アサンプション国際中高の≪Z世代≫生徒 PBLを深め根本問題をたどる。(了)脱ジレンマ!
★石崎さんは、ボルネオの森の豊かさとその生態系を維持している生物多様性と先住民の生活を描いたうえで、パーム油のプランテーションによって、ボルネオ島の森林が次々と伐採され、生態系が壊されていることを共有していきました。当然先住民も苦しみます。その一方で、いまここで私たちはスナック菓子を頬張り、石鹸使い放題で風呂に入り、せっかくの料理を残してフードロスを垂れ流しています。
★石崎さんは、そんな状態を改善するにはどうしたらよいのかと問うわけです。スナック菓子をできるだけ食べない、石鹸を使いすぎない、フードロスをなくしていく・・・それで解決できるわけではもちろんないのです。
★石崎さんは、ボルネオ島の森の生態系を守りたい、でもプランテーションで働いてお金も欲しいし生活も楽したいというのは先住民も同じ、しかし、それを続けていると、地球環境は恐ろしい状態になるし、パーム油の高騰にもつながり、世界経済にも影響を与えるかもしれない。
★森も、先住民も、私たちも、世界経済も、この囚人のジレンマから抜け出すにはどうしたよいのか?中1の≪Z世代≫生徒は、脱ジレンマの難しさを共有する出発点に立たされたのです。これから中高と学ぶ過程で、この難問を解くために、フィールドワークをし、他者の痛みを自分事にひきよせ、創造的思考をフル回転しなくてはならないでしょう。
★そして、このジレンマは偶然出来上がったのではなく、近代社会が自らつくりあげた矛盾だということを現代思想に触れ、世界史に学び、倫理社会、政治経済に学んでもいくでしょう。近代社会以外の社会は果たしてあり得るのか?たとえば、ボルネオの先住民の社会システムは、そのとき大いに参考になるでしょう。石崎さんの冒頭のトークを思い出す日が来るはずです。
★中学の探究の責任者である松平先生(英語科教諭で、国際関係プログラムなど多様なネットワークを有し、生徒の学びにつなげているコーディネーターでもあります)は、生徒に語りかけます。「昨日まで訪れていてたローマ教皇の痛みをみんなは受けとめたかい。世界を分断しようとするリーダーが増えたことに対し、痛みを感じ、連帯を祈っていたよね。そして、今日の石崎さんと近藤さんのワークショップとトークは、つながりの重要性を教えてくれました。どうですか。ここから出発できますか」と。
★HUTAN Groupの活動拠点はたしかにボルネオ島であるが、ここだけが保全されればよいなどとはいうまでもなく思っていません。地球上にある同じような根本的な問題を解く、つまり脱ジレンマに挑戦するチェンジメーカーの育成が本意でしょう。
★松平先生と意気投合したのは、そこだったと思います。このプログラムは昨年の中1にも行われました。そして彼らが中2になってからも、別プログラムを石崎さんと近藤さんは行い、うながりを継続していくのだそうです。生徒の成長が楽しみですね。
★カリキュラムマネージャーの瓶割先生(数学科教諭)も、中1の探究に取り組む姿をみながら、「今年の高3(高入生改革1期生)の大学進路が、今までとそうとう違うんです。偏差値で選んでないという明らかな傾向がみられます。一般入試も含めてすべて決まりましたら、ご報告しますが、明らかに英語やPBLの体験を生かせる大学を探した生徒が多くなっています」と。
★すると、松平先生は、「そういうのが本当の教育の成果ということですよ」と。偏差値競争社会のなれのはてが、ボルネオ島の森林破壊や環境破壊に加担したことだとなるのなら、そのような進路指導はアサンプションはしないのだと静かな情熱を感じました。
★たしかに本物教育以上に何を求めるのでしょうか。熱い思いに感染したまま大阪を後にしました。
| 固定リンク
「PBL」カテゴリの記事
- これからの教育(05)落合陽一さんの「第3のてこ」ヒントにアービトラージ学習(2025.03.21)
- 2026中学入試準備(28)工学院と聖学院 成長するときの響きを聴く教師(2025.03.14)
- フュージョン広報(02)富士見丘のホームページ(2025.03.10)
- 私立学校の教育の質の展開(01)成城学園の生徒の視点(2025.03.09)
- 2026中学入試準備(24)インターナショナルスクールか私立学校かの時代の意味②私立学校が選ばれるには(2025.03.06)
最近のコメント