12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(03)桃源郷プラットフォームを増やすしかないのか?
★最初の登壇者は、富士見丘学園理事長・校長吉田晋先生(21世紀型教育機構理事長)。文科省の高大接続改革の分科会のメンバーでもあります。したがって、今回の政府・官僚のとん挫決定に対し失望し、結局私立学校が、世界の中で国力がどんどん衰退していく日本を救う教育を開発し実践し続けることでしか、日本の教育は変えられないという決意を表明しました。
★19世紀は帝国の時代でした。20世紀初頭の第一次世界大戦までオーストリア帝国などというような体制があったくらいですから。つまり、ここでは、教育は、一部の上層階級のものでした。軍事力がなんといっても帝国のエンジンだったのです。
★20世紀は経済の世紀です。しばらく近代国家の調整とのかねあいで国際関係が形成されていました。いわゆるバランス・オブ・パワーの時代ですね。軍事力は背景にあるものの前面にはでないように(実際にはでていますが)、国際貿易のバランスを外交交渉によって調整するということが続いています。そして、1989年のベルリンの壁崩壊後、グローバル経済が広がり、経済優先の世紀が20世紀末の新たな世界を形成しました。
★グローバル経済は、市場がメインですから、この拡大した市場を支える教育が、広く世界に広まりました。つまり、教育の大衆化です。しかし、周知の事実ですが、この世界が環境破壊、格差社会、精神の崩壊を多様な領域で生んでいきました。それを支える20世紀型教育でよいのか?という反省が同時に生まれました。
★21世紀にはいると、インターネットやIT産業が拡大し、近代国家観を揺るがしはじめました。GAFAの登場です。あらゆる壁や規制を突破していくネット社会の登場です。現在では、国家と貨幣発行の権限を巡って水面下で闘争が起こっています。
★かくして、実際には世界は大混乱です。それゆえ、「予測不能」「脱正解主義」という重要な価値意識が生まれてきました。
★しかし、日本において、この動きに大学がついていけません。今回はその実態を証明したようなものです。
★一方、世界はどんどん進んでいます。それがいいかわるいか、議論は必要ですが、まずは議論をしてからでは、日本の国力はどんどん下降していきます。≪Z世代≫の目の前の生徒の未来を守る必要は、いや責任は、今の私たちにはないのでしょうか。
★そんなことはないのは、言うまでもないでしょう。
★結局国内の心ある大学を探し、そうでなければ海外の大学に進学できる能力を磨く<新しい学びの経験>ができるようにしなければならいと吉田先生は語ります。海外大学は学費が日本の3倍も4倍にもなるところが多いです。ですから、奨学金を利用できるように能力も高めなければなりません。
★昨今では海外の大学に合格はしたが、奨学金がとれなかったから、上智大学やICUに進むという生徒も増えています。それでも、彼らは大学から再び自分の情報収集力で海外大学にチャンレンジするケースも少なくありません。
★20世紀型教育では見たことのない景色が広がる<新しい学びの経験>。そこはまるで桃源郷のようです。21世紀型教育機構の成果は、そこにいきついていると直接こう語ったわけではありませんが、吉田先生は確信しています。当面、私立学校でこの桃源郷プラットフォームを増やしていくしかないのだと思っていることでしょう。
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