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2020年2月20日 (木)

首都圏模試「思考コード」2021(2)思考コードを多次元にシフトできるようになると探究の扉は開く。

★たとえば、小6の模試で「建築」という漢字の書き取り問題がでたとしましょう。この漢字は小学校3年生4年生時で学習する漢字ですから、正答率は70%は超えて欲しいところでしょうが、なかなかそうはうまくいきません。記憶というのは忘れるものですから。

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(2017年の麻布の社会の入試問題で出題されたグラフ。都市の変化の理由を記述する問題)

★いずれにしても、この「建築」の書き取りの問題は知識を想起する<A1領域>の問題ということになるわけです。しかし、これはA1の問いであるから、単純に想起する確率が高いかどうかをだけが得点として評価されるのですが、だからといって「建築」とう漢字を覚える学びが<A1領域>に閉じ込められているわけではないのです。

★学んだ結果、出力するときの思考過程は<A1領域>で十分だと判断されているだけです。条件反射的に記憶を引き出す力も重要なのです。危機に直面した時に大いに役に立ちます。

★だから、「建築」という漢字を<A1領域>の単純想起の出力過程の部分だけでトレーニングするのはどうかというと、実は思考を分断してしまい、思考力全体の関係態を育成する機会を損失する可能性があり、もったいないのです。

★もちろん、時間もないですから、熟語一つ憶えるのにそんなに時間をかけられないという事情もわかります。しかし、学ぶときは隣の領域でもいいですから縦断ないしは横断して領域越境しておくことは重要です。領域越境しないと、学びの方法がフィックスされがちです。思考力の質料が固まってしまわないようにするために、領域越境の学びは重要です。

★たとえば、最近よくマインドマップやウェッビングマップなどの思考ツールを活用する授業があります。「建築」を中心にそこから連想される熟語を次々書いていきます。共起語のネットワークを広げる学びは、思考コードでいえば<A2領域>ですが、実はもう少し欲張ります。想起された言葉と言葉の関係を考えます。

★「建築」と「破壊」、「建築」と「構築」など関係を考えます。「対照的な関係」とか「同内容の関係」とかでてくるでしょう。そして、この関係は思考スキルに相当します。

★「建築」関連の文章を読んで、文章の構造を細部から理解していく時、この<A2領域>の学びが役立ちます。論理的に自分の言葉でまとめなくても文章のフレーズをパッチワークしながら結び付ければ、文章内容が理解できます。文章理解する時に文章の言葉を足がかり手がかりとして、まとめる作業は簡単にできるでしょう。

★全体の文章を箇条書き的ですが幾つかの情報に圧縮して理解するわけです。これはこれで変容過程ですから、思考コードの<A3領域>の思考過程になるのです。

★ところが、細分化ではなく要約のような全体を圧縮するとなるとどうなるでしょう。細部のアプローチは、文章の中のフレーズをほとんどそのまま使えますが、要約となると、文章中の要素の取捨選択が必要となります。そして論理的に結びつける必要があります。

★限定的な内容ですが<A軸思考>がスキャンニングに近い過程なのに対して、この要約は再構築しなくてはなりません。この再構築が<B軸思考>です。<A軸思考>がスキャンしたものを再現するのに比べれば、自由度が高くなります。

★そして、その筆者の要約ベースで自分の意見を書くとなると、一見クリエイティブですが、まだそこまではいきません。限定的な情報で意見を出す時には、根拠は限定的情報に求められます。ですから<B3領域>となるわけです。

★さて、「建築」関連の情報に新たな情報が付け加わったらどうでしょう。つまり限定的な情報を超える非限定的な情報が加わったらどうなるか。たとえば、都市計画のリフォーム後の水道使用量の変化グラフがでて、その変化の理由を考えるとしたらどうでしょう。

★その理由について、文章の中には書いてない場合、推理しなくてはならないわけです。

★ここはリフォームをなぜしたかというビフォーアフターを比較推理することから始めるでしょう。<C1領域>の思考コードが振られます。

★さらにリフォームすることによって一定の効果を出すのに成功したのに、地域とのつながりや世界とのつながりになると、結果的に弊害を生み出す状況の例を挙げ、150字以内でそうなった理由と解消方法を提案するとなると、<C3領域>となります。

★麻布の入試問題や公立中高一貫校の適性検査問題は、この<C3領域>をこんなふうに問うてきます。

★私は、90分の授業で、3、4年生とこんな感じでワークショップをやりながら・対話しながら行っていきます。「建築」という漢字の話から共起ネットに広がって、それを使いながら読解したり論述したりします。レゴやスケッチブックも使います。

★子供たちは「建築」以外の共起ネットに出てきた言葉や漢字をわりと自然に記憶していきます。言葉と言葉、言葉と文、文と段落、言葉と絵、言葉とグラフ、言葉と地図、言葉と亜価値などの関係をどうとらえるか思考スキルも確認します。

★記憶という再現、記憶を再構築して適用、新しい知識や発想を構想・創造する思考コードの全領域を散歩します。

★しかし、まだ「思考コード」をマップとしてしかみなしていません。飛躍の跳躍台にも、ワープのタイミングにも、まして洞窟や海底にダイブする場としても活用していません。

★思考コードをマップから跳躍台やワープする時のタイミングセット、ダイブの場というような多次元にシフトして使い始めると、もちろん、その時使うのは、もはや生徒自身ですが、そうなったとき探究への扉がようやく開き始めます。

★学校で、思考マップとして思考コードを使っても探究への扉は開きません。ただし、それは、思考全体の土台をつくることにはなりますし、探究の動機付けにはなるでしょう。探究はそこから発展していくわけです。

★しかしながら、教科授業と探究の結びつきはこれでできるでしょう。今までのA軸B軸思考領域だけでは、教科授業と探究は分断されてしまいます。

★中学入試において麻布や武蔵の入試問題と新タイプ入試が親和性を有するのは、同じ理由が横たわっているのです。

★なお、「建築」から社会問題に広がる例は2017年の麻布の社会の入試問題を参考にしました。基本私の中学入試における思考力型の国語のワークショップは、麻布の入試問題の構造と親和性があるので。

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