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2019年10月19日 (土)

2020年からの中学入試(30)「進学レーダー2019年11月号」で中学入試の全貌を見通そう

★「進学レーダー2019年11月号」(みくに出版)は、<中学受験SDGsと新しい入試>の大特集を組んでいます。そして、この時期大事なもう一つの特集<「学校別」入試の採点基準>とそれを活用できる<過去問分析シート>がとじこみで手に入れることができます。

★「聖学院」が8ページ圧巻の<私立中高一貫校レポート>で登場しているのも驚きでした。SGDsの活動などでも有名なZ世代リーダーYujinさんをはじめとする聖学院の生徒さんがトップページ全面でバーンと登場しているのもすてきでした。

★「宝仙理数インター」「横須賀学院」の<クラス1日密着ルポ>や「成城学園」の<私学の校舎散歩>も読みごたえ見ごたえたっぷりです。

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★さて、同誌は、数多くの私立中高一貫校がSDGsに取り組んでいることの国際的な重要性を背景に着目しています。グローバル教育の本質的な活動を見通した視点です。そして、中学入試問題は学校の顔ですから、SDGsの取り組みを行っている学校の多くが、SGDs関連の入試問題を出題していることを丁寧に検証しています。

★この取り組みが、大学にもつながっているということにも触れ、受験の世界が、国連広報センターの野望の1つSDGsの告知に実は一役買っていて、受験の重要性について社会貢献や国際貢献という観点から光をあてる画期的な特集になっています。

★それとZ世代高校生がSDGsをテーマに未来会議を開催している活動も紹介し、2040年に相当混迷した日本社会であると予想されている時期にリーダーシップを発揮せざるを得ないZ世代の希望も取りあげています。

★そして、このSDGs関連の入試の出題方式が、4科入試以外に、新しい入試で出題されていることにも射程を広げています。これらを合わせ読むと、2040年から考えてZ世代にとって有益有効な<新しい学びの経験>を創ろうとしている各私立中高一貫校の創意工夫が浮かび出てきます。

★とはいえ、もちろん、<中学受験>という視点できっちりまとめられています。いまこの時期に、中学受験生の保護者は2040年から想いを馳せながらわが子の受験態勢に臨むということはしないでしょう。それは当然です。

★偏差値60以上の学校の9割は、4科入試中心で、その中でSDGs関連の問題は当然出題されるわけです。中学受験マーケットでは、この層に生徒が集まりますから、4教科の受験勉強をサポートすることが極めて重要です。大手塾の中には、ここだけにターゲットを露骨に当ててそれ以外を切り捨てるようなことを公言するところもあるぐらいです。

★しかし、この層の中でも、麻布や武蔵は、4科入試でも新しい入試で重視しているような「高次思考力」はもともと出題していて、この層の中でも特別で大切な位置を占めています。もともと新しい入試の登場は、公立中高一貫校の適性検査を意識して作成されるケースと麻布や武蔵の「高次思考」を偏差値が低くても考えてなんとか突破できて自信と勇気を取り戻すことはできないかという問題意識から作成されるケースの2通りありました。今では、もうそのような意識は曖昧になるほど、拡大しましたが。

★そんな中で、開成は、昨年、「高次思考」の問題を作ろうと思ったらできるぞというサインを出しました。今年筑駒の詩では、正解がたくさんでうるような問題も工夫次第では採点がきっちりできるぞという筑駒叡智の面目躍如の問題を出題しています。

★だいたい開成の数学や化学の授業などは、もともとアクティブラーニング(同校はそんな呼び方をしていないでしょうが)ですから、創造的という意味での「高次思考」の問題を出題しようと思えばできるのです。ただし、開成に入学してくる生徒は、もともとそこの部分はもっているので、知識と論理をベースにハードルを越えてきてくれればよいということでしょう。

★そんなわけで、偏差値が50前後の学校群が<新しい入試>を実施するケースが圧倒的に多いのです。だから、そこから飛び出てきた今では偏差値が高くなった三田国際は、通過点として一度<新しい入試>をやっただけで、あとは算数一科入試に変更しました。マーケティングに俊敏な学校は実に戦略的です。

★しかしながら、このような戦略的な学校は例外的です。大事なことは、この4科入試と新しい入試の背景にある偏差値グルーピングという事態は、「進学レーダー」に取り上げられるほど一つの「事実」として定着してきたわけです。グルーピングができるということは、実はダイナミックな動きが意図しなくても発生するというのが歴史的な力学というものです。2020年中学入試は注目ですね。

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