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2020年2月 4日 (火)

2020首都圏中学入試 5つめの動向 SAPIX・早稲田アカデミー・日能研の実績を通して

★2020年首都圏中学入試の5つめの動向は、新タイプ入試のポジショニングの性格の変容です。これはSAPIX・早稲田アカデミー・日能研という3大塾の今年の合格実績の傾向を通してあぶりだされてきます。

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★空白の部分は、現段階で判明していないというのもありますが、それぞえの塾の各学校に対する関心度の高さも示唆しています。

★日能研は、中学受験専門塾ですから、すべての私立中学校の情報を収集分析し、この中学受験市場形成に大きな影響を与えていますが、それだけに、すべての受験生・保護者に対し、あらゆる私立中学の選択にアドバイスができるような中立なポジショニングを定着させました。だから、高偏差値の学校にたくさん入れることを目的にはしていません。かつてはそういうときもあったでしょうが、今は完全に私立中学校の文化の支援団体です。もう少し言うと、支援の文化まで築きあげています。

★もし、日能研だけが独占したら、その支援は学校にとっては縛りになっていたかもしれません。あるいは圧力団体になっていたかもしれません。そうならないように、塾からの脱皮を果たしたのでしょう。塾でもなく学校でもなく、私立中学校の支援をする学びのコミュニティですね。

★それに対しSAPIXは、東大を頂点とする学歴社会を強化する側に回り、ある意味私立中学の文化をそちら側に誘導する作用を発揮しています。

★この独占的な動きは、経済社会的にも、社会学的内省からしても、世界市民的視角からいっても、あまりよくないので、競合する塾の誕生が必要だったのですが、それは日能研ではなかったのです。日能研は同次元から次の次元にシフトしたからです。

★すると、高校受験や大学受験も実施していて合格実績を出す受験勉強をベースにしているという意味で同じ次元の早稲田アカデミーがSAPIXに対し追撃を本格的に開始したのです。まだまだSAPIXの方が強いですが、早稲田アカデミーは毎年実績を伸ばしています。上記の表で空白があるということは、それだけ伸びしろがあるということでしょう。

★しかしながら、中学受験市場が3大塾の寡占状態であるのも事実です。

★私立中学は、中学受験市場がある以上、そことコミュニケーションをとらねばなりません。入試情報発信と市場の動向情報の交換です。そのとき、非対称的な関係にならないように、入試情報及び広報の戦略において学校も力をつけなくてはなりません。

★グローバル教育は、最初あまり中学受験市場には歓迎されませんでした。2科4科入試のビジネスマーケットを崩されるからです。しかし、小学校の英語の教科化やそもそも保護者の中でグローバルに活躍する仕事につくジョブチェンジが起こっていますから、消費者のニーズを無視することはできません。

★各塾もグローバル教育の市場にも参入します。しかし、海外現地と結ぶエージェントはたくさんいるし、海外の情報通という点では、3つの塾とも長けてはいませんから、このグローバル教育の部分は、学校に分があります。

★そして、このグローバル教育が中学受験市場を崩すかもしれない兆しが現れてきました。崩すといっても変容ということでしょう。公立中高一貫校の適性検査の参入と私学のグローバル教育の拡大と深化がもたらした世界標準の学びでした。学内にC1英語の環境を創るとかアクティブラーニングやPBLといった対話型・議論型授業が開発されたり、その両方にICT活用環境が広がったりしたのです。

★入試問題は学校の顔です。はじめは適性検査を逆手に取る適性検査型入試という新タイプ入試が右肩上がりになり、そのうち各学校の<新しい学びの経験>に対応する各学校の教育の特色を現した新タイプ入試が開発され熟してきたのです。

★最初、そして今でもSAPIXは、新タイプ入試に懐疑的です。それは塾の中学受験市場戦略からでてくる発想ですから、学校は教育の場からでてくる発想として、そのようなズレはしかたがないと考える余裕がでてくるほどソフトパワーを身に着けることになっています。

★そもそも、新タイプ入試を実施している学校をSAPIXの広報部は評価していませんから、学校側も気にもしていません。

★こうして、学校側からの中学受験市場と重なるわけですが、教育現場から生まれたアドミッションポリシーが生成する中学入試市場が生まれたのです。別に私立中学が2科4科をやめるということではなく、新タイプ入試という多様な才能を受け入れる入試を付け加えたわけですから、中学受験市場と中学入試市場がセパレートするわけではないのです。

★むしろ、日能研のようにその両市場のコミュニケーションによってわかり合う緻密な情報の積み重ねを行っているところもあります。もちろん、了解すれども、受験市場の戦略と入試市場の戦略は違います。誰にとって利益かというのが決定的に違うのは説明するまでもないでしょう。株式会社は利益団体です。私立中学は法人型NPOで、利益はでないのです。

★こうした中学受験市場と中学入試市場のカップリングを最適化しようとしているのが首都圏模試センターです。現状では、中学受験市場>中学入試市場ですが、首都圏模試センターは、中学受験市場×中学入試市場によって市場のすべてのプレーヤーにとってシナジー効果を生みだそうとしています。理念的な動きもしていますが、思考コード×思考スキルという国際バカロレアのPYPのカリキュラムやブルームのタキソノミーを中心とする認知心理学などをリサーチし創り上げています。

★中学受験市場と中学入試市場のシナジー効果にこだわるのは、2021年に海外大学進学準備教育市場が急激に広がることを想定しているからでしょう。世界標準のテスト評価やその評価に基づく学びができるように子供たちに返す成績表を通して支援すするシステムを毎年アップデートしているのです。

★私立中学を巡る市場の様相は、かくして複合的です。この流れの中で、生まれてきた新タイプ入試は、麻布や武蔵、フェリスが4科目入試の中に埋め込んでいる創造低思考力を追究する問いのデザインにチャンレンジして進化/深化してきました。

★かつては、新タイプ入試は誰でも受かるという雰囲気もありましたが、今では新タイプ入試は偏差値で測れない、学校入学後に伸びる自己変容知性の潜在的なパワーがあるかどうかを見抜く内容になりつつあるのです。

★このように2科4科入試は受験勉強によって顕在化された能力の期待値の確からしさをためす問題であるのに対し、新タイプ入試は入学後に伸びる潜在的な能力をためす問題という意味のポジショニングを獲得しはじめています。それゆえ、ワクワクするけれど決して易しいテストではなくなりつつあるのです。そしてこのテストは中学入試市場において子供が成長を実感していく独自のサービスでもあるのです。

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