日刊ゲンダイ ベネッセと文科省の深すぎる関係を突く しかし、大事なことはそこではない。
★2019年11月08日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITALはこんな記事を掲載しています。「英語民間試験問題をめぐり…ベネッセと文科省の“深すぎる関係”」がそれです。詳しくはそちらをご覧ください。
★しかし、問題はそこを突いても≪Z世代≫にとってあまり有益ではないのです。たしかにベネッセさんは、そのたくましい営業努力で、文科省に入り込み、各学校に入り込んでいます。でも、いずれも合法的な手続きを経ていますから、仲が良かったかどうか、忖度があったかどうかなど立証はできないでしょう。
★私も以前、OECD/PISAの報告書が大学教授や中高の先生方を巻き込んで書かれたので、興味をもって読んだら、今時中高の「探究」や「論文」でも書かない、OECDがすでに公表している内容のコピペ同然でした。あっ、やってくれたな。と思い、文科省の担当部署に電話で、いったいこのレポートはベネッセさんはいくらで入札したのですかと尋ねると、2000万円と即答されたので、エッ!この内容でですか?誰がチェックしているのですか?私どもですと聞いて唖然としたことを、どこかで書いたことがあります。
★レポートの連名に知り合いの先生方がたくさん並んでいたので、まあ合法的入札だからそこをクリティカルに論じてもしかたがないし、そんな暇もないと思っていました。
★おそらく、一事が万事、そういうカタチになっているのです。
★そもそも、この大学共通入学テストーー同記事は「英語民間試験」の話だけではなく、大学入学共通テストの採点の落札もベネッセさんがしたということを突いています――は、OECD/PISAの研究の団体NPO「教育テスト研究センター」が設立した時から構想がありました。
★この共通テストの前に、基礎なんとかテストみたいのがあって、そのテストの構想を私の知っている先生がもってきて、これは素晴らしいというから、一蹴しました。テスト漬けにしてどうするのだ。青春時代をと。その先生とはすれ違ったときに大人として今では挨拶する程度です。
★とにかく、ベネッセさんは知り合いの先生の学校に、たとえば、クラッシーというe-ポートフォリオを活用する前提のデバイスとプラットフォームを入れていて、その根の張り方は、他の教育産業では真似できないでしょう。
★米国のETSをモデルにしているでしょうから、なおさらです。米国でも同じような批判がでていますね。
★合法的な入札と言っても、これだけのテストを処理できる、これだけのデータを処理できる教育産業は、現状でないので、コンペをやっても、ベネッセさんに軍配が上がるのは当然なのです。それを蜜月と表現しようが、合法的なんです。
★話を戻します。このOECD/PISAの研究のNPO団体も、もちろんベネッセさんの仕掛けが背景にあります。それはサイトに入れば理事長がベネッセさんからきているし、ロゴのカラーが、ベネッセさんの企業カラーでできているところから、すぐにわかります。
★ここを母体にアンドレス・シュライヒャーさんを呼んだりして、セミナーや勉強会をやって、各学校の先生方を巻き込んでいるのです。もちろん、大学も文科省も。これも合法的です。
★しかし、全国学力テストもおそらくベネッセさんが落札していると思うのですが、もしかしたら、今は順番に他の企業と回しているのかもしれませんが、最初はベネッセさんでした。小学校と中学校の200万人強の人数を採点することなど、まあベネッセさん以外の教育産業では今のところ無理です。CBTにでもなれば、参入できるところもあるでしょうが。それとても、ベネッセさんが落札するでしょう。
★でも、そこが問題ではないのです。全国学力テストのB問題は、明らかにOECD/PISAの問題を意識したカタチと内容でできています。そして、公立中高一貫の適性検査ですが、これもまたOECD/PISA型の問題編集の影響を受けています。
★そして、公立高校の入試問題もだんだんそうなっています。私立中学の新タイプ入試が適性検査型入試と私立独自の思考力入試や自己アピール問題や総合型問題を作成しているのは、私立学校がこの流れを活用はするけれど、便乗はしないという意志決定なのです。
★さらに今回の大学入学共通テストです。素材が従来の文学とか論説文ばかりでなく、実務的な文章が選択されていますが、まさにこれはオーセンティックという名のOECD/PISAの作り方です。カタチも同じでびっくりしてしまいます。
★このOECD/PISAのテストや学力観を推奨した人々は、今回同記事で取り上げられている政治家や大学教授もいるのです。
★私が大学入学共通テストをやめたほうがよく、各大学の独自入試でよいじゃないかというのは、ベネッセさんが落札したとかどうでもよいのです。じゃあセンター入試でよいのかというと、それも違います。
★全国学力テストもやめたほうがよいのです。そうすると、今回の大学入学共通テストの国語の記述。採点が学生をやとうとできない難しいと言っている人がいますが、本文中の語句をつかった組み合わせの最低の問題で、学生で十分できるのです。こんなのが思考力記述問題なのだとぎゃぎゃあいっている人の見識がわかりません。こんな記述の問題は、実はOECD/PISAは出題しません。もっと自由度が高いですね。
★それは全国学力テストも同構造です。OECD/PISAの権威を借りたなんとかで、とんでもないのに、そこを問題にしない。採点ができるかどうか?なんで、こんな問題ができないのと思ってしまうわけです。私立の中学入試の2科4科の問題でもここまでモザイク型の記述の問題は今や出題しません。
★さすがに公立中高一貫校の適性検査は、OECD/PISAの本質をベースにしていますから、それ自体はよいわけです。ただ、PISA-全国学力調査テスト―適性検査―高校入試―大学入学共通テストというラインナップができ、少し記述を入れたりして、自由度を高め、キーコンピテンシーをコアにしているのだという話で、そのためにe-ポートフォリオなのだという、学びのシステム循環をもうすぐ構築できそうだというところまできていたのです。さて、今回そこに気づく人はいますかね。いても、今さら、クラッシーを使わないわけにはいかないし、シンケンゼミやスタディーサポートを使わないわけにもいかないのです。だって、これらの模擬テストも過去の問題のプラットフォームにクラッシーで入れるのです。過去の知識問題を再利用できるわけです。
★このベネッセの教育生態系をなくすなど、もはや現場も文科省もできないのです。ベネッセは鉄緑会も傘下に入れているので、私立高校のアッパー層の生徒の情報も把握し、東大にたくさんいれる学歴社会も支えています。大学入試改革はできるはずがなかったし、本気で誰も考えていなかったということが問題なのです。
★国語の採点に60億円税金をつぎこむのをやめ、全国学力調査テストもやめてしまえば、さらにお金は浮きます。毎年つぎ込まれるのですから、その分を、ICT[環境の充実にシフトして、個人がサイトで学べる環境をつくったほうがよいでしょう。離島問題も解決するはずです。つまり、N高校が注目されざるを得ないのですよ。英語も今やサイトで学べるのですから。そうだとしても、どこが落札するのか?企業の顔ぶれは変わらないのです。
★だから、どこの企業と文科省が蜜月期を送ったとかそういうことではないのです。税金の使い道を一律同じテストを小学校から大学入試まで活用するという事態から脱しようということです。テストの本来の使い方を考えたほうがよいのでは?そこを国民全体で議論する機会をメディアはつくる提案をしたほうがよいのではということです。もっとも、≪Z世代≫はすでに動き始めていますけれど。
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