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2020年1月 9日 (木)

自由と市場と組織と国家(17)創造主義志向の意志が生まれる:工学院の田中歩先生チーム・麻布・八雲・首都圏模試➄

★工学院は、明治以来20世紀社会、特に工業化時代の側面を構築するのに貢献する人材を輩出してきました。それゆえ、脱工業化時代にシフトするのは組織上はなかなか難しいのは誰もが理解しやすい状態でしょう。しかしながら、シフトしないわけにはいかないのは、理事会当局もわかっているでしょう。しかし、今すぐ20世紀社会が21世紀社会に完全シフトするわけではありませんから、意識の高い50代以上のスタッフは別として、伝統を守りながら革新も少し動くという戦略になりがちです。

★そこに6年前に外部から平方校長が就任し、強力なリーダーシップを揮ったものですから、伝統と革新の葛藤は凄まじかったですね。そこを共感的にコミュニケーションによって、葛藤を変容のエネルギーに転換していったのが田中歩先生です。もちろん、歩先生一人ではなく、多くの仲間がいましたが、強権を一切発動しないで、全体のアップデートを静かにしかし急激に行ったのは歩先生のリーダーシップは大きな役割を果たしました。というより、現在進行形ですが。もう少し時代が進まないと世の中は認識しないでしょうが、田中歩先生は脱工業化時代のニュータイプリーダーです。

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★さて、そんな中で八雲学園もいよいよ頭角を現してきました。八雲学園は工学院と違って、伝統という出発点がはじめから戦後アメリカプラグマティズムの流れを汲んでいるので、工業化時代を批判して、脱工業化時代を発想する流れをとりこんでいました。ですから、学校全体が、米国プラグマティックなグローバル教育がベースです。

★だから、受験業界がグローバルクラスを別にしたほうがよいとか、なぜ帰国生クラスをつくらないのかとアドバイスしても、そこはプラグマティックですからしっかり耳を傾け、往なし続けてきました。なぜかといと、米国プラグマティズムベースの世界標準のソフトパワーしかとりいれないという信念があったからです。

★そして、教育の総合力で勝負していましたから、進学指導など、そこはプラグマティックに、生徒の要望にこたえる形で調整してきました。しかし、はじめから米国プラグマティズムがベースですから、東大ピラミッドの学歴社会で勝ち組になろうという発想はまったくもちえていなかったのです。というか眼中になかったというのが本音でしょう。

★ですから、とにかく全クラスグローバル教育を推し進めました。米国のエスタブリッシュスクールの姉妹校ケイトスクールの伝統を受け入れていったのです。あらゆるものをといれたし、八雲学園の「道」の教育はケイトスクールにも影響を与えました。

★したがって、思考コードのように進化途上でまだ世界標準になっていないものは取り入れません。しかし、それは必要だったのです。ただ、こればかりは、生徒が必要性を教師に訴えることはないので、対応できません。八雲学園はプラグマティックですから、世界標準の本物という理想と生徒の要望という現実の調整は俊敏にしていきます。しかし、思考コードはまだ世の中に広まっていなかったのです。

★ところが自体は変わってきました。エール大学と国際交流することによって、そのレベルを生徒が要望しはじめたのです。先生方は瞬時に動きはじめましたが、そのとき気づいたのです。CEFRでB2レベルを目指していては、生徒のこの要望に応えられないと。

★そんな折、近藤隆平先生という米国大学留学経験のある英語教師が現れたのです。近藤理事長・校長の長男で、このタイミングを読んでいたかのような、壮大な八雲進化計画だったのかもしれません。

★近藤隆平先生はすぐに世界を飛び回り、ラウンドスクエアという日本人はほとんど知る由もない世界のエスタブリッスな私立学校のコミュニティに加盟する準備を行いました。ケイトスクールももちろん加盟校です。このコミュニティにはいるには、CEFRレベルでC1は当たり前なのです。別に英検1級合格者をたくさん出すことが目的ではなくて、C1レベルのグローバル教育の環境デザインがポイントです。そもそもCEFRテストは存在していません。英検1級などという指標は便宜上の指標です。

★実は田中歩先生がC1レベルの視点からハイブリッドインタークラスのカリキュラムをデザインして、そうでないクラスには、思考コードでC軸思考を育成するカリキュラムをデザインするチームをつないでいったという話を思い出していただければおわかりいただけるのですが、八雲学園の場合は全クラスが実質グローバルクラスですから、C1レベルの英語教育を注いだ時に、すべてのクラスが思考コードでいうC軸思考も学べる環境に一気呵成になってしまったのです。

★もともとCEFRのルーブリックはブルームのタキソノミーを参考にしています。したがって、B2を目指しているとC軸思考が視野に入らないのです。ところがラウンドスクエアの加盟校はクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングは当たり前なのです。そして、欧米は、どちらかというと言語=思考一元論で、英語はコミュニケーションのツールで、思考は別の内面的な現象だとセパレートして考えません。

★日本の英語は、B2どころかA2くらいを目標にして英語教育を行ってきましたから、言語と思考は別物だったのです。

★麻布も思考コードは使いませんが、明治時代以来の≪官学の系譜≫と対峙してきた創設者江原素六は、アメリカプラグマティズムとフランス人権思想の発想と論語の見識を融合させた精神の持ち主でしたから、もともとC軸思考をふくむ知の巨人でした。今でも麻布に入学した300名は、沼津の江原翁の墓参をします。その際に、麻布文庫の江原素六の伝記を読んでから行きます。当然創設者の大きな知の精神を受け継ぐものとして自負があるわけです。

★明治期の富国強兵・殖産興業が生んだ工業化時代に警鐘を鳴らし、ローティのような視点で自由をかたりつないできた麻布です。そもそも脱工業化時代の準備の拠点だったのです。

★かくして工学院は日々新しいものにチャレンジしながら新しい伝統を創っています。八雲学園は伝統を守るには、日々新たなチャンレンジをしています。麻布は伝統そのものを持続することが即革新だったのです。

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