自由と市場と組織と国家(24)聖学院と工学院の思考力入試の新市場創出の革新性 麻布と東大帰国生入試の知のフラット化へ立ち臨む ③
★聖学院の思考力入試は3種類あります。その中で難関思考力入試は、①未知のものに遭遇した時、興味と関心を生み出す問い。②テーマやターゲットを多角的にアプローチするグラフや写真などの資料の提供。③「比較・対照」スキル、「相関関係」スキル、「置き換え」スキルを活用する問い。④①から③まで考える時、レゴに変換して自らの内側から生まれた感じたことや考えたことを可視化するようにする活動。➄創造的問題解決のための問いとその解答を200字で記述する問題。
★などが、すべて統合されています。他のものづくり思考力入試は、②と④が中心に問いがデザインされ、M型思考力入試は、①と②が中心に問いがデザインされていると思われます。すべての思考力入試の最終問題は気づきや問題解決方法などを記述する200字記述の問題が出題されます。
(クックパッドの本社キッチンホールで、企業と静岡聖光学院と聖学院がコラボして料理について考えるワークショップを実施。思考力入試の問いのデザインは、このような外部との連携のプラグラムにも応用が可能であることが証明された。)
★それから大切なことは、問いの配列は思考過程をサポートするストーリーになっているということですが、直線的に考えていく必要はありません。写真やレゴが挿入されているので、そこはシナリオプランニングは、あくまで生徒自身ができるようになっています。
★前回ご紹介した東大の問題は、いきなり骨太な問いがバーンと出題されます。麻布も最終問題に到達するまでに幾つも問いがありますが、最終問題にいきつくまでの思考過程のサポート問題ではなく、最終問題に関連する知識問題が中心です。テーマに対して多様なネットワークを拡散して最後に一気に収束するというスタイルです。
★東大の問題にしても麻布の問題にしても、その問いを考えるには、自分で多角的にアプローチし、まとめていかねばなりません。難しいのはいうまでもありません。ところが聖学院の場合は、その多角的アプローチは、最終問題に行き着くまでにステップバイステップで出題されるので、考える足場が組まれます。東大や麻布は、思考の足場から組み立てていきますが、聖学院は問いにしたがって考えていくと、足場ができてしまいます。
★この足場ができてしまえば、東大であろうと麻布であろうと聖学院であろうと工学院であろうと、生徒は考えたりアイデアを出したりできるのです。何を言っているんだ?足場を自分で作れるかどうかが重要なんだろうと。今まではそうだったかもしれません。だから0.01%の生徒しかできなかったのです。
(内田先生は、他校の先生方と聖学院の≪Z世代≫世代生徒といっしょに新しい学びのプログラムづくりのワークショップを実施。外部ネットワークとZ世代を結びつけるプラットフォームの可能性を証明したのです)
★工業化時代や修正工業化時代の感覚では、そう感じるかもしれません。しかし、本格的な脱工業化時代は、足場をつくる技能部分は、脱技能と化するのです。実はこの技能は、環境差なんです。中高時代の前の家庭や小学校、就学前の学びの環境がどうだったかというのは、知る由もないはずですが、その環境差を選抜するのか、同環境という条件を整えて、思考力を選抜するのか、それは学校が選べばよいことです。
★それなのに、その環境差を見る視点だけで入試問題を作成してきたことが格差社会をつくってきたことの原因でないわけではないのです。内田先生はシステム思考やSELを研究し、新しい評価システムを探究してきたわけです。
★AI社会は、その脱技能を促進し、思考力やアイデアを互いに出し合う次元にシフトします。聖学院の思考力入試は児浦先生と内田先生の外部ネットワークや本格的な学習理論や心理学の導入によって、東大や麻布という0.01%の世界を多くの生徒とシェアする学びの世界を生み出しているのです。
★これによって、市場の非対称性の解消、組織の強い階層構造の緩和に影響することでしょう。軍事力から経済力へ、経済力から知の力へと近代化の進化は展開しています。21世紀は知の力ですが、修正工業化社会の段階では、まだ知の格差が残ります。しかし、脱工業化時代には知のフラット化が起こり、世界中の子供たちがそれを共有化できます。
★そのうえで、個々の才能が多様に開花するわけで、この段階をもってして個別最適化の学びということになるわけです。
★まずは東京の私立学校が、このような思考力と共感的コミュニケーションを育成する場をコアコンセプトとしてプラットフォームを広げていく希望を、児浦先生と内田先生が創出しているのです。
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