのが首都圏模試センターですね。
★同センターは、偏差値か教育の質かをジレンマとしてとらえません。統合する道もとっていません。評価軸の多様性によって、学びの価値観の多様性を生み出すプラットフォームとして中学受験市場のフレームそのものをパラダイム転換しようとしているのでしょう。
★上記の表でいえば、合格者数実績に空欄の部分がある学校などがそのパラダイム転換を生み出す拠点の代表例かもしれません。
★ともあれ、現状は、中学入試は、偏差値競争の場は20%で、80%は教育の質の話です。メディアは、そのうちの20%の領域を中学受験に縮減して報道しがちです。受験生・保護者のクリティカルシンキングという選択眼を磨く自助努力は重要ですね。でも、自助努力はなかなか大変です。多くの学校説明会や特に体験授業に出かけ、実際に学校の先生方と対話することがポイントとなるでしょう。
★実際、首都圏では、受験生・保護者―私立中学―塾―模試センターなどの連携・協働して中学入試に臨むようになってきています。合格以上に生き方まで考えるプラットフォームが中学入試マーケットです。中学受験マーケットは、合格のみを考える場です。どちらに移行するかは説明するまでもないような気がします。
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