自由と市場と組織と国家(02)教育の役割
★20世紀社会は、市場の原理は、一見自由経済でした。ただし、「一見」です。情報の非対称性あるいは情報ギャップが、経済格差を生みだしてきました。では、非対称性やギャップをなくせば経済格差はなくなるのでしょうか。おそらく、20世紀社会を反省し、PBLや探究が盛り上がってきた21世紀型教育では、ここをなんとかしようというわけで生まれてきています。
★社会が20世紀社会なのに、教育が先行して21世紀社会を描いています。SDGsが多くの学校の中で取り扱われているのは、その象徴的な動きでしょう。21世紀は教育の世紀だというのはその通りですね。
★しかしながら、情報の非対称性あるいは情報ギャップをそう簡単になくすことはできません。というのは、このギャップを生み出す最も強力な装置は金融装置ですが、これは自由経済の極致で、自由がゆえにあくまで確率論で、読みにくいし、予想しにくいのです。カジノ経済と言われる時もありますが、言い得て妙です。
★これは、大地をしっかり五感で学ぶ学習から離れ、知識によって知識を生み出す屋上屋を重ねることによって、情報の非対称性を生みだし、その知識をもっていないのは、勉強していないからだという自己責任論で納得させられてきました。これこそ20世紀社会の経済格差を生み出す仕掛けだったのです。
★だからこそ、既存の知識のインプット重視の20世紀型教育はクリティカルシンキングを重視し、クリエイティブシンキングを発揮できる環境を整える21世紀型教育にシフトする大事な理由があったわけです。人間の存在意義の回復ですね。しかし、残念ながらそこまで考えて、知識を詰め込む教育ではなく、思考力を重視する教育にしようと提唱している教育関係者もほとんど出遭ったことがありません。
★生徒には理由が大事だと言いながら、自律した勉強ができないから、主体的でないから、受け身ではだめだからと、そうした生徒の姿勢をつくってきた根本的な理由を語ってきませんでした。
★もともとは、文化人類学者が大地を五感でしっかり感じ取る「野生の思考」によって近代文明批判をしてきました。PBLや探究というのは実はここに還ろうとしているのです。ところが、大学で行われる学問にも2方向在ります。新知識を開発し、屋上屋を重ねる学問。そこを批判して本来的な大地に還ろうとする学問。21世紀は教育の世紀ですから、そこをもクリティカルシンキング出来ないとというわけです。しかし、そのことを意識している人は、やはり、少ないですね。そんな中、たとえばレゴ®シリアスプレイ®の仲間たちは、ここを意識できるポジショニングにいます。
★そうはいっても、実際には、気づいていないでレゴ®シリアスプレイ®を活用している方々も多いのは残念ですが、いつか覚醒するでしょう。そう期待しています。
★さて、その屋上屋を重ねる知識のバベルの塔は、しかしながら市場が生み出したものではないのです。ですから、市場の局面だけみて、いくらここを批判しても改善されても、それはこの20世紀社会を強化する役割しか果たせません。なんというパラドクスでしょう。
★とはいえ、それは組織や国家という市場の原理ではなく、権力の原理で動いているシステムが生み出しているのですから、そこをなんとかすれば、パラドクスは解消できるはずです。そのシステムをこそ修正すればよいのですから。
★しかしながら、それが難しいのは、果敢に立ち向かう香港の若者のデモを見てもわかります。いかに権力がそれを阻止する強烈な機能を果たしているかも見ることができますね。
★またシステム改革ができたとしても、それはアラブの春のその後を見れば、これも難航しているのは、すぐに了解できます。
★では、どうやって?21世紀は教育の世紀です。教育のやりかたによっては、それは可能なのです。
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