« 2019年11月 | トップページ | 2020年1月 »

2019年12月

2019年12月31日 (火)

自由と市場と組織と国家(07)「主体的」と「入試」と「Amazon」

★新学習指導要領の意味する「主体的な学び」のイメージはどんな感じでしょうか?この主体的に学んだ先に、現状の中学入試や高校入試、大学入試はうまく接続するのでしょうか?あるいは、今の社会にうまく接続するのでしょうか?あまりうまくいきそうにもないのは否めないのが現状ですね。

Photo_20191231104801

★溝上慎一教授が「溝上慎一の教育論」で、「主体的な学び」とアクティブラーニングとの関係をわかりやすく論じているところがありますが、そこで、主体と客体の関係を上の図のようにとらえ返しています。

★主体―客体という近代国家形成期の哲学的関係から、現代の社会学の知見を使って、行為主体者―客体という関係としてとらえ返しているわけです。近代哲学的感覚だと、主観的な個人が、自分の興味と関心に応じて対象に働きかけるということですが、実際にはそのような自分の興味と関心で対象に働きかけることは現実的ではないというということでしょう。

★Amazonでネットショップする時が典型的な例です。一見主観に応じて商品を購入しているようですが、実際にはAmazonの巧みな商品購入への心理学的な誘引システムに乗っかっています。それでも買いたいという意志はあるだろうと。いや、それもネットを開けば、あなたはこれが欲しいですよねというポップウインドやネット広告が検索エンジンやSNSの自動分析によって意欲を誘発しています。

★したがって、行為主体ではあるけれど、その意志はあたかもAmazonの代理機関のようなような役割を果たしているのです。それゆえ、行為主体=Agentなのでしょう。アイデンティティや自分の意志に従って行動を起こしているという幻想を払拭して、~したいから~するという因果関係ではなく、システムの網の目の中で自分が動かないと、このシステムが動かないという言う意味で働きかけるようになっているわけです。

★入試システムもAmazonほど詳細な情報の統合機能はありませんが、偏差値という優勝劣敗システムの中で、勝ち残るには、自分が動かなければならないのです。そこに自分の選択意志があるというのは幻想なのです。偏差値が高い順に選ぶというAmazonと同じランキングシステムに乗るわけです。でも、乗らなければ勝ち残れないのです。

★この強迫観念と自分の意志があるというのは実は幻想であるという「主体的な学び」が自己肯定感を低くするのは当然です。そこで、文科省は、それを承知の上で、歯止めをかける意味で「対話的な学び」と「深い学び」を加えたのです。「主体的な学び」を強迫観念と意志幻想から解放するために。大学入試改革もそれを目的にしているはずです。

★溝上教授は、それゆえトランジションというエージェンシーが作用する学びの場を埋め込むことで、それらから解放され、Well-beingな世界を生みだそうとしているのです。しかし、そこには私は行為者として私であるが、意志や感じ方、考え方は私のモノではないというAgent発想があるのです。

★エッ!と思うでしょう。近代哲学的にはそう思うはずです。本来の自分を回復するのが主体なのではないかと。いや、主体を構成する自分軸とか自分の意志にこだわるから強迫観念は生まれてくるので、そこから出発するのをやめてみようというのが、エージェンシーの考え方ですね。

★そこから出発すると、偏差値という一つの尺度にこだわる必要もなくなるのです。互いに私は私であって、私でもない他者でもある。それゆえ、その両方を統合するために代理人としてのAgentな行為者である私がいるわけです。ここまでメタ的な意味での「主体的な学び」となってしまうと、現状の入試システムにはうまく接続できないのも当然です。

★それゆえ、主体―客体の関係を重視しているという幻想が現実で、実はAgentな動きをしているというのは気づかないままにしておいた方が現状の入試もAmazonも都合がいいのですが、そこを開いてしまったのが溝上慎一教授です。この考えが広まれば、大学入試やAmazonも新たな展開をせざるを得なくなるでしょう。

★そんな中で、首都圏の中学入試は、新たな展開を開始しているわけです。溝上慎一教授の教育理論は、私立中学入試でまずは適応されはじめたということでしょう。

★私自身は、この中学入試の新たな展開に象徴される「主体性」については、「主体―客体」論でもなく、「エージェンシー」論でもありません。「新しい意志」論とでも言っておきましょうか。いずれ書きたいと思います。

|

2019年12月30日 (月)

自由と市場と組織と国家(06)「主体的対話的で深い学び」と「総合的な探究の時間」

★今回の学習指導要領改訂の大きなポイントは、「主体的対話的で深い学び」と「総合的な探究の時間」が設定されたことというのは言うまでもないでしょう。さらに、「授業形式はアクティブラーニング」が想定されていて、「自分とは何かを考えつつ」取り組んでいくという点が加えられています。

Photo_20191230103601

(文部科学省発行「高等学校学習指導要領」から)

★この「主体的対話的で深い学び」は、他教科や科目でも行わるのが前提です。よくわからないのが、英語や国語などの教科の授業と「古典探究」「理数探究」「世界史探究」などの新科目と「総合的な探究の時間」のいずれにも「主体的対話的で深い学び」で行われるにもかかわらず、「教科」「科目」「探究の時間」で行われる深い学びである「探究」はそれぞれ違うというのです。学習指導要領にはこうあります。

総合的な探究の時間については,これらの 科目において行われる探究との違いを踏まえる必要がある。具体的には,総合的な探究の時間で行われる探究は,基本的に以下の三つの点において 他教科・科目において行われる探究と異なっている。

一つは,この時間の学習の対象や領域は,特定の教科・科目等に留まらず,横断的・総 合的な点である。総合的な探究の時間は,実社会や実生活における複雑な文脈の中に存在 する事象を対象としている。  

二つは,複数の教科・科目等における見方・考え方を総合的・統合的に働かせて探究す るという点である。他の探究が,他教科・科目における理解をより深めることを目的に行 われていることに対し,総合的な探究の時間では,実社会や実生活における複雑な文脈の 中に存在する問題を様々な角度から俯 ふ 瞰 かん して捉え,考えていく。  

そして三つは,この時間における学習活動が,解決の道筋がすぐには明らかにならない 課題や,唯一の正解が存在しない課題に対して,最適解や納得解を見いだすことを重視し ているという点である。

★これは、逆に読めば、教科や科目は、横断的・総合的でなくてよいということですね。それでいて、教科や科目の中で探究をやれと。でも、深い学びは学習指導要領によると、知識の関係づけをしていって問題を発見し、創造したりするとあるわけです。創造するのに横断的でなくてよいということは考えにくいですね。

★教科や科目は複数の教科・科目などにおける見方や考え方を総合的・統合的に働かせて探究しなくてもよいというわけですね。しかも、実社会や実生活における文脈はいらないとも。そんな教科や科目は存在するかどうか疑問です。

★教科や科目は、正解の定まらない問題はやらなくてよいとも。知識・技能以外の学力の3要素、つまり資質・能力を重視せよと言っていながら、結局教科や科目は知識・技能でよいと。解せませんね。

★しかも、極めつけは、学習指導要領は次のように続くのです。 

なお,実社会や実生活における課題を探究する総合的な探究の時間と,教科の系統の中 で行われる探究の両方が教育課程上にしっかりと位置付き,それぞれが充実することが豊かな教育課程の実現につながると考えられる。 

★驚きです。資質・能力重視の学習指導要領が、結局「探究の時間」と「教科・科目」を完全に分割し、それぞれが充実すればよいのだと。そしていつのまにか、豊かな教育課程の実現が目的なのだと。本来探究は、関係主義で、要素還元主義ではないのですが、どうやら後者の考え方がここでははっきりしました。人間の資質・能力がだいじだといっていながら、真っ二つにわけて、合わせればよいという恐ろしいご都合主義です。

★ここに文科省自体、生徒を二つに分けるキャリアデザインを下地にしているのがわかります。20世紀社会に適応できる人材と未来型人材というわけです。21世紀社会は皆目わからないので、しばらくは20世紀社会は続く、だからそこで生きていける人材と未来を創る人材とに分けるというわけです。

★生徒全員が「探究の時間」「教科・科目」を受講するのだから、そんなことはないといわれるかもしれません。しかし、このような分け方だと、得意不得意がでてくるし、実際すべてが必修ではないのです。

★そもそも教科横断的とはどうやって果たせるのでしょうか?そこも実際には説明はないですね。

★なぜか?要素還元主義だからですね。

★というわけで、学習指導要領の中に、ちゃんと20世紀社会温存システムを盛り込んでいるわけです。これが、20世紀社会の組織のずる賢いところです。文科省はたぶん無意識でそうしたのでしょう。しかたがないことです。21世紀社会のイメージがないわけですから。官僚システムは空が灰色になってからミネルバのフクロウを飛翔させますから。まだ決まっていないことに挑戦するカリキュラムを盛り込めないのは当然です。

★いや「探究の時間」でそれをいれこんでいるではないかと言われるでしょう。ポーズですということでしょう。その決定的な意味は「主体的」に埋め込まれています。「探究」は「主体的」にできるものではないからです。エッ!と思うかもしれません。しかし、「主体性」にこそ20世紀社会の勝ち組負け組あるいは優勝劣敗思想が忍び込んでいるのです。

★しかし、本来「市場」は優勝劣敗の場ではありません。そこに参加する市民はみんなが幸せになる場だったはずです。エッ!とまた思うでしょう。比較優位の世界は経済学ではあたりまえではないかと。それも今まで紹介したように、近代国家形成時にできた「経済学」の話で、自然科学的な法則のお話ではありません。しかし、「学」となるとあたかも法則として正当化がなされるのです。

★というわけで、学習指導要領にあまりこだわらず、「探究」というのを「教科・科目」「探究の時間」に共通する概念として使うことが21世紀社会を開くことだということがうっすら見えてきましたね。

★まあ、わざわざ議論しなくても、うちはすでにそうやっているよという学校もあるでしょう。それはそれでよいのです。問題は意識しないとキャリアデザインを新たに二つに分けながら、勝ち組負け組の新しいグループ分けをつくるだけでになりますよということなのです。そして、結局20世紀社会は変わらないまま。それでは、世界がどんどん変わる中、≪Z世代≫は困ることになるでしょう。

|

2019年12月29日 (日)

自由と市場と組織と国家(05)SDGsで解決すべき根本問題は、近代誕生時に生まれたが・・・。

★市場において、非対称的な情報(=利益や利息)が正当化された理由は中世都市経済にあったというのは前回紹介しました。経済それ自体よりそれをめぐる宗教戦争や権力闘争を担保する軍事力の正当化をするためということも紹介しました。世界史や日本史、政治経済などの授業に探究的視点を挿入することによって、そのようなことは見えてきます。

Photo_20191229100201

★しかし、問題は、市場において非対称的情報を生み出す必要性がなぜあったかということです。利益や利息が当たり前という現代にあって、もはやなぜ利益や利息が必要かという問いは投げかけられませんね。労働の対価として、サービスの対価として当然だという理解が普通です。したがって、ここを問いかけないまま≪Z世代≫が起業して、SDGsに取り組んでも、はなかなか問題解決の道を見出せません。

★では、どうすればよいのでしょうか?それは政治経済や倫理の授業に探究的視点を持ち込むことで解決がつきます。どういうことか、それはメディチ家の組織システムや大航海時代の帝国のシステムを探究するということです。そして、そのシステム構造が、なんと近代を通して現代にまでいたる組織システムだということに考古学的に分析することですね。

★現代社会では、マーケットと組織開発は分けて考えられています。しかし、実際には、組織を維持するためにマーケットが有効な資金調達の場なのです。メディチ家や大航海時代のスペイン帝国などは、そうはいっても、世界に市場が広がっているわけではないですから、都市という市場経済に接続するまでは、収奪戦争が基本です。

★スペイン帝国の収奪の計画は鎖国時代の日本にも及んでいました。しかし、それは新たな近代国家の準備がなされたイギリスやオランダによって阻止されたわけです。

★しかし、阻止されたからと言って、組織システムの構造が変わったわけではありません。

★大航海時代は、古代中国が発明した羅針盤・火薬・活版印刷という三大発明のアップデートによってなされるわけです。羅針盤はたしかに大航海技術を発展させますが、それはメディチ家がイタリアがイスラム世界の地中海貿易を独占するのに一役買っていたはずですから、スペインやポルトガルは世界に目を向けざるを得なかったわけです。つまり、羅針盤は弱みを強みに変える技術革新の象徴だったのです。

★世界は、市場が在るわけではないので、植民地政策的になります。収奪するわけです。それには強力な軍事力がいります。火薬はその重要な武器だったことは説明するまでもないでしょう。活版印刷は、市民革命や宗教改革の武器にもなったのですが、なんといっても官僚システムのシンボルです。

★三大発明の本質は、技術革新・軍事力・官僚システムだったのです。

★強大な帝国権力が在る限りは、この大航海戦略はうまくいきましたが、官僚システム・技術革新を保守するには、再生産システムが必要で、金がかかります。その資金調達は市場の創出です。そしてその市場に商品を持ち込むには、技術革新だけではなく、軍事力が必要でしたが、この軍事力の再生産が、大航海戦略ではなかなか難しかったのです。

★帆船を動かすには、羅針盤があってもどうしようもありません。ハードパワーが必要です。しかし、それは帆船を動かす達人たち、つまり職人的技術が必要だったし、船を動かす動力は、多くの労力が必要でした。そして軍事力も軍隊という人力が必要でした。

★ということは、あまりにもリスクが大きく、戦いによって、そして嵐によって失うものがあまりに多かったのです。人力の再生産はそう簡単ではないので、軍事力による商品調達や資金調達は合理的ではなかったのです。

★それは、メディチ家でも同様です。産業革命によって化石燃料を人力の代替労力を生み出すエネルギーに活用したのが、イギリスやオランダです。その新しい技術革新が、帝国を圧倒していきます。スペイン帝国の衰退とともに、ハプスブルグ家とも手を組まざるを得なったメディチ家も滅亡していきます。

★いよいよ近代国家の黎明期になるわけですが、官僚システム・技術革新・軍事力の三要素は変わりはありません。ただ、そのバランスは軍事力を極力コスパを考えて最小限にコントロールしていっただけです。

★しかし、まだ近代国家が完成していたわけではないのです。それゆえ、ここに新しい組織が誕生します。それこそが株式会社なのです。技術革新によって、軍事力の部分まで再生産しやすくなったのです。化石燃料を軍事力や人力の代替技術に転換することができる組織が覇権を握ることになります。

★それが東インド会社にはじまる株式会社です。生産手段は工場で持てます。もはや帝国も都市権力者でなくても資金を調達できる企業組織はそれを可能にしたのです。なんとその資金調達は株式マーケットだったわけです。

★いよいよ、科学の授業がここで大いに役立つわけです。物理学や化学が近代国家成立の過程で学問として生まれてきたのですから。近代国家の三大発明は、物理・化学・経済です。そして、数学は、いずれにも共通して使われました。

★ニュートンが、物理学者で数学者で、造幣局長官でもあったのは、実に象徴的ですね。

★いずれにしても、第一次世界大戦まで、資金調達して市場経済の覇権争いに、帝国も残り、近代国家が着々と力を伸ばし、株式会社も名乗り出てきていたわけです。

★しかしながら、戦争には株式会社は名乗り出ることはありませんでした。それは、租税を課すという資金調達ができなかったために、マーケットを維持するしかなく、戦争はマーケットを崩壊する原因なので、株式会社にとっては矛盾が生じるからです。市場のない世界での戦争を支える軍需産業はリスクが相当ありますが、手を出す株式会社もありますが。

★しかし、こうしてみてくると、組織というのは、近代にあって、官僚システム・技術革新・軍事力の3要素は必須です。ただ、株式会社が軍事力をいつまでも持つことはできませんでした。コンプライアンスとかセキュリティとか法と技術革新によって代替されていくことになります。

★そして重要なポイントは、株式会社における官僚システムはもっと柔軟なマネジメント型官僚システムに変容し、セキュリティ部分もどんどん技術革新によってコスパがよくなっていきます。しかし、変わらないものは技術革新を動かすエネルギーです。化石燃料であることにかわりはないのです。

★さて、ここから化学、生物の授業に探究の視点を持ち込めば、この化石燃料の根本問題の認識と解決の糸口をダイレクトに研究できるし、建築学的視点と芸術的視点を持ち込むことで、スマートシティ構想を今までと違うアイデアで置き換えることができるでしょう。おそらくここにおいてSDGsの突破口は大きく開かれるでしょう。

★建築学的視点と芸術的視点と生物や化学の視点といった探究視点を統合する授業は、実は家庭科と保健体育の授業です。

★しかしながら、組織が、そう簡単に、柔軟な官僚システムや技術革新を生み出すクリエイティブクライメット(創造的雰囲気)、コンプライアンスを促進したりパワハラを禁止したりする法の支配を受け入れないのはなぜでしょうか?

★SDGsの突破口が開かれても、そこから先に進むことが困難な理由はなんでしょうか?

|

自由と市場と組織と国家(04)SDGsで解決すべき問題は、近代化が内包する矛盾 そのシステムを探究は解明できる

★今、≪Z世代≫の中高生は、SDGsのグローバルゴールズを達成すべく起業し始めています。そのベースには都市があるし、この都市はスマートシティなんて言われている意味での都市のことですが、実はスマートシティであれなんであれ、近代の非対称的市場を残したままのというか近代誕生した非対称的市場をさらに先鋭化させたのか20世紀社会だから、そのシステムを探究的視点で解明しておかないと、実はグローバルゴールズは達成できないどころか、近代が内包している矛盾をより深層に隠し、強化してしまうというパラドクスがまたまた生まれます。

Photo_20191228230601

★世界史でメディチ家を学ぶと思います。あるいは日本史で織田信長を学ぶと思います。この歴史の授業に探究的視点を織り込めば、都市というのは貨幣経済が条件であることはすぐにわかるでしょう。

★問題は、古代―中世ー近世ールネサンスー近代―20世紀社会を経てシステムをアップデートしてきた貨幣経済が、フラットでもフリーでもフェアでもない非対称的市場を強化する媒介項であったことが背景に隠れてきたことを理解するかどうかです。

★メディチ家がなぜローマ法王の帝国と手を組み、ブルボン朝と手を組んでいたか、そこに非対称的市場を保守するシステムがあったわけです。

★いったいその非対称性とは何かというと、商品の交換における利潤・利益という概念を定着させたということです。エッ!と思うかもしれません。しかし、これは中世から近代にかけてカトリック神学が開いてしまった経済理論です。

★都市経済は、自給自足ができませんから、多様な商品を都市以外の場所から持ち込みます。その商品をゲットするには貨幣が必要ですから、当然価格が付くわけです。その価格が需要と供給の関係で決まると正当化理論が創られたのは、イギリスやドイツを中心とする近代国家形成期に生まれた学問「経済学」が理論化しました。

★近代経済学は、なかなか複雑ですが、要は、需要と供給で決まるはずの価格が、どうもうまく決まらない。そこで価格の公正性をめぐって理論形成しているのが経済学の隠されたシステムです。

★近代経済学の理論がない時代である中世―近世―ルネサンスにおいて、公正価格を導いた理論は、「死」あるいは「命」への信仰でした。

★カトリック神学では、イスラム教と同じく、利息は認めていなかったのです。それをある条件のもとで認めたのが中世のカトリック帝国を支える神学であったし、その拠点が今の大学のルーツでもある当時の大学です。

★いうなれば、近代化の矛盾は、学問によって正当化されてきたというわけですね。それゆえ、このところ話題になっている大学改革が必須になってきたわけですが、そこを認めるわけにはなかなかいかないのです。その矛盾の上で勝ち組と負け組という格差があるわけですから、世帯年収700万以上ある20世紀型教師や教授は、ある意味勝ち組みなのです。改革に乗る勇気のある人はいないのが、近代経済学が生み出した功利主義的価値観で当然なのです。

★しかし、SDGsを本気でやるなら、そこに切り込み非対称的市場を対称的市場にシフトすることにならざるを得ないのです。それによって、教師の仕事がなくなるわけではなく、世代年収700万以上は保てるでしょう。むしろ、改革したほうが所得は倍増できるのですが、そこはリスクがあるのではと無意識で思うのでしょう。

★いずれにしても歴史の授業に探究的視点、この場合は文化人類学と歴史学を横断できる考古学的視点を活用する必要があります。そうすることで、メディチ家とシンクロしていた中世の遠隔地商人と都市経済の関係をちょっと探究すれば、命をかけて死も覚悟して遠隔地から商品を都市に持ってきたのだから、原価に適正な利益を乗せるのは正当だというのを、信仰の名のもとに認めて、それを公正価格だとしたのが当時のカトリック神学で、シュンペーターがそこに資本主義の萌芽を見たわけですね。

★命をかけて死を覚悟してというのは、雇用兵を雇うわけですから、当然その分は原価にのせてよいというのは、カトリック神学は認めざるを得なかったのです。なぜなら、ローマ法王は、当時生まれ始めていた近代国家の先駆けである帝国と聖戦をたびたびおこなったわけですが、そのときに軍事力を要するにお金が必要だったのです。

★その資金調達をするには、メディチ家などの有力商人の支援を必要としたわけです。公正価格に公正利益を認めざるを得なかったのです。利益は空間の差異を利用することで、正当なものとして認められるのです。いったん利益が認められれば、<メタファー>として銀行が利息を生みだす正当化理論は簡単です。

★空間は移動を伴います。移動は時間がかかります。つまり利益は空間/時間によって正当化されたわけです。しかも、軍事力も付いています。空間移動中のセキュリティは軍事力によって担保されます。

★すると、銀行は空間/時間を時間/空間という前面に出すものを逆転させますが、構造は同じです。時間を保つ空間のセキュリティは、中世から近代にかけてはやはり警察力という名の軍事力です。遠隔地商人の利益構造と銀行の利息構造はメタファーとしてスライドできたわけですね。

★しかし、利益や利息の最適化という基準は何か?近代経済以前は、権力者の意志決定に拠ったわけです。それで納得できるかというと、市民は納得しない。「自由・平等・博愛」の波に飲み込まれていきます。フランス革命のような市民革命が次々と起こったのです。しかしながら、利益や利息はみとめるなあ!と革命がおこったわけではなかったのです。

★需要と供給によって、市民の生活にあった適正な利益や利息が決まるように革命を起こしたのです。しかし、それで適正かどうかは本当は今もだれもわけらないのです。

★そうこうしているうちに、20世紀社会は、物理的空間と移動の時間を、未来にシフトし、クラウドにシフトしたのです。それゆえ、何かテクノロジーやイノベーションが新たな価格を生みだし、しかもそれはコンピュータを媒介するから、適性であるような幻想を生みだし、非対称的市場を合法的にひろげているわけですね。

★そんなこといっても、セキュリティは、警備とサイバーでおこなっていて、軍事力ではないから、メディチ家のようなやりかたではないと。さて、そこを理解するには、カントやヘーゲルなど近代国家形成期に、結果的かもしれないけれど、国家の正当化理論をつくった近代哲学をいったん相対化しなくてはなりません。

★現代国語や倫理、政治経済などベースにはカントやヘーゲルがあるので、その思想の理解で終わるのではなく、クリティカルシンキングという探究的視点をこれらの教科の授業に入れる必要がこれからはあるでしょう。カントやヘーゲル信者の教育哲学者が胡散臭いのは最先端の金融経済がメディチ家の銀行システムのメタファーと同期していることを正当化してしまうからですね。

★本間はまた愚かなことをはいていると言われるかもしれません。しかし、このようなリフレクションは欧米ではちゃんと起きています。日本ではその紹介は、現代の日本の大学の哲学者が閉鎖的に行っていて、しかもどちらかというと、そういう考えもあるよねでおわっていて、むしろ実際的社会に応用するのはどうだろうと、危険物取扱としてのレッテルを貼っていますね。

★彼らも勝ち組みですから、批判はするけれど、格差をなくす武器として実装思想を広めているわけではないのです。

★しかしながら、勝ち組であることを括弧にいれて、なぜ括弧にいれるかというと、とりあえず生きて行かねばならないからですが、ともかく、そこに立ち向かう私立学校の教師が現れています。それは2020年4月になったら、明快になります。20世紀社会を全く違う次元にシフトするジェネレーターコミュニティが出現します。もちろん、そのコミュニティには、教師以外の起業家も参加しています。

★最も、そのコミュニティは、来るもの拒まずで、普通の教師勉強会みたいになった場合、また分派するでしょうが。つまり、アクレディテーションの機能は必要です。

★いずれにしても20世紀社会は、SDGsとガチでぶつかり合う時代がいよいよやってきます。しかし、それは心意気だけでは20世紀社会を変えることはできません。強烈な経験と理論武装は必要です。

|

2019年12月27日 (金)

自由と市場と組織と国家(03)なぜG-STEAMか?

★20世紀社会は、グローバル市場が広がり、一部の人びとにとっては、3F(フリー・フェアー・フラット)が広がりましたが、そうでない人びとはその真逆の症候群に陥っているのは、ネットの世界や衛星放送でも頻繁に流されています。

Photo_20191227080901

★そんな情報(=金)の非対称性を見出すクリティカルシンキングを21世紀型教育は養うわけです。そして、そこを創造的に問題解決するために、クリエイティブシンキングを養います。

★それはPBLによって養われるため、授業を超え、探究を超え、実践的な活動、本格的プロジェクトに発展しています。実際に社会的インパクト投資のような起業家シミュレーションをして、新市場を拓く活動にも結び付いているのが、21世紀型教育の1つの特色です。

★新市場創出には、グローバルとはいえ、国際的にはまだまだ文化的差異は無限にありますから、世界から考えることによって、新市場創出の有利な条件を見出せます。

★また、人がつくった商品を販売するだけでは、非対称性の市場に初めから組み込まれているため、あまり意味がありません。だから、自分なりのソフトパワーを駆使した商品やサービスを生み出す必要があります。

★WebとPCは、Z世代は駆使できます。つまり生産手段にかけるコストはそれほどかかりません。非対称性が生み出す症候群は、自然破壊、格差の壁、心の壁を生み出しています。そこを解消するには、サイエンス、マスの発想は必要です。科学的・数学的思考がなければ、ソフトパワーは絵に描いた餅です。

★テクノロジーとエンジニアリングは、WebとPCを駆使するスキルですから当然必要です。しかし、それだけでは、新市場のインパクトがありません。

★インパクト!それは世界を変える力です。それこそがアートの力であり、リベラルアーツの力です。今このアートとリベラルアーツの領域に、「文化人類学×考古学×芸術×建築×哲学×学習理論」が結びつきつつあります。

★実は、なぜこの「文化人類学×考古学×芸術×建築×哲学×学習理論」が結びつき始めたのでしょうか?

★実は、いかにG-STEAMの力で、新市場を創出しても、資金力でそこは非対称性の市場に包摂されてしまうからです。そこを突破するには、実は、非対称性の市場を生み出している組織のシステムをクリティカルシンキングで解明しなければなりません。そこれには、「文化人類学×考古学×芸術×哲学×学習理論」が役立つわけです。

★21世紀型教育の真骨頂は、新市場創出のみならず、社会システムそのものの全体構想力を生み出すところにあります。そして、「文化人類学×考古学×芸術×哲学×学習理論」が統合されたG-STEAMの力が、そのベースとなるわけです。

|

2019年12月26日 (木)

自由と市場と組織と国家(02)教育の役割

★20世紀社会は、市場の原理は、一見自由経済でした。ただし、「一見」です。情報の非対称性あるいは情報ギャップが、経済格差を生みだしてきました。では、非対称性やギャップをなくせば経済格差はなくなるのでしょうか。おそらく、20世紀社会を反省し、PBLや探究が盛り上がってきた21世紀型教育では、ここをなんとかしようというわけで生まれてきています。

21_20191226090001  

★社会が20世紀社会なのに、教育が先行して21世紀社会を描いています。SDGsが多くの学校の中で取り扱われているのは、その象徴的な動きでしょう。21世紀は教育の世紀だというのはその通りですね。

★しかしながら、情報の非対称性あるいは情報ギャップをそう簡単になくすことはできません。というのは、このギャップを生み出す最も強力な装置は金融装置ですが、これは自由経済の極致で、自由がゆえにあくまで確率論で、読みにくいし、予想しにくいのです。カジノ経済と言われる時もありますが、言い得て妙です。

★これは、大地をしっかり五感で学ぶ学習から離れ、知識によって知識を生み出す屋上屋を重ねることによって、情報の非対称性を生みだし、その知識をもっていないのは、勉強していないからだという自己責任論で納得させられてきました。これこそ20世紀社会の経済格差を生み出す仕掛けだったのです。

★だからこそ、既存の知識のインプット重視の20世紀型教育はクリティカルシンキングを重視し、クリエイティブシンキングを発揮できる環境を整える21世紀型教育にシフトする大事な理由があったわけです。人間の存在意義の回復ですね。しかし、残念ながらそこまで考えて、知識を詰め込む教育ではなく、思考力を重視する教育にしようと提唱している教育関係者もほとんど出遭ったことがありません。

★生徒には理由が大事だと言いながら、自律した勉強ができないから、主体的でないから、受け身ではだめだからと、そうした生徒の姿勢をつくってきた根本的な理由を語ってきませんでした。

★もともとは、文化人類学者が大地を五感でしっかり感じ取る「野生の思考」によって近代文明批判をしてきました。PBLや探究というのは実はここに還ろうとしているのです。ところが、大学で行われる学問にも2方向在ります。新知識を開発し、屋上屋を重ねる学問。そこを批判して本来的な大地に還ろうとする学問。21世紀は教育の世紀ですから、そこをもクリティカルシンキング出来ないとというわけです。しかし、そのことを意識している人は、やはり、少ないですね。そんな中、たとえばレゴ®シリアスプレイ®の仲間たちは、ここを意識できるポジショニングにいます。

★そうはいっても、実際には、気づいていないでレゴ®シリアスプレイ®を活用している方々も多いのは残念ですが、いつか覚醒するでしょう。そう期待しています。

★さて、その屋上屋を重ねる知識のバベルの塔は、しかしながら市場が生み出したものではないのです。ですから、市場の局面だけみて、いくらここを批判しても改善されても、それはこの20世紀社会を強化する役割しか果たせません。なんというパラドクスでしょう。

★とはいえ、それは組織や国家という市場の原理ではなく、権力の原理で動いているシステムが生み出しているのですから、そこをなんとかすれば、パラドクスは解消できるはずです。そのシステムをこそ修正すればよいのですから。

★しかしながら、それが難しいのは、果敢に立ち向かう香港の若者のデモを見てもわかります。いかに権力がそれを阻止する強烈な機能を果たしているかも見ることができますね。

★またシステム改革ができたとしても、それはアラブの春のその後を見れば、これも難航しているのは、すぐに了解できます。

★では、どうやって?21世紀は教育の世紀です。教育のやりかたによっては、それは可能なのです。

 

|

2019年12月23日 (月)

自由と市場と組織と国家(01)

★昨今の大学入試改革や教育改革、学びや探究のことなどなどについて、多くの方が[自由]に論じているかのようですが、その自由は[ ]付きです。[ ]とは何らかの条件のことをここでは意味しておきましょう。

Photo_20191223123501

★こんなに簡単な図には現実はならないのですが、近代社会の延長上に位置する20世紀社会は、[市場と組織と国家]に国民は完全に回収されていますから、その枠組みの中での[自由]です。しかも、直接組織に所属しているか、フリーランスでも市場のプレイヤーになっている限りは、組織と関係してしまっています。

★したがって、どう[自由]に語ろうとも、その組織の影響を免れることはできません。ですから、改革といってもこれもまた[改革]なのです。

★市場は、自由だといっても、それぞれの組織の思惑がありますから、たいていの場合、その思惑は企業秘密とかいうことで隠されていて、それゆえ、市場にばらまかれている情報は非対称性の性格を持っています。情報格差が生まれていて、その格差をテコに市場で儲けている人は一握りいるわけです。

★この格差をなんとかしようというという[改革]もあるでしょう。

★しかし、市場は民主的で[自由]はあるほうです。組織は、依然として階級構造が組み込まれていて、富の再配分は、組織内では市場経済が、働いていないのが通常です。ここは資本を巡る力学で決まります。

★ここの改革は厄介です。それを突破しようとしたのが、今回の[高大接続改革]だったのですが、民主的でない組織に対し、それをいきなり求めても、しかもスキだらけの提案では突破できなかったのもやむを得ないでしょう。だいたい文科省、つまり官僚組織が民主的ではないので、そもそも無理があるのですがね。。。。

★ともあれ、問題は国家の税金運営の民主化なり市場経済が組織内で働いているかですが、どうやらそれもそうでないのは、昨今の大臣たちのスキャンダル報道でも見え隠れします。しかし、野党もそこをつつくだけで、自分が属している政治家という組織そのものの非対称性、非民主的性格にメスをいれるということはないわけです。すべてはトカゲのしっぽ切りでおわり、安泰です。

★ですから、様々な議論を繰り広げているジャーナリストや東大の教授たちも、どこの組織を守るべく論じているのかという自己モニタリングが必要なのですが、そんなことをする人はいないのです。

★せめて、学者あるいは科学者は中立の立場で、どの組織の利益のためでなく、社会全体の利益のために論じてもらいたいのですが、国家の税金運営の仕方にどう対応するか、つまり補助金確保のためには、そうもいっていられません。

★さてさて、どうしたらよいのでしょうか?生きることと自分の本来の考えと違い、そこの葛藤に個人的に深く悩む方も多いでしょう。心療内科が儲かるようにできているのも20世紀社会の特徴ですね。しかし、それは個人の問題ではなく、この[自由]が[市場と組織と国家]の体制との関係で規定されてしまうという社会システムの問題です。

★しかも、この20世紀社会は、ますます悪循環を繰り返し疲弊しています。いまの≪Z世代≫をこの中に閉じ込めておいてよいのかというのが未来創造のテーマなのです。この20世紀社会の改善がSDGsのテーマですが、改善ではなく、かなりいろいろな部分の価値の転換が必要になってきます。

★さてさて、どうしたらよいのでしょう。21世紀社会のデザインをして、そこに向かってみんなでがんばるというのも悪くないですが、現実味はありません。では、どうするのか?年末年始にかけて少し考えてみようと思います。

|

2019年12月22日 (日)

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(了)21世紀型教育機構は経営陣と教師と≪Z世代≫生徒が共に未来を創る。

★今回のカンファレンスで司会の私がしゃべりすぎて、パネルディスカッションの部の時間が少なくなってしまいました。猛省。しかし、聞くべき内容は登壇者の皆さんが本音を言う機会を創るのが本意ですから、予め考えていた問いの流れは無視して、それぞれの学校の得意な部分や登壇者の興味と関心のある部分に絞って問いを投げることにしました。

Panel

★すると、やはり、率直な話がたくさんでて、会場からも笑いがたちあがり、なかなかいい雰囲気だったらしいです。「だったらしいです」というのは、ナビゲートしている私自身はそれを感じる余裕はなかったわけで、あとで、参加した何人かの方々からそうお聞きしました。

★たしかに、吉田先生をはじめ登壇者のみなさんは、明快にこのままでは日本は終わる。教育が本当に大事な世紀なのに、文科省や政治家には任せていられない。私立学校で踏ん張っていくしかないとか、国内大学の講義などの環境は、昔ながらで21世紀型教育を経験した中高生は、進学して唖然としてしまう。自分たちの学びの環境を生かせる大学を探すか、海外大学に進む以外に道はないだろう。ただ、お金の問題はあるから、奨学金などの情報を収集して、そこをもっと広げていきたいなどという話に沸きました。

★機構の事務局の鈴木氏からは、ドバイで帰国生対象の説明会を行ったら、21世紀型教育を実施している学校の情報が浸透していなく、紹介すると、日本にもそういう学校があるのかと興味と関心を抱く保護者がたくさんいることに気づいたと、まだまだ情報を世界に広げていきたいと希望の話題がでました。

★長塚先生をはじめ、登壇者の一致する見解は、≪Z世代≫生徒が責任ある行動をとりながら、自分たちの期待以上に翼を広げ社会実際的(オーセンティック)な学びの活動をすることに気づいたということでした。そして、今までの自分たちはどこかで生徒を子ども扱いしすぎてきたのかもしれない、これからはもっと翼を広げられる環境を充実していきたい。そのカギはPBLだねという話も出ました。

★八雲の近藤隆平先生は、自分たち教師が環境を創ってあげるではなく、生徒が海外で学んできたことを自分の学校で実現していける柔軟な環境を準備していく方がよいと。平方先生も自分たちの学びの環境に自信をもてるようになったが、やはり世界から学び続ける姿勢は今後も大事であり、だからこそアップデートし続けられると。

★そして、自分たちの理想も、現場の教師の力がないと実現はできないのだと。教師力の重要性も語っていました。

★かくして、日本の島国的な教育水準を破って、世界標準のエスタブリッシュスクールの教育の質を身に着けようとする21世紀型教育機構という未来を創る私立学校のコミュニティは、破格の水準の教育の質を切磋琢磨し協働して構築してきたことが了解できました。そして、そのことはカンファレンスに参加してくださった方々と共有できたと思います。

★21世紀型教育機構のような私立学校のコミュニティは、加盟校が10数校ですが、保護者が学費という形(助成金も含めて)で投資していますから、年間120億前後の資金調達がなされています。ただ、株式会社と違うので、利益はゼロサムです。

★ですから、企業のコンサルとタント会社のようなシステムでは利益がでないので、入り込まないのが普通です。入り込んでも、それは大学附属の中高ですが、学校側のコーディネートがいないので、ほとんど成功しません。

★ですから、コミュニティを結成し、アクレディテーションなどによって、一定水準の教育の質を形成し、それを土台に各学校がさらに独自の教育を展開していっくならば、保護者の投資はより効果的になるはずです。120億というのはそれが可能な資金力でもあります。コミュニティの意味はこういう経済ベースの側面も無視できないのです。

★しかも、21世紀型教育機構は、若い先生方が教育研究センターを開設して、横のつながりによって、相互に学び、パワーアップしていきます。教師だけではなく、≪Z世代≫生徒どうしも協力するようになってきているのです。

★また、海外研修なども最近では協働するようになってきているので、世界からも共に学ぶようになってきています。

★グローバル教育3.0が完成すれば、各学校で抱えきれない留学生がやってきた場合、機構内の学校同士でカバーし合うようになるでしょう。ICTの進化は、互いの授業のシェアもするようになっていくでしょう。

★機構の草創期の私のサポートはかなり強引なものでしたが、わがままを受け入れていただき、共に未来を創る学校コミュニティづくりに参加させていただけました。そして、事務局も組織化し、加盟校同士の協力関係も密になりました。今回のカンファレスの総合司会をさせていただき、しみじみそう感じました。

★私の仕事は、利益をあげるベンチャー企業などでは全くありません。保護者の投資を、教育の質のアップに転換するサポーターとしての役割を果たす仕事です。今後は、こういう仕事をする若者が利益を上げるのではないのですが、生活ができるぐらいの収入を得てコミュニティーサポートをできる組織化がなされていくとよいでしょう。

★私にはその才覚がありませんでした。自分の仕事をベースにしてきましたから、機構のサポートは、どうしてもその合間で行う程度になっていました。しかし、もはやそんなことではできない多様でダイナミックな動きを機構は開始したのです。私の役割は一定の貢献はあったかもしれないものの、この局面にいたっては、終了です。自分の尺度のなかでサポートしていたのでは、機構の発展は阻害されるからです。

★来年の2月の和洋九段女子の中学入試セミナーのサポートが私の最後の役割になります。よりパワフルなコミュニティは、若き才覚ある起業家の皆さんにお願いし、新しい学びの生態系として発展していくことを期待しております。

|

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(08)工学院 グローバル教育4.0<地球を救う教育>へ

★工学院の高2の修学旅行は、今年グローバルプロジェクトにチェンジ。沖縄や東南アジアの国々、米国などをフィールドにSDGsに関連する探究活動を実行。最終的には問題解決の提案や起業のプロトタイプまでつくるということです。平方校長がスピーチしているその日も、ちょうど生徒たちは世界の舞台で探究活動に励んでいたわけです。

Gp_20191222110401

★平方校長はプログラムを新たに加えていくだけではなく、既存のプログラムもアップデートしていく。進化を止めないことが21世紀型教育の特徴でもあると語ります。

★したがって、グローバル教育3.0があと一歩で完成間近である今、平方先生はグローバル教育4.0を開こうというのです。

Ge40

★平方先生は、ここまで、≪Z世代≫の生徒がG-STEAMをベースにSGDsに取り組んでいるということは、自然と社会と精神が分断されてきた20世紀社会を自然と社会と精神を循環させる21世紀社会を創造することになるだろうと予想しています。

★20世紀型教育は、この自然と社会と精神が分断されてきた20世紀社会を支える知識・技能を育成してきた。だから、この分断を循環に転換させる21世紀社会が必要なのが、それを作り出すのは、21世紀型教育なのだと考えています。

★20世紀型教育は、20世紀社会が組み立ててきました。社会の構築より遅れて整えられてきたのです。しかし、21世紀社会はまだありません。今度は21世紀型教育が先行しています。したがって、社会を支える教育から、社会を創る教育に転換します。だから、20世紀は経済の世紀で、21世紀は教育の世紀と呼ばれているのです。

★自然と社会と精神の分断は、自然破壊をもたらし、格差社会を造りだし、心の闇を深くしました。今度は自然破壊をなくし、格差社会をなくし、心の光を取り戻す循環社会へシフトするのです。この分断をもたらした根本的な問題は、化石燃料の覇権をめぐる争いです。循環に転換するには、化石燃料にかわるエネルギー革命を創出することです。

Ge

★平方先生は、循環社会にするということは、地球を救うエネルギー革命を生み出すことなのだと考えています。≪Z世代≫の生徒たちはここに向かって探究を活動をしていると予想しているのです。

★バイオテクノロジーとアートの融合するような直観ですが、考えてみれば、平方先生は、彫刻家であり、技術の教師であり、生物の教師でもあります。哲学を有した21世紀型教育の強烈なリーダーであるその背景にはそういう素養が広がっていたのですね。

★高次コミュニケーションはすでに田中歩先生が共感的コミュニケーションとカップリングして体現しています。意外とこの予想は加速度的に現実化するかもしれません。

★たしかに、この循環社会というユートピアは、工学院の生徒たちが取り組んでいる平和への探究がいきつく未来かもしれません。

|

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(07)工学院と共にグローバル教育3.0実現にあと一歩

★工学院大学附属中学高等学校の平方校長は、グローバル教育3.0をあと一歩で完成するというところまできたことを表明し、いよいよグローバル教育4.0へブレイクスルーが生まれると宣言しました。

Pbl_20191222081901

★6年前に工学院の校長に就任した平方先生は、普段の授業を一方通行的な講義形式から双方向で創造的思考まで翼を広げるPBL型授業にシフトすることから着手しました。次の年には、思考コードを教務主任田中歩先生方がつくり、PBLで扱う問いのコンパスを共有する開発・研修が開始されました。2015年秋に今ではかなり知られるようになったSDGsの取り組みも開始し始めました。

★生徒1人1台のタブレットもこのころ中学で完成し、そこから高校にまで及びます。今では中学ではタブレット、高校ではBYODでラップトップを生徒は活用しています。ハイブリッドインター開設によってグローバル教育3.0を牽引し、ハイブリッドサイエンスコースもでき、一気呵成にSTEAM教育も広がりました。

★「思考コード×5Cのコンピテンシーが育つPBL×SDGs×G-STEAM」が循環する学びの生態系という<新しい学びの経験>が出来上がっていきました。これは21世紀型教育機構の理念ともシンクロしています。

La

★そして、今の高3が高1になったときに、新宿キャンパスでハイブリッドインターコースの破格のPBL授業が展開し始めます。英語で哲学授業を行うことになったのです。STEAMと哲学が結びつき、リベラルアーツの現代化がスタートしたのです。

★そして、探究活動の一環として、探究論文の編集やMoGという東南アジアで起業家精神を実践するグローバルプロジェクトが花開きます。もともと中3は夏季中に3週間のオーストラリア研修がありましたから、グローバルな世界に進むのは、抵抗がありませんでした。高1では3か月留学も実施されるようになりました。

★図書館が3Dプリンターを設置するなどFabラボにアップデートし、デザイン思考のプログラムの拠点にもなりました。生徒たちは放課後ここで様々なSTEAM活動も開始し始めました。

★平方校長は、この具体的な実践的な展開を大量の写真を示して説明していきました。生徒たちは、英語を流ちょうに使い、ICTの技術も使い、シンガポールの国際コンクールで優勝してきたり、国連に招かれて世界平和の提言をプレゼンしてくるまでになったのです。一方で、大学生と対等にFabコンテストで賞も取ってくるようになりました。

Ge30_20191222084301

★こうして着々とグローバル教育3.0完成への道を歩んだのです。この間、ふだんの授業もブラッシュアップしました。ケンブリッジイングリッシュスクールに日本で初めて認定されるなど、ハイブリッドインターコースのみならず、学内全体の英語教育のレベルがあがったのです。

Photo_20191222084501

★そして、これらの多様なG-STEAM教育の大車輪的な展開が、八雲学園から紹介されたラウンドスクエアの加盟への準備につながったのです。加盟するには認定作業がなされます。ラウンドスクエアの運営組織からリサーチがはいります。教師や生徒とインタビューしながら授業や教育活動を視察するのですが、認定委員は生徒の英語力に驚き、哲学的素養が育っていることに感動して帰っていったということです。

★世界のエスタブリッシュな教育が認めた工学院の教育の質。日本にいると気づかれないのは、世界を知らない教育関係者が多いので、当然なのかもしれません。

Rs_20191222085101

★今年のラウンドスクエアの国際会議は、インドで行われましたが、工学院の生徒のデビューは、世界の生徒の目を覚ますようなインパクトがあったようです。

★こうして、着々とグローバル教育3.0は完成間近です。海外大学への進学者がたくさん出る予定の2020年度には、到達するでしょう。すでに現在分かっているだけでも、今年の高3生の中から次のような海外大学に合格者がでています。

〇University of Exeter ‹エクセター大学›

1855年創立(英・国立)世界ランキング130位(タイムス・ハイヤー・エデュケイション)・卒業生:J.K.ローリング(ハリーポッターの著者)

〇University of East Anglia<イーストアングリア大学〉

1963年創立(英・国立)・世界ランキング188位(タイムス・ハイヤー・エデュケイション)・卒業生:イシグロ カズオ(ノーベル文学賞)

〇University of Alabama at Birmingham‹アラバマ大学バーミンガム校›

・1869年創立(米・州立)世界ランキング168位(タイムス・ハイヤー・エデュケイション)・医学・看護学では全米突トップレベル。アメリカ南部のビジネス拠点に立地

★もちろん、国内の大学合格実績も伸びています。これからの一般入試の成果に期待がかかります。

★もうすぐ、受験業界でも、大いに注目される教育力を爆発させることでしょう。

|

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(06)工学院 21世紀型教育機構の理論的支柱として実践モデル構築

★工学院大学附属中学校・高等学校の平方校長は、21世紀型教育機構の副理事長であり、一般財団法人東京私立中学高等学校協会副会長であり、文科省の高大接続改革の分科会メンバーです。したがって、工学院と私立学校と日本の教育全体を俯瞰して、日本の国力を復活できる人材育成教育を構築しています。もちろん、国家のためが一義ではなく、高邁な精神をもちイノベーティブな勇敢な人間力の育成が結果的に国や社会や世界に貢献するはずだという信念です。

Dsc06731_20191222071001

★この6年間の工学院の21世紀型教育の推進は、実は21世紀型教育機構の理論的支柱の形成とその実践モデルの構築と言っても過言でない程対応しています。6年前の思考コードを作成する研究開発から始まり、今ではグローバル教育3.0の完成にあと一歩のところまで来ています。

★そして、この思考コードのたたき台を作成した1人教務主任の田中歩先生が平方校長と壮絶な高次コミュニケーションをとりながら、一方で、先生方を巻き込む共感的コミュニケーションをとりながら、平方先生の描くコンセプトやビジョンを実践してきたのですが、その中から理論が生まれ、それが21世紀型教育機構の理論的支柱ともシンクロしていきます。

Dsc00129_20191222072401

★今回、田中歩先生は、臼井先生と共に、カンファレンスの会場であった工学院大学新宿キャンパスのアーバンテックホールの運営から参加者の案内、片付けまですべてサポートしていました。田中歩先生との付き合いは長いですが、こういうときにこそ、理論と実践と高次&共感的コミュニケーション行為という得難い才能をフルに発揮できる教師であることが、改めて実感できたわけです。

Photo_20191222072801

★平方校長が登壇される直前、司会者である私は、この一見小さき9つの領域の思考コードが、6年間の間に多様なグローバルプログラムを開かせたという紹介をしました。小さく創って大きく育てるPBLの基礎的な発想の実現をしているのです。

★その背景には、田中歩先生をはじめ、当日参加されていた同校の先生方の涙ぐましくも挑戦的に<新しい学びの経験>を創り世界に拡大していく前のめりの行動力があったわけです。その一つのエビデンスがアクレディテーションのスコアです。

Photo_20191222074201

★田中歩先生が教務主任に就任して2年目の今年、アクレディテーションのスコアは見事に復活し、しかもその飛躍のカーブは、学内の勢いを反映していると予想できます。

|

2019年12月21日 (土)

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(05)世界から学び、世界も八雲学園に学ぶ。

★八雲学園の英語科主任で海外・英語特別委員長の近藤隆平先生のトークは、自身が八雲学園の生徒といっしょに世界に飛び、世界から生徒といっしょに未来を考えるポジショニングを確保したことを謙虚な姿勢ではありましたが、しっかり宣言していました。

Dsc06735

★最初、7分間の八雲学園のグローバル教育の動画を披露しました。八雲学園の英語教育はアップデートし続けてきました。その歴史はいまでは、6年間のプログラムとして循環していきます。まるで、個体発生は系統発生を繰り返すという進化論的なデザインがなされているわけです。

★スピーチコンテスト、レシテーションコンテスト、英語祭、イングリッシュファンフェア、イエール大学の国際音楽交流、グリーというミュージカルクラブの活動、サンタバーバラを拠点とする英語研修、短期留学、3ヵ月留学など1つ1つ心血を注いで積み上げてきた教育活動は、今ではすべて、八雲学園のプログラムとして定着し螺旋状のウネリを生んでいます。

★そして、その積み上げの究極の到達点であり、新たな出発点がラウンドスクエア加盟であると近藤隆平先生は語りました。

★ラウンドスクエアとは、近藤隆平先生によると、「6大陸、50ヵ国200校の私立学校からなる世界私立学校連盟です。毎年行われる、国際会議、ラウンドスクエア加盟校同士の交流が活発に行われています。簡単に言えば、世界に200校の姉妹校があるということになります」ということです。

★さらりと言っていましたが、世界私立学校というのは、いずれもエスタブリッシュメントな私立学校です。偏差値という尺度がありませんから、世界標準の破格の教育の質を有しているという意味でエスタブリッシュなのです。要するにイートンカレッジのような私立学校ばかりということです。八雲学園はその仲間として認定されたわけです。

★それから、200校の姉妹校があるということはすさまじいことです。偉大な人は100以上の多様なプラットフォームのネットワークを大切にしているとよく言われますが、八雲学園の生徒は、中高時代にその基盤をつくる機会に恵まれています。

★近藤隆平先生は、毎年国際会議に生徒が参加して大いに刺激を受けてくるだけではなく、200の姉妹校と交換留学が頻繁にできる環境を紹介していました。世界に学びに行くだけではなく、世界から八雲学園に学びに来るのです。

★これが意味することは他の学校では経験できないことです。毎月世界のエスタブリッシュメントな私立学校から留学生が学びに来るのです。当然、学内は心地よい緊張が走ります。おもてなしは、気持ちの面だけではなく、文化的側面、そして学びの環境の側面も充実していかねばならないからです。

★ラウンドスクエアと交流することは、八雲学園の教育の質をその都度アップデートすることなのです。それは21世紀型教育機構に加盟しても同じことが言えます。学内の教育を見直し、新しくしてきましたからとリップサービスも忘れませんでした。さすが世界標準のウェルカムの精神の八雲学園です。

★それだけでも、胸がいっぱいになるほど、<新しい学びの経験>の話だったのですが、実は続きがありました。それは、破格のSTEAMを八雲学園は学んでいくというのです。

★ただし、今のところ八雲学園がそれを自前でつくることはしないと。どういうことかというと、近藤隆平先生が視察に行ってきた海外の先進的な私立学校の例を紹介しながら、車の自動運転のプログラミングに取り組んリるシーンやブロードウェイで活躍した卒業生がコーチに来ているダンスのシーンなどの写真を提示し、究極のSTEAM教育の在り方について説明しました。

★そして、八雲学園は世界の先進的STEAM教育を行っている私立学校にSTEAM留学の環境をどんどん作っていくというのです。八雲学園は生徒がこういう教育をうけたいと要望すると、教師が俄然動き出します。ですから、こんなSTEAM教育を推奨すると生徒が語りだすと、そうなっていっくのが八雲学園だというのです。生徒の興味と関心によってアップデートしていくというわけです。

★生徒の主体性の生まれる環境を創るのが八雲学園だし、それによって八雲学園もアップデートし続けるわけです。20世紀型教育は頑なに伝統を保守する教育です。21世紀型教育は伝統と革新の統合をアップデートし続ける教育です。21世紀型教育機構と八雲学園がシンクロする理由はここにあったと改めて感じさせられた近藤隆平先生のスピーチでした。

|

<新しい学びの経験>を創る教育改革が現場で起こらざるを得ない3つの防壁

★もはやこのままの人材教育では、日本の国力は衰退するばかりであることは周知の事実となってきました。にもかかわらず、<新しい学びの経験>を創り出し内生的成長を果たす人材教育投資を邪魔する動きもまだまだあります。もっとも、日本では、アダム・スミス以来の経済の新しいパラダイムを生みだしたポール・ローマーらの内生的成長論は今ようやく光を浴びはじめたばかりですから、それもやむを得ないでしょう。

51adwjlmjsl_sx344_bo1204203200_

★上の写真、デヴィッド・ウォルシュによる内生的成長論に向かう近代経済学史の本は、2007年に出版されたもの。それが今ようやく邦訳されるのですから、日本の政治経済社会に対する見識がいかに遅れているかがわかります。

★本書を読むと、1930年代に経済学の拠点がイギリスから米国に移ったときに、「数学は言語である」というテーゼが一世を風靡して、今に至るということが書かれていますが、今世界でも注目されているSTEAMと教育界でいわれているのは、当然この流れがはいっていますが、STEAMを教育と政治経済社会の関係で捉える教育関係者が日本ではあまりいないために、なかなか<新しい学びの経験>を創出する教育改革が進まないのは当然といえば、当然なのでしょう。

★日本では未だに英語を教育することが教育改革なわけです。でも世界は、そこはすでに済んでいます。多言語から出発できてしまっているのです。日本はまだ母語が大事だとか愚かなことを言っている人もいます。もちろん、母語が大事なのは当たり前です。

★世界でも母語教育は当たり前です。フィンランドなどでは、多様な民族が学んでいますが、公教育でたとえば、日本人が一人でもいれば、その子のために日本語の講座が用意されます。母語の環境も作りながら、フィンランド語や英語を学んでいくわけです。

★だいたい言語の問題は、世界では、戦争と平和の大きな問題であり、命がけの問題です。今の日本では、受験では日本語で考えるのだから、母語である日本語が大事だなどという、グローバルイシューから見れば、何を言っているのかわからない低い見識の理屈がまかり通ています。とても、世界市民と協働してやっていける見識はないのではないかと驚いてしまいます。

★母語も英語もやるんですよ、しかし、そのうえで次に進まないといけない時代なんです。日本が孤立して生きていけるのであれば、それでよいかもしれませんが、すでに自給率も低く、世界との交易が途絶えれば、日本人は生きて行けません。

★ともあれ、世界は知識を大事にしていますが、その知識は新しい知識を創ることを意味し、既存の知識をどれだけ記憶するかということではないのです。そして、アイデアを重視します。アイデアは思い付きから始まり、実現するまでに成長していきますが、日本では、思い付きはダメだの一言で、イノベーションへの芽を摘んでしまいます。対話も議論もないからそうなるのですね。

★経済成長は、新しい知識を創れる人材教育、アイデアを拡散できる人材教育、イノベーションを起こせる人材教育が必須です。そのために<新しい学びの経験>を無限に創っていくのです。ただ、自由な雰囲気だけではそうはなりません。自由な雰囲気とプログラムが必要です。

★そこで、日本は、学校教育法を改正し、学力の3要素まで条文に刻み込んだのです。法律で学力とは何かを決めなければ機能しない国であることに驚きはしますが、心ある方々が仕掛けたのでしょう。

★学力の3要素とは、いまでは当たり前になっている「知識・技能」「思考力・判断力・表現力など」「主体的に学びに向かう態度」ですが、ここに、教育改革を阻止する保守勢力に対し、防壁を3重にして、なんとか教育改革を前に進めていこうとしたのでしょう。

★この3要素中で、まずやらないという抵抗をうけるのが、「主体的に学びに向かう態度」の評価です。評価をしないのですから、口では「主体性」は大事だと言いながら、それを育てる学びのプログラムは創らないのです。これによって、新しい知識・アイデア・イノベーションを創る回路は一つ消えてしまします。

★しかし、ここをやろうとする学校も出てきますから、なんとか新しい知識・アイデア・イノベーションを創る道は細々と続くのです。これが第一の防壁です。

★いずれにしても第一の防壁は90%は保守勢力に破壊されてしまうでしょう。それでも「思考力・判断力・表現力など」はなんとか保守勢力もやるでしょう。しかし、思考力と言っても、論理的思考力のお話であって、批判的思考と創造的思考は評価できないとしてやらないところがほとんどでしょう。かくしてこの第二の防壁も60%は崩されます。

★しかし、密かに判断力と表現力が盛り込まれています。これは、たぶんわからないまま、論理的思考力と相まってやることになります。保守勢力がわからないままやることによって、防壁の自然回復が生まれる仕掛けです。というのも、判断力と表現力は実はアートの領域もあります。ICTと数学は論理的思考の枠内でやりますから、これにアートが加われば、無意識のうちにSTEAMの基盤はできていくのです。100%自然回復することはできませんが、50%までは回復し、なんとか持続可能にすることはできるでしょう。

★そして、「知識・技能」というのが第三の防壁です。これもまた、保守勢力は、「知識」をICTなどの「技能」によって依然として定着だとか沢山記憶するという作業に集中させるでしょう。しかしながら、この「技能」こそ無意識のうちに潜ませるアートの真骨頂なのです。

★アーティストは、新しい美術作品は新しい技術を自ら発見・開発して挑みます。美学という哲学的素養とテクネ―としての技術はアートでは表裏一体なのです。あのパルテノン神殿は芸術的価値はもちろん高いですが、建築学的技術、工学的技術、石材という知識などテクネーの部分がなければ存在しません。

★このアーティストの知を美術館に陳列して閉じ込めているのが、従来の日本の教育でした。欧米の工学系の大学は、学部の中に芸術学部が併存しているのに、日本ではそんな工学系の大学はないですよね。

★しかし、学校教育法は、第三の防壁として「知識・技能」という誰しも疑わず、すんなり授業で実施する学力を盛り込んだのです。これにICTが結びつけば、なんとかSTEAMの教育の基礎はできるのです。それでも、知識を暗記させるだけで、ICTを使わないところも出てくるでしょうが、生徒の方がICTをどんどん使っていくでしょう。

★こうして、満身創痍になりながらも3つの防壁は、保守勢力による教育改革全面阻止を免れることができるでしょう。

★そして、保守勢力は世代との相関が強いですから、あと5年もすれば、その勢力は放っておいても総崩れになるでしょう。

★そのときまで、日本の国力が持ってくれるかはわかりませんが、起死回生の技術革新は、すでに日本では水面下で行われているので、なんとかなるのではないかと希望はあります。もっとも、これとて、資金力にものをいわせ、米国や中国に買収されてしまう可能性の方が大ですが。そうしたら、また新しいイノベーションを起こせばよいのです。そのための<新しい学びの経験>を創る環境を生成し続けましょう。

|

2019年12月20日 (金)

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(04)日本における英語教育改革は命がけである。

★順天の学校長であり文科省の多面的評価に関する分科会メンバーでもある長塚篤夫校長の講演は痛快まるかじりでした。日本の初代森有礼は、日本語の英語化政策を唱えるなど急進的かつ自由主義的教育政策を提唱し、国粋主義者に刺殺され命を落としたといきなり始まりました。

★そして、今回の見送りで萩生田文部科学大臣は、命拾いしましたねえとアイロニー。もっと命をかけて改革しないと今の子供たちの未来の日本はどうしようもなくなるよと警鐘をならしました。

Dsc06722

★しかしながら、高大接続改革が座礁したわけではなく、着実に進んでいるのですと。それなのに、メディアはそこをきちんと伝えずに、混乱している混乱していると改革までとん挫しているかのように報道するものだから、世間は錯覚してしまいますと。

★とにかく、1点刻みの評価からコンピテンシーを評価する。どういう能力が備わっているかをみる評価に変えるというのが、今回の高大接続教育改革の根底にあり、大学入試改革が第一義ではないのですと。

★それにしても、現在東大の合否は、0.0001点刻みですよと自校の東大合格者の成績表を見せながら話してくれました。この評価に意味があると思う人はまずいないでしょうねと。

★以上のような前振りをしたあとで、多面的・総合的な評価について語りました。特に新学習指導要領では、指導要録が学力の三要素「知識・技能」「思考力・判断力・表現力など」「主体的に学びに向かう態度」の観点別で記載していくようになるわけですから、この評価へのチェンジは実に大切なのです。

★ただ、長塚校長は、もしかしたら、きっちりこれもできないかもしれない。適当に今までのものを振り分けて記載することになるかもしれないと。というのも、この多面的・総合的評価を自分の学校で取り組めるようになったのは、PBLという学びができるようになったからで、今までのような講義形式の授業では、この新しい評価はできない可能性があると。

★今の生徒の未来を創る教育は、PBLと多面的・総合的評価がカップリングされているということでしょう。もしこれができなければ、生徒の未来はたいへんなことになると、海外の評価方法と比べてエビデンスを示しながら、長塚校長は語りました。できるところと、できないところで差がつきながら、自然淘汰されていきますから、結果的に改革は進まざるを得ないということでしょうか。ここはコメントを避けていました。

★ともあれ、順天では中学入試において「多面的入試」を導入しているが、これもルーブリックを作成して評価できる体制ができているからだと。この多面的・総合的評価の取り組みこそが順天の21世紀型教育の成果であると長塚校長は明快に語ったのです。。

|

第14回 模擬授業と形成的評価

■2019年12月20日(金)3時限目

授業アンケート)授業開始時点で「授業アンケート」をまず行います。

テーマ)次のA~Dの問いから一つ選び、その問いの解答を生徒が最終的に自分で考えて解けるようになるまでのサブクエスチョンをつくり、それに基づいても授業をデ‐ザインしてください。

A 遠いアンドロメダ星雲に我々の地球と同じような天体があり、人類とほぼ同様の生命体が住んでいるとする。しかし、その生命体は、光に関しては、紫外線領域のある波長の強弱しか検知できないとする。その生命体は、我々人類とは異なる、どのような科学技術や文化を発展させていると考えられるか。

B 現代では自然保護が重視されるが、人類がいなくなるのが最大の自然保護だという考え方もある。こういう考え方もあることを踏まえて自然保護についてあなたの考えを述べなさい。

C 今日では企業はグローバルな競争に直面しているといわれている。このような状況で企業、 とくに日本企業はどのような方策をとるべきか、あなたの考えを述べなさい。

D 「常識」とは何か?多面的に論じなさい。

サブテーマ)
・10の学習者像は授業で考慮されているか?
・「学習ツール」「思考スキル」は何を使うのか?
・生徒の複眼思考と情意的豊かさを活用できる授業か?
・問いと形成的評価との関係は?

資料)
・TOK概要

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

|

聖パウロ学園 クリスマスミサ 4つのFとD

★昨日、聖パウロ学園は終業式とクリスマスミサを行いました。ふだんは、PBL授業で考えたり表現する自由な雰囲気がありますが、終業式のような時には規律ある雰囲気をかもしだします。自由と規律の動態平衡ということでしょう。

Dsc06764

★佐々木校長の自己実現のための7箇条の訓話に耳を傾け、生活指導部と進路指導部の先生からは冬休みの生活の最適化によってキャリアデザインへの次のステップに向かう大切な機会にするよう檄が飛ばされました。また、仲間たちが各種表彰されるのをリスペクトしてもいました。

Dsc06758

★終業式の後は全校挙げて大掃除。そしてその後、聖堂でクリスマスミサが行われましたが、神父による大切な問いにみな深い内省の時を過ごしました。イエスが馬屋で誕生したのはなぜか?このメタファーは、多くの人が気づかない本質的なものやその本質的なものに気づく導きの問いだったのです。

★こうして、終業式や大掃除、ミサが行われたのですが、ここにはふだんの聖パウロの学園生活とはまた違う側面がみえました。それはフォーマルモードと内省的モードです。ふだんは自由に学びの翼を広げているのですが、このようにモードの切り替えができるのが聖パウロらしさでしょう。そして、明日からは冬期講習です。果敢に自己実現に向けて闘志を燃やすモードチェンジになります。

★これらを英語で表してみると、Free learning mode・Formal mode・reFlection mode・Fighting modeとなるでしょうか。

★今年、聖パウロ学園の生活を見てきましたが、このような4つのモードチェンジができる学校だということがわかりました。そして、そのモードをつなぐ重要な役割は、なんといっても<対話>だったということは、本ブログでずっと見てきた通りです。

4fd

 

★4つのFとDという粒子が化学反応を起こし、聖パウロ学園のエネルギーを生み出しているのかもしれません。

|

2019年12月18日 (水)

生徒も集まる広報=PBL=評価=学習する組織 目が覚めるような新しい経験を!

★昨日、今日と連日ブレスト会議と戦略会議の往復を何度したでしょうか?久々に頭が本当に疲れてしまいました。経営陣と広報と教務の3つの側面をいかにしたら結合できるシステムを創り上げることができるのか?学内に浸透できるのか?学外にインパクトを与えることができるのか?丸2日間脳みそがぐちゃぐちゃになって、どうにかなるのではないかと一瞬不安がよぎりました。

Dsc06744  

★そんなときシスターの理事長とお会いしながら日本に米国からやってきた創立者の話を聞きながら、先に進めるきっかけをいただきました。そして、クリスマスカードとフルーツケーキも(感謝)。

★常に出会いは、目が覚めるような新しい経験よ。この経験が大切でしょう。私たちはそれを常に再現しなくては。その目が覚めるような新しい経験は、新しい人になる喜びという普遍的精神ですよ。伝統とは普遍的精神。でもそれは目が覚めるような新しい経験を通してそこに光となって現れるのよ。頼みましたよ本間先生。クリスマスおめでとう。また来年よろしくと。

★もう80歳を過ぎているとは思えない理事長の力のある言葉は、私の迷いを知っているかのように、一条の光となりました。

★私のPBLの話は、経営陣に届かない。付き合いの長い広報のメンバーもわかるけれど、インパクトをどう表現するかぴんとこない。動画やリーフレットでわかりやすく表現しても、それがどんなによいものでも、だから何かピンとこない。PBLのプロセスをわかりやすく表現しても、生徒の目の輝きを映し出しても、ピンとこない。

★いったい目が覚めるような新しい経験をどうやって受験生や保護者と共有できるというのだろうか?経営陣には、多様な問いを投げかけたが、どれもインパクトがない問いだ。回答に対するパッションが沸き立たない。

★育てたい生徒像をいくら問うても、ありきたりな回答しか共有できない。目が覚めるような言葉がでてこない。

★しかし、創設者がやってきたとき目が覚めるような新しい経験を共有したのだというシスターの言葉を頼りに、それは何か対話し続けました。評価の新しい意味、経験の新しい意味、思考の新しい意味、シラバスの表現の新しい提案・・・。どれも一つ一つはわかるけれど、全体として最適化していない。部分最適化だから、経営陣は耳を傾けてはくれるが、目は閉じたまま。

★耳をふさがないだけましでした。そんなとき、広報のメンバーが学習する組織の役割を掘り起こし始めました。本間さん、このチームを作る意味はそもそも何ですか?ピーター・センゲの話を型通りしましたが、それはもう何度も聞きましたよ。そうではなくて、どんな活動をするのですか。創造的な活動ってやつですよ。

★ウム、ウム、ウム、そうだよね。僕が今言っているPBLは、もう型にはまりだしているから、創造的ではないよね。今のままでは作業部隊になって、目が覚めるような経験を生み出す学習する組織にならないね。

★はいはいはい。PBLをという図を見るのではなく、その背景の地の部分を見てみますよ。ないですね。何もないですよ。でも、PBLを現場に置いてみると、その背景に地が現れてきますね。これですね。目が覚めるような新しい経験。

★どういうことだい。こういうことですよ。こんなにシンプルな7つのEのシステムがここには現れてきています。ああっ!経営陣も広報のメンバーも声をそろえたのです。

★これで、経営陣と広報と教務がOne Teamになれるねとなったわけです。そこから、来年以降に向けてのシナリオがあふれでました。どうやら、今年の9月からは<序>のリスムで、来春は<破>のリズムで、4月以降は<急急>というリズムのラインを描きそうです。

★結局、自分のPBLを捨てたところから、目が覚めるような新しい経験は生まれてきたのです。そして、PBLも新しくなります。それによってシンプルに誰にでも作成できるしかも無限のカタチができます。創造的ですね。今年のクリスマス・シーズンは、次のステージのビジョンを内側に映し出すよき時でした。感謝。

|

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(03)桃源郷プラットフォームを増やすしかないのか?

★最初の登壇者は、富士見丘学園理事長・校長吉田晋先生(21世紀型教育機構理事長)。文科省の高大接続改革の分科会のメンバーでもあります。したがって、今回の政府・官僚のとん挫決定に対し失望し、結局私立学校が、世界の中で国力がどんどん衰退していく日本を救う教育を開発し実践し続けることでしか、日本の教育は変えられないという決意を表明しました。

Dsc06715

★19世紀は帝国の時代でした。20世紀初頭の第一次世界大戦までオーストリア帝国などというような体制があったくらいですから。つまり、ここでは、教育は、一部の上層階級のものでした。軍事力がなんといっても帝国のエンジンだったのです。

★20世紀は経済の世紀です。しばらく近代国家の調整とのかねあいで国際関係が形成されていました。いわゆるバランス・オブ・パワーの時代ですね。軍事力は背景にあるものの前面にはでないように(実際にはでていますが)、国際貿易のバランスを外交交渉によって調整するということが続いています。そして、1989年のベルリンの壁崩壊後、グローバル経済が広がり、経済優先の世紀が20世紀末の新たな世界を形成しました。

★グローバル経済は、市場がメインですから、この拡大した市場を支える教育が、広く世界に広まりました。つまり、教育の大衆化です。しかし、周知の事実ですが、この世界が環境破壊、格差社会、精神の崩壊を多様な領域で生んでいきました。それを支える20世紀型教育でよいのか?という反省が同時に生まれました。

★21世紀にはいると、インターネットやIT産業が拡大し、近代国家観を揺るがしはじめました。GAFAの登場です。あらゆる壁や規制を突破していくネット社会の登場です。現在では、国家と貨幣発行の権限を巡って水面下で闘争が起こっています。

★かくして、実際には世界は大混乱です。それゆえ、「予測不能」「脱正解主義」という重要な価値意識が生まれてきました。

★しかし、日本において、この動きに大学がついていけません。今回はその実態を証明したようなものです。

★一方、世界はどんどん進んでいます。それがいいかわるいか、議論は必要ですが、まずは議論をしてからでは、日本の国力はどんどん下降していきます。≪Z世代≫の目の前の生徒の未来を守る必要は、いや責任は、今の私たちにはないのでしょうか。

★そんなことはないのは、言うまでもないでしょう。

★結局国内の心ある大学を探し、そうでなければ海外の大学に進学できる能力を磨く<新しい学びの経験>ができるようにしなければならいと吉田先生は語ります。海外大学は学費が日本の3倍も4倍にもなるところが多いです。ですから、奨学金を利用できるように能力も高めなければなりません。

★昨今では海外の大学に合格はしたが、奨学金がとれなかったから、上智大学やICUに進むという生徒も増えています。それでも、彼らは大学から再び自分の情報収集力で海外大学にチャンレンジするケースも少なくありません。

★20世紀型教育では見たことのない景色が広がる<新しい学びの経験>。そこはまるで桃源郷のようです。21世紀型教育機構の成果は、そこにいきついていると直接こう語ったわけではありませんが、吉田先生は確信しています。当面、私立学校でこの桃源郷プラットフォームを増やしていくしかないのだと思っていることでしょう。

|

2019年12月17日 (火)

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(02)

★今回のカンファレンスは、2011年から着々と21世紀型教育の質を向上させてきた機構の成長曲線のうち、2017年以降の教育活動の成果と4つめのブレイクスルーが起こる2020年以降の新機軸をみなさんと共有しようというのが趣旨でした。

21_20191217131601

★このような成長曲線が描けたのも、実は5年前から準備してきて2017年に本格実施するようになったアクレディテーションという質の認定作業を行うようになったからです。21世紀型教育をやりますといっても、どの程度の教育なのか目標をたて、それを実証していかねばなりません。

★そこで、20世紀型教育の最高峰のいわゆる御三家をスコア上超えることができるか機構加盟校は、それぞれ挑戦してきたのでした。機構の事務局は、まずは目指すべきルーブリックをつくり、これまでリサーチしてきた海外名門校の教育の質が100%に近くなるものを制作してきました。

★そんな話をまずは、司会者側から説明させていただき、実際に、2017年から2019年の加盟校の平均の質の右肩上がりのスコアカーブもお見せしました。

★そして、このアクレディテーションの満点スコアに到達したときには、どんな地平が拓けるのか、すでにスコア満点を振り切っている世界の名門校200校のコミュティ「ラウンドスクエア」の動画を流すところから始めました。

Yakumo_20191217132501

★この動画は、八雲学園が作成したものです。というのも、八雲学園は長い認定審査の結果、2017年にラウンドスクエア認定校になりました。そこからの八雲学園の変貌ぶりはすさまじく、そのプロジェクトのリーダーである近藤隆平先生にのちほど話してもらうのですが、加盟校が多くのグローバルコミュニティと交流している姿の究極のケースなので、今後の21世紀型教育機構のあるべき姿のよき導きになります。また今後のビジョンを立てている多くの学校にも参考になるのではないかと思ったからです。

★それに、参加した方々もイメージしやすいと思い、流しました。おそらくインパクトはあったと思います。世界の高校生がすでにグローバル市民として自分のアイデアを実行に移し、自立した行動をとるのは、実に当たり前である姿がそこにはあったからです。

★日本は、まだまだ教師に監視される子供としての学校環境がいかに多いことか、それでは低迷した日本を変えることはできないでしょう。そういう問題意識も共有することができたと思います。

|

香里ヌヴェール学院 チーム池田が学内外にインパクトを生みだしている。

★先週14日(土)、香里ヌヴェール学院は、中学生対象の学校説明会を開催。多くの受験生・保護者が集まりました。

80701351_2631252670307418_10649037519674

(写真は同校公式facebookから)

★同校のfacebookにはこうあります。

<高校3年生の有志によるサプライズパフォーマンスから始まり、校長によるご挨拶、生徒による各コース紹介、国語科、数学科、英語科教員による入試傾向説明、入試広報部長による学校情報を含めた入試に関する説明会を行いました。

アンケートにて「生徒が自主的に行動し、自由に活動している様子に驚きました。」「先生、生徒ともにとても感じのよい対応で入試対策の説明もわかりやすかったです。」「ここの学校に入りたいという志望度が高まりました。」といったご意見を多数いただきました。誠にありがとうございます。>

★ここに池田校長のチームビルディングの真骨頂が見えます。月に一度、聖母女学院の幼小中高の経営陣研修があります。理事長の赤野先生が主催で行っていますが、ファシリテーターとして私も呼ばれます。

Dsc08503_20191217120201

★そこで、池田校長とはお会いしますが、今年就任したばかりの頃から考えるとさらなる変容ぶりに驚かされます。

★ご自身英語で姉妹校提携を結んできますし、SDGsの研究やPBL授業を行いますから、<新しい学びの経験>を教師と生徒といっしょになって創っていくのは得意としています。しかも、100以上の多様なプラットフォームとのネットワークもお持ちでしょう。3年前に改革したころ、多くの若い先生方が新しい教育に参画したいと入ってきましたから、その流れと池田校長はシンクロし、共振し、“Hard Fun”の“雰囲気”を学内外に充満させています。

★もはや最年少校長というより、新時代を拓くリーダーとして確固たるポジショニングをゲットしました。このチーム池田の環境に僕も、私もと教師も生徒も集まってくるでしょう。

★池田校長自身気づいていないでしょうが、時代が池田先生を見逃しはしません。21世紀は教育の世紀です。本当に教育がわかり、生徒と共に未来を創っていける啓蒙的政治家が必要です。18歳選挙権が実現している今、池田先生が真のリーダーとして国会議員に立つこともあるでしょう。

★若き校長先生方が、18歳の若き市民とこの国の新しい道を切り拓く。教育の世紀とはそういうことを意味します。日本にも希望はありましたね!令和元年の師走。すばらしい予感に感謝です。

|

12月15日21世紀型教育カンファレンスを終えて(01)

★大学入試の準備、高校入試募集の解禁、中学入試の準備のピークを迎えている師走のご多忙な中、ご参加いただいた方には、心から感謝申し上げます。今まさに中学入試の準備をされている保護者の方々、学校の先生方、教育関係者の方々、未来を創る学校の校長先生方、ビッグな学校の理事長までお越しいただきました。また、懐かしくも学内で大学に異動した方がその報告もかねて会いに来てくださいました。大阪から私が最先端の学びの知の奥義を教わっている教頭先生もご夫妻で参加してくださいました。いつも参加してくださるジャーナリストも来てくださいました。心から感謝申し上げます。

Moment

★そして、工学院の田中歩教務主任と臼井先生は朝早くから会場設営など最後までサポートしていただきました。今工学院の高校2年生はグローバルプロジェクトで、全員が世界のあちこちに飛んで活躍しています。10人以上の先生方も同伴していますから、工学院の業務は多忙がピークを超えています。期末テストの成績処理もあるし、高校入試解禁のため個別相談に日曜日から詰めています。

★にもかかわらず、工学院の先生方も参加してくださいました。本当にありがとうございました。いつもいっしょに運営を協働していただいた3人のメンバーにはいくら感謝してもし尽せないでしょう。自分の会社に還れば一国一城の主なのに、知を尽くし、汗を流し。感謝です。

★私は、今年度で、講演会型のセミナーの司会をはじめ、21世紀型教育機構の事務局長としての役を終え機構を引退いたします。もちろん、機構のメンバーの方々との知と愛の絆は切れません(切られるかもしれませんが^^;)。還暦をとっくに過ぎた爺さんがいつまでも、居座っていては、未来を創る21世紀型教育機構の重荷になります。21世紀型教育研究センターも今年開設され、活発に活動しております。アクレディテーション委員会も私がいなくても、自律して活動しています。飛躍の道が着々と拓けています。

★2011年の立ち上げの時から第5期ブレイクスルーが生まれる前夜の2019年度まで、振り返れば長いようであっという間でした。その間、これからもですが、21世紀型教育機構は、様々なセミナーやカンファレンス、フォーラムなど会員校向け、一般公開向けの講演会やワークショップを行っています。

★実は、この機会は、非常に得難いものです。機構のメンバー校の先生方と準備のために<対話>を重ねます。講演やパネルに登壇される先生方も横の<対話>をいたします。ワークショップの時には、プログラムについて当然ブレスト会議があるのですが、実は年間通じていろいろなところでかかわっているからこそ、今年はこれをカタチにしようという想いがつのってワークショップに結実します。

★そして、21世紀型教育機構のイベントに参加される方は、子供たちの未来をいまここでどうやって実現していくか真剣に考えている方々ばかりなので、共感が生まれる講演やワークショップはいかにしたら可能か、みんなで議論するわけです。このように、21世紀型教育機構の発展は、メンバー同士の<対話>と参加された方々との<共感>によるエールによって豊かになっていったと確信しています。

★それゆえ、オープンニングのBGMもクロージングのBGMも、“How does a moment last forever?”でした。女性の世紀でもある21世紀を開くきっかけの1人エマ・ワトソンが演じた実写版「美女と野獣」のエンドロールで流れるセリーヌ・ディアンが歌ったテーマソングです。

★「何をしたら永遠の時は続くのか?それは愛すること。簡単ではない。でもトライする」というような感じで始まります。私たちは、それを「何をしたら持続可能性は創れるのか。それは人類愛による。ただ、簡単じゃない、でもやり遂げよう。何をするかが大切なのです」と読み替えています。

★21世紀型教育機構は、21世紀社会のビジョンを描きそれをサポートする教育環境を考えてきました。価値づけをし実践してきました。今、それが一定水準を超えて創出されています。それゆえ、いよいよ本格的にダイレクトに初等中朝教育の段階で、21世紀社会の未来を生み出すために、「何をやるのか」を議論する時がきたのです。もうWhyとHowでとどまる必要はないのです。DOあるのみです。

★そんなわけで、つまり、個人的な人生の切り替えの時も重なったので、司会というより、今回は21世紀型教育センターのみんなとトライしてきたジェネレーターの役割を果たすことにしました。やたら話す司会者だと思われたのでしょう。そのため、予定時間も伸びてしまいましたが、登壇者と参加者の脳神経をつなぐ介入をいたしました。ウザかったかもしれませんが、めずらしくシナリオをあらかじめ作りました。もっとも、パネルの時は、やはりアドリブ、インプロ手法で、シナリオプランニングは崩れ解放されてしまいましたが。

★でも、それが場の心地よいエンパワーです。長時間でしたが、瞬間の永遠を共体験できたことを、心から感謝申し上げます。カンファレンスの内容について、独断と偏見でまとめて引き続きご紹介いたします。

|

聖パウロ学園 PBLと模擬試験の相乗効果。問題はデータ処理の時間。

★聖パウロ学園では、問答授業とPBL授業のバランスがよく、もともと<対話>ベースの教育だから、自分を成長させたいという中学生がたくさん集まってきます。

★2年前からグローバルコースも開設したので、4技能英語力も豊かなになり、2040年には、混迷した時代を日本は迎えるも、サバイブできる能力を養うこともできるという期待も高いわけです。

Dsc09598

★ちょうど定期テストも終わり、先生方は成績処理にテスト返しの指導に、面談にと大忙しです。同時に、高校入試の相談会も解禁になり、びっちり入学希望者との面談も実施しています。

★高3生の一般入試に向ける準備も佳境と聖パウロ学園のみならずいよいよ日本は受験列島になっていくわけですが、そんな中進路指導部は、同時に高2の進路準備も並行指導していくわけです。もちろん、授業もあるわけですから、本当に教師の仕事はマルチロールプレイです。こういう時期に文科省は現場を覗いてみたらどうでしょう、もっとも、国が介入すると思われかねないので、なかなかそれもできないでしょう。

★それはともかく、聖パウロ学園はある模擬テスト会社の模試を活用しています。基本どこの学校も個人の成績表をもとに、個人面談をしていくわけです。主に担任の教師がそれは担います。

★そして、各教科では、正答率のデータから、カリキュラムの強み弱みをチェックしながら軌道修正していきます。その際、学年の教師と教科チームの<対話>が活性化するのです。

★進路指導部は、その学年のそれぞれの教科の出来具合を分析してメッセージを流していきます。学年の教科担当の教師は、生徒1人ひとりと対話していくと同時に、その学年の教科の特性を考慮して授業をしていくことになります。

★ここまでは、聖パウロ学園に限らず、どこの学校もいっしょでしょう。しかし、聖パウロ学園は、模試のどちらかというと、地域や全国との中でどういうポジショニングにあるかという性格をもつデータを中心に活用していくわけではありません。他流試合は独りよがりにならないためには必要です。しかし、生徒の多様な資質能力が成長していくためには、このような総括的評価だけではなく、形成的評価が必要になります。

★同社の模擬試験の生データは、データベースから活用できるようになっているので、それを加工して形成的評価を創ることができます。しかし、それぞれの問いが、分野別まではカテゴライズされていますが、思考コード(ルーブリック)のような形成的評価用の項目カテゴライズがなされていないので、加工するには相当時間がかかります。

★聖パウロ学園は、スモールサイズですから、データ処理の時間はある程度の時間でできますが、それでも、まるまる6時間はかかります。しかも、形成的評価風のものが限界です。とにかく、教師はそんなまとまった時間がとれる時間は実はないのです。

★試みに教師ではない私が実験的に進路指導の先生の近くの机で質問しながら対話しながら作業をしてみました。分野別でクラス別でデータを括っても、一見形成的評価にはならないのですが、そのデータに今幾つかの教科で作成している「思考スキル」と<対話のパターンランゲージ>を結びつけると、形成的評価に近い指導ができます。

★ただし、これは個人というよりクラス単位、つまりとチームの協働力を活用する形成的評価になり、PBL授業を行っていない場合は、必要ないかもしれません。

★いずれにしても、PBLで対話力や人間力、情意的能力を養うと同時に、いわゆる学力も強化することはこれによって可能になるはずです。キャリアデザインは、自分の探究したい分野を学べる大学を選べばよいのですが、現実は同じ学部や学科でも、研究の環境のアドバンテージの違いがあります。そういう意味では、学力を強化することも大切です。

★日本の場合、大学間格差や研究費の多寡の格差などがあるのが事実です。このような格差をなくす(もちろん高い水準で)大学の改革も含めて実行してくれれば、学校の教師の仕事も少しは軽減されるかもしれません。

★それにしても、模擬試験の生データはありがたいけれど、その処理は学校と模擬試験会社とではシステムが違いすぎ、まともにデータ処理に学校が立ち臨んだら、教師は寝ないで仕事をしなければならないでしょう。なんとかならないものでしょうか。

|

2019年12月15日 (日)

【速報】本日、三田国際学園のまだ知られざる強さの理由が明かされる!

★本日12月15日(日)、工学院大学新宿キャンパスで、「21世紀型教育カンファレンス」が開催されます。三田国際学園の学園長大橋清貫先生も登壇されます。

Dsc01745_20191215120301

★同校が、5年間21世紀型教育改革を実践し、大きな成果があがっているのは、もはや周知の事実ですが、その本当の理由はまだ明かさていなかったのです。それは、つい11月に判明した2つの最新の情報によってはじめて了解できるからです。

★日本の教育は、この境地に達しなければならなにのに、まだまだ95%の方々は気づいていません。それでは、未来から来た留学生=≪Z世代≫の生徒は困ってしまいます。

★今、目の前の≪Z世代≫の生徒にとって、本当に必要な21世紀型教育の真実とは?参加された方々といっしょに考え、共有できるのを楽しみにしております。

|

2019年12月14日 (土)

工学院大学附属 痛快破格なグローバルプロジェクト!

工学院大学附属中学校・高等学校のブログをみると、日々タイやカンボジア、シリコンバレー、沖縄で高2生がプロジェクト学習をしている様子が、頻繁に更新されています。どうやら、一般の学校の修学旅行に相当する教育活動のようです。

Pg

★このグローバルプロジェクトは、同校ブログによると、「国連が定めたSDGsの17目標の中からそれぞれの国や地域が直面する課題を学び、その解決に貢献するための取り組みを目指します。訪問するのは沖縄・カンボジア・タイ・アメリカの4か所です。ハイブリッドインターナショナルコースでは、現地の起業家が直面する社会問題の解決に挑む「MoG(=Mission on the Ground)」をGlobal Projectとして行います」とあります。

★SDGsのゴールデンゴールズの探究とその創造的問題解決のために、高2生が一か所に訪れるのではなく、それぞれの問題意識によって地域を選択して動いているようです。

★もともと高1~高2にかけて「探究論文」をじっくり練り上げてきました。それゆえ、高2生は、自ら課題を見つけ、自ら見つけた課題だからこそモチベーションを内燃し、探究し、フィールワークをしながらその都市の人びとといっしょに問題解決していけるのでしょう。

★工学院の探究とは論文やレポートを書いて終わではなく、フィールドワークの中で、その地域や都市の人びとと共に考え、解決を模索するオーセンティック(実際的)なプログラムです。しかも、その地域や都市は国内外両方で行えるのです。このとき重要なのは、多言語によるコミュニケーション、理性的なコミュニケーション、そして何より情意的なコミュニケーションの統合された高次コミュニケーションです。理性的なコミュニケーションには、知識・理解・応用・論理としての思考力が必要です。情意的なコミュニケーションには、意外にも批判的思考力と創造的な思考力が必要なのです。問題解決にはパッションとプレイフルな感情の側面が必要だからです。

★工学院は、ふだんの授業の80%がPBLです(外部団体に質をモニタリングさせるアクレディテーションを行っています)。80%!そんな数字まで、教育を科学するという視点で、ちゃんとリサーチしているぐらいです。このPBLの授業のベースは、この高次コミュニケーションを醸成することも目的です。

★授業と探究、教育活動などが有機的に高次コミュニケーション能力によって学びの循環が出来上がっているのですね。

Gp

★ブログを見ると台湾の報告もありました。あれっ?グローバルプログラムには、台湾のプログラムはないなあと思い、そのページを開いてみました。するとそこにはこうあります。

「工学院大学が提携しているアジアの工科系大学(南台科技大学・ダナン工科大学・フィリピン工科大学)との国際学会に、昨年度から高校1年生の有志を招待していただいております。今年の当番校は「南台科技大学」。ということで、希望者の中から男女8名が選抜され、12日に台湾入りしました。」

★なんと、これは高2のグローバルプロジェクトとは違う高1のグローバル大学連携のプログラムだったのです。

★夏は、中3が全員オーストラリアか米国で海外研修を行っていたはずです。それ以外に高1や高2は3か月留学を実施しています。国際コンクールでシンガポールやニューヨーク国連で活躍する生徒もいます。

★ランドスクエアの加盟校ですから、世界中のエスタブリッシュスクールに行ったり来たり交換留学もあります。中3がオーストラリアに研修でいけば、そこの学校の生徒が20人くらいホームステイにも訪れます。

★一般の学校では、こんな景色はないでしょう。メディアも最先端のイノベーションを追跡しているNews Picksのような雑誌社から取材が来るぐらいです。大学合格実績の切り口しかないような受験雑誌の場合、この景色の意味がわからないようですが、日本の受験ジャーナリズムの常識は世界の教育から見れば非常識なのかもしれません。

★そのギャップに、教師も悩まないわけではないですが、≪Z世代≫の生徒の未来に想いを馳せれば、何をやるべきかは自ずとみえてくるとは教務主任の田中歩先生。≪Z世代≫の生徒の希望が、ここにあるのは、そのような先生方の情熱があるからでしょう。明日12月15日、工学院大学新宿キャンパスで、そのような工学院の見えざる本質的教育とその成果を語ります。

|

2019年12月13日 (金)

第13回 模擬授業と授業評価

■2019年12月13日(金)3時限目

テーマ)模擬授業を通して形成的評価の応用として授業評価をつくる
サブテーマ)
・10の学習者像は授業評価に含まれるか?
・問いを生み出す「学習ツール」の意味は?
・生徒の複眼思考と情意的豊かさを活用できる授業か?
・思考スキルと問いと授業評価との関係は?

資料)
・TOK概要

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

|

2つの「思考コード」と学校教育法 新学習指導要領は着々と実現していく

★今回の文科省の大学入試改革は、あたかも大学入学共通テストの話であるかのようにメディアはすり替え、批判ではなく、揶揄しています。まるで勝てば官軍、鬼の首でもとったように。自分たちは民主主義のリーダーであるかの如くです。

Dsc06651

(なんだかんだといって、ブルームを超えられないのが現状。ブルームのタキソノミーのアップデートは多くの学者によってなされていますが、この本に還ってみれば、そこには豊かな発想のヒントがいっぱいあります。首都圏模試センターのすばらしいのは、この原点に立ち還り「思考コードを積み上げていき、アップデートしていっているという見識です。首都圏模試センターの「思考コード」を語りながら、ここをきちんと論じている識者はまだ一人もいません)

★大学入学共通テストの正当性・信頼性・妥当性を世論が判断するのは、もちろんいいのですが、それが教育改革をも揶揄する方向に導くとしたらそれは違います。あまりそれをやりすぎると、民主主義をジャーナリズムが壊してしまうことになりかねません。というのも、民主主義は法の支配をベースにしています。それがいやだというのなら、それは民主主義ではなく、民主主義と共に生まれてきたジャーナリズムはジャーナリズムと呼ばれなくなるでしょう。

★今回の大学入試改革は、もともと高大接続教育改革です。2007年に改正された学校教育法に基づいた学力の三要素、創造性、批判力、社会貢献への使命をきちんと学習指導要領に盛り込むことが本意です。それによって、授業や評価法などが変わらざるを得ないのですが、そうなると大学入試も、そこに接続するように変わるという話だったのです。

(学力の3要素、創造性などについて規定されている学校教育法の条文:参考)

第二十一条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

第二十九条 小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。
(平一九法九六・旧第十七条繰下・一部改正)

第三十条 小学校における教育は、前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
② 前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

第五十条 高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。
(平一九法九六・旧第四十一条繰下・一部改正)
第五十一条 高等学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること。
三 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと。

★ただし、学習指導要領は概要を語っているだけで、その具体的な方法や実践については各学校や各教員に任されています。統一するための議論は存在していないのです。だから、バラツキはありますが、法に基づいて着々と進んでいくのです。実践する側は法の枠組みの中で自由にできますから。もちろん、教育委員会など面倒な面もありますが、読み替えて突破していくことができます。

★最近話題になっている「思考コード」も実は、この学校教育法を無視するものではありません。むしろ包括的になっています。ただし、みえにくいのは、今のところテストやレポートを評価する「思考コード」が前面に出て、各学校で活用されている授業を評価する「思考コード」があまり世の中で注目されていないからです。

★ところが、昨日ご紹介した順天学園のような動きは、この2つの「思考コード」(順天自身はルーブリックという用語を使っています)をきちんと使い分け統合しているのです。それによって、順天の授業や評価の方法もアップデートしているのです。

★メディアは、ここの重要性をむしろズームアップする必要があるのですが、スキャンダルな記事でなければ売れないので、しかたがないのでしょう。希望があるのに、希望を見て見ぬふりをする。ネガティブな側面しか強調しない。これでは、日本の将来は危ういですね。

★そうはいっても、いつ学校教育法は変わったのだといわれるのでしょうか?もし学校教育法が悪法だとしたら、この法律の成立過程をリサーチし、覆す理論をつくり、運動しなくてはいけません。民主主義では悪法も法なのです。ここを無視すると、もはや民主国家は機能しません。

★しかし、この学校教育法を批判するのは相当難しいと思います。悪法だとは思えないからです。したがって、この法をベースにした動きまで、揶揄するのは、考えたほうがよいと思いますよ。

|

2019年12月12日 (木)

順天学園 指導要録変更に伴う「本質的アップデート」着々

★昨日、順天学園は、校内研修会を開催。なぜかそこにちょこんと立ち会うことになりましたが、それは今までにないすばらしい経験でした。テーマは、新学習指導要領における生徒指導要録が変わることに伴う多面的・総合的な評価を生み出すためにどのようにルーブリックをつくり、それを活用していくかということだったと思います。

Dsc06675

★トップダウンで決まっていくというのではなく、4側面の評価プロジェクトがたたき台をつくって、教師全体と議論をし合いながら、同時に各教科で作成していくというプロセスでした。

★生徒指導要録というのは、大学入試のときなどに提出する書類にもなるものですから、極まりなく重要なことはいうまでもありません。その書き方の正当性・信頼性・妥当性をプロジェクトチームが多角的に検討し、提案をしていきます。

Dsc06691

★今回の新学習指導要領では、学力の3要素を明快に表現し、それに基づいた観点別評価を指導要録に盛り込むようになっています。ただフォーマットが変わるというのならそれほど議論は必要はありませんが、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学びに向かう態度」をそれぞれ評価していかねばなりません。

★すると、この3要素の評価をどのように測定していくのか、ミニテストの在り方、定期テストの在り方、教育活動の在り方のシステムも変更しなければならないのです。もし、今までと同じやり方で行っていった場合、ルーブリックが使いにくいので、煩雑になり、ただでさえ忙しい先生方の業務が破裂します。

★しかし、先生方は、知識技能・思考力中心の評価だけではなく、もっと多面的に生徒の才能を見出すことができるようになるのは歓迎です。そのためにはルーブリックは有効だと考えているので、そこはなんとかしようと信念を共有しているのです。

★しかも、すでにできあがっているルーブリックの使い方をみていてもすごいところは、生徒とそれを共有しているところです。ですから、自らの弱み強みを生徒自身も見出すことができるわけです。

★これが順天学園の強さです。どういうことかというと、主体性を創り出す高次コミュニケーション能力が教師同士、教師と生徒、生徒同士で充満しているのです。

★高次コミュニケーション能力とは、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」という認知的側面はもちろんのこと情意的側面も充実していることが条件です。

★この両側面が統合されているからこそ議論ができるのです。議論は白熱してきます。それは成熟した情意的マインドセットがそうさせるのです。

★成熟したマインドセットとは、受容と発信、組織化と個性化の動的平衡が保てるということです。そして、その維持のために価値づけを吟味できる正義の配分もできるということです。

★テストや教育活動の処理の手続きの変更が、今までの蓄積を生かしながら行われていきます。それに関連する授業や行事などの仕掛けも変わっていきます。新しい学習ツールやICTの活用、PBL授業の活用など、学力の3要素をどのように盛り込み、どのように測定していくのかというシステムを考案し、実行していくことで、今までのリソースを生かしながらアップデートが形作られていくのです。

★本物の教育改革とは、こういうことを指すのだと確信しました。

★12月15日カンファレンスでは、そのようなすさまじい教師チームによる順天学園の教育の成果について長塚校長から話を聞きたいと思います。

|

2019年12月10日 (火)

21世紀型教育機構の教育の質(07)第4期ブレイクスルーへのジャンプの準備(2017年~2020年) 。≪Z世代≫の影響で理念アップデート。

★21世紀型教育機構の加盟校は、理念と6箇条からなるシンプルな規約を尊重しています。理念には「21世紀型教育機構は、ゴールデンルールにのっとり、グローバルゴールズを解決できるグローバルシチズンを育成するクリエイティブスクールを応援する。」とあります。

Photo_20191210174301

★ゴールデンルールとは、『マタイによる福音書』7章12節,とルカによる福音書』6章31節にある「あなたがしてもらいことは、他者にもおなじようにしなさい」という黄金律を指しているのですが、これはNY国連が、平和のギャラリーに陳列しているノーマン・ロックウェルのモザイク画に刻まれている言葉です。国連は、この理念はキリスト教にとどまらず、宗教、民族、人種、性別などを超えて世界に共通する倫理であるとしています。21世紀型教育機構は、国連の説明する意味でゴールデンルールを採用しています。

★グローバルゴールズは、2016年にグローバルイシューという文言に変えて採用しました。グローバルシチズンを育成するクリエイティブスクールとは、要するに生徒1人ひとりみなクリエイティブクラスにするという意味です。

★ですから、外向きには、よくファーストクラスからクリエイティブクラスへというフレーズで機構は表現しています。

★20世紀社会は、学歴社会によって、一握りのファーストクラスが世の中を牛耳ってきたわけで、教育格差、経済格差を生みだしてきた社会システムです。その中で、SDGsのグローバルゴールズを達成しようと思ったら、まず世界の諸問題を生み出してきた20世紀社会そのものを改めなくてはなりません。

★一遍には無理なので、21世紀型教育機構は、自分たちができるところは何かから出発しました。それは、20世紀社会を強化してきた20世紀型教育を21世紀型教育にシフトすることだということになったわけです。教育を変えることは私立学校はできる。公立学校にはなかなかできない。そこで動き始めたのです。

★それが先の理念だったのですが、21世紀型教育研究センターが開設され、動き始めると、予想以上に≪Z世代≫の生徒の動きや考え方が斬新でした。未来は≪Z世代≫の生徒を待っているわけですから、他人ごとではありませんから、当然と言えば当然です。

★そして、それによって、機構の理念の意味がさらにアップデートしました。20世紀社会の根本は、自然と社会と精神の分断社会でした。だから、経済優先で、環境は破壊され、精神は病んでいきました。その悪循環は今なお続いているどころか猛威を振るっています。

★≪Z世代≫の生徒は、この20世紀社会を根本から変質させない限り、SDGsの活動は対処療法に過ぎないことを見破りました。だから、<新しい学びの経験>を自分たちでどんどん進め起業する中学生も出現してきたのです。

★G-STEAMという教育は、今や≪Z世代≫の生徒が自ら創り出しているようなものです。ほとんどの大人はG-STEAMの重要性を語ったとしても、英語力で≪Z世代≫の生徒に太刀打ちできず、STEAM関係もそうです。ですから、21世紀型教育機構の理念は、≪Z世代≫の生徒の未来に照準をしっかり合わせてアップデートしなければならなくなったのです。

★たしかに、上記の図のように、自然と社会と精神は循環する社会になっていくのですが、これではまだスローガンです。具体的に何を学ぶのか研究するのか?それが問題です。大学入試改革も大切ですが、大学入試改革があろうがなかろうが、社会は変わるのです。≪Z世代≫が変えるのです。今のところ大学入試改革は、延期されて実施されたとしても、分断社会を循環社会に変容するほどのパワーはありません。まあやらないよりましという程度でしょう。

★≪Z世代≫の生徒は、そんな悠長な改革を待っている時間はありません。自分たちが立ち上がらなくてはと思っている生徒も多いのです。21世紀型教育機構は、大学入試改革にもエールは送りますが、重要なことは21世紀社会をサポートする<新しい学びの経験>を創ることです。一体それはなんでしょう。12月15日、共有いたしましょう。

★今のところ、ここまで踏み込む団体はありません。経産省の未来の教室でさえも、むしろ絶対に踏み込まないでしょう。20世紀社会のマイナーチェンジを望んでいるからです。その範囲内で、社会は変わっているようにみえるので、それで安心している人はたくさんいますね。どうやら、日本はこのままいけばタイタニックです。12月15日は、タイタニックを回避する方法や政策を心から期待し、自分でも考えている方々が集まると思います。

|

21世紀型教育機構の教育の質(06)第4期ブレイクスルーへのジャンプの準備(2017年~2020年) 。≪Z世代≫の生徒も参加。

★21世紀型教育研究センターは、画期的なセミナーやフォーラムを行っています。今年5月富士見丘で、「グローバル教育カウンシル」を開催。加盟校の教師対象の研修で、文化学園大学杉並のDDコースのリヨ・ホイットニー校長によるミニPBLワークショップをはじめ、各学校の英語教教育や世界標準の思考力育成プログラムに関連するワークショップを行いました。カナダのBC州の学びと日本の創意工夫した学びを互いに体験し、リヨ校長は日本流儀の考え方を尊重し、日本の先生方はドライビングクエスチョンというSTEAM型の問いの作成を学ぶなど、グローバルな学びのセッションを仕掛けたのです。

Dsc03390_20191210065901

★6月には、順天の理軒ホールで、「未来を創る学校フォーラム」を開催。このイベントから、いくつかの加盟校の≪Z世代≫の生徒が本格的に参加するようになりました。

Dsc07087

★≪Z世代≫の生徒自身が先生方のチームに入り込み、ジェネレーターとして「未来を創る学校」について考え方を編集していきました。生徒の自由な意志を尊重する学びの環境やアクティブラーニング・PBL授業の比率をもっとあげること、学習指導要領にこだわらないもっと世界をみたプログラム、学校間の境界を超えること、SDGsをはじめ世界に貢献できるもっと現実的な学びなどといった未来を創る学校のアイデアを先生方と議論していきました。

★ここから≪Z世代≫の生徒の学校間の境界線を超える活動も始まりました。SDGsの動きは、学内の授業の中で行われているだけではなく、もっと手を広げていかなければならないというのは、なるほど目からウロコでしたが、その行動力がパワフルなのに驚愕でした。

★9月には静岡聖光学院で、「グローバル教育シンポジウム」を開催。静岡聖光学院は、急激にグローバル教育3.0に突き進み、シンポジウム開催時に、同校独自の海外ネットワークを集め、国際サミットを行っていました。それゆえ、東南アジアの≪Z世代≫の生徒も参加してシンポジウムは進行したのです。

Dsc00626

★教育研究センターの方針は、教師も生徒も共に<新しい学びの経験>を創っていくことを大切にすると同時に、国際的なネットワークを広げて、本物の世界標準の学びを創出していくことです。

Dsc02830

★10月前半聖学院で「未来を創る教師セミナー」を開催。PBL授業を生み出す学びのデザイナー兼ファシリテーターとしての教師のスキルを共有しました。ここからは、一般公開で、多くの学校・教育関係者とワークショップを行いました。また、夏季中にカンボジアで起業活動を行ってきた≪Z世代≫の生徒も参加し、自分たちのような生徒が生まれるには、どんな教師の力が必要なのか気づきの多いセミナーになりました。

Dsc03952

★10月後半工学院八王子キャンパスで、「21世紀型STEAM教育フォーラム」を開催。マイクラをつかってクリエイティビティを発揮していく体験を参加者と行っていきました。学校の教師・教育関係者が各チームにわかれ、そのチームのジェネレーターとマイクラ操作を工学院の生徒が行いました。彼らは≪Z世代≫クリエイーターで、すでに様々な賞を受賞しています。しかも、シンガポールでSGDsのある問題を解決するスーパーアプリを提案をして優勝してきた生徒もいます。

★中1と中2の生徒でしたが、クリエイティビティのみならず、論理的に話を展開していくのも得意でした。もちろん、英語力もすさまじい。ICTと英語力では、実は大人もかなわなくなっているという現実にこれまた驚愕でした。

このような21世紀型教育機構の≪Z世代≫の生徒の成長はいかにしてうまれるのか、12月15日のセミナーで共有いたしましょう。

|

2019年12月 9日 (月)

21世紀型教育機構の教育の質(05)第4期ブレイクスルーへのジャンプの準備(2017年~2020年) 。21世紀型教育研究センター開設。

★2017年~2020年は、21世紀型教育機構は、各加盟校の教育の質を海外名門校に照準を合わせてさらに高めていくために、以下の3つを実行しています。

Ⅰ <アクレディテーション>という実証的手法でエビデンスを共有し改善。

Ⅱ <グローバル教育3.0>というアップデートに向けて改善。

Ⅲ <21世紀型教育研究センター>(リーダー:聖学院児浦先生、工学院田中歩先生)を新設し、会員校のための「PBL研修」、「未来を創る学校のフォーラム」及び一般公開向け「PBL研修、STEAM研修」など夏期休暇を除けば、毎月のように開催し、ソフトパワーを強化。

Dsc03975_20191209213301

(10月工学院八王子キャンパスで開催した「21世紀型STEAMフォーラム」で。企画・運営した教育研究センター及び機構サポートメンバー勢揃い)

★いわば、この2017年~2020年は、21世紀型教育機構のソフトパワーを強化する改善期なのです。

★この不思議な組織は、いわゆる株式会社や学校法人のような組織ではありません。ナチュラルオーガニゼーションというべき、有機体的組織です。多様なアイデアとその実践の共有により新たなプログラムができ、そこに≪Z世代≫の生徒まで参加し、成長していきます。そのエビデンスをアクレディテーションという実証的手法で明らかにしていくわけです。弱みを強みに転換する分析をするわけです。そして、教育センターが音頭をとって研修していくわけです。

★教育と成果の因果関係は、実はわかりにくいのですが、21世紀型教育は、今までやっていないことですから、その結果、今まで関心をあまりもたれてこなかった領域で成果があがったかどうかは実にビビッドに生まれてきます。

★たとえば、クリエイティブラーニングやプレイフルラーニングが織り込まれているPBL授業によって、Fabラボのコンクールで優勝したり、平和を訴える動画づくりでNY国連で賞をもらったり、難関校常連の模擬国連で活躍したり、パラリンピックのボランティア活動やSDGsの活動がメディアで取り上げられたりしているのです。

★20世紀型教育からよく揶揄される大学合格実績も、AO入試や公募推薦でグローバル教育3.0やPBLによる探究活動を通して、上智やICU、立教、青山などにたくさん入り始めています。海外大学も世界大学ランキング100位以内の大学に合格する生徒が各加盟校から出始めました。

★偏差値というものが、私立中高一貫校の教育の質とは相関がないことが次々と証明されていくことでしょう。なんといっても、偏差値は20世紀型教育の質を測るものです。21世紀型教育の質はルーブリックによって新たに測定しなければならないのです。それがようやく21世紀型教育機構から始まったわけです。この歴史的な画期的な事態に気づいている人は、まだまだ少ないのです。

12月15日のカンファレンスで、アクレディテーションによって測定できる具体的な教育の内容を登壇者と共有いたしましょう。

Photo_20191209220001

|

2019年12月 8日 (日)

21世紀型教育機構の教育の質(04)第4期ブレイクスルーのときがきた(2017年~2020年) 。新ビジョン<グローバル教育3.0>へ準備始まる。

★BTⅣ(第4期ブレイクスルー:2107年~2020年)が本格的に起こるのは来年度ですが、そのための準備として、2017年からアクレディテーションによって、21世紀型教育の質を加盟校同士が切磋琢磨し始めたわけです。そして、その目指す目標は世界の名門校であるエスタブリッシュスクールと対等の教育の質をまず完成させることです。国民国家的見識に立つのではなく、世界市民的見識のポジショニングに立つということです。

Ge30_20191208171101

★そうすること以外に、グローバル風内向き学歴社会でジェンダーギャップを生みだしたり、弱者バリアフリーに対し無配慮である日本社会を変えることはできないのです。歴史は変わります。しかし、それは変える高邁な精神を持った勇敢な人間がいてこそです。21世紀型教育機構は御三家が≪私学の系譜≫の真の継承者をやめたたので、新しい≪私学の系譜≫を生み出すコミュニティを形成しようとしていたのです。

★おそらく≪私学の系譜≫の1人である内村鑑三の精神と親和性があります。

Photo_20191208171701

★内村鑑三の「後世への最大遺物」という書がありますが、同書は未来を創る人間としていかなる道があるのかを説いた書です。金持ちになって、弱き者に施すのもよいだろうし、文学者になって、作品を世に広め幸せな気持ちを共有するのもいいだろう、教師になって、未来を創る子供の教育に努力するのもよいだろう、医者になって病に苦しんでいる人々を救済するのもよいだろう。しかし、そのような人材を生み出すだけでは、まだまだ後世への最大遺物とはいえないと内村鑑三は語っているのです。あの偉大な中村哲さんと同じですね。医者だけでは救えないことがたくさんあるのだと。

★内村鑑三も中村哲さんもクリスチャンですからシンクロするのかもしれませんが、最大への最大の宝物は、「高邁な精神をもった勇敢な人間」になることだというのです。そして、これはだれでもが成れるというのです。

★ですから、21世紀型教育機構は、研究者になるのもいいし、医者になるのもいいし、ビジネスマンになるのもいいし、教師になるのもいいし、それはそれぞれの才能を生かすことは大切ですが、どの生徒も「高邁な精神をもった勇敢な人間」になる環境=21世紀型教育を創出するのだということを決断したわけです。

★そして、そのために、上の表にある<グローバル教育3.0>を2021年から実現していこうということになったのです。英語も出来るだけ多くの生徒がCEFR基準でC1以上なるような英語教育をしようと。そうしなければ、自分の哲学を内村鑑三や新渡戸稲造、岡倉天心のように英語やドイツ語、フランス語で海外の人びとと議論や対話ができないと。

★議論や対話ができるからこそ平和作りを前進させることができるのです。

★学びは、もちろん探究型ですが、日常の授業もそうしなくてはなりません。特別な時間だけ探究の時間ではなく、学びの構えは探究が基本となる。それが当たり前となるのです。そこにSTEAMの要素が含まれるのは、AIと共生社会がやってくる以上、それは必然です。聖学院と工学院、三田国際、和洋九段女子、聖パウロ学園はこのような状況になってきています。

★グローバルネットワークは、日本から海外に学びに行くだけではなく、海外からも日本に学びに来てもらい、相互に学ぶ拠点づくりをしていくということです。それは世界中どこに行ってもそうです。このことをグローバルイマージョン(GI)と言っています。GIは、富士見丘、八雲、工学院、静岡聖光学院、順天、聖徳、文化学園大学杉並ではかなり進んでいて、いつも学内に留学生が学んでいるシーンがでてきました。

★特に、八雲と工学院が加盟しているラウンドスクエアの存在はグローバルイマージョン実現を促進する大きな存在です。

★Webに関しては、SNSの世界を自在に活用するのはもはや当たり前で、スーパーアプリやプログラミングを生徒自身が作成したりAIを活用しながらソフトパワーを育てていく環境にしようと邁進しています。

★思考力は、ロジカルシンキングだけでよいのではなく、デザイン思考だとか最近は呼ばれていますが、クリティカルシンキングとクリエイティブシンキングまで育成する時代がやってきたのは言うまでもありません。多重知能のハワード・ガードナー教授が注目したり、STEAMのAで最近注目されているのは、文化人類学者レヴィ・ストロースの「野生の思考」です。もともとこの発想はJ.J.ルソーに通じるでしょうから、ピアジェにも通じます。ということは、機構が最も影響を受けているMITメディアラボの見識にも通じます。ここらへんは、21世紀型教育研究センターのリーダーである児浦先生、内田先生、田中歩先生、田中潤先生、アクレディテーション委員会の鈴木氏、福原氏、神崎氏などと議論を重ね、学問的あるいは理論的背景を耕しています。機構の知の裾野が広がり、深化をしてきているのは、彼らの存在が大きいのです。実践と理論の両方を統合できる天才チームです。

★そして、大学入試の制度に関しては、私たちはすでに大学入学共通テストは過渡期で、日本の大学入試ももはやグローバル高大接続入試にならざるを得ないとはやくから想定していました。2021年の3月には、海外大学進学の成果が今以上に出ますが、日本の大学が海外大学同様世界に広がっているようにならなければならないでしょう。

★そのためには、試験制度が変わらざるを得ません。今のところそんなことはいい迷惑だと多くの現場では語っていて、大学入試改革を阻害していますが、そのつけが東京オリンピック・パラリンピックが終わると同時に急激にまわってくるのに慌てるでしょう。

★偏差値にかかわりなく、京都外語大学のように、海外大学と同じような環境を設定し始めている大学がサバイブしていくことになるでしょう。何せ、研究の目標は大きく3つの分野に絞られていきます。今ある研究分野はそこにむかって学際的に脱構築されながら収束していきます。

★3つの分野とは、宇宙科学、バイオテクノロジー、ニューロテクノロジーということですね。AIをベースとする情報科学はいずれににも融合されています。21世紀型教育機構はこのようなグローバル教育3.0への世界に対応する動きが生まれることを想定しながら、その基礎である5C×PBLを土台としたG-STEAMの教育をデザインしています。

★その具体的な取り組みと、宇宙科学とバイオテクノロジー、ニューロテクノロジーへ向かう新機軸へのアップデートについて12月15日はカンファレンスで各登壇者は語るでしょうし、足りないところは、パネルディスカッションで引き出して、みなさんと共有したいと思います。そしてなぜ共有せざるを得ないか、その<意義=理由=バリュー>についてもいっしょに考えて行ければと思っています。

|

富士見丘 世界に目を向け世界から日本を見つめる女性が羽ばたく。

★昨日、富士見丘は学校説明会とチャレンジ入試を開催。学校の人気というのは、ニューロマーケティング的には、ブランディングが前面にでていて条件反射的に選ばれるパブロフ型の人気と大学合格実績などの目標達成度への期待値が高いというゴール達成型人気とその学校の質を学んで本質を見極める学習習得型人気の3つがあるといわれていますが、富士見丘は学習習得型人気の学校です。

Dsc06473

★ですから、急激に生徒募集が増えるということはありません。しかし、昨日もそうでしたが、受験生と保護者が学校に足を運び、富士見丘の教育の質を自ら学びその良さに共感して入試を決めるという家庭が着実に増えています。今年も昨年よりも多くのチャレンジ入試に挑戦する生徒が参加していました。

Photo_20191208093701

★富士見丘はSGH認定校であるし、21世紀型教育機構の牽引校でもあります。その21世紀型教育はアクレディテーション委員会の評価によると、目標まで高い達成度を年々上昇させています。

★SGH認定校あるいは21世紀型教育機構加盟校ということは、簡単に言えば、教育のポジショニングを世界に設定しているということです。特に女子校ですから、国内のまだまだはびこるジェンダーギャップを解消するには、そのギャップを生み出してきた国民国家的な閉鎖エリアに位置していては、国内の学歴社会の中で椅子取りゲームをする競争社会の中で翻弄されます。

★そこで、イギリスやオーストラリア、米国、ドバイなどの高校や大学と姉妹提携に奔走し、SGHのプログラムとして、シンガポール、台湾、マレーシアにフィールドワークしながら、世界問題を世界の高校生や現地の人と共有し、いっしょに問題解決を考案していく探究も行っています。

Dsc06506

★富士見丘理事長・校長の吉田晋先生ご自身も、海外留学の経験もあり、英語も堪能ですから、その教育ネットワークは、国内だけではなく世界に広がっています。つまり、教育のポジショニングを世界に設定しているのです。その日本においては革新的で、世界のエスタブリッシュスクールとしては当たり前の境地を、国内の多くの受験関係者は見ることができません。そこを足場にしている保護者も見ることができません。

★それゆえ、国民国家の学歴社会の中で、満足している受験関係者やそこを足場にしている保護者にとっては、御三家という日本の名門校が世界の名門校と教育の質でかなりのギャップがあることは見えないのです。

★しかし、吉田先生は、そんなマーケット以外に、新しい保護者の存在が増えている手ごたえを感じています。海外にいる帰国生の中で、日本の塾にいかず、現地校でのびやかに学んでいる帰国生は、国内で偏差値で競争している日本の教育に疑問をもっています。実際に吉田校長をはじめ、同校の先生方が海外に飛び、そのような保護者と対話をして、ファン層を掘り起こしています。

★実際、中3段階で英検準2級以上を75%が取得し、50%は2級以上を取得しています。帰国生は準1級、1級を取得してしまいますから、中学から本格的に英語を学んでいる生徒が、準2級、2級を中3段階で取得していくのです。

★吉田先生は、帰国生の現地校でのびやかに学んできた環境をそのまま富士見丘で設定しています。ハイレベルな4技能英語の環境、たとえば、模擬国連部の活躍はその環境の質の良さを象徴しています。一方通行型の講義形式の授業ではなく、PBLという探究型授業も設定し、1人1台のタブレット型ラップトップのICT環境も設定しています。

★海外の現地のエスタブリッシュスクールでは、このような環境は当たり前なのです。日本の1条校のIBスクールでも一握りのコースの生徒しかこのような環境を設定していませんが、富士見丘はすべての生徒がこの環境を共有しているのです。

★英語もICTも、小6まで教育でほとんど享受してこなかった中1も、富士見丘に入学してから4技能英語×探究型授業×ICTという学びの環境を楽しんでいるというプレゼンテーションがありました。

Dsc06555

★プレゼンテーションは、英語だけではなくあらゆる教科や探究科で鍛えられていますから、入学して9カ月が経とうとしている中1生にとってはお手のものという感じでした。もちろん、PPTの作成も自分たちで編集し、デザインしています。

★アクレディテーションの目標達成度というスコアは、一般に公表されていませんから、目標達成型の人気はまだ現れていません。そこはやはり学習習得型人気に頼るところですが、同校サイトには、12月2日現在での推薦とAO入試による合格者数が公開されています。たとえば、大学合格実績実績を重視するかたにとって気になる早慶上理GMARCHグループの大学の実績は次の通りだそうです。

早稲田大学     4名
上智大学      6名
国際基督教大学   1名
青山学院大学    4名
中央大学      3名
法政大学      2名
学習院大学     1名

★卒業生数94名ですから、22%がこのようなグループの大学にこの時期に入っているのです。上智大学6名、ICU1名は、当然4技能英語レべルが高いことは必須条件です。

★そして、一体自分は何を研究し、それがどう社会に貢献できるのか、探究科で育んだ力がモノを言います。ICTは、世界で議論する時、ICTを活用するのは当たり前ですから、ある意味英語とICT、探究は世界の共通の学びの構成要素でしょう。

★どうやら、学習習得型人気に目標達成型人気も加わり、応募者数が毎年増えていく可能性が見えてきました。吉田先生をはじめ、同校の教師も生徒も世の中がどんなに反動的な教育に揺り戻されようとも、自分たちの教育へ自信をもち邁進する気概を感じた説明会でした。

そして、まだ教育の質が海外名門校を超えてはいませんから、これから次のステージとしてさらなる教育の環境を仕掛けていくでしょう。その新機軸とは?12月15日、21世紀型教育カンファレンスで吉田晋理事長・校長が語ります。

 

|

2019年12月 6日 (金)

第12回 形成的評価と問いの関係

■2019年12月6日(金)3時限目

テーマ)「鎖国と外交」がテーマの文章から問いを作り、形成的評価との関係を考察。

サブテーマ)
・10の学習者像は形成的評価に含まれるか?
・問いを生み出す「学習ツール」の意味は?
・思考スキルと問いと形成的評価との関係は?

資料)
・TOK概要

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

|

21世紀型教育機構の教育の質(03)第4期ブレイクスルーのときがきた(2017年~2020年) 。このとき新しいIB校も次々設立。

★2017年に第3期ブレイクスルーが起こり、21世紀型教育機構の加盟校全体が21世紀型教育の質を足並み揃えて御三家以上になりました。しかし、この機構の動きは、歴史の要請に連動して動いていますから、何も加盟校だけが質を高めているわけではありません。12月15日のカンファレンスでは、このへんの事情もパネルディスカッションで議論していこうと思います。

Photo_20191206063002  

★さて、21世紀型教育機構は、アドミッションポリシーとして、新タイプ入試の中でも思考力型入試や自己アピール型入試、英語入試を行ってきました。入試問題は学校の顔ですから、当然、思考力中でも論理的思考・批判的思考・創造的思考及びC1英語力が育つカリキュラムを実践してきました。それゆえ、教育の質も向上してきたのですが、この時期になると、首都圏の3分の1である120校以上が新タイプ入試を行うようになりました。

★これもまた、歴史の要請ですから当たり前です。そして、そのような学校は、同じようにカリキュラムの向上も果たしているのです。21世紀型教育機構のようにC1英語やPBL100%、ICT1人1台を必ずしも目標にしていませんが、そのような学校の21世紀型教育の質は男女御三家を超えるようになったのです。

★受験業界が真っ二つに分かれました。20世紀型教育の伝統こそが偏差値できちんと測れる普遍的学力で時代を超えるのだという保守派と普遍的教育などという絶対的価値観こそ学歴社会や塾歴社会を堅固にし、教育格差ひいては経済格差を生み出す元凶ではないか?<新しい学びの経験>を生みだし生徒の内生的成長を生み出していこうという革新派の二つです。

★時代は行きつ戻りつ進みますから、どちらが勝利するかはそれこそ歴史が決めることでしょう。しかし、この時期(2015年から2019年)1条校でIBを認定される学校が17校(34校あるうちの50%はこの時期に開設します)も誕生するのです。

★1条校のIB校といっても、その学校の生徒が全員恩恵を浴するのではなく、IBコースの生徒のみですから、そのコースだけの教育だけだと、海外名門校に迫る勢いなのですが、全体としてみれば、そうはなりません。それでも、21世紀型教育機構が測定する21世紀型教育の質のルーブリックで推計すると目標の70%は満たしています。

★実は、21世紀型教育機構は、加盟校の全体が足並み揃えたので、このアクレディテーション(品質の保証認定リサーチ)のルーブリックを外部委託して作成し、これも外部のアクレディテーション委員会を結成して、そこに認定作業を毎年行ってもらっていますが、それが始まったのは、第3期のブレイクスルーが起きたときからです。

★これによって、加盟校全体(アクレディテーションを受ける準備段階の候補校の学校も2校あります。)が毎年21世紀型教育の質を向上させる努力をしていくようになりました。そして、グラフにあるように、着々と向上しているのです。

★しかしながら、機構の加盟校のみならず、革新派の学校は、21世紀型教育の質を成立させているわけです。ただ、そのような意識を明確にしているわけではないでしょうし、それは保護者の方もそうです。それゆえ、革新派の教育の質の違いなどは、実際には見えないというのが現状です。それよりも、保守派の学校と革新派の学校の違いは、未だに大学合格実績や偏差値で認識され、本来の教育の質を見極める段階にはいたっていないのも現状です。

★しかし、首都圏の中学受験生50,000人の4%の2,000人はそれに気づいて加盟校に入学するわけです。これが歴史を変えるほどのパワーになるのかどうか、やはりそれもまた歴史が決めるのですが、意思決定主体者は受験生や保護者です。本質はなかなか見えないものです。その本質をどうやって見抜くのか、そのヒントを12月15日、工学院大学の新宿キャンパスで行う「21世紀型教育カンファレンス」で共有しましょう。

Photo_20191206070701

 

|

2019年12月 5日 (木)

ノートルダム学院小学校 <新しい学びの経験>=Peer Instructionを開く(2)

★松谷先生の社会科の授業も、梅下先生の理科の授業同様、PI(Peer Insruction)を導入していました。また驚いたことに、コンセプテストは、トビー先生が英語で語りかけていました。これも理科の時と同じです。

Dsc06327

★日本のある輸入品が急激に減っている年が示されているグラフを提示し、この輸入品はなんであるかを多肢選択から選ぶ問いでした。“import”という英単語がわからなかったようですが、それを察知して、梅谷先生がさっと図を提示しました。

Dsc06331

★生徒たちはすぐに了解し、選んだ選択肢の番号をクリックししました。すると、みんなの反応が、瞬時にグラフで表現されました。

Dsc06337

★「石油」が大半でしたが、「生糸」や「車」なども選ばれていました。松谷先生は、梅下先生同様、この段階では講義はしません。まずは、Peer Instructionをする機会を設けました。その際に、幾つか他のデータを示し、多角的に考えてみるとどうなるか問いかけました。

Dsc06348  

★一瞬にして白熱教室となりました。そして、もう一度選択肢を選び直します。すると、今度は「石油」を選ぶ生徒が増えました。

Dsc06358

★松谷先生も、ロイロノートで、生徒1人ひとりの自分が選んだ理由を書き込んだものを回収していましたから、それを使って、なぜ「石油」を選んだのか、幾人かの生徒にプレゼンする機会を設定しました。

Dsc06370

★1941年は、日本が第二次世界大戦に突入した時代で、当時石油の最大輸入国であったアメリカが経済制裁を行ったからという見事なプレゼンがなされていました。

Dsc06371

★歴史的因果関係をフローチャート化してわかりやすく説明してくれました。

★これには松谷先生も、驚愕し、もう説明する必要がないくらいだねと讃えました。このようなグラフの急激な異変は、自然に起こるというより、何か人為的な戦略が働いているものです。松谷先生は、このグラフの捉え方を通して、第二次世界大戦にかかわらず、国と国が敵対関係になったとき、同じようなことが起こるという歴史的視点を生徒と共有していくのです。

★なるほど、コンセプテストは、その問題を通してさらに大きなあるいは普遍的な何かを考えるトリガークエスチョンだったのです。

★ノートルダム学院小学校の授業は、ある一つの知識から多面的で深い思考にまで広げていく<新しい学びの経験>ができる対話型・議論型・プレゼン型の価値あるものだと了解。これが、小学生にとって大事な学びの経験でることは、説明するまでもないでしょう。

|

ノートルダム学院小学校 <新しい学びの経験>=Peer Instructionを開く(1)

★ノートルダム学院小学校は、五山送り火の観覧スポットである北山通り沿いにあるノートルダム女子大学と同じ敷地内にあります。そこは、京都でも、祇園や嵐山とはまた違う京都らしいエリアです。歴史と近代的な調和がとれた街並みです。

Dsc06278

★そういう独特の空間とあたかもマッチしているかのように、ノートルダム学院小学校の教育は伝統的なカトリック教育と<新しい学びの経験>を開発する革新的な教育イノベーションが巧みに統合されています。

★今回、その革新的な教育イノベーションのシーンを広報部が動画にすることにしたようです。その革新的な<新しい学びの経験>であるハーバード大学のマズール教授が生み出したPI(Peer Instruction)を活用した理科と社会の授業を見学できるというので、そこのシーンだけ立ち会わせていただきました。

★理科の梅下先生と英語科のアレックス先生が連携してコンセプテスト(マズール教授は授業の初めに多肢選択の問題を出題しますが、それが授業のテーマ全貌を見渡すコンセプトを物語る仕掛けになっていて、コンセプトのテストを縮めて「コンセプテスト」と呼んでいます)を英語で投げかけています。

★ノートルダム学院の小学生は6年間英語の学びを十分にしていますから、アレックス先生の英語による英語の説明を聞きながら、問いを理解していきます。

Dsc06297

★生徒たちは、自分のタブレットから回答を選びます。すると、クラスの生徒が応えた選択肢ごとの割合が電子ボードに瞬時に公開されます。

Dsc06308

★砂糖を溶かした水溶液では、どこの部分が最も甘いのかという問いですが、上の部分も真ん中の部分も底の部分もみな同じ甘さであるという選択肢が大分を占めましたが、そうではない回答もたくさんあるのが一目でわかります。

★梅下先生とマズール教授の違いは、梅下先生は、生徒に、選択肢を選ぶと同時に、ロイロノートで選んだ理由を言葉や図で説明させておき、全員分それを回収しておくところです。

★さて、次に、いきなり梅下先生が説明するのではなく、隣の生徒同士議論します。そして、もう一度1人ひとり選択肢を選びます。変えてもいいし、変えなくてもよいのです。

Dsc06311

★すると、圧倒的にどこも均一的に甘いという選択肢が選ばれることになります。生徒たちはその変化をみて、オー!と反応します。対話の重要性を身に染みてわかる瞬間です。

★ある生徒は、はじめみそ汁は放置しておくと、底の方に具などがたまるから、砂糖水も底が一番甘いのではないかと回答したわけですが、友人と議論しているうちに、自分の経験以外に違う経験があることを知り、回答を変えました。

★この後、梅下先生から講義がなされますが、ことは砂糖水の話ではなく、この問いをきっかけに、多様な液体の特色を考える視点を生徒と共有していったのです。これはもちろん、分子や原子などの話に進んでいく伏線としての経験作りでもあります。

★小学校のころは経験から学ぶことは大切です。一方で自分の経験で物事をみたり考えたりするだけではうまくいかにという試行錯誤も必要です。自分のものの見方・考え方が独りよがりでないかどうか、どうやったら検証できるのか、常にその実験方法をみんなで考えるところが梅下先生の理科の授業の特徴です。

★そのとき、PIという手法やロイロノートを活用することで、梅下先生は、生徒の考える過程を可視化し共有化し、なんといっても生徒が自分の推理の誤謬を訂正していく経験を実感できるようにしかけけていきます。このような授業は、今までにはなかったでしょう。経験と知識と思考の循環がどんどん広がっていく<新しい学びの経験>の開発への梅下先生の情熱が創造したものです。

★このような経験と知識と思考を循環させる能力こそ子供たちが未来を生きるときに、最重要なスキルであることは言うまでもないでしょう。それにしても、さりげなくアレックス先生がコラボし、途中で自分の次の授業の準備のためにいなくなっていました。これもまた、他校にはないシーンです。

|

2019年12月 4日 (水)

21世紀型教育機構の教育の質(02)BTⅡ&Ⅲ

★21世紀型教育機構の教育の質は、2013年から2015年を経てBTⅡが起こり、そこから2年経て2017年にBTⅢが巻き起こりました。

Photo_20191204172301

★この2つのブレイクスルーが起こる間に今の機構の共通教育基盤ができました。2013年から2014年は、加盟校の順天と富士見丘がSGH認定校になったということもあり、英語4技能はCEFR基準でC1を目指ざすことになりました。また2016年に文化学園大学杉並がカナダのBC州と連携してDD(ダブルディプロマ)コースを開設するのですが、その前の2年間は認定への準備でした。工学院もケンブリッジイングリッシュスクール認定校への準備を開始していました。

★そういうレベルは、B2は必須ですから、それを達成するには、C1レベルを達成できる環境を創る必要性があったのです。

★また、海外名門校やシリコンバレーの周辺の動きやシンガポール、オーストラリアのリーサーチを経て、PBLとICTを融合する必要性を感じ、これも共通教育基盤としました。

★この間に聖学院の思考力入試がメディアに取り上げられるなど、PBLはかなり機構の特徴として意識されるようになりました。

★また2015年三田国際学園が開設され、C1英語×PBL×ICTは完全に共通教育基盤となりました。

★そんなわけで、2017年には、私たちのめざした男女御三家の21世紀型教育の質を超えるBTⅢが起こったのです。また、この時期第4次産業革命という言葉が使われ、そこに対応する教育を時代が要請してきたのに巧く対応できたのだと思います。

★ともあれ、このBTⅢは、さらに海外大学進学準備教育を共通教育基盤に包摂することを新しく決める契機になりました。富士見丘や聖学院の海外大学進学実績が飛躍したということもあります。

★また、八雲学園がラウンドスクエア認定に向けて準備を着々と進めていたのもこのBTⅢの時期です。PBLと言えば今や和洋九段女子ですが、同校が21世紀型教育機構に加入準備に入ったのもこのころです。

★機構の組織は一つの法人ではないので、トップダウンもボトムアップもありません。各加盟校の教育実践の切磋琢磨によって、目標を合意形成してきました。今後もそうなりますが、さらなる発展は、各加盟校の≪Z世代≫の生徒もこうしたらよいという提言できる機会を設けるようになっています。

★具体的な手法は、あくまで各加盟校ががんばるわけですが、加盟校が一丸となって、共通教育基盤を踏み台として活用するように足並みがそろったのが、2017年です。これが、機構を次のステージに進めることになりました。

★各加盟校が具体的にどのように戦略を立て進めていったのかいけたのか、そしてその過程で、≪Z世代≫の生徒自身が次のステージを見出すようになるのですが、12月15日のカンファレンスで、それは登壇される先生方が大いに語るでしょう。ご期待ください。

Photo_20191204080501

|

21世紀型教育機構の教育の質(01)第Ⅰブレイクスルー(BTⅠ)

★21世紀型教育機構は2011年秋にプレ発足をし、2013年春に世にお披露目しました。およそ2年間、時代の精神に耳を傾け、一握りのファーストクラス(競争社会)から生徒みんながクリエイティブクラス(協働社会)にシフトするときに必要な教育とは何かについて議論をしていたのです。

Btv

★ファーストクラスを生み出す競争社会のトップモデルは、いわゆる男女御三家ですから、その教育をクリエイティブクラスを生み出す協働社会という基準で教育の質を研究しました。同時にチャドウィックスクールとケイトスクールとかチョートースクールなど海外名門校の教育の質もリサーチしました。

★構想期は、教育のパラダイムシフトが起これば、男女御三家の教育の質を超える21世紀型教育を創ることができると確信をもち、2013年出発することにしたのです。第1ブレイクスルー(BTⅠ)が起こりました。パラアイム転換に向けてのビジョンを共有し啓蒙活動(セミナーとかカンファレンスとか)を通して活動することになったのです。

★しかし、機構は、だれかオーナーがいるいわゆる法人組織とは違います。加盟校が同じように急激に変化することはできません。もしかしたら、今はやりのTeal組織バージョンかもしれません。

★ですから、共通の21世紀型教育基盤を共有し、その上に、各加盟校独自の教育を展開していくことによって、各加盟校1つひとつが成長すると同時に、機構全体も成長するという協働型コミュニティのプロトタイプを自分たちがまず成るということを決めました。競争社会から協働社会へパラダイムシフトするそのプロトタイプを形成することにしたのです。

★そこで、共通の21世紀型教育基盤の構成要素を議論しました。今の21世紀型教育機構の基盤は、その90%が現在も続いていて、この基盤を持っている学校は、実は加盟校以外にはほとんどありません。それがいいかわるいかは歴史が証明します。それぞれの想いで学校は教育をつくっていくのは基本セオリーです。

★とにかく、この基盤のイノベーションがトリガーになり、男女御三家の21世紀型教育の質を超える第2ブレイクスルー(BTⅡ)を2015年に迎えることになります。断っておきますが、男女御三家の教育を批判しているのではありません。基準が違うだけの話です。

★おそらく、機構のこのBTを迎える物語は、未来でサバイブする子供の教育に関心がある保護者、多くの学校、そして日本の教育に役に立つでしょう。12月15日は、カンファレンスで、21世紀型教育機構の成長物語を共有いたしましょう。

Photo_20191204080501

|

2019年12月 3日 (火)

12月1日私立中コラボフェスタ 新タイプ入試=ソフトパワー化へシフト<了>

★今回の私立中コラボフェスタは実に深い局面にも到達しました。それは「思考力型入試」のパネルディスカッションでした。聖学院の思考力入試について、21教育企画部長・国際部長・広報部長の児浦良裕先生が登壇しました。清泉女学院のアカデミックポテンシャル(AP)入試については、中学入試・広報部長の 瀧康秀先生が登壇しました。

Dsc06197  

★瀧先生は、パネルディスカッションぎりぎりまで、アカデミックポテンシャル入試の体験授業を行っていました。

Dsc06194

★瀧先生はAP入試で、これからの社会でミッションをしっかり抱きながら社会貢献していけるポテンシャルを持っている自らに気づくためにも挑戦して欲しいテストですと。合格するためとか、大学受験に役に立つとか、そういうことは第一義的な目的ではありません。自らの中に社会貢献できる潜在的才能を生み出すことが最も重要な目的なのですと、中学入試は合否のための競争ではなく、自分の潜在的な才能の豊かさを自分のために社会のために試す機会なのだと語りました。

★その潜在的な才能を見出すために、多様な資料やデータ、文献から、たとえば「共生」という社会にとって最重要かつ根源的な問題について、多角的に考察し、自分がどうかかわっていけるのか使命感を深めていけるAP入試を準備しているわけです。

AP入試のサンプル問題

★瀧先生の語りをうけて、聖学院の児浦先生も、入試問題のネイミングは違いますが、コンピテンシーとして重要な能力を自分自身の中にあることを探っていく思考をしていく問題としては全く共通ですと。おそらく瀧先生のおっしゃるポテンシャルと私共が大切にしている賜物=タラント=タレント=才能は同じ意味なのではないでしょうか。瀧先生は二つ返事でそうですと。

Dsc06971

(児浦先生は、聖学院を超えて他校の≪Z世代≫の生徒のジェネレータでもある)

★考えてみれば、聖学院と清泉女学院は、プロテスタントとカトリックの違いこそあれ、クリスチャンスクールとしては同じ精神を共有しているのです。ですから、この思考力入試やAP入試が接続する学校の教育活動もかなり似ています。東南アジアでのボランティアや起業による社会貢献活動を行っていく国内外の多様で豊かな教育活動が行われているのもそうです。

★清泉では論文作成という思考と表現と使命を貫徹する学びも行っています。聖学院も自由研究という思考と表現と新しい発見を求める学びを行っています。

★そして、何より、合格するための勉強をするのではなく、大学に入学してから、社会に進んでから、自らの使命を全うする探究活動を深め、社会貢献ができる自分を自ら育てていく才能やポテンシャルを大切にしていくという点で、完全に一致を見ました。もちろん、そうはいっても大学合格実績の成果はでていますし、必要とあれば海外大学への道も開かれています。

★ただし、聖学院は男子校で清泉は女子校です。書くという行為に対しては、男子は女子に比べ抵抗があるというのは、児浦先生も瀧先生も感じているようでした。

★ですから、児浦先生は聖学院の思考力入試では、いきなり200字で書きなさいということはなく、グラフや図、資料、文献から気づいたことをいったんレゴを介して思考するというプロセスが挿入されるというのです。

★なぜレゴ®シリアスプレイ®なのか、今までは<新しい学びの経験>として当然だと思っていましたが、入試のあり方や目的が共通しているにもかかわらず、男女の特性の違いで、手法が違うというのは目からウロコでした。多様性とは口で言うは易いですが、大事なことは多様性とは違いがあると同時に壁にもなるということです。共生とは、その壁をどのように払しょくできるのかということです。

★レゴ®シリアスプレイ®も共生のための多様な壁を払拭する機能も持っているのだと。実に深いですね。

★2科4科入試で、そこまで意識して入試問題が作成されてきたでしょうか。私立中学校の新タイプ入試の意味は、大学入試改革と直結しますが、大学入試改革が大切にしなければならない本来的なものへ開かれゆく導きの光でもあったのです。

★考えてみれば、私立中学が一堂に会し、入試問題について互いに手の内を公開しシェアするコラボフェスタのようなイベントは、今までなかったわけです。なんて画期的な企画なのでしょう。首都圏模試センターの未来を映し出すパースペクティブは確かなものです。そう改めて感じ入りました。

|

12月1日私立中コラボフェスタ 新タイプ入試=ソフトパワー化へシフト③

★今回の私立中コラボフェスタは、実に新しい局面があらわれました。社会のパラダイムの転換がはっきり示されたのです。それは、「自己アピール・得意科目型入試」(北鎌倉女子 日本語4技能入試、聖セシリア グループワーク型読解表現入試、関東学院六浦 自己アピール型入試、共立第二 サイエンス入試、聖和学院 プレゼンテーション入試)のパネルディスカッションと「個性派オリジナル入試」(湘南学園 湘南学園ESD入試、聖園女学院 総合力、相模女子大中学部 プログラミング入試、聖和学院 プログラミング入試、八王子実践 プログラミング入試)のパネルディスカッションで起こりました。

Dsc06225

(石田教育情報研究所の代表石田温則氏による丁寧なパネルディスカッション「個性派オリジナル入試」のシーン)

★いったい何が起きたのか?その1つは、男性の教師の情熱的プレゼンテーションに対し、その全部を包み込む圧倒的な寛容性の要求をパネリストにさりげなくムチャブリするしゅとcommu学校サポーター市川理香氏のモデレーターぶりでした。

Dsc06224

★自己アピール入試にしても、プレゼンテーション入試にしても、ワークショップ型入試にしても、たんなる独りよがりな自己主張ではなく、周りを巻き込んで自身の生み出す世界に連れて行く表現力を求めているということが明らかになった段階で、突然、市川氏は、パネリストに、もし自分だったら他校のどの新タイプ入試を受験したいと思いますか?と問うたのです。

★一瞬パネリストも会場の保護者も、何を聞いているのだろうと時間が凍てつきましたが、パネリストが次々と自分の興味や関心からこの入試を選びますと回答し始めたため、すぐに氷解し、急に場は温かくなりました。互いの学校の入試をリスペクとしている姿を見ることができたからです。

★市川氏は、新タイプ入試を行う先生方は、自分の学校だけよければよいではなく、みんなが<One Team>でしょうと競争型男性中心社会目線よりも、協働型人類愛社会目線の重要性を確認したのでしょう。新タイプ入試の本意はSDGsやその中でもジェンダー問題を解決する使命を持っているのだという宣言だったのです。

★その宣言があったので、最後の「個性派オリジナル入試」は、すべてが、協働型社会や循環型社会、AI共生型社会を目標とする教育のエッセンスが反映しているということが了解できました。湘南学園のESD入試はまさにSDGsがベースにあります。聖園女学院の総合力は、教科横断型であり、それはあらゆる領域どうしの壁を越境する視点を大切にしています。相模女子大中学部、聖和学院、八王子実践のプログラミング入試は、AI共生社会を大切にしています。

★いずれも、競争型男性中心社会目線を払拭しています。ああ、本当に塾歴社会から塾歴解放区は鮮明になってきたと鳥肌でした。

★ところで、3つの学校のプログラミング入試は、それぞれ特徴があったのも新しい発見でした。

Dsc06190

★相模女子大の場合は、サイエンス・マスが前面に出たプログラミング入試でした。机の上を落ちないように、右左前進などのアルゴリズムを丁寧に組み込んでマインドストームのロボットを動かしていました。

Dsc06199

★八王子実践は、テクノロジーが前面に出たプログラミング入試体験授業を行っていました。動きも360度回転ダンスや声もアウトプットできるように本格的プログラミングでした。

Dsc06241

★聖和学院のプログラミング入試の体験授業は、残念ながら見逃しましたが、パネルディスカッションで、聖和学院の栢本さゆり先生のプレゼンテーションのインパクトが、聖和学院のプログラミング入試の特徴を浮き彫りにしました。

★それはプログラミング入試であるにもかかわらず、アートとしての「愛」があふれた入試だということです。ここでいう愛は、友情や恋愛、憐憫の情の話ではありません。「愛」は、聖和学院の理念の一つですから、聖書に由来します。聖書でいう「愛」はアガペーと言われ、「人類愛」のことを指します。

★ヨハネの福音は、はじめにロゴスありき、はじめに光があったから始まりますが、栢本先生のプレゼンは、明晰な言語の力と会場中を包みこむ圧倒的な「愛」の光を放ちました。

★市川氏といい、栢本先生といい、私たち男性の情熱を丸ごと包み込む大きなマインド。それは2科4科時代の中学入試が競争型男性中心社会を反映していたのに対し、新タイプ入試が協働型人類愛社会を反映している入試であるというポジショニングを明快に示したのです。中学入試の大きな変わり目の本意は、この社会のパラダイム転換を示唆していたのです。感動!しました。

 

|

2019年12月 2日 (月)

12月1日私立中コラボフェスタ 新タイプ入試=ソフトパワー化へシフト②

★パネルディスカッションは、多様な新タイプ入試のうち英語入試から始まりました。関東学院六浦の校長黒畑先生、共立第二の入試広報部主任 戸口先生、工学院大学附属の広報部長水川先生とのディスカッションは、短い時間なのに、世界の情勢の中の日本の危うさを共有し、今の≪Z世代≫の生徒が、2040年に日本を立て直し、世界のリーダーシップを発揮できる環境を創るミッションと実現力と創造力を身に着けることができるのはいかにして可能かという熱く深い教育論が展開されたのです。

Dsc06180

★関東学院六浦の校長黒畑先生は、自分の学校の話というより、生徒の未来に待ち構えている大きな艱難辛苦を憂いつつ、それを彼ら自身が乗り越えるために、英語力がいかに必要かを解く。それは実に戸口先生も水川先生も同じでした。英語力も、受験のための英語力ではなく、社会貢献できる視角からみな語るのです。

★それぞれの学校の校長とか、入試広報部主任とか、広報部長という学内のポジションではなく、新タイプ入試を行い新しい地平を開こうとする私立学校全体の校長であり、入試広報部主任であり、広報部長であるという使命を背負って語るその姿を頼もしく思いました。

Dsc06207

★私は、パネルディスカッションの部の担当でしたが、新入試体験授業の方は時々合間をみて、訪れてみました。午後からの英語体験授業のために工学院の加藤先生と水川先生が準備をしていました。加藤先生は英語科教諭で、米国流儀の学年運営をして、チームビルディングやコミュニティづくりが得意だという評判の先生の1人です。一方で探究論文という高校2年時1年かけて、すべての生徒がメンターの先生と深掘りして2万字の論文を仕上げる探究活動を仕掛けているリーダーでもあります。

★工学院の帰国生入試では、準1級や1級の生徒が入ってきます。しかし、英語入試では、英語が好きだとか興味を持っている生徒もチャレンジしてきます。今回も、英語が得意でなくても大丈夫ですかと生徒がおそるおそる教室に入ってきましたが、加藤先生は、大丈夫ですよと、レゴを使いながら英語をまず楽しむところから始めましょうと。すでに、このような新しい学びを実践して工学院は6年経ちました。英語入試で入ってきた生徒は、必ずしも英検など高い級で入学するわけではありませんが、6年経つとちゃんと2級や準1級レベルに成長しているというのは実証されています。

★工学院は、すべての生徒は1人ひとりの才能を持っているから、それを生かせる学びを創意工夫していこうという学校です。そのために、先生方は、世界を回り、広い視野で学びを研究してきます。加藤先生も時々外国で研究しているそうです。すごいですね。

★新タイプ入試の英語入試が、大学入学共通テストの民間検定試験がなくなろうが延期されようが、そんなこととは関係なく、生徒1人ひとりが自分のやりたいことを社会でやりぬき、結果的に大いに社会貢献するキャリアデザインの入口だったのです。

★続く適性検査型入試のパネルディスカッションも実に興味深かったのです。たとえば、相模女子大中学部の副校長の中間先生は、1年目は公立中高一貫校の適性検査に近いものを作ろうと努力したが、そのために公立の適性検査を分析し尽くしていくと、私立学校とは違い建学の精神や理念に基づいて作成されているわけではなく、あくまでも学習指導要領という枠内であることが優先しているということが改めてわかった。今では、相模女子の精神に基づいて独自の適性検査型入試を創るようになったのだと。

★適性検査型入試も、今や私立学校型に転換していることがディスカッションされていたのでから、さすが私立学校と感動しました。

Dsc06185

★鶴見大学附属の適性検査型入試の体験授業を瞬間的に覗きましたが、アクティブラーニングの手法で行われていました。鶴見区とその沿線の都市について多角的に考察する問題をみんなで考えていたようです。おもしろかったのは、記述の問題を自分のみならずチームでリフレクションしていたところです。簡易ルーブリックが創られていて、適性検査型入試を介して、新しい学びの経験を生徒はしていました。

★入試問題は学校の顔です。かつて、新タイプ入試は、生徒獲得の手段であり、入学後の教育とつながるかどうかは疑問であると揶揄されたときもありましたが、今や骨太の新しい学びの経験がカリキュラムポリシーの中で実現されていて、それが新タイプ入試に如実に反映されているという実感を抱くことができました。

 

|

12月1日私立中コラボフェスタ 新タイプ入試=ソフトパワー化へシフト①

★12月1日、相模女子大学中学部・高等部で、「私立中コラボフェスタ」(首都圏模試センター主催)が開催されました。昨年に続き2回目です。パネルディスカッションの先生方も同じ方がほとんどでしたが、驚いたことに、「新タイプ入試」の意味が、実に深いものになっていたのです。

Dsc06159

★今までは、2科4科では生徒がなかなか集まらないから、新しいタイプの入試で生徒を集めるという生徒獲得手法やマーケティング的側面も否めませんでした。しかし、今年は、2科4科の意味と同等、いやそれ以上の意味を先生方は短い時間にきちんと圧縮して語ったのです。

★もはや、生徒の才能を見出す教育や学びの準備ができて、そこに接続する新しいテストとしての意味がしっかり生み出されていたのです。2科4科は、20世紀戦後社会の人材を育成する重要な教育に接続するテストです。しかし、その日本における20世紀型教育の本意は、ハードパワーを生み出す教育だったし、それをコントロールするエリート養成のための教育でした。

★一方、この新タイプ入試は、21世紀においてソフトパワーが重視されるために、そこにしっかり接続する才能を見出すテストです。その意味が、今回のフェスタで明快に語られるようになったのです。

★首都圏模試センターの取締役・教育研究所所長の北一成氏は、今回民間検定試験の件で大学入試改革そのものがなくなるような話題がメディアではちろほらみえますが、それはない。改革が行われることは歴史的必然です。そうでなければ、今目の前の小学生の未来はどうなるのですかと強く希望を語りました。

★このビジョンに私立学校の先生方はシンクロするかのように、パネルディスカッションでシャープにハートフルに語り、新入試体験では、生徒と新しい学びの体験をして楽しみました。

★今後少し詳しくみていきましょう。

★ところで、次の本ブログの記事のアクセス数が、ここのところ毎月ベスト5に入っています。「洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。018年9月21日 (金)」がそれです。その中にこんな箇所があります。

<今後、中学入試市場は、「高偏差値群」と「偏差値無関係群」に分かれる。端的に塾歴社会と塾歴解放区という流れになっているわけだ。それを象徴するのが、思考力型入試と英語入試の増加である。

「高偏差値群」の受験生数は減らないが、増えもしない。4科目入試中心だから、知識と論理ベースの才能児が入っていく。「偏差値無関係群」は、知識と論理ベースの才能児ももちろん大切にするが、創造的才能者も迎え入れる。レゴやプログラミングベースの塾、英語の塾という新しい塾が中学入試に参入してくる。よって、そこの部分は増える。>

★おそらく、この対比は、今後思考コードでいう「A軸・B軸高偏差値群」と「C軸高偏差値群」という感じになるでしょう。そういう予感が、今回のフェスタで降りてきました。

 

|

2019年12月 1日 (日)

ラウンドスクエアの八雲学園②世界のエスタブリッシュな紳士淑女に注目される学校 日本では知る人ぞ知る学校。

★説明会終了後、近藤彰郎理事長校長にお会いしました。今回の文科省の民間検定試験騒動について、こう語っていました。

「文科省はやるならきちんとやる。準備をしている生徒に迷惑はかけないというのが筋だろうが、そういうのが政治というものだろう。きちんと制度化したならそれには従のだから、やるならきちんとやればよい。今回の件は、世界とのバランスで考えれば日本の教育は相当遅れてしまう。すでに遅れているのだから、日本のこれからはだいぶ辛いね。私立学校はそこは自由に意思をもってやれるから、どんどん世界のエスタブリッシュな私立学校ときちんと交流できるように先に進んでいくしかない。生徒にも、生まれる時代は選べない。歴史は理不尽な変化はあるのが普通だし、世界を見回せば、それはすぐにわかるだろう。理不尽さの比較はできないが、こんなことに付和雷同したり右顧左眄しないで、自分は自分の道を貫くようにといつも語っている」と。

Dsc06150

★ラウンドスクエアに加盟したということは、そううことですね。最高のグローバル教育だと私も思いますと語ると、近藤理事長校長は「ありがとうございます。世の中のわかりやすい表現を借りれば、グローバル教育偏差値75だと確信している。でも、それに甘んじることは考えていない。日本の大学や学校で、いわゆる偏差値が高い学校は、そんなに進化しない。その必要性を感じていない。たしかに、現状の日本だけの大学入試システムだと、それでよいのだろうと思う。しかし、世界をみたらとんでもない破格の豊かな教育を実践している学校がたくさんある。八雲はそういう学校と交流し、八雲生の才能のみならず、世界のエスタブリッシュな紳士淑女にもよき影響を与えたい」と。

Dsc06142

★えっ!まだ進化するのですか?と驚くと、英語科主任で海外・英語特別委員長である近藤隆平先生(近藤理事長の長男)がこう説明してくれました。「ラウンドスクエアの加盟校はたしかにエスタブリッシュですが、世界には加盟校180校以上の教育を実践している学校がまだまだあります。そういう学校と交流するのは、一般には難しいんです。だいたいそのような学校をどう探します?ところが、ラウンドスクエアに加盟していると、そのことでそういう学校との出会いが巧まずして増えるのです。RS加盟校の出身者が加盟校でないけれど優れた革新的な教育を行っているところで教師をやっているなんてことはいっぱいあるのです。すると、OB/OGどうしのネットワークでそのような学校が出会うことになるのです。そんなわけで、今回もすいばらしい学校と出会う機会をもらえました。」

★と、ついこの間視察に行ってきたばかりの学校の写真を見せてくれました。日本のどの学校にもない教育を実践しています。「ここももとは、大学進学実績をあげるための学びをやっていたのですが、あるときから21世紀型教育に大胆に移行して、世界から注目を浴びるようになたのですよ。インパクトありましたし、新たな気づきをもらいました。カンファレンスではこのあたりを話そうと思っています。楽しみにしていてください」と。

★毎年アップデートし、進化する八雲学園。ラウンドスクエア加盟ということでもどほとんどの学校が真似できないのに、それ以上進もうとするこのエネルギーはどこからくるのか?それは生徒への愛情であることは確かです。おそらく、日本のインターコースを有している学校やインターナショナルスクールでも、このような教育は真似できないでしょう。

★近藤家の野望が少し了解できたような気がしました。

 

|

ラウンドスクエアの八雲学園①世界のエスタブリッシュな紳士淑女に注目される学校 日本では知る人ぞ知る学校。

★昨日11月30日(土)、八雲学園は高校ミニ説明会を開催。会場は満席になりました。

Dsc06068

★八雲学園と言えば、中学入試ですが、実は高校入試も行っています。当然中学校説明会とは違い高校の3年間に絞って説明がされるはずです。そこで参加してみました。予想通り、「ラウンドスクエアの八雲学園」というテーマに絞って、横山先生は控えめにそして誇りをもって力強く語ったのです。

Dsc06070

★おそらく、2013年から2015年までラウンドスクエアに加盟する準備を経ていますから、ラウンドスクエアのあまりの凄まじさに謙虚になり、2016年以降実際にラウンドスクエアの仲間に認められて活動が本格的に2018年から始まってからというもの、その極まりない重要性ともはや憧れではなく、自分の学校の文化として接合したことによるそこはかとない自信は、他の学校では理解できない世界です。

★参加した中学生は、期待以上のすさまじい活躍をしている先輩たちの姿に、自分の意志をしっかりとかためた様子でした。説明会終了後、キャンパスツアに参加しながら、近藤校長ともすすんで対話する保護者もいました。グローバルな世界で生きているお父さんなどが多く、はっきりと日本の教育では八雲以外に経験ができないと感想を語っていました。

★八雲学園は、共学化し、ラウンドスクエア加盟校になってからというもの、人気は再び右肩上がりです。ただし、それは知る人ぞ知る人気です。日本の学歴社会にこだわっていては、決して見えない光景を見ることができる人たちがチャレンジしてきます。世界的視野を持っている家庭や世界で活躍している保護者の家庭でしかなかなか気づかない教育です。

★一方で、世界からはラウンドスクエアに加盟している数少ない日本の学校ということで、エスタブリッシュな紳士淑女の学校として知られています。ですから、米国ロサンゼルスのチャドウィックックスクールという日本でいえば開成や麻布のような私立学校から留学生がやってきます。

★そして、ラウンドスクエア加盟校どうしは留学を受け入れれば、その学校に留学する相互関係がルールなので、そのチャドウィックスクールに八雲生が留学してしまうわけです。このような学校は、日本人の場合、ロサンゼルスで学んでいない限り入学できるような学校ではありません。しかし、そのような交換留学が一年中できているのが八雲学園です。カナダからアメリカからヨルダンからオーストラリアから・・・八雲に留学している生徒の紹介がされました。

★これぞ本物のグローバル教育です。しかもラウンドスクエアは国際会議や地域会議が毎年持ち回りで開催され、世界の180校のエスタブリッシュな紳士淑女の私立学校の生徒が集結します。

★2016年に挑戦した八雲生は、英語ができるだけでは歯が立たなかったと帰国後八雲生とシェアし、しっかりとした世界の問題に関して及び日本の文化に対し高い意識をもち、ディスカッションできる思考、エッセイライティングができるスキルのトレーニングが始まりました。

★2013年から2015年、ラウンドスクエア加盟に準備の1つとして、今も続くイエール大学との国際音楽交流を八雲学園は行いました。そのとき刺激を受けた八雲生はミュージカル部として「グリー」部を自ら生み出しました。片方で、英語の八雲の教育をさらにもっと凄いレベルにという生徒からの要望が9カ月留学プそグラムに結実しました。

★菅原先生は、「日本の中から見えていると、この7年間の急速な進化は、なかなか見えませんが、世界からみると、一気呵成に日本の枠を突き抜けて世界のトップ校と交流できる学校に成長しました。イエール大学と交流し、ラウンドスクエアの加盟校という八雲は、日本では唯一無二でしょう」と明言しました。

Dsc02585

★そして、「12月15日のカンファレンスで、近藤隆平先生が、八雲がまたまたアップデートする話を披露します。八雲の進化はとまりません。期待してください」と、実に頼もしい話をしてくれました。

|

« 2019年11月 | トップページ | 2020年1月 »