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2019年12月29日 (日)

自由と市場と組織と国家(05)SDGsで解決すべき根本問題は、近代誕生時に生まれたが・・・。

★市場において、非対称的な情報(=利益や利息)が正当化された理由は中世都市経済にあったというのは前回紹介しました。経済それ自体よりそれをめぐる宗教戦争や権力闘争を担保する軍事力の正当化をするためということも紹介しました。世界史や日本史、政治経済などの授業に探究的視点を挿入することによって、そのようなことは見えてきます。

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★しかし、問題は、市場において非対称的情報を生み出す必要性がなぜあったかということです。利益や利息が当たり前という現代にあって、もはやなぜ利益や利息が必要かという問いは投げかけられませんね。労働の対価として、サービスの対価として当然だという理解が普通です。したがって、ここを問いかけないまま≪Z世代≫が起業して、SDGsに取り組んでも、はなかなか問題解決の道を見出せません。

★では、どうすればよいのでしょうか?それは政治経済や倫理の授業に探究的視点を持ち込むことで解決がつきます。どういうことか、それはメディチ家の組織システムや大航海時代の帝国のシステムを探究するということです。そして、そのシステム構造が、なんと近代を通して現代にまでいたる組織システムだということに考古学的に分析することですね。

★現代社会では、マーケットと組織開発は分けて考えられています。しかし、実際には、組織を維持するためにマーケットが有効な資金調達の場なのです。メディチ家や大航海時代のスペイン帝国などは、そうはいっても、世界に市場が広がっているわけではないですから、都市という市場経済に接続するまでは、収奪戦争が基本です。

★スペイン帝国の収奪の計画は鎖国時代の日本にも及んでいました。しかし、それは新たな近代国家の準備がなされたイギリスやオランダによって阻止されたわけです。

★しかし、阻止されたからと言って、組織システムの構造が変わったわけではありません。

★大航海時代は、古代中国が発明した羅針盤・火薬・活版印刷という三大発明のアップデートによってなされるわけです。羅針盤はたしかに大航海技術を発展させますが、それはメディチ家がイタリアがイスラム世界の地中海貿易を独占するのに一役買っていたはずですから、スペインやポルトガルは世界に目を向けざるを得なかったわけです。つまり、羅針盤は弱みを強みに変える技術革新の象徴だったのです。

★世界は、市場が在るわけではないので、植民地政策的になります。収奪するわけです。それには強力な軍事力がいります。火薬はその重要な武器だったことは説明するまでもないでしょう。活版印刷は、市民革命や宗教改革の武器にもなったのですが、なんといっても官僚システムのシンボルです。

★三大発明の本質は、技術革新・軍事力・官僚システムだったのです。

★強大な帝国権力が在る限りは、この大航海戦略はうまくいきましたが、官僚システム・技術革新を保守するには、再生産システムが必要で、金がかかります。その資金調達は市場の創出です。そしてその市場に商品を持ち込むには、技術革新だけではなく、軍事力が必要でしたが、この軍事力の再生産が、大航海戦略ではなかなか難しかったのです。

★帆船を動かすには、羅針盤があってもどうしようもありません。ハードパワーが必要です。しかし、それは帆船を動かす達人たち、つまり職人的技術が必要だったし、船を動かす動力は、多くの労力が必要でした。そして軍事力も軍隊という人力が必要でした。

★ということは、あまりにもリスクが大きく、戦いによって、そして嵐によって失うものがあまりに多かったのです。人力の再生産はそう簡単ではないので、軍事力による商品調達や資金調達は合理的ではなかったのです。

★それは、メディチ家でも同様です。産業革命によって化石燃料を人力の代替労力を生み出すエネルギーに活用したのが、イギリスやオランダです。その新しい技術革新が、帝国を圧倒していきます。スペイン帝国の衰退とともに、ハプスブルグ家とも手を組まざるを得なったメディチ家も滅亡していきます。

★いよいよ近代国家の黎明期になるわけですが、官僚システム・技術革新・軍事力の三要素は変わりはありません。ただ、そのバランスは軍事力を極力コスパを考えて最小限にコントロールしていっただけです。

★しかし、まだ近代国家が完成していたわけではないのです。それゆえ、ここに新しい組織が誕生します。それこそが株式会社なのです。技術革新によって、軍事力の部分まで再生産しやすくなったのです。化石燃料を軍事力や人力の代替技術に転換することができる組織が覇権を握ることになります。

★それが東インド会社にはじまる株式会社です。生産手段は工場で持てます。もはや帝国も都市権力者でなくても資金を調達できる企業組織はそれを可能にしたのです。なんとその資金調達は株式マーケットだったわけです。

★いよいよ、科学の授業がここで大いに役立つわけです。物理学や化学が近代国家成立の過程で学問として生まれてきたのですから。近代国家の三大発明は、物理・化学・経済です。そして、数学は、いずれにも共通して使われました。

★ニュートンが、物理学者で数学者で、造幣局長官でもあったのは、実に象徴的ですね。

★いずれにしても、第一次世界大戦まで、資金調達して市場経済の覇権争いに、帝国も残り、近代国家が着々と力を伸ばし、株式会社も名乗り出てきていたわけです。

★しかしながら、戦争には株式会社は名乗り出ることはありませんでした。それは、租税を課すという資金調達ができなかったために、マーケットを維持するしかなく、戦争はマーケットを崩壊する原因なので、株式会社にとっては矛盾が生じるからです。市場のない世界での戦争を支える軍需産業はリスクが相当ありますが、手を出す株式会社もありますが。

★しかし、こうしてみてくると、組織というのは、近代にあって、官僚システム・技術革新・軍事力の3要素は必須です。ただ、株式会社が軍事力をいつまでも持つことはできませんでした。コンプライアンスとかセキュリティとか法と技術革新によって代替されていくことになります。

★そして重要なポイントは、株式会社における官僚システムはもっと柔軟なマネジメント型官僚システムに変容し、セキュリティ部分もどんどん技術革新によってコスパがよくなっていきます。しかし、変わらないものは技術革新を動かすエネルギーです。化石燃料であることにかわりはないのです。

★さて、ここから化学、生物の授業に探究の視点を持ち込めば、この化石燃料の根本問題の認識と解決の糸口をダイレクトに研究できるし、建築学的視点と芸術的視点を持ち込むことで、スマートシティ構想を今までと違うアイデアで置き換えることができるでしょう。おそらくここにおいてSDGsの突破口は大きく開かれるでしょう。

★建築学的視点と芸術的視点と生物や化学の視点といった探究視点を統合する授業は、実は家庭科と保健体育の授業です。

★しかしながら、組織が、そう簡単に、柔軟な官僚システムや技術革新を生み出すクリエイティブクライメット(創造的雰囲気)、コンプライアンスを促進したりパワハラを禁止したりする法の支配を受け入れないのはなぜでしょうか?

★SDGsの突破口が開かれても、そこから先に進むことが困難な理由はなんでしょうか?

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