対話の世界(4)聖パウロの世界史の授業 未来を見通す論理的思考力
★聖パウロ学園の望月先生(広報部長・社会科教諭)の世界史の授業は、歴史のダイナミズムを生徒と共有していきます。ある程度必要な知識については、ストーリーテラーよろしく歴史物語を語たったり、わかりにくいその時代の制度や経済については、現在の身近なケースに<置き換え>て語ります。
★知識のインプットといえばそうなのですが、実は生徒がインプットするときに同時に<想像力>を活用するようになっているわけです。それゆえ、生徒からは望月先生の授業はわかりやすいし何よりおもしろいと人気なのです。
★しかしながら、歴史のダイナミズムを共有するというのは、<置換>スキルと<想像力>を駆使して、わかりやすく知識をインプットすることによってだけではないのです。
★生徒自らが、望月先生のようにストーリーテラーになり、論理的思考力をトレーニングしていくことによって共有していくのです。
★この論理的思考力のトレーニングは、インプットの時とは逆です。たとえば、19世紀末から20世紀半ばにかけての中国史を学んだあとに、今ニュースでも毎日のように取り上げられている香港のデモがなぜ起こってしまったのか、既存の知識で推理していく問いを投げかけます。
★1989年にいたる冷戦の終焉やEUが生まれた背景知識があれば、かなり正確に理由を詰めていくことができるのですが、そのような知識がない状態で、歴史物語を推理していくのです。歴史はある意味権力闘争史だったり、権利の闘争史だったりしますから、従来の歴史の力学構造を重ね合わせて推理することは可能です。
★望月先生は、物語を推理するときのキーワードをグループワークで抽出し、それをつなぐ物語を生徒がプレゼンするという仕掛けをまずします。そして、そのキーワードに基づいて物語を語る時、自分たちがあげたキーワードのときには気づかなかったキーワードを生徒は語りますから、それを赤字で追加していきます。
★各グループがあげたキーワードと生徒が語った話から望月先生が大事だと気づいたキーワードすべてをつないでいくと、一つの歴史物語ができます。
★生徒が自らつくったプロトタイプとしての物語。この過程を通過した生徒は自信をもてます。モチベーションもあがります。そして、新しい知識や情報を追加することによって、プロトタイプはリファインされ、洗練されていきます。生徒はこの仮説と検証、あるいは試行錯誤の連続を望月先生の授業で体験していくのです。
★生徒と生徒の対話、生徒と望月先生との対話が、縦糸と横糸のように織りなされていきます。おもしろくて深く考える授業。<Hard Fun>と呼ばれる授業そのものです。
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