PBLの世界(39)世界の変化は迅速に拡散してウネッている 聖学院で感じたこと ④
★現代思想はビジネス書に潜り込み、学問の世界からは身を隠してしまいました。哲学は大事だと叫ばれながらも、ポスト・ポストモダンを見通す哲学は日本では広まっていません。哲学は命脈を絶たれたのでしょうか?いいえ、欧米では全く新しい哲学が勃興し、文化人類学と協働し、新しい地平を見出しています。
★日本でも教育哲学は注目を浴びていますが、その知見は、カントやヘーゲルで止まっています。それを大事にしてあがめている方もいるようですが、その哲学は未来を見通していないのです。道徳で終わる可能性があります。自ら、倫理を捨て、道徳の自縄自縛に陥ってしまうでしょう。
★そんなことを思っていた時、聖学院の「未来を創る教育セミナー」で新しい哲学がちゃんと動き始めているのに驚きました。先にご紹介した聖学院の生徒たちは、まさに哲学の最前線をすでに歩いています。彼らは英語を自在に使い、カンボジアばかりかタイにも行き、自然も社会も精神も全く自分たちと違うことに直面します。
★そして、そこには、自分たちとは違うはかなくも豊かな世界が厳然とあるのです。レヴィ・ストロースが先進諸国以上の世界が未開の地にあったのを発見し愕然とし、欧米人の傲慢さを打ち砕いたのと同じ感覚を共感しているのです。
★そこには「主観―客観」図式の近代思考様式とは全く別の思考様式があるわけです。聖学院生は、そこに気づき、次なる世界を模索し活動し始めています。リアルとは、自分の知っている世界だけではないのです。多様なリアルが1つの世界に充満しているのです。その充満しているリアルそのもののパースペクティブを有することができるかどうかが新しい哲学を有しているか否かを決めます。
★そのことに既に気づいている教師もまたファシリテーターの役割を果たしていました。工学院の田中歩先生と聖学院の本橋先生です。田中歩先生は、英語の教師で、世界を経めぐっています。最近では東南アジアや上海にも飛び立っています。
★本橋先生は、最初英語の教師かと思ったほど英語が堪能で、東南アジアの多言語にも造詣が深いのです。数学の教師なのに!もちろん、東南アジアを経めぐっています。
★二人の先生に共通していることは、英語で世界中の人と対話して、共感の難しさとすばらしさを感じる経験値が高いということです。それから、欧米以外も旅しているので、文化人類学的な視点も自然と環境から開発されています。すでにカント的な認識論は超えているわけです。
★あらゆるものを客観的にみることや主観的にみることはもちろんしますが、それ以外の多様なものの見方ができるという柔らかさがあります。ヒーローのような鋼鉄のリーダーシップは発揮しませんが、集まったメンバーが化学反応を起こすジェネレーターとしてのリーダーシップを発揮します。今回もそうでした。≪ineter≫とか≪com≫という媒介こそがリアルなのです。
★新しい哲学は新しい人間を生みだします。新しい哲学は新しい自然へのアプローチを見つけます。新しい哲学は新しい社会を創り出します。未来を創る教師とは、哲学者ではありませんが、哲学者以上に新しい哲学を実践しているのです。
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