STEAM教育(05)ハーバード大学のエリック・マズール教授のPI(ピア・インストラクション)に大きなヒント
★明日10月27日(日)、工学院で「第1回21世紀型STEAM教育フォーラム」を開催します。創作物を生み出すSTEAMワークショップとPILを挿入したSTEAMワークショップの2タイプを実施します。前者は外部のコンクールやイベントで活躍している工学院のZ世代生徒がファシリテートするワークショップです。デジタルネイティブには私たちがかなわないことがわかります。Z世代の才能が開花する<新しい学びの経験>とは何か体験します。
★後者は、PBL授業の中にPILを挿入したワークショップを実施します。一見知識問題なのですが、ICTである仕掛けをすると、多角的なアプローチの問いがあふれ出ます。思考のトルネードが生まれフェルミ推理が触発されます。この触発体験を共にしましょう。
★PILは、Peer Instruction based Learningで、ハーバード大学の物理学のエリック・マズール教授のConcepTest(conceptとtestをマズール教授がつなげました)という、知識を問いながら概念を学ぶ多肢選択問題のシステムであるPI(Peer Instruction)にヒントを得て、理科だけではなく、社会や国語でも活用できるように発展させたものです。
★たとえば、中学受験でも出題されるような次のような問題を見てください。
★上記のマズール教授の著書の中に出ている問題ですが、どうなりますか。何だと思いますか?この問題は、「電流」で捉えていくか「電子」で捉えていくかで、解答率がきれいに分かれる問題です。「電流」で考えても正解に到るのですが、「電流」を水の流れの譬えで置き換えると誤謬推理に陥ります。
★ハーバード大学の学生も「2」の解答率が高くなるのは、ちょっと驚きです。
★この問題はただ解くだけではないのです。まず個人で考えて解いたあとに何人かと話し合って考えていきます。そのbefore-afterの集計をとった結果をみて、マズール教授がようやく講義をするという、最近アクティブラーニングの1つの手法として活用されています。
★しかし、マズール教授にとっては、電流とは何かとか電子とは何かを考えるトリガーとして活用しているわけで、そこからクリエイティビティを生み出すことの方が重要なのです。
★というのも、「電子」を「量子」に置き換えることによって、この問題はスッキリ解けるのですが、このよく中学入試でも出そうな問題が、量子論にどう結びつくというのでしょう。いきなり解いて、正解を教師から聞く授業では、フェルミ推論が生まれないので、クリエイティビティも生まれないのです。
★ところが、この問題の使い方によっては、フェルミ推論が起こり、うまい具合に誤謬推理に傾けば、どうしてそういう論理が成り立つのか考えることになります。この一見易しい知識問題が、量子論という物質の在り方の概念を変える授業に変わります。この誤謬推理は、しかしながら、私たちは意外と身近なところで、行っています。電子は物として客観的にあると思っていますよね。しかし、それでは、この問題は解けないのです。
★物ではなくて関係としてとらえなおす必要があります。パラダイムチェンジが起こるわけですが、そんな大げさなと思うかもしれませんね。小さなシンプルな問題からパラダイムチェンジなんてバカバカしいと。
★しかしながら、科学の発見はたいていそんなところからというケースが多いですね。<新しい学びの経験>を創るということは、実はこんな小さなところから始めることも重要です。とにも、まずは体験してみましょう。明日お待ちしています。
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