ノートルダム学院小学校 <新しい学びの経験>=Peer Instructionを開く(1)
★ノートルダム学院小学校は、五山送り火の観覧スポットである北山通り沿いにあるノートルダム女子大学と同じ敷地内にあります。そこは、京都でも、祇園や嵐山とはまた違う京都らしいエリアです。歴史と近代的な調和がとれた街並みです。
★そういう独特の空間とあたかもマッチしているかのように、ノートルダム学院小学校の教育は伝統的なカトリック教育と<新しい学びの経験>を開発する革新的な教育イノベーションが巧みに統合されています。
★今回、その革新的な教育イノベーションのシーンを広報部が動画にすることにしたようです。その革新的な<新しい学びの経験>であるハーバード大学のマズール教授が生み出したPI(Peer Instruction)を活用した理科と社会の授業を見学できるというので、そこのシーンだけ立ち会わせていただきました。
★理科の梅下先生と英語科のアレックス先生が連携してコンセプテスト(マズール教授は授業の初めに多肢選択の問題を出題しますが、それが授業のテーマ全貌を見渡すコンセプトを物語る仕掛けになっていて、コンセプトのテストを縮めて「コンセプテスト」と呼んでいます)を英語で投げかけています。
★ノートルダム学院の小学生は6年間英語の学びを十分にしていますから、アレックス先生の英語による英語の説明を聞きながら、問いを理解していきます。
★生徒たちは、自分のタブレットから回答を選びます。すると、クラスの生徒が応えた選択肢ごとの割合が電子ボードに瞬時に公開されます。
★砂糖を溶かした水溶液では、どこの部分が最も甘いのかという問いですが、上の部分も真ん中の部分も底の部分もみな同じ甘さであるという選択肢が大分を占めましたが、そうではない回答もたくさんあるのが一目でわかります。
★梅下先生とマズール教授の違いは、梅下先生は、生徒に、選択肢を選ぶと同時に、ロイロノートで選んだ理由を言葉や図で説明させておき、全員分それを回収しておくところです。
★さて、次に、いきなり梅下先生が説明するのではなく、隣の生徒同士議論します。そして、もう一度1人ひとり選択肢を選びます。変えてもいいし、変えなくてもよいのです。
★すると、圧倒的にどこも均一的に甘いという選択肢が選ばれることになります。生徒たちはその変化をみて、オー!と反応します。対話の重要性を身に染みてわかる瞬間です。
★ある生徒は、はじめみそ汁は放置しておくと、底の方に具などがたまるから、砂糖水も底が一番甘いのではないかと回答したわけですが、友人と議論しているうちに、自分の経験以外に違う経験があることを知り、回答を変えました。
★この後、梅下先生から講義がなされますが、ことは砂糖水の話ではなく、この問いをきっかけに、多様な液体の特色を考える視点を生徒と共有していったのです。これはもちろん、分子や原子などの話に進んでいく伏線としての経験作りでもあります。
★小学校のころは経験から学ぶことは大切です。一方で自分の経験で物事をみたり考えたりするだけではうまくいかにという試行錯誤も必要です。自分のものの見方・考え方が独りよがりでないかどうか、どうやったら検証できるのか、常にその実験方法をみんなで考えるところが梅下先生の理科の授業の特徴です。
★そのとき、PIという手法やロイロノートを活用することで、梅下先生は、生徒の考える過程を可視化し共有化し、なんといっても生徒が自分の推理の誤謬を訂正していく経験を実感できるようにしかけけていきます。このような授業は、今までにはなかったでしょう。経験と知識と思考の循環がどんどん広がっていく<新しい学びの経験>の開発への梅下先生の情熱が創造したものです。
★このような経験と知識と思考を循環させる能力こそ子供たちが未来を生きるときに、最重要なスキルであることは言うまでもないでしょう。それにしても、さりげなくアレックス先生がコラボし、途中で自分の次の授業の準備のためにいなくなっていました。これもまた、他校にはないシーンです。
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