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2019年12月13日 (金)

2つの「思考コード」と学校教育法 新学習指導要領は着々と実現していく

★今回の文科省の大学入試改革は、あたかも大学入学共通テストの話であるかのようにメディアはすり替え、批判ではなく、揶揄しています。まるで勝てば官軍、鬼の首でもとったように。自分たちは民主主義のリーダーであるかの如くです。

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(なんだかんだといって、ブルームを超えられないのが現状。ブルームのタキソノミーのアップデートは多くの学者によってなされていますが、この本に還ってみれば、そこには豊かな発想のヒントがいっぱいあります。首都圏模試センターのすばらしいのは、この原点に立ち還り「思考コードを積み上げていき、アップデートしていっているという見識です。首都圏模試センターの「思考コード」を語りながら、ここをきちんと論じている識者はまだ一人もいません)

★大学入学共通テストの正当性・信頼性・妥当性を世論が判断するのは、もちろんいいのですが、それが教育改革をも揶揄する方向に導くとしたらそれは違います。あまりそれをやりすぎると、民主主義をジャーナリズムが壊してしまうことになりかねません。というのも、民主主義は法の支配をベースにしています。それがいやだというのなら、それは民主主義ではなく、民主主義と共に生まれてきたジャーナリズムはジャーナリズムと呼ばれなくなるでしょう。

★今回の大学入試改革は、もともと高大接続教育改革です。2007年に改正された学校教育法に基づいた学力の三要素、創造性、批判力、社会貢献への使命をきちんと学習指導要領に盛り込むことが本意です。それによって、授業や評価法などが変わらざるを得ないのですが、そうなると大学入試も、そこに接続するように変わるという話だったのです。

(学力の3要素、創造性などについて規定されている学校教育法の条文:参考)

第二十一条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

第二十九条 小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。
(平一九法九六・旧第十七条繰下・一部改正)

第三十条 小学校における教育は、前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
② 前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

第五十条 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。
(平一九法九六・旧第四十一条繰下・一部改正)
第五十一条 高等学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること。
三 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと。

★ただし、学習指導要領は概要を語っているだけで、その具体的な方法や実践については各学校や各教員に任されています。統一するための議論は存在していないのです。だから、バラツキはありますが、法に基づいて着々と進んでいくのです。実践する側は法の枠組みの中で自由にできますから。もちろん、教育委員会など面倒な面もありますが、読み替えて突破していくことができます。

★最近話題になっている「思考コード」も実は、この学校教育法を無視するものではありません。むしろ包括的になっています。ただし、みえにくいのは、今のところテストやレポートを評価する「思考コード」が前面に出て、各学校で活用されている授業を評価する「思考コード」があまり世の中で注目されていないからです。

★ところが、昨日ご紹介した順天学園のような動きは、この2つの「思考コード」(順天自身はルーブリックという用語を使っています)をきちんと使い分け統合しているのです。それによって、順天の授業や評価の方法もアップデートしているのです。

★メディアは、ここの重要性をむしろズームアップする必要があるのですが、スキャンダルな記事でなければ売れないので、しかたがないのでしょう。希望があるのに、希望を見て見ぬふりをする。ネガティブな側面しか強調しない。これでは、日本の将来は危ういですね。

★そうはいっても、いつ学校教育法は変わったのだといわれるのでしょうか?もし学校教育法が悪法だとしたら、この法律の成立過程をリサーチし、覆す理論をつくり、運動しなくてはいけません。民主主義では悪法も法なのです。ここを無視すると、もはや民主国家は機能しません。

★しかし、この学校教育法を批判するのは相当難しいと思います。悪法だとは思えないからです。したがって、この法をベースにした動きまで、揶揄するのは、考えたほうがよいと思いますよ。

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