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2020年2月

2020年2月28日 (金)

新コロナウイルス感染を防ぐ動き~Z世代が脱近代未来プロジェクトを生み出す必然性

★NHK(2020年2月28日 0時57分)によると、「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍総理大臣は来月2日から全国すべての小学校・中学校、それに高校などについて、春休みに入るまで臨時休校とするよう要請する考えを示し、文部科学省は、今後、全国の関係機関に要請を行う事にしています。今回の要請に幼稚園や保育所、学童保育は含まれていないということです。」ということで、昨日から私の周りでも情報が錯綜していますが、この要請には法的拘束力がないので、個人、家庭、組織、自治体それぞれが判断して動くことになるでしょう。

【Z世代と共に創る脱近代未来プロジェクトの道の必然性メモ】

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★それにしても、2020年というのは、最後のZ世代が小学校1年生になる年です。1995年に誕生したZ世代は、もう25歳で社会人になっていて、小中高だけではなく、それぞれの組織で、パンデミックにならないように対応する中で生まれるジレンマに直面しています。いずれにしても、この新コロナウィルス感染の拡大を抑える社会の動きは、Z世代を直撃しています。

★ことはZ世代だけでなく、次のFuture世代も大変ことになっています。

★京都橘大学の教授池田修先生のように、「#臨時休校中の学ばせ方」というプラットフォームをすぐに立ち上げ、仲間と俊敏に動いている勇姿には頭が下がります。この動きも目の前のZ世代の学びを救済することで、F世代も含め将来の新しい教育や新しい哲学を生み出す原動力の一つだと思います。

★たしかに、中にはこういうときに、自己都合のためにピンチはチャンスだとリバタリアン的な動きをする人もいるでしょうが、池田先生のように、そういう動きやコンサバの発言を抑制して乗り切るには、リベラリズム的あるいはコミュタリアニズム的な発言や行動を真摯にとること以外に方法はないでしょう。

★今のところは、自己責任扱いされるでしょうが、個人や家庭、組織、自治体、コミュニティが自己判断できる能力や環境をつくり、責任は国がとるという自己判断と国家責任の相乗効果が生まれる新しい政治経済体制を、動きながら考案していく機会がZ世代と共にやってきたと思います。

★おそらく、自己責任×国家都合から自己判断×国家責任という流れは脱近代のロードマップでしょう。その具体的なロードマップはこれから描かれていくわけですが、その前に、そのZ世代と共に脱近代未来プロジェクトを生み出す必然性については、上記にメモ書きをしました。詳しくは、少しずつ考えて述べていきたいと思います。

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2020年2月27日 (木)

京都のノートルダム 動き出す(14)ND庭園という知の空間 欧米が憧れた知の宇宙空間そのもの。

★日本に初めて近代建築を伝えた外国人工学建築学教授はかのジョサイア・コンドル。鹿鳴館のデザインを威風堂々ではなく、アールヌーボー的センスで創って、時の権力に解任される。その後岩崎家に頼まれ、今の三菱地所のルーツの設計事務所を任される。銀座周辺をロンドンさながら赤レンガの館で埋め尽くす。その赤レンガを供給する工場を深谷市につくって一儲けしたのはさすがの日本の資本主義の父渋沢栄一翁。三菱一号館は現在復元されています。

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★丸の内の赤レンガの東京駅も再現されていますが、コンドルの弟子の辰巳金吾によるもの。彼は日本の1級建築士第一号。

★そんなジョサイア・コンドルが、日本の文化をヨーロッパに伝えたのが、大名庭園。その中にある茶室も。また本人は、自ら画鬼と呼ぶ河鍋暁斎(「ぎょうさい」ではなく「きょうさい」と呼びます)に弟子入りするほど日本の文化にほれ込みました。河鍋暁斎から暁英という号を授かっているほどです。

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★このコンドルがみた大名庭園は、レッチワースの元祖環境都市である田園都市のモデルになりました。日本の最後の国土計画のガーデンアイランド構想のコアコンセプトでもあります。明治開国当時、日本を訪れた外国人は江戸を埋め尽くす大名庭園をみて、理想郷と呼んだそうです。

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★ノートルダム女学院も、かつて京都の豪商が住んでいた大名庭園だったのでしょう。その面影があります。近代建築を超えて、新しい知のインスピレーションを生み出す空間として庭園は大切な日本の文化リソースです。そこで、ND生徒は学んでいるのです。

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★渡り廊下の右下には「和中庵」があります。庭園は崖があるスタイル。根津美術館や五島美術館は、まさにその典型。根津美術館は青山の崖地を巧みに活用、五島美術館は国分寺崖線をやはり巧みに活用。

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★ノートルダム女学院の庭園も、崖が巧みに作庭されていて、そこに立つとインスピレーションが湧き出てきます。

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★お茶会もギャラリーにもなる空間。

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★贅沢な小宇宙空間です。

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★グローバル教育をやっていて、海外の方々を招くと喜ばれる空間でしょう。

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★ノートルダム教育修道女会の創設者マザーテレジア・ゲルハルティンガーはドイツ出身です。京都のノートルダム女学院を創設したのは、米国のノートルダム教育修道女会からやってきた4人のシスターです。ドイツも米国も、森の中の生活は大切な意味を持っています。自然と社会と精神が共生できる理想的な環境がそこにはあるからです。

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★ノートルダム女学院の大名庭園は、崖地を活用していますから、森の中の生活にも思いを馳せられます。建学の精神を呼び覚ます空間であると同時に、SDGsを考えるヒントにもなるでしょう。

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★ご自身のPBL授業に手ごたえを感じている社会科の森兼先生と対話をしながら、ノートルダム女学院の宗教の学びはIBのTOKのような取り扱い方も可能だし、宗教社会学や宗教文化人類学的なアプローチもできるのではないかと思いました。森兼先生も時代に対応した新しい宗教行事や宗教探究ができるはずだと語っていました。

★あらゆるフェーズでブレイクスルーが起こり始めているようです。

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京都のノートルダム 動き出す(13)日常の授業シーンで 私とは何か。自己存在が世界とつながる瞬間。

★霜田先生の授業に立ち会えなくて残念そうな顔をしたら、10分休みの時間に資料を持ってきてくれました。

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(霜田先生もPBL型授業を極める探究の道を歩んでいます)

★高2のプレップコースの倫理の授業。「自己中心主義への批判 他者のまなざし・公共性」というテーマでPBLが展開。レヴィナス、サイード、ガダマー、アーレントを生徒と共有。倫理の教科書にここまでの思想家を扱っているものってあったかなあと思い、凄すぎると思いました。

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★プリントを配布して説明するだけではく、グーグルクラスルームを使いながら、思想家の言葉について感じたことを書き込み、シェアしながら、対話を深めていく。そんな倫理の授業だったらおもしろかったのになあと高校時代を思い出したら、自分の受けた倫理も生徒が調べたことを発表する形式で、それはそれでおもしろかったと今頃思い出しました。そういえば、私はソクラテスの対話編のシステムについてという課題でプレゼンしていた記憶を呼び覚ましました。40年以上も前の事です。タブレットはなかったなあと。

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★それにしても、生きる(存在する)とは、神様からの何?と問いかけ、贈り物と試練の2択にしたら、試練の方を選ぶ生徒が多かったというのは今の高1はなんというセンサーを持っているのだと感心しました。霜田先生は選ぶだけではなく、その理由も生徒に書き込んでもらい、グーグルクラスルームでシェア。

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★そこから、対話がはじまるわけです。

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★それにしても、他者と出会ったとき顔をつくるロールプレイの話は最高でした。どんなロールプレイかというと、それは演劇的なものです。具体的には、そもそも他者と出会う眼差しとは何かを考え、自分だったらどんなロールプレイにするか考えてみてください。答えをここで聞くより、はるかにおもしろいですよ!

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京都のノートルダム 動き出す(12)日常の授業シーンで 共感と対話と思考と寛容と行動と技術。

★NDの先生方と授業について語り合う際に、ふだんの授業を拝見して、それをきっかけに対話することが多いのですが、最近では特に約束もしないで、訪れたときに立ち寄ります。

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★今日もディーン先生がおもしろそうなPBL型授業を展開しているなと感じたので、少しだけ立ち寄りました。EAT TEXTという授業でした。いわゆるリーディングの授業ではありません。たしかに文章の内容を読むのですが、いくつかのクエスチョンについて、パラフレーズしたり根拠をテキストの中に探したりします。

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★生徒は、マナボードに回答を書き込んで、ディーン先生のところにもっていきます。内容だけではなく、文法的なチェックも受けるのです。ディーン先生の他の授業ではロジカルシンキングやクリティカルシンキングを社会問題にまで広げて発揮するダイナミックな授業も行っていますが、このようなリーディングやライティング、グラマー、ロジカルシンキグを丸ごときっちり詰めていく授業も行います。

★おもしろいのは、その時の必要性に応じてPBL型授業の展開やアクティビティの組み合わせは異なります。変幻自在のPBLです。

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★このグローバルコースの授業はオールイングリッシュで行われています。ですからチームティーチングでマキーガン百先生もいっしょに授業を行っています。日本語のサポートをするのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。オールイングリッシュでディーン先生と同じように授業を行っているのです。

★社会科の森兼先生や霜田先生も同時間にPBL型授業を展開していましたが、立ち寄ったときにはちょうど授業が終了したところでした。残念。森兼先生は昨年からPBL型授業に転換し、授業デザインを豊かにしています。

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★まさに、教師も生徒も共に学びの道を歩いているわけです。

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京都のノートルダム 動き出す(11)通奏低音とポリフォニーの響き 共感と対話と思考と寛容と行動と技術。

前回ご紹介した保険体育の三井先生と宗教の山川先生のジョイント<ND哲学対話>の授業が現実態として動いているのは、言うまでもなくお二人の教師という資質と素養と生徒への愛情が生成されている豊かな潜在的能力にあります。他の学校でも、公立私立問わず心ある教師が同じような教育活動を行っている場合も少なくありません。

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★しかし、決定的に違うところは、<ND哲学対話>授業は、ノートルダム女学院中高の先生方の魂と共感し、同校の創設者マザーテレジア・ゲルハルティンガーの大切にしていた<共感・対話・尊重・行動>の通奏低音と響き合っているということです。その響き方は先生方1人ひとりの資質・能力・素養といった個性が響き合うので、ポリフォニー的な響きになっています。それゆえ、繊細で、ときに不協和音を生じることもあったでしょう。

★今は、中村良平先生をリーダーとするND教育を推進するプロジェクトが21世紀型スキルとそのミッションコミットメントの響きをどのように奏でるか研究が進んでいます。その過程で、プロジェクトメンバーの1人霜田先生が、動き始めました。NDの研修会を上から降ろすのではなく、ボトムアップ型でティール組織のようにウネリだすことはいかにして可能かとチームで対話し、今年1月6日、つまり令和2年始まるや、教師全員と<対話>をすることになったのです。

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★自分のPBL型授業や哲学型授業などの教師も生徒も<共感・対話・尊重・行動>が<出来(しゅったい)する=I want to do it.>実践を共有する会を開き、そのあと教師全体で分かち合うというものでした。何かを決めるのではなく、あくまで<共感・対話・尊重・行動>です。

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★そのときに、三井先生と山川先生はジョイント<ND哲学対話>を披露したのです。仲間が共感し、どうやったら自分の授業でも生かせるのかエールを贈っていました。このような互いのエールの響きがいいですね。

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★数学科の中村拓先生と国語科の山崎先生もコラボしていました。数学的思考の根本には<変換・変形>という発想があります。数学の問題を物語に転換するワークショップ授業をコラボレーションしていました。

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★門外不出かとも思われていた英語科のディーン先生の破格のPBL授業も共有。英語科の先生方が通訳しながらワークショップは展開していきました。

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★3つの授業を全部見る時間はなかったため、2時間構成で、2つ選択して、ワークショップ終了後に短い時間でしたが<分かち合い>が行われるプログラムになっていました。

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★どんな授業に参加したのか<事実・情報>を交換し、その次に自分の<感情・情意>を語っていく<分かち合い>です。こうすべきだとか、してはいけないとかではなく、ひたすら<共感・対話・尊重>です。すると、あとは<行動>するかどうか。それは、先生方1人ひとりの意志決定に任されます。

★霜田先生と中村拓先生、中村良平先生は、放課後自然と集まり、何をしようか<DO>とその<Value>について対話する機会が増えたと言います。

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★この間は、今年京都大学の特色入試に合格した生徒が問題用紙を持ってきてくれたというので、その分析をしながら、自分たちのPBL授業で行っているエッセンスと重なるけれど、問題自体は理科も社会も数学も英語も国語も教科横断型のBig Qustionの連発というタイトな思考力を要する問題に<閃き>を感じていました。

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★その<対話>は、一気呵成に<行動>にブレイクスルーしたのです。4月以降のどこかで霜田先生と中村拓先生はジョイントするということになったのです。その中身については、また実践されてからご報告します。お楽しみに。

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2020年2月26日 (水)

2021年中学入試を読み解く準備(2)基礎情報②東京男子校の実受験者率に教育の未来の予感。

★今年の東京エリアの男子校は、受験市場のプレイヤーにとっては、いわゆる最難関校・難関校・準難関校の応募者増に身震いし、実際合格はなかなか厳しいという結果になったという実感が濃厚でした。また、有名大学付属校の人気傾向も続き、芝浦工大附属、法政付属校、日大付属校も厳しかったという声を聞きます。

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★実際に、首都圏模試センター調べのデータの「実質倍率」をみるとその実感は裏付けられるかもしれません。

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★複数回数の入試が多いので、今回は2月1日の入試に絞って出してみました。東京>男子中高一貫校>2月1日入試志望者数・実質倍率という具合に。そして、実質倍率の前年対比を出してみました。

★やはり、昨年より跳ね上がっています。2月1日の男子校の71%の実質倍率が跳ね上がっています。実感に適合する数字だとみなせるかもしれません。昨年の実質倍率の前年対比も出して、今年との差を出して、跳ね上がりの幅の大きな順に10校を並べてみると、次のようになります。

 1:芝浦工業大学附属 (第1回)
2:佼成学園 (第1回・一般入試,2科)
3:暁星 (一般入試・第1回)
4:東京都市大学付属 (一般入試、第1回・Ⅱ類,4科)
5:攻玉社 (第1回)
6:巣鴨 (第Ⅰ期)
7:日本大学豊山 (第1回)
8:高輪 (A日程)
9:佼成学園 (第1回・一般入試,4科)
10:早稲田 (第1回)

★実感通りです。4科目2科目入試中心の男子校で、大学合格実績がアップまたは有名附属大学の保障がある程度あり、かつ入試改革や攻玉社や巣鴨のようにグローバル教育に力を入れているような男子校ばかりです。

★だから、男子校の応募者増の勢いはたしかにあったのだと思います。

★しかし、この4科目2科目入試の男子校受験者数増が、全体の首都圏中学入試増に大きく寄与したかというと、それは必ずしもそうではありません。

★たしかに、今回調べた東京エリアの2月1日の男子校34件の総応募者数は、13,637人で、前年対比105%です。しかい、一方で、ニューウェーブの共学校の人気が高止まりしたのが今年の特色でもありますから、そこから男子校にシフトしたと考えられてもいます。

★また、前述で実質倍率の前年対比が増えた男子校は71%と指摘しましたが、これは昨年も同じように71%だったのです。増えた学校減った学校のランキングの入れ替わりは起こっていますが、4科目2科目入試の全体の傾向はそんなに大きく変わっているわけではないのとみなすこともできます。

★だから、首都圏中学入試の受験者数増加分=男子校応募者数増加分というわけではないでしょう。

★ただ、4科目2科目入試をベースにしている男子校が何もしないで、この状況を生みだしたわけではありません。芝浦工大附属中学はICTや建築分野で人気の高い工業大学の附属校で、中学自身も共学化を予定しているなどキャンパス移転、新校舎につづく改革を矢継ぎ早に実行しています。そういうところに人気が集まれば、質的な面から言えば、4科目2科目入試ベースの男子校に注目が集まているのではないかという感情が高まるのは当然です。

★日大豊山男子の人気も、昨年は日大問題がありましたから、その反動と同時に、大学定員厳格化政策で、大学入試が難化しているという情報が中学受験市場でも浸透していますから、有名大学付属校の人気傾向に乗っているわけです。

★攻玉社はもともとですが、巣鴨がグローバル教育にも力を入れるカリキュラムの革新化を行っていますから、大学合格実績とグローバル教育の両要素を有した難関男子校はやはり人気です。算数一科目入試を行う入試改革などで注目を浴びた世田谷学園も大学合格実績とグローバル教育の両要素を備えています。

★そんな4科目2科目入試ベースの男子校の中で、思考力入試でも注目を浴びている聖学院が上記の表のランキングに食い込んでいます。実質倍率前年対比増の2月1日男子校入試24件の内唯一聖学院の<ものづくり思考力入試>だけが、多様化入試ベースの男子校としてランキング入りしているのです。

★この男子校の状況は、おそらく中学入試全体の傾向の縮図ではないでしょうか。

★4科目2科目入試ベースの男子校と多様化入試ベースの男子校も、これまでは、偏差値VS脱偏差値という図式で見られてきましたが、以上のように見てくると、両者の人気の要因には、なんらかの革新的な動きという共通点があるとみなすことができます。

★この革新的動きが、入試改革のみならず、カリキュラムの革新化という質的変化にまで到っているというコトでしょう。

★すなわち、中学入試市場で、塾・受験生・保護者は、入試改革(入試日変更、手続き日の変更など入試要項に関する改革)や大学合格実績などわかりやすい量的変化の動きをみているだけではなく、各学校のカリキュラム革新化の質的変化にも着目するようになったということでしょう。

★4科目2科目入試ベースの男子校の応募者数が増えているその背景には、入試改革とカリキュラム革新化の両方を行っている中学に人が集まっているということでしょう。そして入試改革に新タイプ入試という多様化入試が全面的に加わることによって、4科目2科目入試準備以外の思考力ベースの学びに集中してきた新たなタイプの受験生が中学入試市場に参加してきたということでしょう。

★教育の質の高い芝中学が、実質倍率前年対比増のグループにここ数年入っていないことは、少し心配ですが、そのカリキュラムの質を発信する改革を行うだけで、すぐに回復するということが、今年の傾向から予想できます。

★偏差値VS脱偏差値の構図が、新タイプ入試という多様化入試改革とカリキュラム革新化によって、相対化され、偏差値や大学合格実績も評価軸の一つという冷静な見方が中学入試市場に広がる動きがはっきりしてきたのが2020年中学入試の傾向だったのではないでしょうか。

★偏差値は学校選びの指標というより、4科目2科目入試の合格戦略をたてるときの参考データです。

★新タイプ入試という多様化入試は、思考コードとシンクロするルーブリック評価が活用されています。したがって、「思考コード」という多面的評価は、新タイプ入試、とくにその中でも実施率の高い適性検査型入試の合格戦略をたてるときの参考データです。

★<思考コード>が、新タイプ入試のルーブリックと大きく違うところは、A軸領域は偏差値の指標が含まれているということなのです。ですから、今後合格戦略を立てる時、4科目2科目入試も新タイプ入試も<思考コード>によって多面的な評価軸に対応できるということになります。

★2021年以降は、多面的評価軸である<思考コード>が広まるということであり、中学入試市場は、多彩/多才な才能を有した生徒が参加する新しい学びの場として変容していくということでしょう。

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京都のノートルダム 動き出す(10)<ND哲学カフェ>ND生と人類の子どもたちへの架け橋。

★2時間続きの高1の<ND哲学カフェ(ノートルダム女学院哲学カフェ)>。高1は全クラス順次<ND哲学カフェ>を体験していきます。8人から12人で1チーム。1つのチームが哲学対話を行っている時に、もう1つのチームが見守りながら、気づいたことをワークシートにノートテイキングしたり、哲学対話の内容をホワイトボードにスクライビングして整理したりしていきます。4チームが大きく2グループに分かれて哲学対話は行われるのですが、ちゃんとルールがあります。

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★何を言っても自由だという確認とただしそれを阻害するコミュニケーションはとらないというルールです。梶谷真司さんの哲学対話のルールを参考にしていますが、もともとは聖書のゴールデンルール(黄金律)にあるものです。「あなたが人にしてもらいことを人にもしなさい」という『マタイによる福音書』7章12節と『ルカによる福音書』6章31節の言葉です。

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★このゴールデンルールは、ニューヨークの国連本部の平和を祈るギャラリーにディスプレイされているノーマン・ロックウェルのモザイク画に刻まれています。国連は、この言葉はキリスト教に限定されることなく、宗教、民族、性別、身分などを超えて通じる普遍的なルールであるとしてディスプレイしているのです。

★また、心理学では、マーシャル・B・ローゼンバーグ博士が“NVC:Nonviolent Communication”という本を書いていますが、何気なく人は他者を傷つけるコミュニケーションをしてしまっていますから、それに気づき、共感できる対話創りのためのNVCの意義と方法を実践的にまとめています。世界各国で翻訳されて、ワークショップも各国各地で行われています。カール・ロジャーズの流れを汲んでいますから、エンカウンターを取り入れている学校の心理学的ワークショップともすぐに共感共振できる考え方です。

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★哲学対話の足場づくり、すなわち、発言と思考する自由が担保されている安心安全な環境をつくることは、<ND哲学カフェ>のルールであり、世界標準のルールだったのです。

★Big Questionは「校則は必要なのか?」というものでした。批判的思考力を有している生徒は、すぐに結局校則は必要ということになる話ですかと。その生徒は、しかし、この先入観や固定観念を転換することになるのです。

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★哲学対話は、最初はファシリテーターが必要です。どんな校則があるのか「事実と意見」を区別する思考スキルを使うことなどを、「問いのシート」を媒介に対話を活性化していきます。

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★この思考スキルを「問いのシート」(NHK制作)にして活用するアドバイスをしているのは、NHKの哲学対話の番組です。監修の1人にあの河野哲也(立教大学教授)さんがいます。河野さんのアイデアですが、山川先生が河野さんの哲学対話をリサーチしていた時発見したとのことです。思考スキルをわかりやすく自問自答できる「問いのシート」として可視化しているのですね。

★サークルに座って対話をするのですが、足元にその「問いのシート」を置いてありますから、何を考えようかと迷ったときにヒントになります。教育心理学者ヴィゴツキーだったら「最近接発達領域」を発見しやすいねと言ったでしょう。

★そこから髪の毛に関連する校則などについて対話や議論がだんだん白熱していきました。テーマが自分事になっていたのでしょう。

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★はじめは、ルールに対して自分都合の感情をぶつけていたのが、なぜルールが必要か他者との関係を考えるように展開していきました。そして、その関係の捉え方が本人たちはこの段階では自覚していませんが、リバタリアン的な価値観にもとづいて発言していたり、コミュニタリアニズム的な発想で語っていたり、リベラリズム的な発想で語っていたりしました。なぜかコンサバはいなかったのは、必要なものと変えるものがあるという変化を受け入れたりつくったりしようというモチベーションが湧き起っていたからだと三井先生はファシリテーターの役割を演じながら感じたといいます。

★そして、4チームすべて哲学対話が終了したら、互いにチームでどんな哲学対話になったか情報交換し、個々人リフレクションシートに記入しました。哲学対話を通して語りたいこと考えたことが内側にあふれ出たので、シートは言葉でいっぱいになりこぼれていました。

★最初に哲学対話を予定調和の思考の誘導だと感じた生徒は、もはや変えるべきものは変えるのだけれど、その根拠と変える基準の議論は深める必要性があることに気づいたようでした。

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★<ND哲学カフェ>の霜田先生とのミニリフレクションの際に、それをどのようにアクションに結びつけるのか、手続きルールの仕組みなどを学ぶ機会も用意する必要があるなど語り合っていたようです。市民が行う<哲学カフェ>とは違って、開かれたままで終わるわけではありませんでした。

★<ND哲学カフェ>は授業の一環です。次々とBig Qustionが発見され、その扉が開かれ、探究の道に接続していくことになるのでしょう。探究アクションに開かれた<ND哲学カフェ>の今後の進化が大いに楽しみです。

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京都のノートルダム 動き出す(9)ノートルダム女学院中高の哲学カフェ 哲学と保健体育のジョイントの意味。

★ノートルダム女学院(「ND」と表記する場合もある)はカトリック学校であるから宗教という授業があるのは当然ですが、キリスト教神学のみを学ぶ場ではありません。もちろん聖書を学びますが、欧米の生活や文化、学問の土台となった倫理や思考様式、そしてもちろん、世界の宗教などIB(国際バカロレア)のTOK(Theory of Knowledge)でも取り扱われる部分をカバーしていると言った感じです。

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(<ND哲学カフェ>で生徒と対話する三井先生と山川先生の豊かな表情。<ND哲学カフェ>は、保険体育の三井先生と宗教の山川先生がコラボレーションしてデザインしています。)

★しかしながら、TOKはかなり専門的すぎるし、選ばれし生徒が受講できるプログラムになっています。それに対し<ND哲学カフェ(ノートルダム女学院の哲学カフェ)>は、グローバル市民として探究しているND生徒みんなが学べる哲学対話としてデザインされています。

★保健体育の三井先生と宗教の山川先生は、そんな哲学対話の場をコラボレーションして<ND哲学カフェ>としてデザインしていますが、三井先生は生徒1人ひとりが自分とは何か深めながら固定概念や先入観にとらわれることなく自らを開放し、広い視野で思考し判断しアクションを起こせる自己変容型能力を高めてもらいたいし、自らを開放/解放するには、他者に素直に頼れる自分がいてもよいのだということを互いに尊重し、受け入れられる関係をつくれるようにもなってもらいたいと語ります。

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(<ND哲学カフェ>終了後の振り返りを同僚の社会科の霜田先生といっしょに。霜田先生も哲学科出身で、自身の社会科のPBL授業に哲学対話的手法も活用しています。)

★山川先生は、宗教という科目のアプローチから、法というものが、歴史の流れの中で社会構造の変化が起こり、その中で人間は様々な困難に直面するわけですが、そうした時にどうやってそれを乗り越えるルールができあがってきたのか法の立体的な根本の生成の源泉まで想いを馳せらえるようにしたいと。別の言い方をすると、欧米の哲学教育の中で当たり前のように生徒が考える法と自分と自由の関係をNDの生徒にも考える視点をもってもらいたいと言います。

★もちろん、そこには、実定法、習慣法、自然法、新約という新法、旧約という旧法などのカトリック的なそして西洋の社会を支えてきた法の概念への教養も身に着けてもらいたいという想いもあるでしょう。NDの生徒がグローバル市民として社会で活躍していくときに、様々な葛藤に直面するでしょう。そのときには国内的な基準だけでは解決のつかないことがあると思います。

★そんなとき、法というものが客観的な制度としてあるものではなく、人間との関係、社会との関係、自然との関係、文化との関係、価値との関係、倫理との関係など多様な関係を調整し、自由を回復するロゴスだったということを知ることは、法の制度設計に自らも直接間接かかわることができることに気づけるでしょう。そのとき、法の根源に立ち還り、葛藤を解決する対話ができるのです。

★そんな深い先生方の深い考えが前提になって<ND哲学カフェ>が成り立っているのだという話を授業終了後の振り返りでお聞きして感動したと同時に、<ND哲学カフェ>をデザインする準備において、先生方も文献リサーチや自らも多様なセミナーやワークショップで探究している話も聞けました。本当に頭が下がります。

★そして、もしこのジョイントがなければ、生徒は保健体育で自分の成長という内面を深めていくことはできるでしょうし、宗教の時間に、法と自分と自由の関係を壮大な西洋史というパースペクティブの中で学ぶ教養を身に着けることができるでしょう。

★しかし、両教科が結びつくことによって、自己の内面の成長と法と自分と自由との関係がむずびつき、社会の中での自己成長と自己成長が社会を変える可能性を見出せるようになる相乗効果が生まれると気づきました。

★お二人の先生が<ND哲学カフェ>をデザインするときに様々な哲学者の文献もリサーチしていますが、その中の1人梶谷真司さん(東京大学大学院総合文化研究科教授)は、東洋経済ONLINE(2019年2月7日)の<哲学が「体育会系」の学問だと確信できる理由~知識取得ではなく自らの感覚変化こそ重要>という自身の記事の中でこう語っています。少し長いですが引用します。

「私はいつのころからか、自分がものを考えている時の身体感覚に敏感になった。思考が深まる時、広がる時、行き詰まる時、それぞれ特有の感覚がある。こっちに行ったほうがいいとか、この方向で考えても仕方ないとかいう予感まで何となく体で感じる。

以来私は、哲学は体育会系の学問だと思っている。すなわち、知的というより、身体的な活動であって、何をもって「哲学的」と言うのかは、スポーツと同じで、実際に自分で経験してみて、体で感じるしかないのだ。哲学対話をやるようになって、その確信はいっそう強まった。

哲学対話においては、他の人との位置関係、机の有無、相手との距離、さらには、自分や他の人の姿勢、息づかい、眼差し、表情も思考の質と連動している。だから、対話が哲学的になった瞬間は、感覚的に分かる。全身がざわつく感じ、ふっと体が軽くなった感じ、床が抜けて宙に浮いたような感覚、目の前が一瞬開けて体がのびやかになる解放感、などなど。

人によっても違うし、深まったのか広がったのか、思考の質的な違いもあるだろう。ずっしり重く感じる人もいれば、モヤモヤしたある種の不快感を覚える人もいるだろう。だがそれでも、どこかに気持ちよさがある。人それぞれかもしれないが、哲学対話には、やはり普段は味わえない特殊な感覚があるように思う。」

★保険体育の三井先生と宗教の山川先生の哲学対話のコラボレーションは、かくして必然的だったのです。

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2020年2月25日 (火)

京都のノートルダム 動き出す(8)ノートルダム女学院中高の哲学カフェ。

★銀閣寺から哲学の道を歩いていると途中でノートルダム女学院への道に続きます。

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★京都の歴史の名所はたくさんありますが、京都大学の近代日本の文化を醸成することへの貢献もまた大切なリソースです。

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★20世紀末まで大学入試問題でも扱われてきた現代思想にも西田幾多郎をはじめとする京都学派の影響は大きかったのですが、21世紀に入って同時多発テロやリーマンショック、3・11をはじめとする世界で起こっている自然の猛威、環境破壊による以上地球規模の異常気象などに急襲されている私たちの生活の変化に現代思想は一時期ムーブメントは去ったかのようでした。

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★しかし、ICTやSNSの急激な進化とAIという人工知能の出現によって、もはや自然も社会も生徒たちを取り巻く環境はあまりのリスクとその制御の難しい予測不能な時代を迎え、学者や思想家の考えを理解する程度の学びでは生きて行く道を自分の力で歩んでいけない不安が膨らむようになってしまいました。

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★そこで、世の中は再び<哲学>が求めらっるようになり、新学習指導要領でも「主体的・対話的で深い学び」が採用されるようになりました。ただし、ここで求められている<哲学>は、哲学者などの専門家による哲学用語を使ったものを学ぶのではなく、市民や子供たちが自分たちの生活していく言葉で語り合い考えることを意味しています。

★<子どものための哲学>ワークショップや<哲学カフェ>は各地で開催されるようになり、そのリーダー的存在で、今では大学入試問題の素材として採用される程人気になった立教大学教授の河野哲也さんは、たてば豊島岡女子中高でも講座を持つまでになっています。

★哲学カフェで大切にされるようそは「相互尊重」「共感」「対話」です。そしてそれを「行動」の糧にすることですが、実はこの要素はルソー、カント、ヘーゲルと続くフランス革命前後の近代哲学の精神と共通しています。そして「ノートルダム教育修道女会」の創設者マザーテレジア・ゲルハルティンガーもその洗礼を受けています。「尊重」「共感」「対話」「行動」は、ノートルダムのミッションコミットメントでもあるのです。

★ノートルダム女学院中学校・高等学校においてもこのことは当然なのですが、それをもっともっと教育活動の中で実現していこうと、思考型授業として21世紀型スキルを活用するアップデートがなされているのです。その一つの実践のケースが「哲学対話」をベースにした「哲学カフェ」授業です。

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★保健体育の三井先生と宗教の山川先生によるコラボレーション哲学授業が展開していきます。

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★教科横断型で、正解が規定されないビッグクエスチョン(BQ)について、いろいろな角度から対話されていきます。対話する時に思考が止まりそうになったら、そこをサポートする21世紀型スキルの1つである「思考スキル」も用意されています。

★国際バカロレアのプログラムの1つTOK(知の理論)にも共通するBQや思考スキルが使用されていますが、IBのように選ばれた人間が学ぶプログラムではなく、同質の思考や対話をノートルダム女学院すべての生徒が学ぶことができるプログラムです。

★この哲学対話の授業は、ある意味PBLや探究のときにも必要な知のアプローチの基礎をつくるとも考えられます。極めて重要な授業です。ノートルダム女学院の生徒が全員学べるのです。オール哲学授業は、ノートルダム女学院の際立った教育活動の1つになるでしょう。(つづく)

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2021年中学入試を読み解く準備(1)基礎情報①

★2月23日(日)、首都圏模試センターは「塾対象中学受験セミナー」を開催。場所は、4月から共学化し校名変更もした品川翔英中学校・高等学校。同校理事長小野時英先生の挨拶からスタートしました。首都圏模試センターの模擬試験を採用している塾を対象に、同センターの新しいサービスの説明が中心のセミナーです。

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(小野理事長は、品川翔英の応募は中高とも順調にスタートできたと語った。この動きも2021年中学入試動向の新しいウネリの合力の1つ)

★中学入試情報の共有もそのサービスの一環です。同センター教育研究所北一成氏、しゅとcommuサポーター市川理香氏、同センターCPPリーダー立石哲也氏がパネリストとなり、多角的なアプローチや視点で語りました。私もしゅともしリサーチフェローの立場で、司会の役割を果たしました(汗)。

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★新タイプ入試の増加で、首都圏中学入試の受験人口は増えていますが、2020年中学入試は単純に新タイプ入試の増えた分が上乗せされたという単純な話で終わらないのが、今回の質的なテーマだったと思います。

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★4科目2科目入試を中心としている中学の動向もかなり動きがあったからです。

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★また、新タイプ入試もプログラミング入試などその種類はさらに多様になり、適性検査型入試や思考力入試などで問われる深い思考力の質の向上など中学入試は量的リサーチと質的リサーチの両方が必要になってきました。

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★今までは、量的リサーチを中心に中学入試動向は分析出来た部分が大半だったのですが、入試の質までリサーチしていく必要性がでてきたのは、2020年中学入試の動向の大きな変化です。

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★4科目2科目入試と新タイプ入試の質的な接近が、首都圏中学入試市場に相乗効果をもたらすというのが、仮説の1つですが、それも含めて、2021年の中学入試を読みとく準備をしていきたいと思います。

※データや図は、首都圏模試センター作成。

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京都のノートルダム 動き出す(7)ノートルダム女学院中高の内なる通奏低音が奏でる新しい響き。

★ノートルダム女学院の精神的ルーツは、1833年にドイツバイエルン地方に創設された「ノートルダム教育修道女会」。創設者マザーテレジア・ゲルハルティンガーの進取の気性に富んだ精神にあるというのは、このシリーズで繰り返し述べてきました。100年周期で起こる産業革命・市民革命のパラドクスを解決する教育イノベーションをその都度創発してきた「教育修道女会」です。しかも、19世紀初頭から、いやだからこそなのかもしれませんが、女性による修道会です。

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★その後、世界へその布教活動は及ぶのですが、京都のノートルダム女学院は、米国のノートルダム教育修道女会が創設しました。これは実に重要な意味を持っているはずです。というのは、米国というのは、アメリカの政治学者ロナルド・イングルハートらのWorld Values Survey(2010-2014)の調査によると、ポスト産業化時代に入っているにもかかわらず、宗教的な伝統的価値を他の先進諸国に比べると大切にしている国のようです。

★プロテスタントの国なのですが、イギリスや北欧とはまた違います。そんな中でカトリックの修道女会が活躍する意味とは何か?これは追究しなくてはなりません。少なくともそこから通奏低音が響いています。米国の大統領はその多くが米国聖公会出身です。要するにプロテスタント信者が圧倒的なのですが、ケネディ大統領は唯一カトリック信者でした。バイエルン時代は、まだドイツという近代国家が成り立っていなかったのですが、近代国家になってからはドイツもやはりプロテスタント信者が圧倒的です。そんな中で、マザーテレジア・ゲルハルティンガーは、カトリックの修道女会を立ち上げたのです。

★ですから、ミッションスクールとして、あるいはカトリックの学校としての一般的なミッションだけではないある特別な使命を帯びているのかもしれません。いずれにしても、ノートダム教育修道女会は、第一次産業革命の経緯の中でドイツで、第二次産業革命の経緯の中でアメリカで、第三次産業革命の経緯の中で日本でという布教活動広めていったわけです。しかも今、第四次産業革命を迎えようとしている日本社会です。京都のノートルダム女学院の果たす役割はそのルーツから考えてとても重要です。

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★いずれにしても、ノートルダム女学院は、そのルーツから言って、進取の気性に富んでいて、「徳と知」を時代の要請に対応して革新的な教育を開発し、産業革命や市民革命の光と影の交錯する中で混迷する子供たちに光の知を渡してきました。

★それは、真理を追究する目を覆い隠そうとするさまざまな問題を払拭し、真理を探究し続ける自由をサポートすることによってでしょう。その点に関しては、時代を超えて同じだったでしょう。「真理は自由にする」というのは聖書の言葉です。

★最近、知識を憶えて理解する思考だけではなく、論理的・批判的・創造的思考~国際バカロレアやCLILのプログラムでは「高次思考」と呼ばれている思考の種類です~が、希求され始めています。しかし、ノートルダム女学院は、ルーツからいっても、ここ数年のチャンレンジからいっても、すでに思考型の授業や教育活動を行ってきました。

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★先週のサンデー毎日(2020年3月1日号)にあるように、京大特色入試にチャンレジして合格する生徒もでています。医学部―人間健康科の特色入試における小論文試験は、課題文は英語と日本語の両方が出題されます。それにデータやグラフなど大量の情報も出題されます。それらを読み解き・分析しながら、社会問題を解決する方法を考案し、さらに自分事として何ができるのか、その貢献の社会的インパクトはどれくらいあるのかを問うてきます。「私とは何者か。私たちとは何者か。世界とは何者か。」根源的な存在論的問題が突き付けられるのです。

★これは、教科書を憶えて問題集を大量に解いて学ぶだけでは合格できませんね。そういう意味ではノートルダム女学院の思考型の授業や体験重視の教育活動は、役に立つでしょう。

★しかし、そんな良質の教育を行っているにもかかわらず、世間には気づかれていないというのは、人が変われば世界が変わるというマザーテレジア・ゲルハルティンガーの本意ではないでしょう。そこで、昨年夏から、教師の潜在的能力や暗黙知でなされている授業の質を見える化するリサーチが始まりました。

★そして、その過程で、先生方が対話をさらに深め、互いにつながるものがあるのではないかという新しい響きが奏でられ始めました。各人のクオリティがつながるとき、あるいは共振する時、相乗効果が生まれます。その響きはやがて世に広がるでしょう。

★そのような動きは、私たちが直面している教育の問題もつながっているSDGsがかかげるグローバルゴールズの解決を超えてさらに先に進める原動力になると私は感じています。ですから、このことを共有することは大切な時代だと思っているのです。(つづく)

 

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2020年2月24日 (月)

京都のノートルダム 動き出す(6)ノートルダム女学院中高の内なる通奏低音が響きだす。

★小学校入試が中高入試より3月ぐらい前に実施されます。そのため、ノートルダム小学校が先に外部に情報を公開し始めましたから、小学校が先行して動いているように見えますが、ノートルダム女学院も昨年夏くらいから先生方が一丸となってウネリをつくりはじめています。内なる通奏低音が鳴り響きはじめたのです。その響きとは何か?

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(令和2年新春教員学びの研究会の分かち合いのシーン)

★中高になると、カリキュラムは、かなり専門性が高い教科の学びとそれを縦横につなぐ探究型の学びのスクランブルが起こります。複雑系になるので、全貌をスッキリまとめることはなかなか難しいのです。

★そこを理解しないで、無理やりまとめると、大切なものを削ぎ落して進んでしまうリスクがあります。かといって、そのまま複雑系を放置しておくと、カリキュラムは拡散し、雲散霧消していくのはエントロピーの法則です。生徒は自分の足場をどこに置いているのかわからなくなり、進むべき星座を見失います。

★ノートルダム女学院の先生方1人ひとりは潜在的能力が高く、暗黙知に基づいて創意工夫しています。しかし、その潜在能力や暗黙知のクオリティというものは、目に見えないもので、世の人びとは、どんなに大切な本質的なものでも、目に見えないものはスルーしてしまうというのは世の常です。

★世の中は、わかりやすい偏差値や大学合格実績で、右往左往するというのは、今始まったばかりではありません。戦後学歴社会が進行する中で、その指標が岩盤のように多くの子供たちの才能開花を阻害する重石になってきました。戦後日本にやってきたノートルダムのシスターは、そうならないように活動してきたのですが、そう簡単ではありませんでした。しばらく、ノートルダムはいばらの道を歩んでいくことになります。

★ノールダム教育修道女会の願いとは反対の方向に日本社会は動いてしまったわけです。そのことが、日本社会にどんなネガティブな影響を与えてきたかは、3・11以降、戦後の日本の政治経済社会、産業社会がどんな酷いことをもたらし、閉塞状況を生み出してきたかを明らかにしました。もはや説明するまでもないでしょう。

★NHKがミヒャエル・エンデの社会に対するメッセージをドキュメンタリーで追跡して以来、欲望の資本主義のリスクに対する警鐘を、特集で手を変え品を変え放映してきました。なんとかそこから脱することはできないのかと。

★表面的な大学入試改革は、どうしようもないことになっていますが、その根っこは、NHKの編集方針と、政府とメディアの関係からいって、問題もあるでしょうが、今はそれは括弧に入れておいて、ともかくもシンクロしています。それはSDGsの世界の動きとも連動していて大いに結構ですが、そのための21世紀型教育は、まだ始まったばかりです。

★この教育は、こんどこそ第4次産業革命やソサイエティ5.0社会に移行した時に、かつての改革革命が必ずそうだったような光と影のジレンマを生むことがだいような創造的才能を子供たちに開花してもらうことが目標でもあります。

★そうなってくると、20世紀産業社会の修正工業化時代の延長上で21世紀型スキルを伝授する教育では、脱却できません。新しい脱工業化時代や経済社会の構想力と実現力を生み出す真/新の21世紀型スキルの開発が必要になってきます。

★となると、ノートルダム女学院の出番です。「恐れることはない。遠くにいくには、みなで協力して歩いていくことだ。すると、時は経っても後から栄光は必ずやってくる。」そうカトリック精神の通奏低音が鳴り響きだしているのです。

★学歴社会に与することをせず、その後からゆっくり歩きながら時の来るのを待っていました。そのために本質的な「徳と知」を積み上げてきたのです。その潜在的能力の無限の可能性を有しているノートルダム女学院だからこそ、今こそ出番なのです。(つづく)

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京都のノートルダム 動き出す(5)未知の知識が運命の探究の扉をたたく!

★梅下先生は、ウオームアップ“PI(Peer Instruction)”のあと、すぐにコンセプトテスト(マズール教授がPIで活用する多肢選択の問いに名付けた。知識から知のコンセプトに到達するという意味だと思います。コンセプト×テストの融合名称です)のフィールドにグーグルクラスルームで招待。保護者の方は、またも一斉にQRコード撮影会です。もうすっかり慣れたという感じでした。

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★コンセプテストのマテリアルは、小5の生徒にとっては初めて見る魚です。私たちも初めてという人が多いかもしれません。未知の知識から始まるのが梅下流コンセプテストの肝です。

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★選択肢の分布はバラケました。保護者は生徒と同じように「オオーっ!」ということになります。ここから再度推理のブラッシュアップ対話が始まるのですが、ミニワークショップなので、そこはショートカット。生徒の疑問にワープしました。

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★同じ授業を小5でやったとき、この対話を通して深海魚だと分かった段階で、ある生徒が疑問を投げかけてきたというのです。深海魚といえば、海面からでてきたときに、浮袋や目が飛び出るのに、なぜこの深海魚は海底にいるままの姿なの?と。

★これですね。好奇心、対話による開放的精神、そしてなぜなに?という疑問が湧きおこる。この3要素は天才物理学者ファインマンの科学者の精神の3要素でもありますね。

★梅下先生は、このような疑問を教科書にはないから拾わないということはしない。むしろ積極的にキャッチすると。実は自分もこの深海魚については十分に調べがついていなかったから、教師と生徒がいっしょに学ぶという思考型の授業が深まっていくのだと。

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★その場合、まずは、理科の基本的重要な思考スキルである<比較・対照スキル>を活用するのですと。この深海魚と鯛を比較して、その違いや共通点をチームで対話するという段乗りになるのだということで、ここは保護者の方にも近くの方々と対話してもらうことになりました。そしてグーグルクラスルームに書き込んでいきましたが、時間が限られているので、同じようなことをやったとき生徒はこんな感じでプラットフォームに書き込むから、共有できるのですと画像を紹介しました。

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★いろいろな考えがあることに生徒は興味津々になるというのです。同年齢の友達なのにこんなにものの見方や考え方が違うと、生徒自身が感じます。大事な「徳」の領域が広がります。そのうえで、互いに尊重して、未知の知識を知へと深めていきます。このときの生徒は、まさに運命的ともいえる知の探究の扉をたたくことになるでしょう。

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★なんて大げさなと思うかもしれません。しかし、子供にとって未知の知識との出会いは運命的なぐらい極めて重要な出来事なのです。いや大人もいっしょうですよね。

★私たちは、その運命的な知の出遭いとの機会を、教科書で知識を先に教えて、奪ってきたのかもしれません。運命的な感動的な知の学びの経験の回復。ノートルダム小学校のチャンレジはいよいよ大きく動き始めたのです。

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京都のノートルダム 動き出す(4)徳と知の現代化ワークショップ。好奇心・開放的精神・なぜ?が広がる授業体験。

★チャレンジノートルダムは、おそらく日本で初のスタイルの体験型説明会だったと思います。というのも、子どもも保護者も学びの体験をするワークショップに参加できたからです。

★総合企画室課長の高谷さんの明朗快活な総合司会は、講堂の保護者に授業の世界に連れて行きます。小学校5年生になりましょうと巻き込んでいきました。そこに梅下先生が登場です。

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★小学校5年生の理科の授業の体験です。わずか20分くらいの体験ですが、未知の知識への好奇心の立ち上げ、対話による開放的精神の開き、なぜなに?という疑問が生徒の内側から湧きおこってくる体験が展開していきました。好奇心・開放的精神・疑問の湧きおこりこそ、「徳と知」の授業の反映です。

★この「徳と知」が、予測不能な時代に対応した先進的にアップデートした授業に反映しているのです。まず、梅下先生は、保護者とスマホでやりとりできるか練習するところからはじまりました。もちろん、練習なんて無粋なことは言いません。ナチュラルにはいりました。私は何の教科を担当しているでしょうと。

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★QRコードでグーグルクラスルームに招待しました。パッといっせいにスマホが立ち上がりました。まるで撮影会のようです。ふだん生徒はタブレットで同じように授業に臨みます。この段階で、保護者は一体何が起こるのだろうとワクワクしたことでしょう。生徒と同様マインドセットからはいることになたったのです。

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★グーグルクラスルームのプラットフォームにはいると、コンセプトテストという選択肢があります。未知のものに対し、思い巡らし、予想するという<推理>の過程が始まります。選択肢を選ぶと、上記のように、リアルタイムでデータで現れてきます。梅下先生の印象は、理科教師、体育教師の順に多くなりました。タブレットを使って授業のワークショップを説明会で行うのだから、理数系だろうと推理したのか、元気が良いのと身体ががっちりしている(学生時代ラグビーの選手でした)ので体育だろうなどと推理したのでしょう。自分なりに条件を考えて推理する過程が大切です。

★今回はミニワークショップだったので、そこはショートカットしましたが、このあとデータを見て対話して、もう一度選択します。すると、データの分布が変わります。対話によって推理をブラッシュアップしていきます。体験から獲得した知識や知恵を、未知なるものに適用し、互いに違う点を焦点化して対話していくっことで、推理の修正をしていきます。ピアジェ派の学習理論も背景にあります。

★このようなよくある初印象をどう感じるかという現象も、梅下先生にかかっては、学びのマテリアルになってしまうのです。この入り方は実はハーバード大学の物理学のマズール教授が“PI:Peer Instruction”として開発したもので、京都大学で行われた教育者のための研修会に教授は招かれて多くの先生方が体験したものです。私も参加しましたが、たんなる知識問題だと思った問いが、深い学びへの入口、好奇心・開放的精神・疑問の湧き起こりを誘発する体験にわくわくしたのを今でも覚えています。

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(昨秋の梅下先生の理科の授業シーン)

★梅下先生を始め、ノートルダム小学校の多くの先生方のは、ふだんから電子黒板やタブレットを有効活用して授業を展開していますが、たんなる調べ学習やプレゼンのツールだけではなく、知的好奇心が主体的に立ち上がる方法はないかと昨秋模索していました。アップデートは先生方の生きがいだと言います。研修会や文献リサーチなどでマズールの“PI”に行き着いたのでしょう。

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(PIの開発に先生方が協働しているシーン)

★しかし、マズール教授が当初開発した時には、グーグルクラスルームはなかったので、ICTの道具や環境はあまり使い勝手はよくなく、しばらく日本ではトレンドにはなりませんでした。しかし、梅下先生方は、このクラスルームのプラットフォームを自在に使えるので、すぐに“PI”をマスターし、もっと先に飛んだようです。

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(松谷先生の社会科の授業のシーン)

★その先進的な授業を通して、「徳と知」という普遍的な精神を、保護者は、20分のミニワークショップで体験できたのです。

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★しかし、そうはいっても、準備は涙ぐましいものがあったに違いありません。学校の教師は何せ忙しいのです。仲間に支えられながら、合間をみて、ブレストミーティングも繰り返したことでしょう。

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(自分たちが行っている授業のクオリティを共有するブレストミーティングのシーン。暗黙知が言語化されつながるときブレイクスルーが起こります)

★私もファシリテーターとしてときどき参加しましたから、先生方の情熱と子どもへの想いに共感し、背筋が凛としたのを憶えています。(つづく)

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京都のノートルダム 動き出す(3)徳と知の現代化。

★ノートルダムチャンレンジ説明会は、子供たちの体験学習会と同時開催で行われました。ノートルダム小学校の精神のルーツは、1833年に「ノートルダム教育修道女会」を創設したマザーテレジア・ゲルハルティンガーの精神にあります。

★世界の歴史は不思議なことに100年周期でイノベーションが現れます。そしてその後に必ずと言っていいほど生まれるパラドクスである影。そこで困惑し追いつめらる子供たち。そのたびに、「ノートルダム教育修道女会」は、その時代にあった真/新の教育イノベーションで子供たちをサポートしてきました。「教育修道女会」ですから、「時代にあった真/新の教育イノベーション」でその都度普遍的精神を取り戻すことこそミッションだろうだからです。

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★名誉校長シスターベアトリスは、その時代にあった教育を生み出す重要なマザーテレジア・ゲルハルティングの精神をまず語りました。それは「徳と知」であると。英語に訳すと“ Virtue and Knowledge”。ラテン語だと “Virtus et Scientia”です。ですから、一握りの人間にとって都合の良い道徳や暗記するだけの知識を意味するものではありません。国際バカロレアの“TOK=Theory of Knowledge”も「知識の理論」と訳してはいけないそうです。「知の理論」だそうです。

★つまり、ヨーロッパの精神の土台をつくってきたカトリックの伝統の知とは知識ではなく、Scientiaだし、徳は道徳を道徳たらしめる全人的な法則です。

★しかし、戦後日本の教育はそれをすべて忘却したかのような偏差値偏重主義的な学歴社会になり、記憶的な知識がScientiaとしての知にいつの間にかすり替わってきたわけです。それが今、再び見直され、思考停止の学びから思考全開の学びへシフトする時がやってきました。ノートルダムの出番です。

★21世紀初頭は、1989年のベルリンの壁崩壊に象徴される世紀の革命とその後席巻するICTやWebのイノベーションの渦が増大し、光輝く一方で予想不能は影の部分もまた現れる時代でもあります。これについては日々のニュースで私たちは実感していることでしょう。ここに対応するべくSDGsの動きが高まっていることもご存じだと思われます。だからこそ、その動きをサポートする真/新の教育イノベーションを、ノートルダムでは着々と進めているのです。

★つまり、その「徳と知」の精神をもって、「人が変われば、世界が変わる」というマザーテレジア・ゲルハルティンガーの信念と情熱を共有したノートルダムの先生方は、すでに動き出しているのです。しかし、世の中は、まだその動きに気づいていないようです。

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★そこで、常勤理事の高橋博先生は、理事会の経営陣と現場の先生方を巻き込んで、この21世紀の第4次産業革命を迎えるにあたり、革命革新がもたらす矛盾の渦を乗り越える先生方の真/新の教育イノベーションの姿をノートルダムチャンレンジ説明会で伝えたのです。

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★どうやってか?ほかの学校ではあり得ない方法を使いました。それは、自ら先陣をきって、ビデオクルーと編集部隊を現場の先生方とジョイントし、プロジェクトをつくって、教育現場に入り、「徳と知」をアップデートした教育活動で子供たちが学んでいる姿を撮影していったのです。

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★それができたのは、高橋博先生自身が、長い間校長としてかかわった数々の学校で思考型の授業であるPBL(Project based Learning)授業を全面展開してきた豊富な経験を有しているからでした。

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★ある意味、学校広報における動画革命です。宣伝用の動画ではなく、ほぼ間違いなくドキュメンタリータッチになっているからです。昨今の現代アートではリサーチアートがムーブメントを起こしていますが、ある意味現代アート的な手法がはいっていると思われます。

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★もともと高橋博先生はアーティストだということもあるでしょう。

★チャンレンジノートルダムの説明会は、体験型説明会ですが、それは子供たちだけのものではなかったのです。講堂で行われた保護者向けの説明会も体験型だったのです。高橋理事のあと、理科の梅下先生がその動画から飛び出してきて授業のさわりのワークショップを保護者とやってのけます。

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★そのあと、広報の綾田先生がリフレクションとしての説明をしてまとめます。「理念→動画体験→ワークショップ→振り返り」というノートルダムの思考型授業さながらの説明会になったわけです。人が変われば世界が変わる。自己変容能力の高い教師が授業をアップデートし、説明会をアップデートし、学校をアップデートし、世界をアップデートするという準備が整ったことを子供たちと保護者と共有する説明会となりました。

★一粒のカラシだね(マスタードの種)が、かけがえのない生態系を生み出すと聖書にあります。まさに世界を変えるカラシだね戦略はノートルダムから始まろうとしているのです。(つづく)

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2020年2月23日 (日)

京都のノートルダム 動き出す(2)多様な才能を受け入れる教育。

★今回のチャレンジノートルダムの説明会は、この時期に開催するのは初めてだそうです。にもかかわらず、いきなり体験型の説明会を開催できるとは、日ごろから経験を重視したワクワクするような学びが行われているからできることだし、この体験重視の学びは、先生方がワンチームになっていなければなかなかできないものです。

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★それに、なんと在校生がおもてなしをしていたし、ファシリテーターとしてかいがいしく動いていました。体験型説明会は、日ごろの教育の質が全部映し出されますから、やろうと思っても、なかなか踏み出せないのが現状です。ノートルダムはそこをなんなくやってのけるのですからさすがです。

★体験は、ロケット飛ばし退会、ぴったり玉入れ、ぴったりブロックでした。ゲーム感覚でワクワクするものばかりです。とはいえ、背景にはちゃんと理屈があります。

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★子供たちは多様な知性や才能をもっています。どの体験を選ぶかは、その子供の興味と関心にかかっています。1人ひとりの好奇心を大切にしているということですね。

★また科学的な知性に興味がある子供、身体能力に優れた子供、イメージが豊かな子供というように、多様な才能を受け入れる場のマインドセットもしています。

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★それにどれにも共通しているのは、情況全体を身体で感じるセンスです。

★こうした多重知能の学習理論や就学前の子供の持っている非認知的能力を持続可能にする教育心理学の理論を学んでいる先生方がたくさんいるのもノートルダムグループの特色です。経験と実践と理論。どれも必要ですね。

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2020年2月22日 (土)

京都のノートルダム 動き出す(1)ワクワクする体験型説明会とその背景にある強靭な使命感

★京都のノートルダム小学校とノートルダム女学院中高が動き出しています。昨年夏以降、同グループは、歴史的に価値ある教育のポテンシャルを掘り起こし始める活動をはじめました。来たるべきがらりと変わる子供たちの未来の状況に立ち臨むために。

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★京都のノートルダムグループのルーツは、1833年 マザーテレジア・ゲルハルディンガーによって、ドイツのバイエルン王国に創立された「ノートルダム教育修道女会」。1833年という19世紀初頭は、アメリカの独立戦争やフランス革命後、帝国と近代国家が激しくせめぎあう時代。背景には、イギリス産業革命がドイツやフランス、アメリカに拡大した時代でもあります。

★そんな時代にもっとも苦しんだ人々の中に、女性と子どもがいます。市民革命や産業革命が光の部分だけではなく貧富の差という影の部分ももたらし、それは女性と子供の劣悪な労働条件を強いていたのは説明するまでもないでしょう。

★そのとき、マザーテレジア・ゲルハルティンガーが立ち上がらない理由はなかったのでしょう。ただし、その活動は、新しい教育イノベーションを生み出すことによってでした。<目が覚めるような新しい学びの経験>を次々と開発していったのです。

★だから、1847年 マザーテレジア・ゲルハルディンガーと4人のシスターが渡米し、貧しい移民の子供たちの教育に携わったのは必然でした。このころ米国はドイツと競争しながら第二次産業革命ともいうべき科学の大進化をもたらしています。

★今思えば、ノートルダム教育修道女会は、世界のイノベーションが起こるたびに現れる新たな貧困者や困窮者のために教育イノベーションによって救済に奔走していたということでしょう。

★1948年 米国セントルイスから修道女会の4人のシスターが京都に派遣され、1952年にノートルダム女学院中学校が設立されるのですが、戦後日本の貧窮した女子のために再び教育イノベーションを行ったのです。

★つまり、ノートルダム教育修道女会は、産業革命がもたらす光と影のうち影を光に転換する<新しい学びの経験>を生みだす教育イノベーションを使命としているのでないでしょうか。

★実は、戦後日本にやってきたのは、第二次産業革命の最後の波を朝鮮戦争によってすぐに受けいれ高度経済成長に拍車をかけた日本で起こる教育のゆがみで戸惑う女子、今でもジェンダーギャップで苦しんでいるのですが、その状態を教育イノベーションによって救済しようとしたのでしょう。しかし、実は同時に、ノイマン型コンピュータの誕生の実験場になってしまったヒロシマ、ナガサキの悲劇を生んだ第三次産業革命の兆しにも警戒をしていたのです。

★この第三次産業革命は、しかし、日本にあまり恩恵をもたらさず、第二次産業革命にしがみついて、先進諸国の中では新たな困窮が生まれてしまったのです。その象徴が学歴社会でした。

★ノートルダムグループは、この学歴社会に対しては、なかなか教育イノベーションを見つけられず、しばらく低迷していました。しかし、第三次産業革命の本当の舞台は第4次産業革命であることがわかってきた今日、まさにそこへ向かう再び疾風怒濤の時代です。

★ここで、ノートルダムは三度動きはじめたのです。第4次産業革命が影を生むのではなく、SDGsのグローバルゴールズを解決できる生徒のが世に羽ばたける教育イノベーションを開発実践するのだという覚悟でしょう。

★その最初のアテンションが、本日2月22日(土)にノートルダム小学校が開催したノートルダムチャレンジ説明会だったのです。(つづく)

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聖学院 感動の授業デザイン研究会 榊原先生の英語の授業 生徒自らが自分の存在の価値を見出す場

★昨夕、聖学院で座長の児浦先生は<授業デザイン研究会>を開催。多忙な時期であるにもかかわらず、聖学院の先生方のみならず、女子聖学院の先生方や静岡聖光学院の先生、株式会社カンザキメソッドの代表神崎氏なども参加。私もファシリテーターとして楽しませていただきました。

★今回は榊原先生の英語の授業をみんなでスクライビングして、多くの対話をしながらリフレクションし、最後は恒例の思考コード分析をしました。生徒自らが自分の存在価値や存在の輝きを見出す感動の授業。多くの共感を呼び、気づきの多い研究会となりました。2時間強あっという間でしたが、ゆったりとしたリズムで時が熟していく感じの対話でした。

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★最初の20分間で、榊原先生の授業に対する構えや具体的な授業、ペアワークの実践などについてプレゼンがありました。自身の授業を20分間で、理念から実践まで語り、実際にペアワークのミニワークショップをやって共感を広める素晴らしい編集がなされているのに参加者は皆驚愕でした。

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★映像あり、音楽あり、ロールプレイありで、授業そのものをイメージするのに十二分なプレゼンテーションでした。

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★榊原先生の授業同様、編集に創意工夫の入念な準備の質感を感じたという声もリフレクションの中ででてきたほどです。

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★プレゼンの後早速スクライビングです。いつもとは違い、今回は榊原先生のプレゼンを聞いた後、各チームでそのプレゼンの流れをみんなで協力しながら思い出してフローチャートを描き起こしていきました。今回榊原先生のプレゼンは体験的要素も入っていたので、そういう段取りになったのです。

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★チームでスクライビングを行っていると、対話が当然生まれるわけですが、そこではいろいろな角度から話が盛り上がっています。ホワイトボードにフローチャートに刻印しているときに、刻印されない大事な対話の内容があります。それを聴きながら、フローチャートが出来上がったところで、その大事な対話をもう一枚のホワイトボードにスクライビング(転写)します。

★スクライビングのポイントは、この幾重もスクライビングを繰り返すのですが、それはそのとき同時に話されている時にその場に生まれる大事な内容を拾い直すことです。

★だからこの研究会のワークショップの流れは微妙にいつも違います。ファシリテーターが必要なのもそういうわけです。

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★今回は、榊原先生が、学ぶことは何か得るための手段でない。テストの得点をあげたり、受験のためのものでも、就職のためのものでもない。そこから脱却したいのだというパッションのラグビーボールのパスがありました。

★参加した仲間は、ちゃんとパスを受け取って、そこを話していました。榊原先生は、生徒の授業に臨む<気持ち>をとても大事にしています。それが授業のプロセスのどのタイミングでどういう感情が生まれるのか仲間は対話しながらスクライビングをしていましたから、そこをもう一度スクライビングしました。

★フローチャートに沿って、「認知」「情緒」「行動」の3つの関係を対話して刻印していきました。

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★すると、当然またまた深い対話が展開していきます。その大事な部分を今度は分かち合いサークルで共有することになるのですが、その前に聖学院の学びの理論に照らし合わせました。

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★聖学院の授業実践は、独自のものですが同時に世界標準のものも考えています。そうでなければ生徒が社会に開かれていけません。そこで学習理論のリーダーでもある内田先生に、ここまでチームで対話されている内容いついて、SEL(ソーシャル・エモーショナル・ラーニング)やU理論などの鏡に反射してもらうことにしました。

★やはり、一般には授業で抜け落ちがちな生徒のフィーリングの部分がきちんと結びついているということが了解できると理論的なアプローチからも言えるのではないかと。

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★そのあとチームごとではなく、全員がサークルになって自分の想い・気づきなどを分かち合いました。静かな情熱と生徒への愛情がそこにはあふれ出たのです。もちろん、榊原先生は学習は<楽習>ですから、そこには笑いもたくさんありました。同時に榊原先生は<フロー状態>も大事にしていますから、分かち合いは深く没入していったのです。

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★その後、思考コード分析をチームごとにして、その分析したポストイットを一枚のホワイトボードに集約して、榊原先生の授業で、生徒はどんな思いを広げ、考えを深めていくのか一望できるようにしました。今までの対話が思考コードによってまた別の見え方になっていくからです。授業は多面的です。でも教師一人ではなかなかそれを意識することはできません。こういう場は本当に大切です。

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★榊原先生の中2の英語の授業は、かなり哲学的なエッセンスが埋め込まれ、ジョブスの死を直前にした存在論的なメッセージやグランドゼロなど世界の究極の痛みに直面したとき、人間はなお輝きを取り戻すにはどうするのか、生徒は考えるわけです。

★そして、そのことを世界中の人がニュースや哲学書だけではなく、ポップスやロックで歌い、YouTubeで語り掛け、授業で対話している姿を生徒と共有していきます。ICTを駆使して、教室はいつの間にか世界にワープしているのです。なんて感動的なのでしょう。

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★とはいえ、中2の英語の授業の単元は「現在完了」を学ぶ時間だったのです。実際には講演や歌の歌詞も活用していたので、仮定法過去も生徒たちは対話するパフォーマンスが仕掛けられていましたが、自分の存在を究極の時を迎えたときにどうとらえるのかというのを、現在完了や仮定法過去という言葉の時制で表現していくプログラムは理にかなっていると思いました。時制は単に文法的なスキルではなかったのです。人間は究極の経験をそうそうできるものではありません。

★ですが、その根源的な存在に触れることがなければ幸せに生きて行く気持ちを立ち上げられないでしょう。時を超えて過去に行ったり未来に行ったり、物理的に行くことのできない世界に行ったり。それには時制という言葉の法則が必要だったのです。榊原先生はその言葉の法則を使いながら対話するパフォーマンスをきちんとベースにしていたのです。

★それゆえ、思考コードの領域は、ドリル的なトレーニングの場からダイブして創造的かつ根源的な自己存在にまで至るバランスの良い授業であることが一目瞭然判明しました。

★思考コードの分析をみんなで囲んで一望しながらまた分かち合いサークルで対話をしていきました。自分の存在から世界へ行ったり来たりできるマインドセットがされていることが確認されました。中には、榊原先生の授業の隣で授業をやていると、音楽が流れていて、それに合わせて生徒が英語をガンガン言い合っていて、DJ英語授業だなぐらいしか思ていなかったけれど、こんなに深くでも英語のスキルを生徒が使いたくなるような工夫がされているなんて思いもよりませんでした。見直しましたというエールもありました。

★分かち合いサークルはリフレクションですが、その中には、参加者1人ひとりの想いも共有されます。自分の中で思い悩んでいたことも、自然と語ることになるシーンもあります。それを話しても安心な対話の関係が広がっているからでしょう。

★だからといって、どう解決するかその方法が語られるわけではありません。しかし、同じような想いでいる仲間もいることが了解できる共感的コミュニケーションの場は、再び自分が解決への道を歩く勇気を得られるかもしれません。あるいは、いっしょに歩いてくれる仲間が現れるかもしれません。

★すべての道は自分の内側からあふれでるのですが、それをせき止める壁がときどき現れるます。しかし、語って共感する仲間がいると実感した瞬間その壁が崩れるときもあります。

★感動の授業デザイン研究会はもう18回目を迎えているそうです。学校主催の研修会ではなく、ボランタリーな勉強会です。この継続自体奇跡です。続く理由は参加者にとってそんな賜物の場となっているというところにあるのだ感じ入りました。

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2020年2月21日 (金)

首都圏模試「思考コード」2021(5)小まとめ

★私たちは、子供であれ大人であれ、経験から学ぶのです。経験の中に浸り脳神経系身体全体がその経験を創り出す他者や自然と共感する時、共有できる知識をつくり感動的な情感を生みだし新たな課題に気づくのです。その共感が経験を生み出す状況に偏りがあったりすると、不十分な知識だったりネガティブな情感が生まれるわけです。そして課題に気づかないのです。

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★それゆえ、経験の最中にリサーチしたり、対話したり、議論したり、記録したり、編集したり、公開プレゼンをしたりするわけですね。そしてリフレクションをする。まさに人生はPBLなのですが、意外とそれに気づいていないのが私たちです。

★この経験から知識や情感、課題に気づく過程。そして新しい経験に適用して、ズレたら、リファインしていきながら子供が成長するのを発見したのがピアジェです。20世紀の偉大な発見、「子供の発見」と言われる所以です。

★それから、私たちと同じように未開人も経験を知識につなげていく知をもっているし、私たちが近代化の過程で忘れてしまった自然と社会と精神の循環の知恵を野生の思考として持っていることを発見したのが文化人類学者のクロード・レヴィ・ストロースです。20世紀の2つ目の発見「未開人の発見」ですね。

★そして、精神の構造を発見したのがフロイトやユングです。無意識の中に潜在的な創造性があり、それを自我と超自我の葛藤によって爆発させてきた。その爆発がネガティブな方向に行くかポジティブな方向に行くかは、フロイトとユングによって分かれるというのは諸説ありですね。ニーチェや夏目漱石もこの精神の構造を発見していたと言われています。ともあれ、20世紀の3つ目の発見「狂人」です。

★私たちは、これらが象徴するように、結界をはり、隔離してきた歴史があるし、それが今でもときどき身近なところでも爆発しています。ピアジェ、レヴィ・ストロース、フロイトらはそこを越境して公共的な世界を開こうとしたわけです。

★そしてその分断を生み出す戦略的コミュニケーション行為とそれをつなぐ生活コミュニケーション行為というカテゴリーを発見したのがハーバーマスです。公共的な世界は、戦略的コミュニケーション行為では分断されます。共感的で創造的なコミュニケーションの必要性が問われるのはそういうわけです。20世紀の4つ目の発見は「共感的=創造的コミュニケーション」です。

★さらに、これらを学習理論に変換したのがベンジャミン・ブルームでした。彼の形成的評価やマスタリーラーニングそしてタキソノミーは、第二次世界大戦後の世界の教育やカリキュラムのシステムとして議論を呼び続け、今もまだそれは続いています。国際バカロレアやCEFRは大きな影響を受けています。OECDのコンピテンシー論や昨今のルーブリックの盛隆も私たちの思考コードも同様です。5つめの発見は「タキソノミー」でしょう。

★これら5つの関数関係のパラメーターによって、様々なマーケティングや組織論、人材論が展開してきました。しかし、この5つを統合する考え方が1970年代に生まれたのです。それは地球規模の危機を救うためのものです。ドネラ・メヅウズさんらによる「システム思考」です。それが、ピーター・センゲらによってダイレクトにPBLにうながっています。

★かくして、私たちは経験から学んできたわけですが、その経験は実は第1の経験と第2の経験に分かれます。本当はもっと分かれるでしょうが、今は2つに分けておきましょう。たとえば、自然の中で戯れるのは第1経験です。実際の経験です。読書は疑似体験を含みますから第2経験です。第1経験を再構築した情報による経験ですね。

★<思考コード>と学びの関係をこれまで4回にわたって書いてきましたが、これはすべて第2の経験の話です。ですから、学びは思考コードをまだグーグルマップの上を探るように扱ってきました。あるいはシミュレーターマシンに乗って学んできたとたとえてもよいかもしれません。

★したがって、この段階では、自己変容の足場はできても、子供たちが一斉に自己変容するかどうかはわかりません。やはり第1の経験が必要です。

★しかし、だから第2経験は机上の空論だと紋切り型の批判をするつもりは毛頭ないのです。というのは、私たちは、あらゆる経験をすることはできないのです。まして他者と共に歩くことはできても、他者の経験を同じように経験することはできないのです。死の経験から直接学ぶことができないのはもっともわかりやすい例ですね。

★それゆえ、私たちの生活は、第2経験によって彩られている方が多いのです。したがって、大事なことは第1経験と第2経験のシナジー効果です。それにはどうしたらよいのか。実は私たちは、第1経験をするにも、第2経験をするにも、必ず<媒介項>を必要としています。直接第1の経験をしていながら、直接知識や情感、気づきを体得できないのです。<媒介項>が必要なのです。それゆえ、もどかしいし見失うことも忘却していることも多いし、エラーも多いのです。

★そのため、その<媒介項>の精度を上げるのが実は学びや探究の賜物で、そこを担うのがクリティカルシンキングでもあります。

★というわけで、<システム思考>こそがその<媒介項>なのです。システム思考がリフレクション機能を色々なところに埋め込んでいるのは、この<媒介項>の精度を上げるためです。

★むしろ私たちの学びは、この<媒介項>を磨き上げアップデートし、そこから汲み取ることが尽きない知恵を掘り当てているのかもしれません。そして探究というのは、シミュレーションマシーンから飛び出てスリリングな第1の経験の中に飛んだり、ワープしたり、ダイブしたりすることなのかもしれません。

★というわけで、中学入試での学びが、今のところもっとも<媒介項>である<システム思考>を磨き上げている場になっているのです。受験システムに組み込まれているのが日本の教育の在り方らしいですよね。であるならば、ここをもっと拡張したり開いたりして、<システム思考>の学びの場にしてしまえばよいのです。

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首都圏模試「思考コード」2021(4)桜蔭×フェリス(≦聖学院×工学院)→C3思考=システム思考 →自己変容への足場づくり

★今年の桜蔭の国語の問題は相変わらずB2領域とB3領域の問題が多く、全体の75%も占めていました。このような問題を思考できてしまう生徒が入学するのですから驚きです。

★また今年のフェリスの国語も相変わらずC3領域の200字問題を出題していました。こちらはこの問題が仮にできなくても合格するので、もったいないような気もしますが、フェリスに挑戦する生徒は、事前準備の段階でC3領域の問題を効率よく飛ばすということはしませんから、C3領域の思考ができる生徒が入学しているということはさらに驚きです。

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★桜蔭は、角幡唯介さんの作品から素材文を出題していました。ノンフィクション作家で有名な探検家です。角幡さんの探検は、まさに探究の学びのイメージそのものです。

★また、フェリスは阿部勤也さんの作品から素材文を出題していました。暗黒の中世ヨーロッパを憧れの中世ヨーロッパに転換した偉大な歴史家です。

★共通点は、自然や歴史とできるだけ直接コミュニケーションをとる態度です。角幡さんは、<GPS>を頼り人間の力の限界を乗り越える探検をしているのですが、ふと「もどかしく」感じるわけです。自分が立ち臨む自然、自分にたちはだかる自然と自分の身体全体でコミュニケーションするのではなく、GPSという現代の科学の武器を介在してコミュニケーションしていて、何か見失っているのではないか、いったいそれは何かがわからなくなているのではないかと。

★阿部勤也さんは近代から現代にかけて科学がつくってきた均質な空間という<常識>を媒介に、古代人や中世の人びとの生活をみては理解ができないのだと。その<常識>を捨てる根拠を歴史的なものの見方や考え方によって検証していくのだと。

★この点について、桜蔭は100字以上で説明する問題が立て続けに出題されます。文章の要約スキルでできてしまうので、B軸思考で解けますが、逆コペルニクス的転回をテーマにしているために、そのマイナス発想の転換の理解は難問です。

★科学の力でバラ色になったけれど、失ったものも大きい。科学は暗黒の闇の時代をコペルニクス的転回によって転換したはずなのに、さらにコペルニクス転回によって、大事なものまで失ってしまったのだというパラドクスの推理は要約スキルだけではわけもわからず書いているだけとなるでしょう。

★矛盾や逆説に関する事例収集やそのなぞ解きをどうするか、ひごろの学びの中で行っていなければ、何がテーマかあるいはトピックなのか、あるいはそもそも角幡さんの存在価値への問いなのかとらえきれなかったでしょう。

★フェリスの方はストレートに、C3領域の問いを投げてきました。あなたが変えたい<常識>について説明し、それを変えたら何が変わるのか?あなたが変わるのか?社会が変わるのか?で、どう変わるのか?という問いを投げたのです。

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★東大の帰国生問題でも出題されるような問いですね。もちろん、字数が違いますから、レベルが同じだということを言っているのではないのです。C3思考の構えが大切にされているということを言いたかったのです。

★いずれにしても、桜蔭やフェリスの入試を受けようと準備する生徒は、C3思考を身につける学びを行っているわけです。ただ、桜蔭の場合は、本番では限定的な情報の枠内で考えるので、B2やB3の領域のB軸思考で解決するのです。フェリスは、非限定的な情報で自由にのびのびと自分の意見とその根拠を展開すればよいのです。そういえば、フェリスの教育理念はman for othersだけではなく、自由もありましたね。

★さて、問題はC3思考をどうやって身につけるのでしょうか。ここはまだきちんと解き明かしている先生方はいないかもしれません。塾の先生方は秘伝になっているかもしれません。学校の先生方は、思考コードまでは理解しますが、思考スキルはなかなかもちだしません。思考スキルと解法テクニックは同じだとみなし、自分の授業は受験勉強のためのものではなくもっと教養が豊かな授業だということでしょう。

★しかし、もともとリベラルアーツは思考スキルの鍛錬です。このリベラルアーツの思考スキルが開発された長い歴史の中で、日本の大学受験システムは念頭に置かれていなかったのです。それが明治にはいってきたとき、受験システムの中に取り込まれ、思考スキルが解法テクニックにすり替えられたいっただけのことです。だから、心ある塾講師は受験勉強で合格力以上の未来への資質能力を養えるのだというわけです。

★本末転倒なわけですが、そこを批判するのではなく、逆コペルニクス的転回をもう一度正のコペルニクス的転回で切り返してしまえばよいわけです。それがおそらく首都圏模試センターの<思考コード>の野望ででしょう。受験市場を未来を創るC軸思考の市場に転換してしまうということでしょうか。<新しい学びの経験>の市場こそ、内生的成長論の新しい経済社会の基盤です。

★ともあれ、このリベラルアーツの思考スキルを現代化して、見事に世界の痛みを掘り起こし、SDGsの動きに世界を巻き込んだ思考システムがあります。それが「成長の限界」を書いたドネラ・メドウズさんらのチームです。彼女は2001年に亡くなりましたが、多くの人がその意志を継ぎました。継承した人の中にはピーター・センゲというMITの教授もいますが、彼らの周りで生まれているのが、今日本でもなんとか現場に広めたいというPBLで扱われる<システム思考>です。

★そして、正のコペルニクス的転回の発想を持っている角幡さんや阿部さんのような人々の探究的な思考の構えには、この<システム思考>が潜在的に展開されています。暗黙知として回転しているのです。ですから、この潜在的な<システム思考>を言語化したり可視化したりして多くの生徒と共有することこそ日本の未来は正のコペルニクス的転回のウネリを生み出すことになります。

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★たとえば、上記のように桜蔭とフェリスの問いを比較して抽象化してみると、システム思考の片鱗が見えます。桜蔭だけあるいはフェリスだけの受験準備だと、ここに飛べません。ですから、両方の素材を生徒と読みながら、生徒自身が両方の全く違う人が書いたものの関係を考える学びをやるわけです。

★その時大事なことは、決して私たちが教えないということです。システム思考は、子供たち一人ひとりが、自分の内側から生みだすことが大事なのです。もちろん、その環境というか足場やツールが<思考コード>だったり<思考スキル>だったりはしますが、実はこのコードやスキルもいきなりは教えないのです。子供たちの内側からでてくるのを待つのです。<思考コード>や<思考スキル>は、人間の脳神経系身体循環全体に埋め込まれているものです。そのポテンシャルがカタチになって現れるのを待つことが大事です。序破急のリズムで。

★国際バカロレアのTOKや、ランゲージの学びは、結局同じことをやっています。でも、このIBのプログラムも限られた子供たちが体験できるだけです。

★対話や思考は、自由が前提ですから、本来すべての子どもたちが共有しているはずです。高偏差値の生徒だけが身に着けるでは未来は正のコペルニクス的転回にならないでしょう。

★ここに果敢に挑戦しているのが、聖学院と工学院のPBLや思考力入試なのです。両校では、偏差値にかかわらず、6年間の中で自分の存在価値を輝かせる潜在的才能を開花させ羽ばたいています。桜蔭やフェリスは思考コードを学内で使っているわけではないので、生徒1人ひとりが頑張っていますが、聖学院や工学院のように、学校がまるごと1人ひとりが自らの存在価値を自ら輝かせる才能開花の環境づくり=自己変容への足場づくりをしているわけではないでしょう。

★C軸思考=システム思考が、すべての子供たちに共有されるためには、深イイ問題を作るのに教師が悩んで解かせるだけではなく、悩む過程をシステム思考で言語化し、生徒と共有し、その深イイ問いを生徒自身が発せられるようになることがポイントです。

★<思考コード>と<思考スキル>の言語化あるいは可視化は、まずその第一歩なのです。

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2020年2月20日 (木)

首都圏模試「思考コード」2021(3)B3領域 限定的情報のメタ的変容

★いつものように、今年の武蔵の理科の問題には<B3領域>の問いがありました。お土産問題はもちろん出題されました。やはり<B3領域>の問題でしたが、今回は、鳥とヒトの肺の機能を比較して、鳥の肺の方が優れていることを説明すしなさいという問いの方を考えてみましょう。

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★ヒトの肺や鳥の肺の機能について考える足場づくりの問題を当然考えたうえで、この問いを考えることになっていますから、知識を前提にはしていないのです。しかし、限定的な情報から知識を習得していくA軸思考の作用は必要です。<B3領域>とはいえ、A軸思考も鍛えておかないと、比較ができません。

★ただし、この場合のA軸思考はA2A3です。A1の知識の想起は必要ありません。思考力にはまずは知識が必要だという考えは、そういう問いがあるからの話であって、学びの過程では実はあまり関係がありません。

★さて、この問題、A軸思考によって、鳥は空気の通り方が一方向で、ヒトは双方向だということは理解できますが、それが鳥の方が優れていることになぜなるのかは、推理しなければなりません。

★この問題は限定的情報でありながら、あえて書いていない条件があるのです。鳥は空を飛ぶし、ヒトは地上を歩くのです。当然ボディーの周りの自然環境が違うわけです。この条件の違いを補うことによって、推理がしやすくなります。

★つまり、鳥とヒトの肺という機能に絞った違いを見つけるだけではなく、鳥とヒトの置かれた自然条件の違いも見渡すメタ的な視点を必要としています。したがって、限定的な情報を自分でメタ的に変容する必要があるのです。

★この限定的な情報の背景に暗黙の条件として隠れているものを見つけるのは、たしかにメタ的に俯瞰する必要があるのですが、この俯瞰する視点はC軸思考によって鍛えられます。テストというシーンでは、すでに鍛えられているメタ視点を活用すればよいので、C軸思考は使いませんが、ふだんの学びの中ではC軸思考が必要なのです。

★ですから、B3の問いは、間接的にC軸思考の可能性を問うているということでもあるのです。しかしながら、データ上はあくまでB3です。今、C軸思考の可能性と言いましたが、それは武蔵の問題対策として、B3領域の問いがでたら、隠れた情報を探せと教えられているとしたら、普段の学びではC軸思考が育成される機会を損失していることになるでしょう。合格はできるかもしれませんが、それ以上の大切な思考全体の関数関係体は手に入れることができないのです。つまり、探究の道は閉ざされます。

★限定的な情報の変容を作り出す方法を自ら生み出すのか、教えられるのかでは才能開花の段階で大きな差がつきます。貧富の差による教育格差と創造的才能を得られるか得られないかという学び格差としての教育格差があるのです。

★21世紀は、この創造的才能格差をつくってしまうと、本来創造的な社会を創ろうという未来が崩れてしまいます。学びの在り方は実に重要な使命を帯びているといえましょう。学歴階層社会を解消するはずの創造的才能開発が、自ら創造的才能格差を新たに生み出すパラドクスはPBLや探究を否定することがデストピア価値観であることに気づかけないグループがあることによって生まれてしまいます。

★針の穴ほどの微細な落とし穴が生み出すデストピア。暗黒面はいつも気づかないうちに忍び寄るのです。

★対話によって、なんとか、気づきを生み出す必要はまだまだあります。というよりも、始まったばかりなのかもしれません。

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首都圏模試「思考コード」2021(2)思考コードを多次元にシフトできるようになると探究の扉は開く。

★たとえば、小6の模試で「建築」という漢字の書き取り問題がでたとしましょう。この漢字は小学校3年生4年生時で学習する漢字ですから、正答率は70%は超えて欲しいところでしょうが、なかなかそうはうまくいきません。記憶というのは忘れるものですから。

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(2017年の麻布の社会の入試問題で出題されたグラフ。都市の変化の理由を記述する問題)

★いずれにしても、この「建築」の書き取りの問題は知識を想起する<A1領域>の問題ということになるわけです。しかし、これはA1の問いであるから、単純に想起する確率が高いかどうかをだけが得点として評価されるのですが、だからといって「建築」とう漢字を覚える学びが<A1領域>に閉じ込められているわけではないのです。

★学んだ結果、出力するときの思考過程は<A1領域>で十分だと判断されているだけです。条件反射的に記憶を引き出す力も重要なのです。危機に直面した時に大いに役に立ちます。

★だから、「建築」という漢字を<A1領域>の単純想起の出力過程の部分だけでトレーニングするのはどうかというと、実は思考を分断してしまい、思考力全体の関係態を育成する機会を損失する可能性があり、もったいないのです。

★もちろん、時間もないですから、熟語一つ憶えるのにそんなに時間をかけられないという事情もわかります。しかし、学ぶときは隣の領域でもいいですから縦断ないしは横断して領域越境しておくことは重要です。領域越境しないと、学びの方法がフィックスされがちです。思考力の質料が固まってしまわないようにするために、領域越境の学びは重要です。

★たとえば、最近よくマインドマップやウェッビングマップなどの思考ツールを活用する授業があります。「建築」を中心にそこから連想される熟語を次々書いていきます。共起語のネットワークを広げる学びは、思考コードでいえば<A2領域>ですが、実はもう少し欲張ります。想起された言葉と言葉の関係を考えます。

★「建築」と「破壊」、「建築」と「構築」など関係を考えます。「対照的な関係」とか「同内容の関係」とかでてくるでしょう。そして、この関係は思考スキルに相当します。

★「建築」関連の文章を読んで、文章の構造を細部から理解していく時、この<A2領域>の学びが役立ちます。論理的に自分の言葉でまとめなくても文章のフレーズをパッチワークしながら結び付ければ、文章内容が理解できます。文章理解する時に文章の言葉を足がかり手がかりとして、まとめる作業は簡単にできるでしょう。

★全体の文章を箇条書き的ですが幾つかの情報に圧縮して理解するわけです。これはこれで変容過程ですから、思考コードの<A3領域>の思考過程になるのです。

★ところが、細分化ではなく要約のような全体を圧縮するとなるとどうなるでしょう。細部のアプローチは、文章の中のフレーズをほとんどそのまま使えますが、要約となると、文章中の要素の取捨選択が必要となります。そして論理的に結びつける必要があります。

★限定的な内容ですが<A軸思考>がスキャンニングに近い過程なのに対して、この要約は再構築しなくてはなりません。この再構築が<B軸思考>です。<A軸思考>がスキャンしたものを再現するのに比べれば、自由度が高くなります。

★そして、その筆者の要約ベースで自分の意見を書くとなると、一見クリエイティブですが、まだそこまではいきません。限定的な情報で意見を出す時には、根拠は限定的情報に求められます。ですから<B3領域>となるわけです。

★さて、「建築」関連の情報に新たな情報が付け加わったらどうでしょう。つまり限定的な情報を超える非限定的な情報が加わったらどうなるか。たとえば、都市計画のリフォーム後の水道使用量の変化グラフがでて、その変化の理由を考えるとしたらどうでしょう。

★その理由について、文章の中には書いてない場合、推理しなくてはならないわけです。

★ここはリフォームをなぜしたかというビフォーアフターを比較推理することから始めるでしょう。<C1領域>の思考コードが振られます。

★さらにリフォームすることによって一定の効果を出すのに成功したのに、地域とのつながりや世界とのつながりになると、結果的に弊害を生み出す状況の例を挙げ、150字以内でそうなった理由と解消方法を提案するとなると、<C3領域>となります。

★麻布の入試問題や公立中高一貫校の適性検査問題は、この<C3領域>をこんなふうに問うてきます。

★私は、90分の授業で、3、4年生とこんな感じでワークショップをやりながら・対話しながら行っていきます。「建築」という漢字の話から共起ネットに広がって、それを使いながら読解したり論述したりします。レゴやスケッチブックも使います。

★子供たちは「建築」以外の共起ネットに出てきた言葉や漢字をわりと自然に記憶していきます。言葉と言葉、言葉と文、文と段落、言葉と絵、言葉とグラフ、言葉と地図、言葉と亜価値などの関係をどうとらえるか思考スキルも確認します。

★記憶という再現、記憶を再構築して適用、新しい知識や発想を構想・創造する思考コードの全領域を散歩します。

★しかし、まだ「思考コード」をマップとしてしかみなしていません。飛躍の跳躍台にも、ワープのタイミングにも、まして洞窟や海底にダイブする場としても活用していません。

★思考コードをマップから跳躍台やワープする時のタイミングセット、ダイブの場というような多次元にシフトして使い始めると、もちろん、その時使うのは、もはや生徒自身ですが、そうなったとき探究への扉がようやく開き始めます。

★学校で、思考マップとして思考コードを使っても探究への扉は開きません。ただし、それは、思考全体の土台をつくることにはなりますし、探究の動機付けにはなるでしょう。探究はそこから発展していくわけです。

★しかしながら、教科授業と探究の結びつきはこれでできるでしょう。今までのA軸B軸思考領域だけでは、教科授業と探究は分断されてしまいます。

★中学入試において麻布や武蔵の入試問題と新タイプ入試が親和性を有するのは、同じ理由が横たわっているのです。

★なお、「建築」から社会問題に広がる例は2017年の麻布の社会の入試問題を参考にしました。基本私の中学入試における思考力型の国語のワークショップは、麻布の入試問題の構造と親和性があるので。

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2020年2月19日 (水)

首都圏模試「思考コード」2021(1)

★首都圏模試センターのリサーチフェローとして同センターの「思考コード」についてそろそろ深めていきたいと思っています。開発当初からかかわっていますが、同センターの教務陣とは思考スキル分析まで議論して深まっているのです。

★しばらくは、わかりやすさを優先して「統一合判」にマッチングするように議論してきました。

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★コードごとにデータの振り返りもするようになり、作問者と分析者のマッチングの精度は上がっています。しかしながら、授業する側とのマッチングはこれからです。とはいえ、なぜか学校やいろいろなところで使われ始めてもいて、ちょっと独り歩きしすぎかなあと思う時もあります。コードの分析はデータサイエンスと質的リサーチの両方のカップリングが必要で、あまり理念的な活用の度が過ぎると使い方を間違ってしまいます。

★あくまでエンパワーメント評価で、C3に到達しなきゃいけないみたいな対話は学習者とはしないのですが、そこに飛ばなきゃとか、いやB2が大事だとか言っている方もいます。インフルエンサーとしてありがたいと思いますが、多様な生徒と学び方の成長の媒介項として活用するだけで、大事なのは生徒の存在そのものです。

★フェローというのは、あくまで外部の目ですから、首都圏模試センターの教務陣とはズレがあります。このズレがあるので、対話になります。ですから、多くの人とも結局ズレがあるので、できればズレがあるのをダメだと否定せず、認めるところから対話ができればありがたいのです。こうでなきゃという構えがあると、なかなか対話が広がりません。

★しかしながら、それはゆくゆく対話していくとして、私なりの考え方を書いていこうと思います。実際にデータをみながら教務陣と話したり、今後ますます増えると思いますが、授業担当者や生徒・保護者とも対話していくことになるからです。

★まず、思考コードは私たちの脳とか神経系のイメージなんです。脳や神経系はそれぞれの機能に応じて部位に分かれ分節化されています。だからといって分断されているわけではないのです。実は互いに対話をしていると言われています。

★だから、障害が起きたときに、ある程度のところまでは他の部位がカバーするということもあります。

★思考コードも同じで、領域を9つに分けてはいますが、それは試験問題の問いのカテゴリー分けをしているだけで、それに合わせているのです。しかし、学びや思考は、入り口はある一つの領域からかもしれないし、幾つかの領域からかもしれませんが、そこから入ったらあとは全部つながっているのですね。それは説明するまでもないでしょう。単純な掛け算はたしかにA1の問題ですが、A1から思考に入り込むと、それは微分積分の考え方と結びつきます。微積の考え方は、思考のスキルや働きにさらに延長しますね。

★ですから思考するには知識が必要だからまず知識だとか、知識がなくても思考はできるのだとかいう考え方にあまりこだわらないくてよいのです。

★そうはいっても、子供たちの多くは、入り口あたりでとまっていて、思考全体の海にダイブしようとできませんね。入り口で興味とか関心とか問題にされますが、ダイブしてはじめて面白さがわかってきます。この勇気のないのをダメだというのではなく、どうやったらダイブできるのか対話するのがエンパワーメント評価の肝です。

★だから、学びは面白いだけではダメなんだとかもあまり意味のない言葉です。

★とにかく、子供の学びの方法について、いろいろな表現があるのですが、ほとんどが学びのシステムの結節点一つを取り扱って、それがすべてだみたいな言い方をして、それが壁になって学び方は成長しないし、結果的に子供の成長が阻害されるということがあります。

★脱偏差値も気持ちはわかるし、私もそう思いますが、偏差値そのものは高校数学でも学ぶ統計としての関数関係の話ですから、そんな言い方は不安を煽るだけになりがちです。

★まあ、そういう先入観や固定観念や誤謬をクリティカルシンキングを備えて崩しながら、真理を追い求めるようになればよいわけですが、さすがに子供はクリティカルシンキングをすぐに発動できるわけではありません。学び方の成長とか変容とかは大切です。

★その速度は個人によって違いますが、放っておくと、一つの領域にフィックスした学び方を大人になってもし続けるということになることも多いのです。やはり、すべての領域がつながるようにあるいは化学反応を起こすようにダイブするシステムが大切です。それが子ども一人ひとりの<最近接発達領域>を対話によって共有するというシステムです。これを本当の意味での個別最適化といいたいのですが、世の中は、たんに一人一人違う問いのマッチングをすることを指しているようです。

★いずれにしても、脳のすべての部位が大事なのと同じように、思考コードの領域はすべて大事で、思考の働きの関数を記号で可視化したものだと了解していただければと思います。このもごとを点でとらえるのではなく、関数関係としてとらえるのが構成主義なのですが、結構構成主義を唱える方で、社会現象や自然現象を関数関係で捉えることをしない方が多いですね。ここは対話によってシェアしたいところです。

★便宜上、思考コードはテストの評価の時に使い、授業では別の思考コードでいくと言ってはいます。しかし、それは思考コードの縦軸を難度という外延的あるいは定量的な区分けとしてみなした時にそうなるだけなのです。上記の表を見ていただけるとお分かりいただけるように、実際にはもう少しメタ的な視点でデザインしています。模倣操作から変容運動という他律から自律へと次元をあげるようになっています。

★実は横軸はメタ認知の軸で、縦軸はメタコンピテンシーの話なのです。ですが、そこから始めるとわかりにくいので、解答反応率(正答率とか解答率とか呼ばれています)としてでる難度としての縦軸と限定的な内容を考える行為から非限定的な内容を考える行為にシフトする横軸というように、最初はメタ的な発想が包摂する具体的な結果や動きを取り出して作問と分析をマッチングさせていったのです。

★しかしながら、教務陣と麻布や武蔵の問いや年々増える新タイプテストの問いを分析するようになると、どうしてもメタ的な次元が必要になってきます。2020年は、すでに具体的な次元とメタ的な次元を行ったり来たりする分析に進展しているのです。2021年に向けて新しいステージが見えてきました。

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第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(了)2021年度中学入試が、日本を変える。ドネラさんの意志を継承。

★2019年度の21世紀型教育機構の加盟校の主催する最終セミナーは、和洋九段女子で開催されました。そして終わりは始まりです。2021年度中学入試に向けて、その新しい価値が生まれ、その価値実現のための新しい活動の企画が生まれました。

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★セミナー終了後、3時間くらいリフレクションしました。リフレクションと言っても、何か一つのテーマで議論するというより、1年間のセミナー開催のための準備活動やここまで実施してきたフォーラムやシンポジウムを振り返り、今回のセミナーが集大成になったことについてなど、感じたことや気づいたことなど想いをランダムに対話するリフレクションです。

★一人一人が遠慮せず、言いたいことを放つ拡散型なのですが、どこかのタイミングでそれならうちでもできるなあ、これもできるなあ、すぐにでもできるなあ、やってみようか、生徒が一番やりたがるなあとか、折り返します。

★<折り返す>。まさにリフレクションですね。折り返すとは往来です。外延と内包の往来が何回も行われていく。再帰的で入れ子のイマジネーションとロゴスの渦が起こります。いわゆるブレイクスルーってやつですね。

★それで、北氏ともその雰囲気が共振して、意気投合し、新市場に与えるインパクトあるじゃんとなる。応援するから実施したら情報交換しましょうと。ある程度魅力が受験生や保護者に共有できるようだったら、取材もありかもなどと波及していきます。

★そんなとき、北氏が私にボゾッと「2021年中学入試は、日本を変える」というのは現実味を帯びてきたのではないかと。北氏のジャーナリストの勘がピンと働いたようです。

★たしかに、今回は登壇者やパネリストの教師や生徒も全員がPBLを行えるメンバーだったし、新タイプ入試に直接かかわっていもいるし、なんといってもコアにはSDGsに立ち臨み、その活動の担い手であるパラダイムジェンレーターでした。

★<PBL―C軸思考―SDGs―パラダイムジェネレーター>の共起語の循環がセミナーの対話とワークショップを貫いていました。北氏にとって、この一貫性が新タイプ入試に色濃く広がっていくと新市場の意味や価値が極めて重要なブレイクスルーを起こすと洞察するのは難くないことだったでしょう。

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★1972年に、デジス・メドウズ教授がリーダーとなりローマクラブに委託された「成長の限界」を世に出しました。ここからグローバル・イシューに光が当てられ、強欲近代社会がもたらした環境破壊の警鐘が鳴らされ始めました。環境破壊は自然のみならず、社会の格差も作り、人間の精神も破壊してくほどの大きさになっていきました。

★もはや世界はリスク社会になってしまったのです。しかし、その警鐘を受けとめなんとかしようというのに時間がかかりました。それでも、“Sustainable Development”という言葉が、1987年に誕生しました。1984年に、「環境と開発に関する世界委員会(WCED)」が設置され、委員会は、1987年、報告書「我ら共有の未来(Our Common Future)」を発表して、これまでの議論やリサーチのまとめを報告しました。このときのリーダーがノルウェーの首相のグロ・ハーレム・ブルントラントさんです。

★首都圏では中学入試が一気呵成に広がる時期です。このときは、まだ中学入試はまだ、この動きに敏感ではありませんでしたが、国際理解教育というベースのある学校の入試問題や麻布や武蔵の創造的思考力を要する問題の中で、この地球規模の根源的な問題が取り扱われていったののです。それは当時は骨太問題として一部の学校の特徴的な問題でした。しかし、それが今や新タイプ入試の中にどんどん開花しているのです。この勢いは2021年はもっと大きくなるでしょう。

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★それにしても、「成長の限界」の主著者は、ドネラ・メドウズ教授でした。このレポートをまとめる調査委員会のリーダーであるデジス・メドウズ教授の妻です。ドネラ・メドウズさんと言えば、「世界がもし100人の村だったら」のアイデアを出した方です。2001年に亡くなられたので、本書の扉は、ドネス・メドウズさんに捧げると刻印されています。

★いずれにしても、今日のSDGsの流れを創発して持続可能にしたのは、この2人の女性でした。世界の痛みの中に投げ込まれていた女性がその根源的な痛みという問題を解き明かし、世界を巻き込んで解決する契機をつくったことは確かです。そして、その意志を継いでいるのが、和洋九段女子のZ世代の生徒だったというのが、ワークショップでみな体験したわけです。

★しかも、ドネラ・メドウズさんの研究方法は「システム思考」でした。自然と社会と精神の循環を探究する創造的思考の土台は、このシステム思考です。ドネラさん亡き後、大親友のあのピーター・センゲが「学習する組織」の1つの柱としてこのシステム思考を埋め込みました。

★この「学習する組織論」こそ、私たちが実践しているPBLのプロトタイプです。21世紀は女性の時代です。21世紀は教育の時代です。21世紀は強欲資本主義を解消するAI共創を生み出すC軸思考=システム思考の時代です。SDGs、PBL、C軸思考=システム思考が、すべて今回のセミナーで出遭ったのです。

★そして、このSDGs×PBL×C軸思考=システム思考が一塊になって新中学市場に広がるのです。

★北氏の瞬間に見抜いた洞察力が拓く世界は、パラダイムチェンジメーカーたちが協働し合う社会なのではないのでしょうか。みなさん、いっしょにそういう世界を創りましょう。新中学市場は偏差値競争社会ではなく、ドネラさんの考案した共創社会の構想力を生み出す場となるのでしょう。共に!

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第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(8)アクレディテーションが日本の教育を変える。

★セミナーのファイナルプログラムは、21世紀型教育機構をサポートするアクレディテーションチームからの加盟校の21世紀型教育の品質保証の調査報告でした。チームメンバーは、鈴木裕之氏(GLICC代表)、福原将之氏(株式会社FlipSilverlining代表)、神崎史彦氏(株式会社カンザキメソッド代表)です。

★鈴木氏と福原氏の紹介はすでにしているので、神崎氏の紹介をします。

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★神崎氏は、超有名なAO入試・推薦入試・小論文指導のスーパーリーダーです。リクルートの情報誌「キャリアガイダンス」の連載コーナーももっています。そのテーマは「小論文で創造的思考を育成する」です。つまり、神崎氏も<C軸思考人間>です。

★機構内では、主にディプロマポリシーの領域でサポートを行っていますが、探究やPBLのスペシャリストでもあるので、カリキュラムポリシーでもアドバイスをしています。ベースが大学入試領域ですから、中学入試というアドミッションポリシーでは、鈴木氏、福原氏と協力しています。

★鈴木氏は海外大学準備教育のエキスパートだし、福原氏はコンピューターサイエンスのエキスパート。3人とも探究やPBLを得意としているところは共通です。もちろん、流儀はそれぞれ特徴がありますが、<思考コード>という思考マップを広げる点に関してはやはり共通しています。

★3人の多角的な視点によって、21世紀型教育機構の加盟校の21世紀型教育の質がエンパワーメント評価されていくわけです。当日は詳細なデータが公表されましたが、企業秘密の部分もありますから、ここでは一枚だけ掲載しておきましょう。

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★9つのゴールが設定されていて、詳細ゴールが100弱あります。3人がフィールドワークしながら質的評価をしながら、スコア化して可視化する量的評価に転換します。国際バカロレアの評価方法と近似していますね。

★大事なことは、エンパワーメント評価です。あなたの学校はここまでしかできていないという偏差値的な輪切り評価はしません。強みと弱みは、スコアにするとわかりやすいので、その点について、それぞれの加盟校の21世紀型教育コーディネーターと対話します。そして、コーディネーターはそれを学内に共有していきます。

★今回のようなセミナーやカンファレンス(ほぼ毎月実施している)以外に、年に2回機構の定例会があります。そこで加盟校の互いの状況を共有します。自分の顔は自分でも見えますが、互いに対話して共有することで、すてきな部分を新たに発見できるものです。今のところ、この刺激はシナジー効果を膨らましています。

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★和洋九段女子の伸び率も公表され、同校のPBLの成果が第三者によって裏付けられた一つのエビデンスとして参加者も受け入れたことでしょう。

★それから、大事なデータが公開されました。それは全体項目の伸び率と授業3項目の伸び率の相関が見事にあるという結果です。やはり、学校の教育の質の要は授業だったということです。つまり、入試問題は学校の顔であり、その顔は授業だったということでしょう。

★ところで、「アクレディテーション(適格認定:Accreditation)」という言葉は、聞きなれない方も多いでしょう。現状日本では、大学の評価を第三者評価機関に委託していますが、その評価項目は大学ごとによって違っていて、公開して共有して切磋琢磨しているわけではありません。文科省のチェックを受けているという感じです。補助金獲得のためにというのが目的になってしまっていて、教育の質は二の次です。

★したがって、その項目も、教員資格・研究活動・学生の受入れ・学習資源等に関する外延的な量的なチェックで、内包的な教育や研究の質の項目は見られていません。官僚主義的役割ですね。これでは、学生の存在そのものに対する影響がどのくらいあるのかよくわかりません。

★これは文科省が初等中等教育から高等教育まですべてコントロールする近代官僚主義の弊害なのかもしれません。

★初等中等教育でも学校関係者評価とかやっていますが、第三者評価機関に委託するところまではいっていないでしょう。私もいくつかかかわったことがありますあ、自己都合で自己完結型で、PDCAサイクルで学習指導要領のミニマムは保証されますが、それ以上でも以下でもありません。再現システムでアップデートのためのエンパワーメントシステムではないのです。

★21世紀型教育機構は学習指導要領は無視しませんが、海外の名門校をモデルにしてそれを超えようとしていますから、世界標準のアクレディテーションシステムが必要だったのです。このような活動がもっと明快になれば、海外のエスタブリッシュスクールのボーディングに加盟してそこのアクレディテーションも活用できるようになるでしょう。ここまでこないと本当の意味でグローバル教育とは言えません。工学院と八雲、文化学園大学杉並はその兆しがすでにあります。

★閉鎖空間で、官僚主義的チェックを受けて、うちのグローバル教育凄いだろうといったところで、ナルシスティックで世界は相手にしないでしょう。

★そういう意味では、中学入試市場は首都圏模試センターがアクレディテーション機能を果たしています。偏差値も含めて多様な評価軸や多角的情報を公開して、市場のプレイヤーと共有しているからです。この情報を分析して、各学校も学校選択者も質について考えることができます。

★偏差値だけで評価しているシンクタンクや情報編集者は偏っているので、いくら偏差値の精度が高くても、多角的な情報を提供していない限り、民主主義的にはアウトなんです。果たしてそのことに気づけるかが2021年以降の中学入試のシナリオが決まるのですが、新タイプ入試の増加はなかなかよいシナリオを描き実現するのではないでしょうか。

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第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(7)パネルディスカッション新しい意味

★今回のパネルディスカッションは、ある意味唯一無二の場でした。というのも、1つには、モデレーターも、パネリストの先生方も、北氏も、生徒さんも全員がPBLのファシリテーターやジェネレーターを展開できるメンバーだったのです。PBL型授業を先生方は展開するのですが、最初は生徒さんはそれに乗っかっていたわけですが、今では生徒さんもプログラムを開発するしファシリテーターもやります。何より自分の探究を私の<プロジェクト>として、<私たちのプロジェクト>として、<世界のプロジェクト>としてクリエイティブに深めていけるのです。論より証拠、ディスカッションの前にワークショップをやってのけたわけです。しかもミニワークショップにショートカットする臨機応変な「野生の思考力」を発揮したわけです。

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★唯一無二の2つ目の理由は、先生方も北氏も生徒さんも、ワークショップを行う時に、<思考コード>や<メタルーブリック>を意識できるのです。<思考コード>や<メタルーブリック>の中身はそれぞれの組織によって理念や目的が違うので、それに応じて当然違うわけですが、創造性がC軸に位置しているということは一致しています。つまり、モデレーターやパネリストは全員<C軸思考人間>だったのです。

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★そして、C軸思考人間が創造力の翼をのびやかに広げられるには、ある絶対的条件が必要になります。それは相対性理論において光の速さは絶対不変なのと同じぐらい重要なのです。新井教頭の場合は、<安心安全の場>をつくりつづけることだし、児浦先生にとっては、<Cゾーン:コンフォートゾーン>という場を開示することだし、田中歩先生にとっては<共感的コミュニケーション>をナチュラルに生み出すことだし、北氏にとっては<多様なモノサシによる新中学受験市場>を創発することです。生徒の皆さんにとっては、<多様なネットワーク>を内外にコネクトしていくことです。

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★だから、パネルディスカッションは、議論するというより自分たちの想いを深く互いに語る対話になっていたのです。田中歩先生が生徒の皆さんに質問した時も、生徒のみなさんは、考え込まずに、瞬発力を発揮していました。野生の思考が展開していたわけです。

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★まさに、対話は潜在能力を互いに引き出す場だし、思考はその対話をリフレクションして潜在能力をさらに豊かにする過程です。対話という外延が潜在能力という内包を外に引き出し、思考は引き出された外延を内包に還元するという相互作用です。対話と思考は二元論や二項対立ではありませんが、単純に言葉の置換ではありません。外延と内包の往来を通して自己変容を生み出す創造的な弁証法なのです。

★そんなことを気づかせてくれるすてきな場でした。そういえば、J.S.ミルが「自由論」で、「表現の自由」といったとき、そこがどこで行われているのかと言うと、「ディスカッション」ででした。自由とは、まさにこうした「共創」の自由であって、自由「競争」を必ずしも言うわけではないのかもしれませんね。

★さて、新井先生の「PBL入試」の話や児浦先生の「思考力入試」話、および田中歩先生の「共感的コミュニケーション」の話などについては次の記事を参照していただければ幸いです。

〇和洋九段女子 入学手続き者前年対比150%!創発型PBLが生み出す生徒の良質活動支持される!

〇聖学院の思考力入試 市川理香氏の感動取材!12歳の男子が発揮する内なる力を目撃!

〇12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(06)工学院 21世紀型教育機構の理論的支柱として実践モデル構築

 

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第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(6)パネルディスカッションへ

★北氏と中込校長の2つのキーノートスピーチと和洋九段女子の6人の中3生ファシリテーターによるSDGsすごろくワークショップのあと、今回のリフレクションタイムがやってきました。名モデレーターの鈴木裕之氏(GLICC代表・21世紀型教育機構事務局長)のもとパネルディスカッションが一般的な感じとは違う雰囲気で進行しました。清々しくそして深く。大テーマは「中学入試が教育を変える」でした。その要因の一つとして「多様な中学入試とPBLの未来への役割」があるというのがメインテーマでした。

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★パネリストは、北一成氏(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)、新井誠司先生(和洋九段女子教頭)、児浦良裕先生(聖学院21教育企画部長・21世紀型教育研究所リーダー)、田中歩先生(工学院教務主任・21世紀型教育研究所リーダー)、和洋九段女子中3ファシリテーターの生徒6人でした。

★パネルディスカッションの中身及び様子については、鈴木氏が自ら21世紀型教育機構のサイトに掲載しています。<第4回「新中学入試セミナー」in 和洋九段ー自己変容型マインドセットが育つPBL>がそれです。セミナーのダイジェストなのに、簡にして要を得た感銘的な記事です。さすが言語思考の達人鈴木氏。氏の主宰するGLICCは、21世紀型教育の学びを中心としていて思考力とグローバル言語力を学ぶ機会がマインドセットされています。スタッフの多くがネイティブスピーカーとGLICCで大学に合格した帰国生がサポートしています。門を開けば、そこの公用語は英語です。世界をつなぐサイバー上の哲学対話ワークショップ授業が中心でもあります。

★3月はヨーロッパ縦断教育講演会ツアーに出るそうです。

★それから、アクレディテーションチームのコーディネーターでもある福原将之氏(株式会社FlipSilverlining代表)も、今回のセミナーの報告レポート記事を自身のブログ「科学カフェ」で詳細連載中です。福原氏は、もともと東大大学院で宇宙物理の研究をしていて、子供のための宇宙科学のワークショップも定期的に開催しています。常に満席の人気のワークショップです。

★そして、何よりコンピューターサイエンティストです。ですから、その記事はサイエンス論文さながら格調高くそれでいて読みやすいですね。工業化時代から修正工業化時代を経て脱工業化時代に転換する科学史的な発想、つまりリベラルアーツの素養を背景にブログは書かれています。世界のコンピュータサイエンティストが、日本ではリベラルアーツを学んでいないコンピュータサイエンティストが多いと嘆きます。それがコンピュータサイエンス分野で世界に遅れを取っている原因なのだとまで言われています。その点福原氏は世界標準のリベラルアーツのモノサシをもったコンピュータサイエンティストです。

★というわけで、パネルディスカッションの様子や内容についてはお二人のブログをぜひご覧ください。私の方は、今回のパネルディスカッションで気づいたことを書くことにします。(つづく)    

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2020年2月18日 (火)

第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(5)SDGsすごろくワークショップチームの<想い>

★はっきりいって衝撃でした!和洋九段女子の中3Z世代6人がファシリテートしてくれたSDGsすごろくワークショップは自然と社会と精神の循環で宇宙を回る地球船の存在に思いを馳せることになったのです。乗組員である私たち一人ひとりのマインドが清くなければ、この宇宙船地球号は滅びるかもしれないと戦慄が走るほど彼女たちの探究への「想い」は「すごろく」というゲームの世界にあふれ出ていたのですから。

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★ゲームの前に、簡単なレクチャーがありました。すごろくのGoalへの目標は、いくつかありますと。まず、この空間を世界だと思ってください。なんてすごいワープなのでしょう。参加者は素直にスッーと世界をイメージしていました。それから、プレイヤーはひとつの国になってもらいますと、国造りの道具を配布しました。

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★そして、すごろくというボードゲームの予測不能な確率論的世界の中で、目標を集め国を成長させてくださいと。なんてスリリング。そして、このボードゲームは、すぐにリスク世界のメタファーに転換したのです。そんなリスク世界の中で、SDGsの17の目標をいくつ集められるかがあなたの国の目標になりますから、Goalのあとに集めたコインと目標(Goal)を交換する機会を最大限に活用してくださいと。最後に集めた17の目標であなたの国がどうなったのかを振り返りますからと。

★なんとこれはリスク世界の中で再帰的近代化で乗り切れるかどうかというゲームだったのかと驚愕でした。

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★実際、参加してみて(といっても写真をとっていたので、参与的観察者としてですが)、各マス目の創意工夫が並大抵のものではありませんでした。ゴールに向かってなかなか前進できないのです。自然エネルギーの成功によって、ゴールのカードをもらうけれど、そのためには税金が必要だから、数枚のコインは没収されるとかいう内容が随所にでてきます。

★またどうしたら危機を乗り越えるのか考えるマス目もあります。ミニワークショップだったので、プレゼンするところまではいきませんでしたが、そこまでやると本当にゲームなんだけれどPBL授業そのものになります。

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★実にPlayfulでSDGsを達成しようというPassionに溢れたゲームです。

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★ストップするマス目では、クイズがでます。世界の格差問題を中心とするデータがでてきます。いわゆるファクトフルな問題で、先入観をぶち破られます。学校の先生方が回答して間違うたびにやられたあ!と笑いが舞起こります。正解すれば拍手喝采です。なんてスリリングで楽しいゲームでしょう。

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★ミニワークショップでかなりショートカットして行われました。その再編集も6人で念入りに対話してデザインしたわけです。6人は「世界制作の方法」を身に着けたと言えましょう。

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★ネルソン・グッドマンの数学的哲学と芸術的哲学の視点で書かれた「世界制作の方法」は珠玉の作品ですが、難しくて理解がなかなかできないのです。しかし、6人の生徒の思考活動がまさにそれです。グッドマンの意図が和洋九段女子の生徒によって腑に落ちました。

★それにしても、最初の6人のメッセージ「私たちの想い/未来はここにかかっているかもしれない/多くの人たちにSDGsを知ってもらいたい」は、最後には<詩>に変容していました。

★メッセージだと最初うけとったときは、「私たちの想い」は「未来はここにかかっているかもしれない/多くの人たちにSDGsを知ってもらいたい」と「ここ」はSDGsのことだと思いました。要するに私たちは、もっとSDGsを知ってもらいたい。まだ30%も知っている人はいないという調査があるのだからということだと思ったのです。

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★しかし、最後に到っては、「ここ」は「私たちの想い」を指しているのだと思うようになりました。私たちの「想い」は「重い」し「思索」は深まる一方だというわけです。未来は「私たちの想い」にかかっているのだと。

★すると、「想」という漢字が急に「相」と「心」にパカッと分かれました。すると、「相」は「形相」の「相」になったのです。「心」には存在のポテンシャルが波打っています。この「存在のポテンシャル」が「形相」というフォームによって解放されるのです。

★彼女たちの活動が日ごろ忘却している「存在のポテンシャル」という「可能態」に「形相」というフォームの翼を与え「現実態」にするのです。この考え方はアリストテレスと物理学者マイケル・ポランニーの考え方ですが、そこに結びついたのでした。

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★6人の和洋九段女子Z世代生徒は、これらの知見をPBLという探究活動の中で自然と体得しているでしょう。本の知識よりも得難い精神の実践的なネットワークの広がり。感服です!

<P.S.>

今回のワークショップ型セミナーができたのは、実に6人の和洋九段女子の生徒の賜物なのです。というのも、10月にインタビューさせてもらったときに、ところで2月16日にワークショップを披露してくれるとありがたいけれどとお願いすると、二つ返事でやります!と。先生を通してからという段取りになるかなと思う暇もなく、その場で決まり、担当の水野先生も、彼女たちの意志を尊重しますということだったのです。心から感謝いたします。ありがとうございました!

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水野先生は、和洋九段女子のPBL開発当初からかかわっていて、PBLのプロトタイプ―リファインのループを何回転もさせてアップデートしてきた先生です。その先生を動かす6人の生徒たちは全く凄いですね。

インタビューの記事は次をご覧ください。

和洋九段女子が新しい社会を開く(1)
和洋九段女子が新しい社会を開く(2) 

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第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(4)中込真校長のパラダイム転換の講演

★今年の入学手続き者が前年対比150%の和洋九段女子。その成功要因は、もちろん生徒募集戦略・戦術の新たな開発だったのですが、それ以上に教育的価値が新中学入試市場で支持されたということが、和洋九段女子にとって、とても重要であり、同時にそれは2021年以降の新中学入試市場の価値観を示唆しているのです。

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★その重要性について、和洋九段女子の校長中込真先生は語りました。テーマは、「未来を拓くグローバル教育×PBL」だったのですが、スピーチの90%はPBLの話でした。実はこれが極めて重要なことだったのです。

★というのは、今まで、そして今でも、女子校は「グローバル教育」を前面に出して説明会を行います。しかし、和洋九段女子は。もちろん破格のグローバル教育を行っていて、海外大学進学準備教育も着々と実現の道を拓いています。

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★グローバル教育を前面展開する説明会は、たしかにプログラムの宝物「壺」として王道です。しかし、和洋九段女子は、対話やディスカッションをベースにしたPBLという人と人の存在を大切にする教育、つまりグローバル教育をはじめ多様な教育活動に通底しているマインドを前面に押し出したのです。まさにルビンの壺よろしく、図と地をひっくり返す発想の転換をしたのです。

★PBLを学内に全面的に展開して4年目、その成果は、教師も生徒も多様な外部とのネットワークを広げ、そこでの対話による多くの気づきを学内に浸透させる“Connected School”になったのだと、中込真校長は明言しました。

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★グローバル教育は、このネットワークの重要なNODE(結節点)です。中心は和洋九段女子ですが、その中心はPBLで、そのまた中心は生徒です。この入れ子の教育組織体が、質を高め同時に深めます。この「入れ子」の事を、言語学的には「再帰性」と言います。リベラルアーツのレトリック論では、「外延と内包の往復」と言います。

★シンギュラリティが起ころうとも、当面AIで判断できないのが、この人間の生み出す「入れ子」「再帰性」「外延と内包の往復」だと言われています。これらは、リフレクションシステムです。つまりリフレクションは、AIが判断しようとするとショートしてしまうのです。

★科学者である中込真校長の鋭い着眼点は、AIに判断できない最重要なPBLが形成する生徒たちの存在を前面に出したのです。

★というよりも、生徒自身が自発的に前面に出てきたのです。自分たちの興味と関心が学内だけではなく、外部と結びつき、それが外部の痛みというNODEにつながったために、今度はそこをどのように解決するかそのためにはどことつながるとよいのか新たなNODEを探究します。そして、そのためには、実は自分たちに魅力がなければ連携してくれないということに気づきます。

★自分たちの創意工夫。クリエイティブなソフトパワーを全開していくわけです。すると、今度は外部から生徒たちと連携しようという逆の動きがでてくるのです。外延と内包の往来が生まれます。この外延と内包の往来こそ「詩」の命です。ファンタジーの「魂」です。ここに人が集まるマインドフルネスの場が開けます。湯川秀樹は、科学と詩はシンクロすると言いました。ハイデッガー的に言えば、外延的な現存在が喪失していた内包としての根源的な魂の存在者を見出す場が開いたのです。場は、魂に共感する人々が集まってくる居場所となるのです。住むための物理的空間ではなく、精神が住まう空間としてとハイデッガーなら言ったでしょうか。

★論より証拠、それを実現したチームの1つである中3生6人が、中込真校長のスピーチの後、SDGsスゴロクワークショップを披露してくれたのです。

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★中込真校長は、「PBLは学校のすべてを変えます!教員も生徒も自己変容」と高らかに謳ってスピーチを終えました。かっこよすぎます!いつか私も言ってみたい名言として記憶しておこうと思いました。

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2021年に向けて~ホンマノオト21から見えるクリエイティブクラスの社会的動向の0.6%の一片。

★首都圏の私立中学入試に挑戦する小6は、日本全国の同世代小学校6年生の3%です。このうち20%は富裕層で、80%はアッパーマスとミドルマスの層です。あくまで推計ですが。いずれにしても、ダブルインカムも含めて、年収1000万以上の世帯が多数占めていることは確かです。そういう意味で、佐藤学先生や苅谷剛彦先生は、私立学校はお金持ちの行く学校だからと明言していて、研究対象にしてこなかったのでしょう。もっとも、制度上、私立中学は、教育委員会の所管にないので、国立大学の教育学部は、主たる研究項目になれなかったということが本当のところでしょう。

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★そんなわけで、だったら、「私立学校研究家」(宮台真司さんがこのタイトルおもしろいと言ってくださったので、ずっと使っているんですが。日本では唯一無二のタイトルです^^;)をやってしまえとホンマノオトを書いてきました。前職のNTS教育研究所(このサイトは、研究所解体後、削除されていますが)のころから書いています。1999年から書き始めましたから、もうすぐ四半世紀を迎えますね。とはいえ、全然体系的ではないので、あくまで市井の研究家として、これからもライフワークで細々といこうかなと思っています。

★ということで、私立学校を受験という一点ではなく、入学システム、カリキュラムシステム、進学準備教育のシステムの全体をウォッチしています。そして、私立中学を選択する家庭層は、よいわるいは別にして、日本社会や世界を牽引するメンバーですから、社会的動向と学校選択の結びつきは、教育の世紀である21世紀においては極めて重要で、なぜか産業や経済の要素がホンマノオトには入ってきてしまうのはそういうわけです。

★特に、文化人類学的成果と社会学的成果と法哲学的成果を交えて描くので、わけがわからないということになるでしょう。最近わかりやすいと言われるようになってきましたが。「私立学校研究家」の方法論は、PBLを先生方といっしょにつくりながら、フィールドワークやインタビュー、思考コードによる学びの分析、アクティビティの分析などしながらその痕跡をホンマノオトに描いていくということです。フリーのブログなので、いずれは抹消されるのですが、学問的価値というより、リアルタイムのリフレクションを先生方や私立学校選択者と共有するというのが目的です。

★大学で客員教授もやらせてもらっていますが、なかなか授業のアンケート調査では学生から高評価で、私自身驚いているのですが、研究者としてではなく、PBL教育という側面での評価にすぎません。講義よりPBLの方が知的好奇心が湧いてくるというのが大きな理由のようですから、ある意味PBLの有効性を一部分だけれど証明したことになるかもしれません。

★小学校の3,4年生のクリエイティブワークショップも実践する機会もいただいて、それはもう自由に生徒とやっています。ヘルマン・ヘッセの未完の書「ガラス玉演技」という知的世界の悟りの境地を描くつづきを継承している感覚で楽しくやっています。

★こんな感じの自分のポートフォリオ的なホンマノオトなのですが、共有してくださる方も多く、心から感謝している次第です。この間中学3年生でホンマノオトを読んでいると声をかけられて、ものすごく驚き、超嬉しかったですが、遅すぎますが、もうちょっと責任をもって書かなくてはと背筋が凛としました。

★ホンマノオトの性格は、そんな感じなので、共有してくださる方々の価値観も実はぐっと絞られてきます。偏差値至上主義者はまず読まないでしょうし、歯牙にもかけないと思います。ですから、ある一定の水準の年収層の方々でどのような仕事で活躍している方々が訪問してくださるかは、個人的な興味もありますが、社会的な動向を感じるのに役に立つのではないかと思うのです。もちろん、全体なんて見えません。あくまで一片です。

★なにせ、3%のミドルマス以上の集団の中のさらに20%(ホンマノオトの訪問者の推計割合)、つまり日本全体の働き手の0.6%のメンバーの価値志向性の話ですから、それはそうでしょう。

★しかしながら、この集団が日本や世界に影響を与えるプレイヤーだとしたらどうでしょう。この中から正のシナジー効果を生みだすバタフライ効果を見出せるかもしれません。あくまで超仮説にすぎませんが、希望を発見できるかもしれないのです。

★そんなわけで、首都圏中学入試のピークである2月1日から入学者説明会がほぼ終わり、入学者が決まる15日までの間に限定し、アクセスしてくださった方の業種別割合を上記のグラフに示しました。

★今は訪問者の60%がスマホでアクセスされるので、パソコン経由のデータにさらに絞られた結果ですが。

★大学と小中校合わせて38.5%です。大学と言っても、東大と京大をはじめとする国立大学以外は、附属系列ですから、大学のプロバイダー経由で小中高の先生方がアクセスしていきていると思われます。したがって、30%は小中高の先生方が訪問されていると推定しています。

★メーカーで活躍されている方が次に多いですが、マスメディア、サービス業、情報通信を合わせると、36.5%です。ここで活躍されている方は、第4次産業革命時代、あるいはソサイエティ5.0時代において、クリエイティブクラスと呼ばれる方々です。

★20世紀末にリチャード・フロリダ教授によって提唱され、産業構造を転換する第4次産業の出現ということで、一時話題になりました。そしてその延長上に第4次産業革命とかソサイエティ5.0が構想されていったわけです。

★高い階層の中で、ファーストクラスとクリエイティブクラスに分岐する時代ということです。このクリエイティブクラスがファーストクラスが構築してきた強欲資本主義を創造的資本主義というフラットでフェアーな市場を創るのではないかと、ビル・ゲイツなどは世界フォーラムで語っているのですね。それが正しいかどうかはわかりません。

★しかし、経済学の世界でも、人口成長論による経済発展を描くのではなく、<新しい学びの経験>を生み出す内生的経済成長論を提唱する経済学者が、ここ数年ノーベル賞を受賞していますから、新しい経済社会への希求は膨らんでいるのでしょう。

★この希望を生成する可能性が高いのがクリエイティブクラスです。ホンマノオトにアクセスしてくださる教師もクリエイティブクラスです。内生的成長論を提唱しているポール・ローマ教授がその先生方の授業をみたら、これこそ<新しい学びの経験>の開発ではないないかというでしょう。

★メーカーの方々の中にも、ものづくりという創造性を横断的に異業種と結びつける、社内クリエイティブクラスの方々がいます。おそらくその方々がアクセスされているのでしょう。

★SDGsの企業内の動きの一部には、このクリエイティブクラスの影響も大きいかもしれませんね。

★公共機関からもアクセスがありますが、意外と医療系が多いのです。そして、もう一つ。そこがどこかは想像におまかせいたします。

★そんなわけで、ホンマノオト21は、クリエイティブクラスの超ゆるやかなネットワークの共振に一役ではなく0.6%買っているのではないかと推定しています。Well-beingの社会がアッパー層自らが解体する逆説的な動きによって生まれてくる。佐藤学先生も苅谷剛彦先生もスルーしてきた針の穴からしか見えない領域に実は大きな契機があるのかもしれませんね(^^)。私立中学入試において新タイプ入試が支持される新市場の創発は、まさにそうでしょう。本ブログが、クリエイティブクラスの化学反応の一触媒にでもなれれば幸いです。これからもよろしくお願いいたします。

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2020年2月17日 (月)

第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(3)

★首都圏模試センターの取締役・教育研究所所長の北一成氏のキーノートスピーチの題目は<「2020年度中学入試の総括から考える2021年度中学入試の動向」中学入試のさらなる動き~新タイプ入試とPBLで生徒1人ひとりの才能が開花する。>でした。

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★1/10に行われた栄東中A日程入試の志願者は男女計6,220名。今年も日本一大規模な入試となったという話から14校の特徴的な話題を丁寧に印象強く語るところから始まりました。2020年中学入試の特徴を象徴するトピックの話です。

★印象的だったのは、圧倒的に東京、埼玉エリアが勢いがよく、千葉・茨城エリアは来年にむけて何か起こりそうな気配があるのに、神川エアについてはあまり言及がなく、少し心配になりました。まるで、神奈川エリアの私立学校は、一部を除いて、横浜市立南高校附属中の勢いに気おされたかのごとくです。つまり、適性検査とう思考力型入試の旋風が神奈川エリアをおそったというのでしょうか。

★その分析に入る前に、首都圏中学入試の受験者数の推移という基礎データを公表しました。おそらく今回、どこよりもはやくリリースされたと思います。

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★リーマンショック前夜の50,500に追いつく勢いの49,400名が2020年首都圏の中学受験生の人数だということです。この勢いは、2021年以降どうなるのか?それを読み解くためにも、トピックの背景にある中学入試の構造の大きな変化を北氏は鋭く分析していきます。

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★キーワードは<多様化>です。生徒1人ひとりの学びの価値観、進路の価値観などが大きく変わり、同時に個別化している社会的変動を、塾の多様な在り方に重ね合わせて論じていました。そして、その生徒1人ひとりの価値観や才能を開花する機会を創るために、多様な新タイプ入試が創られるようになったのだと。

★この新たな受験市場は、まだまだ大きくないが確実に広がりを見せているというのを、22校の新タイプ入試取材のケースをあげて参加者の共感を呼びました。そして、2021年中学新学習指導要領の実施、紆余曲折あるものの大学入試改革の進行、東京オリ・パラに向けて開発されている都心のインフラ整備と不動産市場の活気、人口増などの社会的影響と、東京の公立中高一貫校が完全中高一貫校になったり、茨城の名門高校の3校が中高一貫校になったりするなど思考力型の適性検査の受検生増の影響など、私立中学も思考力をベースにした多様な新タイプ入試になっていく洞察を披露しました。

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★その勢いは、今後経済的なダメージがあったとしても、おそらく余計にそのリスクをマネジメントするためにも2024年くらいまでは増え続けるのではないかということです。

★リスクを回避するには、かなりのクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングを必要とするでしょう。それは今までの自分の価値観や方法論を捨てて新たな価値観や方法を生み出す自己変容能力が必要になるからです。

★北氏の鋭い洞察力に基づいたスピーチを聞きながら、投資型中学入試や消費型中学入試という従来の経済学的な側面からみていた学校選択の志向性からどうやらリスクマネジメント型学校選びにシフトしたと思いました。

★いずれにしても、入試問題は学校の顔です。新タイプ入試も学校の顔ですから、その裏付けにはPBL授業があります。和洋九段のPBL入試の取材を通して、この新タイプ入試も生徒1人ひとりの才能を大切にする入試であり、だからこそ新市場で支持されたのだと。次の和洋九段女子の中込校長に、ラグビーよろしくボールが見事にパスされました。

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第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(2)

★今回の「新中学入試セミナー」は、ワークショップ型セミナーであったため、定員は30名限定、それでも当日参加申し込みされた方もいて、参加率110%でした。ありがとうございます。ワークショップのリハから本番まで、和洋九段女子の6人の中3生が大活躍してくれました。ファシリテーターであり、企画開発者であるのですが、受け付けでおもてなしするマインドも発揮してくれ、あたたかい雰囲気を生み出してくれました。本当にありがとうございます。

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★そして、いよいよ幕は開きました。総合司会は、児浦良裕先生(聖学院21教育企画部長)と田中歩先生(工学院教務主任)です。2人は21世紀型教育機構の教育研究所センターのリーダーで、このワークショップ型セミナーのスタイルを昨年から企画実施し、今回の集大成に導きました。

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★このスタイルのポイントは、21世紀型教育の肝である教師と生徒が共に学びを創発する環境を顕在化することでした。毎回Z世代である在校生がワークショップのファシリテーターやプログラム開発、広報活動を行います。会を重ねるごとに、教師の手から離れ、自分たちでネットワークを広げ、パブリックオーディエンスに共感の輪が広がるワークショップを生み出していくようになりました。

★今回の和洋九段女子のZ世代6人もそうでした。6人のワークショップは、私たちの存在の根源に立ち還り、そこから創発が生まれる仕掛けが創意工夫されています。これぞ「主体的・対話的で深い学び」です。

★まず、首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成氏のキーノートスピーチから始まりました。(つづく) 

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2020年2月16日 (日)

第4回新中学入試セミナー PBLと新タイプ入試が生み出す<自己変容型マインド>(1)

★本日2月16日(日)、和洋九段女子フューチャールームで、「第4回新中学入試セミナー」が開催されます。30人の定員は満たされ、じっくり中学入試マーケットの動向と新市場創出を顕在化させたワークショップマインドについて、キーノートスピーチに耳を傾けたり、体験をしたり、ディスカッションしながら、子供たちの未来のビジョナリーをシェアするセミナーになると思います。

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★早朝から、和洋九段女子の生徒はワークショップのリハーサルをしています。

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★プログラムのブローシャ―の確認や流れ、運営の最終打ち合わせなど念入りにしているところです。

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★セミナーの空間は、最初弧を描くスタイルだったのですが、もっとカジュアルにブリコラージュ型の方が共感的スペースになるのではないかということになったようです(笑)。いいですね。

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★登壇者も打ち合わせ。ワイワイガヤガヤ。

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★北氏の圧巻のデータもセッティングされました!

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★はやくも参加者の方々がいらっしゃいまた。つづきはまた。

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2020年2月15日 (土)

聖学院の思考力入試 市川理香氏の感動取材!12歳の男子が発揮する内なる力を目撃!

★中学受験生が学ぶ過程で、社会に存在する多様な心の壁を突き崩す本物の力を育んでいく教育の機会を入試問題の場でも創っている学校を探している教育ジャーナリストがいます。市川理香氏がその人です。その市川氏が、<12歳の男子が内なる力を発揮する、聖学院の「ものづくり思考力入試」>というすばらしい記事を、首都圏模試センターサイトに寄稿しています。

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(写真は、首都圏模試センターサイトから)

★内容についてはぜひご覧ください。市川氏は、「思考力入試は受験生の可能性を見つける入試であるとの思いを強くした取材でした」と結んでいまますが、そう感じ入った理由が市川氏の視線を追っていくと共感できるように美しく綴られています。

★私は、市川氏が冒頭で「思考力入試の先鞭をつけたのは、まちがいなく聖学院でしょう」と語らざるを得なった理油に少しだけ思いを馳せてみたいと思います。

★記事によると、問1は、「自分がうっかりやってしまう失敗」をレゴで表現し、それをさらに150字の文章として言語化するところから始まてっています。

★このこと自体もう凄まじい問題です。「知識」が学びの中心にあるのではなく、「私とは何者か?」から、もっと言ってしまえば「汝自身を知れ!」という遠くギリシア哲学の時代から問われ続けてきた人間の根本的な「存在問題」についていきなり問うているのです。

★そして、思考力入試を創発している先生方の勉強会では、オットー・シャーマ教授のU理論が学ばれていますが、その実践版が思考力入試になっているのには驚きです。

★人はみな痛みを持っています。しかし、痛恨の失敗から学ぶこともまた多く、自分の痛みや弱みをじっくり省みることから私を知る道を歩むことになります。その入口が問1の役割となっているのです。

★児浦先生によれば、ここは第二の脳である手を使いながら、自らのうっかりを思いめぐらし、そのあとに言語化に転換していくことで、自分の痛みを内なる魂に変容できるということです。その痛みを、聖学院は、賜物=タラントと呼び、そこから才能が溢れてくるのです。まさに市川氏が看破した「内なる可能性」ということでしょう。

★問いが進むにつれ、社会の痛みを表現するデータや情報に触れていきます。最初は「私」という存在から始まりますが、次は「私たち」という存在に広がっていきます。私for私たちとなるわけです。これはオンリーワン・フォー・アザーズという聖学院の理念そのものです。

★さらに問いが深まてちくと、人間存在の根源的痛みを生み出している地球規模の問題にぶつかるようになっていきます。この根源的存在が根本的問題に触れたとき、稲妻が走ります。それを解決しようという意志と解決策というアイデアです。

★しかしながら、それが共感を生むかどうかは、仲間と共有することでしかわからないのです。だから、市川氏の洞察力は、次のように最後の共有の時間の価値を高く評価するのです。

<自分の作品について、他の受験生に言葉で説明します。その後、他人の作品の着眼点や発想を聞いて気づいたことワークシートに書くのが、「共有」と呼ばれる最後の時間。人の意見に耳を傾けて、自分の意見と比べたり、なぜそう思ったのかを受け止め改良したりする姿勢が問われます。>

★聖学院の「ものづくり思考力入試」は、どれだけ知識を獲得し、すばやく使えるかを表現する入試ではなく、自分の可能性を聖学院でどれほど見出していけるか、私のポテンシャル=タラントを表現する場だったのです。12歳の春、少年は人間として大地に自らの足で立ち、仲間と共にたちはだかる物心両側面の壁をぶち抜いていく意志を強くするのです。そんな宣言を高らかに謳う自己表明の場が聖学院の思考力入試なのです。強い意志を、自らの痛みから生み出した人間ほど強く優しいハートを持って生きて行くことができるのはないでしょか。

★明日、2月16日(日)、児浦先生は「新中学入試セミナー」で、思考力入試で育つ生徒たちの姿を語ってくれます。

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八雲学園 さらに進化する教育の総合力 生徒の無限のポテンシャルが生まれる複合的なPBL(了) 衝撃感動の波のうちに

★高1の数学の授業を見学したときのことです。なんと7年前にインタビューした八雲生がそこにいるではないですか!もちろん、数学科教諭豆塚先生として。あの当時から、数学の教師になりたいと語っていましたが、自己実現を果たしのです。凄いなあ。一つ目の衝撃感動の波が押し寄せてきました。授業見学しながら涙腺をゆるめていたら変人だと思われるので、こらえるのが大変でした。

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★八雲学園は少人数ですが高校募集も開始しています(来年の募集からは、いよいよ男子も募集します)。中高一貫の中に混合するスタイルですから、進度の違いを補うために高入生の取り出し授業を行っているのです。

★そのため、授業は終始対話型で、ある意味チーム学習になっていました。授業の最初の20分は、朝テストの解説でした。テストの時間は7分間ですから、かなり丁寧な解説でした。

★解説というより、問答形式の対話です。テストは大きな問題が2つ出題されています。1つはパターンや公式ですぐに解ける問題。もう一つは、パターンや公式を機械的にあてはめようとしてもできない問題です。豆塚先生によると、「この見極めの<判断力>を、このような問いの設定によって、試行錯誤しながら、徐々に鍛えて、直観的に選択判断できるところまでいけるとよいと思っているのです」と数学的思考力についてさらりと語ってくれます。

★同行してくれた衛藤先生も、「三角比の問題は、幾何と関数の間をいってきたりする思考過程が大切ですから、やはり切り替えの判断力はポイントになります」と。数学の問題を解くということの意味は、判断力と転換力とか、そのような数学的思考力を背景に有しているのだと気づかされました。まるでルビンの壺を見たときのように、2つ目の衝撃感動の波がやってきたのです。

★残りの時間は、統計学の世界です。分散グラフから相関などを読み取っていく問題です。豆塚先生は、数学を解くことは思考力を必要とするのは当然だけれど、思考力を使っているという意識をする分野が、新学習指導要領では注目されているからと、読み解きの根拠を語り合いながら授業を進めていきました。実に丁寧な授業展開です。

★しかしながら、一見するとPBL授業がさらに進化して展開しているとはすぐには気づきませんでした。むしろ、衛藤先生の教え子らしく、丁寧に対話をしながら問題を考える姿勢を形成していく授業をちゃんと継承していると感動していました。そういう意味では、Parfect Mastery based Learnigがここでもなされていたのです。むjしろ、これが近藤理事長校長が日ごろから語ている、私立学校はファンミリーが創っていくものだということの具現化だと3つ目の衝撃感動の波が押し寄せてきていました。

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★授業終了後、衛藤先生と豆塚先生と少し対話ができました。そして、大きな衝撃感動の波に包まれることになったのです。衛藤先生が豆塚先生の丁寧な授業を評価し、ほめているところは、まるで生徒に声掛けをしている時の姿そのままなのですが、そこから一挙に対話は深くなりました。自分の世界観を深堀するというのが八雲学園の教育の根底にはありますが、その教育理念がここにまで浸透していたのです。

★豆塚先生は、数学教師になるために超難関国立大学の数学科で研究してきました。応用数学というより純粋数学だったようです。ですから、あの丁寧な授業実践の背景には、きちんと数学のものの見方や考え方を理論化する視点をもっていたのです。

★PBLというと憧れの最近接発達領域(ZPD)という考え方がベースにあると言われていますが、豆塚先生の丁寧な対話型の授業もそれは同じですか?と聞いてみると、間髪入れずに、「はい。というよりも、数学の授業はもともと最近接発達領域をとても大切にしています。特に八雲学園の数学の授業はもともと伝統的にそうです。生徒によってわかる領域と可能性の領域までの距離が違いますから、難しすぎても簡単すぎてもうまくいきません。それに生徒によってそのギャップは違いますから、問題設定の段階で、ある程度仕掛けますが、生徒全員に出すので、必ずしも全員にその領域がマッチングしているわけではありません。だから、解説のときには対話を通して、それぞれの最近接発達領域を見出し共有するのが大事ですね。」

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★すると、衛藤先生が「たしかにそうです。大事にしてきました。しかし、最近接発達領域という言葉を使ってはこなかったですね。それは実践の中で暗黙知として実施されてきました。でも、豆塚先生のように、そこを言語化できると、生徒と共有もできるので、数学が解けるようになるだけではなく、苦手意識をもっていた生徒も数学的思考を学ぶ意欲を持てるかもしれません。卒業生が戻って来てくれて、新しい知を持ってきてくれます。私たちも学び直しをしようと思います」と、控えめな姿勢がすてきでした。美しい師弟愛がそこにはありました。

★八雲学園の教育の進化は、世の中の流行りの教育方法をパッケージとして取り入れることによっては生まれません。そのことは、幾度か述べてきました。あくまで、生徒自身が内なるニーズを先生に表現したとき、教師は動き始め、創意工夫します。進化の原動力は生徒の魂とそれに共感する先生方の創意工夫なのです。

★今回も卒業生という元八雲生の魂が、教師の心にまたまた火をつけたのです。

★そうそう、豆塚先生に、吹奏楽部の部長をずっとやってきて、今また顧問をやっているそうですが、それって数学と関係するのですか?と聞いてみると、「直接数学と関係があるというより、私にとっては、2つは両立するという考え方ですね」と。

★そして、そのあとすぐに、衛藤先生と目が合って、「つまり、正の相関」というフレーズを交わしていました。数学的思考で語り合う八雲学園の数学教師チーム。やっぱり涙腺はゆるみそうになりました。

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八雲学園 さらに進化する教育の総合力 生徒の無限のポテンシャルが生まれる複合的なPBL(2)

★今年4月で、八雲学園の共学クラスが中1から中3まで揃います。タブレット型PCを1人1台活用している環境が毎年拡大しているわけですが、その共学クラスPBL授業がさらなる進化をしているというので見学させてもらうことにしました。そして、驚きました。中1の近藤嘉彦先生の社会の授業の景色ががらりと変わっていたのです。

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★あの分厚い資料集はどこにいったのだろうか?まずそれを感じました。社会と言えば、あの分厚くカラフルな資料集。そう頭から思っていましたが、近藤嘉彦先生の手にはタブレット型PCがありました。

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★生徒も1人ひとりタブレット型PCを活用しています。近藤先生を見つめ、話に耳を傾けながら、指はキーボードをたたいています。

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★アーカイブなどの資料は、社会科のプラットフォームのデジタル資料室から取り出しています。近藤先生は、はやくからPBL授業を展開していました。グループワークを中心に、PCもチームで一台を共有して行っていました。

★しかし、今回は1人1台ということもあるのでしょうが、一見すると個人ワークになっています。定期テスト直前授業だからなのかなと思っていましたが、さらなるPBL授業の展開ということだったので、いや何かあると思い直し、焦らず授業観察をしました。すると、やはり私の浅薄早計な勘違いでした。定期テスト直前の学びであることに変わりはないのですが、その機会を利用して、クラス全体がONE TEAMとしてグループワークを行っていたのです。

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★しかも、その学びの目的は問い作りでした。どういうことか?生徒1人ひとりが知識や技能を習得し活用するには、与えられた知識を憶えたり、与えられた課題を解決するだけでは不十分です。しかも、PBLは、学び方を学ぶ主体性を育むことも目的の1つです。したがって、与えられた側から自ら提案する側に転換するトランスフォーミング能力を必要とします。

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★この転換し変容する能力を養うには、自ら問いを発見し提案する力が大切であると、ときどき授業の解説を河東田社会科主任がしてくれました。

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★なるほど問いを自分で創れたら、それは思考力の扉を開き、自問自答とディスカッションを加速させることになるでしょう。だから、生徒1人ひとりが定期テスト対策として問いを創り、プラットフォームに送信して、それをONE TEAMとしてのクラス全員で相互に解き合っていたのでした。

★河東田先生は、「外から見ていると、個人ワークですが、プラットフォーム側からみると、グループワークになっているし、得点などを競い合っているのです。そとから見ている部分はParfect Mastery based Learningで、プラットフォーム側からみていると、Project based LearningかつPlayful based Learningになっているということでしょうか。デジタルネイティブの生徒にとって、リアルスペースとサイバースペースを複合的に活用することは当たり前です。逆にその学びの空間を一方にだけ限ると、集中力が続かなくなります」ということです。

★近藤嘉彦先生は、「共学学年の社会科は、どの教員もこのような複合的PBLを行っているし、もはやタブレット型PCは欠かせないですね。それから、ちゃんとグループワークもやりますよ。記述式の問いを考えたり、探究的な問題解決のフェーズになったときなど、学びの内容に応じて変幻自在です。ただ、知識や技能にしろ自由記述にしろ、プラットフォームで共有しますから、学びのプロダクトの量と質はシナジー効果があふれ出ます」と教えてくれました。

★つまり、ICTを使うことは目的ではなく、リアルスペースからサイバースペースに入って対話や議論をするときに、その扉がタブレットPCだったということです。たしかにこのデバイスがないと、プラットフォームに入れません。タブレットPCが欠かせないとは、カギがないと家に入れないと同じ意味だったのです。大事なことは結局は対話や議論を通して考えプレゼンするという学びだったのです。

★Round Squareでバラザミーティングを大事にしているというところにつなっがた瞬間でした。

 

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八雲学園 さらに進化する教育の総合力 生徒の無限のポテンシャルが生まれる複合的なPBL(1)

★2020年の八雲学園の中学入試は、すでにご紹介したように多くの受験生・保護者に支持され、共学化3年目の教育に手ごたえを感じていると近藤彰郎理事長校長は語ります。そして、静かな情熱が伝わる静かな笑みをたたえながら、八雲学園の教育の総合力の進化にここまでという限界はないのですと。

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★さらにこう語ります。

「中学受験業界の方々には、共学校教育も進学準備教育もグローバル教育もPBL授業もICT教育も、時代のニーズと生徒にとっての必要性の両方に応じて最新の教育標準装備をしていると評価を頂いています。たいへんありがといことです。ただ、私たちは標準装備以上のクオリティの高い教育の総合力の環境を創意工夫し続けていきます。ここまででよいということはありません。

なぜなら、お預かりした生徒1人ひとりの可能性が生まれる教育に限界はないからです。ウチの先生方が一丸となって挑戦し続けるからこそ、生徒も自分の興味関心を深め、世界観を深堀していくわけです。そしてその結果多くの人と協力し合って世界を社会を創っていく貢献をしていきます。現状すでにそうなっていますが、もっともっとです。

それに、彼らを待ち構えている未来は、そんなにバラ色ではないのです。待ち構える悪循環の世界を好循環の世界に切り替えていくには、相当タフな知恵と尽きない思いやりが必要です。それには、限界のない教育の総合力で生徒1人ひとりのポテンシャルをもっと支えていくことが大切だと思っています。」と。

★2020年中学入試を終えた直後にお会いした近藤理事長・校長からは、みなぎる気概と情熱が伝わってきました。さりげないけれど、勝って兜の緒を締めよという雰囲気でした。同校の空手部に象徴されるように、たゆまぬ日々の精進と建学の精神に立ち戻り、新たな気持ちでまた出発するという覚悟を感じたのです。

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★その後、さらなるPBL授業の進化が展開しているというので、見学させていただくことにしました。その合間に英語科主任で海外・英語特別委員長でもある近藤隆平先生が語り掛けてくれました。昨年12月のセミナーのときに、STEAM留学を行うかもしれないという話を聞いていたのすが、それが1月には実現しその俊敏力に驚愕していたばかりだというのに、その1カ月後、また新しい企画を実施するというのです。「はっきり決まったら公開しますが、多様なPBLのうちの一つであるParfect Mastery based Learningをオンライン上で行える最新のプラットフォームと提携する予定なんです」と。

★エッセイライティングを除く、すべての英語のスキルをオンライン上で学ぶことができる環境のようです。スマホで見せて頂いたところ、IELTSやTOEFLでスコアをあげることが目標で構築されています。近藤隆平先生によると、「ICTやネットを活用すると、知識の習得や活用の熟達を促すのはかなり充実するし、効率も良いのです。それはのちほど社会科の授業をご覧になっていただければおわかりいただけると思います。それは英語も同じです。そして、社会もそうですが、さらに思考力を深める論述やエッセイライティングなど探究の時間をたっぷりとれるということになります。八雲学園のPBLは、本間さんのお考えともシンクロすると思うのですが、生徒の学習の状況に応じて多様なPBLを組み合わせて複合的にデザインしていきます。このプラットフォームを活用するPBLは、Parfect Mastery  based Learningで、ある意味反転学習かもしれません。そのうえで、Problem based LearningやProject based Learningをじっくり取り組めるようにもなれます」ということです。

★もちろん、重要なことは、生徒1人ひとりがこのプラットフォームを有効活用しているかどうかをマネジメントすることではあるけれど、たぶん最初はいっしょに歩きながら調整していくが、そのあとはProject based Learningと結びつくことによって、学び方は管理されるのではなくて主体的につくっていくものだという実感を生徒自身が抱けるようになっていくのが本意だということでした。

★近藤理事長・校長の言う、標準装備以上の教育の総合力のクオリティを高め続けていくという話が、ここにつながるのだと了解できた瞬間でした。 

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2020年2月14日 (金)

「2020年入試総括コラボミーティング」in 品川翔英~「時代」を語る学校から「生徒の存在そのもの」を語る学校へ(1)

★昨日2月13日(木)に、品川翔英(現小野学園女子)で、首都圏模試センター主催の「2020年入試総括コラボミーティング」が開催されました。首都模試の模試会場で保護者会の講演者を中心とした各情報シンクタンクの代表、教育ジャーナリスト、受験案内編集者、入試問題の分析解答解説の編集者など同校の先生方も交えて総勢40名が一堂に会しました。

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★首都圏模試センターの取締役・教育研究所長北一成氏の司会のもと、4時間にわたる入試分析会となりました。各参加者が今年の入試結果と分析・感想を多角的な視点や視座でプレゼンし、大量の情報をシェアする有意義なミーティングが行われました。

★6年連続の私立・国立中学受験者増の背景にある、様々な動向について情報共有が次々行われ、最終的には、北氏は2020年中学受験人口の上方修正をするにいたるほど、具体的なポジティブな情報が集まっていました。

★中学受験人口動態や今年の中学入試の動向やトピックについては、近々の各メディアで公表される段取りになっているようです。これだけの情報収集分析者の多角的で多様でバードアイと地域密着の複眼視点で語られる情報を集約して発信できる首都圏模試センターのプラットフォーマーとしての役割は絶大です。得難いものだと感動しました。

明後日2月16日(日)、和洋九段女子で開催される「新中学入試セミナー」でも、北氏は登壇し、そこで今回集約した最新情報をまとめてプレゼンテーションしてくれるということです。楽しみです。

★印象的だったのは、この間の改革ムーブメントの風に乗ってあるいは風を巻き起こし、「時代」を語り、グロバル教育、アクティブラーニング、STEAMといった教育の「標準搭載」をしてきた学校の人気は落ち着き、今度はそのような時代が到来するからこそ、今後どのように生き抜くか「生徒の存在そのもの」に寄り添った個別最適化と生徒の存在の未来における価値を高める教育を実装している学校に人気が集まったのではないかという読み解きが多かったことです。2021年の中学入試は、経済的・社会的な混迷を極める時代にあって、生徒の「存在」を核とした学びを追究する学校に人気が集中するということでしょうか。

★もともと私学の建学の精神は、そこが原点ですから、根源的な教育に回帰することで、受験生・保護者の想いとシンクロすることになり、少子化及び経済の危うさの中にあって、中学入試を受ける人口は増えるという不思議な現象が起こるのかもしれません。それが中学入試の新時代の扉を開くということなのかもしれませんね。

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2020年2月13日 (木)

和洋九段女子 入学手続き者前年対比150%!創発型PBLが生み出す生徒の良質活動支持される!

★和洋九段女子の中込校長、新井教頭、水野先生とお会いしました。2020年中学入試は、入学手続き者前年対比150%だったということです。この3年間全クラスのPBL授業に取り組み、生徒の主体性や自由闊達な創造的活動が生まれる環境をつくってきましたが、それで大学合格実績がでるのかという先入観を払拭できず、生徒募集に爆発するにいたりませんでした。

★しかし、そのPBL型授業の取り組みが過疎の村の町おこしPBLやグローバルなPBL教育に飛び火し、SDGsの活動では、生徒が企業やNPO、国連広報センターとネットワークと絆を深め、PBLの学びは深まりました。今では、その学びが自分たちのオリジナルのワークショップを企画運営するにまで展開し、大学のPBL研究会などのに招かれて大学生とコラボするようになっています(2月16日の新中学入試セミナーでは、彼女たち自身によるミニワークショップが行われます。みなさんで参加しましょう。)

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(左から新井先生、中込先生、水野先生。感謝と手ごたえを感じているということです。)

★PBL型授業を全クラスに貫徹する取り組みは、6学年すべてに揃いました(本格的には今の中3が高3になったときであと3年後の予定でしたが、3年である程度のところまで到達したのです。)。その涙ぐましい努力は、なかなか外からは見えませんでした。しかし、生徒がどんどどんPBL授業から創発活動を生みだし、外とのネットワークを組み始めたのです。

★また、彼女たちは、学内では、学校説明会の体験授業などでサポートを買って出て、受験生に憧れの先輩となったのです。

★3年前のPBLは今では、新井先生をはじめ多くの先生方が異業種の集う多様なワークショップに参加して、自己マスタリーを続け、どんどん腕をあげています。認知科学とEQを融合したマインドフルネスなPBLにアップデートし、知と愛の共感的創造的コミュニケーションの足場を創り出したということです。

★教師の外部ネットワークとの結びつきと生徒の外部ネットワークとの結びつきが相乗効果を生みだし、創発型教育を拡充しはじめたのです。受験競争に備える促進教育ではなく、創発型対話や協働の能力を拡充するエンリッチメント教育が中学入試市場で共感を広め支持されるようになりました。

★もちろん教育の質を高めただけで応募者数は増えません。かといって合理的で計算可能なマスマーケティングというスケールメリットを活用したわけではありません。ONE TO ONEマーケティングというスモールサイズの体験授業によって共感を生み出す広報活動をしたのです。

実は2月16日(日)は、そのセオリーにのっとった新しい広報戦略のスタートでもあります。もちろん、本当の理論はかなり科学の最前線の成果を活用した和洋九段女子のオリジナル広報戦略です。特許をとったほうがよいかもしれません。いったいそれは何か?それは、企業秘密です。もし知りたければ、2月16日から始まる広報活動を研究するとよいでしょう。

 

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和洋九段女子のPBL型入試『急ぎたいなら一人で行きなさい。遠くに行きたいならみんなで行きなさい』。市川理香氏の感動記事。

★首都圏模試センターのサイトに<和洋九段女子、従来の枠組にとらわれない「PBL型入試」>という感動的な記事が掲載されています。同センターの北一成氏と双璧の中学入試の情報収集分析洞察に優れた教育ジャーナリスト市川理香氏の記事です。市川氏のライフワークの一つはジェンダーギャップを解決する女子教育の研究ですから、中学入試の切り口は独特です。

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(写真は首都圏模試センターサイトから)

★その市川氏が注目した和洋九段女子の「PBL型入試」。氏は、従来の枠組みにとらわれない新しい大切なものを発見しています。それが何なのか詳しくは同記事を是非ご覧ください。

★そして、2月16日(日)和洋九段女子で、<新中学入試セミナー>が開催されます。そこでは、北氏も登壇し、この和洋九段女子のPBL型入試の重要性、つまり2021年の中学入試のさらなるウネリをつくる要因の一つとして紹介されることでしょう。いったいどんなウネリが生まれるというのか、北氏のキーノートスピーチが楽しみです。

★それにしても、市川氏は、PBL型入試を、中学入試は顔であるというセオリーにのっとり、次のような文章から記事を始めています。

<和洋九段女子では、現高3生から段階的にPBL型授業を取り入れ、現在は教科を問わず学校を上げてPBL型授業を行っています。壁面すべてがホワイトボードになっているフューチャールームでタブレットを活用しながら行われる授業は象徴的。2019年から入試でも「PBL型入試」を導入し、2020年は2月1日午前、フューチャールームを会場に行われました。>

★PBL型授業が和洋九段女子の教育全体を温かく柔らかく包んでいることを踏まえてから記事を編集するところはさすがです。

★また、当日PBL型入試をサポートする高2の生徒へのインタビューも欠かしていません。

<「PBLの授業は、どう?」と聞いてみました。「たくさんの自分とは違う意見が聞けるのがいいです。それにふだん、他愛無い話をしている人と、まじめに意見交換するので、その人のいろいろな面を知ることができるのもいいなと思います」>

★ここには、会話と対話・議論という多様な言語活動が和洋九段女子で行われていることが優しい眼差しで示唆されています。

★また、110分のPBL型入試ですから、ブレイクもあります。そのときの様子も記載しています。

<受験生は事前におやつや飲み物を持参するように言われており、高2生もグループに混ざり、小さな茶話会の様相を呈します。朝と同様に、学校生活のこと、中学受験のきっかけ、部活のこと、クラスや部を超えた関係など、和気あいあいとしたなかで話が盛り上がっており、まるでクラスのお弁当の時間のよう。>

★記事には、PBL型入試の流れが丁寧に記載されています。いきなりビッグクエスチョンがでてくるのではなく、足場づくりの問いや対話や思考が続きます。ビッグクエスチョンを多角的に自由に創発的に、考え、議論し、チームで提案をプレゼンするには、チームの信頼関係など安心安全な場づくりが大切だからです。

★しかし、一方でこのようなブレイクを挿入し、情緒の側面からも足場づくりをしているのです。PBL型授業は、知と愛の結晶ということでしょう。

★試験終了後は、サポーターの高2生が出口に花道を作ってハイタッチで送り出したことが記載されています。<ハイタッチ>。絆を深める瞬間の永遠です。このような関係が和洋九段女子の普段の教育の中で浸透しているということでしょう。

★記事の最後のパラグラフには、新井教頭先生の次のような象徴的な言葉が紹介されています。本格的PBL型授業を推進して全学年完成する2020年4月。新地平の幕開けです。

<『急ぎたいなら一人で行きなさい。遠くに行きたいならみんなで行きなさい』>

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2020年2月12日 (水)

2020八雲学園の中学入試 共学校としての評価高まる。

★2018年4月から共学化した八雲学園。2020年中学入試によって、中学3学年すべて共学クラスになります。最初は男子の応募者は女子に比べかなり少なかったですが、今年は応募者は、ほぼ1:1となりました。今年の手続き者173名(総応募者数は144名)のうち、男子73名、女子100名とバランスが良くなってきました。

★共学校として評価が高まったということでしょう。

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(サッカー部も新設。共学化の象徴的な部活になるか今後期待が高まります)

★それにしても、やはり今年の八雲学園の中学入試も厳しかったようです。出願総数は昨年と全く変わらなかったのですが、実受験者数は昨年より多く、それだけ合格率が難しくなったわけです。

★最終日の<未来発見入試>という新タイプ入試に61名も受験したというのも昨年までとは違います。横山先生や菅原先生によると、前日の問い合わせが多く、2月5日になっても、まだチャンレンジしようという受験生が昨年より多くなったことに驚くと同時に手ごたえも感じているということです。

★この時期、例年だと中学入試の話題一色だったのですが、横山先生、菅原先生、衛藤先生との対話は、世界各国のリスクへの対応の話題も多かったです。Round Squareの加盟校になったことによって、各国のエスタブリッシュスクールとの交換留学が盛んになっているわけです。

★それだけに、世界を脅かす感性症や異常気象、テロなど世界の情報を収集し、リスクマネジメントを、今まで以上に強化しなくてはなりません。今後世界から日本へは留学にくるけれど、日本から世界に出ることはなかなか難しくなる可能性も考えなくてはなりません。

★Round Squareのようなコミュニティに加盟していないと、グローバル教育の発展そのものが止まってしまう可能性もあります。

★すでにリスク世界と呼ばれている今日、政治や経済だけではなく、教育にも影響を与える時代が到来しています。

★国内だけの閉鎖空間での教育では、子供たちの未来を描くのは難しくなっていますが、だからといって、海外への留学もリスクが高くなる可能性があり、どうバランスをとっていくのか、今後ますますリスクマネジメント能力の高い教育力が期待されるようになるでしょう。

★受験生・保護者の学校選択と子どもたちの未来の在り方の関係は、偏差値だけで考えているととんでもないことになるかもしれません。2021年の中学入試は、ますます広い視野と多角的視点で選択する必要がでてきたと言えましょう。八雲学園は速くもそこまで見据えて教育を考えているのです。生徒の安心安全とチャレンジの両方を満足させる教育とは何か。八雲学園に学ぶ時代です。

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中学入試の学びから始まる<合格力以上の学ぶ力と未来を創る力>

★今年の2月1日から10日までは、いつもと違って多種多様な次元で対話が詰まっていました。いつもは、中学入試一色になるのですが、今年はもはや自分ひとりで情報を収集分析をしなくても、仲間が提供してくれるので、そんなことができたのです。

★それにしても、本当にみなさんは多角的な視座で、深くあるいは広く情報収集分析して洞察しています。いつもとは全く違う中学入試のプラットフォーマーの動きです。これ自体、中学入試の次の次元の到来を予感させます。

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★同じ組織に所属していないのに同じテーマで対話(face to face やメールのやりとり)が深まって行く感じは、まさにプロジェクト型の動きです。

★一方、この10日間のうちに京都の小学校の先生方と東京の小学校の先生方、中高の先生方とワークショップ型の対話も行いました。いずれも、PBLにおける<対話>の在り方で、そのメカニズムを言語化したり見える化したりしました。

★また、インドネシア人のサイエンティスト(幹細胞やiPS細胞を研究しているバイオテクノロジスト、薬学を研究している科学者、医学の道を究めている科学者。日本の大学に留学している最中です)とアーティストとのコラボワークショップにも参加し、人間は細胞レベルから対話が行われていることに気づき驚きました。そして、iPS細胞のPは、pluripotentの頭文字であることに気づき、いまさらながら、細胞レベルで、何にでもなれるポテンシャルがすでに埋め込まれていることに気づきまたまた驚きました。

★細胞も対話によって、それぞれの機能を決めていくわけです。まるで、人間の対話による学びがポテンシャルを広げ、自分の才能を開花していくのと同じです。というよりも、人間の細胞なのですから、細胞と人間はアイデンティティがあるのは当然です。細胞のポテンシャルは人間の能力のポテンシャルでもあるのです。

★このポテンシャルを使わずに、他者のポテンシャルの応援側だけけに回り、重宝される人材がロバート・キーガンのいう「環境順応型マインド」の持ち主です。20世紀社会において、つまり工業化時代において、このような人材は重要です。

★というのも、20世紀型社会のリーダー資質は、「自己主導型マインド」の持ち主です。生産管理の合理性、予見性、危機管理ができる知識をもっていて、自分の判断で、組織を回せる人材です。この自己主導型人材は、一握りで、あとはチームワークを形成できる環境順応型人材がたくさんいればよかったのです。

★ここに実は対話はないのです。指示命令が合理的であればよいのです。しかし、自己主導型人材の方法論は、通用しなくなったのが21世紀社会です。つまり、合理的計算可能性、予見性の確率が低くなってしまったのです。この原因は、専門分化した科学主義やコントロール型のガバナンス組織が、自然と社会と精神の全体的な生態系システムを分断して、自己都合型で強欲主義的な優勝劣敗型のシステムになってしまったからだというのは周知の事実でしょう。

★これに対する深い内省があって、全体的な生態系システムを、一方通行的なチームワークではなく、対話型のチームワークを通して回復しようという転換が起こっているのです。

★この転換の兆しが、中学入試の2科4科の問題の中に現れてきています。そして、新タイプ入試はそのものです。どういうことかというと、限定的な範囲で、つまり予定調和の範囲内で、知識や知識の活用方法を憶えればできる知識・理解あるいは応用・論理的思考力だけでは解けない問題が出題されるようになったのです。

★つまり、非限定的な未知の分野で自分で糸口を探し、問題解決を手探りしながら考えていく「批判的・創造的思考力」が必要になってきます。

★試験の時は1人で立ち臨む場合がほとんど(新タイプ入試は対話や議論もある場合も多い)ですが、中学入試の取り組みは対話や議論、多様な経験が必要になってきています。新タイプ入試は、2科4科と違い、かなりその要素が強く、塾では対応できない部分があり、各学校の体験授業会が大いに活用されるようになりました。塾主導の受験市場と学校主体の入試市場がコミュニケーションをしていく新たな動きが生まれています。

★要するに、今までのように合格する力だけではなく、予測不能な時代、自分の学び方をアップデートし、変化する社会の全体を理解し、問題を発見した場合、協働して新たに問題解決を創造していける「自己変容型マインド」を有した人材に成長することが求めらるようになったのです。

★この自己変容型精神を育てるのは、18歳までだとかなり確率が高いが、それ以降は、変わらないことはないが、確率は低いと言われています。今までは限定的な領域で知識や理解した内容を再現できればよかったのですから、自己主導型管理型で十分だったのです。

★しかし、これからの未来社会は、それでは通用しなくなります。そういう意味では、中学入試は18歳までに自己変容型マインドを養う準備期間に転換してきているわけです。

★この実感は工学院の田中歩先生や聖学院の児浦先生と対話して共有できました。

★中学入試から<合格力以上の学ぶ力と未来を創る力>の準備が始まっていると感じたわけです。このことについての具体的事例は、2月16日の「新中学入試セミナー」で大いに議論されるところでしょう。

★そして、このような準備を通過して、中高に進むと、そこには7つのPBLという環境があることについても見えてきました。(つづく)

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2020首都圏中学入試 厳しい受験 vs 選択眼の質向上 SAPIX・早稲田アカデミー・日能研の実績を通して

★昨日2月11日、筑駒、開成、麻布、武蔵、海城、栄光、聖光学院などが同日入学手続説明会を開催。これによって、複数合格者の進学先が1つに決まるので、この説明会が終了後、最終的な繰上がり合格の動きが起こります。

★受験生の複数校の併願が多いと、この動きは大きくウネりますが、受験生・保護者の選択眼が磨き上げられ、偏差値とのマッチング以外に、受験生の学び方や今後の生き方と学校の教育の質のマッチングを考えるようになると、この動きは小さくなります。

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★2月1日から2月12日にかけて、各塾の東京の私立中学の合格実績の公開数は、当然変わるわけです。したがって、SAPIX、早稲田アカデミー、日能研の合格実績の公開数の変化を見ると、おおよそ、そのウネリの大きさがわかります。

★2月4日と2月11日を比べると、例年に比べそのウネリは小さいかもしれません。4日の時点では筑駒はまだ合格発表をしていませんから、筑駒はぐんと増えたように見えますが、そうではありません。筑駒と開成、麻布、武蔵、駒東は併願が多いですから、これらの学校の繰上り合格数は、筑駒合格者分に吸収されています。したがって、繰上り合格が、どんどん他の学校に連鎖したというウネリは大きくなさそうです。

★実際、受験結果は、かなり厳しかったのでしょう。例年の歩留まり率で合格を発表すると、予定以上に入学者が増え、繰上り合格者を大妻中野のように出さないことをサイトで発表するというところまであったぐらいです。

★さて、上記の表でもう一つの特徴があります。今早稲田アカデミーは、SAPIXを追撃しています。開成の108名合格というのは、その象徴です。まずは、高偏差値の学校へ合格させる戦略なのでしょう。ですから、上記表の空欄の部分は、本来埋まるはずですが、現段階ではまずは高偏差値の学校の実績を公開しようということでしょう。

★日能研は、偏差値と教育の質のバランスを考えますから、偏差値の高低にかかわらず、教育の質の情報を収集し、受験生・保護者とシェアしていきます。

★したがって、聖学院のように日能研の合格者数が45名で、SAPIXの合格者数が5名ということは、教育の質の高さが支持されていて、実は偏差値がそれほど高くないにもかかわらず、入学後の成長率が高いということに、SAPIXの保護者も気づき始めたという学校です。かえつ有明、宝仙理数インター、八雲学園、武蔵野大も同様でしょう。

★広尾と三田国際は、学校の広報戦略が教育の質(もちろん高いのですが、質は見えないので)よりもマーケティングを巧みに活用しているので、SAPIXの保護者のハートを射抜いています。偏差値は目に見えます。教育の質は目に見えません。どちらを指向するかは価値観の問題です。消費者の価値観とマッチングさせる広報戦略がマーケティングの活用ですね。これによって、御三家のような学校との併願が多くなり、SAPIXの合格者が増えるメカニズムを作ったのでしょう。

★偏差値か教育の質か、それはジレンマなのかそれとも統合できるのか。広尾はそのジレンマの中にいるでしょう。三田国際はなんとか統合しようとしているでしょう。サバイブするというのはなんとも悩ましいですね。

★今や、高偏差値の受験生は、SAPIXと早稲田アカデミーに集中しています。しかし、それは首都圏の中学受験生の20%の話です。80%は、日能研と多くの個別塾や個人塾、最近では習い事塾や英語教室で学んでいます。各学校の教育の質をリサーチして、受験生・保護者と学校選択眼を磨く多様なプラットフォームですね。

★もちろん、その中に、将来SAPIXを脅かすかもしれないスピカやグノーブルという新しい塾も誕生しています。しかし、それも首都圏の中学受験生の20%のパイを奪い合う話で、教育という観点から見れば、80%の中学受験生の行方が本当はメディアでも話題にしなければならないでしょう。

★アドミッションポリシーとしての新タイプ入試とそれとつながっているカリキュラムポリシーの実現体である<新しい学びの経験>の創発を行っている学校は、日本社会の未来を支え、創る人材輩出のプラットフォームになります。このプラットフォームを唯一支持しているのが首都圏模試センターですね。

★同センターは、偏差値か教育の質かをジレンマとしてとらえません。統合する道もとっていません。評価軸の多様性によって、学びの価値観の多様性を生み出すプラットフォームとして中学受験市場のフレームそのものをパラダイム転換しようとしているのでしょう。

★上記の表でいえば、合格者数実績に空欄の部分がある学校などがそのパラダイム転換を生み出す拠点の代表例かもしれません。

★ともあれ、現状は、中学入試は、偏差値競争の場は20%で、80%は教育の質の話です。メディアは、そのうちの20%の領域を中学受験に縮減して報道しがちです。受験生・保護者のクリティカルシンキングという選択眼を磨く自助努力は重要ですね。でも、自助努力はなかなか大変です。多くの学校説明会や特に体験授業に出かけ、実際に学校の先生方と対話することがポイントとなるでしょう。

★実際、首都圏では、受験生・保護者―私立中学―塾―模試センターなどの連携・協働して中学入試に臨むようになってきています。合格以上に生き方まで考えるプラットフォームが中学入試マーケットです。中学受験マーケットは、合格のみを考える場です。どちらに移行するかは説明するまでもないような気がします。

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2020年2月11日 (火)

大妻中野さらに新しいステージへ

★大妻中野の教頭諸橋隆男先生は、各メディア・教育関係者に2020年の中学入試結果について第一報をリリースしました。

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(データは、大妻中野作成のもの)

★諸橋先生よると、

 主要入試である アドバンスト入試倍率は
2月1日AMアドバンスト:2,55倍・・・(昨年)2,16倍
2月1日PMアドバンスト:1,70倍・・・(昨年)1,67倍
2月2日PMアドバンスト:1,51倍・・・(昨年)1,52倍
2月3日AMアドバンスト:2,18倍・・・(昨年)1,51倍

となりました。近年では最高倍率でした。

★ということです。すごいですね。

★また、今年の中学入試の状況について、次のようなコメントもありました。

 <入ってくる情報によると、中位校が軒並み受験生にとって厳しい入試だったとのこと。本校も現段階では、多くの受験生に悲しい思いをさせてしまう結果となりました。昨日入学手続きも締め切り(国公立併願者を除く)、本日2月7日付で繰り上げ合格はなしと㏋にも公式発表いたしました。>

★ということです。特に女子校は、普遍的精神をベースにした特色ある教育を強い信念をもって実践している学校と大妻中野のように進取の気性に富んだ人間力を育成するイノベーティブな教育を実践しているところに応募者が集中したようです。

★諸橋先生は、大妻中野の今年の中学入試の特徴を次のようにまとめてもいます。

【特徴】
・実受験者が多かった(欠席率が低かった)
・実入学率が高いと判断し、合格者数を絞ったが、それを上回る率の手続き数となった。
・GLC(グローバルリーダーズコース)への入学手続き者数も過去最高。
 2クラスになる可能性もあり。
・平均点が高く、例年より学力も高いようだ。 

★この学力が高かったというところは、たんに受験学力だけではなく、どうも新しい主体性をもった生徒像の予感がする受験生だったようです。

★20世紀型の主体性ではなく、次の時代の主体性とは何か?それは観念的ではなく、実際に入学してきた生徒が形づくっていくでしょう。そして、それに呼応するかのように大妻中野の教育もアップデートしていくでしょう。実際に学内ではそのような動きになっているそうです。2021年は大妻中野のさらなる新しいステージにシフトするということでしょう。

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2020首都圏中学入試10日間のアクセスランキング50

★2020年の首都圏中学入試は2月1日から2月10日の10日間がピーク。今は首都圏は高校入試に移行しています。そして、本日11日は、開成や麻布、筑駒、栄光などが一斉に入学者説明会を開始しますから、併願で複数合格している生徒の行き先が決まり、同時に繰上り合格の流れが少し起こり、首都圏中学入試は終結に向かいます。

★したがって、この10日間の期間に絞って、ホンマノオト21のアクセスランキング50位までを眺めると、動向の一片が見えるかもしれません。

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(GLICCで開催している小3・小4のクリエイティブコースの言語のワークショップをサポートしています。はじまりは、科学や哲学、アート、社会問題、詩などの素材を使って、絵を描いたり、レゴで制作したり、ロールプレイをしたり、トランスフォーミングコンピテンシーがナチュラルに活用できるように対話をしながらやってます。世の中には10歳向けに大人顔負けの内容がやさしくでも構造はしっかり編集されている書籍が山ほど出版されています。既成の問題集は使いません。それは5,6年生になってからトレーニングしていけばよいので。それが終わったら、最新の児童文学を「飛ぶ教室」などを活用して読んでいきます。10,000字は超えるものが多いですね。物語の構造と葛藤と成長の関係性を思考スキルで分析する前に、読後のインスピレーションを絵やロールプレイなどで表現します。まずはワシづかみ。仮説や先入観などを立ち上げて、分析しながら拡張したり壊したりするわけです。物語の続きやパロディーを表現することは当然していきます。だから消しゴムとか使わないのです。すべての痕跡は子供の知の細胞ですから。児童から大人まで、この歳になると対話の多様性が心に染みます。)

1:2020中学入試 3つめの動向。高い意識の女子受験生の誕生。
2:2020首都圏中学入試 5つめの動向 SAPIX・早稲田アカデミー・日能...
3:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
4:三田国際 2020年中学入試を終え、目が覚めるような新機軸へ準備整う: ...
5:本日、首都圏中学入試ピークに!新しいウネリか混迷のウネリか予想不能な真っ...
6:2020中学入試市場が注目している動向や学校
7:2020中学入試 4つめの動向 東京の共学校の渦を通して
8:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
9:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
10:2020首都圏中学入試 東京と埼玉が勢いがよかったわけに、大事な動向が隠...
11:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出
12:【速報】工学院順調に生徒集まる。
13:2021年中学入試のウネリ ホンマノオト21アクセスランキング30を通し...
14:品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任
15:2020海城の社会と理科 アカデミックな問い
16:【2019年大学合格実績04】世田谷学園の東大合格者躍進の意味。
17:2月3日工学院平方校長に聞く 工学院の思考力入試がオンリーワンなわけ: ...
18:聖学院の中学入試の意味 思考力入試編①
19:2020年中学入試 和洋九段女子の意味が明日の中学入試のビジョンになる。...
20:【速報】明日5日の八雲学園の〈未来発見〉入試 本日4日23:59まで!:...
21:2020聖光学院の社会の入試問題 変化の兆し
22:ノートルダム学院小学校の教師の開放的精神とシステム思考のすばらしさ(3)...
23:2021年の準備のために 無限のポテンシャルを生成する対話マインドを開発...
24:2020武蔵の社会 考える問題~存在をみつめる問い
25:2020雙葉の理科 NASA50周年問題
26:【2020年首都圏中学入試動向02】豊島岡女子と本郷の良い影響。
27:2020年首都圏中学入試の学校選択(03)恵泉の場合
28:武蔵野大中高を変えた校長「日野田直彦」先生。
29:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 東京エリア
30:【2019年度首都圏中学入試(09)】 かえつ有明 アップデート 内生的...
31:2020フェリスの国語の入試問題 東大の帰国生入試と同じ視座
32:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 埼玉エリア
33:工学院 ベッキー先生とジョエル先生のオールイングリッシュワークショップ ...
34:2020年中学入試 新タイプ入試の意味あるいは価値
35:【2019年度首都圏中学入試(36)】 女子美の人気の意味
36:和洋九段女子 進取の気性に富んだ女性が羽ばたく居場所がある。
37:ノートルダム学院小学校の教師の開放的精神とシステム思考のすばらしさ(2)...
38:2020年からの中学入試(12)なぜ三田国際は人気の出る完璧な先進校にな...
39:【2019年大学合格実績02】東京都市大学附属等々力の躍進の意味。 五島...
40:八雲学園 生徒と共に進化する(1)
41:麻布の中学入試問題 東京オリンピック・パラリンピック問題
42:2020年からの中学入試(04)晃華学園も湘南白百合も香蘭も動く。
43:21世紀私学人(02) 香里ヌヴェール学院中学校・高等学校 池田靖章校長...
44:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 神奈川エリア
45:國學院久我山 新クラス「CCC」が順調に成長
46:ノートルダム学院小学校 <新しい学びの経験>=Peer Instruct...
47:工学院のPBL 生徒自身の「探究」行為をマインドセット(とりあえず了):...
48:聖学院も帰国生が評価する男子校
49:【マインドフルネス】佐野先生と金井先生
50:【2019年度首都圏中学入試(29)】 文化学園大学杉並 新しい学校選択...

★いずれにしても、ホンマノオト21は、個人のフリーのブログですから、訪問者の数は、10日間で、首都圏中学受験生数の20%くらいの数です。とても、全体を見渡すことはできません。それに、受験生というより訪問される方々は教育関係者が多いので、あくまで参考までです。

★今後も、個人のブログですから、あまり慮る必要がないので、文化人類学的視点、社会学的視点、新しい内生的成長理論型経済学的視点、学習理論的視点、言語学的視点、制度設計論的視点、発達心理学的視点など複合的な視角から中学入試というスモールコスモスで起こっていることの中に、社会の自己変容を生成する人間が生まれ、彼らがどういう世界を形成していくのかウォッチしていきたいと思います。

★ただ、私も現場の先生方と対話をしてフィールドワークをしたり、ファシリテータやジェネレーターとしてワークショップも行ったりしているので、どうしてもバイアスはあるでしょう。仲間やコミュニティという限定的スコープで見ていることは確かですから。

★自分の顔は自分で見ることができないので、異分野の、たとえば、アートやサイエンスのワークショップに参加するなどして、そのバイアスをクリティークすることはしていますが、完璧ではありません。そこは資金なしの私立学校研究家のボランタリーな活動ですから、勘弁してください。

★そういうわけで、ここで2020年首都圏中学入試の全体動向は、いったん控えます。

2月16日、和洋九段女子で、同校の先生方や生徒の皆さん、聖学院の児浦先生、工学院の田中歩先生、サイエンスカフェ主宰の福原先生、海外帰国生を中心にグローバルな学びの拠点GLICCを主宰している鈴木先生、探究のカンザキメソッドで超有名な神崎先生、そして首都圏中学入試の先鋭的情報センターを形成している首都圏模試の取締役・教育研究所長北先生が集う「新中学入試セミナー」に参加して耳を傾けて、自分のバイアスをできるだけクリティークしてから論じていこうと思います。

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2020年2月10日 (月)

和洋九段女子 進取の気性に富んだ女性が羽ばたく居場所がある。

★和洋九段女子のサイトの「和洋ニュース」に、2月16日(日)、同校で「新中学入試セミナー」が開催されることが公開されました。和洋九段女子と21世紀型教育機構の協働主催です。当日は、首都圏模試センターの取締役・教育研究所長の北一成先生も登壇します。

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★北先生は、首都圏中学入試の動向を明治以来、私立中学の日本の教育の核を創ってきた歴史的動向と結びつけて未来を読む、中学受験業界の先鋭的論客です。

★未来志向の中学入試市場の創発を論じています。そういう意味では、和洋九段女子の未来型教育と重なることが多いと思います。

★未来型教育とは、生徒1人ひとりの才能を見出し、生徒1人ひとりの存在の重さを自己と他者が相互に認め、たがいに思いやり、元気づけ、勇気づけ、新しい知へ挑戦できるチームをつくっていけるような能力を生成することだと思います。

★2月16日、和洋九段女子の生徒が開発・運営しているSDGs「スゴロク」ワークショップもあります。ともに参加し、生徒自身の未来の存在、生徒ばかりではなく私たちの未来の存在、そして社会や世界の未来の存在について、いっしょに考えましょう。

★お申し込みは→コチラです。

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2020年2月 9日 (日)

聖学院の中学入試の意味 思考力入試編①

★聖学院の中学入試は多様な選択の機会があります。帰国生入試、英語選抜入試、一般入試、アドバンスト入試、特待生入試、ものづくり思考力入試、M型思考力入試、難関思考力入試。なぜ多様かというと、一つは生徒の成長に合わせたインターフェースをつくっているからだということです。

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(聖学院の思考力入試の開発のリーダーである数学科の本橋先生と広報部長児浦先生。児浦先生は21教育企画部長でもあり、国際部長でもあります。)

★その「知識」を核にした入試ではなく、「生徒の存在と成長」を核にした入試であるからこそ、思考力入試をきっかけに新しい成長の仕方をする受験生が出現したと、本橋先生と児浦先生が感動入試の話をしにわざわざオフィスの近くまで来てくださいました。

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★思考力入試は、聖学院のPBL授業が反映したした入試です。同校のPBLは、レゴ©シリアス©プレイを導入していますから、Playful based Learningという側面があります。ですから、基本<Hard Fun>の空気があります。したがって、聖学院の思考力入試は塾ではなかなか対策ができません。しかも、このテストの開発の背景にある考え方は、このレゴの発想を始め、実に多様な世界標準の学習理論を研究して先生方が創っているから、なおさらです。それで、今や各塾に出張思考力セミナーに招かれるほどです。

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★昨年、教育関係者対象の公開ワークショップセミナーで、その奥義を共有しました。SDGsやレゴ©シリアス©プレイ、U理論、SELなどとどう結びついているか披露されました。

★これらは、みな生徒の成長を促す学習理論だったり、生徒の取り巻く環境の事実に多角的に目を向ける方法論が詰まっていました。

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(2019年10月6日の公開ワークショップ。聖学院のZ世代も参加。教師と生徒が共に学ぶ学校であることもシェア。)

★まだ公開されていないので、今回の思考力入試の中身についてはお知らせできませんが、いずれ分析したことをご紹介します。ただ、ここで確認しておきたいのでは、今回さらにネルソン・グッドマンの数学哲学や芸術哲学の視点を、なんと生徒が自ら生み出して活用する問いのデザインになっていたといことです。

★また、お二人と対話しているうちにIBのPYPのエッセンスも反映されていることに気づき、お互い顔を見合して、同校の3つの思考力入試が突出していることに改めて驚いたのです。

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(平均月に1回学内の先生方と行う「授業デザイン研究会」で、U理論などの学習理論や発達心理学と現場の授業の世界を結びつける対話が行われています。)

★思考力入試は学校説明会と同時開催の思考力セミナーとセットです。アドバンスト入試を受ける生徒も、最近は思考力入試にチャンレジするようになってきているのは、自分がセミナーを通して学び方を創意工夫し、イマジネーションを広げ、思考の世界に没入できる感覚をもてるかららしいという話を児浦先生に聞きました。

★聖学院のPBLは、生徒の成長沿うように、Playful based learningだったり、Problem based Learningだったり、Project based Learningだったり、Pssion based Learningだったり変貌します。

★しかし、これは先生方が誘導するのではなく、生徒の成長に寄り添うようにプログラムや授業を創っていくから変貌するのです。生徒自身の変貌が大前提です。

★児浦先生や本橋先生は、思考力入試は選抜機能もあるけれど、この取り組みで中学入試の段階で変貌する新しい生徒が誕生したことに驚き、入学後試行錯誤の探究の道を歩きながら、どんどん変貌していくその度合いが今までにいなかった姿になっていくというのです。

児浦先生は、2月16日の和洋九段女子で実施される「新中学入試セミナー」のパネルディスカッションで中学入試における新しい受験生像=生徒像の出現について聖学院の思考力入試に立ち臨んだ生徒のケースをもとに語りたいということでした。実に楽しみです。そして、私も引き続き聖学院の中学入試の意味=新しい受験生像=生徒像について追ってみたいと思います。

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2020年2月 8日 (土)

工学院 ベッキー先生とジョエル先生のオールイングリッシュワークショップ 会話と対話の関係性(1) 

★工学院のサイエンスのベッキー先生と文学のジョエル先生が協働してオールイングリッシュワークショップを行いました。参加者は両先生も所属しているプロジェクトメンバーです。

★PBLを1年間ワイワイガヤガヤ研究してきました。前回は保健体育の先生と家庭科の先生が協働して開発したセルフコンディショニングのワークショップを共有しました。

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★今回は、PBL授業の中で大切な会話と対話の関係性についてワークショップを行ったのです。日本人の教師の活用する会話や対話や議論をもともとそれが自然体で行っているベッキー先生やジョエル先生。お二人の会話や対話を共有してみようというのがねらいでした。

★ずっと一方通行型の講義に慣れてきた私たち日本人が授業の中に対話や議論を導入した時、どこか目的論的になり、自然な雰囲気をつくりにくいのは当然です。しかし、ベッキー先生やジョエル先生(外国人教師がみなそうだとは限りません。工学院ではPBLができるというのが前提で雇用契約が結ばれます)はもともと自然体として実行してきたし、そういう環境を創ってきたのですから、論より証拠体験しようということになったようです。

★椅子も机もない空間で一体何が始まるのでしょう。外部講師のワークショップもいっぱい行っている工学院ですが、ファシリテーターが内製されているのも工学院の大きな特色です。

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★多くの学校は外部講師を招いて研修会とか行いますが、それが内部に持続可能になることはなかなか難しいですね。それは内部の先生方もファシリテートができるようになっていないからです。あるいはできても一握りの先生方しかファシリテートできていなかったり、プログラム開発ができていなかったりするからです。

★工学院の外部ネットワークのワークショップも多くの教師が行う内製ワークショップも両方できてしまう環境は、意外と他校にはないのですね。

★会話と対話のループが授業をおもしろくしかつ深くします。ベッキー先生とジョエル先生が普段の授業の中で行っている会話と対話のメカニズムをコンパクトに40分に変換して行ってくれました。引き続き、ご紹介していきますね。

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2021年の準備のために 無限のポテンシャルを生成する対話マインドを開発する。

★2014年から工学院の田中歩先生(現教務主任)と首都圏模試センターの多数のスタッフの方々とそれぞれの「思考コード」を巡る旅をしてきました。6年間毎月定期的に対話を続けさせていただきました。本当に心から感謝いたします。その間、多くの方々と出遭い、対話を共にし、ワークショップを共にし、そのつど児童や生徒、学生、先生方、起業家の方々と、共にインスパイヤ―することができました。

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★そして、ここのところ京都や東京で進取の気性に富んだ私立小学校の先生方との対話を通して、上の図のような無限のポテンシャルを生成する対話マインドのマップが、今朝降りてきました。相変わらず熱があるのですが、そのせいか夢の中でイメージが生まれてくるのです。この夜中にだけ出る熱は、インスパイヤ―するためのエネルギーだったのかと不思議に思えるほどです。

★さて、対話マインドとは、知性と情緒と感知運動の統合態です。対話する時、知のスキルだけではなく、感情マネジメントのスキルも活用します。そして、感情や知性を五感でとらえ、脳神経や筋肉や血液やホルモンの循環機能の一貫性が大切です。互いの表情や息づかいなど非言語的情報を感知する身体能力を研ぎ澄ましておくことは大切です。

★感知運動に気づいたのは、昨年の9月から症状として自分の身に現れてきた自己免疫疾患のおかげです。長い間いろいろな感覚が通常通り動かなく、それぞれの感覚とか神経系や筋肉、血液、ホルモンの循環の重要性に気づかされたのです。

★そんな状態でも、対話やワークショップを続けてくださる皆さんの気遣いの視点は、そのまま感知運動のスキルだということに気づきました。疾患のためにそのスキルがスムーズに使えないので、そこをサポートしてくださるわけです。スキルは基本的には暗黙知状態になっているといことに改めて気づきました。

★こうして、無限のポテンシャルを生成する対話マインドは、知性スキルと情緒スキルと感知運動スキルによって統合されるのだと気づきました。工学院の田中歩先生はプロジェクトメンバーと情緒スキルや感知運動スキルという表現はしていませんが、そこの部分をずっとアップデートして思考コードを探究してきましたし、しています。

★首都圏模試のみなさんは、B軸思考とC軸思考のせめぎあいをずっと対話しているわけです。果たして中学入試で創造的思考はいかにして可能かということを。今年も麻布や桜蔭からはじまり、B3思考を出題する学校の入試問題を分析してインスパイヤーしていることでしょう。

★かくして、私の中では、「思考コード」の旅は、「無限のポテンシャルを生成する対話マインドのマップ」としていったん結実しました。

★ここで気づいたのは、知識の再現や理解としての再現において、学びのコアは「知識」だということでした。そしてここを超えて変容へチャンレジしていくと、今度はコアは「存在」です。はじめは「私という存在者」がコアですが、そのコアの部分が「私たちという存在者」に変容し、やがて「自然と社会と個人の統合態としての存在者」に成長していくのです。ここまでくると、SDGsはようやく本格的活動になりますね。

そういうイメージを聖学院や工学院、順天、八雲、和洋九段女子のZ世代中高生との対話を通して実感しているのです。

★ここまで中高段階で成長すると、あとは未来に向かって無限の自己存在のポテンシャルを生成していくことができるでしょう。

★今までの進路指導は「再現」領域で終わっていました。ですから大学受験以降ポテンシャルを自力で生成することができない指示待ち知性になってしまっていたのでしょう。自己肯定感が低いとかいわれるのもやむをえません。生徒自身の問題もありますが、再現で終わってしまう教育の在り方というシステムが生み出してきたと私たちは認めたほうが良いでしょう。

★ところが、海外大学進学準備を本格的に始めているいろいろな学びの場では、学びのコアは「私」であり「私たち」であり「世界」です。日本の生徒がグローバル教育の一環で海外の同世代と議論した時に、知識をコアとしている対話と「私」「私たち」「世界」という「存在者」をコアとしている対話ではギャップがあることに気づくのです。

★ひるがえって、母国語である日本語はどうでしょう。私たちは母国語の重要性をうったえていても、それすら「再現」の領域で終わっていたのでは、ポテンシャルを生成できず、ワクワクすることはできないでしょう。

★対話にとってたしかに言語は大事です。しかし、それは母国語が大事か英語が大事かということではありません。対話マインドのマップをどこまで広げて言語活動や非言語活動をするかです。

★当面、この対話マインドを活用して、2021年の新地平との出遭いに備えたいと思います。それから、私は「対話」は哲学者のものでも、カウンセラーのものでもないと思っています。等しく人間存在みなに共有されているという立場です。タイトル(権威・資格)がなければ対話ができないなんてことはないでしょう。ナチュラルな対話が一番です。

★しかし、自分の顔は自分で見ることはできません。多角的なアプローチで対話することによって、存在者に気づいていくものです。ですから、哲学対話やオープンダイアローグのようなアプローチは対話マインドそのものの存在をアップデートし続けるために大切です。

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2020年2月 7日 (金)

2021年中学入試のウネリ ホンマノオト21アクセスランキング30を通して

★今年の中学入試も一段落したところで、2月1日から6日間のホンマノオト21のアクセスランキングベスト30を眺めてみましょう。当然ながら今年の動向記事が上位に来ています。そんな中麻布の入試問題記事が2位です。これは今年の動向を表すものでもありますが、同時に2021年へのウネリのヒントでもあります。どうやら、創造的思考の潜在能力を有する女子受験生が何かを生みだしそうな予感がします。創造的思考の潜在能力の象徴が麻布の中学入試問題でもあるし。

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(和洋九段女子の進取の気性に富んだ生徒。SDGsを探究しているうちに国連広報センターのスタッフも驚くようなSDGsスゴロクワークショップを企画し、世に広める活動をしています。2月16日の新中学入試セミナーでファシリテーターとして活躍します。2021年中学入試は進取の気性に富んだ女子受験生にスポットライトがあたります。)

1:2020中学入試 3つめの動向。高い意識の女子受験生の誕生。
2:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
3:2020首都圏中学入試 5つめの動向 SAPIX・早稲田アカデミー・日能...
4:本日、首都圏中学入試ピークに!新しいウネリか混迷のウネリか予想不能な真っ...
5:三田国際 2020年中学入試を終え、目が覚めるような新機軸へ準備整う: ...
6:2020中学入試市場が注目している動向や学校 ホンマノオト21のアクセス...
7:2020中学入試 4つめの動向 東京の共学校の渦を通して
8:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
9:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
10:【速報】工学院順調に生徒集まる。
11:2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出
12:2020首都圏中学入試 東京と埼玉が勢いがよかったわけに、大事な動向が隠...
13:2020海城の社会と理科 アカデミックな問い
14:2月3日工学院平方校長に聞く 工学院の思考力入試がオンリーワンなわけ: ...
15:品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任: ホンマノオト21
16:【2019年大学合格実績04】世田谷学園の東大合格者躍進の意味。
17:2020聖光学院の社会の入試問題 変化の兆し
18:【速報】明日5日の八雲学園の〈未来発見〉入試 本日4日23:59まで!:...
19:2020武蔵の社会 考える問題~存在をみつめる問い
20:2020雙葉の理科 NASA50周年問題
21:2020年首都圏中学入試の学校選択(03)恵泉の場合
22:2020年中学入試 和洋九段女子の意味が明日の中学入試のビジョンになる。...
23:2020年からの中学入試(10)三田国際が今年も人気のわけ: ホンマノオト21
24:【2020年首都圏中学入試動向02】豊島岡女子と本郷の良い影響。: ホン...
25:ノートルダム学院小学校の教師の開放的精神とシステム思考のすばらしさ(3)...
26:武蔵野大中高を変えた校長「日野田直彦」先生。
27:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 東京エリア
28:2020フェリスの国語の入試問題 東大の帰国生入試と同じ視座
29:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 埼玉エリア
30:【2019年度首都圏中学入試(09)】 かえつ有明 アップデート 内生的...

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2020年2月 6日 (木)

ノートルダム学院小学校の教師の開放的精神とシステム思考のすばらしさ(3)

★前回まで、チームNEXT(という名付けが行われたそうです)は、参加した先生方がどんどんポストイットで「こんなことしている授業で」や「ありたき授業」「でも~だからなかなかできない」「どうしたらよいか」などを拡散し、今度はそれを全部つなげてみました。すると、「つながっている」という実感が改めて生まれてきたわけです。しかし、今まで暗黙知として先生方の内面にあっただけで、今回のように共有できえていなかったということに気づいたのです。そして、こうして共有してみると、ND(ノートルダム)小学校の教育ってなかなかいいじゃないということになりました。

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★しかし、それってどのくらいいいのか知りたいということになったわけです。自分の顔は自分で見ることはできないというのは洋の東西問わず真理です。そういうときは対話です。今回はOECDの“Future of Education and Skills 2030”のコンセプ スキル編のペーパーと対話することにしました。もちろん、読解によって自問自答することを通しての対話です。 

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★このペーパーはND小学校の英語科のアドバイザーであり、立命館大学でも講師をされている田縁眞弓先生(「エンジョイ!フォニックス1 上巻: 英語が聞ける・読める・できる!」の著者の1人)が提供してくれました。田縁先生もチームNEXTのメンバーです。

★そして、吉本先生という英語の先生もメンバーですから、このペーパーの邦訳がなくても大丈夫だったのです。というより、梅下先生も松谷先生方も英語を普段授業でも使っているので、自然にペーパーに書いてあることから、気になる教育活動や学びのスキルを例によってポストイットに書きだしていきました。

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★ある程度出し切ったところで、各人が2030年に想定しているOECDの学びとはこういういものだろうと解説を始めたのです。すると、一堂、やっぱり私たちやるじゃないか!世界標準の教育やっているじゃない!ということになったのです。

★認知的スキルだけではなく、とにかく情緒や感情の面も授業で学ぶ機会を創っている。低学年で身に着けたモラルや感情のコントロールや共同作業は、高学年になったら、自分たちだけの行為ではなく、コミュニティーや社会に役立つというように広げていくワークもやっているよねなど。

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★しかし、またしてもここで暗黙知が現れるのです。やはりそういうことを個々にはやっているけれど、可視化してスキルとして共有していないから気づかないままだったのだと。

★じゃあそこを共有するこのような創発対話を広げていけばよいのだと。するとどうなる?「〇〇〇〇〇〇」になるじゃないかということになりました。「〇〇〇〇〇〇」のtころは、今後のお楽しみにしましょう。凄いことがND小学校から発信されるかもしれません。

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2020年中学入試 和洋九段女子の意味が明日の中学入試のビジョンになる。 新中学入試セミナーで明らかに!

★2020年の和洋九段女子の中学入試は、10日のチャンスを残すばかりとなりましたが、2月5日現在で、総応募者数498人で、すでに前年比148%(首都圏模試センター 出願倍率速報から)になっています。

★この増加の大きな理由は和洋九段女子の場合ははっきりしています。それはPBL授業の貫徹です。どの授業もどの教科もPBL授業を徹底して行う唯一無二の女子校だからです。

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★そして、このPBLという一貫性のある教育が、今OECDで求められ、IB(国際バカロレア)で10の学習者像を育成する授業として推奨され、SDGsの世界中のワークショップで求められているのです。

★PBLは手法はもちろんありますが、手法論では終わりません。OECDにしても、IBにしても、SDGsにしても、そして和洋九段女子にしてもマインドやコンピテンシー(新学習指導要領では、頻繁に出てくる「資質・能力」がこれにあたります)の発露なのです。

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★新学習指導要領では、「総合的な探究の時間」で多少導入されるPBLですが、その多くの場合手法論で、この探究という導入が、OECDやIB、SDGsに影響を受けているということなど現場では知る由もないでしょう。文科省はきちんと説明しなければならないのですが、どうもそういうパブリックなことをやらないですね。

★しかし、PBLや探究を行うとどういうマインドやコンピテンシーが生成されるのかは、2月16日、和洋九段女子と21世紀型教育機構が協働主催する「新中学入試セミナー」で明らかになります。

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★論より証拠、PBLで生まれる進取の気性に富んだ新しい人間像を和洋九段女子の在校生自身が投影してくれるのです。PBL型ワークショップのファシリテーターを買って出てくれました。

★今年、和洋九段女子を応募した女子生徒は、偏差値の高い学校に入れば、人生はなんとかなるという感じの生徒ではなかったと思います。PBL授業へのマインドやコンピテンシー生成力に期待している受験生・保護者が多かったと思います。

★世界が求めるベクトルと共感共振する唯一無二の女子校で、OECDのコンセプトを使えば、自分はこうなりたいそしてそれが世界を変える貢献につながるというエイジェンシーの素養のある生徒が挑戦したのだと思います。あるいはIBのコンセプトを使えば、10の学習者像を潜在的に有している生徒が立ち臨んだのでしょう。

★首都圏模試センターの取締役・教育研究所長北一成氏以外、まだ他のメディアも気づいていない和洋九段女子で起こっている脱工業化時代、ソサイエティ5.0で求められる新しい人間像の教育とは何か?新しいい人間像とは何か?いっしょに考えましょう。そしてそれが今後の中学入試の大きなビジョンとなるのです。世界を変えることになります。

ぜひお越しください。ただし、今回はワークショップ体験もありますので、定員数は30名です。じっくり講演、ワークショップ、ディスカッションをお楽しみください。

 

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2020首都圏中学入試 東京と埼玉が勢いがよかったわけに、大事な動向が隠れている。

★2020年首都圏中学入試のピークはあっという間にすぎ、2月11日の麻布、開成、武蔵、駒東、栄光、筑駒の同時入学者説明会によって、大きな範囲で繰り上がりがおこるかもしれないという状況になっています。総応募者数の集計段階からいよいよ実数及び歩留まりが学校当局では気になる日々でしょう。がんばってください。

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★ここでは、まずは首都圏中学入試における総応募者数の前年対比(データは、日能研倍率速報「サマリー」を加工しました。2020年2月5日現在)を見てみましょう。埼玉、東京、千葉の順番で増えています。神奈川と国公立は減っていますね。

★総応募者数が増えたからと言って、受験人口が増えたかどうかは、確かに別です。総応募者数が減っても辞退者が少なく実数は昨年よりも多かったという学校もいくつもあるからです。

★したがって、総応募者数が多くなったというのは、入試日変更や入試回数増加や新タイプ入試導入など創意工夫、つまり入試イノベーションにチャンレンジしたという革新性を示唆しているでしょう。

★千葉が微増したのは、東京の学校の勢いと塾がシンクロして、その勢いで、1月受験に、東京の受験生が多数挑んだからでしょう。一方埼玉は、千葉と同じ状況ももちろんあったでしょうが、学校自体が入試改革イノベーションにチャンレンジしているからでしょう。

★そして、この入試改革イノベーションは、従来のように生徒の数を掘り起こしをしているのではないというのが、今年の中学入試動向の最も大切な未来をチェンジするエネルギーが巻き起こっているのです。

★残念ながらこれを証明するデータ的なエビデンスは今のところありません。しかし、それはそのようなイノベーティブな学校の広報の先生方や<新しい学びの経験>を開発している創発型の教師と対話を続けることによって見えてくることもあります。

★実は、そのような文化人類学的なアプローチこそ隠れた真実を射当てるものかなとも思う今日この頃ですが。

★いったい何が真実か?実は最近あまり中学受験業界などでは語られなくなったのですが、1985年から1998年までは、男子校中学受験は投資型で、女子校中学受験は、消費型であるという見方がされてきました。実際経済学の分野でも人材投資型経済理論は一世を風靡していました。

★このような女子中学受験の在り方を消費型と表現したのには、その当時はバブルが膨らみはじけいよいよデフレ突入という時代で、ポストモダンが大流行りでした。東大の教育学部でも佐藤学教授がポストモダンイムズ時代の教育を大いに語っていた時代でもあります。

★しかしながら、バブルがはじけ、1998年・1999年に大企業や金融業の倒産が起きて、デフレに突入するころ、内生的成長論が謳われはじめました。この経済理論で2018年にノーベル賞を受賞したのはポール・ローマ教授ですが、日本ではほとんど日の目を見ませんでした。

★今も続く新自由主義が圧倒していたし、産業界も工業化時代にあぐらいをかいていました。学校現場も20世紀型教育が今も頑強なのはこの時代がまだ日本では終焉していないからですね。

★しかし、世界はコンピュータサイエンスというテクノロジーとその価値を見出す新しい哲学が生まれていました。イノベーションの時代です。日本はこの分野で、テクノロジーはなんたおか追いつけそうですが、その価値を生み出す新しい哲学は存在していません。それゆえ、世界のコンピューターサイエンティストに日本は哲学なき教養なきテクノロジーだけど、大丈夫?と心配されている程ですね。

★ところが、この新しい経済と技術に対して、まだ無意識ですが、敏感に反応している私立中高一貫校が、東京エリアと埼玉エリアに多く出てきたのです。

★消費型でも投資型でもない第三の人材論がおそらく見えてきていると思います。これはロバート・キーガン教授の組織マネジメント論にもヒントがありますが、このような書を読んでいる私立学校の先生が多くいるのも東京エリアの学校に集中しています。

★それは<新しい学びの経験>を開発し、そのカリキュラムポリシーをアドミッションポリシーに反映させている<新タイプ入試>の機会を増やしているからです。

★この教育活動が意味しているものは、投資型キャリアデザインでも消費型キャリアデザインでもないのです。では何と呼ぶか?それはすでにいくつかの学校の先生方とは話題になっているのです。今京都に滞在していますが、昨日ノートルダム女子大学の総合経営企画室の方々とミーティングをしたときに、盛り上がりました。東京でももちろん、工学院の平方校長や田中歩教務主任、聖学院の児浦広報部長とこの点に関してはいつも大いに盛り上あがっています。この間の八雲学園の菅原先生や近藤隆平先生とのやりとりで、八雲学園の女子受験生の何かが変わってきたという話も何かを予感させます。順天や和洋九段女子の生徒と語り合ったときには、ああこの生徒のみなさんは今までとは何か違うぞという直感を得ました。

★一言二言しか話したことはないのですが、桐蔭学園理事長の溝上慎一教授のトランジションの理論は、それを支える理論かもしれません。溝上先生のプロジェクトはいずれエビデンスを出すでしょうから、第三の人材論の裏付けがやがてとれるでしょう。

2020年中学入試は、新しい人間論の誕生のメタファーを映し出しているのかもしれません。

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2020年2月 5日 (水)

三田国際 2020年中学入試を終え、目が覚めるような新機軸へ準備整う

★昨夜、三田国際学園の大橋清貫学園長に電話インタビューしました。同校の今年の中学入試が無事終了したということでした。そして、今年も創造的で未来を自分の手にし世界を変える貢献をしたいという進取の気性に富んだ生徒が挑戦してくれたそうです。生徒も学校も希望の光に包まれた入試になったようです。

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★具体的なことは今後集計して公にするということでしたが、ざっくり昨年と変わらぬ出願数があったことと、実受験者数は増えたということでした。

★変化の1つは、併願校の変化で、今まで必ず併願されていた幾つかの共学校が少なくなり、いわゆる御三家レベルの学校との併願が増えたということです。

★これは、三田国際の入試問題の編成も影響しています。2科4科の中に、知識・理解の問題と応用・論理の問題と批判的・創造的思考の問題がそれぞれ約30%ずつ出題されるので、ただ偏差値が高いからといっても同校の合格は勝ち取れないということでしょう。

★もちろん、御三家レベルが併願するのですから、そのような受験生・保護者にとってメリットのある教育内容がなければならないわけですが、それはオープンキャンパスや授業体験を通して実感しているのでしょう。

★このレベルの保護者の中にも、東大を頂点とするピラミッド学歴社会では、日本の未来はないことは当然分かっているという保護者もいます。海外大学準備教育があり、実績がでそうな期待値の高い同校に魅力を感じないわけはないでしょう。もしかしたら、この層に別次元のTOP OF TOPの新しい市場創出のプレイヤーがいるのかもしれません。

★大橋清貫学園長によると、中高一貫校の一期生が今年高3になり、さらなる新機軸の準備が整うそうですが、その前にすでに2019年度の卒業生の大学合格実績から着々と伸びているし、彼らの中から世界大学ランキング100位以内の大学などランキングの高い海外大学にも合格し始めているということです。

★たとえば、マンチェスター大学、台湾大学、アムステルダム大学などです。今年の卒業生もたくさん海外大学に進むことになるでしょう。この3年間の卒業生は、高校から入学した生徒です。これらの海外大学に合格した生徒の中には、最初英語が全然できなかったということです。高校3年間で飛躍的に伸びる学びの環境があるということですね。

★今年の新高3からはオール中高一貫生です。3年間で飛躍するのです。6年間学んできた彼らはどこまで飛んでいくのでしょうか。2021年の3月の大学合格実績が楽しみです。

★とはいえ、進学校ではないのです。大学合格実績をあげることを第一義の目的にしているわけではありません。あくまで、学問的な探究・研究の学びの結果にすぎません。

★いずれにしても、目が覚めるような別次元の新機軸が今年4月からスタートするというのですから、楽しみです。 

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2020年2月 4日 (火)

【速報】明日5日の八雲学園の〈未来発見〉入試 本日4日23:59まで!

★八雲学園の菅原先生から、今日の朝から明日の〈未来発見〉入試の問い合わせが殺到という連絡を頂きました。これは昨年までにはなかったサプライズだということです。

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(説明会のイングリッシュパフォーマンスの中でRound Squareの説明をする中学生。破格のグローバル教育を自分たちの手にしている実感が英語でスピーチされました。)

★<未来発見>入試の構成は、国・算・英から1教科選択および自己表現文です。受験生には、得意教科を選択し、自分とは何者か、八雲学園に入学したらこんなことを思い切りやりたいという想いを表現して頑張って欲しいです。

★本日中なら、まだインターネット出願ができます。諦めずがんばれ!中学受験生!未来は君の中に!

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2020首都圏中学入試 5つめの動向 SAPIX・早稲田アカデミー・日能研の実績を通して

★2020年首都圏中学入試の5つめの動向は、新タイプ入試のポジショニングの性格の変容です。これはSAPIX・早稲田アカデミー・日能研という3大塾の今年の合格実績の傾向を通してあぶりだされてきます。

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★空白の部分は、現段階で判明していないというのもありますが、それぞえの塾の各学校に対する関心度の高さも示唆しています。

★日能研は、中学受験専門塾ですから、すべての私立中学校の情報を収集分析し、この中学受験市場形成に大きな影響を与えていますが、それだけに、すべての受験生・保護者に対し、あらゆる私立中学の選択にアドバイスができるような中立なポジショニングを定着させました。だから、高偏差値の学校にたくさん入れることを目的にはしていません。かつてはそういうときもあったでしょうが、今は完全に私立中学校の文化の支援団体です。もう少し言うと、支援の文化まで築きあげています。

★もし、日能研だけが独占したら、その支援は学校にとっては縛りになっていたかもしれません。あるいは圧力団体になっていたかもしれません。そうならないように、塾からの脱皮を果たしたのでしょう。塾でもなく学校でもなく、私立中学校の支援をする学びのコミュニティですね。

★それに対しSAPIXは、東大を頂点とする学歴社会を強化する側に回り、ある意味私立中学の文化をそちら側に誘導する作用を発揮しています。

★この独占的な動きは、経済社会的にも、社会学的内省からしても、世界市民的視角からいっても、あまりよくないので、競合する塾の誕生が必要だったのですが、それは日能研ではなかったのです。日能研は同次元から次の次元にシフトしたからです。

★すると、高校受験や大学受験も実施していて合格実績を出す受験勉強をベースにしているという意味で同じ次元の早稲田アカデミーがSAPIXに対し追撃を本格的に開始したのです。まだまだSAPIXの方が強いですが、早稲田アカデミーは毎年実績を伸ばしています。上記の表で空白があるということは、それだけ伸びしろがあるということでしょう。

★しかしながら、中学受験市場が3大塾の寡占状態であるのも事実です。

★私立中学は、中学受験市場がある以上、そことコミュニケーションをとらねばなりません。入試情報発信と市場の動向情報の交換です。そのとき、非対称的な関係にならないように、入試情報及び広報の戦略において学校も力をつけなくてはなりません。

★グローバル教育は、最初あまり中学受験市場には歓迎されませんでした。2科4科入試のビジネスマーケットを崩されるからです。しかし、小学校の英語の教科化やそもそも保護者の中でグローバルに活躍する仕事につくジョブチェンジが起こっていますから、消費者のニーズを無視することはできません。

★各塾もグローバル教育の市場にも参入します。しかし、海外現地と結ぶエージェントはたくさんいるし、海外の情報通という点では、3つの塾とも長けてはいませんから、このグローバル教育の部分は、学校に分があります。

★そして、このグローバル教育が中学受験市場を崩すかもしれない兆しが現れてきました。崩すといっても変容ということでしょう。公立中高一貫校の適性検査の参入と私学のグローバル教育の拡大と深化がもたらした世界標準の学びでした。学内にC1英語の環境を創るとかアクティブラーニングやPBLといった対話型・議論型授業が開発されたり、その両方にICT活用環境が広がったりしたのです。

★入試問題は学校の顔です。はじめは適性検査を逆手に取る適性検査型入試という新タイプ入試が右肩上がりになり、そのうち各学校の<新しい学びの経験>に対応する各学校の教育の特色を現した新タイプ入試が開発され熟してきたのです。

★最初、そして今でもSAPIXは、新タイプ入試に懐疑的です。それは塾の中学受験市場戦略からでてくる発想ですから、学校は教育の場からでてくる発想として、そのようなズレはしかたがないと考える余裕がでてくるほどソフトパワーを身に着けることになっています。

★そもそも、新タイプ入試を実施している学校をSAPIXの広報部は評価していませんから、学校側も気にもしていません。

★こうして、学校側からの中学受験市場と重なるわけですが、教育現場から生まれたアドミッションポリシーが生成する中学入試市場が生まれたのです。別に私立中学が2科4科をやめるということではなく、新タイプ入試という多様な才能を受け入れる入試を付け加えたわけですから、中学受験市場と中学入試市場がセパレートするわけではないのです。

★むしろ、日能研のようにその両市場のコミュニケーションによってわかり合う緻密な情報の積み重ねを行っているところもあります。もちろん、了解すれども、受験市場の戦略と入試市場の戦略は違います。誰にとって利益かというのが決定的に違うのは説明するまでもないでしょう。株式会社は利益団体です。私立中学は法人型NPOで、利益はでないのです。

★こうした中学受験市場と中学入試市場のカップリングを最適化しようとしているのが首都圏模試センターです。現状では、中学受験市場>中学入試市場ですが、首都圏模試センターは、中学受験市場×中学入試市場によって市場のすべてのプレーヤーにとってシナジー効果を生みだそうとしています。理念的な動きもしていますが、思考コード×思考スキルという国際バカロレアのPYPのカリキュラムやブルームのタキソノミーを中心とする認知心理学などをリサーチし創り上げています。

★中学受験市場と中学入試市場のシナジー効果にこだわるのは、2021年に海外大学進学準備教育市場が急激に広がることを想定しているからでしょう。世界標準のテスト評価やその評価に基づく学びができるように子供たちに返す成績表を通して支援すするシステムを毎年アップデートしているのです。

★私立中学を巡る市場の様相は、かくして複合的です。この流れの中で、生まれてきた新タイプ入試は、麻布や武蔵、フェリスが4科目入試の中に埋め込んでいる創造低思考力を追究する問いのデザインにチャンレンジして進化/深化してきました。

★かつては、新タイプ入試は誰でも受かるという雰囲気もありましたが、今では新タイプ入試は偏差値で測れない、学校入学後に伸びる自己変容知性の潜在的なパワーがあるかどうかを見抜く内容になりつつあるのです。

★このように2科4科入試は受験勉強によって顕在化された能力の期待値の確からしさをためす問題であるのに対し、新タイプ入試は入学後に伸びる潜在的な能力をためす問題という意味のポジショニングを獲得しはじめています。それゆえ、ワクワクするけれど決して易しいテストではなくなりつつあるのです。そしてこのテストは中学入試市場において子供が成長を実感していく独自のサービスでもあるのです。

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2020中学入試 4つめの動向 東京の共学校の渦を通して

★首都圏模試の出願倍率速報(2月3日現在)で、東京の共学校の出願状況をざっと見ると、昨年より応募者総数を増やしているところは、次の通り。

 郁文館
上野学園
穎明館
桜美林
かえつ有明
啓明学園
工学院大学附属
国学院久我山
駒込
桜丘
実践学園
品川翔英
淑徳
淑徳巣鴨
順天
城西大城西
聖徳学園
成蹊
玉川学園
中央大附属
帝京
帝京大学
帝京八王子
東海大菅生
東京都市大等々力
東京立正
東洋大京北
ドルトン東京学園
新渡戸文化
日本工業大学駒場
日本大学第一
日本大学第二
日本大学第三
八王子学園八王子
文化学園大学杉並
武蔵野大学
明治学院
明星
目黒日本大学
安田学園
立正大立正

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(昨年の順天のグローバルウィークのシーン。世界の作り方ワーックショップのファシリテーターとして私も参加。理事長も生徒とともに学ぶ学習する組織が広がる学校です。参加メンバーの自己変容力の豊かさに感動しました。)

★これだけの数の共学校があの手この手を尽くして、がんばっています。中学入試の活性化を生みだしているのは、共学校の広報の先生方といても過言ではないかもしれません。

★もちろん、写真にある順天のように、毎年しっかり定員を満たしたうえで、なおかつ今年も募集を増やしているという手堅い共学校もあれば、募集は増やしたけれど、定員を満たすのはこれからという共学校もあります。

★また、渋谷教育学園、広尾学園、三田国際、宝仙理数インター、八雲学園は、このラインナップにははいっていません。総応募者数は増えていなくても、定員は満たせるという共学校もあります。隔年現象とか、敬遠とか理由はいくつか考えられます。どの学校も、破格のプログラムを持っていますから、チャンレンジングな生徒が挑戦しますから、特色ある応募者に絞られてきたということが大きい理由だとは思います。

★また、共学校はほとんどが新タイプ入試の機会を増やしますから、新タイプの入試が拡散し、そこで応募者を集めていた学校がそこを減らしています。

★この共学校のせめぎ合いの意味をどう読み取るかが、2020年の中学入試の4うめの動向でしょう。

★残念ながら、この動向を読み解くデータはまだいくつかのシンクタンクで作っている最中でしょうから、今のところははっきりしたことはわかりません。

★ただあくまで仮説として読み解くと、どうやら女子受験生のタイプが明快に2種類に分かれたということでしょう。これは3つ目の動向である進取の気性に富んだ女子受験生が選ぶ女子校が増えたとうことに関係しているように思えます。

★ロバート・キーガン教授(ハーバード大学)の3つの知の成長段階説を、強引かもしれませんが、あてはめてみると、環境順応型の素養の生徒、自己主導型の素養の生徒、自己変容型の素養の生徒うち、自己変容型の素養の女子受験生の誕生ということではないでしょうか。

★中学受験勉強をするとき、指示待ちで、長い者には巻かれろという感じの環境順応型素養では、なかなかうまくいきません。自己判断力や自立した自己管理型のしっかりものである自己主導型の素養でなければ難しいでしょう。

★おそらく今までの入試問題は、この自己主導型の素養でうまくいっていたのです。しかし、新タイプ入試が現れ、世の中が多様性にシフトし、自己管理が自己固執になる瞬間をそのつど自己変容していく開放的な精神が必要になってきました。

★男子受験生と違うのは、その自己変容型の素養は、きちんと自己主導型の素養に裏付けられている女子生徒が多いということです。男子生徒は、自己変容型素養はあるのですが、どうも自己主導型素養が希薄な生徒も多いようです。それが性差なのか精神年齢的な差なのかわかりません。単なる実感です。

★今共学校が凌ぎ合っているのは、単純に応募者なのではないのです。G-STEAMをめぐるプログラムの質の競争なのです。男子受験生は、ここのところはワクワクしてしまいます。女子生徒には、そこには一歩ひく自己主導型と前のめりになる自己変容型に分かれます。

★たとえば、八雲学園は女子校時代は、無意識のうちに自己主導型と自己変容型の生徒が応募していました。しかし、今はその破格なグローバル教育に、しっかりものだけではなくイエール大学の女子学生のように世界も巻き込む自己変容型知性に明快に憧れる自己変容型女子受験生が多く応募するようになったのです。共学による八雲学園の変容です。

★宝仙理数インターは、しっかりものの自己管理型生徒というよりは、変化を楽しむワクワク型の自己変容型知性をもった男子生徒と女子生徒がすでに集まって来ています。それがはっきりしてきたために、自己主導型の女子生徒は選択しなくなっていく可能性がでてきたのです。

★ロバート・キーガンの人間知性の成長段階は、大人対象の話ですが、実は18歳までに自己変容型能力を持っていなければ、もう成長はないという従来の説を覆すための論で、前提には、18歳までに自己変容型知性にまで成長しておこうという話があるのです。

★日本の20世紀型教育は、指示型人間ではなく自己マネジメントが出来る人間へで止まっていましたから、21世紀型教育への動きの時に、自己変容型の素養を見出すことを中学入試市場がうっかり忘れていたようです。

★このことが、共学校の凌ぎ合いの背景にみえてきたということなのです。

★4つめは、自己主導型をベースにした自己変容型素養をもった女子生徒の誕生ということでしょう。そのことを今まで進取の気性に富んだ女子受験生と呼んできたわけです。自己変容型素養の大切さを多くの女子生徒と共有することによって、中学入試市場はさらに活性化するでしょう。

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2020フェリスの国語の入試問題 東大の帰国生入試と同じ視座

★今年のフェリスの国語の入試問題で、昨年同様、自分の考えを書く200字論述問題が出題されました。2018年はそのような問題は出ていませんでしたが、2017年は物語の続きを創作する200字記述の問題が出題されていました。この骨太論述はフェリスの場合、伝統的出題です。要約の時もあるし、自分の考えを論述する時もあるし、物語の続きを創作するときもあります。

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(写真はフェリス女学院のサイトから)

★この問題ができたかできないかで合否は決まらないので、これまで受験業界では、そう話題になることはあまりありませんでした。しかし、ここにきてフェリスのこの伝統的な骨太思考力にこだわる作問のつくり方は、重要な意味があることにようやく世の中は気づくことになるはずです。

★というのも、今年、まるで解禁されたかのように、武蔵や麻布は、自由記述・論述問題を出題してきたのです。おそらくこれは両校の伝統でもあったのですが、ここ数年、どうも論理的に詰めて終わりという、たしかに難問ですが、生徒の思考マップがフェリスのようにのびやかに広がらなかったのです。まるで、新タイプ入試や大学入試改革の自由記述に対して、何か言いたかったかのようですね。

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★首都圏模試センターの「思考コード」でいえば、B3どまりだったのです。ところが、今年はフェリス同様にC軸にまで、生徒は思考マップを広げる必要があったのです。これは大きな意味があります。C軸まで思考マップを広げると、ワクワクでも思考に没入するフロー状態が起こるので、いわゆる“Hard Fun”を子供たちは体験します。受験勉強の中で、この“Hard Fun”の体験を楽しめる生徒は、偏差値の高低に関係なく、自己変容能力を高めることができるでしょう。

★そして、このようなC軸思考問題が、新タイプ入試だけではなく、2科4科入試にも広まれば、中学受験生の才能開発に役立つでしょう。自己変容能力は18歳までつけないと、それ以降はなかなか育ちにくく、頑迷固陋な保守的人材を生み出してしまいます。逆に18歳までに自己変容能力を身に着けると、幾つになってもチャンレンジ精神旺盛で世界を変える貢献者になれます。

★フェリスのモットーは、“For Others”です。C軸思考問題は、この精神も養います。入試問題は学校の顔です。入学してから卒業するまでに200字どころではなく数万字の論文編集に取り組む探究活動はフェリスの伝統的かつ革新的な教育活動です。

★そうそう、今年の入試問題でした。

<あなたなが変えたいと思っている現代の常識を一つ挙げ、その常識を捨てたときどのような変化が起こると思うか、あなたの考えを200字以内で書きなさい。>

★まさに、<自己変容能力 for others>ですね。

★ちなみに、東京大学の平成30年度外国学校卒業学生特別選考小論文問題、要するに帰国生入試の小論文問題は、次のような問題でした。

<「常識がある」とはどういうことか。>

★フェリスの問題は、受験生が、あの中世の歴史の常識を覆した阿部勤也さんの文章を読んでから考えるように設定されています。大学のゼミ並みのレベルだったのです。そういう意味では、東大の帰国生入試で出題されている小論文と同じ視座で考えることになっています。恐るべしです。

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2020年2月 3日 (月)

2月3日工学院平方校長に聞く 工学院の思考力入試がオンリーワンなわけ

★新タイプ入試の中で、「思考力入試」という名称の入試は、かなり特別で、聖学院の思考力入試などは突出したポジショニングを占めています。メディアも頻繁に取り上げます。それに比べて、工学院の思考力入試はベールに包まれていて、メディアはあまり取り上げません。というか積極的に公開していませんね。そこで、2月3日は多くの受験生が合格して少なくなるので、同校の平方校長に話が聞けるかもしれないと、訪ねました。

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★立地条件から16時からの入試ですから、14時くらいに訪ねればなんとかなると思ったのです。知り合いの先生方とも話すことができましたが、控えめではありましたが、手ごたえを感じているようすでした。思考力入試については、合格してもこれだけは受けたいと言ってチャレンジしに来る生徒もいるのですと笑みをたたえるのです。

★さすがに、平方校長は忙しく、応接に通された私のところにでたりはいったりでした。中学入試と同時進行で在校生の大学入試も始まっており、ある私立大学医学部合格の吉報をもってきた生徒の保護者と対応したりしていました。また、合格した生徒から、さらに挑戦したい大学に校長推薦書を急遽作成してほしいという連絡に対応したりしていました。

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★そんな中でも、工学院の思考力入試について丁寧に教えてくれました。

「本間さんのいうように、思考力入試は、首都圏模試さんの思考コードでいえば、C軸のとくに<創造的思考>の潜在的な力を見出す入試です。いわゆる中学受験準備が間に合わなくて、あるいはそもそも準備していなかったので、2科4科の偏差値に対応するテストでは、不足している部分が多すぎるという生徒がいます。しかし、そんな生徒の中にものすごい創造的思考の潜在的エネルギーを持っている生徒がいます。

もともと偏差値は眼中にないという帰国生がハイブリッドインターにはいっぱい入学してくるのですが、帰国生のその後は、偏差値の高低に関係なく、ぐんと伸びる生徒が多いのです。そのような生徒は、もともと創造的思考のパワーを持っているのです。そういう私たちの経験を通して、やはり創造的思考の潜在的エネルギーを持っている生徒を見出し、中学受験準備で不足していた部分は入学後サポートすればよいという感覚が確信に変わってきたということがあります。

そういう意味では、新タイプ入試の中で、ダイレクトに創造的思考の潜在エネルギーを見出す入試問題としては唯一無二だと思います。ウチの学校は唯一無二という教育活動が多いので、ある意味、メディアのフィルターにかからないのかもしれません。」

★ダイレクトに創造的思考の潜在的なエネルギーがどれくらいあると合格するのですか?と尋ねると、平方校長はこう語ります。

「エネルギーというのは目に見えないから、いろいろなステップにどう反応したかの相関関係ででてきます。ルーブリックでスコアを付けるのですが、あくまで多面的多角的アプローチにどれだけ没頭して反応したかどうかの痕跡、ポートフォリオと言った方がわかりやすいかもしれないけれど、先生方はそこもみて総合的に評価しています。ウチのは、ものを創る思考力入試が多いですが、それが仮に失敗しても、振りかえりのステップで、どう改善したらよいのか真剣に考えた痕跡を表現していれば、それはスコアになります。試行錯誤や諦めないパワーも創造的思考を動かすポテンシャルを生み出す要素ですから。」

★たしか思考力入試は6つのステップを踏んで考えていくというこでしたよね。そうすると、論理的思考のあとに創造的思考が生まれるという仕掛けですか?

「そう考えるのが一般的でしょうね。しかし、ウチの思考力入試は、論理的思考のステップを踏ませているのではないのです。6つの角度から脳の発散と収束の運動を活性化します。つまり、創造的思考が動き出すポテンシャルを刺激するのです。そういう作業の労を惜しまないでやり切る力も大切ですね。」

★なるほど、だからダイレクトに創造的思考の潜在的エネルギーを見出す入試だというわけですね。

「首都圏模試の思考コードでいえば、知識や論理的思考のところで準備不足なのですから、条件を一定にするには、創造的思考だけをダイレクトに測定するテストデザインが大切です。もちろん、それはチャンレンジですから、まだ完全ではなく、先生方は毎年アップデートしています。しかし、逆にそのポテンシャルが高くないと、つまり入学後、そのポテンシャルが知識や論理的思考にも影響を与える一定の大きさでなければ、生徒自身が困りますから、決して易しい入試ではないのです。楽しいけれどチャンレジしがいがある入試で、そこにチャレンジする生徒には頭が下がりますよ」

★ところで、今更なのですが、創造的思考というのはどんなものですか?

「そうそこなんですよ。それをその学校なりに明らかにしないでやっているから、結局は論理的思考になったり、再現するだけでは創造的でないとかいいだしたりするわけですよ。工学院の思考コードは、そこも含んで考えられるようになっています。しかし、ここでは創造的思考に絞って説明してみましょう。もちろん、工学院の仮説ですよ。世の中ではっきりさせているところはないのですから」

★その説明のとき、やはり平方校長のもう一つの才能である彫刻家というアーティストの顔が現れたのです。

「論理的思考―創造的思考に、模倣―変容という軸を掛け合わせてみると、4つの領域ができます。その4つの領域を、再現・変換・転換・新生と呼びましょう。このように創造的思考は、グラデーションになっているわけで、大切なのは、どれが創造的思考でどれがそうでないのかではないのです。再現ですから、たとえば、模写をイメージしてください。これとて、著作権の問題はこっちにおいておいて、もの凄い才能です。しかし、ピカソの模写は、面影はあるのですが、まったく違う世界に転換しています。一方で今ままであるものを組み合わせをかえて変換するという行為もあります。これはいわゆるビジネスデザインの世界では多いですよね。それらいずれでもない、全く新しいものが生まれるというのは、天才ということです。ピカソは、この4つの領域をぐるぐる往来して、何度も新生にいきつきます。この新生に行き着いたらそれで終わりというものではないのですね。これら4つの領域を行き来し、常に自己変容できる思考力が創造的思考です。」

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★こんな感じで座標軸にしてみましたが、いががですかと質問してみると、平方校長はこう語った。

「そんな感じですが、4つに分断するというのではなく、これらを相互に往来できる潜在的エネルギのダイナミズムとでもいっておきましょうか(笑)」

★入試はどうしても分析的になりがちだし、要素分解主義になるけれど、それは知識・理解や応用・論理の軸を測定しているからこそそうなるのです。創造的思考のみを見出す入試というのは、要素分解主義ではなく、関係主義でなければデザインできないということなのでしょう。深い!ですね。

★子供の多様な才能を見出すテストデザイン。形だけ変えるのではなく、それぞれの才能を見出す最適な問いのデザインは何かを追究する平方校長と工学院の先生方の真摯な態度に感動しながら、自分の浅薄な姿勢を内省する機会となりました。少しずつですが、工学院の多様な入試にそれぞれの才能を生かしながら立ち臨む受験生が増えているのに日本の未来の希望を感じました。

★お忙しい中、ありがとうございました。

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2020聖光学院の社会の入試問題 変化の兆し

★聖光学院の社会の入試問題は、テーマ主義ですが、これまではまだ麻布のような文化人類学的視点や社会学的な視点などを地歴公民を横断する越境知としては使ってこなかったと思います。

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★しかし、今年の第1回目の社会の入試問題のファイナルクエスチョンは、越境知を活用する様子見の問題でしょう。

★「水」をテーマに多面的にアプローチすれば、このような問題にいきつく美しいシークエンスができるからです。

★そして、それはリベラルアーツ的な問いかけになります。

★入試問題は学校の顔、中学入試進化論を牽引する聖光学院の教育のアップデートは、入試問題の傾向にもやがて影響するでしょう。もっとも、この問題は、東大の地理の問題としても通用しますが。

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2020雙葉の理科 NASA50周年問題

★昨年は、アポロ11号が月面着陸を果たして50年。NASA50周年で話題になっていました。どこが出題するのだろうと思っていたら、雙葉が出題しました。もし月に自分が立って、太陽や地球をみたら、地球にいる時とはどんなふうに違うだろうかを問いかけていました。なかなか面白いではないですか。

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★月面から日食をみているとき、地球ではどんな現象が起きているとか、月面から見る皆既日食は、地球でみる皆既日食とはどう違うのかとか、基本知識を地球と月と置き換えて応用・適用するだけですから、首都圏模試センターの「思考コード」では、B2思考で解けてしまうのですが。宇宙の広がりを想像するダイナミックな問題です。

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★知識想起と比較スキルと置き換えスキルと推理スキルの組み合わせで考えていくことができるのですが、知識想起の時に宇宙の広がりをイメージする問題で、単純に条件反射的に知識をはきだす問題とは一味も二味も違います。

★知識の取り扱いにも、教師のセンスというか教養がにじみ出ます。こういう問題をどんどん女子校が出せば、21世紀は日本の女性も世界を変えることになるでしょう。すでに、世界では科学者は女性の方が多いわけですから。

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2020神奈川の男子校 聖光学院・桐光学園・慶応普通部が突出

★今年の神奈川エリアの男子校は、東京エリアに比べ、その多くが出願の勢いが良いとはいえませんが、そんな中で、聖光学院と桐光学園、慶応普通部は突出しています。聖光学院や桐光学園は、かつては東大を頂点とする最難関大学に合格させるという点ばかりが注目されてきました。慶応普通部はビッグ・ブランドで応募者が多いと思われてきました。しかし、今は受験生・保護者の意識はだいぶ変化してきています。

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★神奈川の男子校の中で、上記3校は、かなり未来型学校として受験生・保護者の目には映ります。そして同時に大学進学先についてもそこでがんばるとなんとかなるという期待値も高いわけです。慶應普通部は、よほどのことがない限りそのまま進めるので、のびのびと「労作展」を中心とする探究活動ができます。

★実は、聖光学院も聖光塾や選択芸術、SSH認定校など探究活動とSTEAM的な新しい教養教育が充実し、大学合格実績と教養教育の二兎を追うという感じから、基礎学力と新しい教養教育を行えば、最難関大学の実績も当然出るし、海外大学にも進む生徒も増えるだろうという実感が浸透してきたと思われます。実際に東南アジアのサイエンス・国際コンクールなどでも在校生は活躍しています。

★桐光学園も、大学訪問授業で、知の最前線の教授や作家、クリエーターなどが、毎月のように講義をする機会を10年以上継続してきています。当初は、この講義で生徒が理解することがある意味目標でしたが、今ではそれは桐光学園の生徒の知の基盤で、そこから自分の探究や生きる道を見出し学びに励む雰囲気が広まっています。なおかつグローバル教育にもかなり力を注ぎ、聖光学院と同じような未来型教育への期待が受験生・保護者に高まっているのでしょう。

★東京の共学校宝仙理数インターも高人気校ですが、実は同様の雰囲気があります。大学に合格する方法は確立したから、思い切って創造的でワクワクするような学びを、教師と生徒が、生徒同士が協働していくという雰囲気があるし、説明会でそう明言しています。

★中学入試が大衆化したのは、1985年以降です。最初は校内暴力や学級崩壊からの避難場所だったのが、バブルの崩壊前後で私立中学の数が増え、国際理解教育と大学合格実績競争の場となり、反ゆとり教育の影響でそれは一瞬強化されましたが、受験生の保護者の仕事が、グローバルなコンサルタント業や医療の分野もグローバルになるなどジョブチェンジが進み、国際理解教育ではなく、グローバル教育にどんどん進んでいきました。

★大学入試改革の影響も中学入試市場が渡りに舟とテコにつかいましたが、本当はこのグローバル教育の拡大を通して、世界標準の学びを見てしまったために、とても国内大学向けの進学指導では、生徒の未来はバラ色ではないということを身に染みて知ったのです。

★21世紀型スキルを学ぶコミュニティをAppleやMicrosoftが牽引したり、OECD/PISAも21世紀型教育を進めたり、私立中高一貫校の中でも独自の21世紀型教育のコミュニティをつくる活動などが広まっていったのです。

★この過程の中で、麻布も新教養主義をうたい、土曜日の教育教養総合講座を開講し、二兎を追うことを宣言したり、海城も高校入試をやめて中学の帰国生入試を開始し、IBを含め世界標準の学びを研究し、世界で活躍するグローバル経済人と会い(子弟が帰国生入試を考えているため)二兎を追う教育は偏差値にかかわりなく広まっていきました。

★そして、海外大学に関しては、まったく偏差値は関係なく、入学時偏差値が低くても、卒業時にシカゴ大学やロンドン大学に進む生徒が輩出されるようになってきたのです。

★そして、STEAMの流れが、実は国内では目立たないのですが、東南アジアやシリコンバレーやMIT、国連などでその提案をプレゼンするコンクールなどにチャレンジする流れになり、グローバル教育とSTEAMが融合する教育に変わってきています。

★おまけに、帰国生の中に、偏差値など眼中になく、アクティブラーニングやPBLのような対話のある授業や受験英語を超える英語教育の環境を求める生徒が増えてきました。その流れが徐々に大きなウネリにもなってきています。

★よしあしはあるでしょうが、小学校高学年の英語の教科化やプログラミング教育は、グローバルSTEAM(G-STEAM)という新しいリベラルアーツを生みだす契機になっていることは確かでしょう。なんでG-STEAMがリベラルアーツか?

★グローバル教育は英語教育ではなく、言語哲学や言語学ベースのレベルになってきています。サイエンスとマスは科学哲学や数学的思考を前提にします。アートは芸術です。テクノロジーとエンジニアリングはデジタルサイエンスなのですが、世界の大学で行われているコンピュータサイエンスでは、教養なきテクノロジーやエンジニアリングは認められません。G-STEAMは自由七科時代のリベラルアーツを現代にアップデートしているわけです。

★ちなみに、東大や京大は世界大学ランキングでは100位にはいりますが、世界のコンピュータサイエンスを行っている大学で、100位以内に入っている大学は、今のところ日本に存在していません。中国、韓国、シンガポール、イギリス、アメリカに占められています。このことは、国内にしか目を向けていないと気づきませんが、世界とのネットワークの中で仕事をしている保護者は身に染みてわかっています。

★このような中学入試進化論を鋭く読み解く受験生や保護者は、増えているわけです。聖光学院や桐光学園は、そのような意識を有した受験生や保護者の目を男子校にも向けさせるモデルケースでしょう。東京エリアの男子校では麻布、海城、聖学院、城北、巣鴨が、そのような進取の気性に富んだ受験生・保護者の目を向けさせる男子校になるでしょう。

★中学入試進化論については、おそらく中学入試専門のシンクタンクの方々が今後発信していくことになると思います。楽しみにしています。

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2020年2月 2日 (日)

2020中学入試 3つめの動向。高い意識の女子受験生の誕生。

<本日、首都圏中学入試ピークに!新しいウネリか混迷のウネリか予想不能な真っ只中で。>という昨日の記事の中で、2020年の中学入試市場が支持している2つの価値観を紹介しました。

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★それは、①「基礎学力+最難関大学の合格実績」の実行力を果たしていることを評価する価値観。②「破格のイノベーション教育とグローバル教育進学実績の期待値」が大きいことを評価する価値観。

★そして、今回女子の動向も見てみると、くっきり3つめの価値観が映し出されました。

★2020年1月31日現在(首都圏模試センター「出願倍率速報」から)で、東京と神奈川の女子校で、昨年より出願総数が上回った女子校を調べてみました。次のようになりました。五十音順で並べてみます。

★跡見学園
★桜蔭
★神田女学園
★恵泉女学園
★晃華学園
★麹町学園女子
★香蘭女学校
★湘南白百合学園
★昭和女子大学附属昭和
★女子学院
★女子美術大学付属
★白百合学園
★桐朋女子(2020年2月1日現在)
★東洋英和女学院
★富士見丘
★雙葉
★日本女子大学附属
★立教女学院
★和洋九段女子  

★桐朋女子のようにこれから昨年の出願総数を上回る女子校もでてくるでしょうが、2月1日直前までに出願総数を上回った女子校は、強烈な共通点があるので、並べてみました。桐朋女子も2月1日に総数を上回ったのですが、やはり共通したところがあるので、いっしょに並べました。

★それは、トレンドならなんでもやってみてなんとか生徒獲得をしようという付和雷同をしない女子校群だということです。このラインナップの女子校は、21世紀においてジェンダーギャップを払拭して活躍する進取の気性に富んだ女性を育成する独自の教育観をもち、その強い信念を貫いている学校です。

★そのうえで、新タイプ入試を取り入れたり、午後入試を設定したり、今年のようにプチサンデーショックを巧く活用したり、破格のグローバル教育を実施したり、骨太論文編集指導をしたりしている創意工夫に富んだ経営と教育を形成している女子校です。やはりここでも中途半端ではない徹底的に信念を貫き通すマインドで教師も生徒も満ちている雰囲気があふれている女子校ですね。

★残念なことに、女子受験生のすべてが、このような自律/自立したマインドを有しているわけではありません。正解がある問題をコツコツやらないと気が済まない受験生もいます。それは男子も同じではないかといわれるかもしれません。

★たしかにそうですが、おそらくジェンダーギャップを生み出すシステムを受け入れてしまっているので、女子受験生の方が多いでしょう。女子校の先生自体が、女子は男子と違って、わかりやすさや順序だてての説明、コツコツ知識を憶えていくのが得意だとまったく根拠のない話をされる場合も多いのです。そのような女子校は残念ながら生徒応募はどんどん減少していますね。JGに進むような生徒は、もちろんそれも得意ですが、そこらへんは、実にちゃっちゃと済ませ、もっと面白いことに思いを馳せるのが得意です。

★世の男性中心社会がそういっているだけで、私たちはそんな罠にはひっからにわよ。フリはしておいたほうがよいときにはそうしておくけどと。JGでは毎朝礼拝があります。世界の問題を考える時間です。ただ祈るのではなく、痛みを共有し、どうすべきか提唱するところまで語るわけですが、それは理事長のみならず、教師も、生徒もその機会があるのです。

★女性は男性とは違い生真面目な受験勉強が得意でなんていう発想は、SDGsで解決しなければならない格差社会やジェンダーギャップを生み出す可能性があります。20世紀型教育はそうだったかもしれませんが、もはや21世紀においてそれは認められません。そういうことに鋭い意識や娘の未来に思いを馳せたときに、上記のような強い信念をもった女子校を選ぶのです。そして、そういう高い意識の女子が選ぶ共学校もあります。

★中学入試において、女子受験生の意識が大きく2つに分かれるようになったのは、2020年中学入試の大きな特色でしょう。

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2020海城の社会と理科 アカデミックな問い

★海城といえば社会の論述問題が有名です。今年もすてきな問題が出題されました。テーマは衣服ですから、実は部分的には今年の麻布の社会の入試問題と重なっています。海城と麻布はときどきテーマが重なります。おそらく社会科の先生方の研究会などでいろいろな話がされていて、情報交換がされているのでしょう。ですから、たまたま重なるということはあるのでしょう。このレベルの学校は、横の知のネットワークがあるということですね。過去問の学び方にも工夫ができそうです。

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★さて、海城の社会のファイナルクエスチョンですが、この問いだけではなく、資料がたくさんあって、それを分析するとこの問いは考えていくことができるので、麻布のような創造的思考力を要しません。学問的に情報やデータを積み上げて結論を検証していく姿勢が重視されています。もちろん、麻布もそうなのですが、少しけれんみのある問いをしかける癖が麻布にはありますね。

★それにしてもシェネルのオートクチュールの製作がファストファッションと違いパリ市内で行われる理由を問うとは、ファッション性より市場価値の生み出し方の違いを考えさせるところが、どこか構造主義的ですね。

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★海城の理科の入試問題も、上記の問題文だけではなく、読み解くグラフやデータがバーンとあるわけですが、そこから実験の正当性や信頼性をクリティカルシンキングさせています。入試問題全体そのものを見て頂くと、そのダイナミックさに驚かされます。

★同校のふだんの理科の授業が、フィールドワークや実験が多く、教科書の追試ではなく、生徒自身が実験や検証方法の仮説をたてているので、常にその正当性や信頼性をクリティカルシンキングすることは当たり前になっているのでしょう。入試問題は学校の顔ですから、しっかりとそこが問われたのでしょう。

★受験参考書や学校の教科書だけの枠内で学んでいても、このようなクリティカルシンキングを要する問いはなかなかできるようにならないですね。海城の理科のような問題を多くの学校が出題すれば、塾の理科の授業の在り方もかわり、科学者の目を意識した環境ができるでしょう。プログラミングも大事ですが、そもそもデジタルサイエンティスの目を持てるようなカリキュラムになっているかどうかは重要です。

★海城の理科の問題は、そこに大きな問題を投げかけているといえましょう。

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2020武蔵の社会 考える問題~存在をみつめる問い

★武蔵の社会の問題は、麻布のように文化人類学視点というよりも、社会の問題に対して、社会政策を自分だったらどう考えるか、個人として自分はどう対応するかについてストレートに考える問いが多いのですが、麻布にしても武蔵にしても、今年は自由度の高い思考マップの広げ方ができたかもしれないですね。20世紀末までは、両校は、このような思考の自由な翼を広げるダイナミックな問題が多かったのですが、近年は論理的に詰めていけば解けてしまう難しいけれどこじんまりとした問題が多かったのですが、再び立ち還ったのかもしれません。

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★昨年の幾度も来襲する台風による被害を思い出しながら、考えていく問い。近年ひとたび災害が起こると、その被害を食い止めるのがかなり難しくなっているのは、私たち自身が経験しているし、受験生もそうでしょう。国や自治体がどんな対策をとるべきか昨年は家庭で、学校で、塾で話題になっていたと思います。

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★ハザードマップも実際に重要である経験を昨年多くの人がしました。やはり受験生も、ハザードマップをみながら自宅や友人や地域がどうなるのか首っぴきになりながら話し合い行動していたことでしょう。

★そういう意味では、主体的に考えることに迫る問題だったと思います。

★中学入試の問題が、武蔵や麻布のように、自分の生活や生き方から他者の生活や生き方、また地域や国がどのような政策を立てるべきかまで、基本知識を総動員しながら考える機会を与えるものばかりだったら、私立中高一貫校の教育の価値はますます高まるでしょう。選抜の道具としての入試問題から生き方を考えるそんな存在のための問題にシフトすることは案外何かが変わるのかもしれませんね。

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2020中学入試市場が注目している動向や学校 ホンマノオト21のアクセス数から見て

★昨日2月1日から、東京と神奈川の中学入試がスタートし、首都圏の中学入試の動きは沸騰しているわけです。そんな中、即日合格発表もありますから、ホンマノオト21は午後10時以降のアクセス数がピークになります。

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(先月行われた八雲学園の70回生が集まった成人式。あふれる母校愛が伝わってきます。)

★1日だけですが、本ブログのアクセス数ランキングベスト15位を掲載します。あくまで個人のブログのアクセス数ですから市場全体の動向や人気の学校を示すわけではありませんが、平常時よりアクセス数が多いですから、そのことは、検索エンジンで初めて訪問した方も多いということを示唆しています。何らかの参考まで。

1:2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!
2:本日、首都圏中学入試ピークに!新しいウネリか混迷のウネリか予想不能な真っ...
3:2020年首都圏中学入試の学校選択(04)東洋大京北の場合
4:【速報】工学院順調に生徒集まる。
5:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
6:【2019年大学合格実績04】世田谷学園の東大合格者躍進の意味。
7:2020年中学入試 新タイプ入試の意味あるいは価値
8:【2019年度首都圏中学入試(09)】 かえつ有明 アップデート 内生的...
9:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 東京エリア
10:八雲学園 生徒と共に進化する(1)
11:武蔵野大中高を変えた校長「日野田直彦」先生。
12:品川翔英のために 柴田哲彦先生副校長に就任
13:2020年からの中学入試(34)人気女子校を追う
14:2020年中学入試の新タイプ入試の動向 神奈川エリア
15:八雲学園 生徒と共に進化する(2) 

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2020年2月 1日 (土)

【速報】工学院順調に生徒集まる。

★教務主任の田中歩先生から連絡あり。

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★「午後は予想よりも多く、試験会場を1つ増設しました!」と。

★同校の中学の募集はもともと100名ぐらいなので、他校のようにスケールメリットの論理を数字で見せつけることができないのでしょうが、多様な才能者との多くの出会いに手ごたえを感じているということでしょう。

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★田中歩先生の共感的っコミュニケーションは、こういう手ごたえに通じていくのですね。がんばってください!

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2020年麻布の入試問題 やっぱり傑作!

★本日、麻布の入試が終わるころ、正門をはいっていったところ、親子で帰る集団とすれ違いました。入試問題は保護者が待っている間、貼りだされていますから、息子を見つけるや、あの問題こう考えたけどどうかなといきなり話しかける父親がいました。それに対し、そんな複雑に考えないでいいだんよと。そうかそうかと父親。

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★そんな対話をしている父と子が意外と多いのに思わず笑みがもれてしまいました。そして、そうだよなあ、大人が考えても面白いのだからそうなるのは当然だよなと思いました。

★私は、5部ほど購入しました。京都の先生方と研究するため、仲間たちと分析するためなどの目的で手に入れに行ったわけですが、やはり電車の中ですぐにとりあえず眺めました。

★算数は、図形と図形の移動のバリエーション問題が出題されていて、幾何と式の関係を頭の中で考えるのは興奮するし、プログラミングでこれは解けるだろうから、そういう意味ではプログラミング以前に何か必要なことがあるなあとも感じました。

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★国語も相変わらず長文で、たぶん1万字はあるでしょう。しかも、またしても女流作家です。宮下奈都さんの「つぼみ」から出題されていました。

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★物語は、少女の成長物語ですが、ちょっとした恋愛と背伸び、そして嫉妬など、小学校6年生の男子が読めるのかと思いつつも、男子校でも女性の気持ちをわかるのはたしかに重要だと妙に納得したりしました。ジェンダーギャップを少しでも解消するには、やはり疑似的にでも女性の気持ちを了解することは必要でしょう。

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★麻布の理科は、どれもすてきです。昨年のコーヒー問題の替わりに今年はスイーツ問題です。しかし、個人的には光の速度をはかることをテーマにした問題が感動的でした。昨年の4月にアインシュタインのブラックホールを通る時に光が曲がるという理論を実際に撮影して検証できたというニュースが話題になりましたが、そういう科学の最前線の成果を、テーブルクロスに球をおいてゆがみをつくり、そこをアリがあることで、どれが最短の距離なのか考えさせる問題に転換しているところが、メタファーの醍醐味でスリリングでした。

★アインシュタインの重い星によって「時空」がゆがむ理論を紹介したうえで、それをアリで実感させる問いの発想自体がさすがです。思わずオーッ!と独り言。電車に乗っていた周りの人の視線が多少気になりましたが。

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★そして、相変わらず圧巻の社会。衣服と歴史、衣服と文化、衣服と風土、衣服と宗教、衣服と戦争、衣服と産業など衣服に多面的にアプローチすることで、文化の違いや価値観の違い、支配―被支配の関係、経済格差の問題など人間の深い問題を見出していく仕掛けになっています。社会学的、文化人類学的なアプローチがベースにあるのです。

★最後の問題は入れ墨問題と校則問題の意見対立を具体的に考え、そのうえで両者の葛藤の共通点をあぶりだすアクロバティックな思考力問題を出題しているのですから驚愕しないわけにはいかなかったのです。電車の中でしたから、その驚きのウメキは心の中でそっと。

★詳しくは解いてみていずれ1年かけて味わいたいと思います。速報でした。

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本日、首都圏中学入試ピークに!新しいウネリか混迷のウネリか予想不能な真っ只中で。

★本日2月1日(土)、東京エリアと神奈川で中学入試スタート。首都圏中学入試はピークになりました。そんな折共同通信は、「英国がEU離脱、加盟国初 歴史的転換点、混迷に終止符」という記事を掲載。何の混迷に終止符を打ったのか疑問ですが、日本時間8時に、イギリスはEU離脱を果たしたのです。ちょうど中学受験生が各校に集結している真っ最中の時間帯です。

★そして、今年は例年にもましてマスク着用の受験生が多くいるように感じたのは、WHOや米国などで新型肺炎の拡大に対し緊急避難宣言を出しているからかもしれません。2021年から開始されるはずだった大学入試共通テストの民間英語試験導入や記述式問題なども見送られたり、今年の中学受験生にとっては、新しいウネリなのか混迷のウネリなのか予測不能な真っ只中での中学入試となったのです。

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(2020年2月1日午前 三田国際学園の中学入試風景)

★しかし、そんな中だからこそ、2020年度の中学入試動向は、明快な動きになりました。中学入試市場が支持した私立中高一貫校の男子校の出願の勢いがよい現象と三田国際のようなパーフェクトなイノベーティブ教育を実践している学校の出願の勢いが良い学校の2つの価値観が明快に市場に反映されました。

★つまり、中学入試を考えている家庭層のうち男子校に流れたように、この世界の動向はすぐには影響しない。すくなくとも基礎学力をうけて東大、早稲田、慶応、医学部といった最難関大学に進学すれば、自分の子どもが42歳になる2050年になっても、なんとかサバイバルしているだろう。そのポジショニングはまだ危険水域に入らないと考える価値観です。シンギュラリティがくるはずがない。AIが人間を超えるにはまだ時間がかかるし、かりにそうなってきてもアッパー層のポジショニングをゲットしていれば、コントロールする側にたてると。これはこれで、極めて現実的な判断でありでしょう。

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★イギリスが、ドイツ、フランスいい加減にせいよ。ドイツ神秘主義や観念哲学、フランスのネオプラトニズムの衣装をまとったカトリック主義の幻想である1なるものは多であり多であるものは1であるという1つのヨーロッパ主義はイギリスにはなんの利益ももたらさないのだ。イギリスはやはりニュートン近代科学主義とアダムスミスやヒュームの経験主義で行かせてもらいますよ。

★コンピュータサイエンスなどイノベーションのリベラルアーツの事情は日本のリベラルアーツなきプログラミング教育とはイギリスはだいぶ考え方が違うのですが、まあこういう実際主義的というか現実主義的な価値観は否定すべき理由はありませんね。

★また一方で、三田国際のように、日本の教育に欠けているものは、自分たちで創ってしまえばよいというアラン・ケイやジョブスのようなネオプラグマティックな考え方をする学校に大いに価値を見い出し、支持するプレイヤーも中学入試市場には現れたのです。三田国際は、このようなイノベーティブな教育を開始して今年4月に6年目を迎えます。

★つまり、インタークラスによるイマージョン教育がすべての学年で行われるようになるのです。3分の1以上がこのクラスに所属しています。三田国際の国際生入試が英検準1級を持っていても合格できないケースが続出というのは、受験英語を超えて、海外のエスタブリッシュスクールがなぜか用賀の地にあるといった感覚です。

★やがて、本格的なMSTクラスも全学年完成します。そうなってくると、本科クラスはより一層リベラルアーツ教育の色が濃くなります。最初の頃は眉唾だといっていた塾予備校もあったようだし、ルサンチマンよろしく影口を流す同業者もいました。三田国際をずっと注目し、6年前から2月1日の午前入試を定点観測している私などは、提灯記事を書いてと揶揄もされました。

★しかし、今そういう方はあまりいないでしょう。というのも、実はこの間、大学合格実績も伸ばしていて、そういう揶揄する方々はいいこと言ったって大学合格実績がでなければと馬鹿の一つ覚えのように言い続けるものですから、その口を閉じなければならざるを得なくなったわけです。しかも、かれらが信じている大学合格実績校が次々と海外大学にも輩出するようになってきたのですから、ますます口を封印しなければならないわけです。三田国際からすでに世界大学ランキング200位以内になら、多くの生徒が飛び立っているからです。

★せいぜい、彼らは、馬鹿の壁よろしくハーバード大学でなければというのでしょうか。だとしたら呆れてしまいます。いずれそういう生徒が速めに三田国際でもでるのは必然ですからね。

★しかしながら、このネオプラグマティズム信奉者は、なかなか厳しい評価視点をもっていて、中途半端なイノベーティブ教育は斬り捨てます。三田国際に入らなければ、どうするか。渋谷教育学園渋谷や麻布を狙います。イノベーティブ教育と大学合格実績の二兎を追うけど、その環境がなければ、大学合格実績を優先し、少しでもイノベーティブな進取の気性に富んだ学校ということになるのでしょう。

★三田国際とは違うイノベーティブ教育を行っている聖学院や八雲学園、かえつ有明も出願の勢いはわるくないですが、それはイノベーション×破格のマインド教育があるからです。ただ、三田国際と共通点は、米国教育の影響を受けているという点です。聖学院と八雲学園は、もともと建学の精神が米国にあります。かえつ有明は、4年前まではイギリスでしたが、今はシリコンバレーやMITの流れをくむマインドフルネス教育を土台にしています。

★これらのいいとこどりを全部した怪物が武蔵野大の日野田校長です。彼自身シリコンバレーの文化で生きていましたから、いいとこどりをしているんだけれど、本物なのです。実に不思議ですね。日野田校長のような期待値で生徒を集められる巻き込みプロデュース力の持ち主は他にいないでしょう。

★要するに、「基礎学力+最難関大学の合格実績」の実行力を果たしている学校か「破格のイノベーション教育とグローバル教育進学実績の期待値」が大きい学校かのふたつの価値観が市場に反映しているのでしょう。

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(上記の表には、今年の国際生入試の応募者数はまだ公表されていません。ということは、このままいけば、最終的にはまた総応募者数は3000人を超えるということでしょう。)

★そして、中途半端な「基礎学力+大学合格実績」の学校や中途半端な「イノベーション教育と大学合格実績」の学校は選ばれなくなります。ただし、前者ははっきり判断できます。大学合格実績を出していない学校がいまさらそれを目指しても、学歴社会のシステムを無視することはできないのです。学歴社会のシステムは強固です。そう簡単にはぶち破れません。

★しかし、「イノベーティブ教育×国内外の進学準備教育」は、日本の学歴社会システムを超えているというか別次元に位置していますから、ぶち破ることはしないですが、超えることはあるいは回避することはできるのです。だから、まだ芽がでてないからといって中途半端とは限らないのです。たとえば、和洋九段女子のように徹底的にPBL授業を研究し実践している女子校は、実際注目され始めています。

★工学院などは、八王子というハンディーがある地理的条件では目立ちませんが、すでに高校入試では大注目を浴びているし、中学入学者の入学後の創造的才能開花ぶりは、各メディアで取り上げられています。

★それにすでに昭和女子大のように大人気の女子校もあります。昔の躾第一主義的なイメージは今はもうありません。グローバルサイエンティストの生まれる21世紀の女性の意味を歴史的に決定づけるのではないかと思えるイノベーションを起こしています。

★いずれにしても、中途半端では、選択眼がより厳しくなったというか、すでに家庭がかなりグローバルあるいはハイクオリティの学問や仕事をしているので、選ばれなくなる時代です。私立中高一貫校が、どちらの道を歩もうとも、中途半端な構えを捨てなければならないエポックが2020年ということでしょう。中途半端を捨てるクオリティ向上の時代がやってきたのです。

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