京都のノートルダム 動き出す(3)徳と知の現代化。
★ノートルダムチャンレンジ説明会は、子供たちの体験学習会と同時開催で行われました。ノートルダム小学校の精神のルーツは、1833年に「ノートルダム教育修道女会」を創設したマザーテレジア・ゲルハルティンガーの精神にあります。
★世界の歴史は不思議なことに100年周期でイノベーションが現れます。そしてその後に必ずと言っていいほど生まれるパラドクスである影。そこで困惑し追いつめらる子供たち。そのたびに、「ノートルダム教育修道女会」は、その時代にあった真/新の教育イノベーションで子供たちをサポートしてきました。「教育修道女会」ですから、「時代にあった真/新の教育イノベーション」でその都度普遍的精神を取り戻すことこそミッションだろうだからです。
★名誉校長シスターベアトリスは、その時代にあった教育を生み出す重要なマザーテレジア・ゲルハルティングの精神をまず語りました。それは「徳と知」であると。英語に訳すと“ Virtue and Knowledge”。ラテン語だと “Virtus et Scientia”です。ですから、一握りの人間にとって都合の良い道徳や暗記するだけの知識を意味するものではありません。国際バカロレアの“TOK=Theory of Knowledge”も「知識の理論」と訳してはいけないそうです。「知の理論」だそうです。
★つまり、ヨーロッパの精神の土台をつくってきたカトリックの伝統の知とは知識ではなく、Scientiaだし、徳は道徳を道徳たらしめる全人的な法則です。
★しかし、戦後日本の教育はそれをすべて忘却したかのような偏差値偏重主義的な学歴社会になり、記憶的な知識がScientiaとしての知にいつの間にかすり替わってきたわけです。それが今、再び見直され、思考停止の学びから思考全開の学びへシフトする時がやってきました。ノートルダムの出番です。
★21世紀初頭は、1989年のベルリンの壁崩壊に象徴される世紀の革命とその後席巻するICTやWebのイノベーションの渦が増大し、光輝く一方で予想不能は影の部分もまた現れる時代でもあります。これについては日々のニュースで私たちは実感していることでしょう。ここに対応するべくSDGsの動きが高まっていることもご存じだと思われます。だからこそ、その動きをサポートする真/新の教育イノベーションを、ノートルダムでは着々と進めているのです。
★つまり、その「徳と知」の精神をもって、「人が変われば、世界が変わる」というマザーテレジア・ゲルハルティンガーの信念と情熱を共有したノートルダムの先生方は、すでに動き出しているのです。しかし、世の中は、まだその動きに気づいていないようです。
★そこで、常勤理事の高橋博先生は、理事会の経営陣と現場の先生方を巻き込んで、この21世紀の第4次産業革命を迎えるにあたり、革命革新がもたらす矛盾の渦を乗り越える先生方の真/新の教育イノベーションの姿をノートルダムチャンレンジ説明会で伝えたのです。
★どうやってか?ほかの学校ではあり得ない方法を使いました。それは、自ら先陣をきって、ビデオクルーと編集部隊を現場の先生方とジョイントし、プロジェクトをつくって、教育現場に入り、「徳と知」をアップデートした教育活動で子供たちが学んでいる姿を撮影していったのです。
★それができたのは、高橋博先生自身が、長い間校長としてかかわった数々の学校で思考型の授業であるPBL(Project based Learning)授業を全面展開してきた豊富な経験を有しているからでした。
★ある意味、学校広報における動画革命です。宣伝用の動画ではなく、ほぼ間違いなくドキュメンタリータッチになっているからです。昨今の現代アートではリサーチアートがムーブメントを起こしていますが、ある意味現代アート的な手法がはいっていると思われます。
★もともと高橋博先生はアーティストだということもあるでしょう。
★チャンレンジノートルダムの説明会は、体験型説明会ですが、それは子供たちだけのものではなかったのです。講堂で行われた保護者向けの説明会も体験型だったのです。高橋理事のあと、理科の梅下先生がその動画から飛び出してきて授業のさわりのワークショップを保護者とやってのけます。
★そのあと、広報の綾田先生がリフレクションとしての説明をしてまとめます。「理念→動画体験→ワークショップ→振り返り」というノートルダムの思考型授業さながらの説明会になったわけです。人が変われば世界が変わる。自己変容能力の高い教師が授業をアップデートし、説明会をアップデートし、学校をアップデートし、世界をアップデートするという準備が整ったことを子供たちと保護者と共有する説明会となりました。
★一粒のカラシだね(マスタードの種)が、かけがえのない生態系を生み出すと聖書にあります。まさに世界を変えるカラシだね戦略はノートルダムから始まろうとしているのです。(つづく)
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