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2019年11月

2019年11月30日 (土)

本当に探究するというコト本当にアクティブラーニングを行うというコト これで政府主導の教育改革は不要。

★令和元年、どうやら政府主導の教育改革は不要であるという結論がでましたね。石川一郎先生の新著を読んでそう確信しました。政府主導の教育改革はうまくいかなかったけれど、石川先生やその仲間たちがこれだけ教育の本質を書くようになり、学校と塾を越境するようになったのは、実は新しい動きでした。

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(次の世界をさぐる思想。世界の現代アーティストはここから出発している。日本の教育はここまでいくだいぶ手前にいる。新しい探究とかアクティブラーニングとか語っている人も、ここはほとんど語らない。)

★でも、そこに書かれていることは、すべて受験勉強の枠内の話で、このような新しい学びが学歴社会を払拭するどころか、しっかりと強化し続ける日本が今後も続くというコトであれば、もはや教育改革を政府が主導する必要はないのです。受験勉強が骨太になる、それによって東大ピラミッド学歴社会が安泰。

★見事に再帰的近代官僚主義の思うつぼというコトになりました。石川先生も新著では、21世紀型教育機構理事をプロフィールからはずして、学歴社会強化の路線を牽引する側に回りました。福沢諭吉と協働して進んでいた加藤弘之が、東大初綜理になったとき、私学の道を捨て、官学の道に転向し、啓蒙思想的理念を捨てたのに似ています。さすが石川一郎先生だと思います。アクロバティックに転向しました。

★そんなことにも気づかない石川一郎先生の仲間たちは、脱偏差値だとかSTEAMだとか探究だとかPBLだとか言っていますが、文科省の改革がだめになりそうなときに動き始めた経産省の動きに飛び移りました。

★この国は変わりません。教育改革不要論は、明治以来の東大初綜理加藤弘之と穂積陳重が共謀して、天賦人権説を激しく排除して、教育と法律を構築しました。この路線に対峙したのが私立学校だったのですが、今やそれも風前の灯火です。

★心ある私立学校がノアの箱舟計画を実行するしかないというのが現状です。今論じられている探究やアクティブラーニングには、古い哲学をありのままに受け入れたものが多く、それを脱構築する発想がそもそもありません。

★とくに塾業界はそうですね。かつて河合塾がここに果敢に挑戦していたのですが、そのときのスタッフは、ドイツなどに留学して大学で活躍していると聞き及びます。要するにその方々はもういなくなったということです。

★探究とは、古い哲学を新しい切り口で新しい哲学に変える思考ができなくては、本当のクリティカルシンキングだとは私は思いません。アクティブラーニングも、ヘーゲル的ダイアローグを脱構築する新しい対話をベースにしなければどうしようもないでしょう。にもかかわらず、古い哲学のまま受け入れて、その発想を活用することがクリティカルシンキングだとか言っています。対話をヘーゲルやハイデガーをそのままベースにして語ります。

★企業でも、研究でも、今まであるものをそのまま再生産するような組織はみな衰退します。研究はすでにある研究をしても、何の貢献もしていないとみなされます。イノベーションや新しい発見をする切り口を見出す涙ぐましい探究こそ探究であり、受験の枠組みの中でやっている探究で満足したり、まして、これが最高だなんていっているとそれは世界標準以下でしょう。日本の閉じられた世界で、ゆるやかなナショナリズムが生み出されていく危険性がいっぱいです。

★加藤弘之の優勝劣敗進化論は、富国強兵の正当化論です。不幸にもちゃんとこの道を日本は歩んでいますね。それを強化する探究論とアクティブラーニング論。政府主導の教育改革は一見不発でしたが、実は思うツボだったのです。ゆるやかなナショナリズムの完成ということでしょう。この完成がはっきりしたがゆえに、功利主義的転向組が生まれるのは当然です。ここに最高善は存在しません。そもそもそんなものはどうでもよいのがリバタリアンです。

★政府主導の教育改革のから騒ぎは、思い切り梯子を外し、自作自演を演じ、見事にその役割を果たしたのです。

★私たちに残された道は、心ある仲間たちとサバイブするノアの箱舟計画です。実にごく少数でしょう。しかし、まずは次のステージはこここからです。嵐が去った後、サバイブした人間が新たな社会を創るしかないというのがどうやらこれからの道です。

★政府におもねる教育論は、政府がある限り、生きて行きやすいですよね。そちらを行くか、そうでない道を選択するか。転向するのか、貫くのか、それは私事の自己決定です。ただし、本当に≪Z世代≫の未来を考えるのなら、それは自ずときまってくるでしょう。

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2019年11月29日 (金)

第11回 形成的評価とタキソノミー 学校組織以外でも活用は可能か?

■2019年11月29日(金)3時限目

テーマ)形成的評価の作り方 ロールプレイを素材に

サブテーマ)
・10の学習者像は形成的評価に含まれるか?
・総括的評価と形成的評価の統合は可能か?
・タキソノミー提唱者ブルームの形成的評価に学びところはあるか?

資料)
・TOK概要

思考スキル)

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

 

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対話の世界(6)聖パウロ学園 思考スキルとデフォルトモード記憶のループを創発。

★聖パウロ学園は、PBL授業をはじめ対話を大切にする教育を展開しています。すべての生徒の「自己肯定感」を高める教育を気遣っているからです。そして一方で、そのためには、自由な発言、すなわち豊かな思考力を養わなければならないのですが、いったい思考力とは何でしょう?

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(左から国語科高橋先生、英語科大久保先生、数学科松本先生)

★研修部の先生方は、表面的な思考力の話ではなく、きちんと本質的な意味での思考力について常日頃考察しています。今回もある実験をして、仮説を立てていました。

★まず、ありし日のセンター試験における国語の現代文の設問1問を任意に選択し、提示された現代文を読まずに、解くところから始めました。多肢選択の問題ですから、先生方は、選択肢の分析と分類によって正解を絞っていきます。そして、見事に行き着きます。

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★次に、どうやって考えたか各人がプレゼン。すると、国語科と英語科の先生は「思考スキル」でアプローチし、数学科の先生は、集合論的なアプローチで説明していました。そして、思考スキルと集合論の関係を考えると、なんのことはない、思考スキルは集合論と重なり合う部分が多いということに改めて気づいたのです。

★言語的思考と数学的思考の接点が見えたということでしょう。数学科の松本先生は、文系の数学と理系の数学のカリキュラムを考えたとき、微積にまでいきつくかいかないかというより、集合論の扱い方で再考してみようかなと何か閃いたようです。

★さらに、文章を読まなくても、特に国語科の高橋先生はあっさり解けたのは、だいたいたとえば、「今回のデザイン」に関する論説文だと、よほど創造的破壊をする作者でない限り、だいたい同じ方向性で書いてある場合が多いので、その記憶も参照して考えるとかなりの確率で絞ることができますということでした。

★そこで、「デザイン」を中心に、マインドマップを広げていくと、ファイリングから条件反射的に引き出す知識だけではなく、概念や物語や関係などいろいろな記憶があることが改めて明らかになったのです。

★それをすでに知っていて、そのことについては考えなくてもそこから出発できる記憶という意味で、デフォルトモードネットワークとして、漢字や英単語、理科社会の空欄補充を埋めるような知識から論理駅な文章や物語まで文脈知識、数学の解法パターンのような順序や手続きの知識というものを、学んだあとに格納し、思考スキルによって引き出して、組み合わせて思考していく。

★そして、思考すると、再びデフォルトモードネットワークが広がるという、記憶と思考のループ全体を思考と言っているのだということが見えてきました。

★私たちが普段、知識暗記型の学びから思考型の学びへといっているのは、この記憶と思考のループの拡大再生産のことを言っていたのです。知識暗記型といったときの知識は、空欄補充を埋める条件反射的な丸暗記の話に限定していたわけですね。

★こうした本質的な議論が、カリキュラムにすぐに生かされ、授業で展開していけるスピード感が聖パウロが人気のある学校の1つのそして大きな理由でしょう。これは、すなわち、スモールサイズの学校の大きな特色と言えるでしょう。

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2019年11月28日 (木)

聖学院授業デザイン②≪Z世代≫生徒の希望の拠点。

★ノエルが近づくこの季節。急に冬が訪れ、寒くなりました。

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★しかし、伊藤航大先生の≪Z世代≫への熱い想いと湧き出るアイデアで、ワークショップは温かい空気が広がりました。

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★参加した先生方が自身の授業で、伊藤先生や榊原先生と共感できる課題を明らかにした段階で、当然その問題解決の方法について<対話>が始まりました。中心的な課題は、すべての生徒が興味をもつにはいかにしたら可能かでした。

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★この問いは、90%の学校は、問い返すことはしません。心ある教師はこの問いを自問自問はするでしょう。しかし、これだけの学校の教師がともに悩み解決しようと<対話>することはまずありません。

★たいていは、興味と関心をもてないのは、自己責任です。問題意識が低い状態で学びに臨むとはなんてことなのだと生徒のせいにするのが一般的です。もっとひどいのは、興味と関心を何に持つかは生徒によるし、その自由を奪ってはいけないというまことしやかな薄っぺらい自由論を振り回します。

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★しかし、聖学院の教師は、オンリー・ワン・フォー・アザーズという価値を共有していています。榊原先生は、当たり前の日常の中に、驚愕感動するような価値があることに気づく仕掛けを授業でチャレンジしてみたいと。このアイデアには、どよめきが起こり、共感の輪が広がるほどでした。

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★授業デザイン研究会の座長は児浦先生ですが、先生と先生のパートナーの1人内田先生はレゴ®シリアスプレイ®の資格をもっているので、プログラムのベースも、レゴ流儀になっています。

★個人で自問自答し、チームで話し合い、いきなり全体でまとめてみます。そして、また各チームに分かれ、最後は個人に戻ります。自己リフレクション→自己開示→協働→共感→協働→共開示(恥を捨てる)→自己リフレクションという流れになっています。この流れは、実はレゴ®シリアスプレイ®のコンセプトメークをしたシーモア・パパート教授らのアイデアで、数学的思考の流れです。

★児浦先生は数学教諭ですし、内田先生は技術の教諭ですからまさにテクノロジーがベースです。

★今回も、全体で、問題解決を整理しはじめました。各チームのアイデアは部分最適化ですから、それをさらに参加者全員で全体最適化に挑戦します。この過程で、実は教師の授業前の準備がとても大切なコトが改めて確認されました。生徒が何に興味をもつのか関心をもつのか、シナプスを張り巡らすという表現をしていました。

★そして、授業は、これは伊藤航大先生のアイデアをみんなで共有したのですが、教師+生徒ではなく、「生徒+1」という関係で学びの世界を創るのだということになりました。

★さらに、授業の中で生徒は多様なアイデアや多様な表現、自由な発言をする環境を創りたいねと言うことになりました。そして、再びチームに分かれて、要するにワンフレーズで表現するとどうなるか<対話>が折り重なり深まっていきました。

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★聖学院の教師は、それはあまりに理想的なのかもしれませんが、教師も生徒もそれぞれの興味と関心を持ったり、見出したりする授業づくりに挑戦しているのです。

★最後は1人ひとりの想いを語って、チェックアウトです。伊藤航大先生が、聖学院の同僚はほんとうにコミュニケションがとれていて、互いに授業デザインの学びになる。そのうえで、やはり常にオリジナルの授業デザインに挑戦したいのだと改めて感じたという熱い思いを語ってワークショップは終了しました。

★次の日、榊原先生からメッセージが届きました。「今度は伊藤先生の立場を私が挑戦します。そう児浦先生と相談して決めました。楽しみにしていてください!」と。ノエルをむかえるにあたり、榊原先生による同僚に対しての最高のプレゼントです。榊原先生、児浦先生、伊藤先生、そして聖学院の先生方今年もありがとうございました。

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聖学院授業デザイン①同僚間の開かれた関係

★昨夜、聖学院の授業デザイン研究会が開かれました。今回は社会科教諭の伊藤航大先生の授業デザインを仲間(同僚)とシェアしました。

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★伊藤先生は、1時間の授業ではなく、観光甲子園のコンクールに挑む生徒たちの学びのプログラムという大掛かりな創意工夫についてプレゼンしました。聖学院の≪Z世代≫生徒は、授業からはみでた活動に主体的に取り組むのが大好きですが、だからといって、全員が同じプログラムを同じ想いで取り組むかというとそれはそうではないのは当然です。

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★興味と関心の差がその取り組みの姿勢の差に影響します。これはどこの学校でも同じ現象です。しかし、聖学院の教師は、そういうものなのだと諦めることはないのです。そこで、いつものようにスピードデーティングで、「聖学院の≪Z世代≫生徒が望む授業」についてシェアするアクティビティから始まりました。

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★互いに熱い想いを共有してから、伊藤先生のプレゼンに耳を傾けるわけです。このとき、授業デザイン研究会で定着しているアクティビティは「スクライビング」です。

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★みんなで傾聴しながら、仲間の一人が、ホワイトボードにプレゼン内容をその場でまとめていくのです。

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★今回は英語科教諭の榊原先生がスクライビングを行いました。伊藤航大先生が熱く語ったことをすべて書き出すというのではなく、その熱さの中でも、特に榊原先生の熱い想いと共感するところが転写されていきました。

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★そして、伊藤先生のプレゼン終了後、今度は榊原先生が、スクライビングした内容について説明します。ここまでは、いつも、さりげなく当たり前のように進みます。しかし、これが自然体で進むのは、実はとても重要な意味があるのです。

★それは同僚性や共感力といった言葉があてはまる人間関係=信頼関係=愛が聖学院の先生方同士にはあるからです。柔らかいコミュニケーション、互いに受け入れる関係、その都度、互いの間にある壁を言語化してはそれを払拭していける開かれた関係。そういう関係があるからです。

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★伊藤先生の想い、榊原先生の想いが目の前に広がったところで、今度はチームに分かれて、それぞれのメンバーの授業でも現れる共通した生徒への想いについて語り合う段に進みました。開かれた関係は、教師同士だけではなく、教師と生徒との間にもある実感がどんどんあふれでてくることになったのです。

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2019年11月27日 (水)

アサンプション国際中高の≪Z世代≫生徒 PBLを深め根本問題をたどる。(了)脱ジレンマ!

★石崎さんは、ボルネオの森の豊かさとその生態系を維持している生物多様性と先住民の生活を描いたうえで、パーム油のプランテーションによって、ボルネオ島の森林が次々と伐採され、生態系が壊されていることを共有していきました。当然先住民も苦しみます。その一方で、いまここで私たちはスナック菓子を頬張り、石鹸使い放題で風呂に入り、せっかくの料理を残してフードロスを垂れ流しています。

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★石崎さんは、そんな状態を改善するにはどうしたらよいのかと問うわけです。スナック菓子をできるだけ食べない、石鹸を使いすぎない、フードロスをなくしていく・・・それで解決できるわけではもちろんないのです。

★石崎さんは、ボルネオ島の森の生態系を守りたい、でもプランテーションで働いてお金も欲しいし生活も楽したいというのは先住民も同じ、しかし、それを続けていると、地球環境は恐ろしい状態になるし、パーム油の高騰にもつながり、世界経済にも影響を与えるかもしれない。

★森も、先住民も、私たちも、世界経済も、この囚人のジレンマから抜け出すにはどうしたよいのか?中1の≪Z世代≫生徒は、脱ジレンマの難しさを共有する出発点に立たされたのです。これから中高と学ぶ過程で、この難問を解くために、フィールドワークをし、他者の痛みを自分事にひきよせ、創造的思考をフル回転しなくてはならないでしょう。

★そして、このジレンマは偶然出来上がったのではなく、近代社会が自らつくりあげた矛盾だということを現代思想に触れ、世界史に学び、倫理社会、政治経済に学んでもいくでしょう。近代社会以外の社会は果たしてあり得るのか?たとえば、ボルネオの先住民の社会システムは、そのとき大いに参考になるでしょう。石崎さんの冒頭のトークを思い出す日が来るはずです。

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★中学の探究の責任者である松平先生(英語科教諭で、国際関係プログラムなど多様なネットワークを有し、生徒の学びにつなげているコーディネーターでもあります)は、生徒に語りかけます。「昨日まで訪れていてたローマ教皇の痛みをみんなは受けとめたかい。世界を分断しようとするリーダーが増えたことに対し、痛みを感じ、連帯を祈っていたよね。そして、今日の石崎さんと近藤さんのワークショップとトークは、つながりの重要性を教えてくれました。どうですか。ここから出発できますか」と。

★HUTAN Groupの活動拠点はたしかにボルネオ島であるが、ここだけが保全されればよいなどとはいうまでもなく思っていません。地球上にある同じような根本的な問題を解く、つまり脱ジレンマに挑戦するチェンジメーカーの育成が本意でしょう。

★松平先生と意気投合したのは、そこだったと思います。このプログラムは昨年の中1にも行われました。そして彼らが中2になってからも、別プログラムを石崎さんと近藤さんは行い、うながりを継続していくのだそうです。生徒の成長が楽しみですね。

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★カリキュラムマネージャーの瓶割先生(数学科教諭)も、中1の探究に取り組む姿をみながら、「今年の高3(高入生改革1期生)の大学進路が、今までとそうとう違うんです。偏差値で選んでないという明らかな傾向がみられます。一般入試も含めてすべて決まりましたら、ご報告しますが、明らかに英語やPBLの体験を生かせる大学を探した生徒が多くなっています」と。

★すると、松平先生は、「そういうのが本当の教育の成果ということですよ」と。偏差値競争社会のなれのはてが、ボルネオ島の森林破壊や環境破壊に加担したことだとなるのなら、そのような進路指導はアサンプションはしないのだと静かな情熱を感じました。

★たしかに本物教育以上に何を求めるのでしょうか。熱い思いに感染したまま大阪を後にしました。

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アサンプション国際中学校・高等学校の≪Z世代≫生徒 PBLを深め根本問題をたどる。(2)

★石崎さんは、問いを解き明かしながら、ときどき生徒と対話も交えながらカジュアルにレクチャーしていきます。まずはボルネオ島がどこに位置し、どの国に属しているのか、そこにはどんな先住民が暮らして、多様な生物がいるのかなどを問答していきます。

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★先住民は「ありがとう」という言葉を不要とするほど、すべてを分かち合い、私たちのように自分の所有にこだわらない生き方をしているなどということがさりげなく語られたり、テナガザルやオランウータン、テングザル、サイチョウ、ラフレシアなど多様なボルネオ島固有の動植物の紹介もありました。

★さりげなく石崎さんはかたりますが、そこには、私たちが当たり前と思っている経済社会とは全く違う社会や生物多様性の広がりがあることの希少性を語っていたのです。中1の段階では、まだ好奇心のほうが強く、その背景にある問題にはまだ気づいていませんでした。

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★しかしながら、パーム油が今ではボルネオ島でとれる量が多い話となんと私たちの生活用品や食料品に使われていて、油の中でも世界の消費量が最も多いというデータ分析の話を聞きながら、なにやらただ事ではないというこちに気づき始めた生徒がでてきました。中1クラスの雰囲気に変化が起こってきたのです。

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★そして、そのパーム油をとるために、ボルネオ島に世界の企業がどんどんやってきて森林伐採をし開発している写真をみながら、生徒はさすがに、気づくわけです。

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★この大切な生態系が破壊されているということに。これは大変なことです。しかし、ただ大変だでは石崎さんの話は終わらなかったのです。

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アサンプション国際中学校・高等学校の≪Z世代≫生徒 PBLを深め根本問題をたどる。(1)

★アサンプション国際中学校・高等学校は、21世紀型教育改革を推し進め3年が経ちました。その改革の制度的側面は、共学化と名称変更でした。そして学びの側面は、ハイレベルな英語とPBLとICTの活用でした。

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★制度的側面の改革は経営的な側面でもあり、それは決断したらすぐに出発できますが、学びの側面は、そう簡単ではありません。試行錯誤、手探りをしながら研究開発をしていかざるをえません。時間はかかります。生徒といっしょに<新しい学びの経験>値は教師もあがっていきます。したがって、焦らずじっくり身構え、小さく始めて大きな渦になって学内学外を巻き込んでいく進化をたどります。

★今回も、中1の探究の授業で、「ウータン・森と生活を考える会 HUTAN Group」の石崎雄一郎さんと近藤美沙子さんをお招きし、ワークショップを開催していました。同校の探究のベースの1つには、SDGsの探究があります。3年目とあって、SDGsを知って理解するから、自分たちで何ができるかへだんだんシフトしてきていますが、何より世界の根本問題を解決しようと実際に活動している方々の話に耳を傾け、大きなそして深い気づきを抱くことは、自分たちがなぜ行動しなければならないのかという内発的な意義を有することができます。

★HUTAN Groupで、石崎さんと近藤さんは、ボルネオ島の森に多様な生物と共に住む人々の環境を守る活動をしています。中高生のボルネオでの体験ツアーや研修も行っています。

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★まずは、9つの問いをグループで考えるところからワークショップは始まりました。ボルネオ島は世界で一番大きい島なのか?ボルネオ島ではチンパンジーが群れを成して生息している?など一見知識問題のような問いを考えていきます。

★しかし、解き終えるにしたがって、その問いが重要な循環を示唆していることが判明していきます。一見関係ないようなことが結びつき、その結びつきは、実は遠くボルネオ島の話だけではなく、いまここにいる自分たちに折り返ってくるということに気づきます。

★石崎さんは、生徒たちが一通り問いの解答を終えたところで、一問一問解き明かしていきます。解き明かしが進むにつれて、SDGsに取り組んでいる自分たちは、いかに対岸の火事という態度をとっていたか思い知らされるのです。

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2019年11月26日 (火)

PBLの世界(45)アイデアか実行力か。

★橋下徹さんの著書「実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた (PHP新書) 」は、わたしの幾人かの盟友と読書会したい本です。私立学校とはあまりいい関係にない方だし、グローバルな政治経済や新しい政治経済に関してはあまり参考にならないと言われるかもしれません。

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★たしかにそういう一面もあるでしょう。しかし、私立学校、特に首都圏の私立中高一貫校は25万人くらい≪Z世代≫生徒がいる巨大コミュニティです。今は、各校がそれほど強い絆で動いてはいませんが、対文科省となれば、ゆるやかですが、一丸となるわけですから、ゆるやかな理念共同体であるわけです。

★この組織は、そう新しいものでは確かにありません。しかし、サバイバルしようという意志は強いので、組織自体変容をしようともしています。

★このとき、この25万人くらいいる共同体が、未来に向けて一斉に動き始まるには、いつまでも東大ピラミッド受験社会にしがみついてはいられません。

★そこをぶち壊すのはだれでしょう。それは私の盟友あなたたちです。

★あなたたちは、1人ひとり、一国一城主で、自分の組織をもっていますが、そのビジョンは、私立学校全体にとって最適化されている必要があります。自分の組織との関係という部分最適化だけではなく。もちろん、いきていくには両方必要です。

★ただ、ひと・もの・かね・情報を動かして、25万人の共同体に影響を与えるには、私立学校全体と実はそれが世界全体にとって最適化されているものである必要があります。

★ローマのパパ様の来日はすてきでしたが、かのイエズス会がかつて日本にやてきた本当の意味を考えれば、13億人の共同体を動かすというのは、やはりひと・もの・かね・情報をいかに巧みに、そして世界が納得する理念で動かすかです。

★宗教団体だけではなく、IT業界だって、何億人も動かす力をもっています。

★しかし、ローマのパパさんが小さな国バチカンで大きな動きをつくっているように、IT業界が少ない経営陣で世界を動かしているように、25万人の小さな共同体は、世界を変えるエネルギーを持ちえます。

★どうやって、そのとき橋下徹さんのこの書は参考になるでしょう。私の盟友のみなさん、ぜひひと・もの・かね・情報をダイナミックに動かしていきましょう。新年会はそこにテーマを絞ってやりましょう。私はノンアルコールドリンクで参加しますが。

★そうそう、アイデアか実行力か?それは組織がアイデアを必要としているか?実行力を必要としているか?両方を必要としているか?です。どんな組織にしたいかは自分たちが対話によってきめればよいだけです。橋下徹さんの属した組織はアイデアより実行力を優先しなければならなかった理由があったのでしょうね。

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PBLの世界(44)教師と生徒が共に<新しい学びの経験>を創る意味

★首都圏模試センターの「思考コード」が注目されています。一般に、このコードは、試験問題を解決する過程の評価として活用されます。知識を憶えるのは得意でない(というか嫌い)でも、知識と知識を結びつけるのは得意(好きだ)なんてことが、各コードの正答率の凹凸で了解できます。

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★しかし、ここで( )に書いた考える側の気持ちを前面にだすと、上の図のように、A3、B3、C1、C2、C3の思考領域は、ブレイクスルーや気づき、発見があるので、ワクワク度が膨らみます。

★<新しい学びの経験>は、上記の右側のワクワク度がはじけるというかはみでるイメージです。これに対して、従来の20世紀型教師は、客観的で論理的な思考をきっちり収めればそれでよいと考えていますから、21世紀型教師と≪Z世代≫生徒がワークワークしながら学んでいる様子をみて、基礎学力ができていないのに、言葉ばかり先にでるんだからとか、思い付きだけではダメだとか、生徒の創造性の芽を摘むようなことを平気で言います。それがパワハラや失言に近い抑圧的コミュニケーションだということに気づいていません。

★もし「こどもの学習権」に創造する学びの権利というのが、明快に属することが明らかになったとしたら、この抑圧的コミュニケーションは権利侵害ということになるでしょう。

★しかし、意外とそういう低次コミュニケーションは多いですね。創造的あるいは高次コミュニケーションを育てない限り、社会は一向に好循環を創るように変わることはないでしょう。

★PBLは、教師と生徒が共に学びワクワクするのですが、同時に創造的あるいは高次コミュニケーション能力が豊かになっていくのです。

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2019年11月24日 (日)

教師の働き方改革はもっと大胆に。ルーチンから50%解放を!

★国際政治経済情報が中心の「Wedge2019年12月号」で、「教師の働き方改革の盲点」という記事が掲載されています。記事の中身は多くの方が語っているようなことなので、ここでは触れませんが、重要なことは、「教師の働き方改革」は一気呵成に世界同時的に経済が減速すると予測されている2020年のあおりをくらう日本経済にとって急務だという意識が政治経済界で高まっているということですね。

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★日本の資源は、人材しかないとは前々から言われています。だから教育投資なのですが、それはハードパワーではなくソフトーパワーへの教育なのです。だとするならば、教師は極めて重要な使命と役割を有しているのに、ハードパワーを伝授することしかできない環境にあります。

★これを生徒がソフトパワーを身に着けることができる環境に転換できるように学校改革や働き方改革をやるしかないのです。

★そうはいっても、超低金利経済社会で、大企業が設備投資を控えているのに、世界中ローンをして個人消費経済は伸びているという金融バブルではなく消費経済バブルが起こっている以上、現状維持でいたいという教師も多いでしょう。

★大学入試改革がうまく進まない理由の1つにこれが在ることも否定できないでしょう。

★しかし、それはサブプライムローンと同じ構造ですから、やがてはリーマンショック級の崩壊が訪れます。

★本当にそれに備えなくてはなりません。そうするためには、教師は今の半分の時間しか授業を持たず、半分の時間は生徒に任せtも大丈夫なように、生徒のコミュニケーションの能力を一気に高めることです。≪Z世代≫の中にはそういう生徒がたくさんいます。

★ICTというかAiの協力をかりれば、それはますます可能でしょう。これは、今でもできる現実的なコトです。PBLの授業や学びをやるとそういう急激に成長する生徒がでてきます。

★では、教師はもう半分で何をするのかというと、大学や民間研究所で研究をします。その成果を授業の中に活用していくサイクルをつくります。

★中高生でも、大学や民間研究機関で学べる機会を増やします。こうしてソフトパワーを教師も生徒も育成していくのです。労働時間は半分ですが、給料は変えないのですから、実質所得倍増計画です。そして、研究の場では、内容によってはソフトパワーが経済になるわけですが、ある意味パラレルワークができる働き方改革をします。

★金になるかならないかと研究の相関は、相乗効果を生むでしょう。ソフトパワーを自己陶冶する内発的モチベーションはさく裂するでしょう。

★大学もそうなれば、生徒募集にはこまりませんから、無理や変な入試改革をする必要はなくなります。とにかく、ルーチンから50%解放を!ということです。

★そうなれば、大学が変な入試改革をやらず、まともな生徒募集を考えるでしょう。ソフトパワー重視ですから、今までの一般入試進路指導はすべて不要になります。この入試のためにソフトパワーを鍛えることができないなどといっているうちは、働き方改革はできません。

★指定校推薦入試もやめます。AO入試も、公募推薦もやめます。ソフトパワーをどう鍛えてきたかをたがいにやりとりできるアドミッションオフィスの機能を強化するだけです。学費は、大学で研究しながら稼げる起業化を推進して、支払います。というか、各学部が独立採算で、研究員を雇用するような形にします。

★今までのような中高大という執行猶予期間は降り除くのです。働かない者は食ってはいけないではなく、研究しない者は食ってはいけないとなるわけです。

★そうすると、中高生の高次思考力とマインドフルで高レベルのコミュニケーション能力の育成ということが必須になります。国語という教科でも社会という教科でも理科という教科でも数学という教科でもこれは可能ですから、どうせなら合科にしましょう。そうしないと授業は半分だけすればよいということにはなりません。

★探究とどこが違うのか?合科では、テーマは自由というわけではないのです。むしろ探究も不要です。なぜなら研究に直結すればよいだけですから。とにかく、今まではハードパワーで金を稼ぐための執行猶予期間があまりに長すぎたのです。

★合科による高次思考とハイレベルコミュニケーションの基盤を鍛え、即研究のための起業をするという体制づくりが急務ですね。そんなことやれるのか?そのモデルの1つがHTHですね。

★マジ、再びリーマンショックが来ますよ。まっ、それからソフトパワーの重要性に気づいて、立て直すというのもありといえば、ありですが、そっちのほうが相当大変そうですが。

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クックパッド×静岡聖光×聖学院(了)料理創りの世界を広げるかなたに見えること。

★児浦先生のレゴ®シリアスプレイ®のワークショップが始まりました。テーマは「料理をしたくなる世界をつくり広げよう!」です。生徒は、料理創りを個人的な出来事として経験し、さらに料理にかかわる世界の諸問題を知りました。そこで、知った以上は、自分だけが楽しんで終わりにするのではなく、その楽しさを多くの人と共有し、諸問題を解決していきたいというグロースマインドセットを児浦先生は仕掛けたのです。

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★レゴ®シリアスプレイ®は、レゴ社が開発したものですが、そのコンセプトはMITメディアラボのシーモア・パパート教授によっています。教授はピアジェのもとで研究していました。パパート教授の後を継承してプログラミングと結びつけて発展させている同ラボのレズニック教授も就学前の学びに一生ものの学びの核があることを発見しています。やはりピアジェの系譜です。

★パパート教授は、ピアジェの系譜を継ぐ者として<経験>と<数学的思考>をきちんとセオリーの基盤にしています。また学びの方法は、20世紀型の3Rではなく、21世紀型の3Xを提唱しています。3Rとは、要するに読み・書き・算盤です。3XとはリサーチとディスカッションとプレゼンテーションというPBLの構成要素ですね。

★児浦先生は、数学教諭ということもあり、レゴ®シリアスプレイ®ヤーとしてセオリーを大切にしています。中には、このセオリーを全く理解していないプレイヤーもいますが、その点児浦先生のレゴを活用したワークショップは本物です。その本物ということが、今回のコラボワークショップの成功の要因の1つだったことは否定できないでしょう。

★最初は、レゴに慣れ親しむためと互いのメンタルモデルを知り、受け入れ、チーム力をつくっていくレゴによるいつものイニシエーションからスタートします。そして、ウオームアップしたところで、今まで考えてきた問題の整理として、「男性の料理を阻んでいるもの」と「料理は女性がするものだという考えが引き起こすこと」を考えるお題を出します。すると1人ひとりが沈思黙考していきます。

★両校とも、タイやマレーシアの同年齢など多くの人びととグローバルな交流をしていますから、互いに存在する壁を話し合い、そこをぶち破っていく思考には慣れています。そのせいか、ここはすっと没入していきました。

★そのうえで、児浦先生は、「あなたが考える男性が料理をしたくなる世界をレゴで表現しよう」というお題を提示します。

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★壁を壊す方法やつくりたくなるモチベーションが生まれる方法、マーケティング的なアプローチの方法など、多様な考えがあふれでます。そしてレゴによる表現も様々です。

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★参加者30人分のアイデアがレゴに変換されます。この変換という難しさとアイデアとのズレをどうするかが、ものすごく楽しいわけですが、これは料理を創る時と同じかもしれません。

★ともあれ、チームで、できあがった自分のレゴの意味を語り合っていきます。世界を創る第一歩は意味つけという重みづけです。

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★そして、1人ひとりのレゴとその意味付けを、今度はチームで結びつけます。まずは1人ひとり分割しておいて、今度は合成するのです。分解と合成も数学的思考ですね。そしてこれも世界創りの方法の1つです。と語っているのは、ネルソン・グッドマンという数学者です。当然、パパートも了解しているはずです。

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★さて、合成する時、生徒たちは、順序づけを考えていきます。そして関係づけたらさらに意味付けをしていきます。モチベーションとマーケティングそして景気を結び付けたり、生成したモチベーションを選択意志にどう転換するか世界創りの話はこれまた多様です。

★そしてさらに、その世界を広げるための方法を、ポストイットで挿入していきます。削除・挿入も世界創りの大切な方法です。

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★できあがったら、発表するチームの周りを囲んで、プレゼンテーションに耳を傾けます。外から見ていたので、詳細はわかりませんが、自分たちが創った世界について愛情をもって話し、それは聞いている方もプレゼンの番が回ってきたら同じことなので、やはりリスペクトして真剣に聞いています。

★だれかが料理を創るのではなく、1人ひとりが創ることができれば、おそらくここで展開しているのと同じ光景を世界中で見ることができるでしょう。誰かが労働して誰かがそれを仕切っている。これは料理をする人と食べる側の人との間にある境界線と同じでしょう。

★今回の料理を創るプログラムの挑戦と聖学院や静岡聖光学院で行われているレゴ®シリアスプレイ®というプログラムは、世界中が模索している新しい経済への転換に対応する新しい学びの経験に相当します。

★SDGsのために世界中が動き始めています。AIをはじめとするICTの進化も加速しています。その過程で限界費用ゼロ社会が見えてくるといわれています。今のような男性中心社会や長時間の労働から解放されるとも言われています。そのとき私たちは何をして楽しむのでしょう。今回のプログラムはその未来へのパースペクティブを広げて見せてくれたのです。

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クックパッド×静岡聖光×聖学院(4)料理創りは世界の平和を創る。

★午前中の料理創りのプログラムが終わると、次は学びのスペースに移動してワークショップ。小竹さんによると、最初に料理創りを持ってきたのは、先生方とスタッフとの対話によってそうなったということです。 

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★最初にインプットするより、まずは体験したほうがよいのではないかということのようです。なるほど、料理創りのプログラムにしても、学びのプログラムにしても、<知識>からではなく、<経験>から学ぶというのはセオリーなのでしょう。もともと料理創りはlearning by makingとして、すでに大きな意味では学びですから、同じ根っこをもっているのは当然なのかもしれません。

★しかもクックパッドは、全世界に拠点を有しています。<料理>は音楽や美術やスポーツ同様、世界の共通言語です。もちろん広い意味でです。

★そうなってくると、コミュニケーションという<置換>ができるわけですが、そう捉えなおすと、世界中に<コミュニケーションの断絶>がなんと多いことか。この断絶の壁をなくしていくことは、それだけでもう世界の平和を生み出す源泉でしょう。そんなことを思い描いていたら、最初のワークショップは、「料理とジェンダー・ギャップ」というテーマでした。

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★ファシリテーターは、クックパッド株式会社の久井田宙太郎さんでした。日本における男性と女性の料理の時間の違いなどたくさんのデータを生徒のみなさんと共有し、料理におけるジェンダーギャップを考えていくワークショップでした。

★男子生徒にとって、料理は最も身近で最も遠い存在でした。なるほど、最初に料理創りのプログラムを始めたのは、身近であるにもかかわらず、無関心だった料理を楽しんで創意工夫してつくることによって、個人的な出来事(日本では自分事という言葉が流行っています)としてかかわりをもつ体験をしようということだったのですね。

★それは成功だったと思います。かかわりは<愛>を生みだしますから、料理を自分にとても大切なものだと生徒たちは思い始めました。その料理で、ジェンダーギャップをこんなに生んでいる日本社会。それでよいのか?という新たな課題が自分の内側から湧きだしてきているではありませんか。

★SDGsの学びを行っている両校では、ジェンダーの問題をなくすことが、17の中のグローバルゴールズの1つであることは知っています。ですから、彼らは、なんてこったジェンダーの問題を生み出しているのは遠くの大人だけではなく、なんと自分からも生み出しているではないかと痛みを感じたことでしょう。

★男性ももっと料理を楽しみ、ジェンダーギャップをなくしていくことは、自分たちも始めることができるのだと。そのコミュニケーション行為は世界平和につながるアクションなのだと。もちろん、この段階では、まだモヤッとしていましたが、次の児浦先生のレゴ®シリアスプレイ®につなぐ、内発的モチベーションに火が付くには十分すぎました。

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クックパッド×静岡聖光×聖学院(3)料理創りと学びのプログラム創りの背景にある<信頼>。

★クックパッド株式会社のキッチンラウンジに30名もの男子が集結して料理を楽しんでいるすてきな光景は、しかしながら、当たり前ではないのは言うまでもありません。しかも、静岡聖光学院と聖学院という両男子校の生徒が集まったのも、最初は偶然であったかもしれませんが、このシーンをデザインするまでには、相当の準備があったことでしょう。仕込みの情熱は想像を絶すると思います。

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★そもそもの出発点は、静岡聖光学院の校長星野明宏先生とクックパッド株式会社の小竹貴子さん(ブランディング・編集 担当VP)との出会いからだったようです。星野先生は電通マンだったし、小竹さんも博報堂出身ということもあって、電博の電気がいきなり走ったのでしょう。教育と料理は人間の成長にかかわる最も重要な領域です。

★当然化学反応が起きたに違いありません。あらゆるアクションは、コラボレーションするのが社会的インパクトを生みだします。学校とクックパッド、そして、男性原理を生み出してきた元凶と揶揄されがちな男子校の新生をアピールするには、男子校同士の結束は欠かせません。

★となると、星野先生の盟友児浦先生がでてこないわけにはいきません。

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★聖学院の児浦良裕先生(広報部長 国際部長 21教育企画部長)とは、教育業界でその名を知らない人はいない新しい学びの革命家です。中学入試で新たな風をトルネードにまでしたてあげた思考力入試の仕掛け人です。レゴ®シリアスプレイ®で、子供がそこまで考えることができるのかという大人の愚かな先入観をぶち壊してしまう才能開発プログラムを創出しています。

★もともとベネッセのトップセールスマンであり新しい学びの開発者です。電博とベネッセのミームが出会えば、もう化学反応はさく裂するしかないでしょう。

★そして、そこにクックパッド株式会社の岡根谷実里さん(コーポレートブランディング部)が加わりました。児浦先生が、とにかく岡根谷さんは、天才的だ。頭の回転も速いし、そのパワフルな行動力に、男子校に潜むジェンダーギャップの壁は一掃されないはずはないといつも語って聞かせてくれるのです。

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★この日も、総合司会から、ICT機器の操作から、生徒たちが料理をしているときの間髪入れずのコメント力で、雰囲気を明るくしているMCまでとにかくマルチな言動力に驚愕しました。

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(静岡聖光学院の教育を支える3人。左から、星野校長先生、平本先生、古屋副教頭先生)

★そして、静岡聖光学院のPBL授業を牽引する平本直之先生も加わりました。今年4月から静岡聖光学院は星野先生が新校長に就任するや急激な変貌を遂げました。グローバル教育の破格な広がりと勢いそしてPBL授業の進化は凄まじく、外部評価も大評判です。そのPBLを牽引しているのが平本先生です。

★ここまで人材が集まれば、あとはどうなるか推測するに難くありませんね。互いにリアルに行き交い合うのは当然ですが、Web上のプラットフォームやメッセンジャーなどでどれだけのやりとりがあったかしれないでしょう。ブレイクスルーの連続だったと思います。そして今回のプログラムに見事に収束したのだと思います。

★出来る人とは、どんなに多忙でも、知恵と情熱で創造してしまうものですね。そして、そのことを知っている生徒の皆さん。この世はとかくシステムとしての<信頼>(金・クレジット・契約・売買・・・)が前面にでがちですが、ここにあるのはマインドフルな<信頼>です。料理創りと学びのプログラム創りの背景には、叡智と情熱が結合したマインドフルな<信頼>あってこそだと、キッチンラウンジのあちこちで生まれているコミュニケーションの光景は物語っていたのです。

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クックパッド×静岡聖光×聖学院(2)料理創りは、創世記そのものだった!

★料理ができたら、各チームの料理をならべて、それぞれのコンセプトを語るギャラリートークを行いました。

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★たとえば、あるチームは、プランニングしてから創るというより、目の前の食材の特性を生かしながらというか、ようするに適当に創りましたといいながら、そのコンセプトは「最後の晩餐」でした。いくらなんでも、そこかい、両男子校がキリスト教の学校だからといってと思った瞬間、あっ!なるほどなるほど、ここでいっている「適当」とはいい加減ではなく、良い加減という意味だし、土など目の前にあるもので、神は人を創り、世を創ったという創世記を下地(無意識かもしれないですが)にしたのかと合点がいきました。

★たしかに、プランニングするなら、食材から準備したいところだろうけど、目の前にある食材を使うのだから、その食材が何に活かせるかを考えながら創る(これもプランニングの一種ではありますが)のは当然だ。これって、レヴィ・ストロースのいう「ブリコラージュ」と呼ばれている作り方ではないかと気づいたとき、やはり料理創りは、世界創りに直結するという話なのだと1人興奮してしまいました。彼らの「野生の思考」が目覚めた瞬間ということだったのです。

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★またあるチームは、一見すると見ためは美しくないけれど、これは、現代社会の混沌とした姿を表現していますと語り始めました。

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★何を言い始めたのかと参加者の耳目全部集めました。

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★本当に大切なものは内側にあるというコンセプトですと。ああ、あのときのハンバーグが中に敷き詰められているのだと。それにしてもインパクトありありです。現代社会問題を彷彿とさせる料理。料理による「見立て」とはやるなあと感動しました。

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★あのときの食材が、こんなにも変容して料理になっているのは、建築と一緒だし、人間の成長構築とシンクロします。

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★そんなことを考えていたら、お食事タイムになっていましたが、やはりここが一番楽しいのかあ!

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★これほどの集中力は痛快丸かじりです。料理は完食しなくては。ここは宮沢賢治の精神のあふれるところですね。

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★児浦先生も生徒の創った料理を分かち合っていました。それにしても、あっという間に平らげていました。男子校パワーの面目躍如です。

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2019年11月23日 (土)

クックパッド×静岡聖光×聖学院(1)一体何が?!男子校料理ワークショップ!

★本日11月23日(土)、新時代に向けて異変がおきています!クックパッド株式会社の本社恵比寿ガーデンプレイスのオフィスには、キッチンがあります。不思議なすてきな空間です。そこに男子だけが集結して料理をしているではないですか!一体何が起きているのでしょう。

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★どういう経緯からかはわかりませんが、このかわいらしい空間で、クックパッドと静岡聖光学院と聖学院がコラボして料理ワークショップを行っているのです。

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★食材のうち、野菜については、静岡聖光学院のキャンパスで育てられたものです。自らつくったものを加工して身体に入れるという循環をさりげなく展開していくワークショップです。どうやらただ料理をしているだけではなさそうです。

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★キッチンの空間に隣接しているスペースはレクチャーやディスカッションできる学びの空間が広がっています。簡単なコンセプトが話された後、チームごとに料理のプランニングをして、早速作っていくわけです。互いにできあがった料理をシェアすることになりますが、そのあと3時間くらい時間があります。

★ここで、何か化学反応が起こるのでしょう。

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★いい匂いが漂い始めています。

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★いよいよ盛り付けも始まりました。色彩配置のセンスもなかなかいい感じです。男子校の生徒が料理を楽しんでフロー状態(没入)になっているのはもはや非日常空間です。料理は、労働から解放されると一気にプレイフルになります。だれかに作ってもらった料理を食べるだけではなく、料理を創るところからはじまるワークショップ。急に何か重要な意味が開かれてきたではありませんか!

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工学院のG-STEAMとPBL(02)工学院のZ世代の脳科学

★先月、工学院は「2つのSTEAM教育フォーラム」を開きました。教育関係者や保護者、メディアの方が参加し、ワークショップを通して、2つのSTEAMを体験。そしてパネルディスカッション型のリフレクションを行いました。中1、中2の工学院の≪Z世代≫が、ファシリテーターとして共に学びました。

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★その中2生の理科の授業をリサーチすることができました。彼ら≪Z世代≫は、授業の外でシンガポールや国連、ビッグサイトなどですでにSTEAMベースの提案やモノ創りをして活躍しています。このような教室から外にでて活躍するSTEAMと今回のような授業の中でSTEAMを学ぶ機会が2種類あるのです。

★理科の中村先生は、目と耳の感覚器官のメカニズムについて、単元を通してPBL型授業を展開していました。感覚器官のメカニズムを様々な刺激を体感しながら考えていくアクティビティや目チームと耳チームに分かれてリサーチし、ジグソー法的にあるいは複眼的に情報を伝達し合うアクティビティを挿入したり、サイエンスのコンテンツを理解していくインストラクショニズム的な展開がなされていました。

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★知識をいきなりインプットして記憶する強制的な授業を行うのではなく、まずは自分たちで調べて、イメージを結んだあとで、レクチャーを受けるというPeer Instrution Lectureも仕組まれています。ここを短時間い詰めていくには、Webの力は絶大です。なるほど「テクノロジー」の力も活用しています。

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★しかし、なんといってもすさまじいのは、生まれながらにして目が見えない子供が、現実の世界をどのように認識していくのか脳科学の話にシフトしていくところです。クライマックスが用意されているのです。目は視角野が反応し、耳は聴覚野が反応するという生徒の理解を、ある意味ひっくり返す眩暈がマインドセットされていたのです。

★目の見えない子も、視角野が反応しています。どうやら、脳は要素分解主義的な発想では理解ができないメカニズムのようです。

★授業終了後、教務主任の田中歩先生は、中村先生の授業のリフレクションを共にしていきます。中村先生の情熱的な理科の専門的な説明にじっくり耳を傾けながら、ダイレクトな学びとしてすばらしいと確認しながら、中村先生自身が気づいていない、でも実際にはとてもすごいリベラルアーツ的な、つまりここにこそSTEAM教育の肝があるわけですが、授業が展開されていることを共に気づきたいと感じたようです。それについては、他教科の意見も交える方が気づきは豊かになるので、午後からのチーム田中の研修で検証することにしたようです。

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★チーム田中の研修では、互いのPBL授業のメカニズムを分析し、気づきを得る目的で行われています。各教科各教師それぞれのPBLがあってみんないいわけですが、互いにシェアすることで、相互に刺激し合いPBL型授業のクオリティが向上していく成果があがっています。

★今回も、新海先生のファシリ―トによって、スクライビングをして、アクティビティタイプ分析をして、思考コードの時系列分析をしていきました。中村先生の意図を共有しつつ、それぞれの教師の気づいたアイデアをシェアしていきます。

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★授業というのは、教師の授業デザインと生徒の身体脳神経系全体の活動の両方のセッションで成り立ちます。1人で授業をデザインすると、どんなに生徒の内側から生まれるアイデアを大切にしようと思っても、教師の設計した理解の線路の上を走らせることになりがちです。

★そこで、田中歩先生は、アクティビティという生徒の活動に注目して授業をリフレクションする研修を行っています。また、知識の理解で終わることなく、論理や創造を≪Z世代≫が楽しむ授業になっているかどうか思考コードでモニタリングしていきます。

★田中歩先生は、中村先生の授業を通して、≪Z世代≫は身体脳神経系全体をどのくらい活用したのか、生徒の脳の中にはいりこんで、リフレクションし、チームメンバーと共有していました。

★五感と脳と外界の関係を理解する理科の授業ということもあり、≪Z世代≫の脳科学に思い馳せる豊かな時間となりました。工学院のPBL型授業は単元テーマのダイレクトな学びとリベラルアーツとしてのインダイレクトな学びがカップリングされているということでしょう。ここにもう一つのSTEAMである工学院のPBL授業の肝があると感じいりました。

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2019年11月22日 (金)

第10回 スペシャル授業

■2019年11月22日(金)3時限目

本日は、教育学部の免許取得に必須な「介護等体験」に参加しているメンバーが多いため、予定されていたシラバスの内容を変更します。

テーマ)世界平和のあり方は、多様な世界秩序のあり方をめぐる世界戦略によって創り方が違うということはあるのか。このことを考えたうえで、あなたの平和の創り方を論じなさい。

サブクエスチョン)
・IBで学んだことが生かされれるのか?
・10の学習者像で世界平和は本当に創れるのか?
・10の学習者像が考案された時期には、今のようなICTやAI、フィンテックの普及はなかったが、学習者像をアップデートする必要はないのか?

資料)
「Wedge (ウェッジ) 2019年11月号【特集】ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す」から

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2019年11月20日 (水)

工学院のG-STEAMとPBL(01)活躍する工学院のZ世代

★工学院大学附属中学校・高等学校は、毎年教育のアップデートが起こります。今やルーチンとなっているオーストラリア留学、スペース&ロボティクスキャンプ、外務省が推進する対日理解促進交流プログラム、マルタ島異文化体験研修、MoGの活動、探究論文・・・思いつくまま挙げていくときりがない。でも、これらはルーチンなのです。

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★同校校長平方先生によると、今後はラウンドスクエアの活動がルーチンになっていくし、SDGsをベースにしたアメリカ、カンボジア、タイ、沖縄などへ分かれてそれぞれ探究する新しい高2の修学旅行が実施されるそうです。

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★「ルーチンになったプログラムもアップデートするし、毎年いろいろなグローバルなコンクールがあるため、毎年新しいプログラムが生まれているというのが現状です。普段の授業がPBL型になているし、ICTを活用するのは当たり前というSTEAM型の授業にもなっているので、特別なトレーニングをしなくても、生徒が挑戦できる環境はかなりできたと実感しています」ということでした。

★そうなると、盛りだくさんで、どんなことをやっているのか全貌をみるのは受験生にとって難しくなってきたということですか?と尋ねると、「そんなことはないですよ。たしかにルーチンだけだとパンフレットを一度つくればそれでよいので、楽ですが、うちの場合は、広報チームが自前でリーフレットを創るテクノロジーの能力が高いので、新しいプログラムは、そのつどリーフレットやSNSで発信できるのです」と、新しいリーフレットの原稿を見せてくれました。

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★たしかについ一週間前に体験してきた新しいプログラムも掲載されています。生徒ばかりか教師もSTEAM的感覚で仕事ができているということでしょう。とはいえ、教師の仕事量相当ハードだなと思いましたが、やりがいはたしかにある環境だなと。

★6年間こうした環境を創り上げてきて、このような多様な新しいプログラムに生徒が主体的に取り組むのは、たしかに21世紀型教育の成果です。もちろん、シンガポールや国連で表彰されているのも、大きな成果ですが、ほぼ全員の生徒がグローバルな舞台で自分の世界を生みだしてくる環境があるというプログラムの存在が成果といえるでしょう。

★そして、平方先生は、「このような環境を整えてきて、そこで生徒が創造性を発揮してさまざまなプロダクトを生み出していく中で、次に生徒が取り組むステージが3つほどまた見えてきたのです」と。

★「結局、自然のメカニズムと社会のシステムと精神の構造が、断絶されてきたのが20世紀だし、それをある意味支えてきたのが20世紀型教育です。この断絶を循環にシフトすることこそ21世紀社会の目標だし、それを支える人材育成の場が21世紀型教育です。今では、工学院の生徒は、自らSDGsに取り組み、世界の平和について国連を始めいろいろなところで提案しています。多くの災害に被災した地域の復興について支援する活動をYouTubeなどのメディアで行っている生徒もいます。世界の平和をスーパーアプリで実現しようと提案するチームもあります。こういう生徒たちの探究は、どんどん深堀して、実は深層/真相にたどりつくのです」と感慨深げに平方校長は語りました。

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★エッ?どういうことですか?「21世紀型教育の改革は、時代の流れや時代の精神に向かい合い、私たち教師が語り合いながら始めましたが、今度の新機軸は、生徒が行き着いた深層/真相から始まるということですよ」とほほ笑んだのです。

★その3つの新機軸とは何ですか?それは、12月15日の「21世紀型教育カンファレンス」で話をしたいということです。PBL型授業、ケンブリッジイングリッシュスクール型英語教育、高大連携、探究論文への取り組みという基盤となっている教育が生成する多様なプログラム。その中で、生徒が行き着いた深層/真相。そこから新機軸が生まれるという教育。これこそ21世紀型教育だと感動しました。

★ところで、成果と言うと、大学合格実績は、受験業界からは問われるのではないですか?と尋ねると、「もちろん、これだけの教育を行っていたらちゃんと生徒たちは自分で選択して、実現していきますよ。偏差値ではなく、自分の才能や技術を鍛えながら探究できる大学を探します。結果的に、受験業界の方が注目するような大学に進学していきます」と謙虚な自信を示したのです。

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2019年11月17日 (日)

<新しい学びの経験>を共に創る(02)システム思考と社会システム論は矛盾するか統合できるのか?

★PBLという<新しい学びの経験>において、対話や議論は当たり前で、そこではシステム思考が展開されますが、PBLのテーマは常に自己と他者の関係における自分の葛藤だったり、自己と組織の葛藤だったり、自他ともに共通する世界規模の問題だったり、レベルは違います が、目の前の現実が成り立ってしまっているシステムそのものをまずはクリティカルシンキングする必要があります。

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★そんなときは、デストピア社会である現実のいまここでの社会のシステムを分析し全貌を把握する二クラス・ルーマンの社会システム論が役に立ちます。同じ「システム」という言葉を使っていても、ピーター・センゲのシステム思考と二クラス・ルーマンの社会システム論は違います。

★ピーター・センゲのシステム思考は、ローマクラブの「成長の限界」でも適用された発想で、啓蒙思想の系譜です。現実のデストピアを分析し認識したうえで、ユートピア的世界を創る思考とは何かを論じているわけです。

★二クラス・ルーマンは、言うまでもなく社会学の系譜で、特にタルコット・パーソンズに影響を受けていて、何かユートピア的な理念を設定することはなく、当事者は社会がデストピアであるという認識はないのです。生活世界のような牧歌的な世界における信頼は現実にはなく、システムが創り出す<信頼>をベースに社会が成り立っていて、そのシステムとしての<信頼>がデストピア的なのかユートピア的なのか判断はしないのです。する必要がないのです。

★その社会ステムがリスクのあることは分かっているし、それを回避しようとするけれど、それはかなり偶然性=コンティンジェンシーのもの、つまり確からしさの問題で、絶対的なリスク回避などできないのです。

★なぜかというと、それは、社会はあまりに複雑すぎて、その全貌をみることは誰もできないから、“Vertrauen als Reduktion von Komplexität=Trust as a Reduction of Complexity”と原著と英語訳では書いてあるように、複雑性を“Reduktion=Reduction”することによって、なんとか全貌を見ることができるだけだからです。この“Reduktion”(ルーマンはドイツ人なので、原典はドイツ語)を「縮減」と日本語では訳されていますが、この訳が妥当かどうかはわかりません。

★文脈から言えば、「縮減」でいいとは思いますが、これだと、複雑性をシンプルにパーフェクトに置き換えるというより、都合の良いところだけを残してと読み取れます。つまり、大事な部分は削ぎ落として、全体を見るから、社会システムは、現実の社会をシステム的に理解するのではなく、権力によって都合よくシステム化されてしまうというのでしょう。

★しかし、一般に、あるいは私たち大衆・公衆・庶民は、“Reduktion”が行われていることに気づきませんから、デストピアかどうか判断つかないのです。

★しかし、もしこの“Reduktion”を縮減というより「ありのままに還元すること」と読み解くとしたら、社会システム論は、自浄機能をシステム内に持ち込むことができます。ルーマンが、社会を生態系的に読み解く、サイバネティックスに傾いていったのは、そういういことなのかもしれません。

★このありなままに還元して<信頼>を形成する社会システム論は、<信頼>の根拠を啓蒙思想的な理念に求める必要がないのです。現状では、そのシステムとしての<信頼>である、貨幣、法、共感、愛、平和などは、<縮減>という作用の中で形成されていますから、自然や社会、精神の循環を欠いた社会のシステムをシステムとしています。

★しかし、<Reduktion>を<ありのままの還元>としての意味で活用するように社会システム論がなると、そのシステムは結局自然と社会と精神のサイバネティックス的な社会生態系を形成しているので、うまくいくのでしょう。しかし、それとて、当事者である、私たちがそのような意図で社会システムを牽引していくのではありません。

★果たしてルーマンがそのように考えたかどうかは、わかりません。そんなことはルーマンは言っていないと専門家からは言われるでしょう。あくまで、ルーマンはきっかけで、社会システムをそのように読む可能性があることを私は語っているにすぎません。

★それは、ピーター・センゲのシステム思考についても同様です。要するに啓蒙思想の系譜と社会学の系譜の両方で、社会を捉える複眼思考を<新しい学びの経験>を生み出すPBLでは必要とすることを確認したかったのです。

★啓蒙思想の系譜は社会構成主義に結実しているし、社会学の系譜は、実証主義に結実しています。前者は人間の創造的役割に期待をして論じているし、後者は論理的で合理的な仕組み自体が自律化していて、人間の創造性などには期待も何もしていないとうことを論じています。

★しかし、ルーマンは、ベイトソンとともに、複雑性を、社会の生態系的な、つまり有機的なサイバネティクス的なシステム論に“Reduktion”する展開をしようとしたとき、期待をしようがしまいが、その担い手である人間は創造性を発揮しているという<統合>が行われる可能性があります。

★ところで、現状の世の中の<新しい学びの経験>を生み出す学びは、実は社会構成主義と言いながら、実際には、それをも<縮減>したかなりお手軽な社会システム論で成り立っています。聖学院や工学院のように、用意周到に2つのPBLや2つのSTEAMという複眼的な思考システムを自覚しているところは少ないでしょう。

★日本の学歴社会が、ここまで日本という社会をスカスカにしてきたのは、あるいは、日本という社会がスカスカだから、学歴社会は自らを脱することができないゆでガエルになったのかわかりませんが、いずれにしても学びのお手軽な社会システム論を前提にしてきたことは確かでしょう。それが昨今の改革茶番劇に映し出されていますね。

★とはいえ、かりに複雑性を<ありのままに還元>したとしても、それは実際には確からさ=コンティンジェンシーで、<縮減>を乗り越えることができるかどうかは、不確実性が高いのです。

★ルーマンもメディアのイノベーションについて言及していますが、当時はAIの存在が実際的ではありませんでした。今、AIを見たルーマンはどう考えたでしょう。AIによって、社会システム論は再びルネサンスがやってくるかもしれません。

★しかし、それは同時に自然状態をクラウドに置き換える啓蒙思想の系譜にもあてはまります。

★こんなことを考えながら、<新しい学びの経験>を考えるリベラルアーツの現代化としてのSTEAMやPBLを創造していくのは楽しいし、重要でしょう。それにしても、そのためには、日本語だけではどうも視野が<縮減>されます。グローバル教育やリベラルアーツの現代化としてのSTEAMやPBLがトータルで行われる学校を選択しなくては、子供の未来のリスクは回避できないでしょう。もっともそれとてもコンティンジェンシーですから、どこまでいっても、自分の柔らかい思考や自分の判断基準のアップデートは必要です。それとても、社会システムに仕掛けられているのかもしれませんが。。。

 

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成蹊 学びの本質「体験」を大切にしている。

★読売新聞オンライン2019年11月14日に、成蹊中学・高等学校の記事「多様な体験学習で自らを知り、夢をつかめ…成蹊」が掲載されています。同校の学びの本質「体験」を大切にしているコンセプトとその多様な具体的なケースについて、詳しく記述されています。ぜひご覧ください。

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(写真は、成蹊のサイトから)

★そのコンセプトについて跡部清校長先生の言葉が掲載されています。とても大切なので、ここでも引用しておきます。

「本校の建学の精神は『個性の尊重・品性の陶冶・勤労の実践』です。この『勤労の実践』を言い換えれば、体験を通して学んだ価値観を基に他者貢献するということです。生徒たちには、機会があるごとに、体験を通して学ぶよう伝えています。それは体験の中で何かにぶつかったとき、その跳ね返りによって自分の姿が見えてくるからで、その体験の場を用意することが学校の役目だと思っています」

★おそらく、成蹊の先生方は、最近の革新的な教育において、<新しい学びの経験>を創るコトが大切だと叫んでいることは、何をいまさらと思っていると思います。もちろん、同校の先生方は品格が卓越しているので、そのようなことを主張することはまずありません。

★しかしながら、静かに、跡部校長が語る言葉の中に、成蹊は<新しい学びの経験>を創り続けてきたのだなあということが了解できます。たとえば、上記の引用部の中のにある「機会があるごとに、体験を通して学ぶよう伝えています。それは体験の中で何かにぶつかったとき、その跳ね返りによって自分の姿が見えてくるからで、その体験の場を用意することが学校の役目だと思っています」という言葉がそれです。

★体験を通して日常では感じたことや見たことがないようなことに直面するわけです。そのとき、いったいこれは自分にとって他者にとってどういうものなのかと<跳ね返って>くるわけです。これによって、新しい自分の変容が起こるというわけですね。この<跳ね返り>とは、<新しい学びの経験>の学習理論でもとても重視されている<リフレクション(振り返り)>ということと同意でしょう。

★学校の役目は、こうした体験の場、つまり<新しい学びの経験>を設定することなのだというわけですから、J.デューイの系譜にあるということを示唆していますし、デューイの現代化が実は昨今の<新しい学びの経験>の学習理論の核心です。成蹊は、創立以来、普遍的な進歩主義的教育を実践してきたわけです。

★日々、同校の生徒は、気象や天文を観察し、データ化し、分析する科学の目を、そのような体験から学んでいます。また、武蔵野の自然(広大なキャンパスそのものがそうです)は、科学的に観察する対象というだけではなく、美術の時間のモチーフでもあり、家庭科の時間の食材の庭園でもあるのです。日ごろの授業も、同記事が書いている多様な体験学習と同様、体験を重視しています。

★このように、体験を教師と生徒とが共有しているからこそ、同校の生徒と対話していると、生徒もいっしょに学びを創り出しているということが了解できます。同記事にこうあるのは、それを示唆しているのだと思います。

「同校の体験学習には、生徒による自主企画も数多く含まれている。今年度は、ミャンマーのイスラム系住民であるロヒンギャをテーマにした映画上映会を校内で開催した。生徒は実行委員会を作り、大学にも協力を依頼して、実現へ結びつけたという。高校生が中心だが、中学生も参加しており、先輩の自主活動への熱意を十分受け止めたことだろう。自ら発信者となり、学年を超えて呼びかけ、ともに学び合うという気風は、同校の伝統となっている。」

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2019年11月16日 (土)

八雲学園のグローバル教育(01)国際的教育ネットワークのビッグバーン

★八雲学園が、ラウンドスクエアの加盟校として大活躍していることが、様々なメディアで取り上げられるようになりました。

読売新聞:国際私学連盟「ラウンドスクエア」で世界に触れる…八雲学園

首都圏模試センター:ラウンドスクエアに正式加入で、世界中の学校とつながる

進学通信:ラウンドスクエアで実践「使う英語」の力を伸ばす - 八雲学園

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(順天の未来の学校を創るフォーラムで、近藤隆平先生は八雲学園の加盟しているラウンドスクウェアの意味について語った。)

★ラウンドスクエアには、世界50カ国のエスタブリッシュな私立学校180校強が、加盟しています。このエスタブリッシュが示唆するのは、日本では想像もつかない凄い教育を意味しています。なんといっても、高邁な精神的エリートが巣立つという意味では、東大エリートを生み出すことを目的にしている高偏差値校の日本の私立学校とは違います。

★この景色が全く違う国際的教育ネットワークの中で多くの学校と絆を深め広げている八雲学園の教育も、多くの刺激を受けて、破格のグローバル教育が進化しています。そしてその進化は止まりません。

★これは、ある意味国際的教育ネットワークのビッグバーンが八雲学園で生まれていることを示唆しています。

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(国際的教育ネットワークのビッグバーンを仕掛けている同校英語科主任の近藤隆平先生)

★前日に米国の新しいネットワークをリサーチしに行き、帰国したばかりの近藤隆平先生に話を聞きました。今八雲学園で行っているC1英語を学ぶ環境づくりやICTを活用したPBL授業は、日本ではまだまだ広まっていませんが、世界のエスタブリッシュスクールでは当たり前の環境だということです。

★しかも、STEAM教育も相当ハイレベルで進んでいるということです。無人自動車のプログラミングまで行い、都市化する国際社会の環境をいかに持続可能にするか中高生が研究していて、日本から世界を見ているだけではわからないことだらけだということでした。

★ラウンドスクエアに加盟したことで、すでに日本からみらたグローバル教育をはるかに超えていたと自負をしていたけれど、そのネットワークに実際に入り込んでみて、新しい気づきや発見だらけだそうです。

★このような教育に刺激を受けて八雲学園の教育もダイナミックに変わっていますが、自前ですべてを実施することはできないので、どんどん連携していきたいということです。八雲学園の日本の文化に接する機会が多い教育やマインドフルネスな教育は、海外の学校からも人気で、毎月のように加盟校の留学生がやってきます。それに、八雲学園のすべての生徒が英語でコミュニケーションをとれる環境になっているため、そこで躓くことがないそうです。したがって、相互連携はどんどん広がっていきます。

★一方で、おもしろいのは、加盟校以外に存在するエスタブリッシュ校との出遭いです。ラウンドスクエアはある意味強烈な理念共同体で、極限の自然体験や自己犠牲も顧みないボランティアなどの経験を大切にする教育コミュニティです。

★ですから、世界のすべてのエスタブリッシュスクールが加盟しているわけではありません。しかしながら、加盟校出身の教師が、やはりそのようなエスタブリッシュスクールで勤務している場合も多く、ラウンドスクエア出身の教師ネットワークは、ラウンドスクエアを超えて広がっています。

★今回も、近藤隆平先生がリサーチに訪れた学校は、ラウンドスクエア加盟校ではないけれど、その学校の教師の1人が、ラウンドスクエア加盟校であり、八雲学園の姉妹校でもあるケイトスクール出身者で、現職のケイトスクールの教師とも当然知り合いだったりと、なんだかずっと前から交流があったかのごとく、コミュニケーションができたというのです。

★八雲学園の生徒は、これからどんどん国際的なネットワークをつないでいきます。歴史は繰り返します。このようなネットワークが、世界を創り、変えていく力になるのは推測に難くありません。

 

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2019年11月15日 (金)

第9回 ドーナツとスヌーピーで「思考力」を解き明かす

■2019年11月15日(金)3時限目

問いA「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」

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0)アクティビティ「ぐるぐる」

1)アクティビティ「ぐるぐる」を通して、問いAを考えることの意味を議論する。

問いB ドーナツと物体Xの関係を「ぐるぐる」で解き明かす。

問いCスヌーピーを「ぐるぐる」で解き明かす。

2)問いA・B・Cを考える過程をリフレクションして「思考力」とは何かディスカッション。


その思考力は、
・10の学習者像とどのように関係するのか?
・思考コード分析
・思考スキル分析

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

3)事後学修「思考力のメカニズムや意味についてまとめる」→メールで提出

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新しい思考力生成(05)首都圏模試センターの「思考スキル」を麻布の問題にアレンジして使ってみる。

★首都圏模試センターのアクション型思考スキルとシンキング型思考スキルを少しアレンジしながら、麻布の30年以上前の問題を考えてみましょう。麻布は、7000字近い物語一題の出題が伝統なんですが、その年は物語と随筆でした。物語は、立原エリカさんのファンタジックな物語で、あっさり解けるので、あれっと思っていると、800字くらいの随筆で、その随筆のテーマである「今個性的であろうとすることは個性的ではない」について、自分の考えを論述しなさいという問題も出題されていました。100字記述だったか200字記述だったか記憶がとんでいるのですが、骨太の問題だなと感じた記憶は今も新鮮です。

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(この麻布の問題を考える時に活用する思考スキル)

★なんとも、これで、バランスをとるとは、麻布らしいというかそうでないというか微妙でしたが、実際に合格したメンバーに話を聞くと、随筆の方は、意外とできなかったということでした。次の6年生が麻布を受験する準備をするときに、過去問としてこの問題に挑戦した時も、意外と苦しんでいるのに気づきました。今ならどうでしょう。

★当時は思考コードはなかったので、思考スキル(はあったのです)だけで詰めていきました。たいていは、<比較・対照>と<因果関係>、<具体・抽象>、<メタファー>という<置換>といったスキルで、彼らは解いていけるので、今でいうなら、思考コードのB2やB3で取り組めたのです。

★<矛盾・逆説>というスキルも、スキルとしてではなく、心情読解の内容としては彼らは理解ができていました。ですから、この問題も随筆ではありますが、考え方は同じです。矛盾や逆説的な心情の構造をそのまま素直に適用して解いていける生徒ももちろんいましたが、スキルとして形式知化していないので、そこに飛べない生徒もたくさんいました。

★当時は、自己言及やパラドクスの記号論理学的な現代思想は大流行りでした。ラッセルやヴィトゲンシュタイン、ベイトソンの話を盛り込みながら、こういうダブルバインド状態をどうやって解き明かしていくかみんなで議論したのを思い出します。

★クリティカルシンキングとかクリエイティブシンキングという発想は、当時はありませんでした。物語も論理で解けるという信念が、邪魔をしていました。

★生徒はいきなり論理的ではないように見える文に直面して、その信念では、もしかしたら解けないのではないかといきなり躓いた可能性があります。今までみたことのない論理的関係に直面した時、しかもその素材文が800字で情報が少なくて、情報獲得が十分できない場合、多くの場合、自分で推理しながら論理を創造していかなくてはならない問題に慣れておく必要があるとリフレクションしていたのを思い出します。

★いずれにしても、図に書きだしたように、スキルをたくさん活用しなければ、この問題は解決しないので、思考コードでいえばB3ですが、もしあなたの個性論についてさらに書きなさいとなったら、C3になるでしょう。そうでないとしても、パラドクスに気づくには、クリティカルシンキングがあれば、迷わなかったのでしょうが、それでも、論理的につめていって、おかしいと感じればよいわけですから、B3でしょう。

★ただ、自分でパラドクスを発見するとなると、やはりC3ですね。

★記述式や論述式の問題の採点について、世の中騒いでいますが、大学入学共通テストの問題に比べはるかに骨太の麻布の問題の採点が成立するのはなぜでしょう。それは麻布という共同体の基準にしたがって、複数の教師が採点し、議論して合意形成して採点していくからです。

★この共同体のビジョンに基づいて合意形成をしていくというシステムは、たとえば、共立女子の総合型の入試においても存在します。大学入学共通テストでは、この採点システムを構築することはなかなか難しいし、国家の学びの統一基準なんてものは、あっていいと思いますか?ここに合意形成の、そして民主主義のパラドクスが存在するのです。

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2019年11月14日 (木)

対話の世界(5)聖パウロ学園 思考のメカニズムについて対話が広がる。

★聖パウロ学園の教師は、生徒の思考力や発想力が豊かになるにはいかにしたら可能かというテーマと同時に実際的な学力を向上することはいかにしたら可能かという複眼的な視野、言い換えれば、鳥瞰と虫瞰の視野を往復しています。あるいは、ダイレクトとインダイレクトな世界の両義性を意識しながら対話します。

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★授業もそうです。たとえば、同校の主幹である小島綾子先生の国語のPBL型授業では、生徒は、羅生門と羅城門の比較をグループワークで議論し整理した後、芥川龍之介がなぜ今昔物語を参考にしつつも、新たな世界を創っていったのかについて議論し、レポートにまとめていきます。

★羅生門と羅城門という複眼思考もそうですが、文学を分析することによって、文学を通しながらも同時に評論的な世界も創り出していくという複眼思考を育てています。

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★この時期、高3の進路をサポートしつつ、同時に来年以降のカリキュラムのアップデートについても対話しています。研修部では、小島綾子先生と高橋先生から、国語科で話し合った「思考スキルと3年間のカリキュラムのシークエンスの関係性」について発表があり、それに刺激を受けて、数学科の松本先生は、さらにその思考スキルから世界制作の方法を抽出して、国語科の提案をさらにブラッシュアップする提案をしていました。

★英語科の大久保先生は、Can-doリストをもともと作っていたのですが、そこに思考コードと思考スキルを埋め込んで、国語科と言語の教科としてつながるかどうか試行錯誤に挑戦してみるという提案もしていました。

★こうした考えを、言語化していく作業を通し、最終的には統合されるのでしょうが、今はまだまとめずに、互いの意識の中に生まれる相乗効果を大事にして、当面対話を続くていくということです。

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★6時間目は、オーストラリアの修学旅行から帰国したばかりの高2のグローバルコースと高1のグローバルコースの生徒対象に、外部講師を招いて「海外大学準備教育」の講演会も開催されていました。海外大学に実際にいくかどうかだけではなく、国内と海外という複眼的な視野を育てる豊かな学びの一環でしょう。

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★教師も生徒も、複眼思考や両義的な世界を見ることができる能力を豊かにしていく宇宙が聖パウロ学園なのでしょう。

 

 

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新しい思考力生成(04)首都圏模試センターの「思考コード」を授業に変換すると、工学院と聖学院の新しい動きとシンクロする。

★思考コードは、私たちが学んだり、考えたり、憶えたり、創ったりする行為をシンプルに表に変換したものです。たとえば、授業というのも、生徒が学んだり、考えたり、憶えたり、創ったりする行為システムの場です。

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★その行為システムの循環をイメージにしてみました。やはり複雑になるので、生徒が自分がどの行為システムをしているのか、これからしようとしているのかなどをリフレクションするには、思考コードの方がポジショニングしやすいですね。

★それはともあれ、学びの行為のシステムの土台は、<経験>です。この<経験>から知識を獲得し、デフォルトモードネットワークとして蓄積することによって、<知識>を出し入れする<想起>ができるようになるわけです。

★この<経験>から知識を獲得する。すなわち、情報獲得するということは、しかしながら、原初的な時代ではないので、当時の第一次<経験>だけからではなく、その<経験>が第二次<経験>としてのテキストやデータになっている場合の方が現在では多いわけです。

★PBLの授業でアクティビティを挿入するのは、テキストやデータは、いつの間にか<経験>が忘却されているので、それを回復して、第二次<経験>として立ち上げる効果があるのです。

★つまり<経験>から学ぶという構えを授業の中に取り戻すわけです。

★今までの20世紀型教育では、知識をインプットして想起する学びの行為だけを行っていたのです。大量消費、大量生産、大量移動の工業生産社会では、イノベーションは一握りの人間が行い、そのほかは彼らが造る知識や技術を憶えればよかったのです。

★ところが、ITイノベーションが起こったとき、未知の世界を1人ひとりが読み解き、創ることができるようになったわけです。

★そうすると、<知識想起>だけでもなく、その<知識想起>を支える<情報獲得>だけでもなく、未知の世界に、そのデフォルトモードネットワークの知識や技術を論理的に適用していく<適用・論理>の学びの行為が必要になってきます。しかも、その論理的に適用した場合、論理構造が巧く当てはまらない場合、論理を修正する場合もありますが、新しい論理関係の発見であると了解して、新しい論理関係を<批判・創造>する学びの行為にパラダイムチェンジする場合もあるのです。

★この<知識想起>と<情報獲得>という学びの行為をA軸思考、<適用・論理>という学びの行為がB軸思考、<批判・創造>という学びの行為をC軸思考に転写したのが<思考コード>だったわけです。このことが自覚されて授業が展開されているのイノベーティブな学校に工学院大学附属中学高等学校と聖学院があります。

★要するに<思考コード>は学びや思考のメカニズムの表であり、この表の一部だけの授業やテストは、人間の学びや思考のメカニズムの循環を破壊していると言えます。20世紀が自然と社会と精神の循環システムを破壊してきたのは、教育のメカニズムもまた循環が断絶されていたからでしょう。

★この行為システムは、同時にコミュニケーション行為システムでもあります。ですから、この学びと思考の循環を個人ワークで終始するのではなく、プロジェクトベースでコラボレーションしながら行うPBL授業になるのも必然です。

★このシステムを行うには、45分授業や50分授業という既成の考え方も変えざるを得ないでしょう。現状はこの規制の中で、コンパクトに行える形式を先生方と創意工夫していますが、今後はこれをどう変えていくかです。この動きが工学院の家庭科と保健体育の教師によって新たに始まっています。聖学院では授業デザイン研究会に参加している先生方が中心に挑戦しています。

 

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2019年11月13日 (水)

アサンプション国際小学校(02)学びの生態系 世界を読み解き、世界を創るスキルを学ぶ。

★今回の授業リサーチのプログラムは、蒲生教頭によるある意図がありました。そうとは知らず、4年生、3年生、2年生の国語の授業を見学してリサーチをしました。

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★4年生は、阿弥先生による国語のPBL授業。テーマは教科書からはみ出て、「学校紹介リーフレットを創る」でした。編集の大枠を共有してから、すぐに作成しようと。生徒は、Learning by makingのアクティビティは、グループワークになると了解しているので、主体的に、グループのワーキングスペースをつくって、ブレスト会議を開始します。

★さすが、<学習する組織>ができていると感動しながら見ていたところ、一箇所席が輪になって配置されている誰もいないスペースも創られていました。何に使うのだろうと観察していたら、あるタイミングで、阿弥先生がそのスペースの一席に座りました。

★すると、各チームのファシリテーターが集まってきて、進捗状況と行き詰っている課題などを共有しはじめました。なんと、そこはメンタースペースだったのです。PBLで、ディスカッションをし続けると、停滞する時があります。そのとき、先生がアドバイスに入る場合もありますが、そこを生徒同士で考えてブレイクスルーが起こる創意工夫としてこのメンタースペースができあがったというのです。

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★小3の海見先生のPBL授業は、「食べ物のひみつをさぐる」がテーマです。材料から食品に変化するプロセスに隠されている何かを探していく探究活動です。最終的には、キーノートでまとめプレゼンするのですが、そこにいきつくまでの準備が始まっていたのです。グループに分かれてマインドマップで、生徒が記憶している知っていることをどんどん書き出して拡散していきます。

★グループだけでは限られてしまうので、ギャラリーウオークをして、さらにマインドマップを拡大していきます。そして、一転して、カテゴリー表に変換していきます。拡散と収束の思考作用を、グループワークとギャラリーウオークの集中と拡散というコミュニケーション活動によって促進しているのです。

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★小2の十亀先生のPBL授業は、「しかけカードをつくって、お母さんに贈ろう」というテーマです。作り方の手順を教えてつくっていくのではなく、どうやって作ったら、お母さんにわかりやすく伝わるのかその方法を考えるところからはじまります。

★ペアワークで、バラバラになった仕掛けカードをつくる手順のパーツを並べ替えていきます。同時に各カードが強調しているところはどこか、なぜそこを強調することがわかりやすいのかなども問答法で引き出していきます。

★子供たちは、創ることの楽しさだけではなく、つくり方の方法を自ら解き明かしていくことにワクワクしながら取り組んでいるのです。

★こうして、小2・小3・小4の国語の授業を見ることで、生徒の発達段階が明快にわかりました。そして、テーマは違っていても、仕掛けカード、食品、学校というそれぞれのミニ世界を読み解きながら、それを今度は自分たちで再構成して新しく世界を創る作業をしているという点で共通しているということも了解できました。

★しかも、世界を創るとき、その作り方の「順序づけ」「分解と合成」「編集」などという世界制作方法を自ら見出すアクティビティを挿入しているというところが共通しています。この自ら見出すという行為こそ、教えてもらうのではなく、読み解く経験、創る経験の中から子供たち自身が潜在的に持っている方法を可視化しているのです。

★そして、チームで議論したり、メンターと対話したりして共有し、さらに必ず授業の終わりに行うリフレクションによって、自分の作り方をリファインして豊かにしていくわけです。

★蒲生教頭の意図は、このことに私が気づくことを期待して、授業終了後のフィードバックの対話の時間を先生方と共有しようということだったのです。第三者がみて、カリキュラムの構造がどのように映るのかをモニタリングしてみたのでしょう。

★それを共有し、自然とできあがった部分もあるカリキュラムの構造を先生方が可視化し、それを再びカリキュラムの構造に埋め込むことによって、より柔軟で有機的なカリキュラムの構造にしていこうということなのでしょう。

★生徒の発達段階と言っても、その発達は、カリキュラムの構造と相互に影響し合っているわけですから、生徒が才能を開花し、豊かになっていくという意味の発達段階は、心理学的発達段階と学びの発達段階の両方がDNAのように螺旋的な発達の連続になっているのかもしれません。

★蒲生教頭のカリキュラムマネジメントは、たんに学びの項目を並べ、それが到達されているどうかをチェックしていくようなマシーンモデルではなく、学びの生態系モデルだったのだと気づいき、感動したのです。

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アサンプション国際小学校(01)対話が柔らかい活力ある組織を創る。

★アサンプション国際小学校は、21世紀型教育改革を実施して3年が経ちました。したがって、3年生までは共学のクラスになっています。しかしながら、改革の準備は1年ありましたから、組織としては、改革にむけて4年歳月をかけています。イマージョン中心のコースとアカデミック中心のコースができていますが、どちらも共通しているのは、PBL型授業と論理的・批判的・創造的思考まで生徒と共に楽しむことです。

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★4年前、PBLの研修を先生方といっしょにやっていったとき、私のアプローチは、手法を教えるのではなく、先生方1人ひとりの潜在的PBL手法を形式知化し共有していくやり方です。改革まで1年しかないのに、そんなやり方では遅い、やり方を教えて欲しいというグループもありました。

★しかし、一方で、本間さんの言うことは解答を教えるわけでもないし、カタカナの言葉も多いから、何言っているかわからないけれど、その言葉の理解ではなく、ワークショップの経験から自分たちが気づいたコトに着目すれば、腑に落ちるところが多いかもしれないと理解するグループもありました。

★私は経営組織の改革担当ではなく、あくまでPBLを通して、先生どうし、先生と生徒、生徒と生徒が<学習する組織>に変容していくサポート担当ですから、この経営組織の葛藤は、じっとがまんしていました。つまり、<学習する組織>と<統率型組織>。

★一時期、<学習する組織>を創ることに共鳴していた私の最も信頼していた三宅教頭が人事異動で改革同士校にいきましたから、事実上私は研修をやることができないでいました。ところが、今年になって、三宅先生が副校長として戻ってきて、4年前<学習する組織>としてPBL型授業を生成していこうとする蒲生先生が教頭になり、そのころからPBL授業において傑出していた阿弥先生、ち密で論理的な今泉先生、ダイナミックな授業展開をする海見先生などと再会を果たしました。また、<学習する組織>を歓迎する丹澤先生も校長に就任したのです。

★急にPBL授業は広がり、<学習する組織>は回転し始めました。

★実におもしろいのは、一時期の空白の間に、先生方は経営組織がどうあれ、<学習する組織>の1つの柱「自己マスタリー」を続け、自分で着々とPBL授業の本質を見極め、アップデートしていたのです。

★ですから、PBLの授業をどうやっておこなっていくのかというステージから出発する必要はなかったのです。しかも、4年前に出会った<学習する組織>グループの先生方は、新しく入ってきた若い先生方も巻き込んで、<学習する組織>も生み出していましたから、新任の先生だからPBL授業の初歩から始めましょうという必要もなかったのです。

★じゃあ私は何をするのか?それは先生方の授業45分を丸ごと見学して、見学しながらリサーチペーパーをアクティビティのロゴに変換して、授業の特徴を見える化します。そして、授業終了後フィードバックとは呼んでいますが、そのリサーチペーパーをきっかけとして<対話>をします。

★その<対話>は、見学させていただいた先生と蒲生教頭と私の鼎談方式になります。できるだけ、気づきが生まれるように、課題を明快にできるように対話していきます。特に私の方はダイレクトな授業そのものの価値だけではなく、その授業を通してどんなインダイレクトな学びを生徒がしているのか対話していきます。ダイレクトとインダイレクトのギャップが気づきを生み出すからです。

★それから、学年によって、つまり生徒の発達段階に応じてPBLのやり方や思考の広がりは違います。先生方はそこはいつも葛藤です。ついどこまでもやろうとする真面目さがあるからです。

★そこは、蒲生先生のカリキュラムマネジメントの問題だからと自分の課題と学校という<学習する組織>の課題を分けていきます。蒲生教頭はそこで得た気づきをカリキュラムに循環させるように学内でまた対話を仕掛けていきます。

★対話やコミュニケーションが内側から組織や社会を生成していくという社会理論がありますが、アサンプション国際小学校は、まさにそういう柔らかい活力ある組織に変容していたのです。

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2019年11月12日 (火)

新しい思考力生成(03)首都圏模試センターの「思考コード」と「思考スキル」は中学受験と中学入試を橋渡しする。③

★首都圏模試センターのすべての子どもに深い思考力を!創造的思考力を!という挑戦は毎年進化しています。このシリーズで紹介している「最難関校・攻略本」には、新しいアイデアがさらに加わっています。

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★それは、1964年東京オリンピックで、日本のデザイナーたちが生み出したピストグラムの活用。当時は、外国人と日本人のコミュニケーションのギャップが今以上にあったため、そのギャップを埋めることを目的に制作されました。

★山下社長はそこに目を付けて、知識と思考(深い思考や創造的思考)が離れ離れになっている子供たちが、イメージでそのギャップを埋められるように、アクション型思考スキルとシンキング型思考スキルをすべてアイコン化したのです。

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★オブジェクト指向のプログミングになじんでいる子供たちはこのピストグラムを、ディスクリプションでプログラミングしていくのが好きな子供は、従来通りの言語化された思考スキルを活用すればよいわけです。

★同センターは、最難関校の入試問題を思考コードで分析しています。どの思考コードの領域を攻めれば、その学校を攻略できるかわかるわけです。

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★今までも、データは見ることができましたが、どんなアクション型思考スキルやシンキング型思考スキルを組み合わせれば、攻略できるかまでは、まだまだ子供自身のものにはなっていなかったのです。

★しかし、このピストグラムによって、子供は子供自身でスキルを活用するダイナミズムが始まりそうです。

 

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2019年11月11日 (月)

新しい思考力生成(02)首都圏模試センターの「思考コード」と「思考スキル」は中学受験と中学入試を橋渡しする。②

★首都圏模試センターの「思考コード」と「思考スキル」のコンビネーションについては、「最難関校・攻略本」に詳しい。「最難関模試」を受けた生徒にもれなく配布されたようですが、他の模擬試験でも解答解説冊子「ブレイク」に、毎回シンプルに掲載されています。

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★しかし、今回同攻略本では、今まで算数のスキル、他教科のスキルと分けれれていたのを、アクション型スキルとシンキング型スキルという分け方にアップデートしています。

★これは、学びのアクションの視点とそのアクションによって何を考えていくかそのプロセスの結節点の視点がシンキング型思考スキルという分け方になっていると同時に結合しています。

★どういうことかというと、思考コードの領域は、レベルと軸の広がりがあるわけですが、レベルをあげたり、軸を越境したりする場合どうするのか?とデータをみて生徒がリフレクションしたとします。

★シンキング型スキルで、比較してみようとか、置き換えてみようとか、具体的に広げてみようとか、抽象的にまとめてみようかなどとアプローチすることもできますが、アクション型思考スキルの「視点を変えてみよう」と身体感覚でアプローチしようとすることもできます。

★では、どうやって「視点を変えていくのか」というと、たとえば、図形の場合、別の角度から見てみようとか、立体を平面に変換しようとか、多角的に見てみようとかなるわけですが、これは全部「置換」スキルでもあります。

★国語の場合、長い文章を理解するには、置き換えたり抽象化したりして、視点を変えていく必要があります。

★アクション型思考スキルでアプローチを開始するか、シンキング型思考スキルでアプローチを開始するか、生徒によって違いますが。全体感覚と分析感覚ということですから、その両方を生徒は最終的には使い分けたり、統合したりして活用していきます。

★成績データをみながら問題を解くプロセスをリフレクションするとき、両面からモニタリングしていくことで、どんな学びの構えを強めたり、どんな思考のプロセス視点の活用をトレーニングしていくか、自覚できるようになります。

★中学受験において、塾では、これは受験勉強の習慣や思考問題の解法テクニックをトレ―ニングすることでありますが、学校においては学びのマテリアルが中学入試問題というアドミッションポリシーから、多様な自然現象、社会現象、精神現象に広がっていくカリキュラムポリシーに発展し、再び大学入試問題へ挑戦するディプロマポリシーに収束していく一連の学びの生態系をつくっていく出発点になっています。

★中学受験では、たしかに合格することが目的ではありますが、中学入試というアドミッションポリシーにつながることによって、合格しておしまいという解法テクニックを受験勉強して終わるのではなく、その先につながっていければ、中学受験勉強をしている生徒にとっては、一生ものの学びのスタート地点にたてるわけです。

★中学受験と中学入試がつながることによって、キャリアデザインが始まると考えてよいと思います。これが断絶したら、なんて無駄な受験勉強に長時間費やしたのだろうというネガティブな気分が生徒のその後の人生を包むかもしれません。

★意外とこのような気分は、受験生にはあるものです。トラウマになるとよく言われていますよね。これでは、自己肯定感は広がりません。これを払拭する思考コードや思考スキルは、中学受験の葛藤を解消したいという首都圏模試センターのメンバーの熱い想いから生まれてきたのです。

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2019年11月10日 (日)

新しい思考力生成(01)首都圏模試センターの「思考コード」と「思考スキル」は中学受験と中学入試を橋渡しする。①

★近年首都圏模試センターは、「思考コード」を開発し、それを模擬試験の成績表に埋め込み、データ分析ができるようにしています。これは画期的な<新しい学びの経験>を学校に先んじて中学受験生に提供することになりました。

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★よく「脱偏差値」という表現が使われることがありますが、これはあくまでメタファーであり、統計学の手法の「偏差値」を誰も否定していません。もちろん、否定して項目反応理論を持ち出してもいいのですが、生徒の知識問題に対する反応はベルカーブにならざるを得ず、項目反応理論を使ったとしても、知識問題を測る以上「偏差値」という統計学的方法論を否定することはできないのです。

★もし項目反応理論と偏差値の関係がわからないという人がいれば、その方はそもそも「脱偏差値」というのをメタファーとして使う以外に統計学的な方法論を批判する立場で語ることは不遜です。

★わかるように説明しろといわれるかもしれませんが、それは虫がよすぎます。まずは自分で考えたり、調べたりしてからです。それをしないで、相手にわかりやすさを求めるのは、そもそもおかしいと反省したほうが良いでしょう。というか、今回の大学入試改革の1つにこの項目反応理論と偏差値の関係の正しい理解の仕方もまたテーマの一つだったのです。メディアも民間英語試験否定論者も、このことを語っている人はいません。

★なぜなら、公平性というのが、経済的格差の話であって、テストの公平性を全く問題にしていないで、論じていることがバレバレになってしまうからですね。大学入試改革は、経済格差を考慮することはとても重要ですが、経済格差を生む大きな原因は学歴社会そのものにあるのに、その中で研究し、その中で執筆料をもらって生活しているので、根本的な原因にマスクをかけ、別の問題点を指摘して、今回の改革がもしかしたら学歴社会を崩すきっかけになるかもしれないとうすうす気づいていて、自己正当化理論を吠えまくるということをしたのです。

★ところが、そんな醜いことはどうでもよく、子供の本当の学力や学びを考えて、首都圏模試センターは、「思考コード」と「思考スキル」の開発を進めたのです。歴史を振り返れば、このことがどれほど歴史的意義や価値があるか計り知れません。

★「思考コード」はA1A2A3というA軸思考とそのレベル分け、B1B2B3というB軸思考とそのレベル分け、C1C2C3というC軸思考とレベル分けをして、9つの領域で偏差値をだしていきます。多次元偏差値です。

★すると、A軸では、A1とA3で、その生徒の偏差値が逆転現象を起こすということがあります。B3とC3でも同じようなことが起こります。模擬試験は、A1とB1の領域の問題が多いので、全体の偏差値(いわゆる今までの偏差値)でいけば、その逆転現象が見えなくなってしまうのです。

★ところが、その逆転現象が起こっているところこそ、その生徒の潜在的な才能が見え隠れする場所かもしれないのです。今までの中学受験勉強は、偏差値と正答率で戦略を立てていきますから、弱点ばかりをトレーニングして、潜在的可能性をもっと生き生き活用できるようにしようという指導はされてこなかったのです。もちろん、塾の先生の中には、学校の教師以上に学びのプロがいて、そこをうまく引き出して、偏差値に関係なく、たとえば、麻布に合格する指導をし、ギリギリ入るけれど、最後はすばらしい活躍をして卒業する生徒の跳躍台を創ることができる達人がいるものです。

★しかし、それはその先生と出会わなければならないわけですが、そんなことをアピールできる見識を有している塾経営者はそう簡単にいません。

★ところが首都圏模試センターの山下社長は、そういう達人の学びの手法や考え方に共感し、そういう達人を探しては、話し込み、その思考システムや学びシステムを首都圏模試センターの模擬試験を受けた受験生全員にその機会を提供できないかと考えたのです。

★5年の歳月をかけて試行錯誤して結実したのが「思考コード」と「思考スキル」というわけです。指導の達人及び学びの達人シミュレーターというわけです。

★この考え方は中学受験市場だけではなく、中学入試という学校のアドミッションポリシーでシンクロしたのです。それゆえ、新タイプ入試という知識・論理的思考問題から創造的思考問題が出現したのです。そうなってくると、この新しい問題の部分で偏差値の逆転現象が年々現れるようになったのです。「思考コード」の発想はルーブリックなどと表現はいろいろですが、アドミッション・ポリシーーカリキュラム・ポリシーーディプロマ・ポリシーと共鳴共感するようになったのです。

★いわば、首都圏模試センターの「思考コード」と「思考スキル」の開発は、中学受験市場と中学入試という学校の3ポリシーを架け橋する画期的な歴史的使命を果たしているのです。

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G-STEAM教育(02)いよいよ純粋経験をアップデートする時代。世界制作の核心を共有共感しよう。

★EUの混乱、ベルリンの壁の反動、英米の栄誉ある孤立化の再来、日本の政権の劣化の酷さ、教育改革の破綻、自然の猛威の激しさの増加、収拾のつかないテロ、不条理な殺人事件の横行・・・、何をやってもうまくいきそうにないのが最近の現象ですね。

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(新純粋経験をリフレクションする)

★しかしながら、そう悲観的にならなくてもよい動きが生まれてもいます。おそらくこんな私の周りで起きているのですから、世の中はもっと同じような動きのダイナミズムが生まれているのではと思うのです。

★その象徴は、シリコンバレーの経済システムとはまた別次元の経済システムがベルリンやドイツの東側で起きていることです。また香港が中国に飲み込まれなければ、新たな経済ステムが生まれるでしょう。

★日本でも、教育の現場に新しい経済システムが生まれようとしています。それが私の周りで起きていることなのだと思いますが、人間は経験から学び、学んだことを論理的に形式知化します。それが経験と同期している時は幸せな学びなのですが、近代社会の問題点は、経験から切り離された戦略的な人為的な権力的な学びが形式知化し、経験に戻ろうとしてこなかったのです。

★ところが、最近、そのことが教師も子供もマインドは疲弊し、倫理観を無視され、学歴社会に回収されて圧搾されることにがまんができないというか限界がきてしまったのです。

★だから、エーイ、新しい世界を国や社会や経営陣に任せるのではなく、自分たちで創ってしまえ!アラン・ケイに続けという教師や≪Z世代≫が着実に増えているのです。

★自分たちの学びが、学歴社会が創り上げたフィクションとしての経験ではなく、ありのままの経験、そう純粋経験に照応して作り直そうというのです。

★しかし、だからといって、自然に戻れということではないのです。原初の社会に戻れというのではないのです。人間は認識をする瞬間から経験はフィクションになります。純粋経験はその向こうにあるのです。

★エッ、カントですか?ものそれ自体は分からないという不可知論ってやつですか?いいえ、違います。不可知だから放置しておこうという発想が間違っていたのです。わからないからそこは触らないでというルールを犯して、その前提を勝手につくって、あたかもはじめからあったかのように仕掛けた権力者や学者が近代社会のデストピアを捏造してきたのです。

★そのデスとピアの中で、いくら改革改善をしても、デストピアを強化するだけ。ただ改革した人は今までは役得の利益をえてきた。しかし、その構造は、もはやSNSの世界では通用しない。

★よって、デストピアをごっことしてつくり、あたかもそれが必然のごとく戦略的に演出し、利益を得てきた一握りの利権構造をぶっ壊す必要があると気づく人がでてきたのですね。

★ユートピアなんて夢みても、現実はデストピアだよ、はかないものなのね、若いね、青臭いねと、デストピアは実はごっこで自分たちが必然的な歴史物語だと正当化しているいおとを見抜かれないように、このようなパワハラ発言をし続けてきたのです。

★ところが、そうではないだろうと気づき始めた人が増えてきました。その仕事は、自分の生身の感覚脳神経全体をマネジメントしている自分の身体です。I.ロックが既に語っていますけど。実はその循環が生み出す現象が純粋経験です。この新たな純粋経験を豊かにするイノベーションはICTです。アラン・ケイはそれを見越していました。

★ダイナブック構想はそういうことでしょう。感覚脳神経全体である身体という純粋経験を資本として起業ができる。ソフトパワーで起業ができる。そういう限界費用ゼロ社会の経済システムを創出するコミュニケーションを生み出すことが、デストピアで彩ってきた古い経済システムをぶっ壊すのです。ハードパワーはどうするのだ。それはAiによって行っていきますが、新しい経済システムはハードパワーはシンプルになります。エネルギーと食料を自給できる装置が一家に一台揃うからです。

★資本主義なのに、自由経済なのに、配分の正義がうまく働く。商品は資本と生産道具を独占して労働者に作らせるモノではなく一人一人の創造的なコトなのですから。民主主義と資本主義の葛藤を戦略的に演出して生み出すことによって、配分の正義がうまく働くなくしたシステムの象徴は学歴社会ですよ。

★なぜ大学入試改革が必要だったのか、学歴社会をぶっ壊すためだったのですが、さすがにこれは、文科省も、政府も、大学も、ジャーナリストも認めるわけにはいかなかった。夢は見たけど、それはできないよとそれぞれの役割演技で事態を収拾し、世はデストピアが現実、理不尽なものなのだ、大人になりなさい。こうして、この役割演技をした人たちだけは、利益を独占するのです。デストピアの前提を問わない改革は、そろそろエントロピーの限界だなと判断したアッパー層がかき回して、ディベートのように両派にわかれて議論し、メディアを活用し、一儲けしよという茶番だったのです。歴史は常にそうでした。おしまい、ちゃんちゃん。

★なわけがないでしょうと、立ち上がる心ある使命感溢れる教師や教育関係者や≪Z世代≫が集結しつつあります。香港とは違うやり方で。新しいコミュニティシップ全開で。

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2019年11月 9日 (土)

日刊ゲンダイ ベネッセと文科省の深すぎる関係を突く しかし、大事なことはそこではない。

★2019年11月08日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITALはこんな記事を掲載しています。「英語民間試験問題をめぐり…ベネッセと文科省の“深すぎる関係”」がそれです。詳しくはそちらをご覧ください。

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★しかし、問題はそこを突いても≪Z世代≫にとってあまり有益ではないのです。たしかにベネッセさんは、そのたくましい営業努力で、文科省に入り込み、各学校に入り込んでいます。でも、いずれも合法的な手続きを経ていますから、仲が良かったかどうか、忖度があったかどうかなど立証はできないでしょう。

★私も以前、OECD/PISAの報告書が大学教授や中高の先生方を巻き込んで書かれたので、興味をもって読んだら、今時中高の「探究」や「論文」でも書かない、OECDがすでに公表している内容のコピペ同然でした。あっ、やってくれたな。と思い、文科省の担当部署に電話で、いったいこのレポートはベネッセさんはいくらで入札したのですかと尋ねると、2000万円と即答されたので、エッ!この内容でですか?誰がチェックしているのですか?私どもですと聞いて唖然としたことを、どこかで書いたことがあります。

★レポートの連名に知り合いの先生方がたくさん並んでいたので、まあ合法的入札だからそこをクリティカルに論じてもしかたがないし、そんな暇もないと思っていました。

★おそらく、一事が万事、そういうカタチになっているのです。

★そもそも、この大学共通入学テストーー同記事は「英語民間試験」の話だけではなく、大学入学共通テストの採点の落札もベネッセさんがしたということを突いています――は、OECD/PISAの研究の団体NPO「教育テスト研究センター」が設立した時から構想がありました。

★この共通テストの前に、基礎なんとかテストみたいのがあって、そのテストの構想を私の知っている先生がもってきて、これは素晴らしいというから、一蹴しました。テスト漬けにしてどうするのだ。青春時代をと。その先生とはすれ違ったときに大人として今では挨拶する程度です。

★とにかく、ベネッセさんは知り合いの先生の学校に、たとえば、クラッシーというe-ポートフォリオを活用する前提のデバイスとプラットフォームを入れていて、その根の張り方は、他の教育産業では真似できないでしょう。

★米国のETSをモデルにしているでしょうから、なおさらです。米国でも同じような批判がでていますね。

★合法的な入札と言っても、これだけのテストを処理できる、これだけのデータを処理できる教育産業は、現状でないので、コンペをやっても、ベネッセさんに軍配が上がるのは当然なのです。それを蜜月と表現しようが、合法的なんです。

★話を戻します。このOECD/PISAの研究のNPO団体も、もちろんベネッセさんの仕掛けが背景にあります。それはサイトに入れば理事長がベネッセさんからきているし、ロゴのカラーが、ベネッセさんの企業カラーでできているところから、すぐにわかります。

★ここを母体にアンドレス・シュライヒャーさんを呼んだりして、セミナーや勉強会をやって、各学校の先生方を巻き込んでいるのです。もちろん、大学も文科省も。これも合法的です。

★しかし、全国学力テストもおそらくベネッセさんが落札していると思うのですが、もしかしたら、今は順番に他の企業と回しているのかもしれませんが、最初はベネッセさんでした。小学校と中学校の200万人強の人数を採点することなど、まあベネッセさん以外の教育産業では今のところ無理です。CBTにでもなれば、参入できるところもあるでしょうが。それとても、ベネッセさんが落札するでしょう。

★でも、そこが問題ではないのです。全国学力テストのB問題は、明らかにOECD/PISAの問題を意識したカタチと内容でできています。そして、公立中高一貫の適性検査ですが、これもまたOECD/PISA型の問題編集の影響を受けています。

★そして、公立高校の入試問題もだんだんそうなっています。私立中学の新タイプ入試が適性検査型入試と私立独自の思考力入試や自己アピール問題や総合型問題を作成しているのは、私立学校がこの流れを活用はするけれど、便乗はしないという意志決定なのです。

★さらに今回の大学入学共通テストです。素材が従来の文学とか論説文ばかりでなく、実務的な文章が選択されていますが、まさにこれはオーセンティックという名のOECD/PISAの作り方です。カタチも同じでびっくりしてしまいます。

★このOECD/PISAのテストや学力観を推奨した人々は、今回同記事で取り上げられている政治家や大学教授もいるのです。

★私が大学入学共通テストをやめたほうがよく、各大学の独自入試でよいじゃないかというのは、ベネッセさんが落札したとかどうでもよいのです。じゃあセンター入試でよいのかというと、それも違います。

★全国学力テストもやめたほうがよいのです。そうすると、今回の大学入学共通テストの国語の記述。採点が学生をやとうとできない難しいと言っている人がいますが、本文中の語句をつかった組み合わせの最低の問題で、学生で十分できるのです。こんなのが思考力記述問題なのだとぎゃぎゃあいっている人の見識がわかりません。こんな記述の問題は、実はOECD/PISAは出題しません。もっと自由度が高いですね。

★それは全国学力テストも同構造です。OECD/PISAの権威を借りたなんとかで、とんでもないのに、そこを問題にしない。採点ができるかどうか?なんで、こんな問題ができないのと思ってしまうわけです。私立の中学入試の2科4科の問題でもここまでモザイク型の記述の問題は今や出題しません。

★さすがに公立中高一貫校の適性検査は、OECD/PISAの本質をベースにしていますから、それ自体はよいわけです。ただ、PISA-全国学力調査テスト―適性検査―高校入試―大学入学共通テストというラインナップができ、少し記述を入れたりして、自由度を高め、キーコンピテンシーをコアにしているのだという話で、そのためにe-ポートフォリオなのだという、学びのシステム循環をもうすぐ構築できそうだというところまできていたのです。さて、今回そこに気づく人はいますかね。いても、今さら、クラッシーを使わないわけにはいかないし、シンケンゼミやスタディーサポートを使わないわけにもいかないのです。だって、これらの模擬テストも過去の問題のプラットフォームにクラッシーで入れるのです。過去の知識問題を再利用できるわけです。

★このベネッセの教育生態系をなくすなど、もはや現場も文科省もできないのです。ベネッセは鉄緑会も傘下に入れているので、私立高校のアッパー層の生徒の情報も把握し、東大にたくさんいれる学歴社会も支えています。大学入試改革はできるはずがなかったし、本気で誰も考えていなかったということが問題なのです。

★国語の採点に60億円税金をつぎこむのをやめ、全国学力調査テストもやめてしまえば、さらにお金は浮きます。毎年つぎ込まれるのですから、その分を、ICT[環境の充実にシフトして、個人がサイトで学べる環境をつくったほうがよいでしょう。離島問題も解決するはずです。つまり、N高校が注目されざるを得ないのですよ。英語も今やサイトで学べるのですから。そうだとしても、どこが落札するのか?企業の顔ぶれは変わらないのです。

★だから、どこの企業と文科省が蜜月期を送ったとかそういうことではないのです。税金の使い道を一律同じテストを小学校から大学入試まで活用するという事態から脱しようということです。テストの本来の使い方を考えたほうがよいのでは?そこを国民全体で議論する機会をメディアはつくる提案をしたほうがよいのではということです。もっとも、≪Z世代≫はすでに動き始めていますけれど。

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2019年11月 8日 (金)

G-STEAM教育(01)日本の教育はゆでガエル 文科省も文科省を批判する教育ジャーナリストも ≪Z世代≫の活躍を無視しすぎ

★文科省や経産省が言ったからではなく、これからはG-STEAM教育だし、スタートしているのです。この行く手を阻むのは、共感を得るすべを知らなすぎる政府―官僚の適性続きのなさと非科学的な教育ジャーナリストの茶番です。真実は常に確からしさです。それなのに、不動の真実があるかのごとくそれに従ってただ批判するのです。分析的で論理的な指摘をあげつらうのです。改革をサポートする企業と税金の関係を疑い、金もうけをしようとしているのではないかと、あたかも鋭く批判しているようですが、その批判執筆によって、印税がはいるわけです。格好の稼ぎポイントなわけです。結局は、強欲資本主義経済システムの恩恵を分け合っている茶番です。付き合いきれません。それが科学的だとか思っているのでしょうか。とんだ合理主義です。それから、それに乗っかる生ぬるい古い教育関係者。もう心ある教師と≪Z世代≫がタッグを組んで先に行くしかありません。

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(2019年11月6日、ニューヨーク国際連合本部1階メインロビーSputnik Loungeにて、Peace in the Streets Global Film Festival2019授賞式が開催され、工学院大学附属高等学校1年生6人が出席。同校のG-STEAM教育の環境のサポートも大いに役立っています。)

★なんてことは、私が言うまでもなく、すでに始まっています。平和は、もちろん国際関係の力学がありますから、国家による政治的働きかけは大事でしょう。大企業による経済システムの安定を広げるロビー活動もそりゃあ大切です。しかし、≪Z世代≫は、G-STEAM教育によって、国家や企業と対等に渡り合える言語・創造的思考・ネットワーク・インパクトアート・テクノロジー、コラボレーション・コントリビューションなどの能力を持てる<個人>になっていきます。すでにどんどんなっていますね。

★このような<個人>の資質・能力や知的技術、倫理観などを醸成する教育がG-STEAM教育です。Gはグローバル教育を指します。今回の大学入試改革の英語教育のとん挫の部分はこのGの部分をできるだけ多くの生徒と共有する機会を奪いました。政府―官僚の適正手続きがないのも大問題ですが、その批判を今始めたわけでもなく、最初からやりたくないという後ろむきな発言を後押ししていたのは、一部の教育ジャーナリストです。

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★そして、STEAMのAであるArtsの世界は命がけなのです。アート資本主義の中で、ジレンマをかかえながらどうやって次のシステムを創っていけるのか、世界のアーティスは常に挑戦しています。

★それなのに、文化庁、結局文科省は、政権批判をするアートを排除するありさまが続いています。そしてそれを後押しする通俗的でゆでガエル信奉者のコメンテーターがまたまた影響を与えると思ったら、教育関係者までも、生ぬるいSTEAMのAを語っている始末です。

★そんなとき、女子美がアートを英語で語る教育を始めました。G-STEAMへのスタートです。

★このままでは、日本はゆでガエルだ、まずは自分たちが切り拓くしかないと決意したのでしょう。

★とにかく、あまりも生ぬるいので、国際社会は日本を吐き出すでしょう。

★多様性は大事だと言いながら、同じ考えの仲良しグループの中でのいろいろな発想で、パラダイムそのものが違う向こうの人は排除する日本。すべては学歴社会の閉じられた中での椅子取りゲームでやってこれた戦後日本社会のなせる業です。これを崩すことこそが根本的な問題なのに、センター入試続行を期待するとか何事ですか。大学入学共通テストもさっさと中止すべきでしょう。

★この学歴社会を批判しつつ、どっぷり加担してさもジャーナリストだと言いまくっているとはどうなんでしょうね。

★とはいえ、G-STEAMを止めることはできないのです。それは時代の要請ということもあるでしょう。言っておきますが安倍政権が自分で考えたわけでも、自己正当化のためにこの路線を引いたわけでもありません。そんなことをいうような人もいますが、G-STEAMのために言いますが断固違います。安倍政権は便乗しただけです。

★G-STEAMは≪Z世代≫の内側から出てきた欲求と時代の要請がシンクロしたのです。マーケットのニーズだとかマーケティング的になんていう人もいますが、それもまた便乗です。まったく愚かしい。

★批判するのはまあいい。でも、G-STEAMの流れを遅らせることだけはやって欲しくない。とはいえ、私が言うまでもなく、G-STEAMの勢いは彼らを飲み込んでしまうでしょうけれど。結局、G-STEAMは進みます。広がります。すべて世はこともなしというわけですね!

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第8回 文学をテーマにしたTOKのアクティブラーニングデザイン。

■2019年11月8日(金)3時限目

【素材】

シジミ   石垣りん

夜中に目をさました。
ゆうべ買ったシジミたちが
台所のすみで
口をあけて生きていた。

「夜が明けたら
 ドレモコレモ
 ミンナクッテヤル」

鬼ババの笑いを
私は笑った。
それから先は
うっすら口をあけて
寝るよりほかに私の夜はなかった。

0)ぐるぐる(dizziness):感じたことを語る。


1)上記の石垣りんの詩と次の金子みすゞの詩について、TOKで問うとしたらどうなるか、問いを設定する。

大漁

朝焼け小焼だ、 大漁だ
大羽鰮(おおばいわし)の 大漁だ。

浜は祭りの ようだけど、

海のなかでは 何万の、
鰮(いわし)のとむらい するだろう。

・IBの10の学習者像との関係は?
・どのアクティビティを活用するかアクティビティ→ablconnect
基本のサイクルは「リサーチ×ディスカッション×編集×プレゼン」

2)アクティブラーニングデザインの分析
・10の学習者像との関係はどのくらい意識されたか。
・思考コード分析
・思考スキル分析

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

3)事後学修「今回の2つの詩を活用したアクティブラーニングデザインをまとめる」→メールで提出

・学年、時間数、教科などは、自由に設定してください。

 

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聖母女学院グループ 本質的教育研究へ

★学校法人聖母女学院は、保育園・幼稚園・小学校・中学校・高等学校まで揃っている総合学園です。小中校は、大阪香里園と京都藤森の両方に在ります。

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★香里ヌヴェール学院は、一足先に改革を行い順調に生徒が集まり、教育の質を充実する道のりを歩んでいます。京都聖母は、もともと生徒募集は順調ですから、内側からの必然性を待って、今年から改革を開始しました。小中校に関しては、香里ヌヴェール学院も京都聖母女学院も新校長が就任し、新たな改革のフェーズに入っています。

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★新しいフェーズというのは、香里ヌヴェール学院は、21世紀型教育と出遭い、2040年に今の子どもがどうなっていて欲しいか、このままいくと悲惨な状況が待っているために、そこでサバイブできる能力、できるならそのような悪循環の社会を好循環の社会に変えられる才能者に育ってもらいたい、そのための教育はいかにして可能かから出発しました。

★第2フェーズは、改革の根拠をそのような時代の要請に沿うだけではなく、今目の前の子どもを観察して、この子供たちにとって、本当に何が必要なのかという、教育の本質的な意志から再考することに、赤野理事長はしたようです。

★それゆえ、聖母女学院教育研究センターを構想し、まずは園長、校長を中心に毎月一度集まり、聖母女学院の教育とは何か、情報共有から始めました。その共有はワークショップ型ですから、気づきも多いし、課題発見もそのつど起こります。

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★しかし、今年3月から始めて、7回目を経たあたりから、おそらく他の学校法人ではなかなか見つからない重要な教育の本質部分が発見されました。それは、聖母グループは、保育園・幼稚園を併設しているために、就学前に学んで来る子供の成長からスタートできるという点でした。

★就学前に成長した子ども、つまり5.6歳児の発達段階は、聖母の保育園と幼稚園の学びの環境があるからこそ、そうなるわけであって、どこの環境にあっても同じだということではないということに気づいたのです。

★考えてみれば当たり前かもしれませんが、このような宝物=賜物=タラント=才能を小学校、中学校、高等学校と有機的につなげて、さらに生徒1人ひとりの才能がどんどん豊かになっていけばよいわけです。

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★今回のワークショップは、そういう意味では、グループ全体の有機的循環のメカニズムをいかにして把握するか、足りない分はいかに補填するかという創発ミーティングになりました。もちろん、小学校も中学校も高等学校も外部からも入学してきますから、そのケアシステムがどうなっているかもリフレクションしつつ展開していきました。

★この展開のテコは、保育園・幼稚園、小学校、中高のそれぞれの期間において、児童や生徒が浸る「経験」の違いは何かから始めました。「経験」から人は学びますが、子供の発達段階に対応して「経験」のメカニズムも変化している可能性があったからです。そして、21世紀型教育の学びの本質的な部分も、ピアジェ―パパート―レズニックという系譜やレヴィ・ストロース×ピアジェ―ハワード・ガードナーという系譜などの統合にありますから、そこでも「経験」はカギなのです。

★ともあれ、それはやはり大きく違うということが共有できました。それでは、その大切な発達段階に応じた経験をどうやって授業や教室の中に埋め込むことができるのか?もし「経験」を持ち込まなければ、授業は、経験とは切り離された知識のインプットだけの世界になってしまいます。ところが、改革を進めている聖母女学院グループの授業はそこから徐々に抜け出ているわけです。

★今ここで、行っている園長・校長の自らの教育の中にある本質の種を見出し共有することが改革の核心であり、外部からのパッケージを持ち込むことは改革のカンフル剤に過ぎないと赤野理事長が感じてきたことは、いよいよ根を張りだしたわけです。

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2019年11月 7日 (木)

新しい学びの経験(01)新しい授業か古い授業か、きちんと観察して学校選択をする。

★今の12歳が2040年になったとき、33歳になっています。これまでの学びでは、つまり多くの人は学校の授業での学びの時間が長いですから、その授業が今までのままだと、相変わらず出来る人は出来る、できない人できないままです。そして、2040年から2060年の間に、生産年齢人口は半減しますから、従来型のリーダーシップを発揮する人も少なくなります。

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★そして、国力も半減するわけです。少子高齢化もそのときはかなりものです。経済はわるくなるは、高齢者を支えなくてはならないはで、今の12歳はたいへんな苦労を、このままではすることになります。

★これを回避するには、所得倍増ができる学びを生まざるを得ないのです。それには、12歳の子供たち全員がソフトパワーを生み出す創造性をいかに自ら発出できるかにかかっています。

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★それには、これまでの一方通行型の知識伝達型講義や問答形式の知識確認型の授業は適さないのです。なぜかというと、この形式は授業に参加している生徒が全員思考できる機会を作っていないからです。その知識を活用できる一握りの生徒しか思考しないようになっています。今までは、それでよかったのです。競争社会で勝ち抜いた一部の生徒が世の中を動かすポジショニングを確保してやってこれたのです。それだけの経済的背景があったのです。もちろん、格差やその一握りの人間による抑圧組織や社会はたまったものではありませんでした。今もまだ続いていますが。

★しかし、これからは、特に2040年以降は、このままだと経済状況が悪くなります。そんな状況下で一握りの人間が自己利益のために、ふんぞり返っていたら、どうなるか、説明するまでもないでしょう。

★そこで、対話(教師と生徒のではなく、生徒と生徒の)を通して協力しながら思考し発想を合力に転換できる新しい学びが重視されるようになったのです。

★和洋九段女子の人気がでてきたのは、学校に行けば、多くの授業が、PBL型になっているために、生徒がみな目をキラキラ輝かせている姿を見ることができるからです。文化学園大学杉並のDDコースは、すべてミニPBL型で、その見事な成果は、メディアも注目しているほどです。

★八雲学園も、ラウンドスクエアに加盟し、世界のエスタブリッシュな私立学校の多くがPBL型であることを身をもって知り、加盟校として、自分たちもPBL型にシフトしています。

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★聖学院や工学院は、上記の<新しい学びの経験>の典型的パターンに、第二の脳としてレゴを活用するPBLやlearnnig by makingというアクティビティを挿入して、パワフルなPBLを実施しています。すでに生徒がどんどん外部の他流試合で大活躍していることは徐々に知られるようになっています。

★授業が典型的なパターンを基礎として行っている学校は、国内外のフィールドワークも研修旅行以上の学びの成果をあげています。

★子供たちの未来を考えれば、<新しい学びの経験>を創ている学校を選択することは時代の必然かもしれません。この図をもとに、オープンキャンパスで、どのタイプの授業が実施されているのか観察してみましょう。自分たちが経験してきた一方通行型講義や教師と生徒の問答による対話型の授業で終わっていないかどうかチェックするのは、本当は何よりも重要なことなのです。

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G-MACプロジェクト(05)コペルニクス的転回スキルで、自己中心的ものの見方から解き放たれる

★一真くんと、最初は、<変形スピードデート>で、一真くん自身が<ことば>のメカニズムのプロトタイプを創るところからはじめました。この自分で創るということが最も重要だったのです。よく自分軸とかアイデンティティと言いますが、それはいったい何でしょう。自分軸であったり自己同一性であるのなら、その基準は、人が造ったものをあてがっていたのでは、話にならないのです。

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★自己経験を通して気づいた知識や考え方の蓄積が一真くんをはじめすべての子供たちの存在そのものです。しかし、その存在を内発的に生成する基準や土台を、他人が造ったものを埋め込んでだいなしにしてきたのが今までの教育でしょう。

★じゃあ、それぞれみなバラバラじゃないかと言われるかもしれません?最初はそうかもしれませんが、対話を重ねていくうちに、アップデートしていくし、intersubjectとして他者と共有できる部分もでてきます。レゴという客体も人によって違う客体です。一見絶対的な客観だけれども、今回一真くんは、その使い方を他の人とはこれまた違う使い方をしました。

★今回、おそらく神崎家の中の豊かな知的経験が、一真くんに独自の<ことば>のメカニズムのプロトタイプをレゴによって可視化できたと思うのですが、そのプロトタイプで、さまざまな世界を読み取り創り出すとき、使われる客体レゴも一真くんの世界を反映する<ことば>として作用するわけです。客観それ自体もinterobjectだったわけです。これがZ世代の共通のメガネかもしれません。

★一真くんは、小松左京を活用した<シナリオプランニング>でも、自分で創った<ことば>のメカニズムを<適用>することによって、多角的なアプローチがあることを表現していきました。

★そこで、念のため、かこさとしさんの「科学者の目」の中かから「コペルニクス」をコピーして渡しました。これもあっという間に読んで、天動説と地動説の違いを説明してくれました。そのうえで、でも今は地動説を超える考え方もあるのだと。図鑑を読んでいて知ったのだけれどと、鼻を膨らませ、目を輝かせ語るのです。

★であれば、天動説から現代の説まで、レゴで表現してみようかということになったのです。

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★天動説は地球が太陽より大きく表現されています。地動説は太陽が他の惑星よりも大きく表現されています。そして、今の説は、中心がそもそもないのだといいます。そしてそれは、ブラックホールの存在によるとか、天の川銀河の存在が見つかったからだというのです。

★そのことの正しさはここでは問いませんでした。それは私もわからないことですから。<わからない>という括弧にくくるエポケーをしておきました。

★それよりもおもしろかったのは、パパと見つけた四角い板がどうして太陽だったり、ブラックホールだったりするの?惑星は球になているのに?

★すると、一真くんは「見立て」ですよと。カタチはちがっても内容をきちんと表すことでしょうと。たとえとも言いますと。一真くん、学校で友達とそういう言葉みんなで使うの?いや使いません。どこで知ったの?さあ。。。おそらく神崎家の言語だろうなあと。

★かくして、客体は一義的ではなく、多義的意味を展開することになるのです。科学主義が排除してきた客観の有する多義的な存在意味を一真くんは見事に回復しています。新たな魔術の世界と、誰かが言っていましたが、Z世代とはおそるべしです。

★intersubjectとinterobject的なもの見方をしていて、主観―客観図式を超えてしまっているのです。

★だから、一真くん、天動説から新説まで並べたこのレゴを見て、何を巡る考え方の変化だったの?と問うと、しばし考えて、<中心>ですねと。

★自然科学の世界も社会科科学の世界も、政治経済の世界も、結局は<中心>を何に置き換えるかという歴史だったし、未来もそうなのかもしれない。そう、一真くんから学んだのです。

★コペルニクス的転回のスキルは、自分が生み出した<ことば>のメカニズムのプロトタイプに拠っているということも了解できました。

★今までの教育は、コペルニクス的転回スキルのベースになる生徒1人ひとりの<ことば>のメカニズムのプロトタイプを確認しないまま行われてきました。これでは、内発的モチベーションは生まれてきません。世界を自分が変えられるなどと思いつかないでしょう。子供時代に目をキラキラさせる子供が多いのは、無意識ですが、経験の中から得られた自分なりの<ことば>のメカニズムの種があるからですね。

★それを可視化して、自分のものとして内面化する作業が今まではなかったので、大人になるにつれて忘却されて不安とカオスの時代を自ら生み出していくことになっているのでしょう。

★私自身は、今回神崎家の豊かな経験の中で大事にされてきた一真くんのものの見方のベースである<ことば>のメカニズムの種を可視化するお手伝いをしただけです。ソクラテスの対話は<産婆術>ともいわれますが、そんな素敵なアクションだったらいいなあと思うし、それができたのは、神崎家とのコラボによってできたのだということは明らかです。対話とは常にコラボです。

★創造的対話か、戦略的対話か、破壊的対話か、抑圧的対話か・・・。もちろん、<産婆術>は、創造的対話です。一真くん、神崎先生、ありがとうございます。気づきの多い明日へのプロジェクトとなりました。

 

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2019年11月 6日 (水)

G-MACプロジェクト(04)<ことば>のシステムのプロトタイプが物語を生み出す。

★一真くんなりの<ことば>のシステムのプロトタイプができたところで、対話によっていろいろな現象・事象に<適用>してみたというのは前回ご紹介しましたが、今度は簡単な<シナリオ・プランニング>のアクティビティを行いました。

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★小松左京の「宇宙人の宿題」に収められている短編を活用しました。今から相当未来の話です。地球からある星に移住した人々がいます。その中の男の子が1人、お爺ちゃんから、地球の青空の美しさ、緑の豊かさ、水の清々しさなどを何度も聞いているうちに、地球に実際に行ってみることにしました。地球の方向にいく宇宙船でアルバイトをしながら乗り継いで、ようやく地球についたとき、思っていたのと全く違い愕然としたのです。すべては灰色の世界だったからです。コンクリートで塗り固められた世界だったからです。

★そこから、同じように宇宙船を乗り継いで、自分の星に戻ってきました。そしてそれはすごい年月がかかりましたから、すっかりお爺ちゃんになっていたのです。子供たちがお爺ちゃんに地球はどうでしたかと聞きました。

★あえて、物語は、そこで終わるようにプリントしたのですが、一真くんは、この後の続きを考えるのですねと目を輝かせました。それをレゴで表現しようかというと、すぐにパパとパーツを探しながら、組み立てていきました。

★なんでも夢の地球と実際の地球を比較できるように作って、対話する人形がちょこんと置かれています。

★一真くんは、書かれている部分のあらすじを簡単にせつめいしてくれたあとで、続きをレゴを使いながら物語ってくれました。真実を語り、地球のようにならないように子供たちに語るというものでした。

★そこで、<ことば>のシステムのプロトタイプにもどり、対照してみました。カタチと内容の一致をベースにシナリオを描いたということはすぐに一真くんは理解。そして、そういうことか。一致しない場合、嘘をつくというシナリオがあると。

★シナリオプランニングとして両方考えられるけれど、真実を選ぶということでした。一真くんは、あとでこれは道徳問題でもあると話してくれたのですが、まさに時間があればカントの嘘についての問題に進めるなあと思っていたところです。

★しかし、今回は<ことば>にこだわっていくプログラムにしました。この段階で、池上嘉彦氏の「ふしぎばことば ことばのふしぎ」の一節を挿入しました。一真くんはすぐに読んで、<ことばの力>は、伝達するだけではなく、ときに破壊的だ力にもなるし、創造的な力にもなるということを読み取り、今やったことは創造的ということですねとリフレクションをすぐに行っていました。

★一真くんはどうなのと聞くと、いいたいことをはっきり相手に伝えるから、創造的なつもりなんだけれど、破壊的になるときもあるかもしれませんと。小学校の頃、自分のことをこんなに知っていたかなと私は回顧しましたが、どうもそんな記憶はありません。Z世代おそるべしですね。ところで、そう気づいたらどうするのと念のため聞いてみました。

★すると、「配慮」と即答でした。<ことば>のカタチと考え・意味のバランスは、年齢にかかわらず、人間の根源的な悩みの種のようです。

★この物語は、日本の昔話のシークエンスを宇宙版にしたものだと思いますが、どうやら一真くんの<ことば>のシステムのプロトタイプは時代を超えて普遍的な部分が見えてきました。このことが、次のファイナルアクティビティでより鮮明になります。一真くんの言葉の選択が、システムと同期していたのです。

 

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2019年11月 4日 (月)

G-MACプロジェクト(03)<ことば>のシステムのプロトタイプを創る。

★変形スピードデートのアクティビティの後、リフレクションしたら、どっと<ことば>について一真くんは語りました。そのことは前回述べましたが、それを今度はレゴで表現してみようということになりました。アクティビティという<経験>から生まれた想いや考えを言語化するだけではなく、いったんレゴで物質化するわけです。可視化するということですが、モノに置き換えることで、客観化するわけで、そうなってくるとその客観物を他の現象や事象に適用しやすくなります。

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★最初にパパが自分の想いをトンボにしたときと、次に対話をしながら創って、一真くんと同じものを創ったときの2つに分けて人形を創っています。

★トンボはどこにもありません。というよりも、もはやトンボが問題ではなく、<ことば>の使い方によって違ったことと共通点を表現することが重要だとスパンとそこに一真くはいきついたし、「共通点を見つける」と自分で自分に問うていました。

★そのときに、一真くんは、大切なことばも言っていたのですが、意識して言っているわけではだかったので、今語った一真くん自身のことばの中に大切なことばがあったよと言うと、思い巡らしながら、違いということですか。ああ、というわけで、カタチと意味・考えの違いとか、2つの事象のカタチと意味・考えの共通点と相違点を同時に考えながら組み立てなおしていました。

★写真をみるとわかりますが、カタチは人形で表され、その前にあるブロックが意味だというのです。意味の部分は、色は違いますが、カタチは同じなので、意味は同じということを示しています。するとトンボのカタチは違うものと同じものがあるというふうに表現されています。

★最初は、ひもはなかったのです。創ったレゴ作品をいろいろ説明してくれた時に、できればその話している内容や意味もレゴでカタチにして表現してくれると一発わかるよねと語ると、そうそう、これだねと。お父さんあんなのこんなのどこにあったかなと、レゴをパパといっしょに探しはじめます。

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★レゴも大量にあると、<選択>という行動が伴うので、これはまたすてきなシーンだなと感動しました。

★ともあれ、それぞれ意味の違うひもで結ばれ、<ことば>のシステムのプロトタイプが一真くんなりに創れたのです。十分に話し合わないと、意味は同じでもカタチが違う場合も、その逆も、そして両方違う場合もあるのだという<ことば>によるコミュニケーションの成立度合をカタチにしたレゴ作品です。

★<経験>→<プロトタイプ>→<適用>→<リファイン>→・・・という流れになるのがこのような学びの特徴なので、同じように、適用してみました。国と国の外交がうまくいくいかない場合を、果たしてプロトタイプで説明できるか話し合ってみました。

★一真くんは、時事問題もよく知っています。たいしたものです。先日のIOCと東京都のマラソン会場の移転問題について聞いてみると、やはり、詳しく話してくれました。そして、コミュニケーションが決してうまくいっていないのに、成り立ってしまったのは?というと、ルールがあるからと。そこで、上記のレゴ作品には、つながっていないルールによるカタチと意味が追加されています。

★パパと対話した変形スピードデートのアクティビティという経験を通して生まれた<ことば>のプロトタイプが、人間関係、社会、世界へと<適用>できるという<経験>をしてプロトタイプをつくる<learning by making>のアクティビティとなりました。

 

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G-MACプロジェクト(02)<ことば>について多角的にアプローチする。

★一つ目のアクティビティは、スピードデートのバリエーションで、コミュニケーションをちょっと邪魔するフィルターを置きます。普通のスピードデートだとスムーズに開示していくために話し合いやすい環境、話したくなる環境設定をするのですが、フィルターを両者の間に置くことによって、話したいけど、うまく話せているだろうか、受け入れたいけれど、うまくできないさあてどうしようという問題意識が自然と生まれるように設定します。神崎先生と一真くんは、絆が太いということがすぐにわかったので、開示に関して心配せずに、いきなりここからスタートしました。

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★パパが車を駐車場に入れている間に、一真くんに生き物をレゴでつくってと頼みました。なぜかトンボだったのですが、この段階でなぜそれを創ったのなどとは問いません。今はいっぱい一真くんの中からコミュニケーションの拡張子がでてくるのを待つので、「なぜ」を聞くのは禁物です。だって、「なぜ」は一真くんの方からたくさんでてくるのですから。

★こちらが尋ねる「なぜ」の問いは刑事コロンボ流儀がよいのです(笑)。あるタイミングのズレがいいんですよね。

★そして、パパが戻ってきても決して見せてはいけないとパーカーで覆いました。これで、一真くんとお爺ちゃんは秘密を共有しました。パパの知らない一真くんが現れたのです。チームができました♪

★パパがフィルターの向こうに座ったとき、いよいよ変形スピードデートの始まりです。一真くんが自分のトンボの作品をパパに伝達して、パパはトンボを創るのですが、最初は正確につくるともなんとも条件は言いません。

★すると、一真くんはトンボをつくるとだけ言いました。パパは、なるほどそういうことねと楽勝とばかりすぐにトンボをつくりました。

★しかし、一真くんは、全く違いますと一刀両断。でも、おもしろいのは、トンボという意味は共通しているけれど、カタチは違うと複文を付け加えるのです。Aだけど、B。というフレーズがたびたび今後もでてきます。それから、この意味とカタチもたびたびでてきます。そして、最初に「トンボをつくる」とだけテーマをぴしっとつかんでズバリ言うのは、今回のワークショップを通して、一貫していました。

★「Aだけど、B。」「ズバリこれ。」という複眼思考と一番大事な重みづけができる一真くんがすぐに現れました。しかも、パパが最初に作ったトンボを、意味とカタチにわけることもできる。なになになに。シニフェ・シニフィアンの関係じゃん。J.J.ルソーやソシュール、ロラン・バルトのような世界を持っているんだと気づき、ワクワクする気持ちを抑えるのに必死でした。こちらが、静かに一真くんの話のテンポを微妙にズラすことで、一真くんは、そのズレを先読みしようとして前のめりになるので、ここをレバレッジとして活用しようと思ったからです。

★案の定、じゃあ次はと語りかけたところで、組み立て方とか指示していいですかと即反応。もちろん、とだけいうと、パパまず最初はパーツを集めると言って、レゴのパーツの特徴を、カタチ、色、そして縦かける横の数(レゴの凸部分の数)を伝えていくのです。

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★色がない場合はどうするのかとフィルター越しにパパの声が聞こえます。すると、一真くんは、代用品でもよいと返答していきます。でも、カタチは同じであることと。

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★パーツが揃ったら、完全に数字の指示でパパに組み立てていってもらいます。トンボの羽は4つのパートを組み合わせるので、創るのに最も時間がかかりましが、なんとかできました。ここで、一真くんの<数学的思考>の素養があることがまた了解できました。プログラミングについてちょっときくと、スクラッチよりビスケットの方が今興味があるかなとかいいながら、ワークショップを進めていきますから、やはりと思いながら、あとで、コペルニクスについてワークショップやろうとそのとき決めました。でも、それはあっさり乗り越えられ、凄い展開になっていくのです。まっ、それは後程。

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★一真くんのトンボとパパのつくったトンボのご対面です。今度は全く同じになりました。数字で語っていったよね。正確につたえなければと思ったからです。でも、羽のところは少し時間がかかったかなと。もし速めるにはどうしたらよかったと今なら考えるの?と質問すると、トンボの羽をイメージしてと付け加えたらよかったけれど、最初と同じように、お父さんの考えが入り込むのでと。

★なるほどオブジェクト指向のZ世代だと感じながら、でっ、今回のアクティビティでは、何が起きたのか説明してよというと、ことばのやりとりのビフォー・アフターについてどっと詳しい説明を語ってくれたのです。

★この経験と振り返りのプロトタイプを創ることが、今回のワークショップを水の流れのように自然にシークエンスを描いていくトリガーだと確信しました。

★今まで、ことばについてワークショップをやるときは、ポストイットを使ってきました。変形スピードデートは、ポストイットでももちろんできるのですが、ポストイットだと言葉とカタチをいったん分けるということができないので、どうしても頭の中での整理が必要です。できないことはあにのですが、回答が先に出てしまうので、おもしろくないんですね。

★しかし、その整理の仕方を共有することがなかなか難しいのです。言語化は、もちろんいいのですが、今回のトンボのビフォー・アフターをきちんと分けることができず、常に両方を抱え込みながら対話が続くので、ズレを調整できない時、カオスになってしまいます。

★大学生とTOKの問いと小論文の問いの違いを議論していくと、堂々巡りになってしまう時があるのは、やはり一端論理階型のように次元を分ける必要があります。レゴはその点それが一発でできるので、やはり優れものだと感動しました。でも、神崎先生のように、京都駅でタクシーを待っている外国の方が運んでいるあの大きなボストンバック級のレゴセットを持ち歩くことはできないし、資格をとることも意欲がわかないないので、神崎先生に甘えて協力させてもらうしかないですね。私は車の免許も持っていないのです。車はうちの社長にお任せなんです。無資格人間という怠惰な人間で、ノーロゴでサバイブするにはいかにしたら可能かと嘯いている厄介なお爺ちゃんですから(汗I。

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G-MACプロジェクト(01)スタートしました♪

★昨日、文化の日午後、GLICCに神崎先生と長男の一真くん、そして本間がこそっと集いました。神崎先生は、レゴ®シリアスプレイ®の資格獲得者で、特別なレゴをたくさん持っていて、それを活用していろいろな学校で、ワークショップを行っています。

★探究とかAO入試とか小論文の時間でそうされているのでしょう。要するにキャリアデザインがベースですから、生徒1人ひとりの心の奥に在る内観を、レゴによって、作品にし可視化して、自己変容への気づきが生まれる学びの場を創っています。

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★私自身は、ふだんはレゴは使いませんが、神崎先生と話している間に、創造的思考が「言語的アプローチ、数学的アプローチ、芸術的アプローチ」と「レゴによるラーニング・バイ・メーキングという構築主義」を結びつけることと「グローバルな視野」をさらにむずび付けることによって生成される関数場という学びの場を創るプロジェクトを立ち上げようということになりました。

★そして、たまたま一真くんがデジタルワールドに没入している姿をみて、アナログの世界はどうなんだろうと聞くと、そっちも大丈夫というさすがは、Z世代の小学生というわけで、大人も子供も学習者で、そういう境界線を払拭するのもこれからの新しい学びの経験なので、子供―親―お爺ちゃんという世代越境型のプロジェクトを組むことにしました。

★今日のプロジェクトを通して、一真くんが、レゴの作品作りを通して、グローバルな視野を語ることができ、コミュニケーションとは何かを語り、伝達する時関数記号で伝達する数学的思考を活用し、アイデアを作品にする芸術的センスを活用し、創造性を爆発させていたのをみて、勝手にG-MACプロジェクトと名付けたくなりました。

★GはGlobalです。MはMakingです。AはLiberal artsで、言語・数学・芸術がセットです。CはCreativityです。学習院、明治、青山、中央ではもちろんありません。さて、神崎先生、一真くんどうでしょう。賛成してくれますか?

★神崎先生の世界と一真くんの世界と私の世界の合成が生み出す世界はどうなるでしょう。一真くんというZ世代との対話は、私たちの世界へのこだわりを捨てることであることは間違いないでしょう。

★このところ、聖学院や順天のZ世代と対話したりワークショップをやったりして、自分が自分の世界を捨て新しくすることへの自己変容ができるかどうかが大切だと思うようになってきました。もちろん、Z世代のようになるのではありません。Z世代も自己変容を続けるのです。

★ですから、もっと先を見通すアイデアを生み出すことですね。この間、順天の中3・高1・高2・高3からなる8人のZ世代と<世界制作の方法>を創るワークショップをやりました。私の方法論ではなく、Z世代の方法論を生みだしたのです。そしてそれをアップデートしていくという境地に達したわけですが、そこには理事長や尾近先生も共に参加していました。一番年寄りだったのは私です。

★そんな世代越境的な学習する組織がいきなり成り立つのは、みんなが新しい世界を創ってしまえばよいのだとビジョンを共有していたからです。スリリングな経験でした。

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★同じ雰囲気が今日のプロジェクトでもありました。神崎先生も私も、コミュニケーションは、もっといっちゃえば「言葉」のシステムは社会のシステムとシンクロするというシンプルな考え方をしていますから、私たちの周りのコミュニケーションシステムがフレームや内観も含めて変容すれば、社会システムも変容すると思うのです。

★驚いたことに、そこは一真くんも了解しているのです。無意識ではなく、レゴ製作を通してそれを見事に語るわけです。今回は、「ことば」「数学的伝達」「シナリオプランニング」「コペルニクス的転回」についてレゴ作品で<Hard Fun>したのですが、終了後、「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」の話題になり~なんでも家族中で話題にして楽しんでいるということです~、一真くんの力説がおもしろかったですね。

★おや、それは岡倉天心の虚空の存在として茶室の空間の話に通じるなあと思っていたら、一真くん自体、本の分類によると、自分のは美学者的視点と同じなんですと。おっ、シンクロしてるじゃんと感動しました。

★パパが車を駐車場から移動してくるのを待ちながら、いろいろな話をしたけれど、そんな中で、いつもそんな話をみんなでしているのと聞くと、はいと。いいパパだねとかえすと、最高ですと。なんか幸せを分有してもらった感じで、ハッピーでした。

★このブログをかいているとき、娘が帰ってきました。アートギャラリーの企画運営をしに、一時日本に戻って来ていて、同じく日本に戻って来ている友人や日本で芸術活動をしに立ち寄っている世界の友人とも対話してくるから、いつも夜は遅く帰ってくるのです。

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★パパ見て、友人が本を出したよと。社会学的な視点がベースの現代芸術論のようで、アーティストである娘とうちの社長(妻)と野生の世界制作家を最近自称している私とで、本の中身について対話になったわけです。ニューフェミニストの娘とカンタンメイヤスーと文化人類学的アプローチの社長と世界制作的なアプローチの私で、しばし対話。娘がロンドン時代に出会った友人の1人ですが、まだまだこれから活躍するアーティストや研究者が日本人の友人の中にもいるそうです。

★日本をデストピアで染めるわけにはいけないし、そうさせない若者が周りにたくさんいることに勇気づけられました。とくに世界のアーティストは、自分たちがアート資本主義の中でどのように闘いを挑みながら芸術活動をしていくか議論を忘れずに、サバイブしていますから、おもしろいキャリアデザインを描いています。

★当然日本の学校には批判的で、パパがやっていることは生ぬるいでしょうと一蹴されます。昔娘の母校の理事長に娘に講演を依頼されて、連絡をとってみたところ、破壊的になるからよした方がよいよとあっさり断られました。

★若者のの自分の考えや想いを実現する行動力を見守ろうなんていうのは、どうたら全く甘くて、この年になっても、自らそういう行動力を示していくように生きて行かねばと刺激を受けた一日でした。

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2019年11月 2日 (土)

英語民間試験問題 チャンスをものにできない日本の教育。日本社会はデストピア突入。

★英語民間試験を全学校規模で行う試みは、2020年パラリンピック・オリンピックに向けてのタイミングに合わせていて、実に有益だったはずですが、どうやら実現運営の段階でとん挫しそうです。

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★2024年にはやるというのですが、今や4年間というのは、社会が相当激変するに十分な時間です。このままでは日本社会は、国力の加速度衰退はとまりません。4年後、英語民間試験をさあやりましょうといっている場合かどうかもはやわかりません。

★入試のために勉強するのではないとキレイごとを語る方はいますが、共通一次試験が実施されてから、ずっと日本はそうだったんです。本当は、この制度自体止めたほうがよいのですが、そこには政治家の利権や官僚の権威、教育産業の経済システムができあがっていてどうにもならないのです。

★ですから、逆手に取る戦略で、英語民間試験を日本全体の教育に導入することで、日本の英語環境を一気呵成にアップデートしようとしたと予想します。

★日本国内の教育格差問題も極めて重要です。しかし、その格差の根本的な要因の一つは、グローバルな世界で日本人がイニシアチブがとれなくなりつつあるということなのです。

★イニシアチブに英語がなぜ関係するのか?関係ないだろう。そうあなたは本当に思いますか?戦争と言語の問題、権力と言語の問題は昔から続いていて、実は今もその爪痕は多くの国で残っています。いやEUでは、現在進行中で、移民の問題は、経済的な問題だけではなく、言語的な問題も生んでいます。

★英語でイニシアチブがとれるかどうかは、近代社会が生まれて以降、ずっと重要だったのです。そのこと自体がいいか悪いかと言われれば、コメントは控えますが、大英帝国の言語戦略が世界戦略の一環であり、米国との同盟で勝利していったのが、今日なのです。二つの世界大戦における、フランス語とドイツ語も英語と覇権争いをしましたが、その痕跡は、今も残っています。EUの拠点、そしてCEFRの拠点であるストラスブールに行けばくっきりと残っています。そして、今では中国の言語戦略も凄まじいわけです。

★現状のままだと、世界の言語戦略に打ちのめされていくのが日本です。

★世界がwebで結びつき、グローバリゼーションを支える領域はリアルな場所のみならずサイバー上でも起きています。そして、サイバー上で起きていることがリアルな場所の政治や経済に影響を与えていることはすでに日常生活で当たり前になっています。

★日本は、言語ではたしかに勝てないが、ドル、ユーロ、元とならんで、円があると思っているかもしれません。しかし、それは日本の国力がしっかりしている間だけです。まして、仮想通貨が国家の貨幣制度を崩していく時、日本は何を頼りに国際関係を調整していけるのでしょう。

★2024年、その衰退が目に見えるように進行していくでしょう。

★そのときに、なんとかサバイブできる方法は、世界の言語戦略に対応できている準備だったのです。しかし、それはどうやら無理のようです。

★日本の教育に決定的に不足しているのは、リベラルアーツです。リベラルアーツは、遠くギリシアの時代から、いかなる悪条件下でも自らの自由を守り、遂行する叡智のスキルだったのです。自由7科がもともとですが、それは今では、「言語」「数学」「芸術」に集約されます。

★サバイブするスキルとして「言語」や「数学」「芸術」を学んできたことは日本の教育ではないでしょう。

★なぜなら、どんな悪条件下でも、自らの自由を守り、自らの自由を遂行していく叡智など必要としていなかったのです。どんな悪条件下でも、それを悪条件だと認識する教育をされず、偉い人に守ってもらい、教えてもらい、自らの衣食住を保障してもらえれば、それで幸せだと共同幻想を共感して安心安全だと思うのにすっかり慣れてしまったのです。

★この現状にずっと抵抗してきたのが、私立中高一貫校です。同世代の7%がここに通っています。この私立中高一貫校は、文科省がどうあれ、英語に力を入れることはさらに強化するでしょう。日本全体が一丸となって、世界の言語戦略に対応できるチャンスがなくなったわけですから、できるだけ、生徒たちをそのような危険な場所から避難させるしかありません。

★海外大学への流れがどんどん増えているのはそういうことでしょう。海外大学に行けない場合は、できるけ有利な拠点に避難させるでしょう。

★世界の言語戦略に対応できない以上、日本国内の教育格差はどんどん広がります。かつて、校内暴力や学級崩壊を避けるために、私立中高一貫校に多くの生徒が集まってきたように、学力低下教育政策をおそれて私立中高一貫校に集まってきたように、今<英語も含めて新しい学びの経験>を開発し、国内外でサバイブできる拠点に飛ばせる私立中高一貫校に生徒は集まっています。世帯年収でなんとか1000万かせいで、自分の子を守ろうとする家庭は、国に子供を任せないでしょう。

★そして、公立学校も経済的な面で私立中高一貫校にいけなくても同質の教育を特別につくってノアの箱舟をつくっています。それが日本語IB校や公立中高一貫校です。同世代に人口の3%が進めます。私立と公立の中高一貫校合わせて、同世代の10%はどうやらサバイブできる場所を確保できそうです。それが良いか悪いかはコメントは控えましょう。

★とにも、教育格差を問題にして今回の大学入試改革は頓挫していくわけですが、国内の教育格差はますます厳然としてきます。本来その教育格差を世界の言語戦略にまず対応できる状況をつくることで、改善しようとしたのでしょうが、それはかなわないようです。公立と私立の格差だけではなく、公立自体が自ら格差をどんどん広げていきます。

★今回の文科省の判断やその方向性にもっていった多くの人の判断は、問題解決するどころか自ら格差問題を広げることになるすさまじいパラドクスを生み出すでしょう。

★このような時代、家庭で考えるしかないでしょう。自分で考えるしかないでしょう。「言語」「数学」「芸術」というリベラルアーツと「自ら作り出す技術」と「創造性」、そして「グローバルな視野」を養える場所を探すか、自己鍛錬していくしかサバイブすることはできなさそうです。

★いったん、避難して、もう一度私たちの国を立て直す戦略を立てられる余力を残すことしかできないのかもしれません。そのときまで、日本はデストピア状態になっているでしょう。

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2019年11月 1日 (金)

第7回 倫理をテーマにしたTOKのアクティブラーニングデザイン。

2019年11月1日(金)3時限目

問A) しばらく連絡が途絶えていた親友から、急に連絡があった。あと1週間しか生きることができないと宣告された。久々に明日会いたいと。親友と会ったらどんな対話をするか?

0)Speed Date:感じたことを語る。

1)問AをTOKで問うとしたらどうなるか、問いを設定しなおしてアクティブラーニングをデザインする。

・倫理を考える軸(座標系など)の作成。
・IBの10の学習者像との関係は?
・どのアクティビティを活用するかアクティビティ→ablconnect
基本のサイクルは「リサーチ×ディスカッション×編集×プレゼン」

2)アクティブラーニングデザインの分析
・10の学習者像との関係はどのくらい意識されたか。
・思考コード分析
・思考スキル分析

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

3)事後学修「今回行ったロールプレイのアクティビティの効果やリスクをまとめる」→メールで提出

・学年、時間数、教科などは、自由に設定してください。

4)次回の準備、次の石垣りんさんの詩について、どんな問いが設定できるのか考えてきてください。

シジミ   

夜中に目をさました。
ゆうべ買ったシジミたちが
台所のすみで
口をあけて生きていた。

「夜が明けたら
 ドレモコレモ
 ミンナクッテヤル」

鬼ババの笑いを
私は笑った。
それから先は
うっすら口をあけて
寝るよりほかに私の夜はなかった。

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順天「グローバルウィーク2019」のZ世代の希望

★昨日、順天の「Global Week 2019」に参加してきました。いつもは、取材という立場ですが、今回はファシリテーターとしてワークショップを生徒の皆さんと開く側として参加しました。この企画は、中学高校生、大学生、大学院生、小中高校の先生、大学の先生、 企業や団体の職員が、立場を超えて様々な課題に取り組む 講座群です。

★70 を超える数のトピックが用意されていて、そのうちの1つなんて実に光栄でした。各講座は、講義形式、グループワーク中 心、実習や工作などの多様な形式だということです。

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★生徒8人と渡辺孝藏理事長と尾近裕明先生(英語)10人とワークショップができました。アクティビティごとに島をつくったり輪になって対話したり教室中の机と椅子を動かしながら学びの進化の過程をたどれる空間をみんなで創りながら展開してていきました。このワークショップの空間名は「未来を創る学校」で、ここで学ぶ今回のテーマは「世界制作の方法を創る」というものでした。

★誰かが造った「世界制作の方法」を活用して、世界を理解したり、世界を造るのではなく、自分たちで創った「世界制作の方法」を活用して世界を認識し、世界を創造していくという展開でした。90分フルに対話できたし、創ることもできました。こんなに対話を楽しみ、思考に集中し、互いに自己開示し、未来を創り、その創った世界制作の方法を自ら組み立てていくリフレクションを楽しめるチームがすてきでした。

★それに渡辺理事長も尾近先生も学習者として生徒といっしょに学ぶ学習者中心主義のワークショップになっていたのは感動的でした。

★最初は「世界」といっても人によってイメージが違うので、アクティビティ<ぐるぐる>で、互いの考えやイメージを出していきました。何周もするので、それぞれが違う考えを出すだけではなく、自分の中でも多様な見方が湧き出てくることに気づいていきます。

★ウォームアップができたので、いよいよ世界を認識する視点をみんなで生み出そうと、もう一度<ぐるぐる>で、「物体X」をどう認識するか開示していきました。3周目くらいから、「物体X」から離れて違う事象と結びついたり、自分の想いが加わるなど膨らんでいきました。

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★次に、この経験をリフレクションするアクティビティです。黄色のポストイット一枚にどんな視点で認識していたか書き出し、それらをカテゴリー分けしていきます。グルーピングしていくわけです。いろいろなアイデアが立ち現れていました。そして、それがまとまったところで、各グルーピングの名称を付けました。

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★今度は、別の島に移って、名づけしたピンクのポストイットだけで、それらの関係について議論していきます。具体的な黄色のポストイットの山が数枚のピンクにシンプルにまとめられていく過程が島をのこしていくことによってわかります。すぐに順天のZ世代は、具体と抽象の関係という視点を見出していました。

★緑のポストイットを使って、関係をうまく表現していたアイデアには驚きました。世界を創る方法とは、自分たちの内側にすでにあり、それを開示して互いに議論して創っていけるという手ごたえをこの段階でもう共感したのでした。

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★さて、世界を認識する視点はまとまったので、次はいよいよ世界を創る方法にシフトしました。トビタテで留学した生徒や物理と哲学に関心を持っている生徒やリベラルアーツに関心がある生徒、自らの変容に関心がある生徒、教育に関心がある生徒、国際関係に興味と関心がある生徒などちゃんと自分を見つめている生徒が参加しているということもだんだん互いにわかってきました。共通しているのは、デストピアではなくユートピアを創りたいという熱い想いでした。それはみんなで未来の世界を創ったときに明らかになりました。

★とにも、創造とは何か自らのイメージと自分がどんな未来を創りたいのかあるいは迷ているのか、アクティビティ<スピードデート>で共有していきました。

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★そして、みんなのそれぞれの想いをすべて満たす未来を描いてみようというアクティビティ<learning by making>に移行していきました。見事に一人のアイデアも取り残さず、つなぐことができました。多様なアイデアを一つに統合するのではなく、それぞれのアイデアが生きるつながりを表現していました。

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★そして、再びリフレクション。世界認識のリフレクションと同様のスタイルなので、加速度的に議論が進みました。

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★最終的に、シンプルな「世界制作の視点」コードができてしまったのです。こうして「世界認識の視点」と「世界制作の視点」を自分たちでつくることができたのです。世界の見方や作り方の<メガネ>は、自分の内側から生み出し、議論することで創り上げることが、まずは世界制作の方法のスタートです。

★教育に関心がある生徒は、今の日本の教育が「世界認識の視点」でとまっていて、「世界制作の視点」を合わせて「世界制作の方法」を自ら生み出す教育はまだないですねと。

★もちろん、これから「世界制作の方法」はアップデートしていくことが大切だということを確認したうえで、まずは、今回自分たちで生成した「世界制作の方法」が活用できるか、エッシャーの絵やラストアイドルの青春トレインのダンス、デュシャンや草野心平の作品の世界を分析してみました。

★時間がなかったので、そこはあっさりでしたが、通じる手ごたえは十分でした。オリジナルでなおかつ世界で通用するかどうかアップデートしていく学びの経験を持続していくことが、クリエイティビティを生み出していくでしょう。根源的に大事なところを誰かが造ったパッケージを鵜呑みにして学んできた今までの経験から解き放たれる(という表現を生徒はしていて驚きました)ことの大切さを、今回共有することができていたならいいなあと思います。

★そのあとも、幾人かの生徒と対話を深める機会を頂き、順天のZ世代の世界への関心の豊かさに接することができました。生徒のみなさま、理事長をはじめ運営に力を尽くされている教職員のみなさま、すてきな機会をありがとうございました。Global Weekはまだ続きます。皆様の内なる想いに、すてきな秋の知の実りが結びますことを期待しております。

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